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令和7(行ケ)10069審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年4月23日
事件種別 民事
当事者 原告日本製紙クレシア株式会社
被告大王製紙株式会社
対象物 ロール製品パッケージ
法令 特許権
特許法29条2項2回
特許法150条1項1回
キーワード 審決132回
実施40回
無効19回
進歩性10回
無効審判5回
特許権1回
侵害1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、平成27年8月31日を出願日(以下「本件出願日」という。) とし、名称を「ロール製品パッケージ」とする発明につき特許出願(特願2 015-170914号。以下「本件出願」といい、本件出願の際に添付さ れた明細書を「本件明細書」といい、図面を単に「図面」という。なお、以 下、本件明細書、甲1及び甲2の段落の番号を記載する際、「段落」の表記 は省略する。)をし、令和元年9月27日、特許権の設定登録(特許第65 90596号。登録時の請求項の数5。爾後、特許請求の範囲は訂正される が、以下、特許請求の範囲の訂正の前後を通じて、この特許を「本件特許」 という。)を受けた。登録時の特許請求の範囲の請求項の記載は、別紙1特 許公報写しの【特許請求の範囲】の箇所に記載のとおりである。(甲11) ⑵ 本件特許について、令和2年4月16日、特許異議の申立てがされた。原 告は、同年10月28日付けで特許請求の範囲を訂正する内容の訂正請求を した。特許庁は、令和3年3月2日、上記訂正請求による特許請求の範囲の 訂正を認め、

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判決文

令和8年4月23日判決言渡

令和7年(行ケ)第10069号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和8年2月26日

判 決

原 告 日本製紙クレシア株式会社

同訴訟代理人弁護士 三 村 量 一

同 早 田 尚 貴

同 高 橋 綾

同 宮 澤 真 志

同訴訟代理人弁理士 寺 本 光 生

被 告 大 王 製 紙 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 片 山 英 二

同 大 月 雅 博

同訴訟代理人弁理士 加 藤 志 麻 子

同訴訟代理人弁護士 黒 田 薫

同 梶 並 彰 一 郎

同訴訟代理人弁理士 石 原 俊 秀

同訴訟代理人弁護士 野 中 啓 孝

同訴訟代理人弁理士 角 渕 由 英

同訴訟代理人弁護士 小 幡 久 樹

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が無効2023-800037号事件について令和7年6月3日にし

5 た審決のうち、請求項1、3~4、6~7に係る部分を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 原告は、平成27年8月31日を出願日(以下「本件出願日」という。)とし、名称を「ロール製品パッケージ」とする発明につき特許出願(特願2015-170914号。以下「本件出願」といい、本件出願の際に添付された明細書を「本件明細書」といい、図面を単に「図面」という。なお、以下、本件明細書、甲1及び甲2の段落の番号を記載する際、「段落」の表記は省略する。)をし、令和元年9月27日、特許権の設定登録(特許第6590596号。登録時の請求項の数5。爾後、特許請求の範囲は訂正されるが、以下、特許請求の範囲の訂正の前後を通じて、この特許を「本件特許」という。)を受けた。登録時の特許請求の範囲の請求項の記載は、別紙1特許公報写しの【特許請求の範囲】の箇所に記載のとおりである。(甲11)

⑵ 本件特許について、令和2年4月16日、特許異議の申立てがされた。原告は、同年10月28日付けで特許請求の範囲を訂正する内容の訂正請求をした。特許庁は、令和3年3月2日、上記訂正請求による特許請求の範囲の訂正を認め、請求項1ないし5の特許を維持するとの異議の決定をした。(甲20)

⑶ 被告は、令和5年6月15日、本件特許(上記⑵の異議事件で認められた訂正後の請求項1ないし5)を無効とすることを求める無効審判請求をした(無効2023-800037号事件。以下「本件無効審判請求」という。)。(乙9)

⑷ 原告は、令和6年7月16日付けで審決の予告(以下「本件審決予告」という。)を受け、同年9月20日付けで、特許請求の範囲を訂正する内容の訂正請求をし(甲12)、同年11月27日付けで、同年9月20日付け訂正請求書の全文を補正する手続補正をした(甲13。以下、同年11月27日付

