令和7(行ケ)10096審決取消請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年3月12日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告X 被告特許庁長官
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| 対象物 |
未乾燥のペースト製茶 |
| 法令 |
特許権
民事訴訟法338条1項4号7回 民事訴訟法338条1項7回 民事訴訟法338条1項9号4回 特許法181条2項2回 民事訴訟法338条2回 特許法174条1回 特許法171条2項1回
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| キーワード |
審決78回 拒絶査定不服審判3回 抵触1回
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| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は、令和元年6月24日、発明の名称を「未乾燥のペースト製茶」と
する発明について、特許出願(特願2019-139228号。請求項の数
は2。以下「本願」という。
)をした。 |
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判決文
令和8年3月12日判決言渡
令和7年(行ケ)第10096号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年2月12日
判 決
原 告 X
被 告 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 宮 久 保 博 幸
10 同 柴 田 昌 弘
同 壷 内 信 吾
同 田 邉 英 治
同 北 村 英 隆
主 文
15 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が再審2023-950004号事件について令和7年9月10日に
20 した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は、令和元年6月24日、発明の名称を「未乾燥のペースト製茶」と
する発明について、特許出願(特願2019-139228号。請求項の数
25 は2。以下「本願」という。)をした。
⑵ 原告は、令和3年12月15日付けで拒絶理由を通知され、令和4年1月
31日に意見書を提出したが、同年5月6日付けで拒絶査定を受けた。
⑶ 原告は、令和4年5月31日、拒絶査定不服審判を請求するとともに(不
服2022-9649号)、明細書を補正する旨の手続補正書を特許庁に提
出した。
5 ⑷ 特許庁は、令和5年9月21日、「本件審判の請求は、成り立たない。」と
の審決(以下「原審決」という。)をし、その謄本は、同年10月14日、原
告に送達された。
⑸ 原告は、令和5年11月9日、原審決に対して再審の請求(再審2023
-950004号。以下「本件再審請求」という。)をした。
10 ⑹ 特許庁は、令和6年1月23日、本件再審請求を却下する審決(以下「第
1次再審審決」という。)をした。第1次再審審決は、本件再審請求がされた
日において原審決は未だ確定していなかったから、本件再審請求は、確定審
決に対してされたものではなく、不適法であり、その欠缺は補正することが
できないと判断した。
15 ⑺ 原告は、令和6年2月21日、第1次再審審決の取消し等を求める審決取
消訴訟を知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」という。)に提起した(知財
高裁令和6年(行ケ)第10016号)。
⑻ 知財高裁は、令和6年8月27日、本願に係る特許の特許査定又は設定登
録の義務付けを求める部分及び審判手続において前置審査を行うことの義務
20 付けを求める部分を却下し、第1次再審審決を取り消す旨の判決(以下「前
件判決」という。)をした。前件判決は、第1次再審審決を取り消すべき理
由として、本件再審請求につき、再審請求の時点では原審決が確定していな
かったという瑕疵があったが、第1次再審審決がされた時点では原審決が確
定していたから、上記瑕疵は治癒されたというべきであり、上記瑕疵を理由
25 として本件再審請求を却下することはできないと判断した。その後、前件判
決は確定し、本件再審請求に係る特許庁における手続が再開した。
⑼ 特許庁は、令和7年9月10日、本件再審請求につき、「特許法第171
条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項第4号ないし第6号
