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令和6(ワ)70219民事訴訟 不正競争

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 令和8年2月16日
事件種別 民事
法令 不正競争
キーワード 損害賠償3回
実施2回
侵害1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要

▶ 不正競争に関する裁判例

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判決文

令和 8 年 2 月 16 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和 6 年(ワ)第 70219 号 損害賠償等請求事件

口頭弁論終結日 令和 7 年 10 月 27 日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は、原告に対し、640 万円及びこれに対する令和 5 年 1 月 24 日から支

払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は、原告が、被告による別紙被告商品目録記載のハンドバッグ(以下、

併せて「被告商品」という。)の製造及び販売等は、原告が製造及び販売等する

別紙原告商品目録記載のハンドバッグ(以下「原告商品」という。)の形態を模

倣した商品を譲渡等する不正競争(不正競争防止法(以下「不競法」という。)

条 1 項 3 号)であり、原告はこれにより営業上の利益を侵害され、損害を被

ったと主張して、被告に対し、不競法 4 条に基づき、640 万円の損害賠償及び

これに対する不正競争より後の日である令和 5 年 1 月 24 日から支払済みまで

民法所定の年 3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣

旨により容易に認められる。なお、書証の番号は特に断らない限り枝番号を含

む(以下同じ。)。)

(1) 当事者

ア 原告は、アパレル製品、雑貨、バッグ等の企画、開発、製造、販売等を

業とする株式会社である。(甲 1)

イ 被告は、バッグ等の企画、製造、販売等を業とする株式会社である。

(甲

)

(2) 原告商品の販売等

原告は、令和元年秋冬向けの商品として、「marche」シリーズのバッグを

開発した。

「marche」シリーズには、 (製品 NO. F081 D133 や F081

「marche」

等)と、同じデザインで小さいサイズの「marche-mini」

(製品 No. F081

D123 や F081 124 等)がある。本件における原告商品は、比較表(甲 4)に

表示される「marche-mini」である。原告商品の具体的な形態は、別紙主張

整理表のうち左側の写真のとおりである。

原告は、平成 31 年 3 月 19 日~同月 22 日にかけ、東京都渋谷区恵比寿所

在の会場にて原告商品を含む原告が製作した商品の展示会を開催するなどし、

随時、百貨店やセレクトショップ等から原告商品等オーダーを得て、令和元

年 8 月 9 日以降、百貨店等に原告商品を納品している。(以上につき、甲 3、

、41、42、51~60)

(3) 被告商品の販売等

被告商品は、被告が令和 4 年 2 月から「L.T.デリ.CORON」のシリーズ名

で販売するハンドバッグである。その具体的な形態は、別紙主張整理表のう

ち右側の写真のとおりである。

被告会社の取引先は、百貨店やセレクトショップ、大手インターネット通

販サイト等であり、被告やその取引先は、オンラインストア等でも販売して

いる。(以上につき、甲 2、4、6、7)

争点とこれに対する当事者の主張

(1) 被告商品による原告商品の形態模倣の有無(争点 1)

(2) 被告の故意又は過失の有無(争点 2)

(3) 保護期間の経過の有無(争点 3)

(4) 原告の損害の有無及びその額(争点 4)

当事者の主張

(1) 争点 1(被告商品による原告商品の形態模倣の有無)について

当事者の主張は、以下に補足するほかは、別紙主張整理表記載のとおりで

ある。

(原告の主張)

