ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(ワ)70583 損害賠償等請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年4月15日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告エンジェリング研究所合同会社
A 被告バイドゥ株式会社 |
| 対象物 | 液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法 |
| 法令 |
特許権 特許法29条2項10回 特許法29条1項3号9回 特許法101条4号9回 特許法101条5号4回 特許法29条1項1号3回 特許法104条の32回 民法709条2回 特許法102条3項1回 |
| キーワード | 無効57回 進歩性34回 侵害31回 間接侵害25回 新規性25回 実施23回 特許権19回 無効審判8回 損害賠償4回 審決2回 訂正審判1回 |
| 主文 | 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 事案の概要 本件は、発明の名称を「液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法」と する特許(特許第6446634号。以下「本件特許」という。 )に係る特許 権(以下「本件特許権」という。 )を保有ないし保有していた原告らが、被告 に対し、被告による別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。 ) の製造販売が、本件特許権の間接侵害(特許法101条4号、5号)に当たる として、主位的に民法709条に基づき、予備的に民法703条に基づき、原 告会社につき1億円(対象期間は平成30年12月14日から令和2年10月 25日まで) 、原告Aにつき5000万円(対象期間は同月26日から令和3 年12月27日まで) (いずれも一部請求)及びこれらに対する遅延損害金の |
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令和8年4月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第70583号 損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 令和8年2月4日
判 決
原 告 エンジェリング研究所合同会社
(以下「原告会社」という。)
原 告 A
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下「原告A」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 今 井 秀 智
鈴 木 正 勇
被 告 バ イ ド ゥ 株 式 会 社
同 訴 訟代 理 人 弁 護 士 高 橋 治
井 口 加 奈 子
江 黒 早 耶 香
バ ヒ ス バ ラ ン 薫
同訴訟復代理人弁護士 長 谷 川 慎 也
同 訴 訟代 理 人 弁 理士 三 木 友 由
主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主位的請求
⑴ 被告は、原告会社に対し、1億円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
5 ⑵ 被告は、原告Aに対し、5000万円及びこれに対する令和3年12月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。2 予備的請求
⑴ 被告は、原告会社に対し、1億円及びこれに対する令和6年12月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
⑵ 被告は、原告Aに対し、5000万円及びこれに対する令和6年12月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 事案の概要本件は、発明の名称を「液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法」とする特許(特許第6446634号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を保有ないし保有していた原告らが、被告に対し、被告による別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の製造販売が、本件特許権の間接侵害(特許法101条4号、5号)に当たるとして、主位的に民法709条に基づき、予備的に民法703条に基づき、原告会社につき1億円(対象期間は平成30年12月14日から令和2年10月25日まで)、原告Aにつき5000万円(対象期間は同月26日から令和3年12月27日まで)(いずれも一部請求)及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は、全ての枝番号を含む。)
⑴ 当事者ア 原告会社は、知的財産権の取得、維持及び運用並びにコンピュータソフトウェア、コンピュータハードウェア及びコンピュータ周辺機器の販売等を目的とする合同会社であり、原告Aは、原告会社の代表社員である。
5 イ 被告は、コンピュータソフトウェアの開発及び制作、コンピュータで制作した商品の技術的コンサルティング及び技術サービス並びにコンピュータで制作した商品の販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。
⑵ 本件特許権(甲1、2)本件特許権は、平成29年8月27日を出願日(特願2017-162907)、平成30年12月14日を登録日とする特許権である。本件特許の特許権者は、登録日から令和2年10月25日までは原告会社、同月26日からは原告Aである。原告Aは、特許請求の範囲(請求項2及び3)の訂正を求める訂正審判請求(訂正2024−390019号)をし、特許庁は、令和6年7月30日、上記請求を認める旨の審決をし、その後、同審決は確定した。
⑶ 特許請求の範囲の記載本件特許に係る特許請求の範囲の請求項2及び3の記載は、以下のとおりである(以下、請求項2記載の発明を「本件発明1」、請求項3記載の発明を「本件発明2」といい、これらを「本件各発明」と総称する。また、本件特許に係る明細書及び図面(甲1)を「本件明細書」という。)。ア 本件発明1「液晶画面におけるローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている1個又は複数個のキーを選択し、模様を含む画像又は図柄である画素材を取り込み、該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」イ 本件発明2「該画素材は、貼付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集がなされる請求項1または請求項2に記載の液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」
5 ⑷ 構成要件の分説本件各発明は、以下のとおり分説することができる(以下、分説に従い、「構成要件1A」などという。)。ア 本件発明11A 液晶画面におけるローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている1B 1個又は複数個のキーを選択し、1C 模様を含む画像又は図柄である画素材を取り込み、1D 該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする、1E 液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。イ 本件発明22A 該画素材は、貼付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集がなされる2B 請求項2に記載の液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。
⑸ 被告の行為ア 被告は、被告製品を製造販売している。イ 被告製品には、平成30年4月19日から令和3年12月頃まで、テンキーのキーボードのボタンの背景画像を着せ替える機能(以下「本件機能」という。)が搭載されていた。利用者(ユーザー)は、被告製品をスマートフォンやタブレット(以下「スマートフォン等」という。)にインストールし、当該スマートフォン等でアプリケーションを起動して、別紙被告製品操作・動作説明書記載のとおり動作させていた(以下、本件機能を搭載した被告製品をインストールしたスマートフォン等を用いて利用者(ユーザー)が使用していた方法を、本件各発明に対応させて「被告方法1」などといい、「被告各方法」と総称する。)。
5 ⑹ 本件訴訟提起に至る経緯等ア 原告会社は、令和2年1月15日頃、被告に対し、被告製品の機能は本件発明1と同一であり、被告の行為は間接侵害に該当すると考えている旨記載された同日付け書面(乙22。以下「乙22書面」という。)を送付した。イ 被告は、令和4年5月17日頃、原告Aに対し、本件特許権の件の解決金として100万円を提案する旨記載された同日付け書面(甲11。以下「甲11書面」という。)を送付した。ウ 原告らは、令和6年12月4日、本件訴訟を提起した。エ 被告は、本件弁論準備手続期日において、原告らの被告に対する民法709条に基づく損害賠償請求権について民法724条前段所定の消滅時効が完成していると主張して、これを援用した。(当裁判所に顕著な事実)3 争点
⑴ 被告各方法が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)
⑵ 間接侵害の成否(争点2)
⑶ 本件特許の無効の抗弁の成否(争点3)
⑷ 損害の発生及びその額(争点4)
⑸ 被告による利得の額(争点5)
⑹ 消滅時効の成否(争点6)4 争点に関する当事者の主張
⑴ 争点1(被告各方法が本件各発明の技術的範囲に属するか)(原告らの主張)ア 構成要件1B及び1Cの意義(ア) 特許請求の範囲において、画素材の選択をキーの選択の後に行うという限定はされておらず、本件明細書も、画素材の選択とキーの選択の先後を問うようなものではないから、構成要件1B及び1Cは、画
5 素材の選択をキーの選択の後に行う場合に限定するものではなく、キーの選択前に画素材を選択する場合を含むものと解すべきである。(イ) 画素材の「取り込み」は、選択した画素材を選択したキーの背景画として貼付することを意味する。イ 被告各方法について(ア) 被告各方法の構成は、別紙被告方法目録記載1及び2のとおりである。(イ) 前記アのとおり着せ替え対象ボタンを選択するタイミングが画像を選択した後であったとしても、被告方法1は構成要件1B及び1Cを充足する。また、本件機能を搭載した被告製品は、ボタンを選択した後に、画像の選択が確定し、選択したボタンの背景画として当該画像が貼付されるから、被告の主張を前提としても被告方法1が上記各構成要件を充足することに変わりはない。(ウ) したがって、被告方法1は、構成要件1Aないし1Eを充足し、本件発明1の技術的範囲に属する。また、被告方法2は、構成要件2A及び2Bを充足し、本件発明2の技術的範囲に属する。(被告の主張)ア 構成要件1B及び1Cの意義(ア) 本件明細書に記載された実施例は、取り込む領域の選択後に画素材を選択するものであり、画素材の選択後に取り込む領域を選択することは一切開示されていないから、構成要件1B及び1Cは、キーの選択後に、画素材を選択し、選択した画素材をキーに取り込むものと解すべきである。(イ) 画素材の「取り込み」は、選択したキーと画素材の紐づけを行い、選択したキーに画素材を編集可能に表示することを意味する。
5 イ 被告各方法について(ア) 原告らが主張する被告各方法の構成は否認する。(イ) 被告方法1において、ボタンを選択するタイミングは、画像を選択し、必要に応じて画像を編集した後であり、画像を選択した時点では、キーとの紐づけやキーに編集可能に表示、すなわち、「取り込み」が行われていないから、構成要件1B及び1Cを充足するとはいえない。また、被告方法2が構成要件2Bを充足するとはいえない。(ウ) したがって、被告各方法が本件各発明の技術的範囲に属するとはいえない。
⑵ 争点2(間接侵害の成否)について(原告らの主張)ア 特許法101条4号(ア) 特許法101条4号の「その方法の使用にのみ用いる物」については、「のみ」との限定があり、間接侵害の成立範囲が不当に広がることはないから、同号該当性については、社会通念上、経済的・商業的・実用的な観点から、「その方法の使用にのみ用いる」かを判断すれば足りる。被告は、知的財産高等裁判所平成17年(ネ)第10040号同年9月30日特別部判決(以下「平成17年知財高裁特別部判決」という。)を根拠に、被告製品が「その方法の使用に…用いる物」に当たることを争うが、上記判決は、新設された特許法101条5号において、同条4号(旧3号)と異なり、「のみ」の限定がない上、「その物がその発明の実施に用いられること」との文言を含むことに基づく判断であり、同条4号の解釈には妥当しない。本件機能を搭載した被告製品は、本件各発明に係る方法の使用にのみ用いられる物で、他の用途に用いられる物ではないから、「その方法の