及び第9号に係る再審の請求を却下する。特許法第171条第2項において
準用する民事訴訟法第338条第1項第1号、第2号及び第8号に係る再審
5 の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、
その謄本は、同月26日、原告に送達された(乙1)。
⑽ 原告は、令和7年10月15日、本件審決の取消しを求めて、本件訴訟を
提起した。
2 本件審決の理由の要旨
10 本件審決の理由は、別紙1審決書(写し)のとおりであるが、その要旨は次
のとおりである(本判決で挙げる民事訴訟法338条1項及び2項の規定は、
特許法171条2項により確定審決に対する再審請求について準用され、本件
再審請求に適用されるものである。以下、本判決において、民事訴訟法338
条1項及び2項を挙げる場合に「特許法171条2項で準用する」との記載を
15 省略する。)。
⑴ 原審決につき、民事訴訟法338条1項1号、2号及び8号に規定する再
審事由は認められない。
⑵ 民事訴訟法338条1項4号ないし6号については、同条2項が再審請求
の要件となっているところ、本件再審請求における同条1項4号ないし6号
20 に基づく請求は、同条2項の要件を欠くものであるから、不適法なものであ
り、却下すべきものである。
⑶ 民事訴訟法338条1項ただし書きは、「当事者が控訴若しくは上告によ
りその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、
この限りでない。」と規定しており、この「控訴若しくは上告」とは、特許
25 法に即していうと審決取消訴訟の提起又は同訴訟に対する上告のことをいい、
特許法の再審請求において上記ただし書きの事由があるときは、特許法17
4条が準用する同法135条により不適法として却下すべきものと解される。
また、民事訴訟法338条1項ただし書きにいう「これを知りながら主張し
なかったとき」には、控訴又は上告により不服の事由を主張し得たにもかか
わらず、これを怠った場合も含まれると解される。原告は、本件再審請求に
5 おいて、同項9号につき、要するに、拒絶査定不服審判請求と同時に行った
手続補正が特許法の規定に適合したものであるのに対し、原審決が新規事項
の追加に該当するとして補正を却下し、その際に新規事項の追加であること
を証明していないとの点を指摘し、原審決に判断の遺脱があると主張してい
るものと解される。しかし、原告の指摘する上記の点について判断の遺脱が
10 あったか否かは、原審決を見れば直ちに認識できるから、原告は、上記事由
につき、原審決の送達によってこれを知っており、審決取消訴訟を提起し争
うことができたにもかかわらずしなかったのであるから、同項ただし書きに
いう「当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれ
を知りながら主張しなかったとき」に該当する。そうすると、同号に係る本
15 件再審請求は不適法なものであり、却下すべきものである。
⑷ 念のため、原審決につき、民事訴訟法338条1項4号ないし6号及び9
号に規定する再審事由の有無についても予備的に検討すると、上記各号に規
定する再審事由は認められない。
第3 当事者の主張
20 1 原告の主張
原告の主張は、別紙2(控訴理由書)、別紙3(令和7年11月13日付け「訂
正申し立書」と題する書面)、別紙4(令和8年1月26日裁判所受付の「20
26年準備書面」と題する書面)、別紙5(同月28日裁判所受付の「2026
年準備書面」と題する書面)各記載のとおりである。
25 原告が主張する内容は必ずしも判然としないが、その主張には以下の内容の
ものが含まれていると解される。
⑴ 行政事件訴訟法33条1項は、処分又は裁決を取り消す判決は、その事件
について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束すると規定
し、同条2項は、申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し
若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決
5 をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求
に対する裁決をしなければならないと規定する。
これらの規定によれば、本願について前訴判決がされたのに対し、特許庁
がさらに本件審決をしたことは、誤りであり、本願の審査請求の時点まで遡
及して、特願の特許査定について審査をしなければならない。
10 ⑵ 特許庁は、民事訴訟法338条により本件を主張したものであるが、同条
1項ただし書きは、当事者が控訴若しくは上告により主張をしたとき、又は