ア 実質的同一性

原告は、原告商品の形態のイメージを構想する過程において、正面から

見たときのバッグの印象、輪郭、パイピング、横や縦のサイズ、収納でき

る空間の高さ、ハンドルの高さ、位置等、見栄えが良くなるようにバラン

スの取れた寸法を考えると共に、素材感、高級感のある形態が崩れないよ

うにするための縫製上の構造等、様々な角度から検証を行い、試行錯誤を

重ねた。この試行錯誤の末に製作した原告商品の形態を被告が偶然製作す

ることはおよそあり得ないから、被告は原告商品を模倣したといえる。

生地の裁断やミシンでの縫製等は手作業で行うものであり、工場の職員

の技量によって誤差が生じるが、その誤差は数㎜から 2 ㎝ほどであるから、

その程度の違いは差異とはいえない。

外部ポケットの存在については、被告がルーポケットと称する外部ポケ

ットがついていない面を自らのサイトや広告で表示し、外部ポケットがつ

いている面を「Back」として表示していることからすると、被告商品の特

徴とはいえない。また、被告が販売する他の商品においては、外部に大き

く取り付けられたポケットは確認できないから、外部ポケットは被告商品

を象徴するものではない。

バッグ口回りの段差について、原告商品では、表側と裏側の生地を貼り

合わせた加工を施すという生地の特性と、ハンドルの形状の確保、縫製が

できる工場の選別等の特異な条件から、段差を設ける必要があったため生

じた形態であり、多くの商品にはこのような段差はない。他方、被告は、

ウェブサイトや広告において、外部ポケットがなく段差のある面を正面と

しており、新商品の販売に際しても段差のある面を正面とした写真を掲載

していることから、被告も、段差のある面を女性の関心を引く正面として

特徴付けているといえる。

原告商品のハンドル付け根部分の縫製は、原告が試行錯誤して開発した

ものである。被告は、他の縫製を選択できたのに、あえて原告商品の縫製

を模倣しているといえる。

加えて、需要者たる女性は、正面である段差のある面に関心を持ち、バ

ッグを構成する三角形、パイピングの位置、素材等に関心を惹かれて購入

する。被告が販売する商品であることを象徴しない外部ポケットやスマー

トフォンが入るという内部のポケット、内側の仕切り、口留めの内側パー

ツ、ハンドル付け根部分の内側ステッチ位置等は、些細な違いに過ぎない。

したがって、両商品が違うブランドであることを区別するのは困難であ

る。

イ 依拠性

原告が構想した三角形の輪郭を維持するために設けた段差、ハンドルの

片方のみに使用している本革、ハンドル部分の長さ、ハンドル付け根に係

る縫製等は、偶然一致するものではなく、原告商品及び被告商品の寸法が

ほぼ同一であることその他の事実関係からしても、被告は、原告商品に依

拠してこれを模倣した被告商品を製造販売したものといえる。

また、原告は、販売開始時は、ハンドルやパイピング部分を茶系の色、

生地を白とするバッグも販売していたが、売れ行きが良かったことから、

ハンドルやパイピング部分の色を増やし、生地を黒にした商品も販売する

こととした。その際、原告は、商品のサイズや各パーツの大きさや比等は

変えずに、色違いの商品を製造することで、多様な女性の多様な関心に応

える商品開発を行ったところ、被告も、被告商品のサイズや各パーツの大

きさや比等は変えずに、ハンドルやパイピング部分、生地の色違いの商品

を展開し、原告の色使いや色の組合せ等の販売戦略まで模倣した。

なお、被告が原告商品の形態をもってありふれたものと主張するにあた

り比較対象とするバッグは、令和 5 年春夏向けに販売された商品であり、

原告商品や被告商品が販売された時期とは大きく異なる上、原告商品及び

被告商品と形態やパイピングの位置、縫製等も大きく異なる。

(被告の主張)

