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令和7(行ケ)10093等審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年3月24日
事件種別 民事
法令 意匠権
意匠法10条1項3回
キーワード 審決17回
拒絶査定不服審判2回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、両事件を通じ原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に 顕著である。) (A事件) 原告は、令和3年9月30日、意匠に係る物品を「スカート」とする意匠 の物品の部分について、本意匠を意願2021-21205(意匠登録第1 722780号。意匠に係る物品は「チュニック」。意匠の形態について別 紙1参照。以下「本件登録意匠」といい、意匠登録を受けようとする部分を 「本意匠部分」という。)とする関連意匠の意匠登録出願(意願2021- 21208。意匠の形態について別紙2参照。以下、この出願に係る意匠を 「本願意匠A」といい、意匠登録を受けようとする部分を「本願部分A」と いう。)したところ、令和5年3月28日付けで拒絶査定を受けた。 原告は、令和5年6月30日、拒絶査定不服審判を請求したところ、特許 庁は、同請求を不服2023-10889号事件として審理し、令和7年8 月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件A 事件審決」という。)をし、その謄本は同月29日に原告に送達された。

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判決文

令和8年3月24日判決言渡
令和7年(行ケ)第10093号(A事件)、同第10094号(B事件) 審決
取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年1月20日
5 判 決
両 事 件 原 告 株式会社三宅デザイン事務所
(以下「原告」という。)
10 同訴訟代理人弁護士 中 川 隆 太 郎
同訴訟代理人弁理士 五 味 飛 鳥
両 事 件 被 告 特 許 庁 長 官
(以下「被告」という。)
15 同 指 定 代 理 人 前 畑 さ お り
綿 貫 浩 一
清 野 貴 雄
北 村 英 隆
渡 邉 久 美
20 主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、両事件を通じ原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
25 (A事件)
特許庁が不服2023-10889号事件について令和7年8月13日
にした審決を取り消す。
(B事件)
特許庁が不服2023-10890号事件について令和7年8月13日
にした審決を取り消す。
5 第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に
顕著である。)
(A事件)
原告は、令和3年9月30日、意匠に係る物品を「スカート」とする意匠
10 の物品の部分について、本意匠を意願2021-21205(意匠登録第1
722780号。意匠に係る物品は「チュニック」。意匠の形態について別
紙1参照。以下「本件登録意匠」といい、意匠登録を受けようとする部分を
「本意匠部分」という。)とする関連意匠の意匠登録出願(意願2021-
21208。意匠の形態について別紙2参照。以下、この出願に係る意匠を
15 「本願意匠A」といい、意匠登録を受けようとする部分を「本願部分A」と
いう。)したところ、令和5年3月28日付けで拒絶査定を受けた。
原告は、令和5年6月30日、拒絶査定不服審判を請求したところ、特許
庁は、同請求を不服2023-10889号事件として審理し、令和7年8
月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件A
20 事件審決」という。)をし、その謄本は同月29日に原告に送達された。
原告は、令和7年9月26日、本件A事件審決の取り消しを求める訴えを
提起した。
(B事件)
原告は、令和3年9月30日、意匠に係る物品を「パンツ」とする意匠の
25 物品の部分について、本意匠を本件登録意匠とする関連意匠の意匠登録出願
(意願2021-21209。意匠の形態について別紙3参照。以下、この
出願に係る意匠を「本願意匠B」といい、意匠登録を受けようとする部分を
