令和7(行ケ)10117審決取消請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年3月23日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告有限会社河野牛豚肉店 被告特許庁長官
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| 法令 |
商標権
商標法3条1項3号8回 商標法3条1項6号4回 商標法4条1項16号2回
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| キーワード |
審決14回 拒絶査定不服審判1回
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| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
1 本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決
(以下「本件審決」という。)の取消しを求める事案であり、争点は、本件審
決の商標法3条1項3号、同項6号、同法4条1項16号各該当性に係る判断
の当否である。 |
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判決文
令和8年3月23日判決言渡
令和7年(行ケ)第10117号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年2月9日
判 決
原 告 有限会社河野牛豚肉店
同訴訟代理人弁護士 児 島 健 介
同 本 田 幸 充
10 同訴訟代理人弁理士 奥 町 哲 行
被 告 特許庁長官
同 指 定 代 理 人 吉 沢 恵 美 子
同 大 島 康 浩
15 同 阿 曾 裕 樹
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 第1 請求
特許庁が不服2025-5645号事件について令和7年10月15日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決
25 (以下「本件審決」という。)の取消しを求める事案であり、争点は、本件審
決の商標法3条1項3号、同項6号、同法4条1項16号各該当性に係る判断
の当否である。
2 特許庁における手続の経過等
⑴ 原告は、令和6年4月23日、「かまくら牛」の文字を標準文字で表して
成り、指定商品及び指定役務を、第29類の区分に属する「牛肉、銘柄黒毛
5 和牛肉、黒毛和牛肉、国産牛肉、輸入牛肉、牛肉を使用した肉製品、牛肉製
品を主材とする惣菜、牛脂又は牛肉を用いたカレー・シチュー・どんぶり・
スープのもと・お茶漬けのり・ふりかけ又はなめ物、食肉、食肉を使用した
肉製品、加工食品」、及び、第35類の区分に属する「食肉及び牛肉の小売
又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、加工食料品の小
10 売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とする商標
(以下「本願商標」という。)について、商標登録出願(商願2024-4
3386)をし、同年12月23日、手続補正書を提出して、本願商標の指
定商品及び指定役務を、第29類の区分に属する「牛肉、銘柄黒毛和牛肉、
黒毛和牛肉、国産牛肉、輸入牛肉、牛肉を使用した肉製品、牛肉製品を主材
15 とする惣菜、牛脂又は牛肉を用いたカレー・シチュー・どんぶり・スープの
もと・お茶漬けのり・ふりかけ又はなめ物、食肉、食肉を使用した肉製品」、
及び、第35類の区分に属する「食肉及び牛肉の小売又は卸売の業務におい
て行われる顧客に対する便益の提供、加工食料品の小売又は卸売の業務にお
いて行われる顧客に対する便益の提供」に補正した(乙1、2)。
20 ⑵ 原告は、令和7年1月9日付けで拒絶査定を受けたことから、同年4月1
4日、拒絶査定不服審判の請求をし、特許庁は、これを不服2025-56
45号事件として審理した。
⑶ 特許庁は、令和7年10月15日、上記請求について、「本件審判の請求
は、成り立たない」との本件審決をし、その謄本は、同月28日、原告に送
25 達された。
⑷ 原告は、令和7年11月25日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める
本件訴訟を提起した。
3 本件審決の理由の要旨
⑴ 本願商標は、「かまくら牛」の文字を標準文字で表して成るところ、その