ア 実質的に同一といえないこと

被告が販売する商品は、もともと、トートバッグにカンガルーのポケッ

トを想起するようなポケットを付した商品として消費者から広く認識され

ている。被告商品についても、その最大の特徴は被告商品の外側に付けら

れた「ルーポケット」と称する大きなポケットである。被告商品のルーポ

ケットは、バッグ片側中央部がほぼ隠れるほどの大きさで、一般消費者が

見た際に最も目を引く形態となっている。これは、被告商品の利用者・需

要者として想定している多くの女性にとっての利便性を第一に考え、スマ

ートフォンや除菌グッズ等をすぐに容易に取り出せるような形態にするこ

とを重視して製作したものである。他方、原告商品の内側に付されている

ポケットは、スマートフォンも入らない程度の大きさであり、サイズから

しても全く別のものである。

したがって、被告商品におけるルーポケットの存在により一般消費者や

当業者は原告商品と被告商品とを容易に区別できるのであって、原告商品

と被告商品とは、その形態において実質的に同一とはいえない。

イ 依拠のないこと

原告商品の大きさ及び質感は、バッグとしてありふれたものである。原

告商品のハンドル付け根部分の縫製仕様や、三角形を基調としたパイピン

グ等の形態についても独自性はなく、海外ブランドの製品にも多くみられ

るデザインである。

被告は、多くの女性が気軽に持つことができ、利便性が高く、かつ、お

しゃれ感があるものというコンセプトのもと、女性が持ちやすいサイズ感、

女性に人気の「ハ」の字型のデザイン、伸縮性に優れしわになりにくくカ

ジュアルなシーンでも使いやすいツイル生地、内部にペットボトルが入る

仕切りの設置、SNS 世代を意識してすぐにスマートフォンを取り出せるよ

うあえて外部に付した大きめのルーポケット等を備えた被告商品を企画し

たものである。

加えて、白黒や黒といったオーソドックスな色使いについて、同じよう

になるのは不自然なことではない。

このように、被告には、原告商品の形態を模倣する主観的認識はない。

(2) 争点 2(被告の故意又は過失の有無)

(原告の主張)

被告は、原告商品の形態に細部まで依拠して模倣した被告商品を製造し販

売しており、偶然とは考えられないから、故意に模倣したものといえる。

(被告の主張)

否認ないし争う。

(3) 争点 3(保護期間の経過の有無)について

(被告の主張)

被告商品の販売は令和 4 年 2 月以降であり、原告商品が日本国内において

最初に販売された平成 30 年 12 月又は遅くとも平成 31 年 3 月 19 日から起

算して 3 年を経過した後であるから、不競法 4 条の適用はない。

すなわち、「最初に販売された日」(同法 19 条 1 項 6 号イ)には、展示会

への出展や本格的な出荷前のサンプル出荷も含むと解されるところ、バッグ

を開発してから注文を受けるまでの間には、展示会に出店したり、サンプル

の商品確認等が行われることが通常である。仮に、令和元年 8 月 7 日の株式

会社トゥモローランド(以下「トゥモローランド社」という。)への納品が初

めてであるとすれば、その前に同社へのサンプル出荷やメールのやり取り等

があったはずであって、その納品に係る注文書兼仕入伝票は、最初の販売行

為の日を示すものとはいえない。原告の主張によれば、平成 30 年 12 月頃に

工場にサンプル製造の発注を行い、平成 31 年 3 月 19 日には原告商品の展示

「最初に販売された日」とは、平成 30 年

会を実施したとのことであるから、

月か、遅くとも展示会を実施した平成 31 年 3 月 19 日というべきである。

(原告の主張)