5 け手続補正で補正された訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)。本件訂正は、上記⑵の異議事件で認められた訂正後の請求項1ないし5のうち、請求項1の記載を訂正し、請求項2を削除し、訂正前の請求項1及び2を引用していた請求項3を請求項1のみを引用するよう訂正し、訂正前の請求項1を引用していた請求項4を請求項1の記載を引用しないものに改め、請求項5を削除し、訂正前の請求項1、2を引用していた請求項4を請求項1、2の記載を引用しないものに改めて新たに請求項6とし、削除することとした訂正前の請求項5を新たな請求項7とし、訂正後の請求項1、3、4、6に従属する請求項として訂正するものであった。

⑸ 特許庁は、令和7年6月3日、「特許第6590596号の特許請求の範囲を、令和6年9月20日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。特許第6590596号の請求項1、3~4、6~7に係る発明についての特許を無効とする。特許第6590596号の請求項2及び5に係る発明についての本件審判の請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、令和7年6月13日、原告に送達された。

⑹ 原告は、令和7年7月11日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(以下、請求項1、3、4、6、7に記載された発明をそれぞれ「本件発明1」、「本件発明3」などといい、これらの発明を総称して「本件発明」という。)。

⑴ 請求項1フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであ

5 って、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個のスリット状の指掛け穴が形成されており、前記ロール製品の巻長が63~103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200~370gであり、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/m 2 ))であり、前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25~45度であり、前記長辺同士の間隔Wが105~134mmであり、前記ロール製品の巻き硬さが1.0~3.0mmであり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さが(前記ロール製品の巻直径×2)の72%以上であり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さの上限は(前記ロール製品の巻直径×2)であるロール製品パッケージ。

⑵ 請求項3前記フィルムの坪量が13~39g/m 2 である請求項1記載のロール製品パッケージ。

⑶ 請求項4フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであ

5 って、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個のスリット状の指掛け穴が形成されており、前記ロール製品の巻長が63~103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200~370gであり、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/m 2 ))であり、前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25~45度であり、前記長辺同士の間隔Wが105~134mmであり、(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2 ))が0.035~0.13(mm/(g/m 2))であり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さが(前記ロール製品の巻直径×2)の72%以上であり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さの上限は(前記ロール製品の巻直径×2)であるロール製品パッケージ。

⑷ 請求項6フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて

5 前記包装袋に包装してなり、前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個のスリット状の指掛け穴が形成されており、前記ロール製品の巻長が63~103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200~370gであり、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/m 2 ))であり、前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25~45度であり、前記長辺同士の間隔Wが105~134mmであり、前記ロール製品の巻き硬さが1.0~3.0mmであり、(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2 ))が0.035~0.13(mm/(g/m 2))であり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さが(前記ロール製品の巻直径×2)の72%以上であり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さの上限は(前記ロール製品の巻直径×2)であるロール製品パッケージ。

⑸ 請求項7前記シートの1枚当たりの坪量が13g/m 2 を超え17g/m 2 以下である請求項1、3、4、6のいずれか一項記載のロール製品パッケージ。3 本件無効審判請求で主張された無効理由被告は、本件無効審判請求において、甲1(特開2011-189965号公報、別紙3)に基づく進歩性欠如、及びサポート要件違反の無効理由を主張

5 した。このうち、進歩性欠如の無効理由の概要は、以下のとおりである。本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2(特開2015-101388号公報、別紙4)に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。4 本件審決の理由等本件審決は、被告の主張した無効理由のうち、サポート要件違反の無効理由は理由がないとしたが、進歩性欠如の無効理由は理由があり、本件発明(本件発明1、3、4、6、7)についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法123条1項2号に該当し無効とすべきものであると判断した。進歩性欠如の無効理由に関する本件審決の判断の要旨は次のとおりである。

