令和7(ワ)1734債務不存在確認等請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 大阪地方裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和8年3月23日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告専念寺
|
| 法令 |
著作権
著作権法2条1項1号1回
|
| キーワード |
侵害45回 損害賠償6回 差止4回
|
| 主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
| 事件の概要 |
1 本判決で用いる呼称(略語)
(1) K社:株式会社KADOKAWA
(2) P社:株式会社PHP研究所
(3) 総本山:融通念佛宗総本山大念佛寺
(4) 原告書籍:K社より刊行された「しんどい心が軽くなる 今日のネコさん
の教え」と題する書籍(後に絶版)
(5) 原告作品:原告書籍中の別紙「書籍記事目録」記載の各作品及び別紙「投
稿記事目録」記載の各作品の総称
(6) 被告作品:別紙「被告作品目録」記載の各作品の総称(個々の作品は、目
録の番号に対応して「被告作品1」等)
(7) 本件各投稿:別紙「投稿記事目録」記載の各投稿の総称(個々の投稿は、
目録の番号に対応して「本件投稿1」等)
(8) 本件各書籍記事:別紙「書籍記事目録」記載の各記事の総称(個々の記事
は、目録の番号に対応して「書籍記事1」等)
(9) 本件告知行為1:令和6年4月16日頃から同年9月20日までにされた |
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判決文
令和8年3月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和7年(ワ)第1734号 債務不存在確認等請求事件
口頭弁論終結日 令和8年1月22日
判 決
原告 専念寺
(以下「原告寺」)
代表者代表役員
10 原告
(以下「原告a」)
原告ら訴訟代理人弁護士 小林允紀
原告ら訴訟復代理人弁護士 横田真穂
15 被告
被告訴訟代理人弁護士 河野冬樹
主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
20 事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 原告aの被告に対する別紙債務目録記載の各債務が存在しないことを確認す
る。
2 被告は、第三者に対し、以下の事実を告知してはならない。
25 (1) 別紙投稿記事目録記載の各投稿および別紙書籍記事目録記載の各記事が、
別紙被告作品目録の各著作物の著作権を侵害している旨
(2) 原告aが別紙SNS等アカウント目録記載のアカウントを提供する各サー
ビスの利用規約に違反した旨
(3) 原告aが被告の名誉を毀損した旨
(4) 原告aが被告の不当利得返還請求やコンテンツの差し止めに応じない旨
5 (5) 原告aが一方的に話し合いをやめ、適切な対応や謝罪をしない旨
3 被告は、原告aに対し、220万円及びこれに対する令和7年3月22日か
ら支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
4 被告は、原告寺に対し、220万円及びこれに対する令和7年3月22日か
ら支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
10 第2 事案の概要
1 本判決で用いる呼称(略語)
(1) K社:株式会社KADOKAWA
(2) P社:株式会社PHP研究所
(3) 総本山:融通念佛宗総本山大念佛寺
15 (4) 原告書籍:K社より刊行された「しんどい心が軽くなる 今日のネコさん
の教え」と題する書籍(後に絶版)
(5) 原告作品:原告書籍中の別紙「書籍記事目録」記載の各作品及び別紙「投
稿記事目録」記載の各作品の総称
