令和5(ワ)70445特許権に基づく差止等請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年3月18日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告株式会社流通サービス 被告株式会社田頭茶店
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| 対象物 |
γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法 |
| 法令 |
特許権
特許法36条6項1号1回 特許法36条4項1号1回 特許法102条2項1回 特許法100条1項1回
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| キーワード |
進歩性12回 実施11回 無効9回 特許権7回 差止3回 侵害2回 訂正審判1回 損害賠償1回 審決1回 刊行物1回
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| 主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
1 事案の要旨
本件は、発明の名称を「γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法」とする特
許(特許第6778931号。以下「本件特許」という。
)に係る特許権(以下
「本件特許権」という。
)を有する原告が、別紙目録記載2の被告の製品の製造
に係る同目録記載1の被告の製造方法の使用は本件特許に係る発明の技術的範
囲に属するから、同製造方法の使用は本件特許権を侵害する行為であると主張
して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、同製造方法の使用
の差止め、並びに同製品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出又は譲渡若しくは
貸渡しの申出の差止め及び廃棄を求めるとともに、民法709条に基づき、損
害賠償金7975万円の一部である1000万円及びこれに対する令和5年8
月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合に
よる遅延損害金の支払を求める事案である。 |
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判決文
令和8年3月18日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和5年(ワ)第70445号 特許権に基づく差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和8年3月11日
判 決
5 原 告 株式会社流通サービス
同訴訟代理人弁護士 中 野 浩 和
同訴訟代理人弁理士 坂 手 英 博
同訴訟復代理人弁理士 石 田 理
同 補 佐 人 弁 理 士 小 幡 義 之
10 宮 本 美 紀
被 告 株 式 会 社 田 頭 茶 店
同訴訟代理人弁護士 石 下 雅 樹
永 野 真 理 子
埋 橋 和 人
15 西 村 直 祐
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 第1 請求
1 被告は、別紙目録1記載の製造方法を使用してはならない。
2 被告は、別紙目録2記載の茶を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しく
は輸出し、又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
3 被告は、前項の茶を廃棄せよ。
25 4 被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する令和5年8月29日か
ら支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は、発明の名称を「γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法」とする特
許(特許第6778931号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下
5 「本件特許権」という。)を有する原告が、別紙目録記載2の被告の製品の製造
に係る同目録記載1の被告の製造方法の使用は本件特許に係る発明の技術的範
囲に属するから、同製造方法の使用は本件特許権を侵害する行為であると主張
して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、同製造方法の使用
の差止め、並びに同製品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出又は譲渡若しくは
10 貸渡しの申出の差止め及び廃棄を求めるとともに、民法709条に基づき、損
害賠償金7975万円の一部である1000万円及びこれに対する令和5年8