5 使用にのみ用いる物」に当たる。(イ) 被告製品に本件機能以外の機能があったとしても、被告が被告製品に本件機能を搭載していたのは、本件各発明に係る方法を使用させることを意図してのことであるといえるから、本件各発明に使用する以外の商業的又は実用的な用途を有していたとはいえない。(ウ) したがって、被告による被告製品の製造販売行為について、特許法101条4号所定の間接侵害が成立する。イ 特許法101条5号(ア) 本件機能を搭載した被告製品は、本件各発明に係る方法の使用に用いられる物であって、本件各発明による課題の解決に不可欠なものである。被告は、本件各発明が特許発明であること及び被告製品が本件各発明の実施に用いられることを知りながら、被告製品を製造販売した。(イ) 被告は、被告製品が「その方法の使用に用いる物」に当たることを争うが、①特許出願において物の発明と方法の発明の選択は、出願者が任意に行うものであり、プログラムに係る発明を方法の発明として特許出願した場合にもその保護を図る必要があること、②プログラムが同条2号の「その物の生産に用いる物」に当たると解するのに、同条5号の「その方法の使用に用いる物」に当たらないと解するのは、均衡を失すること、③スマートフォン等とプログラムの関係は、単なる物と部品という関係とは異なるから、プログラムを動作させることで使用される方法の発明について、同号の「物」にプログラムが含まれると解しても、発明の方法を実施する機能を備えるプログラムに限定されるため、間接侵害の成立範囲が不当に広がることもないことなどからすれば、被告製品も含まれると解すべきであって、この意味で、平成17年知財高裁特別部判決の解釈は誤りである。
5 (ウ) したがって、被告による被告製品の製造販売行為について、特許法101条5号所定の間接侵害が成立する。(被告の主張)ア 特許法101条4号(ア) 本件各発明に係る方法の使用に用いられる物は、被告製品をインストールしたスマートフォン等であり、被告製品は、当該スマートフォン等の生産に用いられる物にすぎないから、「その方法の使用に…用いる物」に当たらない(平成17年知財高裁特別部判決参照)。(イ) また、被告製品は、本件機能以外にも、①キーボード全体のデザインを自由に変更する機能、②絵文字、顔文字入力機能、AIを活用した音声入力機能、③「スタンプ超変換」機能、④「クラウド超変換」機能、⑤各種定型文を1タップで入力する機能等を搭載しており、本件各発明に使用する以外の商業的又は実用的な用途を有していたから、「その方法の使用にのみ用いる物」に当たらない。(ウ) したがって、被告の行為について、特許法101条4号所定の間接侵害は成立しない。イ 特許法101条5号前記ア(ア)と同様に、被告製品は、「その方法の使用に用いる物」に当たらないから、被告の行為について、特許法101条5号所定の間接侵害は成立しない。
⑶ 争点3(本件特許の無効の抗弁の成否)について(被告の主張)別紙無効理由(被告の主張)のとおり。原告らの主張する本件各発明と主引用発明の相違点はいずれも否認する。(原告らの主張)別紙無効理由(原告らの主張)のとおり。
5 ⑷ 争点4(損害の発生及びその額)について(原告らの主張)ア 特許法102条3項の損害特許法102条3項により算定される損害額は、被告製品のダウンロード数に被告製品1個当たりの実施料率(平均販売価格565円×実施料率5.5%=31円)及び売上に対する本件各発明の貢献度(5分の1)を乗じて算定すべきである。ダウンロード数は、原告会社が特許権者であった期間(平成30年12月14日から令和2年10月25日まで)につき2400万回、原告Aが特許権者であった期間(同月26日から令和3年12月27日まで)につき1200万回であるから、実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、原告会社につき1億4880万円、原告Aにつき7440万円である。イ 弁護士費用に係る損害被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用に係る損害額は、原告会社につき1488万円、原告Aにつき744万円を下らない。(被告の主張)否認ないし争う。
⑸ 争点5(被告による利得の額)について(原告らの主張)原告らは、被告の行為によって本件特許権の実施料相当額の損失を被り、被告は法律上の原因なく同額の利得を得た。被告による利得の額は、前記⑷(原告らの主張)アと同様に、原告会社につき1億4880万円、原告Aにつき7440万円である。(被告の主張)否認ないし争う。
⑹ 争点6(消滅時効の成否)について
5 (被告の主張)ア 原告らは、乙22書面を作成した令和2年1月15日までに本件特許権侵害に係る損害及び加害者を知っていた。したがって、本件訴訟が提起されるまでに、原告らの被告に対する民法709条に基づく損害賠償請求権についての消滅時効は完成している。イ 原告らが主張する債務承認を争う。甲11書面には、原告らの主張を受け入れる趣旨ではないとも記載されているから、債務承認に当たらない。(原告らの主張)ア 原告らが令和2年1月15日までに本件特許権侵害に係る損害及び加害者を知っていたことを否認する。特許権侵害、特に間接侵害の成否は高度に専門的な判断を要するものであるから、原告らが弁護士を就けずに作成した乙22書面に間接侵害に該当する旨記載されているからといって、原告らが同日までに損害及び加害者を知っていたとはいえない。このことは、乙22書面に、被告の行為が間接侵害になるか否かなどについて被告の見解をうかがいたいと記載されていることによっても裏付けられている。イ 被告は、令和4年5月17日、原告らに対し、本件特許権侵害に係る解決金(損害額)として100万円を提示し(甲11書面)、上記損害賠償債務を承認したから、その時点で時効が更新され、本件訴訟の提起時点で消滅時効は完成していない。
第3 当裁判所の判断
事案にかんがみ、争点2について判断する。
1 争点2(間接侵害の成否)について
⑴ 原告らは、スマートフォン等にインストールされるアプリケーションであ
る被告製品の製造販売が、特許法101条4号及び5号の間接侵害に当たると主張する。そこで検討するに、特許法101条4号及び5号は、その物自体を利用し
5 て特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産、
譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであり、特許発明に係る方法を実施することが可能である物の生産に用いられる物を生産、譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものではないものと解される(平成17年知財高裁特別部判決参照)。前提事実⑸イのとおり、被告製品の利用者(ユーザー)は、被告製品をスマートフォン等にインストールし、当該スマートフォン等でアプリケーションを起動して、別紙被告製品操作・動作説明書記載のとおり動作させていたのであるから、その物自体を利用して本件各発明に係る方法を実施することが可能である物は被告製品をインストールしたスマートフォン等であって、被告製品は、そのようなスマートフォン等の生産に用いられる物である。そうすると、被告製品の製造販売が同条4号及び5号の間接侵害に当たるということはできない。
⑵ これに対し、原告らは、被告製品の製造販売が特許法101条4号及び5
号の間接侵害に当たることの根拠として、①特許出願において物の発明と方法の発明の選択は、出願者が任意に行うものであり、プログラムに係る発明を方法の発明として特許出願した場合にもその保護を図る必要があること、
②プログラムが同条2号の「その物の生産に用いる物」に当たると解するの
に、同条5号の「その方法の使用に用いる物」に当たらないと解するのは、均衡を失すること、③スマートフォン等とプログラムの関係は、単なる物と部品という関係とは異なるから、プログラムを動作させることで使用される方法の発明について、同号の「物」にプログラムが含まれると解しても、発明の方法を実施する機能を備えるプログラムに限定されるため、間接侵害の成立範囲は不当に広がらないこと、④同条4号は、「その方法の使用にのみ用いる物」と「のみ」による限定がされており、間接侵害の成立範囲が不当に広がることもないことなどを主張する。
5 しかしながら、上記①②について、物の発明についての間接侵害(同条1
号及び2号)と、方法の発明についての間接侵害(同条4号及び5号)は、それぞれ「物の生産」又は「方法の使用」という実施行為との関係で間接侵害の成立範囲を規定し、プログラムが「用いる物」に当たるか否かは、実施行為との関係で決まるのであるから、物の発明と方法の発明で間接侵害の成立範囲が異なることがあるのは当然である。そして、プログラムは物の発明として特許法における保護対象となり得る(同法2条3項1号、4項)のであるから、原告会社において、物の発明としてではなく、あえて方法の発明として本件各発明に係る特許を取得した以上、被告製品の製造販売について間接侵害が成立しないと解したからといって、同法による保護に欠けるものとはいえない。また、上記③④について、同条4号の「その方法の使用に…用いる物」及び同条5号の「その方法の使用に用いる物」が、その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物を意味し、そのような物の生産に用いられる物を含まないと解すべきであるのは前記⑴のとおりであり、
(被告の主張)
する点は、被告製品の製造販売が特許法101条4号及び5号の間接侵害に当たらないとの前記⑴の判断を左右するものではない。原告らのその余の主張も以上の判断を左右するものではない。
第4 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 髙 橋 彩裁判官 西 山 芳 樹裁判官 瀧 澤 惟 子(別紙)被告製品目録
1 製 品 名 Simeji
5 2 対応OS iOS、Android
3 カテゴリ ユーティリティ
4 用 途 スマートフォン及びタブレット用文字入力キーボードアプリケー
ション以上(別紙)被告製品操作・動作説明書
1 被告製品のボタン着せ替え機能の操作・動作
5 ⑴ スマートフォン及びタブレットにおいて被告製品のアプリをタップして起
動する。
⑵ 「きせかえ」ページを表示する。
⑶ 「ボタンきせかえ」をタップする。
⑷ 「はじめる」をタップする。
⑸ キーボード画面上をタップする。
⑹ 画像選択画面に切り替わり、ボタン着せ替えする画像を選択する。
⑺ 編集画面となり、同画面では、選択した画像全体が上部に、下部にキーボ
ード配置図が表示されている。
⑻ 編集画面の上部に表示されている選択画像をトリミングせず又はトリミン
グして、編集画面の下部に表示されているキーボード配置図により選択画像に着せ替える対象のボタンを、編集画面の下端の「すべてのキーボードに応用します」(android版の表示/iOS版の表示は「選択部分を同じデザインにする」)のチェックを外したうえで選択、指定する。
⑼ 複数のボタンを選択、指定し、これらのボタンに同じ選択画像にさしかえ
る場合は、編集画面の下端の「すべてのキーボードに応用します」にチェックを入れる。
⑽ 画面右上の「次へ」をタップすると選択画像が指定、選択したボタンに表
示される。
⑾ 上記⑸から⑽を適宜繰り返し、テンキーのキーボードの全てのボタンの着
せ替えは完了し、画面右上の「完了」をタップして、ボタンの着せ替えは終了する。
2 被告製品のボタン着せ替え機能の操作・動作画面のスクリーンショット
※ 以下は、Android版のスマートフォンの画面によるものであるが、同版のタブレットの画面、iOS版のスマートフォン及びタブレットの画面も基本的構成は同じである。
⑴ 前記1⑴のスクリーンショット
(スマートフォンにおいて被告製品のアプリをタップして起動する。)
⑵ 前記1⑵のスクリーンショット
(「きせかえ」ページを表示する。)
⑶ 前記1⑶のスクリーンショット
(「ボタンきせかえ」をタップする。)
⑷ 前記1⑷のスクリーンショット
(「はじめる」をタップする。)
⑸ 前記1⑸のスクリーンショット
(キーボード画面上をタップする。)
⑹ 前記1⑹のスクリーンショット
(画像選択画面に切り替わり、ボタン着せ替えする画像を選択する。)
⑺ 前記1⑺のスクリーンショット
(編集画面となり、同画面では、選択した画像全体が上部に、下部にキーボード配置図が表示されている。)
⑻ 前記1⑻のスクリーンショット
(編集画面の上部に表示されている選択画像をトリミングせず又はトリミングして、編集画面の下部に表示されているキーボード配置図により選択画像に着せ替える対象のボタンを、編集画面の下端の「すべてのキ