(6) 被告作品:別紙「被告作品目録」記載の各作品の総称(個々の作品は、目
20 録の番号に対応して「被告作品1」等)
(7) 本件各投稿:別紙「投稿記事目録」記載の各投稿の総称(個々の投稿は、
目録の番号に対応して「本件投稿1」等)
(8) 本件各書籍記事:別紙「書籍記事目録」記載の各記事の総称(個々の記事
は、目録の番号に対応して「書籍記事1」等)
25 (9) 本件告知行為1:令和6年4月16日頃から同年9月20日までにされた
原被告間の交渉過程で、被告が交渉窓口であるP社に原告らに関する情報を
伝達した行為
(10) 本件告知行為2:令和6年10月2日頃、被告が総本山のホームページの
お問い合わせサイトに原告らに関する事実を記入して送信した行為
(11) SNS等:ソーシャル・ネットワーキング・サービス。ないし、これと同
5 様の機能を有するインターネット上のサービス
(12) 不競法:不正競争防止法
2 原告の請求
(1) 原告aの請求
原告aによる原告作品の投稿等が著作権侵害である旨を含む本件告知行為
10 1、同2が不正競争(不競法2条1項21号)に該当することを前提とする、
ア 上記著作権侵害に係る不法行為に基づく損害賠償債務及び不当利得返還
債務が存在しないことの確認請求(第1の1)
イ 上記著作権侵害がある旨等の告知の差止請求(第1の2)
ウ 不競法4条に基づく損害賠償金220万円及び不正競争の後日から支払
15 済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払請求
(第1の3)
(2) 原告寺の請求
本件告知行為1、同2が原告寺に対する不正競争に該当することを前提と
する、不競法4条に基づく損害賠償金220万円及び不正競争の後日から支
20 払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払請求
(第1の4)
3 前提事実
(1) 当事者等
ア 原告寺は、包括団体を宗教法人融通念佛宗とし、融通念佛宗の教義をひ
25 ろめ儀式行事業を行うこと等を目的とする宗教法人である(甲1)。
イ 原告aは、原告寺の代表役員であり、原告寺の住職の地位にある者であ
る(甲1)。
ウ 被告は、SNS等を利用して被告作品等を投稿したり、書籍を出版した
りしている。
(2) 原告書籍の出版及び絶版等
5 ア 原告aは、SNS等において、
「専念寺/ネコ坊主」とのアカウント名で
短文等を投稿していたところ、令和3年6月以降、本件各投稿を行った。
イ 原告aは、令和5年11月2日、K社から上記投稿に係る短文等を素材
とした原告書籍を出版した。原告書籍には、本件各書籍記事が含まれてい
た。
10 ウ 被告は、同月6日頃、K社に対し、原告書籍が被告の著作権を侵害して
いる旨を連絡した。K社は、原告書籍掲載の文章の一部が被告の著作権を
侵害すると判断し、原告書籍を絶版とし、同月30日、自社ウェブサイト
にお詫びの記事を掲載した。
(3) 原告aと被告の交渉経緯等(甲4~27)
15 原告aは、令和6年1月頃、本件に関する原告aの見解を記した文書を、
P社を介して被告に送付したが、被告の納得を得ることはできなかったため、
同年4月16日以降は、被告との和解交渉を代理人弁護士(本件の原告ら訴
訟代理人の一人)に委任した上、被告の交渉窓口となったP社を介して交渉
を続け、合意書案が作成されそれに盛り込む内容の調整にまでは至った。
20 しかし、原告aは、同年9月10日付け文書により、従前の合意書案をす
べて撤回する旨被告に通知し、以後、合意に向けた活動がされることはなか
った。
(4) 本件告知行為2(甲5)
被告は、同年10月2日頃、総本山に対し、問い合わせフォームを利用し
25 て、原告aが被告の著作権を侵害したこと等を連絡した。
4 争点
(1) 本件告知行為1が虚偽事実の告知として不正競争となるか(争点1)
(2) 本件告知行為2が虚偽事実の告知として不正競争となるか(争点2)
(3) 被告の過失(争点3)
(4) 原告らの被った損害の有無及び額(争点4)