「本願部分B」という。)したところ、令和5年3月28日付けで拒絶査定
を受けた。
原告は、令和5年6月30日、拒絶査定不服審判を請求したところ、特許
5 庁は、同請求を不服2023-10890号事件として審理し、令和7年8
月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件B
事件審決」といい、本件A事件審決と併せて「本件各審決」という。)をし、
その謄本は同月29日に原告に送達された。
原告は、令和7年9月26日、本件B事件審決の取り消しを求める訴えを
10 提起した。
2 本件各審決の理由の要旨
(A事件)
本願意匠Aの意匠に係る物品は「スカート」であるのに対し、本意匠の意
匠に係る物品は「チュニック」であって、相違する。
15 本願部分Aと本意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は相
違する。
共通点であるジグザグの編み目模様をほぼ等間隔に形成した点は、両意匠
に視覚的なまとまりを与え、需要者に強い共通の美感を起こさせるものであ
るから、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。また、
20 着用時から非着用時への変化態様は、縦方向の長さは保ちつつ、横方向のみ
縮む変化は両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものと認められる。
相違点である着用時と非着用時の編み目模様間の変化態様について、本願
意匠Aはスカートであるため、ウエストベルト部分の影響で、本願部分Aの
編み目模様間の態様が上方の平行から下方へ向かって漸次窄んでいく態様に
25 変化するのに対して、本意匠はチュニックであるため、本願意匠Aのような
構造上の影響はなく、本意匠部分の編み目模様間の態様は上方下方いずれも
平行のため、一定程度の相違があると言える。他方、編み目模様の本数につ
いて、本願部分Aは23本であるのに対して、本意匠部分は12本である点
については注視することでようやく気付く程度の差異であり、それら差異の
みによって、両部分を別異のものとするほどの大きな相違といえず、いずれ
5 の相違点も両部分の類否判断に与える影響は小さい。
以上によると、本願意匠Aと本意匠は、意匠に係る物品が相違し、意匠登
録を受けようとする部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が相違
し、その相違が形状等に影響を与えているといえるため、意匠登録を受けよ
うとする部分の形状等は類似したとしても、意匠登録を受けようとする部分
10 全体として総合して判断した場合には、本願意匠Aは本意匠に類似するとは
認められない。
(B事件)
本願意匠Bの意匠に係る物品は「パンツ」であるのに対し、本意匠の意匠
に係る物品は「チュニック」であって、相違する。
15 本願部分Bと本意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は相
違する。
共通点であるジグザグの編み目模様をほぼ等間隔に形成した点は、両意匠
に視覚的なまとまりを与え、需要者に強い共通の美感を起こさせるものであ
るから、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。また、
20 着用時から非着用時への変化態様は、縦方向の長さは保ちつつ、横方向のみ
縮む変化は両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものと認められる。
相違点である着用時と非着用時の編み目模様間の変化態様について、本願
意匠Bはパンツであるため、ウエストベルト部分の影響で、本願部分Bの編
み目模様間の態様が上方の平行から下方へ向かって漸次窄んでいく態様に変
25 化するのに対して、本意匠はチュニックであるため、本願意匠Bのような構
造上の影響はなく、本意匠部分の編み目模様間の態様は上方下方いずれも平
行のため、一定程度の相違があると言える。編み目模様の本数について、本
願部分Bの上方では17本、下方では19本であるのに対して、本意匠部分
のそれは12本である点は、注視することでようやく気付く程度の差異であ
り、それら差異のみによって、両部分を別異のものとするほどの大きな相違
5 といえない。他方、本願部分Bの中央の模様を、下方約3分の1の高さで略
倒立V字状に二股に分かれたものとした点は、比較的小さな部分といえども、
全体が平行に配された編み目模様の中にあって、その具体的な編み目模様の
構成態様が特徴であり、需要者の注意を強く引く部分といえ、両意匠の視覚