5 ーボードに応用します」(android版の表示/iOS版の表示は
「選択部分を同じデザインにする」)のチェックを外したうえで選択、指定する。)
⑼ 前記1⑼のスクリーンショット
(複数のボタンを選択、指定し、これらのボタンに同じ選択画像にさしかえる場合は、編集画面の下端の「すべてのキーボードに応用します」にチェックを入れる。)
⑽ 前記1⑽のスクリーンショット
(画面右上の「次へ」をタップすると選択画像が指定、選択したボタンに表示される。)
⑾ 前記1⑾のスクリーンショット
(前記⑸から⑽を適宜繰り返し、テンキーのキーボードの全てのボタンの着せ替えは完了し、画面右上の「完了」をタップして、ボタンの着せ替えは終了する。)以上(別紙)被告方法目録
1 被告方法1
5 1a スマートフォン及びタブレットの液晶画面における日本語入力のテンキ
ーによるキーボード部内に表示されている1b 1個又は複数個のボタンを選択し、1c 模様を含む画像又は図柄である画素材を取り込み、1d 該選択された各ボタン毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼り付ける1e スマートフォン及びタブレットの日本語入力のテンキーのキーボードの背景の画像を着せ替える方法。
2 被告方法2
2a 該画素材は、トリミングがなされる2b 上記1aないし1dの構成を備えるスマートフォン及びタブレットの日本語入力のテンキーのキーボードの背景の画像を着せ替える方法。以上(別紙)無効理由
(被告の主張)
【令和7年4月7日付け第1準備書面第2(抜粋)】
5 「(1)無効理由1
本件各発明は、2015(平成27)年8月31日に公開された動画投稿サイト YouTube のウェブサイトで紹介されている「IOS 8.4 Faces Pro Cydia Tweak」(乙1号証。以下「乙1ウェブサイト」という。)に示されている発明(以下、本件発明1に対応する発明を「乙1-1発明」、本件発明2に対応する発明を「乙1-2発明」といい、両者を総称して「乙1発明」という。)と同一、又は、これに基づき容易に発明することができたものであるため、本件各特許は、新規性欠如(特許法第29条1項3号)又は進歩性欠如(同条2項)による無効理由を有する。ア 乙 1 発明の構成乙1発明は、キーボードであるパスコードボタンに画像を追加するアプリケーションである。その処理手順及び操作手順の詳細は、乙1号証記載のとおりである。乙1-1発明は、以下のA’1~E’1の構成を備えている。A’1 iPhone 液晶画面における数字又は英字入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている(ステップ3)B’1 1つのキーを選択し(ステップ4)、C’1 ユーザにより選択された写真を取り込み(ステップ6) 、D’1 B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだ写真を背景画として貼り付けること(ステップ8) を特徴とするE’1 iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法。また、乙1-2発明は、以下のA’2及びB’2の構成を備えている。A’2 選択された写真は、背景画として貼り付ける前に、写真の位置や大きさの変更による編集がなされる(ステップ7)B’2 A’1 ないしE’1 に記載の iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法。
5 イ 乙1発明に基づく新規性の欠如について
乙1-1発明は、本件発明1の構成と一致し、乙1-2発明は、本件発明2の構成と一致する。(ア)本件発明1について
① A1について
乙1ウェブサイトには、iPhone の画面が液晶であるか否かについての記載はないが、乙1-1発明は iPhone 用のアプリケーションであり、乙1ウェブサイトの公開日である2015年8月31日当時、iPhone のディスプレイは液晶であったと考えられるため、乙1ウェブサイトに表示されているキーボードは液晶画面に表示されているから、「液晶画面における」(構成A’1)という構成を備えている。また、乙1-1発明は、キーが「数字又は英字入力のテンキーによるキーボード部内」に表示されている(構成A’1)ところ、英字テンキーはローマ字入力に使用可能なキーボード部であるから、乙1-1発明の構成A’1は、「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている」(構成要件A1)の構成と一致する。
② B1について
乙1-1発明は、「1つのキーを選択し」(構成B’1)との構成を備えており、本件発明1の「1個又は複数個のキーを選択し、」(構成要件B1)と一致する。
③ C1について
乙1-1発明は、「ユーザにより選択された写真を取り込み」(構成C’1)との構成を有しているところ、「画素材」とは、「キーボードの背景画として取込、変形、貼付が可能に準備された動画や模様を含む画像又は、図柄等」をいうとされており(甲1の2【0004】)、「写真」がこれに含まれ
5 ることは明らかであり、「画素材」に該当するから、本件発明1の「模様を
含む画像又は図柄である画素材を取り込み、」(構成要件C1)と一致する。
④ D1について
乙1-1発明は、「B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだ写真を背景画として貼り付けることを特徴とする」(構成D’1)との構成を備えており、本件発明1の「該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする」(構成要件D1)と一致する。
⑤ E1について
乙1-1発明の構成E’1は、「iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法」の構成を備えており、本件発明1の「液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件E1)と一致する。(イ)本件発明2について
① A2について
乙1-2発明は、「背景画として貼り付ける前に、写真の位置や大きさの変更による編集がなされる(構成A’2)との構成を備えており、本件発明2の「該画素材は、貼付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集がなされる」(構成要件A2)と一致する。
② B2について
乙1-2発明は、「A’1 ないしE’1 に記載の iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成B’2)の構成を備えており、本件発明2の「請求項2に記載の液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件B2)と一致する。(ウ)小括以上を対比表にまとめると次のようになる。本件発明1本件発明1の構成要件 乙1ウェブサイトの開示内容A1 液晶画面におけるローマ字入力 A’1 iPhone 液晶画面における数字又は英のキーボード部又は日本語入力 字入力のテンキーによるキーボードのテンキーによるキーボード部 部内に表示されている内に表示されているB1 1個又は複数個のキーを選択 B’1 1つのキーを選択し、し、C1 模様を含む画像又は図柄である C’1 ユーザにより選択された画素材を取画素材を取り込み、 り込み、D1 該選択された各キー毎に同一の D’1 B’1 で選択したキー毎に C’1 で取り込該取り込まれた画素材を背景画 んだ画素材を背景画として貼り付けとして貼付けることを特徴とす ることを特徴とするるE1 液晶キーボードの背景の画像を E’1 iPhone 液晶画面上のキーボードの背着せ替える方法。 景の画像を着せ替える方法。本件発明2本件発明2の構成要件 乙1ウェブサイトの開示内容A2 該画素材は、貼り付け前に拡大 A’2 選択された写真は、背景画として貼縮小、移動、または変形による り付ける前に、画素材の位置や大き編集がなされる さの変更による編集がなされるB2 請求項2に記載の液晶キーボー B’2 A’1 ないし E’1 に記載の iPhone 液晶ドの背景の画像を着せ替える方 画面上のキーボードの背景の画像を法。 着せ替える方法。以上より、本件発明1は、乙1-1発明とその構成が一致し、本件発明2は、乙1-2発明とその構成が一致しているため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項3号)による無効理由を有するものである。ウ 本件各発明の進歩性欠如について
5 仮に、乙1-1発明の「数字又は英字入力のテンキーによるキーボード部」
(構成A’1)が、構成要件A1の「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部」と一致しないとしても、以下のとおり、本件各発明は、進歩性を欠くものといえる。すなわち、モバイルデバイスの液晶画面に表示されるキーボードをテンキーにするか、フルキーボードにするか、また、入力文字をどのように設定するかは、当業者の設計事項であって、本件各発明は、乙1発明の設計変更によりその構成を達成することができるものである。また、仮に本件各発明が、乙1発明の設計変更の範囲内であるといえないとしても、次の周知技術との組み合わせにより、いずれにせよ進歩性は否定される。すなわち、再表2016/152408(公開日:2016年9月29日)(乙2号証)の図3では、ローマ字入力可能なフルキーボード型のソフトウェアキーボードが開示されている。再表2016/152408の図3また、特開2016-154037号公報(公開日:2016年8月25日)(乙3号証)の図4では、日本語入力可能なテンキー型の仮想キーボードが開示されている。特開2016-154037号公報の図4さらに、別紙周知技術図面目録(判決注:同別紙は省略。以下同じ。)のとおり、本件特許の出願日(2017年8月27日)以前から、多くの文献においてローマ字入力のキーボード(別紙目録1)や日本語入力のテンキーによるキーボード(別紙目録2)が開示されている。なお、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーに関する発明は膨大に存在し、別紙周知技術図面目録に挙がっている各文献(乙4号証ないし乙18号証)はそのごく一部である。
5 これら乙2号証及び乙3号証の各文献、並びに別紙周知技術図面目録から
も明らかなとおり、本件特許の出願日(2017年8月27日)において、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーによるキーボードは、スマートフォンを含むモバイルデバイスの技術分野において周知の技術であった。そして、乙1発明と、上記周知技術の技術分野はいずれもモバイルデバイスのキーに関するもので同一であり、使用者のニーズによって異なる配置、文字入力機能を有するキーに応用するため、当業者が乙1発明に上記周知技術を適用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の結果にすぎない。さらに、背景に画像を貼り付けて背景変更をすることについては、数字や英字入力のテンキーだけではなく、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーにも共通する課題であることから、乙1発明に上記乙2号証及び乙3号証記載のいずれかの発明又は周知技術(別紙周知技術図面目録参照)を適用する動機付けも認められる。したがって、本件各発明は、乙1発明に基づき当業者が容易に発明することができたことから、進歩性が欠如し(特許法29条2項)、本件特許は無効審判により無効となるべきものである。
(2)無効理由2
本件各発明は、特表2010-533925号公報(公表日:2010年10月28日)(乙19号証。以下「乙2文献」という。)に記載された発明(以下、本件発明1に対応する発明を「乙2-1発明」、本件発明2に対応する発明を「乙2-2発明」といい、両者を総称して「乙2発明」という。)と同一、又は、これに基づき容易に発明することができたものであるため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項3号)又は進歩性欠如(同条第2項)による無効理由を有する。ア 乙2文献の記載内容乙2文献は、モバイルデバイスキーパッドを個人化し、ブランド化する方
5 法及びシステムに関する発明の公表特許公報であり、その内容は次のとおりで