5 第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件告知行為1が虚偽事実の告知として不正競争となるか)につい
て
【原告らの主張】
(1) 本件告知行為1の内容
10 被告は、令和6年4月及び5月、P社に、以下の内容をメールで伝えた。
ア 原告aが、原告書籍及びSNS等で被告の作品の著作権を侵害(盗用)
したこと
イ 原告aが、SNS等の更新によって、利用規約違反を継続したこと
ウ 原告aがSNS等の運用を継続することはSNS等の利用規約が禁止す
15 る著作権侵害にあたること
(2) 競争関係にあること
不競法2条1項21号の適用の前提となる「競争関係」は、広く顧客獲得
のため競争関係にあれば足りる。
原告aは、原告寺の住職であってSNS等を活用するインフルエンサーで
20 あり、書籍出版の実績のある作家である。原告寺は、宗教法人ではあるが営
利活動を行うこともあり、書籍出版実績のあるタレントも招いたこともある。
一方で、被告は、SNS等を活用するインフルエンサーであり、書籍出版の
実績を有する作家である。
そうすると、原告らと被告は、顧客獲得のための競争関係に立つから、
「競
25 争関係」にある。
(3) 告知内容が虚偽であること
ア 著作物でないこと
被告作品は、いずれも短文であって創作性を欠くから、著作物に当たら
ない。
イ 複製又は翻案に当たらないこと
5 原告作品は、文章のみならず写真や筆文字も含めた作品全体を一つのま
とまりの著作物として判断すべきである。原告作品には、被告作品にはな
い創作的な表現(猫の写真や筆文字等)があるから、原告作品は被告作品
の複製には当たらない。また、別紙対比表のとおり、原告作品と被告作品
には共通部分はあるが、当該共通部分は創作性のある表現ではなく、仮に
10 創作性のある表現であるとしても、全体を観察した場合、当該創作性のあ
る表現部分は埋没しており、原告作品に接する者が被告作品の本質的特徴
を直接感得することはできないから、原告作品は被告作品の翻案には当た
らない。
ウ よって、原告作品に関して原告aに著作権侵害行為は成立せず、原告a
15 にSNS等の利用規約違反はないから、本件告知行為1の内容はいずれも
虚偽である。
(4) 営業上の利益の侵害
被告の告知によって、告知を受けたP社が、原告寺の住職である原告aが
著作物を盗用して収益を上げる者との印象を抱き、これにより原告らは競争
20 上不利な立場に置かれ、書籍の出版等の宗教活動以外の収益事業にも影響が
生じる。
よって、本件告知行為1は、原告らの営業上の利益を侵害する。
(5) 小括
以上から、本件告知行為1は不正競争に当たる。
25 【被告の主張】
(1) P社に対する告知ではないこと
被告は、P社を介した原告aとの交渉過程で原告ら指摘の内容を伝えてい
たにすぎず、原告ら指摘の告知はP社に対する告知とはいえない。
(2) 競争関係にないこと
原告らと被告は、競争関係にはない。
5 (3) 虚偽の事実ではないこと
ア 著作権を侵害したとの告知は、法的評価の告知であって事実の告知では
ない。
イ 著作物に当たること
被告作品は、いずれも短文であるが、川柳や五行歌といった形式などで
10 発表され、語句の選択や語順、リズムなどに工夫を凝らしており、作者の
個性が表現されている。
よって、創作性があり、著作物に当たる。
ウ 複製に当たること
被告作品は「言語の著作物」であるから、類似性の判断は、各文章同士
15 を比較すべきであり、背景の写真や字体を考慮する余地はない。原告作品
と被告作品の各文章を比較すると、両者は完全に一致しているか、異なる
部分があるとしても漢字や仮名、句読点の有無といった創作性の付加を伴
わない違いにすぎない。よって、原告作品は被告作品を複製したものであ
る。仮に、原告らの主張のとおり、原告作品にある筆文字や背景写真の創
20 作性を考慮したとしても、言語の著作物の創作性が埋没することにはなら
ないから、原告作品は被告作品を翻案したものである。
エ 依拠性があること
原告は、公表した謝罪文において、被告作品を含むインターネット上の
