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令和7(ネ)1750商標権侵害差止請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 大阪高等裁判所
裁判年月日 令和8年2月13日
事件種別 民事
法令 商標権
商標法36条1項1回
キーワード 商標権3回
侵害3回
差止2回
主文 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。
事件の概要 以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。

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判決文

令和8年2月13日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

令和7年(ネ)第1750号 商標権侵害差止請求控訴事件

(原審・大阪地方裁判所令和6年(ワ)第5007号)

口頭弁論終結日 令和7年12月11日

判 決

控 訴 人 (一 審 被 告 ) ヴ ェ リ タ ス 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 兒 玉 貴 裕

同 坂 田 朱 莉

同訴訟代理人弁理士 前 田 健 壱

被控訴人(一審原告) 有限会社新居バイオ花き研究所

同訴訟代理人弁護士 伊 原 友 己

同 橋 本 祐 太

主 文

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

主文同旨

第2 事案の概要

以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。1 事案の要旨本件は、被控訴人が、控訴人に対し、控訴人による本件商標と類似する被告標章をパッケージに付したいちご同梱の商品(被告各商品)を販売する行為が本件商標権の侵害行為に該当するとして、商標法36条1項に基づく被告各商品の販売の差止めと同条2項に基づく被告標章の抹消を求める事案である。

5 原審は、被控訴人の請求をいずれも認容したので、これを不服として控訴人が本件控訴を提起した。2 前提事実(争いのない事実及び証拠(特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)原判決3頁23行目の末尾に「なお、被告各商品は、主に徳島県内の道の駅などで販売されていた(甲5の1)。」を加えるほか、原判決「事実及び理由」

第2の3(2頁19行目から4頁6行目まで)に記載のとおりであるから、こ

れを引用する。3 争点原判決第2の4(原判決4頁8行目から同頁9行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。4 争点に関する当事者の主張後記5のとおり、当審における争点1に関する当事者の補充主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」第3の1及び2(原判決4頁11行目から7頁13行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。5 当審における争点1に関する当事者の補充主張(被控訴人)

(1) 商品名、サービス名称などの冒頭に「あわ」を付する例は本判決別紙被控訴人商品名等一欄表の商品名等欄に掲記したとおり多数みられるところ、これらの用例は、地名である阿波が、平仮名の「あわ」で表記されているものの、各名称に含まれるが冒頭の「あわ」が、地名である「阿波」を指すものとして用いられていることが明らかである(甲8)。このように、商品名等の冒頭に「あわ」と付された場合、取引者及び需要者に対して、地名である「阿波」を想起させているといえる。

(2) そして、被告標章も、その冒頭に付された「あわ」の部分が、地名である「阿波」を想起させるものであって商品の産地又は販売地を意味するにすぎ

5 ず、同部分は出所識別機能を有さない。

(3) したがって、被告標章は、「恋いちご」の部分が出所識別機能を担う要部となるから、本件商標と類似している。(控訴人)

(1) 商品名に平仮名の「あわ」を含むものについて、その使用例をみると、本判決別紙控訴人商品名一覧表の第1類型欄記載の商標のように「あわ」が「阿波」と併記されること等により「あわ」を地名としての「阿波」と結び付けて理解される場合、同別紙の第2類型欄記載の商標のように「あわ」が「淡」と併記されること等により「あわ」を「淡」の意味内容と結び付けて理解される場合、同別紙の第3類型欄記載の商標のように「あわ」という語は意識されるが、その意味内容が特定されず、フレーズの一部として意識されるにとどまる場合、同別紙の第4類型欄記載の商標のように「あわ」からは特定の意味内容が何も認識されず一体の造語としてのみ把握される場合の4類型に分類することができる。

(2) 被告標章の「あわ恋」の部分は、「淡い恋」という観念を想起させる造語であり、その構成、印象に照らせば、被告標章は、上記第4類型に該当するといえるから、「あわ恋いちご」の「あわ」の部分のみを切り離してその意味内容を独立に認識することは、通常の取引の実情に反する。被告標章中の「あわ」に地名の「阿波」の意味を持たせるためには、上記第3類型のように「『あわ』の恋いちご」のような構成として「あわ」と「恋いちご」の関係を明示的に区切る必要がある

(3) したがって、被告標章は、「あわ恋」の部分が要部となるから本件商標と類似していない。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所は、原判決とは異なり、被告標章は本件商標と類似していないから、

本件商標権侵害を理由とする被控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。

5 その理由は、以下のとおりである。

2 争点1(本件商標と被告標章が類似するか)について

(1) 被控訴人は、被告標章は「あわ」と「恋いちご」を組み合わせた結合商標

であり、「恋いちご」部分が要部であるとして、これを前提に本件商標と類否を判断し類似である旨主張するところ、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁、最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。そして、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・集民228号561頁参照)。