ある。まず、乙2文献は、「ディスプレイ420は、主モバイルデバイスディスプレイ13と同様の液晶ディスプレイとすることができる。・・・このキーパッド設計は、キー機能を動的に割り当てることが可能であり、キー機能はグラフィックまたは英数字の形式でユーザに伝えられるので、高度にフレキシブルである。」(【0022】)として、液晶ディスプレイに表示されるキーボードについて記載し、さらに「モバイルデバイスは、ユーザがキーパッド20上に出現する数字、シンボルまたは文字の色、サイズ、フォント、形式、言語または配向を変更することができるように、ソフトウェアで構成される。」(【0029】)と記載していることから、液晶ディスプレイに数字や文字を出現させるキーボード部を設けることを開示している。次に、乙2文献は、キーボード上の1個のキーを選択する場合と複数個のキーを選択する場合のそれぞれについて分けて説明している。(ア)1個のキーを選択する場合乙2文献は、1個のキーを選択する場合について、「キーが押下されると自動的にダイヤルされる電話番号(たとえば、友人または家族の電話番号)を表すためのキーパッド20上のキーをユーザが指定する。」(【0042】)こと、「ステップ1000で、電話番号と、電話番号に関連付けられたスピードダイヤルキーとして指定すべきキーとをモバイルデバイスに入力し、それをモバイルデバイスが受信する。」(【0044】)と説明している。1個のキーを選択した場合には、「ステップ1002で、ユーザは、スピードダイヤルキーに関連付けるべき名前、イメージまたはグラフィックを入力または特定する(たとえば、メモリに記憶されたグラフィックファイルをポイントする)ように促される。・・・ステップ502で、アプリケーショ
5 ン200は、電話番号、キー数字および関連する名前、グラフィックまたは
イメージを使用して、キーパッド構成命令をフォーマット化し、キーパッドプロトコル206に送信する。・・・ステップ504で、電話番号、キー数字および関連する名前、グラフィックまたはイメージが、キーパッドプロトコル206によってアクセスされ、ステップ506で、それらを使用して、キーパッド構成コマンドを生成する。」(【0044】)として、選択した1個のキーに関連付けられた名前、グラフィック又はイメージの取込みが開示されている。そして、取り込まれた画素材に関して、「キーパッドを構成する際に、キーパッドドライバ208は、名前、グラフィックまたはイメージがキーパッドによって表示されるようにする。ディスプレイキーパッド400の場合、名前、グラフィックまたはイメージは、指定されたスピードダイヤルキーのキーディスプレイ上に提示される。タッチスクリーンキーパッドの場合、名前、グラフィックまたはイメージが仮想キー内に提示される。」(【0044】)こと、「連絡先の名前(説明のための「連絡先#1」)はスピードダイヤルキー1300上に表示されるので、ユーザはキーを一瞥しただけでスピードダイヤル割当てがわかる。」(【0045】)ことを説明して、キーに名前、グラフィックまたはイメージが背景画として貼付されることを開示している。(イ)複数個のキーを選択する場合複数個のキーを選択する場合について、乙2文献は、「図11Bに示すように、スパイダーマンの映画のファンであるか、またはクモのテーマを享受するユーザは、モバイルデバイス10のキーパッド20上にクモ、クモの巣、またはクモに関連するイメージを示すように自身のモバイルデバイス10をカスタマイズすることができる。図11Bは、クモの巣が各ディスプレイキー402の背景として出現することを示す。」(【0026】)と説明する。
5 【図11B】
別の態様としては、「ユーザは、図13に示すように、クモの巣として出現するように各仮想キー412を変更することを選択することができる。」(【0027】)との記載がある。【図13】では、仮想キーごとに表示される異なる大きさのクモの巣が記載されている。【図13】複数個のキーを選択した場合は、「そのアプリケーションはキーパッド構成命令をキーパッドプロトコル206に送信することができる。この構成命
5 令は、キーパッド20にテーマを適用する際に実装されるグラフィックファ
イル(またはメモリに記憶されたグラフィックファイルへのポインタ)を含むことができる。」(【0023】)として、複数個のキーにグラフィックを取り込むことが開示されている。取り込まれたグラフィックに関しては、「ステップ516で、キーパッドドライバは、キーパッドを、キーパッドプロトコル206から受信された構成命令に従ってテーマに関連付けられたイメージを表示するように構成することができる。」(【0023】)として、上記【図11B】や【図13】のように、全てのキーにクモの巣が背景画として貼り付けられている。このように1個のキーを選択するか複数個のキーを選択するかにかかわらず、乙2文献は、液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法を開示している。イ 乙2発明の構成以上のとおりであるから、乙2-1発明は、以下のA’1~E’1の構成を備えているといえる。A’1 液晶ディスプレイのキーボード部における数字又は文字(英字を含
5 む。)入力のキーボード部内に表示されている
B’1 1個のキーを選択又は複数個のキーを選択し、C’1 ユーザにより選択されたグラフィックを取り込み、D’1 B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだグラフィックを背景画として貼り付けることを特徴とするE’1 液晶ディスプレイのキーボード部の背景の画像を着せ替える方法。また、乙2-2発明は、以下のA’2及びB’2の構成を備えている。A’2 選択されたグラフィックは、背景画として貼り付ける前に、グラフィックの位置や大きさの変更による編集がなされるB’2 A’1 ないしE’1 に記載の液晶ディスプレイのキーボード部の背景の画像を着せ替える方法。ウ 乙2発明に基づく本件各発明の新規性の欠如について乙2-1発明は、本件発明1の構成要件と一致し、乙2-2発明は、本件発明2の構成と一致する。(ア)本件発明1について
① A1について
乙2-1発明において、キーが、「液晶ディスプレイのキーボード部における数字又は文字(英字を含む。)入力のキーボード部内」に表示されている(構成A’1)から、乙2-1発明の構成A’1は、本件発明1の「液晶画面におけるローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている」(構成要件A1)と一致する。
② B1について
乙2-1発明は、「1個のキーを選択又は複数個のキーを選択し、」(B’1)との構成を備えており、本件発明1の「1個又は複数個のキーを選択し、」(構成要件B1)と一致する。
③ C1について
5 乙2-1発明は、「ユーザにより選択されたグラフィックを取り込み、」
(構成C’1)との構成を備えているところ、「画素材」とは、「キーボードの背景画として取込、変形、貼付が可能に準備された動画や模様を含む画像又は、図柄等」をいうとされており(甲1の2【0004】)、「グラフィック」がこれに含まれることは明らかであり、「画素材」に該当するから、本件発明1の「模様を含む画像又は図柄である画素材を取り込み、」(構成要件C1)と一致する。
④ D1について
乙2-1発明は、「B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだグラフィックを背景画として貼り付けることを特徴とする」(構成D’1)との構成を備えており、本件発明1の「「該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする」(構成要件D1)と一致する。
⑤ E1について
乙2-1発明の構成E’1は、「液晶ディスプレイのキーボード部の背景の画像を着せ替える方法。」の構成を備えており、本件発明1の「液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件E1)と一致する。(イ)本件発明2について
① A2について
乙2文献の【図13】では、仮想キーごとに表示される異なる大きさのクモの巣が記載されていること、「ユーザは、図13に示すように、クモの巣として出現するように各仮想キー412を変更することを選択することができる。」(【0027】)、及び「シンボルまたは文字の色、サイズ、フォント、形式、言語または配向を変更することができる」(【0029】)との記載があることに照らすと、乙2文献は、乙2発明に仮想キーごとに画素材の大きさを変更する機能があることを開示しているといえ、乙2-2発明は、
5 「選択されたグラフィックは、背景画として貼り付ける前に、グラフィック
の位置や大きさの変更による編集がなされる」(構成A’2)との構成を備えており、本件発明2の「該画素材は、貼付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集がなされる」(構成要件A2)と一致する。
② B2について
乙2-2発明は、「A’1 ないしE’1 に記載の液晶ディスプレイのキーボード部の背景の画像を着せ替える方法。」(構成B’2)の構成を備えており、本件発明2の「請求項2に記載の液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件B2)と一致する。(ウ)小括以上を対比表にまとめると次のようになる。本件発明1本件発明1の構成要件 乙2文献の開示内容A1 液晶画面におけるローマ字入力 A’1 液晶ディスプレイのキーボード部にのキーボード部又は日本語入力 おける数字又は文字(英字を含む。)のテンキーによるキーボード部 入力 のキーボード部内に表示されて内に表示されている いるB1 1個又は複数個のキーを選択 B’1 1個のキーを選択又は複数個のキーし、 を選択し、C1 模様を含む画像又は図柄である C’1 ユーザにより選択されたグラフィッ画素材を取り込み、 クを取り込み、D1 該選択された各キー毎に同一の D’1 B’1 で選択したキー毎に C’1 で取り込該取り込まれた画素材を背景画 まれたグラフィックを背景画としてとして貼付けることを特徴とす 貼り付けることを特徴とするるE1 液晶キーボードの背景の画像を E’1 液晶ディスプレイのキーボード部の着せ替える方法。 背景の画像を着せ替える方法。本件発明2本件発明2の構成要件 乙2文献の開示内容A2 該画素材は、貼り付け前に拡大 A’2 選択されたグラフィックは、背景画縮小、移動、または変形による として貼り付ける前に、グラフィッ編集がなされる クの位置や大きさの変更による編集がなされるB2 請求項2に記載の液晶キーボー B’2 A’1 ないし E’1 に記載の液晶ディスプドの背景の画像を着せ替える方 レイのキーボード部の背景の画像を法。 着せ替える方法。以上より、本件発明1は、乙2-1発明とその構成が一致し、本件発明2は、乙2-2発明とその構成が一致しているため、本件各特許は、新規性
5 欠如(特許法29条1項3号)による無効理由を有するものである。
エ 本件各発明の進歩性欠如について(ア)本件発明1について仮に、乙2-1発明の「数字又は文字(英字を含む。)入力のキーボード部」(構成A’1)が、構成要件A1の「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部」と一致しないとしても、前記
(1)無効理由1のウで述べたとおり、モバイルデバイスの液晶画面に表
示されるキーボードをテンキーにするか、フルキーボードにするか、また、入力文字をどのように設定するかは、当業者の設計事項であり、本件発明1は、乙2発明の設計変更によりその構成を達成することができるも
5 のである。
仮に、当業者の設計変更の範囲内であるといえない場合でも、本件特許の出願日において、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーによるキーボードは、スマートフォンを含むモバイルデバイスの技術分野において周知の技術であった。そして、乙2-1発明と、上記周知技術の技術分野はモバイルデバイスのキーに関するもので同一であり、キーに背景画を貼り付けて背景変更をすることについては、数字又は文字入力のキーボードだけではなく、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーにも共通する課題であることから、乙2発明に上記乙2号証及び乙3号証記載のいずれかの発明又は周知技術(別紙周知技術図面目録参照)を適用する動機付けも認められる。したがって、本件発明1は、当業者が容易に発明できるものであって、進歩性欠如による無効理由(特許法29条2項)を有する。(イ)本件発明2について仮に、乙2-2発明が、画素材が「貼り付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集」可能なことを明示しておらず、本件発明2の構成要件A2と一致しないとしても、乙2-2発明と乙1発明を組み合わせることは、当業者が容易に想到しうるものである。すなわち、キーの背景に画像を貼り付けるにあたって、画素材の模様がキー内に表示されるようにしなければ着せ替えによる背景変更の効果は半減してしまう。そして、乙2発明と技術分野はいずれもモバイルデバイスのキーに関するもので同一である上、モバイルデバイスのキーの背景を変更するという作用のための発明であり、作用が共通していること、乙1ウェブサイトはインターネット上で公表されているものであり、キーに背景を貼り付けるにあたって、画素材がキーの範囲にうまくはまるように位置を調整したり、端が切れないよ