原告商品を日本国内において最初に販売したのは、令和元年 8 月 7 日であ

る。他方、被告商品の販売は令和 4 年 2 月以降であるから、原告商品が最初

に販売された日から起算して 3 年を経過しないうちになされたものである。

すなわち、原告は、令和元年秋冬シーズンでの新ブランドの販売を目指し、

平成 30 年 9 月頃から生地の加工方法やデザインの試行錯誤、型紙の設計、

試作生地の縫製等をしながら、原告商品の原型を完成させ、工場に対する縫

製指示書を作成し、同年 12 月頃、工場に対し、

「 marche-mini」及び「marche」

につき、色及び生地の異なるサンプル(各 3 個、合計 6 個)の製造を依頼し、

平成 31 年 3 月 18 日頃、これを受領した。もっとも、原告が当該工場に

「marche-mini」及び「marche」をそれぞれ 100 個以上発注しないとその製

造を受注してもらえないため、この時点では原告商品が販売されたとはいえ

ない。また、バッグを量産化できない場合にはサンプル製造のための費用す

ら回収できないため、原告においては、サンプルを見本として複数製造して

出荷することはない。

原告は、その後の同月 19 日~同月 22 日、恵比寿所在の会場において、原

告商品を含めた令和元年秋冬ものの商品を対象として原告単独の展示会を開

催した。同展示会では百貨店等のバイヤーから多く高評価を得たものの、新

しいデザインの商品なので、店頭での反応や売上げ動向をみるべく、初回の

オーダー数は最小限に留めたいとされた。同月 27 日には、原告商品につき、

複数社からオーダーを受けたものの(合計 24 個)、工場の最低ロット数に満

たなかったため、生産中止とする予定であった。また、原告は、同年 4 月 1

日以降、社内商談会を開催し、原告を訪れた各社バイヤーに商品の説明等を

したところ、トゥモローランド社を含む複数社から「marche-mini」につい

ては最低ロット数を満たすオーダーが入ったものの、「marche」については

これを下回ったため、やはり生産中止とする予定であった。

しかし、原告は、同年(令和元年)5 月 14 日頃、同年 9 月 3 日~同月 16

日における東京ミッドタウンでの期間限定ショップへの出展許可を得たこと

で、多数の受注を見込み、同年 5 月 16 日頃、工場に対し、「marche-mini」

については最低ロット数を満たす個数を発注し、「marche」についても、工

場との交渉により、最低ロット数に至らない個数の発注をした。発注に際し、

原告は納品時期を前者につき同年 7 月 10 日、後者につき同月 20 日と希望し

たが、実際に納品されたのはそれ以降である。

原告は、工場から商品の納品を受けると、全て検品して不具合の有無等を

確認した上、送り先ごとに配分し、出荷準備をしてから各社に納品する。こ

のため、投下資本の回収ができるのは、工場から不具合等のない完成品の納

品を受けた後である。実際、トゥモローランド社との取引では、原告が全て

検品し、不具合等がないことを確認してから正式な注文書兼仕入伝票を発行

したところ、その発行が同年 8 月 7 日であり、同社への納品は同月 9 日であ

る。すなわち、投下資本の回収ができると判明したのは、同年 8 月 7 日とい

うことになる。

上記のような原告の販売活動や取引態様等からすると、展示会開催日やそ

れ以前の時期をもって販売開始時期とするのは相当でない。

(4) 争点 4(原告の損害の有無及びその額)について

(原告の主張)

被告商品の価格は 1 個当たり 4000 円(消費税別)、令和 4 年 2 月~同年 8

月の販売個数は 4000 個と考えられる。被告はインターネットを通じて販売

していることが多く、問屋等を介さないため、利益率は売上の 40%である。

そうすると、令和 4 年 2 月~同年 8 月に被告が得た利益すなわち原告が被っ

た損害額は、640 万円(=4000 円/個×4000 個×利益率 40%)である。

(被告の主張)

否認ないし争う。

第3 当裁判所の判断

争点 1(被告商品による原告商品の形態模倣の有無)について

(1) 原告商品及び被告商品の各形態

証拠(甲 3、4、6、7、43、44、51 のほか、各項に掲げたもの)及び弁論

の全趣旨によれば、原告商品及び被告商品の形態は、以下のとおりと認めら

れる。

ア 原告商品の形態

原告商品(marche-mini)は、バッグ本体及び左右一対のハンドルから

なる婦人用ハンドバッグであり、その形態は、次のとおりである。

(ア) 基本的形態

a 形状

正面は別紙主張整理表【正面】の頁の左側、背面は同表【背面】の

頁の左側、脇面は同表【脇面】の頁の左側、底面は同表【底面】の頁

の左側の各写真のとおりである。

b 寸法

底横巾(バッグ本体正面底部の横幅) 253 ㎜

口巾(バッグ本体正面上部の横幅) 370 ㎜

中心丈(バッグ本体正面の高さ。ハンドル部分を除く。) 240 ㎜

脇マチ巾(バッグ本体脇面底部の奥行き) 177 ㎜

c 本体部の素材

表面 ツイル生地

内面 マイクロスエード

(イ) 具体的形態

a 正面

寸法は、上記の底横巾、口巾及び中心丈の寸法のほか、ハンドル付

け根間の長さは 190 ㎜、ハンドル部分の高さは 120 ㎜である。

形状は、底部から口部(バッグ本体上部)にかけて、マチ(奥行き)