⑴ 甲1に記載された発明(本件審決「理由」第7の1⑵ア)甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。「チューブ状フィルムからなる包装袋100に、トイレットペーパー等のシートを巻いたロール製品50を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品50が上下方向に軸を揃えて2個重ねたロール製品50を縦横2列(合計で8個)収納して前記包装袋100に包装してなり、前記包装袋100はチューブ状フィルムの左右両側をガセット8として内側に対称的に折り込み、各ガセット8の折り込み端縁8aが包装袋100の横方向S(当審注:甲1の図1の左右方向)中央付近で近接するように平面状に折り畳まれ、前記ロール製品50を囲む矩形断面の4つの側面を構成する本体部6と、前記本体部6の上辺のうち、互いに対向するパネル部山折

5 り稜線45、55から上方に向かってそれぞれ切妻屋根状に延びて一体化して固定された持手部4と、を有し、前記持手部4には、横方向Sに沿って延びるスリット主部2aと、スリット主部2aの両端からそれぞれ持手部4の上端に向かい、外側に凸状に膨らむ略半円状をなすと共に内側に延びる終端2cを有する弧状スリット部2bとを連続し、両弧状スリット部2bの終端2c同士の間が上向きの非切抜部をなしているスリット2を切抜いて指が挿通できる部分が形成されており、前記パネル部山折り稜線45、55から前記持手部4までの前記包装袋100のパネル部の傾斜角θが20~50度である、ロール製品パッケージ。」

⑵ 甲2に記載された事項(本件審決「理由」第7の1⑵イ)甲2の記載事項、特に甲2の第2の形態及びロール製品が2plyである実施例1ないし6に注目すると、甲2には以下の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。「フィルムからなる包装袋20に、衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋20に包装してなり、前記包装袋20の上面を跨いで接合された帯状フィルムからなる把持部40を有し、前記フィルムの坪量g/m 2(a)、フィルムの厚さμm(b)、前記ロール製品の巻長m(c)、トイレットロールの巻直径mm(d)、コアを除く1個の前記ロール製品の質量g(e)、巻き硬さmm(f)、シート1ply当たりの坪量g/m 2(g)、(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/mm 2 ))(h)(当審注:【表1】の巻き硬さとフィ

5 ルムの坪量から計算したもの)が、それぞれ以下のとおりであるロール製品パッケージ。実施例1:a 25.5、b 29、c 75、d 120、e 257、f 1.8、g 15.0、h 0.071実施例2:a 32.5、b 36、c 75、d 120、e 257、f 1.8、g 15.0、h 0.055実施例3:a 32.5、b 36、c 66、d 120、e 226、f 2.3、g 15.0、h 0.071実施例4:a 32.5、b 36、c 93、d 133、e 318、f 1.7、g 15.0、h 0.052実施例5:a 40.5、b 47、c 75、d 120、e 257、f 1.8、g 15.0、h 0.044実施例6:a 32.5、b 36、c 75、d 120、e 287、f 1.2、g 16.8、h 0.037」

⑶ 本件発明1についてア 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点(本件審決第7の2⑴アないしウ)〔一致点〕「フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個のスリット状の指掛け穴が形成されており、

5 前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θを有している、ロール製品パッケージ。」〔相違点〕<相違点1>「衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品」について、本件発明1では「衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いた」ものであり、「軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してな」り、また、「巻長が63~103m、コアを含む1個のロール製品の質量が200~370gであり、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/㎡))であ」るのに対して、甲1発明では「衛生薄葉紙のシートを巻いた」ものであり、「上下方向に軸を揃えて2個重ねたロール製品50を縦横2列(合計で8個)収納してな」り、また、「巻長」、「コアを含む1個のロール製品の質量」及び「(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)」について特定していない点。<相違点2>本件発明1では、「ロール製品パッケージ」が「長辺から把持部までの包装袋の傾斜角θが25~45度であり、長辺同士の間隔Wが105~134mmである」のに対して、甲1発明では、「上下方向に軸を揃えて2個重ねたロール製品50を縦横2列(合計で8個)収納してな」るものとして、「パネル部山折り稜線45,55から持手部4までの包装袋100のパネル部の傾斜角θが20~50度であ」り、また、「パネル部山折り稜線45,55同士の間隔」については明らかでない点。<相違点3>本件発明1では、「前記ロール製品の巻き硬さが1.0~3.0mmであ」るのに対して、甲1発明では、巻き硬さについて特定していない点。