(2) これにより本件についてみると、被告標章の構成中には、本件商標と同じ

称呼を生ずる「恋いちご」という文字部分が含まれているが、被告標章は、

5 「あわ恋いちご」の文字をやや丸みのあるPOP体風書体の文字をやや円弧

状に横書きして成されたものであり、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから、「恋いちご」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また、引用した前提事実(2)によれば、本件商標は平成18年に商標登録された商標であるが、いかなる態様で使用されているについて明らかにされておらず、これが取引者、需要者に広く知られていることを認めるに足りる証拠は被告各商品が取引されている地域に限ってもないから、本件商標と同じ称呼である被告標章の構成中の「恋いちご」の文字部分が、いちごの取引者や需要者に対し被控訴人がその出所であることを示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできない。これに対して被控訴人は、被告標章の冒頭に付された「あわ」の文字部分は、旧国名としての地名である「阿波」を想起させるもので、商品の産地又は販売地を意味するにすぎないため出所識別機能を有さず、「恋いちご」の文字部分が出所識別機能を担う要部になると主張する。確かに、被告各商品のパッケージの表面のデザインからは、そこに付された被告標章の「あわ」の文字部分から地名である「阿波」が想起されるといえる。しかし、被告標章のみで観察した場合、「あわ」の文字からは、「阿波」のみならず「泡」、「粟」、「安房」、「淡」も想起され得ることからすると、被告各商品のパッケージの表面のデザインにおいて被告標章の「あわ」の文字部分から地名である「阿波」が想起されるのは、被告各商品のパッケージの表面に被告標章と共に「徳島県産」の表記、阿波踊りの踊り手及び「阿波」と記載された高張提灯のイラストが描かれ、さらに本件各商品2には「徳島県産 阿波のいちご」と記載され、これらの記載類から、被告標章の「あわ」

5 の文字部分が地名である「阿波」の意味を有することが示唆されているから

というべきである。そして、このようにいえることは、証拠(甲8)によれば、被告各商品のように商品名の冒頭に地名の「阿波」を意味するものとして平仮名の「あわ」が用いられている商品では、パッケージ等に商品名の冒頭の「あわ」の文字部分が地名の「阿波」であることを示唆する記載を伴うことが一般的であると認められることから裏付けられているといえる(なお、各商標の説明は、同表「説明等(裁判所認定)」欄記載のとおりである。また、前掲証拠によれば、同表に列挙したとおり、サービス、サービス提供場所等の名称にも「あわ」の文字部分を地名の「阿波」で用いられている例が多数あるが、これらの場合には、そのサービス提供者、サービス提供場所自体が徳島に関連することが明らかな状態で使用されているので、そのことによって「あわ」の文字部分が地名の「阿波」を意味することが示唆されていると認められる。)。そして、被告標章を付された上記デザインのパッケージがいちごを同梱した被告各商品のパッケージとして使用されているという取引の実情を考慮すると、被告標章の構成中の「いちご」の文字部分は商品そのものを示す普通名詞であるということになるから、その部分は、商品を普通に記述しているにすぎないと理解され、その余の部分である「あわ恋」という言葉は、既存の言葉に「淡い恋心」、「淡い恋」などがあり、また、被告標章の外観が柔らかな印象が与えられるようデザインされていることと相まって「淡い恋」を略して新たに造られた言葉と理解されるものと考えられるから、前説示のとおり、「恋いちご」の文字部分が、いちごの取引者や需要者に対し被控訴人がその出所であることを示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとはいえないことも考え併せると、被告標章は「あわ恋」と「いちご」が結合した標章であり、「あわ恋」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じているというべきである。

5 そうすると、被告標章が上記デザインのパッケージに付されることによっ

て、「あわ」の文字部分から地名である「阿波」が想起されるとしても、上記デザインのパッケージがいちごを同梱商品とする被告各商品のパッケージとして使用されているという取引の実情の下においては、被告標章は、「あわ恋」と「いちご」を組み合わせた結合商標であることを前提に、「あわ恋」の「あわ」の文字部分に被告各商品の産地である地名の「阿波」を掛けていると理解されるにすぎないと考えられることになるから、被告標章と本件商標の類否を判断するに当たっては、被告標章を「あわ」と「恋いちご」に分離して観察することは許されないというべきである。したがって、被告標章の冒頭に付された「あわ」の文字部分は出所識別機能を有さず、「恋いちご」の文字部分が出所識別機能を担う要部になるとして、被告標章の構成中の「恋いちご」の文字部分を抽出し、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの類否を判断しようとする被控訴人の主張は採用することができないというべきである。

(3) そこで以上を踏まえて本件商標と被告標章の類否を判断すると、本件商

標は、漢字を縦書きしているのに対し、被告標章は「恋」以外を平仮名で表記し、やや丸みのあるPOP体風書体の文字を等間隔にやや円弧状に1行かつ一連で横書きしたものであって外観において明らかに異なり、また本件商標は「コイイチゴ」の称呼を生ずるのに対し、被告標章は「アワコイイチゴ」の称呼を生ずるものであって重なる部分はあるものの、文字数が異なり称呼が類似しているとはいえない。そして、いずれも果実の名称であるいちごに、本来、味覚を表現しない心理、感情状態の語を組み合わせて、当該果実の味覚を表現するという手法で造られた言葉であるが、「恋」と「淡い恋」で違う観念が想起されるから、これといちごを組み合わせることで生ずる観念も類似するとはいえず、したがって、本件商標と被告標章は全体として類似するということはできない。