コンテンツを真似て原告作品を制作したことを認めており、原告作品が被
25 告作品に依拠していることは明らかである
オ 小括
よって、原告aによる本件各投稿及び本件各書籍記事を含む原告書籍の
出版は著作権侵害行為であるから、本件告知内容1の内容は虚偽ではない。
(4) 営業上の利益の侵害がないこと
原告aは、原告作品に関する謝罪文を公表し、K社も著作権侵害があった
5 ことを前提に原告書籍について絶版、回収等の措置をし、P社に対して上記
侵害行為を前提として連絡をしていた。そうすると、被告による告知によっ
て、改めて原告らの営業上の利益が侵害されることはない。
2 争点2(本件告知行為2が虚偽事実の告知として不正競争となるか)につい
て
10 【原告らの主張】
(1) 本件告知行為2
本件告知行為2は、次の内容を含んでいた。
ア 原告寺の住職である原告aが被告の著作権を侵害したこと
イ SNS等で著作権侵害コンテンツを公開したこと
15 ウ 原告aが被告の名誉を毀損したこと
エ 原告aが被告の不当利得返還請求やコンテンツの差止めに応じないこと
オ 原告aが一方的に話合いをやめ、適切な対応や謝罪をしないと通知した
こと
(2) 競争関係にあること及び営業上の利益が侵害されること
20 上記と同様の理由から、原告らと被告は競争関係にあり、本件告知行為2
は原告らの営業上の利益を侵害する。
(3) 告知内容が虚偽であること
上記のとおり、原告aは被告の著作権を侵害していない。
また、原告aは、被告から不当利得返還請求を受けておらず、被告に対し
25 て解決金の支払を提示し、SNS等のアカウントの更新停止等に応じる意向
を示した。原告aは、被告の不誠実な交渉態度を受けてやむを得ず交渉決裂
としたが、被告は交渉の白紙撤回を了承した。
以上から、本件告知行為2の告知内容はいずれも虚偽である。
(4) よって、本件告知行為2は、不正競争に当たる。
【被告の主張】
5 (1) 告知先
総本山と原告寺は、同一宗派内の本山と傘下の寺であって密接な関係にあ
るから、被告の総本山に対する通知は、原告寺本人への通知と同視できる。
(2) 競争関係にないこと
上記のとおり、原告らと被告は、競争関係にはない。
10 (3) 虚偽の事実の告知ではないこと
ア 上記のとおり、著作権を侵害した旨の告知は事実の告知ではない。また、
原告aは被告の著作権を侵害した。
イ 原告aは、現在に至るまで、何ら損害賠償金を支払わず、損害賠償義務
がないことを主張して本件提訴をしたことに照らせば、原告aが適切な対
15 応をしていないことは明らかである。また、原告は合意書案を「白紙撤回
します」として交渉を一方的に打ち切っている。
ウ 以上によれば、本件告知行為2の内容はいずれも虚偽ではない。
3 争点3(被告に過失があるか)について
【原告らの主張】
20 被告は、原告の行為が著作権侵害に当たるかについて弁護士等の意見を聞く
こともなく本件告知行為1、同2に及んだものであり、被告には過失がある。
【被告の主張】
否認し、争う。
4 争点4(原告らの被った損害の有無及び額)について
25 【原告らの主張】
(1) 無形損害
原告らは、被告の不正競争行為によって、営業上の信用を毀損され、その
損害は各200万円を下らない。
(2) 弁護士費用
被告による不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は、原告ら各人につ
5 き20万円である。
【被告の主張】
否認ないし争う。
第4 判断
1 争点1(本件告知行為1が虚偽事実の告知として不正競争となるか)につい
10 て
(1) 本件告知行為1の内容
前提事実及び証拠(甲7、9、12、14〔枝番を含む。以下同じ〕)及び
弁論の全趣旨によれば、被告は、原告書籍により、P社から出版した自身の
書籍中の作品に係る著作権が侵害されたと判断し、原告aとのやり取りはP
15 社を介することとしたこと、その過程で、上記の被告の認識を含む原告ら指
摘の情報(原告aが、SNS等の更新によって、利用規約違反を継続したこ