これを知りながら主張しなかったときは、この限りでないとしており、同条
3項は、控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第1審の判決に
対し再審の訴えを提起することができないと規定している。
15 原告は、知財高裁に対し抗告を行っており、主張している。さらに、最高
裁判所に上告を行っており主張は行っていないところである。
特許庁による本件審決は、民事訴訟法338条3項により提起できないも
のである。
⑶ 本願は物の発明であり、新分野発明であり、革命発明である。この事実は、
20 前件判決で確認された内容である。しかし、特許庁は、新規事項の追加であ
るとか、審査官等は民事訴訟法338条に抵触しないとか主張して、捏造と
詭弁を徒労して、変わった主張を繰り返し続けている。このことは、本願に
対する、故意による、遅延目的以外の何物でもない。特許庁が、自らの本分
の職務を遂行しない、審査請求を進めないなどの故意による遅延目的行為を
25 続けている事実は、共謀罪類型に該当する。
⑷ 審査官は、その当初から原告の本願申請書を盗み出した明白な事実がある。
この事実は、特許庁の重大な本件に対する故意による瑕疵である。このこと
は本件の当初から進行し、時間とともに拡大したものであり、遅延目的によ
り次第に共謀罪化し続けて今日まで拡大したものである。特許庁は、速やか
に、その本来の職務を全うすべきことを求める。
5 2 被告の主張
⑴ 本件では、第1次再審審決が前件判決により取り消されたので、行政事件
訴訟法33条2項の規定に基づき、特許庁は前件判決の趣旨に従い、本件審
決をした。同項にいう「申請に対する処分又は審査請求に対する裁決」は、
本件においては審決であって、本願に関する審査を改めてしなければならな
10 いというものではない。
本件において、前件判決の趣旨とは、原審決が確定していなかったという
瑕疵が、第1次再審審決がされた時点で治癒されているから、原告が主張し
ていた再審事由について判断しなければならないということであり、本件審
決は、前件判決の趣旨に従い、原告が本件再審請求において主張していた民
15 事訴訟法338条1項の再審事由が認められるか否かを判断した。したがっ
て、本件審決は行政事件訴訟法33条1項及び2項に反しない。
⑵ 原告は、本願が新分野発明であるとか、革命発明であり、この事実は前件
判決において確認された内容であると主張するが、前件判決においてそのよ
うな事実が確認されたことはない。
20 ⑶ 原告は、審査官が原告の本願申請書を盗み出したなどと主張するが、その
意味するところは不明であり、原告の本願申請書を盗み出したという事実も
ない。原告の主張は、何ら本件審決の取消事由とならない。
また、原告は、共謀罪類型に該当するなどと主張するが、その意味すると
ころが不明であり、審決に関与した審判官に共謀罪類型に該当するような行
25 為はなく、何ら審決の取消事由となるものではない。
第4 当裁判所の判断
1 再審事由の有無について
⑴ 本件審決は、
「理由」第4の2(審決書3ないし5頁)において、原告が本
件再審請求において主張した再審事由を記載しているところ、原告は、本件
訴訟において、本件審決の上記記載の内容に対して特段の主張をしていない
5 から、原告が本件再審請求において主張した再審事由は、本件審決の上記記
載のとおりであると認められる。これによれば、原告は、本件再審請求にお
いて、民事訴訟法338条1項のうち、同項3号、7号及び10号の事由に
ついては主張していないことになる。
⑵ 上記⑴を前提に、原告が本件再審請求において主張した再審事由について
10 検討する。
ア 民事訴訟法338条1項1号、2号及び8号について
上記各号については、原告が各号に関して主張する内容(本件審決「理
由」第4の2⑴、⑵及び⑹。審決書4、5頁)が、各号に該当する事由に
当たるとは認められない。
15 イ 民事訴訟法338条1項4号ないし6号について
民訴法338条2項は、同条1項4号から7号までに掲げる事由がある
場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判
が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定
判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴
20 えを提起することができると規定する。
しかし、民事訴訟法338条1項4号ないし6号に関して原告が主張す
る内容は、本件審決「理由」の第4の2⑶ないし⑸(審決書4、5頁)の
とおりであり、原告は、上記各号に関し、同条2項に規定する事由を何ら
主張していない。また、同項に規定する事由があることを認めるに足りる
25 証拠もない。
したがって、本件再審請求のうち、民事訴訟法338条1項4号ないし