部分が翼のような広がりを持ち、バッグ本体を正面から観察すると、

略逆台形状である。

また、底面からハンドル部分の上部にかけて黒色のパイピングが施

されており、パイピングにより縦長の略二等辺三角形を形成している。

黒色のパイピングは、底部から口部にかけて、更にはハンドル上部を

回って口部、底部へと、途切れることなくつながっているように観察

される。

ハンドル部分は、ハンドルの付け根において外側に位置する生地が

ハンドル上部では下側を向いている。ハンドルはアーチ状で、バッグ

を平置きしてもハンドルの形は維持される。

ハンドル下のバッグ本体上部の中央付近に、原告のブランド名で

ある「FEEL AND TASTE」という文字が刻印された黒い長方形のタ

グが縫い付けられている。

b 背面

背面の具体的寸法は前記正面の数値と同様である。バッグ本体が略

逆台形状に観察されること、底面からハンドル部分の上部にかけて黒

色のパイピングで縦長の略二等辺三角形を形成していること及びハン

ドル部分の形状も、正面の形状と同様である。

c 脇面

脇マチ巾(底面)の寸法は前記のとおり 177 ㎜である。このほか、

脇丈の長さは 260 ㎜、両脇の底部中央にあるパーツ巾の長さは 23 ㎜

である。

形状は、底部からハンドル部分にかけて、緩やかなカーブの略二等

辺三角形を形成している。

d 底面

寸法は、脇マチ巾の長さが 177 ㎜、底横巾(長方形の長辺)の長さ

が 255 ㎜、底板巾(長方形の短辺)の長さが 120 ㎜である。

形状につき、バッグの底面は長方形を形成しており、長方形の短辺

にはそれぞれ黒色のパイピングが施されている。

e 内面

内面の背面側には、黒色の本革のポケットがある。

バッグの口部中央付近には、バッグの口を留めるパーツがある。

バッグの口回りにも黒いパイピングが施されている。

内面はマイクロスエードの生地で構成されており、表側の生地と裏

側の生地を貼り合わせる加工が施されている。

f ハンドル部分

形状は、側面から観察すると、三角形を基調とする。

ハンドル部分の片面(外側)は本革、もう片面(内側)はツイル生

地で構成されており、各ハンドルの外側の縁のみに黒色のパイピング

が施されている。

ハンドル付け根部分は、バッグ本体に四角状に縫製され固定されて

おり(縫い止めは手縫いで行っている。)、縫製部分の長さは 40 ㎜で

ある。

ハンドルは、バッグ正面口回りに施されているパイピングと脇面口

回りに施されているパイピングにおいて段差が生じており、脇面口回

りのパイピングが正面口回りのパイピングよりも 15 ㎜高い。

g バリエーション

「marche-mini」シリーズには、白地に黒色のパイピングを施した

もののほか、白地にグレー系のパイピングを施したもの、白地に茶色

系のパイピングを施したもの、白地にゴールド系のパイピングを施し

たもの、黒地に黒色のパイピングを施したものがある。また、バッグ

本体の素材については、ツイル生地のほか、コットンジャンブレー、

マイクロスエード等がある。(甲 48 の 4、57、59、63)

イ 被告商品の形態

被告商品は、バッグ本体及び左右一対のハンドルからなる婦人用ハンド

バッグであり、その形態は、次のとおりである。

(ア) 基本的形態

a 形状

正面は別紙主張整理表【正面】の頁の右側、背面は同表【背面】の

頁の右側、脇面は同表【脇面】の頁の右側、底面は同表の【底面】頁

の右側の各写真のとおりである。

b 寸法(被告ウェブサイト(甲 6)の表示に基づく。)