と及び原告aがSNS等の運用を継続することはSNS等の利用規約が禁止
する行為にあたること)はP社にも伝達されたことは認められる。
(2) 原告aが著作権を侵害した旨の告知が虚偽であるか
20 本件告知行為1の内容が「虚偽」であるか否かは、主に原告 a が被告の著
作権を侵害したかによることとなるので検討する。
ア 被告作品の創作性について
被告作品は、一行当たり4文字ないし13文字の文字数の五行歌様の文
章であり、その表現内容や構成には一定の選択の幅があるといえるところ、
25 被告は、そのような選択の幅の中から、語のリズム、語感、テンポ等を踏
まえて被告作品の表現内容や構成を選択したと認められ、そのような表現
内容や構成がありふれたものとは認められない。反証の趣旨で提出された
証拠(甲32ないし65)は、多くはより長文の記事中のフレーズを類似
の表現として切り出しているにすぎず、独立の作品として対比できるもの
ではなく、上記判断を何ら左右しない。
5 そうすると、被告作品は、被告の「思想又は感情を創作的に表現」した、
「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」言語の著作物(著作権法2
条1項1号、10条1項1号)であると認められる。
イ 原告aが複製又は翻案をしたか
著作権法は、
「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したものであっ
10 て、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(同法2条1
項1号)と定めており、思想又は感情の創作的な表現を保護していること
からすれば、思想又は感情を創作的に表現した言語の著作物について、実
質同一の表現を模倣した場合は複製権侵害として、表現上の本質的特徴を
直接感得できる程に類似したものを依拠して作成した場合は翻案権侵害と
15 して、著作権侵害となる(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・
民集55巻4号837頁参照)。
そこで、原告作品と被告作品とを対比すると(具体的な対比は、別紙対
比表記載の番号欄にある「原告作品」と「被告作品」を対比する。)、次の
とおり、いずれも原告作品と被告作品は創作的な表現部分において共通し、
20 原告作品に接した者は被告作品の表現上の本質的特徴を直接感得すること
ができ、原告aは被告作品に依拠して(原告 a は被告との交渉においてこ
れを認めていた上、原告作品と被告作品の類似の点数、後記の文章の相違
点の内容(特定の語句を類似の語句への言い換えたにすぎない改変等であ
ること)からも、依拠は優に認定できる。)原告作品を作成したから、原告
25 作品は被告作品を翻案したものと認められる。
(ア) 別紙対比表記載1ないし16及び同19ないし21の各作品について
表現形式は対比表記載16を除いていずれも縦書きであり、表現内容は
いずれも各欄「被告作品」の大部分において共通しており、当該共通部分
は上記のとおり創作的な表現部分であるといえる(例えば、記載1の各作
品は、5行からなる同欄「被告作品」の5行目の表現内容及び句点の有無
5 以外の文章の表現内容はすべて共通する。記載2の各作品は、5行からな
る同欄「被告作品」の中の数文字(「ないで」
「ればいい」)及び句点がある
こと以外の文章の表現内容はすべて共通する。記載3の各作品は、被告作
品の「大切」が原告作品では「大事」となっていること及び句点の有無以
外の表現内容はすべて共通する。記載9の各作品は、同欄「被告作品」の
10 表現内容においてすべて共通する。これらの共通部分はいずれも創作的な
表現部分である)。
そして、各欄の「原告作品」には、対応する「被告作品」にはない写真
が配置され、筆文字が使用されている点において同作品と相違し、記載8
の原告作品には「努力」との表現の前に「コツコツと積み重ねた」との表
15 現が付加されており、記載16の各作品は縦書きか横書きかという点にお
いて相違するが、原告作品における文章部分の配置や構成からすると、表