5 うに大きさを変えたりして変更する必要があるという課題も共通するから、
乙2発明に乙1発明を組み合わせる動機付けも認められる。両者を組み合わせることにより、本件発明2は当業者が容易に発明することができるものであるといえる。したがって、本件発明2は、当業者が容易に発明することができたのであり、進歩性欠如(特許法29条2項)による無効理由を有するものである。
(3)無効理由3
本件発明1は、特開2010-186350号公報(公開日:2010年8月26日)(乙20号証。以下「乙3文献」という。)に記載された発明(以下「乙3発明」という。)と同一、又は、これに基づき容易に発明することができたものであるため、新規性欠如(特許法29条1項3号)又は進歩性欠如(同条2項)による無効理由を有する。また、本件発明2は、乙3発明に基づき容易に発明することができたものであるため、進歩性欠如(同条2項)による無効理由を有する。ア 乙3文献の記載内容乙3文献は、携帯端末に関する発明の公開特許公報であり、同文献には次のような記載がある。「メインパネル5は、LCDや有機EL等による表示専用の表示手段である。・・・キーパネル10は、キー表示部101の上に透過性のキー入力部102が重畳した構造であり、任意配置のキー表示とキー入力ができるいわゆるソフトキーである。」(【0010】)とし、【図2】においてテンキーを表示して、LCD(液晶ディスプレイ)に表示されるキーボードについて記載している。【図2】
5 また、キーボードのキーの選択については、「広告キーIDデータC5は、
広告をポインティングするためのキーパネルのキー(リンクキー)を指定するデータであり、広告番号1については、キーパネルの数字キー『1』を指定し、広告番号2については、キーパネルの数字キー『2』を指定するものである。」(【0019】)として、1個のキーを選択する記載がある。選択されたキーに対して画素材が取り込まれる手順については、「広告キー静止画C7は、複数種類の広告キー静止画を有し、それぞれが、埋め込み広告付き動画C1内の広告画像と類似または同等の画像が記録されている。」(【0021】)こと、「キー割当て制御部8は、広告番号1の広告キー静止画IDデータC6の値『広告キー画像1のID』と、これに対応する広告キー静止画C7(この例では人形マークのアイコン)を読み取って、広告番号1の広告キー画像IDデータC5の値『数字キー1』の座標位置にシフトした広告キー画像
5 8cを作成し、キー画像制御部9のキー画像合成部92へ送出する。」(【00
30】)と説明している。さらに、「キーパネル10には、広告キー静止画C7を、広告キーIDデータC5で指定されたキーの座標位置に広告キー時刻C4に合わせて表示することにより、図2のように順次表示される。」(【0022】)こと、「キー画像合成部92は、通常キー画像記憶部91からの通常キー画像91aに、広告キー画像8c(この例では広告キー静止画C7の内の人形マークのアイコン)を合成して、キーパネル10のキー表示部101に表示する。なお、この合成は、単純な合成であってもよいし、通常キー画像に広告キー画像を上書きする合成であってもよい。」(【0033】)との記載があり、取り込まれた画素材がキーに貼り付けられ表示されるとしている。イ 乙3発明の構成乙3発明は、以下のA’1~E’1の構成を備えているといえる。A’1 液晶ディスプレイのキーパネル10における数字入力のテンキーによるキーボード部内に表示されているB’1 広告をポインティングするための1個のキー(リンクキー)を選択し、C’1 広告キー静止画を取り込み、D’1 B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだ広告キー静止画を背景画として貼り付けることを特徴とするE’1 液晶ディスプレイのキーパネル10の背景の画像を着せ替える方法。ウ 乙3発明に基づく本件発明1の新規性欠如について乙3発明は、本件発明1の構成要件と一致する。
① A1について
乙3発明においては、「液晶ディスプレイのキーパネル10における数字
5 入力のテンキーのキーボード部内」にキーが表示されており(構成A’
1)、本件発明1の「液晶画面におけるローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている」(構成要件A1)と一致する。
② B1について
乙3発明は、「広告をポインティングするための1個のキー(リンクキー)を選択し、」(構成B’1)との構成を備えており、本件発明1の「1個又は複数個のキーを選択し、」(構成要件B1)と一致する。
③ C1について
乙3発明は、「広告キー静止画を取り込み、」(構成C’1)との構成を備えており、本件発明1の「模様を含む画像又は図柄である画素材を取り込み、」(構成要件C1)と一致する。
④ D1について
乙3発明は、「B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだ広告キー静止画を背景画として貼り付けることを特徴とする」(構成D’1)との構成を備えており、本件発明1の「該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする」(構成要件D1)と一致する。
⑤ E1について
乙3発明の構成E’1は、「液晶ディスプレイのキーパネル10の背景の画像を着せ替える方法。」との構成を備えており、本件発明1の「液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件E1)と一致する。以上を対比表にまとめると次のようになる。本件発明1本件発明1の構成要件 乙3文献の開示内容A1 液晶画面におけるローマ字入力 A’1 液晶ディスプレイのキーパネル10のキーボード部又は日本語入力 における数字入力のテンキーによるのテンキーによるキーボード部 キーボード部内に表示されている内に表示されているB1 1個又は複数個のキーを選択 B’1 広告をポインティングするための1し、 個のキー(リンクキー)を選択し、C1 模様を含む画像又は図柄である C’1 広告キー静止画を取り込み、画素材を取り込み、D1 該選択された各キー毎に同一の D’1 B’1で選択したキー毎に C’1で取該取り込まれた画素材を背景画 り込んだ広告キー静止画を背景画ととして貼付けることを特徴とす して貼り付けることを特徴とするるE1 液晶キーボードの背景の画像を E’1 液晶ディスプレイのキーパネル10着せ替える方法。 の背景の画像を着せ替える方法。以上のとおり、本件発明1は、乙3発明とその構成が一致しているため、本件特許1は、新規性欠如(特許法29条1項3号)による無効理由を有する
5 ものである。
ウ 本件発明1の進歩性欠如について仮に、乙3発明の「液晶ディスプレイのキーパネル10における数字入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている」(構成A’1)が、構成要件A1の「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部」と一致しないとしても、前記(1)無効理由1のウで述べたとおり、モバイルデバイスの液晶画面に表示されるキーボードをテンキーにするか、フルキーボードにするか、また、入力文字をどのように設定するかは、当業者の設計事項であり、本件発明1は、乙3発明の設計変更によりその構成を達成することができるものである。
5 仮に、当業者の設計変更の範囲内であるといえない場合でも、本件特許の
出願日において、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーによるキーボードは、スマートフォンを含むモバイルデバイスの技術分野において周知の技術であった。そして、乙3発明と上記周知技術の技術分野は同一であり、キーに背景画を貼り付けるという背景変更をすることについては、数字入力のキーボードだけではなく、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーにも共通する課題であることから、乙3発明に上記乙2号証及び乙3号証記載のいずれかの発明又は周知技術(別紙周知技術図面目録参照)を適用する動機付けも認められる。したがって、本件発明1は、当業者が周知技術を適用して乙3発明に基づき容易に発明することができたのであり、進歩性欠如による無効理由(特許法29条2項)を有するものである。エ 本件発明2の進歩性欠如について乙3文献は、画素材が編集可能なことを明示していないが、上記(2)無効理由2のエ(イ)で述べたのと同様、乙3発明と乙1発明を組み合わせることは、当業者が容易に想到しうるものである。したがって、乙1発明を適用して乙3発明に基づいて本件発明2を容易に発明することができたことから、進歩性欠如による無効理由(特許法29条2項)を有するものである。
(4)無効理由4
本件各発明は、スマートフォンのアプリケーション「My 電卓 Free - お好きにデコって!」(乙21号証。以下「乙4公知技術」という。)により公然知られた発明(以下、本件発明1に対応する発明を「乙4-1発明」、本件発明2に対応する発明を「乙4-2発明」といい、両者を総称して「乙4発明」という。)と同一、又は、これに基づき容易に発明することができたものであるため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項1号)又は進歩性欠如(同条2項)によ
5 る無効理由を有する。
ア 乙4発明の構成乙4公知技術は、iPhone にインストールして使用する電卓アプリケーションであり、無料公開されている(最終更新日は2016年9月8日)。その処理手順、操作手順の詳細は、乙21号証記載のとおりである。乙4-1発明は、以下のA’1~E’1の構成を備えている。A’1 iPhone 液晶画面における数字入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている(ステップ2)B’1 1つのキーを選択し(ステップ3)、C’1 ユーザにより選択された絵や文字が記載された画像を取り込み(ステップ4) 、D’1 B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだ画像を背景画として貼り付けること(ステップ6) を特徴とするE’1 iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法。また、乙4-2発明は、以下のA’2及びB’2の構成を備えている。A’2 選択された画像は、背景画として貼り付ける前に、画像の位置や大きさの変更による編集がなされる(ステップ5)B’2 A’1 ないしE’1 に記載の iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法。イ 乙4公知技術に基づく新規性の欠如について乙4-1発明は、本件発明1の構成と一致し、乙4-2発明は、本件発明2の構成と一致する。(ア)本件発明1について
① A1について
乙4-1発明は、iPhone 用のアプリケーションであり、最終更新日である2016年9月8日当時、iPhone のディスプレイは液晶であったと考え
5 られるため、キーボードは液晶画面に表示されることになるから、「液晶画
面における」(構成A’1)という構成を備えている。また、乙4-1発明は、キーが「数字入力のテンキーによるキーボード部内」に表示されている(構成A’1)ところ、数字入力のテンキーもキーボードの一種であるから、乙4-1発明の構成A’1は、「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている」(構成要件A1)の構成と一致する。
② B1について
乙4-1発明は、「1つのキーを選択し」(構成B’1)との構成を備えており、本件発明1の「1個又は複数個のキーを選択し」(構成要件B1)の構成と一致する。
③ C1について
乙4-1発明は、「ユーザにより選択された絵や文字が記載された画像を取り込み」(構成C’1)との構成を備えており、本件発明1の「模様を含む画像又は図柄である画素材を取り込み」(構成要件C1)と一致する。
④ D1について
乙4-1発明は、「B’1 で選択したキー毎にC’1 で取り込んだ絵や文字が記載された画像を背景画として貼付けることを特徴とする」(構成D’1)との構成を備えており、本件発明1の「該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする」(構成要件D1)と一致する。
⑤ E1について
乙4-1発明の構成E’1は、「iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法」の構成を備えており、本件発明1の「液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件E1)と一致する。(イ)本件発明2について
5 ① A2について