月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合に
よる遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨に
15 より容易に認定できる事実)
当事者
ア 原告は、茶の包装事業及び製造、販売を事業内容とする株式会社である。
イ 被告は、日本茶の製造、販売等を事業とする株式会社である。
(2) 本件特許権(甲5、36)
20 ア 原告は、以下の本件特許権を有している(本件特許出願の願書に添付さ
れた明細書及び図面を「本件明細書」といい、本件明細書の発明の詳細な
説明中の段落番号を【0001】などと記載する。)。
特許番号 特許第6778931号
発明の名称 γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法
25 出願日 平成30年10月19日
登録日 令和2年10月15日
イ 原告は、令和6年6月25日付け審判請求書により、特許請求の範囲
(請求項1)の訂正を求める訂正審判を請求したところ、特許庁は同請求
を認める旨の審決をし、同審判は確定した(以下、当該訂正を「本件訂正」
という。)。
5 本件特許の本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとお
りである(以下、請求項1に記載された発明を「本件発明」という。)。
「茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って育成した一番茶の茶葉を嫌気
処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行
った前記茶葉を原料として碾茶又は抹茶又は玉露に製造する
10 ことを特徴とするギャバ臭味のないγ-アミノ酪酸含量の高い茶の製
造方法。」
ウ 本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した
構成要件をその符号に従い「構成要件A」などという。)。
A 茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って育成した一番茶の茶葉を
15 B 嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返した後、
C 嫌気処理を行った前記茶葉を原料として碾茶又は抹茶又は玉露に製造
することを特徴とする
D ギャバ臭味のないγ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法。
(3) 被告の行為
20 ア 被告は、遅くとも令和2年9月から、商品名を「GABA抹茶」とする
茶(以下「被告製品」という。)を業として製造し、販売している。
なお、GABA(ギャバ)はγ-アミノ酪酸の略称である。
イ 被告製品の製造方法(以下「被告方法」という。)は、以下のとおりであ
る(以下、分説した構成をその符号に従い「構成a」などという。)。
25 a 茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って育成した一番茶の茶葉を使用
する
b-1 嫌気処理を行う
b-2 大気雰囲気にて処理を行う
b-3 窒素ガス充填・冷凍保存を行う
c 窒素ガス充填・冷凍保存された茶葉を原料選定し、抹茶に製造する
5 (4) 先行文献
本件特許の出願日前に頒布された刊行物として、以下のものが存在した。
ア 中国公開特許第107307104号公報(乙2。平成29年11月3
日公開。以下「乙2公報」といい、乙2公報に記載された発明を「乙2発
明」という。)
10 イ 大韓民国公開特許第10-2009-0124269号公報(乙6。平
成21年12月3日公開。以下「乙6公報」といい、乙6公報に記載され
た発明を「乙6発明」という。)
ウ 特許第3038373号公報(甲6-1。平成12年5月8日発行。以
下「甲6公報」といい、甲6公報に記載された発明を「甲6発明」という。
15 なお、本件明細書【0003】の先行技術文献「特許第30383736
号公報」との記載は誤記であり、甲6公報を指す。)
3 争点
(1) 被告方法が本件特許の技術的範囲に属するか(争点1)
ア 構成要件Bの充足性(争点1-1)
20 イ 構成要件Cの充足性(争点1-2)
ウ 構成要件Dの充足性(争点1-3)
なお、被告方法が本件発明に係る構成要件Aを充足することは争いがない。
(2) 無効の抗弁の成否(争点2)
ア 乙2発明に基づく進歩性欠如(争点2-1)
25 イ 乙6発明に基づく進歩性欠如(争点2-2)
ウ 甲6発明に基づく進歩性欠如(争点2-3)
エ 発明未完成(争点2-4)
オ 実施可能要件違反(争点2-5)
カ サポート要件違反(争点2-6)
(3) 原告の損害(争点3)
5 4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1-1(構成要件Bの充足性)について
(原告の主張)
ア 構成要件Bの「嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返した