横幅 35 ㎝

高さ 24 ㎝

奥行き 19 ㎝

c 本体部の素材

表面 ツイル調

内面 スエード調

(イ) 具体的形態

a 正面

具体的な寸法は、以下のとおりである。

底横巾(バッグ本体正面底部の横幅) 250 ㎜

口巾(バッグ本体正面上部の横幅) 330 ㎜

バッグ本体正面の高さ 225 ㎜

ハンドル付け根間の長さ 189 ㎜

ハンドル部分の高さ 125 ㎜

形状について、底部から口部(バッグ本体上部)にかけて、マチ(奥

行き)部分は広がりを持つが、奥行きの広がりを含めバッグ本体(ハ

ンドル部分を除く。)を正面から観察すると、原告商品に比して上辺側

の内角がやや大きい略逆台形状ないし略長方形状である。

また、底面からハンドル部分の上部にかけてパイピングが施されて

おり、パイピングにより縦長で上部頂点が丸みをもった略二等辺三角

形を形成している。

ハンドル部分は、ハンドルの付け根において正面側に位置する生地

がハンドル上部では上側を向いており、正面視では略二等辺三角形の

上部頂点部付近でパイピングが途切れるが、ハンドル部分を捻り、付

け根において正面側に位置している生地をハンドル上部において下向

きにすると、正面視においても、略二等辺三角形を形成しているパイ

ピングは、底面からハンドル部分の上部にかけて途切れることなくつ

ながっている。

ハンドルはアーチ状であり、バッグを平置きしてもハンドルの形は

維持される。

b 背面

バッグ本体部分の外側に、ハンドルの持ち手付け根間と略同幅の横

寸法かつ中心丈よりやや短いが略同程度の縦寸法の長方形状で、パイ

ピングにより形成される略二等辺三角形の内側部分のうちハンドル付

け根間を結ぶパイピングにより画される下部の略台形状部分のほぼ全

体を占める大きさのポケットが取り付けられている。

背面の具体的寸法は正面部分の数値と同様であり、その形状も同様

である。ただし、パイピングによる略二等辺三角形の見え方は、ハン

ドル部分の捩りの有無により正面視の場合と逆になる。

c 脇面

具体的な寸法は、以下のとおりである。

脇マチ巾(底面)の長さ 180 ㎜

脇丈の長さ 240 ㎜

両脇の底部中央にあるパーツ巾の長さ 25 ㎜

形状については、底部からハンドル部分にかけて略二等辺三角形を

形成している。

d 底面

具体的な寸法は、以下のとおりである。

脇マチ巾の長さ 180 ㎜

底横巾(長辺)の長さ 250 ㎜

底板巾(短辺)の長さ 140 ㎜

形状については、バッグの底面は長方形状であり、その短辺 2 辺に

はいずれもパイピングが施されている。

e 内面

内面の脇側(ただし、片方のみ)に、ペットボトル等が入る大きさ

の内ポケットがある。

また、バッグの口部中央付近には、バッグの口を留めるパーツ(マ

グネットホック)がある。

f ハンドル部分

その形状は、側面から観察すると、三角形を基調とする。

ハンドル部分の片面はフェイクレザー、もう片面はツイル生地調で

構成されており、各ハンドルの片側のみに黒色のパイピングが施され

ている。

ハンドル付け根部分は、バッグ本体に四角形状に縫製されておらず、

付け根の下の部分のみが縫製されて固定されている(すなわち、ハン

ドルとバッグの口部付近とは縫製されていない。)。縫製部分の長さは

㎜である。

また、バッグ正面口回りに施されているパイピングと脇面口回りに

施されているパイピングには段差が生じており、脇面口回りのパイピ

ングが正面口回りのパイピングよりも 10 ㎜高い。

g バリエーション

被告商品に係るバリエーションには、1444 LT.デリ.CORON-A シリ

ー ズ と し て 、 白 地 に 黒 色 の パ イ ピ ン グ を 施 し た 被 告 商 品 ( 01 N-

BLACK)のほか、白地にグレー系のパイピングを施した商品(02 N-

GRAY)、黒地に黒色のパイピングを施した商品(03 B-BLACK)、白

地にサックス系のパイピングを施した商品(04 N-SAX)、白地にゴー

ルド系のパイピングを施した商品(05 N-C-Gold)がある。また、1445

LT.デリ.CORON パターン A シリーズとして、白地に黒色のパイピン

グ を 施 し 、 正 面 下 部 に 太 い ラ イ ン と 細 い ラ イ ン を 施 し た 商 品 ( 01

Natural-Line)や、黒地に黒色のパイピングを施し、正面に星柄を散

りばめた商品(02 Black-STAR)がある。(甲 37)