乙4-2発明は、「選択された画像は、背景画として貼り付ける前に、画像の位置や大きさの変更による編集がなされる」(構成A’2)との構成を備えており、本件発明2の「該画素材は、貼付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集がなされる」(構成要件A2)と一致する。
② B2について
乙4-2発明は「A’1 ないしE’1 に記載の iPhone 液晶画面上のキーボードの背景の画像を着せ替える方法」(構成B’2)の構成を備えており、本件発明2の「請求項2に記載の液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法。」(構成要件B2)と一致する。(ウ)小括以上を対比表にまとめると次のようになる。本件発明1本件発明1の構成要件 乙4公知技術の開示内容A1 液晶画面におけるローマ字入力 A’1 iPhone 液晶画面における数字入力ののキーボード部又は日本語入力 テンキーによるキーボード部内に表のテンキーによるキーボード部 示されている内に表示されているB1 1個又は複数個のキーを選択 B’1 1つのキーを選択し、し、C1 模様を含む画像又は図柄である C’1 ユーザにより選択された絵や文字が画素材を取り込み、 記載された画像を取り込みD1 該選択された各キー毎に同一の D’1 B’1 で選択したキー毎に C’1 で取該取り込まれた画素材を背景画 り込んだ画像を背景画として貼り付として貼付けることを特徴とす けること(ステップ6) を特徴とするるE1 液晶キーボードの背景の画像を E’1 iPhone 液晶画面上のキーボードの背着せ替える方法。 景の画像を着せ替える方法。本件発明2本件発明2の構成要件 乙4公知技術の開示内容A2 該画素材は、貼り付け前に拡大 A’2 選択された画像は、背景画として貼縮小、移動、または変形による り付ける前に、画像の位置や大きさ編集がなされる の変更による編集がなされB2 請求項2に記載の液晶キーボー B’2 A’1 ないしE’1 に記載の iPhoneドの背景の画像を着せ替える方 液晶画面上のキーボードの背景の画法。 像を着せ替える方法以上より、本件発明1は、乙4-1とその構成が一致し、本件発明2は、乙4-2発明とその構成が一致しているため、本件各特許は、新規性欠
5 如(特許法29条1項1号)による無効理由を有するものである。
ウ 本件各発明の進歩性欠如について仮に、乙4発明の「テンキーによるキーボード部」(構成A’1)が、構成要件A1の「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部」と一致しないとしても、前述の(1)無効理由1のウで述べたとおり以下のとおり、本件各発明は、進歩性を欠くものといえる。すなわち、前記(1)ウのとおり、モバイルデバイスの液晶画面に表示されるキーボードをテンキーにするか、フルキーボードにするか、また、入力文字をどのように設定するかは、当業者の設計事項であって、本件各発明は、乙4発明の設計変更によりその構成を達成することができるものである。また、仮に本件各発明が、乙4発明の設計変更の範囲内であるといえない
5 としても、前記(1)ウの周知技術との組み合わせにより、いずれにせよ進
歩性は否定される。すなわち、乙4発明と、上記周知技術の技術分野はいずれもモバイルデバイスのキーに関するもので同一であり、使用者のニーズによって異なる配置、文字入力機能を有するキーに応用するため、当業者が乙4発明に上記周知技術を適用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の結果にすぎない。さらに、背景に画像を貼り付けるという背景変更をすることについては、数字テンキーだけではなく、ローマ字入力のキーボードや日本語入力のテンキーにも共通する課題であることから、乙1発明に上記周知技術を適用する動機付けも認められる。したがって、本件各発明は、乙4発明に基づき当業者が容易に発明することができたのであり、進歩性欠如(特許法29条2項)による無効理由を有するものである。
(5)総括
以上のとおりであるから、本件各発明には、新規性又は進歩性の欠如による無効理由があり、特許無効審判により無効とされるべきものであるから特許法104条の3第1項に基づき、原告らの被告に対する本件各特許権の行使は許されない。」以上(別紙)無効理由
(原告の主張)
【令和7年6月23日付け準備書面(原告第1回)第1(抜粋)】
5 「6 被告第1準備書面第2、4、(1)
(1)同項柱書
否認ないし争う。
(2)同項ア
不知。乙1は、被告代理人弁理士が作成した報告書であり、公平、中立な立場から作成されたものとはいえず、その記載内容を信用することはできない。乙1の1頁に記載の URL では、令和7年5月30日の時点では YouTube の動画は再生できないと表示されている(甲14)。また、乙1の3頁では、「ここでは、本動画が開示されたのが、2016年(平成28)年8月31日であることが示される。」と記載され、動画表示の下欄に「576 回視聴2015/08/31」との表示がなされているが、それだけでは、「2015/08/31」が具体的に何を意味するかは明らかではないうえ、仮に同日に動画が YouTubeにアップされたとしても、その後に当該動画が修正されていないことを当該表示によって示されるものではない。
(3)同項イ
ア 被告は同項で、「本件発明1は、乙1−1発明とその構成が一致し、本件発明2は、乙1−2発明とその構成が一致しているため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項3号)による無効理由を有するものである。」と主張している。イ 仮に乙1の動画に被告が主張するような機能、動作があるとしても、本件各発明と乙1−1発明及び乙1−2発明(以下併せて「乙1両発明」と総称する。)には以下の相違がある。(ア)乙1の報告書の画面では、「Enter Passcode」と記載されているように(乙1・6頁)、パスコードのキーを対象とするもので、本件各発明の液晶画面におけるローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテン
5 キーによるキーボード部ではない。
また、乙1両発明は、固定された全画面上のパスコード入力画面でのみ使用され、他のキーに切り替えられることのないキーを対象とするものであるのに対して、本件各発明の対象となるキーボードは、「メモ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有するものである点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっている。(イ)以下に指摘するように、乙1両発明は、パスコードのキーを1個選ぶだけで、複数個のキーを選ぶことはできず、本件各発明の1個のキーを選ぶだけではなく、複数個のキーを選ぶことができる「1個又は複数個のキーを選択し」と異なるものである。
① 「又は」は「二つ以上の事柄のどれかが選ばれる関係にあることを
表す。」、「選択」は「二つ以上のものの中から条件にあったもの、また、よりよいものを選び出すこと。」の意味である(甲15)。
② 本件明細書には、「該画素材編集された画素材や画素材編集をしな
いで背景画として取り込まれた画素材をキーボード部内の全領域又は任意により選択された領域上で表示されている画素材の部分だけを背景画としてキーボードに上書き貼付けを実施し、該実施を『背景貼付』とする。」(【0004】)、「キーボード全体の背景画だけの選択から、キーボード内で色んな領域に、色んな画像や模様を個人の好みに合わせた、多彩な画像により構成された背景画を表示できる。」(【0007】)、「図12は、図11で『次を選択』キー(45)をタップしたので、組内取込された画素材がそのまま背景貼付され、新しい背景画が設定されたーキーボード部(24)が表示され、新
5 たに「Q、R、T、I、O、P、A、F、L、−、Z、X」による1
2個のキーをタップすることで選択して『12個組キー』領域とし、『アイテム』キー(44)を選択する設定画面(31)の図である。」(【0021】)、「『全キーの選択』キー(41)はキーボード部に配置されている全てのキー及びキーの領域を選択する機能キー」(【0011】の1)、「『次を選択』キー(45)はキーボード部内で選択された領域(一個ずつのキーを含む)内に表示されている部分だけの画像をキーボード部内で背景貼付を実施する機能キー」(【0011】の5)、「『取り込み領域』キー(48)はキーボード部内で画素材を取り込み、貼り付けるための任意による領域を配置し、該配置した領域を『取込領域』とし、該取込領域を表示させる機能キー」(【0011】の5)と記載されている。
③ 二つの事柄とされている「1個」と「複数個」は両立する関係には
なく、いずれかを選択する必要があるものである。
④ 本件発明1の構成要件D1では「該選択された各キー毎に同一の該
取り込まれた画素材を背景画として貼り付ける」とされているが、当該「各キー」は構成要件B1の「1個又は複数個のキー」を示すものとして使用されており、「該選択された各キー」の「該選択」は、1個のキーと複数個のキーの間の選択を意味すると考えざるを得ない。
⑤ これらのことからすると、方法の発明である本件発明1の構成要件
Bの「1個又は複数個のキーを選択し」は、1個のキーと全部を含む複数個のキーの間でキーの領域を含めて任意に選ぶことを意味すると解される。すなわち、本件明細書では「選択」を着せ替えの対象となる複数のキーの領域を指定する趣旨で使用されているが、それは同時に複数
5 個のキーも選択する趣旨のものである(上記②の【0021】では
12個のキーがその領域とともに選択されることが記載されている。)。また「画素材として選択」(【0008】【図3】)、「次の選択」(【0008】【図4】)のように「選択」をキーの領域を指定する趣旨と異なる使用もされているうえ、1個のキーと複数個のキーとが「又は」で接続された関係で「選択」は使用されておらず、上記①の「又は」、「選択」の意味を無視して構成要件Bの「1個又は複数個のキーを選択し」の「選択」を本件明細書記載の単にキーの領域を指定する趣旨と理解しなければならないものではない。逆に、上記③のように、構成要件D1の「該選択された各キー」の「該選択」は、1個のキーと複数個のキーの間の選択のことであり、構成要件Bの「1個又は複数個のキーを選択し」の「選択」も同じ趣旨のものと解さざるを得ない。しかも、「選択」を単にキーの領域を指定する趣旨とすると、1個のキーを指定するだけで、構成要件Bの「選択し」に該当することになりかねないが、それだけでは、本件明細書に記載の「該画素材編集された画素材や画素材編集をしないで背景画として取り込まれた画素材をキーボード部内の全領域又は任意により選択された領域上で表示されている画素材の部分だけを背景画としてキーボードに上書き貼付けを実施し、該実施を『背景貼付』とする。」(本件明細書【0004】)、「キーボード全体の背景画だけの選択から、キーボード内で色んな領域に、色んな画像や模様を個人の好みに合わせた、多彩な画像により構成された背景画を表示できる。」(本件明細書【0007】)とすることはできず、本件各発明の効果を生ずることはできない。構成要件Bで「1個又は複数個のキーを選択し」が要件とされたの
5 は、キーボード部内で背景画の差替えの対象となるキーが1個のキ
ーを含め全キーの間で任意の領域で選択できることを示すためであって、このような目的をふまえると、「1個又は複数個のキーを選択し」は、キーボード部内で背景画の差替えの対象となるキーとして「1個のキー」と「複数個のキー」の間で選択するとともに当該選択によるキーの領域の選択を行うものと解すべきである。
⑥ 仮に、方法の発明としての構成要件Bの「1個又は複数個のキーを
選択し」の「選択」が単に着せ替えの対象となるキーの領域を指定する趣旨であるとされたとしても、上記①で述べたように、「又は」は、「二つ以上の事柄のどれかが選ばれる関係にあることを表す。」の意味であり(甲15)、本件明細書に「該画素材編集された画素材や画素材編集をしないで背景画として取り込まれた画素材をキーボード部内の全領域又は任意により選択された領域上で表示されている画素材の部分だけを背景画としてキーボードに上書き貼付けを実施し、該実施を『背景貼付』とする。」(【0004】)と記載され、上記③で述べたように二つの事柄とされている「1個」と「複数個」は両立する関係にはなく、いずれかを選択する必要があることをふまえれば、構成要件Bの「1個又は複数個のキーを選択し」の「又は」は、二つの事柄である「1個」のキーと「複数個」のキーの間でいずれのキーも選ばれる関係にあることを意味するものと解すべきで、結果として1個のキーが選ばれることは否定されないが、キーを選ぶ時点では、1個のキーだけではなく複数個のキーも選べる状況にあることが必要であり、乙1両発明のように1個のキーに固定され、複数個のキーを選べる状況にないものは、「1個又は複数個のキーを選択し」とは異なる。ウ 以上から、本件各発明と乙1両発明は、上記(ア)及び(イ)の点で構
5 成が異なっており、構成が一致しているといえず、本件各発明の新規性