後」の解釈は、少なくとも2回の嫌気処理と1回の好気処理を定めている
10 と解すべきである。
そして、被告方法では、構成b-1に当たる嫌気処理をして、茶葉を8
時間静置した後、上記窒素ガス充填までの間に、大気雰囲気で茶葉を処理
することで、茶葉が空気にさらされることになるから、構成b-1が1回
目の嫌気処理、構成b-2が1回目の好気処理に当たるところ、被告方法
15 における構成b-3の窒素ガスの充填は荒茶製造工程のものであり、これ
は嫌気処理といえるから、構成b-3は2回目の嫌気処理に当たる。
以上によれば、被告方法は、構成要件Bを充足する。
イ また、構成要件Bの嫌気処理と好気処理は同一カテゴリの処理であり、
嫌気処理1回と好気処理1回で「繰り返し」には足りるから、構成要件B
20 の解釈は、嫌気処理、好気処理の順で各処理が少なくとも各1回行われれ
ば足りるとも解される。上記解釈は、【0020】に「繰り返し」の対象が
嫌気処理と好気処理であることが記載されるとともに、「繰り返さなくても、
少なくとも、茶葉(生葉)を嫌気的な環境下で処理した後、好気的な環境
下で処理すれば良い。」との記載があることからも明らかである。
25 これを被告方法に当てはめると、構成b-1及びb-2と、構成b-3
及びcのいずれか一方又は両方において、構成要件Bを充足する。
(被告の主張)
ア 構成要件Bは、文言上、嫌気処理と好気処理を1回ずつ行っただけでは
足りず、嫌気処理は2回以上必要である。このことは、構成要件Cにおい
て、工程が嫌気処理で終わることの記載があること、本件明細書上、「繰り
5 返さなくても、少なくとも、茶葉(生葉)を嫌気的な環境下で処理した後、
好気的な環境下で処理」するだけで、γ-アミノ酪酸含量の高い茶が得ら
れる否かについて何ら明らかにしていないことからも裏付けられる。
イ 構成要件Bは、原料となる茶葉についての嫌気処理を定めたものである
ところ、荒茶製造工程の一部である構成b-3の窒素ガス充填は、碾茶と
10 して完成した製品の品質を保持するための処理であり、当該工程において
ギャバの含有量は増加しないから、構成要件Bの嫌気処理には該当しない。
【0019】には、「冷凍庫内の茶葉(生葉)は、その後、通常の茶の製造、
蒸煮、粗揉、揉捻、中捻、精捻、乾燥してγ-アミノ酪酸含量の高い茶を
得ることができる。」と記載されているとおり、構成要件Bの嫌気処理は、
15 茶葉を加工する工程である「蒸し」の前に行われるものであるところ、構
成b-3の工程は、茶葉(生葉)について「蒸熱」及び「乾燥(碾茶炉)」
という茶葉に100℃以上の熱を加えた後に行われるものであるから、構
成要件Bの嫌気処理に該当しない。
ウ 本件発明における好気処理については、「蒸し」で始まる茶の製造工程開
20 始前の段階の処理であり、かつ、嫌気処理を終了し、茶葉を酸素が存在す
る状態で一定時間静置する処理をいうと解される。そうすると、被告方法
においては、嫌気処理をした茶葉について、一定時間静置することなく、
「蒸し」で始まる茶の製造工程に供されており、好気処理に当たる工程は
存在しない。
25 したがって、被告方法は構成要件Bを充足しない。
(2) 争点1-2(構成要件Cの充足性)について
(原告の主張)
構成cは、構成要件Cを充足する。
(被告の主張)
争う。
5 (3) 争点1-3(構成要件Dの充足性)について
(原告の主張)
被告方法は、前提事実(3)記載の構成aないしcに加えて、当該抹茶のGA
BA(γ-アミノ酪酸)の含有が高く(構成d)、GABA特有の香りを抑え
GABA臭を無くしている(構成e)という特徴を有しているから、構成要
10 件Dを充足する。
一般論として、においの評価は、①化学成分分析による評価、②官能試験
による評価、③被告製品表示に基づく事実認定の3種類の評価方法が考えら
れるが、「臭味」とは不快なにおいを意味し、言葉自体に不快感という人間の
感覚的評価を含んだ言葉であることを考慮して評価方法を検討する必要があ
15 るところ、①については、単一のにおい物質であっても濃度により、また他
の物質との組合せにより、快・不快は変わることから、GABA臭味の有無
の評価に適さず、②及び③による評価が適切である。
そして、被告製品については、②の評価方法であるGABA茶官能試験
(甲12)によればギャバ臭味がなく、③の評価方法として、被告製品の説
20 明に「ギャバ臭味のない」旨の記載(甲8、10)があることから、被告製
品はギャバ臭味がない。
(被告の主張)
被告方法が、構成d及び構成eを有していることは、否認ないし争う。
被告製品は、GABA特有の香りを抑えているが、GABA臭はあり、被
25 告製品についてGABA臭がないことの立証はされていない。
茶の香りに特化した官能試験について客観的な基準は存在しないところ、
臭気判定士1名とパネリスト5名による官能評価試験によれば、被告製品は
一般的な市販のGABA茶と同様にギャバ臭があるという判定がされている
(乙32、33)。また、ギャバ臭味の主成分の一つは、パルミチン酸メチル
であるところ、被告製品の成分分析では、2.1ppmのパルミチン酸メチ
5 ルが検出されており、同じ成分分析で、嫌気処理をしていない通常の茶から
は0.8ppm、一般的な市販のGABA茶からは2.3ppmのパルミチ