(2) 形態の実質的同一性の有無

ア 「模倣」の意義

「模倣」(不競法 2 条 1 項 3 号)とは、他人の商品の形態に依拠して、

これと実質的に同一の商品の形態を作り出すことをいう(同条 5 項)。「実

質的に同一の商品の形態」とは、客観的に「他人の商品」と作り出された

商品を対比して観察した場合に、作り出された商品の形態が「他人の商品」

の形態と同一であるか、実質的に同一といえる程に酷似していることをい

う。ここで、商品形態の模倣を不正競争とした趣旨が商品開発のために資

金や労力を投下した先行者を保護することにあることに鑑みると、作り出

された商品の形態に「他人の商品」の形態と相違する部分があるとしても、

その相違がわずかなものであり、商品の全体的形態に与える変化が乏しく、

商品全体から見て些細な相違にとどまると評価される場合には、当該商品

は他人の商品と実質的に同一の形態と評価され得るというべきである。他

方、当該相違部分についての着想の難易、相違点の内容・程度、相違点が

商品全体の形態に与える効果等を総合的に判断したときに、当該相違点に

よって商品に相応の形態的特徴がもたらされており、当該商品と他人の商

品との相違が商品全体の形態の類比の上で無視できないような場合には、

両者を実質的に同一の形態ということはできない。

イ 原告商品と被告商品の対比

(ア) 原告商品と被告商品の形態の共通点

上記認定によれば、原告商品と被告商品は、以下の点をはじめとする

共通点を有するといえる。

・ (被告商品のハンドルの捻りの有無により)正面視又は背面視に

おいて、パイピングが施された部分が底面からハンドル上部にかけ

て、途切れることなく縦長の略二等辺三角形状を形成している点

・ 脇面において、ハンドル部分を含め略二等辺三角形状を形成して

いる点

・ 底面において、略長方形状を形成している点

・ 被告商品のハンドルを捻った場合のハンドルの形状

・ 左右の各ハンドルの片面のみに黒色の本革ないしフェイクレザー

調の素材を使用し、もう片面にツイル生地ないしツイル生地調の素

材を使用している点

・ バッグ本体の口回りにもパイピングが施されており、ハンドル付

け根部分においてパイピングの段差が生じている点

また、各部位の寸法も、相互に近似しているといってよい程度の差異

があるにとどまる。

(イ) 原告商品と被告商品の形態の相違点

上記認定によれば、原告商品と被告商品とは、以下の点をはじめとす

る相違点があるといえる。

① 本体の正面及び背面から見た際の全体的な形状。

② 正面に位置するタグの有無。

③ 背面に位置する外部ポケットの有無

④ 内ポケットの位置及び形状

⑤ ハンドル付け根部分の口回りの段差の程度

⑥ ハンドル付け根部分の縫製の仕様

(ウ) 検討

以上の共通点及び相違点を踏まえて検討するに、まず、相違点①、④

及び⑥については、その相違の程度及び位置等のゆえに、それ自体とし

ては、いずれも取引者及び需要者にとって外観上顕著な相違と認識され

るものとは必ずしもいえない程度の些細な相違にとどまるとみられる。

相違点⑤についても、取引者及び需要者にとって、原告商品と被告商

品とを対比した場合、その相違は認識し得るものの、それ自体としては、

両商品の実質的同一性を否定するに足りる程度のものとまでは必ずしも

みられない。

他方、相違点②については、原告商品の正面には原告のブランド名が

刻印された黒色のタグが存在している一方、被告商品の正面にはタグ等

は存在しないから、一見して明らかな相違といえる。もっとも、原告商

品におけるタグの大きさ及び位置を踏まえると、商品の全体的形態に与

える効果ないし影響は必ずしも大きなものではない。また、商品の外面

にブランド名を示すタグ等を配置することは経験則上ありふれた着想と

いってよく、その位置として、取引者及び需要者が頻繁に目にするであ

ろうバッグの口部付近を選択することも容易に想起されることと思われ