5 <相違点4>本件発明1では、「前記把持部の前記長辺方向に沿う長さが(前記ロール製品の巻直径×2)の72%以上であり、前記把持部の前記長辺方向に沿う長さの上限は(前記ロール製品の巻直径×2)である」のに対して、甲1発明では、本件発明1のような構成について規定しない点。イ 相違点1及び相違点2について(本件審決「理由」第7の2⑴エ)相違点1、2に関し、本件発明1は、ロール製品の巻長、コアを含む1個のロール製品の質量、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)の値を前提としたロール製品の配置、及びこれに起因した包装袋の傾斜角θ、及びロール製品パッケージの長辺同士の間隔Wといったパッケージングに関するものとして特に関連が強いため、まとめて判断する。(ア) 本件発明1に係る本件出願時における技術常識について(以下、本件審決が次のaないしdのとおり認定した技術常識を、それぞれ「技術常識a」ないし「技術常識d」という。)a 省スペース、取替頻度現象のための長巻き化について、1ロールの巻き長を長くしつつ、1パッケージ当たりのロール数を減じて省スペースを図るニーズが古くからあり、本件出願当時にあっては、技術常識として知られていたものと認められる(引用文献1〔上田、トイレットペーパーの知られざる「表と裏」第2頁、東洋経済ONLINE、平成26年12月12日、インターネット〕、引用文献2〔“JIS P4501-1993、トイレットペーパー”、平成27年8月5日、日本工業規格、インターネット〕、甲2)。b 4ロールパッケージについて、「軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装」することは古くから行われており、そのニーズがあったことは当該技術分野における技術常識であ

5 ると認められる(引用文献1)。c 衛生薄葉紙を2plyにすることについて、「衛生薄葉紙」には「1plyのシートを巻いたもの」及び「2plyのシートを巻いたもの」が存在し、消費者の嗜好に合わせて適宜選択するものであることは、本件発明の技術分野における当業者が広く認識していた技術常識といえる(甲7〔上田、トイレットペーパーの知られざる「表と裏」第2頁、東洋経済ONLINE、平成26年12月12日、インターネット〕)。d 衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品の芯の重さについて、引用文献3(“平成30年5月特集「1人1日10グラム」の減量にご協力下さい!”、平成30年5月1日、埼玉県日高市、インターネット)には「トイレットペーパーの芯(6グラム)」、引用文献4(daj********さん、“トイレットペーパーの長さを計算するにはどうしたらいいですか?”、YAHOO!知恵袋、平成31年4月2日、インターネット)には「芯の重さ4g」と記載されており、おおよそこの程度の重さであったことが技術常識として知られていたと認められる。(イ) 相違点1の容易想到性について甲2記載事項の「衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋20に包装」することは、相違点1に係る本件発明1の「衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いた」ものを「軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してな」るという事項に相当する。甲2記載事項における巻長(m)が66、75、93であることは、相違点1に係る本件発明1の「巻長が63~103m」に相当する。

5 甲2記載事項のコアを除く1個の前記ロール製品の質量は、226g、257g、287g、318gであり、技術常識dに照らし、コアを含む重量に換算すると、おおよそ230~232g、261~263g、291~293g、322~324g程度となることは当業者に自明であるから、相違点1に係る本件発明1の「コアを含む1個のロール製品の質量が200~370g」であることに相当する。さらに、相違点1に係る本件発明1の「(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)」のパラメータに関しては、甲2記載事項(前記⑵)における各実施例のフィルムの坪量g/㎡(a)の数値、及びコアを含む1個の前記ロール製品の質量gから算出することができ、実施例1は40.9~41.3、実施例2は32.1~32.4、実施例3は28.3~28.6、実施例4は39.6~39.9、実施例5は25.8~26.0、実施例6は35.8~36.1と、それぞれ計算されるから、相違点1に係る本件発明1の「(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)」を満足する。そして、「ロール製品」に関し、2plyのシートを採用し、その巻数を増加し、1パッケージ当たりの個数を減ずることを検討することは、技術常識aないしcに照らして当業者が適宜行うべきものであるから、2plyのシートの巻数を増加し、1パッケージ当たりの個数を減ずる方向となる甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けは十分存在するものである。以上を踏まえると、甲1発明に甲2記載事項を適用し、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものである。(ウ) 相違点1に係る本件発明1の数値範囲の容易想到性について