ン酸メチルが検出されたこと(乙34、35)からすれば、被告製品はギャ
バ臭味の主成分が多い、すなわちギャバ臭味があるということができる。
以上によれば、被告方法は、構成要件Dを充足しない。
10 (4) 争点2-1(乙2発明に基づく進歩性欠如)について
(被告の主張)
被告の主張は、別紙【乙2発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりであり、
本件発明は、乙2発明に周知技術及び公知技術を適用することで容易に発明
をすることができた。
15 (原告の主張)
否認ないし争う。
原告の主張は、別紙【乙2発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりである。
(5) 争点2-2(乙6発明に基づく進歩性欠如)について
(被告の主張)
20 被告の主張は、別紙【乙6発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりであり、
本件発明は、乙6発明に周知技術及び公知技術を適用することで容易に発明
をすることができた。
(原告の主張)
否認ないし争う。
25 原告の主張は、別紙【乙6発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりである。
(6) 争点2-3(甲6発明に基づく進歩性欠如)について
(被告の主張)
被告の主張は、別紙【甲6発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりであり、
本件発明は、甲6発明に周知技術及び公知技術を適用することで容易に発明
をすることができた。
5 (原告の主張)
否認ないし争う。
原告の主張は、別紙【甲6発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりである。
(7) 争点2-4(発明未完成)について
(被告の主張)
10 被告の主張は、別紙【その他の無効理由】の【発明未完成】欄記載のとお
りであり、本件発明は、その目的とする技術効果を挙げることができる程度
に具体化され、客観化されているとはいえないから、未完成である。
(原告の主張)
否認ないし争う。
15 原告の主張は、別紙【その他の無効理由】の【発明未完成】欄記載のとお
りである。
(8) 争点2-5(実施可能要件違反)について
(被告の主張)
被告の主張は、別紙【その他の無効理由】の【実施可能要件違反】欄記載
20 のとおりであり、本件特許には特許法36条4項1号に違反した無効理由が
ある。
(原告の主張)
否認ないし争う。
原告の主張は、別紙【その他の無効理由】の【実施可能要件違反】欄記載
25 のとおりである。
(9) 争点2-6(サポート要件違反)について
(被告の主張)
被告の主張は、別紙【その他の無効理由】の【サポート要件違反】欄記載
のとおりであり、本件特許には特許法36条6項1号の規定に違反した無効
理由がある。
5 (原告の主張)
否認ないし争う。
原告の主張は、別紙【その他の無効理由】の【サポート要件違反】欄記載
のとおりである。
(10) 争点3(原告の損害)について
10 (原告の主張)
被告製品の販売額(税抜き)は、20g当たり1650円であり、20g
当たりの利益額は少なくとも1450円である。被告は、令和2年9月から
被告製品を少なくとも1000kg販売している。
したがって、被告は、被告製品の製造、販売により少なくとも7250万
15 円の利益を得ており、特許法102条2項により、同額は原告の損害と推定
される。また、弁護士費用として、上記金額の10%に当たる725万円に
つき、被告の不法行為と因果関係がある。
(被告の主張)
否認ないし争う。
20 第3 当裁判所の判断
1 争点1(構成要件Bの充足性)について
(1) 本件明細書の記載
ア 本件明細書(甲5)には、次の記載がある。
(ア) 技術分野
25 【0001】
本発明は、γ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法に係り、特に、従来
生じていたギャバ臭味のないγ−アミノ酪酸含量を多く含んだγ−アミノ
酪酸含量の高い茶の製造方法に関する。
(イ) 背景技術
【0002】
5 嫌気的な環境下に茶の生葉をおくと、グルタミン酸がγ−アミノ酪酸に
変化することを利用したγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造法がある(例
えば、特許文献参照)。このγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造法によっ
て得られたγ−アミノ酪酸は、血圧降下作用を有していることが知られて
いる。
10 (ウ) 先行技術文献
【0003】
【特許文献1】特許第30383736号公報
(エ) 発明が解決しようとする課題
【0004】
15 ところが、上記のγ−アミノ酪酸含量の高い茶は、ギャバ臭味といわれ
る一種独特な味と香りがあるため、普及していないのが現状である。
本件発明者は、鋭意試行錯誤を重ねた結果、茶葉の原材料に着目して、
従来生じていたギャバ臭味のないγ−アミノ酪酸含量を含んだγ−アミノ