的印象に大きな影響を与える。したがって、物品等の違いから生じる着用時
10 と非着用時の編み目模様の変化態様と相俟って、本願部分Bの中央下方の略
倒立V字状模様の有無により、両部分の形状等は類似しない。
本願意匠Bと本意匠は、意匠に係る物品が相違し、意匠登録を受けようと
する部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が相違し、その相違が
形状等に大きな影響を与えているといえるため、意匠登録を受けようとする
15 部分全体として総合して判断した場合には、本願意匠Bは本意匠に類似する
とは認められない。
第3 原告主張の審決取消事由(意匠法10条1項の意匠の類否に関する判断の
誤り。A事件・B事件)
1 部分意匠の類否判断は、物品の用途及び機能、物品の部分の用途及び機能、
20 物品の部分の位置・大きさ・範囲、そして物品の部分の形状等といった美感
に影響し得る諸要素を総合的に考慮して、両部分意匠が需要者に起こさせる
美感が共通するかどうかで判断すべきである。
2 チュニックとスカート及びパンツは、トップス(チュニック)とボトムス
(スカート、パンツ)で相違するものの、いずれも被服であるから、着用の
25 目的は身体を装うこと、すなわち、身体にまとい、身体を保護し、身なりを
整え、身体を着飾ることなどにある点で共通する。そして、それぞれの用途
及び機能を詳細かつ厳密に対比した場合に認定され得る相違が、こと本件に
おいてはそれぞれの美感に大きな影響を与えない以上、本願意匠A及び本願
意匠B(以下「両本願意匠」という。)と本意匠とは、いずれも物品の用途
及び機能が共通し、物品が類似する。
5 スカートの前身頃とチュニックの前身頃とは、両部分意匠が需要者(女性
であって、「装い」の使用目的でこれを着用する者)に共通の美感を起こさ
せる可能性が十分にあるものと類型的に評価できる。したがって、本願意匠
Aと本意匠に係る物品の部分の用途及び機能は共通し、両「物品の部分」は
類似する。また、パンツ(とりわけ女性向け)の前身頃とチュニックの前身
10 頃の中央上方部分とは、両部分意匠が需要者に共通の美感を起こさせる可能
性が十分にあるものと類型的に評価できる。したがって、本願意匠B及び本
意匠に係る物品の部分の用途及び機能は共通し、両「物品の部分」は類似す
る。
両本願意匠の物品の部分と本意匠の物品の部分とは、位置、大きさ及び範
15 囲に若干の相違はあるものの、軽微なものであり、いずれも前身頃という正
面の中央上方部分に広く位置するものであるから、位置、大きさ及び範囲は
共通する。
両本願意匠の物品の部分と本意匠の物品の部分とは、形状等の共通部分が
需要者の目を引く大きな視覚的特徴であり、他方、需要者が形状等の相違点
20 を重視して意匠の美的価値を評価するとは言い難い。
3 両本願意匠と本意匠とは、意匠に係る物品が類似し、意匠に係る物品の部
分も類似し、部分の位置・大きさ・範囲も共通し、部分の形状等も類似する。
よって、両本願意匠と本意匠とは、それぞれ類似する。
本件各審決は、形状等の類似性よりも物品の相違に重点を置いて意匠の類
25 否判断を行っているが、両本願意匠が物品固有の形状に関係しない装飾的な
部分意匠であることに鑑みると、両本願意匠について物品の類否に重点を置
いて類否判断を行うことは妥当でない。
4 以上により、本件各審決には、意匠法10条1項の意匠の類否に関する
判断の誤りがあるから、取り消されるべきである。
第4 被告の反論(A事件・B事件)
5 1 部分意匠の類否判断は、「物品」全体の類否判断を行うとともに、出願さ
れた意匠の「意匠登録を受けようとする部分」と、対比する意匠(具体的に
は、本意匠又は公知意匠)における「意匠登録を受けようとする部分」に相
当する部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲、そして形状等につ
いて比較・評価を行い、最終的に物品の類否も含めて総合的な判断を行うこ
10 とになる。
2 そこで、「物品」の類否についてみると、本意匠は意匠に係る物品が「丈
が長めの上衣」である「チュニック」であるのに対して、本願意匠Aの意匠
に係る物品は「腰より下を覆う筒状の下衣」である「スカート」であり、ま
た、本願意匠Bの意匠に係る物品は「足を片方ずつ包む二股に分かれた下衣」
15 である「パンツ」である。胴体と腕を通して上半身に着る「チュニック」と、
腹部と脚を通して下半身にはく「スカート」及び「パンツ」とは、一般需要
者が通常混同しない相違があるから、本意匠と本願意匠A及び本願意匠Bの
用途及び機能がいずれも類似せず、「物品」は類似しない。