5 相違点1が容易想到であることは上記(イ)のとおりであるが、甲2記載事項は、相違点1に係る本件発明1の数値範囲のすべてを開示するものではないから、この点について、念のため検討する。本件発明1がロール製品につき「巻長が63~103m」とする点は、甲2記載事項における巻長が最小値66m、最大値93mとの比較では大差があるとはいい得ない上、本件発明1の当該数値範囲は、引用文献2に記載のある規格(本件出願当時の日本工業規格)を踏まえると通常採用できる65m又は100mを選定した際の±3mの許容差内のものであるから、甲2記載事項において、当業者が適宜採用できる数値範囲にすぎない。また、本件発明1がロール製品のコアを含む1個のロール製品の質量の数値範囲を「200~370g」とする点についても、甲2記載事項の最小値230g、最大値324gに対して大きな差があるとはいえない上、これらの質量は、甲2記載事項の巻長、引用文献2から通常想定される長巻のロール製品の巻長における通常の質量の範囲内であって、その境界値についても格別の技術的意義は認められず、いわゆる臨界的意義があるものではなく、長巻のロール製品に係る本件出願時の技術水準から適宜決定し得たことである。さらに、本件発明1の「(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)」についてみても、甲2記載事項の最小値は25.8、最大値は41.3であるから、本件発明1の「25~80(g/(g/m 2 ))」の多くの部分と重なっているものであり、下限値の違いは微差にすぎない。他方、当該数値範囲の上限については所定の乖離があるものの、当該上限値は、内容物に対する十分なフィルム強度を確保する観点におけるフィルムの強度の限界値(最小値)であり、これは、ゴワゴワ感といった官能的な評価とは異なり、単なる強度設計

5 の問題であるから、物理的かつ客観的に必要な値が決定されるものであることを踏まえると、内容物の重量に応じて当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。そして、本件発明1のこれらの数値範囲によって、格別顕著な効果を得ているとも認められない。よって、本件発明1において、甲2記載事項に具体的に開示されていない範囲についても、甲2記載事項を甲1発明に適用するに当たり、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。(エ) 本件発明1の表現について本件発明1は、従来に見られない「(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)」という特殊な表現を用いているが、本件発明1を要旨認定した上で、容易想到性の検討を行う場面においても、本件発明1は、前記特殊な表現によって画定される範囲を充足する全ての「ロール製品パッケージ」という「物」を包含すると解すべきものであるから、相違点1に係る本件発明1の前記特殊な表現の範囲を充足する甲2記載事項(各実施例)を甲1発明に適用すれば、本件発明1の対象である「物」に包含される具体的な物を想到可能であることをもって、相違点1に係る本件発明1の構成の進歩性を肯定できないことは、前記(イ)のとおりである。また、内容物となる「包装袋内のすべてのロール製品の質量」と、フィルムの強度に直接的に寄与する「フィルムの坪量」との比に着目して、単位坪量当たりに許容される重量をロール製品パッケージを特定する構成要素とする程度のことは容易に想到し得たことであり、さらに、フィルムが破れにくい程度の強度とするための当該「包装袋内のすべてのロール製品の質量」と、「フィルムの坪量」との比の数値範囲を決定することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。