現の中心部分はいずれも文章であって、筆文字であることや猫の写真等の
上記付加部分は、文章の内容と相関がなく、文章に付加された語句も、そ
れ自体が独立して創作性のある表現であるとは言い難いことを踏まえると、
20 各欄の「原告作品」に接する者は、これに対応する「被告作品」の表現上
の本質的な特徴を直接感得できるというべきである。
(イ) 別紙対比表記載17及び18の各作品
表現形式はいずれも縦書きであり、表現内容は各欄「被告作品」の大部
分において共通しており、当該共通部分は上記のとおり創作的な表現部分
25 であるといえる(例えば、記載17の各作品は、5行からなる被告作品中
の「どんな人」との表現が、対応する原告作品で「誰」となっていること
及び句点の有無以外の文章の表現内容は全て共通する。記載18の作品は、
5行からなる被告作品の中の「うまくいかない」の表現が、対応する「原
告作品」では「好転しない」となっていることや句点の有無、末尾の表現
が「欠如」か「欠如していること」であるかとの点以外において全て共通
5 する。)。そして、各欄の「原告作品」には、筆文字が使用されている点に
おいて同作品と相違し、各欄の「原告作品」に接する者は、これに対応す
る「被告作品」の表現上の本質的な特徴を直接感得できる。
ウ 以上によれば、原告aによる本件各投稿や本件各書籍記事を含む原告書
籍の出版は、被告作品に係る被告の著作権を侵害するものであり、この点
10 の告知は虚偽事実を告知したものとはいえない。
(3) その余の告知内容が虚偽といえるか
証拠(甲12、14、24)によると、少なくとも原告aが利用していた
SNS等の利用規約では、著作権を侵害する投稿やコンテンツは禁止されて
いること、原告aは、被告との交渉開始後も複数回にわたって、著作権を侵
15 害するコンテンツの確認と削除を求められ、令和6年8月に至ってもコンテ
ンツの掲載を継続していたことが認められる。
よって、これらの点の告知も、虚偽事実を告知したものではない。
(4) 小括
以上から、本件告知行為1は虚偽事実を告知するものではないから、被告
20 に不正競争は成立しない。
なお、不競法2条1項21号にいう「告知」とは、自己の関知する事実を
特定の人に対し個別的に伝達する行為であるところ、上記によれば、被告が
上記内容を個別的に伝達した相手は原告aであり、交渉の窓口となったP社
は、被告の使者であって、上記にいう「告知」の相手方ではないと解される。
25 また、被告がP社から出版した書籍中の作品に係る著作権の侵害を発見し、
これをP社に告知したという経緯(弁論の全趣旨)からすると、P社がこの
事実及び関連事実を知るのはむしろ正当であって、この観点からも不正競争
に当たらないというべきである。
以上の次第で、争点1に係る原告の主張は、理由がない。
2 争点2(本件告知行為2が虚偽事実の告知として不正競争となるか)につい
5 て
(1) 本件告知行為2の内容
前提事実及び証拠(甲5)によれば、被告は、総本山に対し、要旨次の情
報を送信したものと認められる。
ア 総本山管轄の原告寺における住職の行動について深刻な問題が発生して
10 いる、具体的には、原告寺の住職である原告aが、被告の著作権を侵害す
る行為を行い、SNS等で著作権侵害コンテンツを公開し、書籍を出版し
ていたこと
イ 当初、原告aは、著作権侵害を認めず、自身のSNS等やメディアで、
あたかも自分が考えたものが偶然一致したと主張し、これにより被告の名
15 誉が毀損されることとなったこと
ウ その後、出版社の働きかけにより原告aは著作権侵害を認めたものの、
発覚後約1年が経過しても不当利得返還やコンテンツの差止めなどに応じ
ていないこと
エ 原告aは、弁護士を雇い、約半年間弁護士を通じて話し合いを試みたが、
20 令和6年9月末に一方的に話合いを止め、適切な対応や謝罪を得られてい
ないこと
オ このため、総本山の管理・監督のもとでこの問題を解決するための協力
を願いたく、また、総本山の見解を示してほしいと考えていること
(2) 虚偽の事実の告知であるか