「意匠登録を受けようとする部分」の類否についてみても、両本願意匠の
20 「意匠登録を受けようとする部分」と、本意匠の「意匠登録を受けようとす
る部分」に相当する部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲、そし
て形状等について比較・評価を行うと、両本願意匠と本意匠の「意匠登録を
受けようとする部分」には、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が相
違する上、着用時と非着用時の編み目模様間の変化態様や編み目模様の本数
25 についても差違がある。
以上を踏まえて、物品の類否と「意匠登録を受けようとする部分」の類否
も含めて総合的な判断を行うと、両本願意匠は、本意匠に類似すると認める
ことはできない。
3 以上により、両本願意匠は本意匠に類似せず、意匠法10条1項の規定に
該当しないから、本件各審決に誤りはなく、取り消されるべき違法はない。
5 第5 当裁判所の判断
1 A事件についての判断
⑴ 証拠(甲15、16)及び弁論の全趣旨によると、本願部分Aは、別紙
2のとおり、意匠に係る物品がスカートで、青色で着色した部分以外の部
分であり、本意匠部分は、別紙1のとおり、意匠に係る物品がチュニック
10 で、緑色で着色した部分以外の部分であると認められる。
⑵ スカートは下半身を覆う筒状の衣服(下衣)であるのに対し、チュニッ
クは丈が長めの上衣である。腹部と脚を通して下半身にはくスカートと、
胴体と腕を通して上半身に着るチュニックとは、用途及び機能がいずれも
類似しないから、本願意匠Aの意匠に係る物品と本意匠の意匠に係る物品
15 が類似するとはいえない。
⑶ 本願部分Aはスカートの一部であり、腹部を覆う用途及び機能を有する
ものであるのに対し、本意匠部分はチュニックの前身頃の一部であり、胸
部を覆う用途及び機能を有するものであるから、本願部分Aの用途及び機
能と本意匠部分の用途及び機能とはいずれも相違する。
20 ⑷ 本願部分Aの物品全体の形状等の中での位置、大きさ及び範囲と本意匠
部分の物品全体の形状等の中での位置、大きさ及び範囲とは、別紙1及び
2のとおりであるから、これらは相違する。
⑸ 本願部分Aと本意匠部分との形状等を見るに、ジグザグの編み目模様を
ほぼ等間隔に形成し、着用時から非着用時への変化態様において、縦方向
25 の長さは保ちつつ、横方向のみ縮む変化であることは共通する。他方、着
用時と非着用時の編み目模様間の変化態様について、本願意匠Aの物品は
スカートであるため、ウエストベルト部分の影響で、本願部分Aの編み目
模様間の態様が上方の略平行から下方へ向かって漸次窄んでいく態様に
変化するのに対し、本意匠の物品はチュニックであるため、本意匠部分の
編み目模様間の態様は上方下方いずれも略平行であり、この相違はスカー
5 ト及びチュニックという物品の構造による影響によるものと認められる。
⑹ 以上を総合すると、本願意匠Aと本意匠とは、意匠に係る物品が類似し
ないこと、意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能並びに位置、大
きさ及び範囲が相違し、それらの相違が形状等の相違に影響を与えている
ことなどからすると、意匠登録を受けようとする部分の形状等に共通する
10 点があることを考慮しても、需要者の視覚を通じて起こさせる美感が共通
するとはいえず、本願意匠Aが本意匠に類似すると認めることはできな
い。
2 B事件についての判断
⑴ 証拠(甲15、20)及び弁論の全趣旨によると、本願部分Bは、別紙
15 3のとおり、意匠に係る物品がパンツで、緑色で着色した部分以外の部分
であり、本意匠部分は、別紙1のとおり、意匠に係る物品がチュニックで、
緑色で着色した部分以外の部分であると認められる。
⑵ パンツは、股下で二つに分かれ、足を片方ずつ覆う衣服(下衣)である
のに対し、チュニックは丈が長めの上衣である。腹部と脚を通して下半身
20 にはくパンツと、胴体と腕を通して上半身に着るチュニックとは、用途及
び機能がいずれも類似しないから、本願意匠Bの意匠に係る物品と本意匠
の意匠に係る物品とは類似しない。
⑶ 本願部分Bはパンツの股上部分の一部であり、腹部を覆う用途及び機能
を有するものであるのに対し、本意匠部分はチュニックの前身頃の一部で
25 あり、胸部を覆う用途及び機能を有するものであるから、本願部分Bの用
途及び機能と本意匠部分の用途及び機能とはいずれも相違する。
⑷ 本願部分Bの物品全体の形状等の中での位置、大きさ及び範囲と本意匠