5 (オ) 相違点2の長辺同士の間隔Wの容易想到性についてロール製品を収納する包装袋は、内容物の大きさに適合させることが通例であることを踏まえると、甲1発明に甲2記載事項を適用して「軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してな」る構成とすると、かかる構成を収納する包装袋は、当然、これに対応して短辺と長辺が設定されることとなる。その際、長辺同士の間隔(短辺の長さ)は、ロール製品の直径に略同様のものとなるところ、甲2記載事項(実施例1~6)がとる120mmないし133mmとなり、かかる数値は、相違点2に係る本件発明1の構成に相当する。さらに、本件発明1が特定する105~134mmのうち、120mmないし133mm以外の範囲についてみても、上限値は誤差程度のものにすぎないし、下限値においても特段の技術的意義ないし顕著な効果は見いだせず、当業者が適宜なし得る設計事項といわざるを得ない。(カ) 相違点2のパネル部の傾斜角θの容易想到性について甲1の【0024】には、「又、パネル部の傾斜角θが20度未満の場合、各パネル部山折り稜線43、53が側面23の上辺に近くなり、同様に山折り稜線43、53の一方を掴み難くなる傾向にある。一方、パネル部の傾斜角θが50度を越えると、ロール製品パッケージ200が縦方向に長くなり過ぎ、包装がルーズになり、運搬がし難くなる傾向にある。」と記載されている。そして、甲1発明に甲2記載事項を適用して「軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装」することに対応してつかみやすく、かつ包装がルーズにならない角度を設定することは、当業者であれば適宜行うべき事項である。その際、甲1発明は、ロール製品を縦横2列に設けたものであるが、把持部を持って持ち上げたときの力のかかり方などは、相似形の切妻屋

5 根型の場合であれば、パッケージの大小や幅の広狭によって違いはなく、結局はF/sinθで定まるものである。そうすると、切妻屋根の角度を設定するに当たり、甲 1 発明の数値範囲である「20~50度」を参考にこれを決めることは、当業者であれば容易に想到する事項である。また、本件発明1で当該値を「25~45度」とすることによって、臨界的意義など格別顕著な効果を奏しているという事情もない。そうすると、本件発明1において当該傾斜角度θを「25~45度」とすることは、当業者にとって設計的事項である。(キ) 小括以上のとおり、甲1発明に甲2記載事項を適用して、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。ウ 相違点3について甲2記載事項(実施例1~6)の「巻き硬さmm(f)」は、1.2、1.7、1.8、2.3であるから、本件発明1で特定される「1.0mm~3.0mm」に相当するものである。さらに、甲2の【0012】には、ロール製品6の巻き硬さと、ロールの触感(柔らかさ)やロールが潰れて見た目が悪くなることの関係について示唆があるところ、かかる示唆に基づいて、甲1発明において甲2記載事項を採用する際に、ロール製品の巻き硬さについて、本件発明1の範囲となすことは、当業者であれば適宜決定し得たことである。エ 相違点4についてロール製品パッケージを持ち上げる際の持ちやすさや、把手部4によって持ち上げられた際にロール製品50に対してどのような力がかかるのかについては、当業者であれば当然検討する事項であり、ロール製品パッケージとして使用に耐えるものとして、持手部4のパネル部山折り稜線4

5 5,55に沿う長さと、(ロール製品50×2)との関係について決定する程度のことは、当業者であれば困難なことではない。また、本件発明1では、把持部4と切妻屋根型の屋根にあたる部分とがどのように接続されるのか、例えば、屋根にあたる部分と把持部4の長さに違いがあるのか、又は屋根の長辺にあたる部分が上方に行くにしたがって幅が短くなっているのか等について規定されておらず、さらには、短辺側から連続する材料がどのように把持部4に繋がるのかについても不明であるから、本件明細書の段落【0026】に記載のある把持部4の長さ決定についての技術思想について直ちに把握できるものではなく、本件発明1で規定する数値範囲に、臨界的意義が存在するとも認められない。そうすると、当該本件発明1で規定する数値範囲は、当業者の通常の創作能力の範囲で適宜決定し得る程度のものとすべきものである。オ 本件発明1の奏する効果について(本件審決「理由」第7の2⑴オ)本件発明1の効果は、甲1発明及び甲2記載事項の構成並びに甲1発明に甲2記載事項を適用した発明の構成と、その構成に基づく力学的な作用機序に照らせば予測し難い顕著なものであるということはできない。カ 小括(本件審決「理由」第7の2⑴カ)よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