構成中の「かまくら」の文字は、「神奈川県南東部、相模湾に臨む市。鎌倉
5 幕府跡・鶴岡八幡宮・建長寺・円覚寺・長谷の大仏・長谷観音などの史跡・
社寺に富む」との意味を有する「鎌倉」の漢字を平仮名表記した語と看取さ
れ、「牛」の文字は、「うしの肉」との意味を有する語であるから、本願商
標は、構成文字全体として「神奈川県鎌倉市産の牛肉」との意味合いが容易
に理解される。
10 また、食肉を取扱う業界において、地名を冠して商品の産地を表示するこ
とは周知の事実であり、その中には、産地部分を平仮名で表記する例も相当
数確認し得る。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者
は、その商品が「神奈川県鎌倉市産の牛肉(を使用した商品)」であること
15 を認識するにすぎず、本願商標は、単に商品の品質等を普通に用いられる方
法で表示するものと判断される。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、上記文字に相応
する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそ
れがあるから、同法4条1項16号に該当する。
20 ⑵ 本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者は、その役務
の取扱商品が「神奈川県鎌倉市産の牛肉(を使用した商品)」であり、当該
小売等役務の取扱商品の品質等を表示したものと理解するにとどまる。
そうすると、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認
識することができないものであるから、商標法3条1項6号に該当し、「神
25 奈川県鎌倉市産の牛肉(を使用した商品)」以外の商品に係る小売等役務に
使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法4条
1項16号に該当する。
第3 審決取消事由に関する当事者の主張
1 原告の主張
⑴ 本願商標の構成中の「かまくら」の文字を使用した物品や役務は、食肉等
5 の商品に限られない。そして、次のとおりの当該文字の特殊性や取引の実情
を踏まえると、平仮名表記の「かまくら」の文字部分と、「牛」の文字部分
が結合して成る本願商標「かまくら牛」から、直ちに「神奈川県鎌倉市産の
牛肉」との意味合いが生ずるものではない。
ア 「かまくら」の文字は、第一義的には「秋田県横手地方などでの小正月
10 の行事、水神を祭り…鳥追いの歌を歌うのに用いる、子どもたちが雪で作
る半球型の室」との意味を有する語であり、本願商標の構成中の「かまく
ら」の文字部分は、「神奈川県鎌倉市」を想起させるよりもむしろ、「秋
田県横手地方などでの小正月の行事。雪で作った半球型の室」を想起させ
る。
15 イ 神奈川県鎌倉市の物品や役務の提供者は、平仮名表記の「かまくら」の
文字が、本来の意味である「東北地方のかまくら」と紛らわしいことから、
鎌倉市産の物品や役務を表する場合には、漢字表記の「鎌倉」の文字を使
用し、平仮名表記の「かまくら」の文字を使用するのを避ける傾向がある
のに対し、東北地方をはじめとする鎌倉市以外の物品や役務の提供者は、
20 平仮名表記の「かまくら」の文字を積極的に使用する傾向がある。そして、
実際に、「かまくら」の文字と、「めるへん」、「ロマン」、「サブレ」、
「祭」等の一般名称や一般的な図形を結合させた商標は、拒絶をされるこ
となく、商標登録を受けている。
ウ 「牛」の文字も、第一義的には「ウシ科の一群の哺乳類の総称」との意
25 味を有する多義的な語である。
⑵ 上記⑴の事情に加え、地名を冠した商品のうち、その産地が平仮名表記と
なっているものは極めて少ないことや、東北地方の事業者が、ウェブサイト
において、「かまくら」の文字を使用した牛肉に関する商品を販売している
ことをも考慮すると、本願商標を食肉に関する商品又は役務に使用しても、
取引者や需要者において、これが「神奈川県鎌倉産の牛肉」の意味であり、
5 商品の品質や役務の質を表示するものと認識することはない。
また、本願商標は、「かまくら牛」という連続一体化した固有の語を表し
て成るものであり、自他商品役務識別標識として十分機能し得るものである。
⑶ 以上によれば、本願商標は、これが「神奈川県鎌倉市産の牛肉(を使用し
た商品)」以外の商品や当該商品に係る役務に使用されたとしても、商品の
10 品質や役務の質の誤認を生じさせるおそれはない。
⑷ 本願商標は、商標法3条1項3号、同項6号に該当せず、同法4条1項1
6号にも該当しない。
2 被告の主張