5 第4 結論

以上によれば、被控訴人の請求にはいずれも理由がないから棄却すべきところ、これを認容した原判決は失当であり、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、被控訴人の請求をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。大阪高等裁判所第8民事部裁判長裁判官森 崎 英 二裁判官久 末 裕 子裁判官森 鍵 一(別紙)被控訴人商品名等一覧表甲第8号証 甲第8号証中商品名等 説明等(裁判所認定)中の番号 の資料番号あわ番茶 2 ① パッケージに「徳島産」の併記ありあわ晩茶 3 ② 「あわ」は徳島県の「阿波」との説明がパッケージ裏面に記載ありあわ紅豆腐 4 徳島県製造、徳島県のふるさと納税返礼品あわ煎餅 5 ③ 阿波市所在の企業の製品。煎餅に阿波踊りの絵がある。西阿波に伝わる伝統菓子(亥の子菓子)をモチーフにした菓子・3段あわのわっか 6 ④組み表記あわぎん 7 ⑤ 阿波銀行あわ検定 8 ⑥ 徳島のご当地検定あわ文化検定 9 ⑦ 徳島県の中学生向けのご当地検定あわや 10 ⑧ 徳島市所在の菓子屋(徳島四季乃菓子あわや)あわ和三盆あいす 11 ⑨ 商品サイトの商品写真に「徳島のご当地アイス」との併記ありあわそだち 12 ⑩ 鶏卵・「阿波育ち」との併記ありあわ共同法律事務所 13 徳島市所在の法律事務所あわ中央法律事務所 14 阿波市所在の法律事務所あわみちゃん 15 ⑪ 阿波市観光協会マスコットキャラクターあわぱん 16 ⑫ 阿波市所在の会社経営のパン工房あわこい 17 ⑬ イベント名・「阿波に「来い」」とのコピーライトありあわの抄 18 ⑭ 大歩危祖谷阿波温泉のホテル名あわしるべ 19 ⑮ 阿波市のローカルメディア(ウェブマガジン)あわスタ 20 ⑯ 学校向け新聞活用学習支援サイト(徳島新聞社、有料サイト)「徳島産すだちのお酒」、「徳島産やまもものお酒」、「徳島産ゆあわの姫物語 21 ⑰ずのお酒」を商品名に併記したリキュール3本セットの商品名あわのはちみつ 22 ⑱ 商品名に「徳島 阿波」の併記ありあわちび天 23 ⑲ 「徳島県産生しいたけ」との併記ありあわっちゃまめ 24 ⑳ 茶豆風味枝豆。「JA徳島市独自ブランド」との併記ありあわ歯科こども歯科クリニック 25 ㉑ 徳島市所在の歯科医院あわカフェ 26 ㉒の1、2 「徳島珈琲物語」と題する情報サービスあわねこ保育園 26 ㉓ 徳島市所在のNPOが運営する猫カフェあわカル 27 ㉔ 徳島県内のイベント情報投稿サイトピカラあわ光ねっと・ピカラあわ光でんわ 28 ㉕ 阿波市のケーブルネットサービスあわのわ 29 ㉖ NPO法人とくしま障がい者就労支援協議会が運営上記協議会が運営する企業と福祉事業所をつなぐ仕事のマッチングあわのわーく 30 ㉗サービス超あわ文化アートプロジェクト 31 ㉘ 阿波踊りの要素を含む劇場公演プログラムのタイトルあわさぽ 32 徳島県の公式インスタグラムアカウント(観光案内)あわ・おやこのままびば 33 ㉙ 阿波市所在の子育て支援団体(別紙)控訴人商品名一覧表商品名(読み) 使用される商品 説明「阿波」(漢字表記)と「あわ」阿波藍茶(あわあいちゃ) 藍茶(平仮名表記)を併記した商品名「阿波」(漢字表記)と「あわ」阿波番茶(あわばんちゃ) 番茶(平仮名表記)を併記した商品名「阿波」(漢字表記)と「あわ」阿波(あわ)ほうべに いちご(平仮名表記)を併記した商品名

第1類型

「阿波」(漢字表記)と「あわ」阿波牛(あわぎゅう) 黒毛和牛(平仮名表記)を併記した商品名阿波和三盆糖(あわわさん 「阿波」(漢字表記)と「あわ」和三盆糖(砂糖)ぼんとう) (平仮名表記)を併記した商品名「あわ」(平仮名表記)と「阿波育あわそだち 鶏卵ち」(漢字表記)を併記した商品名「淡」(漢字表記)と「あわ」(平

第2類型 淡柚(あわゆう) 和菓子

仮名表記)を併記した商品名「あわ」と「姫物語」の間に「の」あわの姫物語 地酒ギフトセットを挿入した構成の商品名

第3類型

「あわ」と「わっか」の間に「の」あわのわっか 菓子を挿入した構成の商品名あわっちゃまめ 枝豆 「あわ」を含む一体の造語的商品名

第4類型

あわっこ金山寺 金山寺味噌 「あわ」を含む一体の造語的商品名

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