る。これらの点を考慮すると、相違点②は、それ自体としては、なお原

告商品と被告商品の実質的同一性を否定するに足りない些細なものにと

どまるとみるのが相当である。

しかし、相違点③すなわち背面の外部ポケットの有無についてみると、

原告商品にはこのような外部ポケットがそもそも存在しないのに対し、

被告商品には、背面視において、商品の中心部分にかなり大きな領域を

占める形で外部ポケットが存在しており、取引者及び需要者にとって、

視覚的に容易に認識し得るというにとどまらず強く印象に残るというべ

き相違点である。このため、相違点③は、商品全体の形態に与える効果

という点ではおよそ無視し得るものではない。仮に、スマートフォンそ

の他小物類を容易に収納及び取出し可能なポケットをバッグに取り付け

ることは容易に着想し得るとしても、その具体的な寸法、配置及び形状

等は商品のデザインに大きな影響を及ぼしかねない要素であり、この点

で、被告商品のようなデザインを着想し採用することは、必ずしも容易

ではないというべきである。

さらに、被告は、相違点③に係るポケットを含む「ルーポケット」を

その取扱いに係るバッグに設けることをブランドの「アイデンティティ」

と位置付けていることがうかがわれる(乙 1、4)。被告が「ルーポケッ

ト」とするポケットの配置や形状等は商品によって様々であるが(甲 23)、

被告商品の紹介画像にも正面のみならず背面をも掲載しているものがみ

られ(甲 4、7、37)、

「ルーポケット」は被告において取引者及び需要者

に対する訴求ポイントと位置付けられていることがうかがわれることに

鑑みると、被告商品が相違点③に係るデザインを採用するに至った動機

ないし背景は、上記コンセプトの一環として理解される。こうした動機

等も、被告商品の相違点③に係る構成に至る着想の難易度を考える上で

は考慮に入れられるべきである。

加えて、相違点③に係るポケットがバッグの外部とはいえ背面に配置

される点については、バッグ背面部はバッグを所持する際に所持者の身

体の側に位置することが通常であるとしても、バッグを置いた際には目

に触れやすい部位である。また、所持している間も、その持ち方次第で

は、背面部が完全に外部から視認し得なくなるものでもない。これらの

点に鑑みると、バッグ背面部は、正面部との比較において取引者及び需

要者に着目される程度は相対的に低いとしても、なお取引者及び需要者

の注意を惹くものとみるのが相当である。被告商品の紹介画像において

背面部が掲載されていることも、これをうかがわせる。

以上の事情を総合的に考慮すると、原告商品と被告商品とは、前記認

定に係る共通点が存在し、また、相違点①、②、④~⑥がそれ自体では

両商品の実質的同一性を否定するに足りない程度の相違にとどまるとし

ても、少なくとも相違点③は些細な相違とはいえないから、その形態に

おいて実質的に同一のものとはいえない。これに反する原告の主張は採

用できない。

ウ まとめ

以上より、被告商品の形態は他人の商品である原告商品の形態を模倣し

たものとはいえないから、被告商品の譲渡等は形態模倣の不正競争には当

たらない。

そうである以上、その余の点について判断するまでもなく、原告は、被

告に対し、不競法 4 条に基づく損害賠償請求権を有しない。

第4 結論

よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文の

とおり判決する。

東京地方裁判所民事第 47 部

裁判長裁判官

杉 浦 正 樹

裁判官

池 田 幸 子

裁判官

松 尾 恵 梨 佳

別紙

当事者目録

原 告 株式会社ソラスタイルズ

同訴訟代理人弁護士 高橋 邦明

被 告 株式会社ルートート

同訴訟代理人弁護士 鹿内 徳行

同 高松 政裕

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