6号に係る再審請求の部分は、不適法である。
ウ 民事訴訟法338条1項9号について
民事訴訟法338条1項ただし書によれば、当事者が控訴若しくは上告
により同項各号所定の事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張し
5 なかったときは、再審の訴えを提起することができない。
民事訴訟法338条1項9号は、判決に影響を及ぼすべき重要な事項に
ついて判断の遺脱があったことを再審事由とする規定であるが、この事由
は、当該当事者が判決を受け取れば認識することのできるものであるから、
当該判決に対して控訴又は上告をせず、後に再審の訴えを提起した場合、
10 同項ただし書の「これを知りながら主張しなかったとき」に当たると解さ
れる。
民事訴訟法338条1項ただし書も特許法171条2項により審決に
対する再審の請求に準用される。そうすると、拒絶査定不服審判請求に対
する審決に関し、当事者が審決に係る再審事由について審決取消訴訟にお
15 いて主張した場合、又はこれを知りながら主張しなかったときは、当該事
由について再審請求をすることができない。そして、民事訴訟法338条
1項9号の再審事由については、当事者は審決の謄本の送達を受ければ認
識することができるものであるといえるから、当該審決に対して審決取消
訴訟を提起せず、後に当該審決について再審請求をした場合、同項ただし
20 書の「これを知りながら主張しなかったとき」に当たり、再審請求は不適
法であると解される。
本件再審請求についても、原告は、原審決に対して審決取消訴訟を提起
することなく本件再審請求をしているから、本件再審請求のうち民事訴訟
法338条1項9号に係る再審請求の部分は不適法というべきである。
25 エ 以上によれば、本件再審請求のうち、民事訴訟法338条1項4号ない
し6号及び9号に係る再審請求の部分は、不適法であるから却下すべきで
あり、同項1号、2号及び8号に係る再審請求については、各号所定の事
由が認められない。
したがって、本件審決が、本件再審請求のうち、民事訴訟法338条1
項4号ないし6号及び9号に係る再審請求を却下し、同項1号、2号及び
5 8号に係る請求を不成立としたことは、相当である。
2 原告の主張について
⑴ 原告の前記第3の1⑴の主張は、前件判決がされたことにより、本願につ
いてはこれに対する審査及び査定からやり直すべきであるにもかかわらず、
特許庁が本件審決をしたことは、行政事件訴訟法33条に違反する旨の主張
10 であると解される。
しかし、特許法181条2項は、審判官は、同条1項の規定による審決の
取消しの判決が確定したときは、更に審理を行い、審決をしなければならな
い旨規定する。第1次再審審決は同条1項の規定による審決であり、前件判
決は第1次再審審決を取り消した判決であるから、同条2項により、審判官
15 が更に審理を行って審決をすべきである。したがって、前件判決が確定した
後、特許庁の審判官が本件審決をしたことに違法な点はない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑵ 原告の前記第3の1⑵の主張は、その内容が判然としないものの、民事訴
訟法338条3項により特許庁が本件審決をすることができないとの主張で
20 あると解する余地がある。
しかし、そもそも、特許法171条2項は民事訴訟法338条3項を準用
しておらず、同項は特許法に基づいてされた審決に対する再審請求に準用さ
れない。
また、同条3項に規定する内容が原告の上記主張の根拠となるとも解され
25 ない。
むしろ、上記⑴のとおり、特許法181条2項は、審決取消訴訟において
審決を取り消す判決が確定したときは、審判官が更に審理を行い、審決をし
なければならないと規定している。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑶ 原告の前記第3の1⑶及び⑷の主張については、原告が主張する内容が本
5 件審決を取り消すべき事由となると解することができず、かつ、その主張す
る事実を裏付ける証拠があるとも解されない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑷ その他、原告が縷々主張する内容を検討しても、前記1の判断は左右され
ない。
10 3 結論
以上のとおり、本件審決について、これを取り消すべき違法はなく、原告の
請求は棄却されるべきである。
よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
20 中 平 健
25 裁判官
今 井 弘 晃
5 裁判官
水 野 正 則
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