⑴ 本願商標は「かまくら牛」の文字を標準文字で表して成るところ、その構
15 成中の「かまくら」の文字部分は、「神奈川県南東部、相模湾に臨む市。鎌
倉幕府跡・鶴岡八幡宮・建長寺・円覚寺・長谷の大仏・長谷観音などの史跡
・社寺に富む」との意味を有する「鎌倉」の文字の平仮名表記に相当する語
であり、「牛」の文字部分は、「うし。うしの肉」との意味を有する語であ
る。
20 鎌倉地域においては、「鎌倉」ないし「かまくら」の語を冠した多様な商
品が広く生産され、販売されている。また、近年、いわゆる「地域ブランド」
を構築する取組として、地域と商品、役務を結合させ、一体化した名称とす
ることにより、商品や役務ひいては地域自体の価値を向上させる取組が進め
られ、食肉を取扱う業界においても、商品の産地を冠して「〇〇(和)牛」
25 と表示することは、極めて一般的に行われている。
⑵ 上記⑴の本願商標の構成文字の語義及び取引の実情を踏まえると、本願商
標は、これがその指定商品及び指定役務に使用された場合、取引者や需要者
によって「鎌倉産の牛肉」程度の意味合い、すなわち、商品や小売等の役務
の取扱商品の産地又は品質を表示記述する標章であると一般に認識されるも
のといえ、同種商品の取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲
5 するもので、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとと
もに、一般的に使用される標章であって、自他商品役務の識別力を欠く。
⑶ 本願商標は、その指定商品について、商品の産地又は品質を普通に用いら
れる方法で表示する標章であるから、商標法3条1項3号に該当し、また、
「鎌倉産の牛肉」に相応する商品以外の商品に使用するときは、本願商標が
10 表示している商品とは特性が異なり、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあ
るから、同法4条1項16号に該当する。
そして、本願商標は、その指定役務について、小売等役務の取扱商品の産
地又は品質を表示するにすぎず、自他役務の識別力を欠き、商標としての機
能を果たし得ないものであるから、需要者が何人かの業務に係る役務である
15 かを認識することができない標章として、商標法3条1項6号に該当し、ま
た、「鎌倉産の牛肉」を取扱商品とする役務以外の役務に使用するときは、
本願商標が表示している小売等役務の取扱商品とは特性が異なり、役務の質
の誤認を生ずるおそれがあるから、同法4条1項16号に該当する。
第4 当裁判所の判断
20 1 商標法3条1項3号該当性
⑴ 商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、
用途、形状…、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若
しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用
途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通
25 に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については、商標登録
を受けることができない旨を規定する。これは、このような商標は、商品の
産地、品質その他の特徴、又は、役務の質、提供の用に供する物その他の特
徴を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もそ
の使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公
益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、
5 多くの場合、自他商品役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得な
いものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三
小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。
したがって、本願商標が、その指定商品との関係で、商標法3条1項3号
に該当するか否かは、本件審決時(令和7年10月15日)において、これ
10 が当該指定商品に使用された場合に、取引者や需要者によって、商品の産地、
品質その他の特徴を表示記述するものとして一般に認識されるものであった
か否かにより判断すべきである。