部分の物品全体の形状等の中での位置、大きさ及び範囲とは、別紙1及び
3のとおりであるから、これらは相違する。
⑸ 本願部分Bと本意匠部分との形状等を見るに、ジグザグの編み目模様を
5 ほぼ等間隔に形成し、着用時から非着用時への変化態様において、縦方向
の長さは保ちつつ、横方向のみ縮む変化であることは共通する。他方、着
用時と非着用時の編み目模様間の変化態様について、本願意匠Bの物品は
パンツであるため、ウエストベルト部分の影響で、本願部分Bの編み目模
様間の態様が上方の略平行から下方へ向かって漸次窄んでいく態様に変
10 化するのに対し、本意匠の物品はチュニックであるため、本意匠部分の編
み目模様間の態様は上方下方いずれも略平行である。また、本願部分Bの
中央の模様は、下方約3分の1の高さで略倒立V字状に二股に分かれてい
るのに対し、本意匠部分はそのような模様にはなっていない。これらの相
違はパンツ及びチュニックという物品の構造による影響によるものと認
15 められる。
⑹ 以上を総合すると、本願意匠Bと本意匠とは、意匠に係る物品が類似し
ないこと、意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能並びに位置、大
きさ及び範囲が相違し、それらの相違が形状等の相違に影響を与えている
ことなどからすると、意匠登録を受けようとする部分の形状等に共通する
20 点があることを考慮しても、需要者の視覚を通じて起こさせる美感が共通
するとはいえず、本願意匠Bが本意匠に類似すると認めることはできな
い。
3 原告の主張に対する判断
⑴ 原告は、チュニックとスカート及びパンツは、着用の目的が身体を装う
25 こと、すなわち、身体にまとい、身体を保護し、身なりを整え、身体を着
飾ることなどにある点で共通することなどから、両本願意匠と本意匠とは、
いずれも物品の用途及び機能が共通し、物品が類似すると主張する。
しかし、チュニックとスカート及びパンツの用途及び機能が類似しない
ことは前記判示のとおりであり、これらの着用の目的が身体を装うことで
あったとしても、その用途及び機能の相違が需要者の視覚を通して起こさ
5 せる美感に影響する以上、両本願意匠と本意匠の物品が類似するとはいえ
ない。
⑵ 原告は、チュニックの前身頃とスカート及びパンツの前身頃とは、需要
者に共通の美感を起こさせる可能性が十分にあるものと類型的に評価で
きることから、両本願意匠及び本意匠に係る物品の部分の用途及び機能は
10 共通すると主張する。
しかし、チュニックの前身頃とスカート及びパンツの前身頃の用途及び
機能が相違することは前記判示のとおりであり、その用途及び機能の相違
が需要者の視覚を通して起こさせる美感に影響する以上、両本願意匠及び
本意匠に係る物品の部分の用途及び機能が共通するとはいえない。
15 ⑶ 原告は、両本願意匠の物品の部分と本意匠の物品の部分とは、位置、大
きさ及び範囲に若干の相違はあるものの、軽微なものであり、いずれも前
身頃という正面の中央上方部分に広く位置するものであるから、位置、大
きさ及び範囲は共通すると主張する。
しかし、両本願意匠の物品の部分と本意匠の物品の部分の位置、大きさ
20 及び範囲が相違することは前記判示のとおりであり、これらが前身頃とい
う点で共通するとしても、それらの位置、大きさ及び範囲が相違すること
に変わりはない。
⑷ 原告は、①両本願意匠の物品の部分と本意匠の物品の部分とは、形状等
の共通部分が需要者の目を引く大きな視覚的特徴であり、他方、需要者が
25 形状等の相違点を重視して意匠の美的価値を評価するとは言い難いこと、
②両本願意匠について物品の類否に重点を置いて類否判断を行うことは
妥当でないことを主張する。
しかし、前記判示のとおり、原告が指摘する形状等の共通点を考慮した
としても、その他の諸点を併せて総合評価した結果として、両本願意匠と
本意匠の需要者の視覚を通じて起こさせる美感が共通するとはいえず、両
5 本願意匠が本意匠に類似すると認めることはできないのであるから、原告
の上記主張は採用することができない。
4 結論
以上によると、原告主張の取消事由には理由がないから、本件各審決に取
り消すべき違法はない。
10 よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし
て、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官
増 田 稔

裁判官
伊 藤 清 隆

裁判官
天 野 研 司
(別紙1)

(別紙2)

(別紙3)

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