は否定されるものではない。
(4)同項ウ
ア 被告は同項で、「モバイルデバイスの液晶画面に表示されるキーボードをテンキーにするか、フルキーボードにするか、また、入力文字をどのように設定するかは、当事者の設計事項であって、本件各発明は、乙1発明の設計変更によりその構成を達成することができるものである。」、「仮に本件各発明が、乙1発明の設計変更の範囲内であるといえないとしても、次の周知技術との組み合わせにより、いずれにせよ進歩性は否定される。」と主張している。イ しかし、仮に乙1の動画に被告が主張するような機能、動作があるとしても、上記(3)で述べたように、乙1両発明は、固定された全画面上のパスコード入力画面でのみ使用され、他のキーに切り替えられることのないキーを対象とするものであるのに対して、本件各発明の対象となるキーボードは、「メモ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有する点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっていることからして、乙1両発明のパスコードキーと本件各発明のキーボードは、アプリとしての構成、機能が大きく相違しており、乙1両発明のパスコードキーから本件各発明の文字入力用のキーボードに設計変更できるようなものでもなければ、文字入力用のキーボードが周知技術であっても、それを乙1両発明に組み合わせることはできるものではなく、本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。ウ 上記(3)、イ、(イ)で述べたように、乙1両発明は、パスコードのキ
5 ーを1個選ぶだけで、複数個のキーを選ぶことはできず、本件各発明の
1個のキーを選ぶだけではなく、複数個のキーを選ぶことができる「1個又は複数個のキーを選択し」と異なっているが、当該相違点について、乙1の動画には何らの説明もなければ、示唆もなく、乙1両発明から本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。エ 小括以上から、明らかなように、本件各発明は、乙1両発明に基づき当業者が容易に発明することはできないのであって、進歩性は否定されるものではなく、本件各発明は無効審判により無効となるものではない。
7 被告第1準備書面第2、4、(2)
(1)同項ア
ア 同項柱書被告は同項柱書で、「液晶ディスプレイに数字や文字を出現させるキーボード部を設けることが開示されている。」と主張している。しかし、乙19の公開特許公報記載の発明(以下「乙19発明」という。)に、「キーパッド20上に出現する数字または文字のサイズを、ユーザーの選好または選択に従って変更することができる。本実施形態では、モバイルデバイスは、ユーザーがキーパッド20上に出現する数字、シンボルまたは文字の色、サイズ、フォント、形式、言語又は配向を変更することができるように、ソフトフェアで構成される。」(【0029】)と記載されているように、キーバッド20上に数字、文字、シンボルが出現され、それが変更できることが記載されるにとどまり、本件発明1の構成要件A1の「ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部」についての記載もなければ示唆もされていない。イ 同項(ア)
5 被告は同項で、「1個のキーを選択した場合には」、乙19発明明細書
【0044】の記載から「選択した1個のキーに関連付けられた名前、グラフィック又はイメージの取り込みが開始されている。」、同【0044】【0045】の記載から「取り込まれた画素材に関して」、「キーに名前、グラフィックまたはイメージが背景画として貼付されることを開示している。」と主張している。しかし、乙19発明では「スピードダイヤルキーに関連付けるべき名前、イメージまたはフラフィックを入力または特定する」、「名前、グラフィックまたはイメージは、指定されたスピードダイヤルキーのキーディスプレイ上に提示される。」(【0044】)と記載されているように、特定のキーをスピードダイヤルキーとして設定するためのものでしかなく、ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内の全領域又は任意により選択された領域上に画素材を背景画として着せ替えするために、キーを選択するものではない。また、乙19発明では、図27、28に記載されているように、元の数字キーと異なるキーがソフトウェアのグラフィック機能により表示されるものであって、本件各発明のようにキー自体を変更することなく画素材を背景画として着せ替えるものではない。ウ 同項(イ)被告は同項で、乙19発明【0023】の記載から「複数のキーを選択した場合は」「複数個のキーにグラフィックを取り込むことが開示されている。」、同【0023】、【図11B】及び【図13】の記載から「全てのキーにクモの巣が背景画として貼り付けられている。」、「このように1個のキーを選択するか複数個のキーを選択するかにかかわらず、乙2文献は、液晶キーボードの背景の画像を着せ替える方法を開示している。」と主張している。
5 しかし、乙19発明には、複数個のキーを選択する旨の記載はなく、単
にキーバッドの数字キー全部にクモの巣を表示することができるとするものでしかないうえ、同【0023】に「モバイルデバイスは、ユーザーがキーパッド20を含み、自身のモバイルデバイス10のテーマを変更することができるように、ソフトウェアで構成できる。」と記載されているように、乙19発明では、数字キーの背景としてクモの巣が出現するよう、ソフトウェアのグラフィック機能により数字キーと一体として表示させるものであって、本件各発明のようにキー自体を変更することなく別に画素材を背景画として着せ替えるものではない。しかも、乙19発明の被告が主張する「1個のキーを選択した場合」のキーはスピードダイヤルキーとするもので、「複数のキーを選択した場合」のキーは背景としてクモの巣が出現する数字キーであり、キーの態様が異なっており、本件発明1の構成要件B1の「1個又は複数個のキーを選択し」、同D1の「該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼り付ける」ものではない。エ また、乙19発明は、固定された全画面上のキーパッド上で使用され、他のキーに切り替えられることのないキーを対象とするものであるのに対して、本件各発明の対象となるキーボードは、「メモ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有するものである点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっている。
(2)同項イ、ウ
ア 被告は同項イで、「乙2−1発明は、以下のA’1〜E’1の構成を備えている。」として、A’1〜E’1の構成を主張し、同項ウ、(ア)で
5 「乙2−1発明は、本件発明1の構成要件と一致し、乙2−2発明は、本
件発明2の構成と一致する。」、「本件発明1は、乙2−1発明とその構成が一致し、本件発明2は、乙2−2発明とその構成が一致しているため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項3号)による無効理由を有する。」と主張している。しかし、
(被告の主張)
するA’1〜E’1の構成は、上記(1)で指摘した本件各発明と乙19発明の相違を捨象するものであり、本件各発明との対比自体が誤りである。以下のように、本件各発明の構成要件A1〜E1と乙19発明のA’1〜E’1の構成は異なっている。乙19発明により本件各発明の新規性は否定されるものではない。(ア)乙19発明は、A’1では、被告が主張する「キーボード部」ではなく、数字、文字が表示されたキーバッドである。(イ)B’1では、被告が主張する「1個のキーを選択又は複数個のキーを選択し、」ではなく、スピードダイヤルキーをキーバッド上のキーから1個指定するのみで、複数個のキーを選択するものではない。また、【図11B】及び【図13】は、複数個のキーを選択するものではない。(ウ)C’1では、被告が主張する「グラフィックを取込み」ではなく、ソフトウェアのグラフィック機能によりキー全体として表示されるようにするものであり、グラフィックを取り込むものではない。(エ)D’1では、被告が主張する「B’1で選択したキー毎にC’1で取り込んだグラフィックを背景画として貼り付けるではなく、」、ソフトウェアのグラフィック機能により、キー全体として表示するものである。(オ)E’1では、被告が主張する「キーボード部の背景の画像を着せ替える方法」ではなく、キーバッド上でソフトウェアのグラフィック
5 機能により、キー全体としてキーを変更して表示するものである。
イ 被告は同項ウ、(イ)、①で、「乙2文献は、乙2発明に仮想キーごとに画素材の大きさを変更する機能があることを開示しているといえ、乙2−2発明は、『選択されたグラフィックは、背景画として貼り付ける前に、グラフィックの位置や大きさの変更による編集がなされる』(構成A’2)との構成を備えており、本件発明2の『該画素材は、貼付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集がなされる』(構成要件A2)と一致する。」と主張している。しかし、仮想キーを変更したり、「シンボルまたは文字の色、サイズ、フォント、形式、言語または配向を変更することができる」ということだけから、グラフィックを貼り付け前に拡大縮小、移動、または変形による編集を行うことができることになるものではないし、上記のように乙19発明は、ソフトウェアのグラフィック機能により、キー全体として表示するもので、貼り付け前にキーに合わせてグラフィックを編集することは想定されておらず、本件発明2の構成要件A2と一致するものではない。ウ 被告の同項ウ、(イ)、②の主張は、上記のように、本件各発明の構成要件A1〜E1と乙19発明のA’1〜E’1の構成は異なっており、前提を誤っており、本件発明2の構成要件B2と乙19発明の構成B’2も一致しない。エ 以上から、乙19発明により本件各発明の新規性は否定されるものではない。
(3)同項エ
ア 同項(ア)被告は同項で、「乙2−1発明の『数字又は文字(英字を含む。)入力のキーボード部』(構成A’1)が、構成要件A1の『ローマ字入力のキー
5 ボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部』と一致しない
としても」、設計変更、周知技術を適用する動機付けも認められることを理由に「本件発明1は、当業者が容易に発明できるものであって、進歩性欠如による無効理由(特許法29条2項)を有する。」と主張している。しかし、乙19発明は、固定された全画面上のキーバッド画面でのみ使用され、他のキーに切り替えられることのないキーを対象とするものであるのに対して、本件各発明の対象となるキーボードは、「メモ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有する点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっていることからして、乙19発明のキーパッドと本件各発明のキーボードは、構成、機能が大きく相違しており、乙19発明のキーパッドから本件各発明の文字入力用のキーボードに設計変更できるようなものでもなければ、文字入力用のキーボードが周知技術であっても、それと乙19発明のキーパッドも構成、機能が大きく相違しており、当該周知技術を乙19発明に組み合わせることはできるものではなく、本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。イ 本件各発明と乙19発明は、ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部の相違の他に上記(1)、(2)で述べたように、種々の相違があり、当該相違について乙19発明には記載もなければ、示唆もなく、乙19発明から本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。ウ 小括以上から、明らかなように、本件各発明は、乙19発明に基づき当業者が容易に発明することはできないのであって、進歩性は否定されるもの
5 ではなく、本件各発明は無効審判により無効となるものではない。
8 被告第1準備書面第2、4、(3)
(1)同項イ