酪酸含量の高い茶の製造方法を見出した。
20 【0005】
本発明は、原材料に着目してなされた従来生じていたギャバ臭味のな
いγ−アミノ酪酸含量を含んだγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法を
提供することを目的とする。
(オ) 課題を解決するための手段
25 【0007】
請求項1記載のγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法は、茶の木の新
芽の育成期間に日光を遮って育成した茶葉を嫌気処理した後、好気処理
する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行った前記茶葉を原料とし
て碾茶又は抹茶又は玉露に製造するものである。
(カ) 発明の効果
5 【0010】
本願発明のγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法によれば、茶葉を嫌
気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行
うγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法であって、原料である茶葉は、
茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って茶の葉を育成したものであるた
10 め、従来生じていたギャバ臭味のない通常の玉露、碾茶に遜色のない色、
味、香りを有するγ−アミノ酪酸含量を多く含んだγ−アミノ酪酸含量の
高い茶を製造することができる。
(キ) 発明を実施するための形態
【0011】
15 本発明の一実施例のγ−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法について説
明する。
γ−アミノ酪酸含量の高い茶は、通称、ギャバロン茶と称している。γ
−アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法は、茶葉を嫌気処理した後、好気処
理する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行うものである。
20 【0012】
原料である茶葉は、茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って茶の葉を
育成したものを使用する。
茶葉(生葉)の摘採後、茶葉(生葉)を嫌気的な環境下(酸素を遮断
する。)に置く。具体的には、茶葉(生葉)10Kgを袋に入れ、真空パ
25 ックする。真空パックは、袋内の空気を吸引して真空にしても良いし、
不活性ガス、例えば、窒素ガスを入れても良い。不活性ガスの場合、袋
内を膨らませて、袋内の茶葉を袋で押さえつけないようにして茶葉を痛
めないようにするのが良い。
また、真空パックの中が熱くなるので、茶葉(生葉)を外気温より低
くなるように、真空パックする前に茶葉(生葉)を冷蔵庫に入れて行う
5 と良い。
【0013】
嫌気的な環境下(酸素を遮断する。)の茶葉(生葉)は、常温下でも良
いが、望ましくは、外気温より低い処理温度5℃〜10℃になるように、
冷蔵庫内に、例えば、3〜4時間程度、保管する。
10 【0014】
保管後、袋を開封する。つまり、茶葉(生葉)を好気的な環境下(酸
素が存在する状態にする。)に置く。
開封後、袋内の茶葉(生葉)を少し撹拌し、1時間程度、静置する。
【0015】
15 静置後、茶葉(生葉)を上記と同様、嫌気的な環境下(酸素を遮断す
る。)に置く。具体的には、袋内の空気を吸引して、真空パックする。真
空パックは、袋内の空気を吸引して真空にしても良いし、不活性ガス、
例えば、窒素ガスを入れても良い。不活性ガスの場合、袋内を膨らませ
て、袋内の茶葉を袋で押さえつけないようにして茶葉を痛めないように
20 するのが良い。
また、真空パックの中が熱くなるので、茶葉(生葉)を外気温より低
くなるように、真空パックする前に茶葉(生葉)を冷蔵庫に入れて行う
と良い。
【0016】
25 嫌気的な環境下(酸素を遮断する。)の茶葉(生葉)は、上記と同様、
常温下でも良いが、望ましくは、外気温より低い処理温度5℃〜10℃
になるように、冷蔵庫内に、例えば、3〜4時間程度、保管する。
【0017】
保管後、袋を開封する。つまり、茶葉(生葉)を好気的な環境下(酸
素が存在する状態にする。)に置く。
5 開封後、袋内の茶葉(生葉)を少し撹拌し、1時間程度、静置する。
【0018】
静置後、茶葉(生葉)を上記と同様、嫌気的な環境下(酸素を遮断す
る。)に置く。具体的には、袋内の空気を吸引して、真空パックする。真
空パックは、袋内の空気を吸引して真空にしても良いし、不活性ガス、
10 例えば、窒素ガスを入れても良い。不活性ガスの場合、袋内を膨らませ
て、袋内の茶葉を袋で押さえつけないようにして茶葉を痛めないように
するのが良い。
また、真空パックの中が熱くなるので、茶葉(生葉)を外気温より低
くなるように、真空パックする前に冷蔵庫を冷蔵庫に入れて行うと良い。
15 【0019】