⑵ これを本件について見ると、本願商標は「かまくら牛」の文字を標準文字
で表し、平仮名表記の「かまくら」の文字部分と、漢字表記の「牛」の文字
15 部分が結合して成るものである。そして、本願商標の構成中、「かまくら」
の文字部分からは、「かまくら」との称呼と、「(秋田県横手地方などで)
小正月の行事。子供たちが雪で半球形の室を作り、水神を祭り…その前で火
を焚いて鳥追いの歌を歌う。また、それに用いる室(雪で作った半球形の
室)」、又は「神奈川県南東部、相模湾に臨む市(神奈川県鎌倉市)」との
20 観念が生じ、「牛」の文字部分からは、「うし」又は「ぎゅう」との称呼と、
「ウシ目(偶蹄類)ウシ科の一群の哺乳類の総称」又は「うし。うしの肉」
との観念が生ずる(甲1、46、乙3、4)。
⑶ また、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、本願商標の構成文字につい
て、次の各事実が認められる。
25 ア 鎌倉商工会議所の鎌倉産品推奨委員会が「鎌倉らしさを感じさせる商品」
として認定した「かまくら推奨品」には、「鎌倉コロッケ」、「鎌倉スペ
アリブ」、「鎌倉とんむすび」、「乾燥鎌倉きくらげ」、「鎌倉せんべ
い」、「鎌倉どら焼」、「鎌倉しふぉん」、「鎌倉どらやき」、「鎌倉し
らすパイ」、「鎌倉ビール」など、「神奈川県鎌倉市」との意味を有する
漢字表記の「鎌倉」の語と食品の一般的な名称を結合して成る標章を使用
5 する商品が多数含まれる(甲5~7、乙6~9)。
他方、「かまくら梅酒」、「かまくらシラス」、「かまくら野菜」等、
「神奈川県鎌倉市」との意味を有すると理解される平仮名表記の「かまく
ら」の語と食品の一般的な名称を結合させて成る標章を使用する商品も相
当数存在する(乙10~12)。
10 イ 食肉総合卸業者である「秋田かまくらミート」の運営するウェブサイト
(「横手のまちのお肉屋さん かまくらネット AKITA KAMAKURA MEAT」)
においては、「秋田牛」、「由利牛」、「みなせ牛」、「横手牛」等の
「秋田で飼育されている…『こだわり』のお肉」が販売されている(甲2
8、29)。
15 また、「かまくらもなか」、「かまくらサブレ」など、「雪で作った半
球型の室」との意味を有すると理解される平仮名表記の「かまくら」の語
と食品の一般的な名称を結合させて成る標章を使用する商品も相当数存在
する(甲32、35、36)。
ウ 遅くとも平成17年頃以降、地域の特徴的な商品や役務に地域名を付加
20 し一体的な名称とすることによって、「地域ブランド」を構築し、商品や
役務ひいては地域自体の価値の向上、他地域との差別化を図ろうとする取
組が進められ、牛肉については、「びえい牛」、「しほろ牛」、「いけだ
牛」、「白老牛」、「前沢牛」、「いわて牛」、「仙台牛」、「秋田牛」、
「米沢牛」、「山形牛」、「福島牛」、「群馬牛」、「深谷牛」、「葉山
25 牛」、「ちがさき牛」、「とやま牛」、「あいち牛」、「田原牛」、「あ
つみ牛」、「松阪牛」、「伊賀牛」「三田牛」、「鳥取牛」、「ひろしま
牛」、「小倉牛」、「福岡牛」、「佐賀牛」、「宮崎牛」、「石垣牛」な
ど、産地である地域名と「牛」の語を結合させて成る標章が、全国的かつ
一般的に使用されている(甲49、乙14~28、39~41)。
⑷ 本願商標の指定商品の取引者及び需要者は、一般の消費者であると認めら
5 れる。
⑸ア 以上を踏まえて検討すると、前記⑵のとおり、本願商標の構成中、「か
まくら」の文字部分からは、「かまくら」との称呼と、「雪で作った半球
形の室」又は「神奈川県鎌倉市」との観念が生じ、「牛」の文字部分から
は、「うし」又は「ぎゅう」との称呼と、「ウシ目(偶蹄類)ウシ科の一
10 群の哺乳類の総称」又は「うし。うしの肉」との観念が生ずる。
そして、① 「神奈川県鎌倉市」との意味を有する漢字表記の「鎌倉」
の語と食品の一般的な名称を結合して成る標章を使用する商品は多数存在
し、「神奈川県鎌倉市」との意味を有する平仮名表記の「かまくら」の語
と食品の一般的な名称を結合させて成る標章を使用する商品も相当数存在
15 すること、② 遅くとも平成17年頃以降、地域の特徴的な商品や役務に
地域名を付加し一体的な名称とすることによって、「地域ブランド」を構
築し、商品や役務ひいては地域自体の価値の向上、他地域との差別化を図
ろうとする取組が進められ、牛肉については、産地である地域名と「牛」
の語を結合させて成る標章が、全国的かつ一般的に使用されていることは、
20 前記⑶のとおりであり、かかる本願商標の構成文字の語義並びにその指定
商品の取引の実情に照らすと、本願商標の構成中、「かまくら」の文字部
分からは「雪で作った半球形の室」との、「牛」の文字部分からは「ウシ