25 前記のとおり、原告aは本件各投稿及び原告書籍の出版により被告作品に
係る被告の著作権を侵害したから、本件告知行為2のうちこのことをいう点
は虚偽ではない。
原告aが被告の名誉を毀損した旨の指摘は、法的な意見の表明であって事
実の告知ではないし、その判断根拠(原告aが、創作の偶然の一致として、
依拠を実質的に否定するような説明をしたこと。)についても、原告が当初そ
5 のようにとれる説明をしたこと(甲4)に照らすと、客観的事実との齟齬は
みられない。
また、原告aは、遅くとも令和6年4月以降、代理人弁護士を介して原告
作品の投稿等に関する交渉を続け、被告から著作権侵害であると指摘を受け
たコンテンツを削除するとともに、解決金額や削除対象とするアカウント等
10 について合意書案を作成しながらやりとりを続けていたが、被告が原告aの
更なる被疑侵害投稿を指摘するなどするのに、原告aが包括的な清算条項と
する旨の提案をした挙句(甲6ないし26)、事前に被告と交渉の打切りにつ
いて協議することなく、令和6年9月10日付け文書により、話合いによる
解決が困難であるとして合意書案の白紙撤回を被告に通知した(甲27)。こ
15 のような経緯に照らせば、同通知を受けた被告が交渉の打切りについて了承
していた(甲28)としても、原告aが一方的に交渉を打ち切ったといえる
し、不当利得返還請求やコンテンツの差止めに応じないこと、適切な対応や
謝罪をしないことをいう部分についても、評価的意見の表明にすぎない部分
も含まれるが、全体として、虚偽であるとは認められない。
20 (3) 小括
以上から、本件告知行為2は、虚偽事実を告知するものではないから、被
告に不正競争は成立しない。
なお、上記の本件告知行為2は、被告は、著作権侵害をめぐって原告a及
びその代理人弁護士との交渉をしていたが、それが原告aの意向により決裂
25 したとの経緯を提示したうえで、総本山の立場から問題解決を要請したもの
である。総本山が原告寺ないし原告aに、被告との紛争に関し何等かの地位
に立ち得るかはさておき、仮に原告らと被告間に書籍の出版やSNS等の活
動等の観点から何らかの競争関係を観念するとしても、総本山がその需要者
ないし取引先として想定されて、本件告知行為2により、被告が自らの営業
上当該競争において有利な地位に立つとは解し得ない。
5 以上により、争点2に係る原告らの主張は、理由がない。
第5 結論
以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいず
れも理由がない。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官
松 阿 彌 隆
裁判官
島 田 美 喜 子
裁判官西尾太一は、差支えのため署名押印することができない。
裁判長裁判官
25 松 阿 彌 隆
(別紙)
債務目録
下記の原告aの行為欄の行為による、別紙被告作品目録記載の番号の作品の著
5 作権侵害を理由とする、原告aの被告に対する各不法行為に基づく損害賠償債務
及び各不当利得返還義務
原告aの行為 別紙被告作品目録記載の番号
1 別紙投稿記事目録記載1の投稿 1
2 同2の投稿 3(1)及び(2)
3 同3の投稿 4
4 同4の投稿 5
5 同5の投稿 7
6 同6の投稿 8
7 同7の投稿 9
8 同8の投稿 10
9 同9の投稿 11
10 同10の投稿 12
11 同11(1)、(2)及び(3)の投稿 13
12 同12の投稿 14
13 同13の投稿 15
14 同14の投稿 16
15 同15の投稿 17
16 同16の投稿 18
17 同17の投稿 19
18 同18の投稿 20
19 同19の投稿 21
20 別紙書籍記事目録記載1の表現 1
21 同2の表現 2
22 同3の表現 3(1)及び(2)
23 同4の表現 4
24 同5の表現 5
25 同6の表現 6
26 同7の表現 7
27 同8の表現 8
以上
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