冷蔵庫内の茶葉(生葉)は、その後、通常の茶の製造、蒸煮、粗揉、
揉捻、中捻、精捻、乾燥してγ−アミノ酪酸含量の高い茶を得ることがで
きる。
下記に、上記γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法によって得られ
20 たγ―アミノ酪酸含量を示す。
1、品種 おくみどり
(中略)
茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って育成した茶葉を嫌気処理(1
回目)した後、好気処理(1回目)、その後、嫌気処理(2回目)した後、
25 好気処理(2回目)を行い、この好気処理(2回目)をした前記茶葉を
原料として、通常の玉露の加工(蒸し→粗揉→中揉→精揉→乾燥)を行
った。
(後略)
【0020】
上記実施例においては、茶葉(生葉)を嫌気的な環境下で処理した後、
5 好気的な環境下で処理し、また、嫌気的な環境下で処理した後、好気的
な環境下で処理して、嫌気と好気を繰り返したが、嫌気と好気の繰り返
し回数は、茶葉(生葉)の特性により任意に決定される。
本願発明にあっては、繰り返さなくても、少なくとも、茶葉(生葉)
を嫌気的な環境下で処理した後、好気的な環境下で処理すれば良い。
10 イ 上記アによれば、本件発明の技術的意義は次のとおりである。
本件発明は、嫌気的な環境下に茶の生葉を置くとグルタミン酸がγ-ア
ミノ酪酸に変化することを利用したγ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方
法に関するものであり、γ-アミノ酪酸含有量の高い茶は、ギャバ臭味と
いわれる独特な味と香りがあるという課題があったところ、これを解決す
15 るために、茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って茶の葉を育成し、茶葉
を嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返した後、嫌気処理を
行う方法で茶を製造することにより、ギャバ臭味のないγ-アミノ酪酸含
量の高い茶を製造することができるとの効果を奏する(【0002】、【00
04】、【0005】、【0007】、【0010】)。
20 (2) 構成要件Bにおける「嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返
した後、」の意味
ア 「嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返」すことの意味
(ア) 構成要件Bは、「嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返し
た後、」との文言であるところ、「交互」とは、その字義に照らし、種類
25 の違うものが互いに入れ替わることを意味するものであり、構成要件B
において入れ替え可能なものは、「嫌気処理」と「好気処理」しかないこ
とからすると、ここでの「交互」とは、上記二種の処理が互いに入れ替
わることを意味するものと解すべきことになる。また、ここでの「操作」
とは、「嫌気処理した後、好気処理する」という一連の操作を意味するも
のであり、「交互に繰り返」すことの対象が当該「操作」であることは、
5 その文言上明らかといえるから、これを「繰り返」すということは、嫌
気処理後に好気処理を行うという操作を繰り返す、すなわち、嫌気処理
及び好気処理をした後、更に引き続いて嫌気処理及び好気処理(必要に
応じて当該操作を繰り返す)を行うことを意味するものといえる。
また、本件明細書の記載を見ても、前記(1)ア(キ)のとおり、発明を実
10 施するための形態として、【0012】で1回目の嫌気処理が、【001
4】で1回目の好気処理が、【0015】で2回目の嫌気処理が、【00
17】で2回目の好気処理が行われており、これを踏まえて、【0020】
では、「上記実施例においては、・・・嫌気と好気を繰り返した」として、
嫌気処理と好気処理という一連の操作の繰返しを明らかにしている。さ
15 らに、同段落では、「本願発明にあっては、繰り返さなくても、少なくと
も、茶葉(生葉)を嫌気的な環境下で処理した後、好気的な環境下で処
理すれば良い。」として、少なくとも嫌気処理と好気処理を各1回行うだ
けの場合は、「繰り返さなくても」に該当する、すなわち、構成要件Bに
おける「繰り返し」には当たらないことを明らかにしているといえる
20 (なお、本件発明が明確に一連の操作の「繰り返し」を行うことを規定
しているにもかかわらず、これに齟齬する本件明細書【0020】後段
の記載をもって「繰り返さなくても…良い」と解することの根拠とする
ことは、記載要件上の疑義がないとはいえないが、ここではその点はひ
とまずおく。)。
25 そうすると、構成要件Bにおける「嫌気処理した後、好気処理をする
操作を交互に繰り返」すことというのは、嫌気処理した後、好気処理を
するだけ(嫌気処理と好気処理を各1回すること)では足りず、少なく
とも、これに加えて、引き続き嫌気処理及び好気処理という一連の操作
を行うことを要請するものと解するのが相当といえる。
なお、構成要件Bに続く構成要件Cは、構成要件Bにおける操作を交