被告は同項で、乙20の公開特許公報の明細書記載の発明(以下「乙20発明」という。)の構成を主張しているが、以下のように誤りがある。ア 乙19発明は、A’1では、被告が主張する「キーボード部」ではなく、「キーパネル」である。イ B’1では、被告が主張する「1個のキー(リンクキー)を選択し」ではない。乙19発明では「コンテンツC内で、『数字キー1』が割り当てられていても、携帯端末200内で、任意に割り当てキーを変更してもよい。」(【0031】と記載されているように、あらかじめ「数字キー1」のキーが指定されており、1個のキーの割り当ては行われないし、任意に割り当てキーを変更する場合であっても、「どのキーを割り当てるかは、特に関連性はなく」(【0019】)、画像に合わせてキーの割り当てを行うようなものではなく、単にキーの押しやすさといった便宜的に割り当てられるものでしかない。ウ C’1では、被告が主張する「広告キー静止画を取り込み」ではない。乙20発明に「この広告キー時刻C4の目的は、メインパネル5の広告画像の表示に同期して、キーパネル10に広告キー画像C7を表示させるためである。」(【0018】)と記載されているように、広告キー画像は、ユーザーが積極的に取り込むものではなく、自動で表示されるものである。エ D’1では、被告が主張する「B’1で選択したキー毎にC’1で取り込んだ広告キー静止画を背景画として貼り付ける」ものでない。上記イ、ウで指摘した事項が異なるうえ、乙20発明に「再生開始後、0秒後〜10秒後の間は、メインパネル5には主画像のみ、キーパネル10には
5 通常キーのみの表示が行われる。10秒後〜20秒後の間は、メインパ
ネル5には主画像と広告画像1、キーパネル10には通常キーと広告キー画像1が表示され、広告画像1と広告キー画像1の表示の同期が取れている。」(【0036】)と記載されているように、広告キー画像1の表示は一時的、暫定的なものであり、キーの背景画として貼り付けるものではない。オ E’1では、被告が主張する「液晶ディスプレイのキーパネル10の背景画像を着せ替える方法。」ではない。上記エで述べたように広告キー画像1の表示は一時的、暫定的なものであり、キーの背景画として着せ替えるものではない。
(2)同項ウ
被告は同項で、①から⑤の対比により「乙3発明は、本件発明1の構成要件と一致する。」、「本件発明1は、乙3発明とその構成が一致しているため、本件特許1は、新規性欠如(特許法29条1項3号)による無効理由を有するものである。」と主張している。しかし、被告の当該対比は、上記(1)で指摘した構成の違いを捨象してなされたもので、本件各発明と乙20発明は、構成は一致しているとの主張は誤りであることは明らかである。しかも、同項②では、「本件発明1の『1個又は複数個のキーを選択し、』(構成要件B1)と一致すると主張しているが、上記6、(3)、イ、(イ)で述べたように、乙20発明は1個のキーを選ぶだけで、複数個のキーを選ぶことはできず、本件各発明の1個のキーを選ぶだけではなく、複数個のキーを選ぶことができる「1個又は複数個のキーを選択し」と異なるものである。これらのことから明らかなように、本件各発明の構成要件A1〜E1と乙20発明のA’1〜E’1の構成は異なっており、乙20発明により本件各
5 発明の新規性は否定されるものではない。
(3)同項ウ(エの誤りと思われる)
ア 被告は同項で、「乙3発明の『液晶ディスプレイのキーパネル10における数字入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている』(構成A’1)が、構成要件A1の『ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部』と一致しないとしても」、設計変更、周知技術を適用する動機付けも認められることを理由に「本件発明1は、当業者が容易に発明できるものであって、進歩性欠如による無効理由(特許法29条2項)を有する。」と主張している。しかし、乙20発明は、固定された全画面上のキーパネル画面でのみ使用されるキーを対象とされ、他のキーに切り替えられることのないものであるのに対して、本件発明1の対象となるキーボードは、「メモ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有する点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっていることからして、乙20発明のキーパネルと本件各発明のキーボードは、構成、機能が大きく相違しており、乙20発明のキーパネルから本件各発明の文字入力用のキーボードに設計変更できるようなものでもなければ、文字入力用のキーボードが周知技術であっても、それと乙20発明は構成、機能が大きく相違しており、同周知技術を乙20発明に組み合わせることはできるものではなく、本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。イ 本件各発明と乙20発明は、ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部の相違の他に上記(1)、(2)で述べたように、種々の相違があり、当該相違について乙20発明には記載もなけれ
5 ば、示唆もなく、乙20発明から本件発明1を当業者が容易に想到できる
ものではない。ウ 小括以上から、明らかなように、本件発明1は、乙20発明に基づき当業者が容易に発明することはできないのであって、進歩性は否定されるものではなく、本件各発明は無効審判により無効となるものではない。
(4)同項エ(オの誤りと思われる)
被告は同項で、「乙3文献は、画素材が編集可能なことは明示していないが、上記(2)無効理由2のエ(イ)で述べたのと同様、乙3発明と乙1発明を組み合わせることは、当業者が容易に想到しうるものである。したがって、乙1発明を適用して乙3発明に基づいて本件発明2を容易に発明することができたことから、進歩性欠如による無効理由(特許法29条2項)を有するものである。」と主張している。しかし、乙1発明のパスコードのキーと乙20発明のキーパネルのキーは構成、機能が異なるものであるうえ、上記(1)、ウで述べたように乙20発明では、広告キー画像は、ユーザーが積極的に取り込むものではなく、自動で表示されるものであり、ユーザーによる画像を編集することは想定されておらず、乙1発明を組み合わせるような動機付けはない。否、組み合わせの阻害要因があるというべきである。また、上記(3)で述べたように、乙20発明は、本件発明2の構成となる本件発明1の各構成を容易に想到できない。以上から、乙20発明からは本件発明2を容易に発明することはできないのであって、進歩性は否定されず、無効理由はない。
9 被告第1準備書面第2、4、(4)
(1)同項柱書
否認ないし争う。
5 被告は同項で、「本件各発明は、スマートフォンアプリケーション『My 電
卓 Free-お好きにデコって!』」、(乙21号証。以下『乙4公知技術』という。)により公然知られた発明」「と同一、又はこれに基づき容易に発明することができたものであるため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項3号)又は進歩性欠如特許法29条2項)による無効理由を有する。」と主張しているが、以下に指摘するように誤りである。
(2)同項ア
ア 不知。イ 乙21は、被告代理人弁理士が作成した報告書であり、公平、中立な立場から作成されたものとはいえず、その記載内容を信用することはできない。乙21の1頁に記載の URL では、令和7年6月4日の時点では当該プレビューページは表示されず、「お探しのページは見つかりません」と表示されている(甲16)。また、iPhone の App Store で検索するとバージョンの履歴は 1.0.1 が8年前と表示されており(甲17)、2017年に更新されたものと考えられる。
(3)同項イ、(ア)
仮に乙21の報告書記載のアプリ(以下「乙21発明」という。)が同報告書記載の機能、動作であったとしても、本件発明1と乙21発明の構成は、以下の点で
(被告の主張)
の構成とは異なっている。ア 被告は同項①で、「数字入力のテンキーもキーボードの一種であるから、乙4−1発明の構成A’1は、『ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部内に表示されている』(構成要件A1)の構成と一致する。」と主張している。しかし、乙21発明は、固定された全画面上の電卓用の数字入力のテンキーキーボード画面でのみ使用され、他のキーに切り替えられることの
5 ないものであるのに対して、本件各発明の対象となるキーボードは、「メ
モ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有する点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっていることからして、乙21発明の数字入力のテンキーキーボードと本件各発明のキーボードは、構成、機能が大きく相違しており、単にキーボードであるという点で共通するだけでは、両者の構成が一致しているということはできない。イ 被告は同項②で、「乙4−1発明は、『1つのキーを選択し』(構成B’1)との構成を備えており、本件発明1の「1個又は複数個のキーを選択し、」(構成要件B1)の構成と一致すると主張している。しかし、上記6、(3)、イ、(イ)で述べたように、乙21発明は、数字入力のテンキーキーボードのキーを1個選ぶだけで、複数個のキーを選ぶことはできず、本件各発明の1個のキーを選ぶだけではなく、複数個のキーを選ぶことができる「1個又は複数個のキーを選択し」と異なるものである。ウ 被告は同項④で、「乙4−1発明は、『B’1で選択したキー毎にC’1で取り込んだ絵や文字が記載された画像を背景画として貼付けることを特徴とする』(構成D’1)との構成を備えており、本件発明1の『該選択された各キー毎に同一の該取り込まれた画素材を背景画として貼付けることを特徴とする』(構成要件D1)と一致する。」と主張している。しかし、上記イで述べたように、乙21発明は1個のキーを選ぶだけで、複数個のキーを選ぶことができる本件各発明の「1個又は複数個のキーを選択し」と異なり、その相違により、乙21発明では、画像を背
5 景画として貼り付けるキーも1個でしかなく、複数個の画素材を背景画
として貼り付けることができる本件発明1とは異なるものである。
(4)同項イ、(ウ)
被告は同項で、「本件発明1は、乙4−1とその構成が一致し、本件発明2は、乙4−2発明とその構成が一致しているため、本件各特許は、新規性欠如(特許法29条1項1号)による無効理由を有するものである。」と主張している。しかし、上記(2)で述べたように、本件各発明と乙21発明は、上記
(2)ア、イ、ウの構成が異なっており、構成が一致しているといえず、
本件各発明の新規性は否定されるものではない。
(5)同項ウ
ア 被告は同項で、「乙4発明の『テンキーによるキーボード部』(構成A’1)が、構成要件A1の『ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部』と一致しないとしても」、前述の設計変更、周知技術を適用する動機付けも認められることを理由に「本件各発明は、乙4発明に基づき当業者が容易に発明することができたものであり、進歩性欠如(特許法29条2項)による無効理由を有するものである。」と主張している。しかし、乙21発明は、固定された全画面上のキーパネル画面でのみ使用され、他のキーに切り替えられることのないキーを対象とするものであるのに対して、本件各発明の対象となるキーボードは、「メモ帳アプリ」(本件明細書【008】【図1】、【009】)、その他複数の文字入力アプリと組み合わせて文字入力アプリ内で使用されるもので、固定された全画面上ではなく、当該各文字入力アプリの文字入力部分の画面の下段に表示され、数字・記号キーに切り替える機能を有するものである点(本件明細書【図16】、【図22】)で異なっていることからして、乙21発
5 明のテンキーキーボードと本件各発明のキーボードは、構成、機能が大
きく相違しており、乙21発明のテンキーキーボードから本件各発明の文字入力用のキーボードに設計変更できるようなものでもなければ、文字入力用のキーボードが周知技術であっても、それと乙21発明は構成、機能が大きく相違しており、同周知技術を乙21発明に組み合わせることはできるものではなく、本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。イ 本件各発明と乙21発明は、ローマ字入力のキーボード部又は日本語入力のテンキーによるキーボード部の相違の他に上記(3)で述べたようにア、イ及びウの相違があり、当該相違について乙21発明には記載もなければ、示唆もなく、乙21発明から本件各発明を当業者が容易に想到できるものではない。ウ 小括以上から、明らかなように、本件各発明は、乙21発明に基づき当業者が容易に発明することはできないのであって、進歩性は否定されるものではなく、本件各発明は無効審判により無効となるものではない。
10 被告第1準備書面第2、4、(5)
被告は同項で、「本件各発明には、新規性又は進歩性の欠如による無効理由があり、特許無効審判により無効とされるべきものであるから特許法104条の3第1項に基づき、原告らの被告に対する本件各特許権の行使は許されない。」と主張しているが、上記のように、本件各発明は新規性及び進歩性は否定されるものではなく、特許無効審判により無効とされるべきものではない。」以上
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