目(偶蹄類)ウシ科の一群の哺乳類の総称」との観念も生ずることや(も
っとも、「雪で作った半球形の室」との意味を有する「かまくら」の語と、
25 「牛」の語の観念上のつながりは希薄である。)、「雪で作った半球型の
室」との意味を有する平仮名表記の「かまくら」の語と食品の一般的な名
称を結合させて成る標章を使用する商品が相当数存在することを考慮して
も、本願商標「かまくら牛」は、本件審決時(令和7年10月15日)に
おいて、これがその指定商品又は指定役務に使用された場合に、取引者や
需要者によって、「産地を神奈川県鎌倉市とする牛肉」程度の意味合いで、
5 商品(取扱商品)の産地、品質その他の特徴、又は、役務の質、提供の用
に供する物その他の特徴を表示記述するものとして一般に認識されるもの
であったと認められる。
そうすると、本願商標は、その商品の産地、品質その他の特徴を普通に
用いられる方法で表示記述する標章のみから成るものであって、取引に際
10 し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人
によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使
用される標章であって、自他商品役務の識別力を欠き、商標としての機能
を果し得ないものというべきである。
イ この点、原告は、神奈川県鎌倉市の物品、役務の提供者は、鎌倉市産の
15 物品や役務を表する場合には、漢字表記の「鎌倉」の文字を使用し、平仮
名表記の「かまくら」の文字を使用するのを避ける傾向がある旨の主張を
するが、かかる事実を認めるに足りる証拠はない。
また、原告は、地名を冠した商品のうち、その産地が平仮名表記となっ
ているものは極めて少ない旨の主張もするが、前記⑶のとおり、地名を冠
20 した商品のうち、その産地が平仮名表記となっているものは極めて少ない
とまでいうのは困難である。
⑹ 以上によれば、本願商標は商標法3条1項3号に該当すると認められる。
2 商標法3条1項6号該当性
本願商標が、その指定役務との関係で、商標法3条1項6号(「前各号に掲
25 げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る…役務であることを認識するこ
とができない商標」)に該当するか否かについて検討するに、本願商標の指定
役務の需要者は一般の消費者であると認められる。また、本願商標「かまくら
牛」は、本件審決時(令和7年10月15日)において、これがその指定商品
又は指定役務に使用された場合に、需要者によって、「産地を神奈川県鎌倉市
とする牛肉」程度の意味合いで、商品(取扱商品)の産地、品質その他の特徴、
5 又は、役務の質、提供の用に供する物その他の特徴を表示記述するものとして
一般に認識されるものであったこと、本願商標は、一般的に使用される標章で
あって、自他商品役務の識別力を欠き、商標としての機能を果し得ないもので
あることは、前記1⑸アのとおりである。
そうすると、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認
10 識することができない商標というべきであり、その指定役務との関係で、商標
法3条1項6号に該当すると認められる。
3 商標法4条1項16号該当性
前記1、2によれば、本願商標をその指定商品又は指定役務に使用すると、
これに接する取引者や需要者は、「産地を神奈川県鎌倉市とする牛肉(を使用
15 した商品又はこれを取扱商品とする小売等の役務)」との商品の品質又は役務
の質を表示したものと理解することになるから、これを「産地を神奈川県鎌倉
市とする牛肉(を使用した商品又はこれを取扱商品とする小売等役務)」以外
の商品又は役務に使用すると、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれ
があるといえる。
20 したがって、本願商標は商標法4条1項16号にも該当すると認められる。
第5 結論
以上によれば、本件審決の商標法3条1項3号、同項6号、同法4条1項1
6号各該当性に係る判断に誤りはなく、原告の主張する審決取消事由は認めら
れない。
25 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文の
とおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
5 裁判長裁判官
森 冨 義 明
10 裁判官
菊 池 絵 理
15 裁判官
頼 晋 一
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