5 互に繰り返した後、「嫌気処理を行った前記茶葉を原料として碾茶又は抹
茶又は玉露に製造する」としているところ、本件明細書における【00
07】、【0011】の記載に照らせば、構成要件Cは、構成要件Bの操
作の後、更に嫌気処理を行うことを意味するものと解することができる
から、構成要件Bにおける最後の操作が「好気処理」であることは、引
10 き続き構成要件Cにおいて嫌気処理が行われることとも整合するものと
いえる。
以上を総合すれば、構成要件Bは、少なくとも、「嫌気処理の後に、好
気処理を」行った上で、更に嫌気処理及び好気処理という一連の操作を
行うことを意味するものと解するのが相当であり、構成要件Bを充足す
15 るというためには、嫌気処理及び好気処理を、最低2回以上行う場合で
なければならないというべきである。
(イ) これに対し、原告は、構成要件Bにおいて予定された処理は、①嫌気
処理2回と好気処理1回、あるいは②嫌気処理と好気処理が1回ずつで
ある旨主張する。
20 しかし、原告の上記主張は、上記(ア)で説示したとおり、構成要件Bが
嫌気処理及び好気処理という一連の操作を繰り返すこととしていること
に反するものであり、また、構成要件Cが更なる嫌気処理を予定してい
ることとも整合せず、採用することができない。
また、原告の上記②の主張については、本件明細書の【0020】に
25 おける「本願発明にあっては、繰り返さなくても、少なくとも、茶葉
(生葉)を嫌気的な環境下で処理した後、好気的な環境下で処理すれば
良い。」との記載を根拠とするものであるが、上記(ア)で説示したとおり、
そもそも当該記載自体、嫌気処理と好気処理が各1回の場合は「繰り返
し」に当たらないことを前提とするものであるから、「操作を交互に繰り
返し」行うことを要求する構成要件Bを解釈する根拠となるものではな
5 く、その意味においても、原告の上記②の主張は採用することができな
い。
イ 好気処理の意味
次に、構成要件Bの好気処理については、その文言からは具体的にどの
ような処理を意味するか必ずしも明らかではないところ、上記(1)アのとお
10 り、本件明細書の【0014】及び【0017】には、好気処理について、
「好気的な環境下(酸素が存在する状態にする。)」に置くこと及び1時間
程度静置することが記載されているほか、実施例に「好気(回復)1時間」
との記載があることからすると、本件発明における好気処理は、茶葉を酸
素が存在する状態で1時間静置する作業が含まれるものであるということ
15 ができる。
また、証拠(甲6-1)によれば、本件明細書に先行文献として挙げら
れている甲6公報の【0011】には、好気処理について、「好気処理は、
茶葉を好気的状態におくことを意味し、具体的には、容器に充填した茶葉
を前記の如く嫌気処理した後、空気を送り込んで好気的条件に切り替えた
20 り、前述の嫌気処理の段階で不活性ガス雰囲気下に密封されていた容器を
開放し、茶葉を外気にふれるようにすればよい。好気処理を行うことによ
り、GABAの一部がGluに戻る他、茶葉中のGABA以外の成分がG
luに変換されるため、Gluの蓄積量が増える。通常、好気処理は10
分~3時間程度行えばよい。好気処理時間が下限未満であると、Gluの
25 蓄積量が十分でなく、その後に行う嫌気処理によるGABAの十分量の生
成を期待できない。一方、上限を超える長時間の処理を行うと、嫌気処理
で生成したGABAの減少量が増す上に、長時間の処理に見合う効果が得
られず好ましくない。(後略)」との記載があり、このような認識は、本件
発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)におけ
る技術常識であると認めることができる。
5 そうすると、好気処理とは、一般に、嫌気処理下の茶葉に空気を送り込
んで好気的条件に切り替えることや、密封されていた容器を開放し、茶葉
を外気に触れるようにするなどして、茶葉を好気的状態に置くことを意味
し、その処理の時間が10分未満であると、GABAの十分な量の生成が
期待できず、3時間を超える長時間の処理を行うと、嫌気処理で生成した
10 GABAの減少量が増す上に、長時間の処理に見合う効果が得られず好ま
しくないことが技術常識であると認めることができ、本件発明における好
気処理、すなわち、酸素が存在する状態での茶葉の静置時間についても、
10分から3時間の幅の中で行うことを意味するものと解するのが相当で
ある。
15 (3) 構成要件Bの充足性の有無
以上を前提に、被告方法の構成要件Bの充足性について検討する。
ア 証拠(甲46、乙10)及び弁論の全趣旨によれば、被告方法における
具体的な作業について、次の事実が認められる。
(ア) 被告方法は、工場に搬入された生葉を計量した後、嫌気処理として、
20 袋詰めをして窒素ガスで充填し、これを約8時間静置する。
(イ) 静置後の具体的な作業内容は次のとおりである。
① 窒素ガスで充填された袋を開封し、生葉をコンベアに投入し、計量
する
② 切り葉等を除去する【篩】
25 ③ 蒸し機で30秒程度蒸す【蒸熱】
④ 散茶機において、強い風で蒸し葉を吹き上げ、拡散させながら冷却
する【散茶】
⑤ 碾茶炉で乾燥させる【乾燥(碾茶炉)】
⑥ 葉と茎(葉脈を含む)を分ける【つる切り】
⑦ 風力により、茎と葉を選別して分離する【風力選別】
5 ⑧ 乾燥させる【乾燥】
⑨ 葉を切断して細かくする【切断】
⑩ 再度風力により、茎と葉を分離する【風力選別】
⑪ 袋詰めして窒素ガスで充填する
⑫ 冷蔵保存
10 イ ところで、特許請求の範囲における「嫌気処理した後、好気処理する操
作を交互に繰り返した後、嫌気処理を行った前記茶葉を原料として碾茶又
は抹茶又は玉露に製造することを特徴とする」(構成要件B及びC)との文
言からすれば、構成要件Bにおける嫌気処理及び好気処理は、構成要件C
の「碾茶又は抹茶又は玉露に製造する」工程(以下「碾茶等製造工程」と
15 いう。)の前に行われる工程であると認められる。
そこで、碾茶等製造工程がどのようなものであるかについてみると、証
拠(乙4)によれば、一般的な製茶の工程は、収穫された茶葉について、
① 蒸す(蒸して酵素の働きを止める。「殺青」と呼ばれる。)
② 粗揉機で熱風を送りながら揉む
20 ③ 揉捻機で茶葉に圧力を加え、全体の水分量を均一にする
④ 中揉機で再度乾燥させる
⑤ 精揉機で茶の形を作る
⑥ 乾燥機で乾燥させる
という過程を経るものであると認められるほか、上記(1)のとおり、本件明
25 細書の【0019】にも、最後の嫌気処理後の工程として「通常の茶の製
造、蒸煮、粗揉、揉捻、中捻、精捻、乾燥して」として同旨の記載があり、
実施例においても、嫌気処理及び好気処理の後の工程として、「通常の玉露
の加工(蒸し→粗揉→中揉→精揉→乾燥)」として同旨の記載があることが
認められる。そして、被告方法は、玉露ではなく抹茶の製造に係る方法で
あるところ、証拠(甲13、21、乙7、14)及び弁論の全趣旨によれ
5 ば、碾茶(これを石臼などで粉末にすることにより抹茶となる)の製造工
程も、上記一般的な製茶の工程で見られる茶葉を揉む作業が行われないだ
けで、茶葉を蒸すことから始まり、その後乾燥する工程は同じであると認
められる。
以上によれば、構成要件Bにおける嫌気処理及び好気処理については、
10 碾茶等の製造工程における茶葉を蒸す作業以前の段階において行われるも
のを指すものと解するのが相当である。
そこで、これを被告方法についてみると、被告方法においては、上記ア
のとおり、嫌気処理を行い8時間静置した後、蒸熱、散茶、碾茶炉での乾
燥の工程を経て、仕上げ加工の工程が行われており、原告が嫌気処理であ
15 ると主張する上記ア(イ)⑪の窒素ガス充填は、茶葉を蒸す作業に相当する
「蒸熱」(本件明細書【0019】における「蒸煮」)の工程よりも後に行
われていることが認められる。
そうすると、上記窒素ガス充填の処理は構成要件Bの嫌気処理に該当す
るものとはいえず、被告方法において、構成要件Bの嫌気処理に相当する
20 ものは、工場搬入後に、茶葉を袋詰し、窒素ガスで充填し、約8時間静置
する工程の1回のみであるから、被告方法が構成要件Bを充足すると認め
ることはできない。
ウ また、被告方法において、嫌気処理を施され8時間静置された茶葉は、
上記ア(イ)①のとおり、その後開封され大気に晒されるものの、証拠(甲4
25 6)によれば、開封後、特段静置されることなく次の作業が開始され、最
も早いもので、開封から5分以内に蒸熱の工程が行われていることが認め
られるから、被告方法には、構成要件Bの好気処理に該当する工程がある
と認めることもできない。
(4) 以上のとおり、被告方法においては、構成要件Bにつき、1回の嫌気処理
しか行われていないから、被告方法は構成要件Bを充足しない。
5 なお、仮に、構成要件Bにつき、原告の主張するように、嫌気処理2回と
好気処理1回、あるいは嫌気処理と好気処理が1回ずつであると解したとし
ても、上述のとおり、被告方法では1回の嫌気処理しか行われていないから、
被告方法が構成要件Bを充足すると認めることはできない。
2 小括
10 以上のとおり、被告方法は本件発明の構成要件Bを充足せず、被告方法の使
用及び被告方法により製造される被告製品の譲渡等は本件特許権を侵害しない
から、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由
がない。
第4 結論
15 以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すること
として、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
20 裁判長裁判官
澁 谷 勝 海
25 裁判官
本 井 修 平
裁判官
塚 田 久 美 子
(別紙)
目録
1 GABA抹茶の製造方法
5 茶の木の新芽の育成期間に日光を遮って育成した一番茶の茶葉を使用し、
嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返す工程を経て、
嫌気処理を行った茶葉を原料として抹茶に製造し、
当該抹茶のGABA(γ-アミノ酪酸)の含量が高く、
GABA特有の香りを抑えGABA臭を無くしている。
2 商品名「GABA抹茶」(上記1記載のGABA抹茶の製造方法によって製造さ
れた茶)
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