⑷ 本件発明3について(本件審決「理由」第7の2⑵)甲2記載事項(実施例1~4、6)の「フィルムの坪量g/m 2(a)」は、25.5、32.5であるから、本件発明3で特定される「13g/m 2~39g/m 2」に相当するものである。さらに、甲2の【0014】には、フィルムの坪量とフィルムの強度又はロール製品を締め付ける力やフィルムがゴワゴワすることとの関係について示唆があるところ、かかる示唆に基づいて、甲1発明において甲2記載事項

5 を採用する際に、フィルムの坪量について、本件発明3の数値範囲となすことは、当業者であれば適宜決定し得たことである。よって、本件発明3は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

⑸ 本件発明4及び6について(本件審決「理由」第7の2⑶)甲2記載事項(実施例1~6)の「前記ロール製品6の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2 )は、0.037、0.044、0.052、0.055、0.071であるから、本件発明4で特定される「0.035mm~0.13mm/(g/m 2 )」に相当するものである。さらに、甲2の【0016】には、(巻き硬さ/フィルムの坪量)の値とロール製品の潰れ難さ、又は、フィルムの強度との関係について示唆があるところ、かかる示唆に基づいて、甲1発明において甲2記載事項を採用する際に、(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/㎡))について、本件発明4の数値範囲となすことは、当業者であれば適宜決定し得たことである。また、本件発明6についても同様である。よって、本件発明4及び6は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

⑹ 本件発明7について(本件審決「理由」第7の2⑷)甲2記載事項(実施例1~6)の「シート1ply当たりの坪量g/m 2(g)は、15.0又は16.8であるから、本件発明7で特定される「13g/m 2を超え17g/m 2」に相当するものである。さらに、甲2の【0017】には、シートの坪量とシートの使用感又は巻き直径との関係について示唆があるところ、かかる示唆に基づいて、甲1発明において甲2記載事項を採用する際に、シートの1枚当たりの坪量については、本件発明7の数値範囲となすことは、当業者であれば適宜決定し得た

5 ことである。よって、本件発明7は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。5 原告の主張する取消事由

⑴ 取消事由1本件審決の本件出願日時点における技術常識の認定の誤り

⑵ 取消事由2相違点1に関する判断の誤り

⑶ 取消事由3相違点2に関する判断の誤り

⑷ 取消事由4相違点3に関する判断の誤り

⑸ 取消事由5相違点4に関する判断の誤り

⑹ 取消事由6本件発明3の容易想到性に関する判断の誤り

⑺ 取消事由7本件発明4及び6の容易想到性に関する判断の誤り

⑻ 取消事由8本件発明7の容易想到性に関する判断の誤り

⑼ 取消事由9原告の防御権を保障しなかった手続上の違法

第3 当事者の主張

1 取消事由1(本件審決の本件出願日時点における技術常識の認定の誤り)に

ついて〔

(原告の主張)

5 本件審決が認定した技術常識については、以下のとおり、事実誤認があり、

また、いくつもの重要な事実を看過している。これらの技術常識は、甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けがあったと本件審決が判断した根拠であり、上記技術常識の認定の誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすものである。

⑴ 技術常識aについて

技術常識aについて、本件審決は、引用文献1の「8ロールで12ロール分の長さという、1.5倍巻きの商品」への言及があることを挙げ、「1ロールの巻き長を長くしつつ、1パッケージ当たりのロール数を減じて省スペースを図るニーズが古くからあり、本件出願当時にあっては、技術常識として知られていた」と結論付け、「省スペース、取替頻度減少のための長巻き化」が一般的な傾向であるかのようにいう。しかし、本件出願日当時において、少なくとも本件発明1のような2plyで巻長が63~103mもの長巻であるトイレットロールは一般的というには程遠く、そのような一般的な傾向は存在しなかった。また、本件出願当時のトイレットペーパー市場における、巻長毎の、容量比率(ロール数比率)及び売上比率によれば、本件発明の特許出願当時における巻長60m以上のトイレットロールの市場における容量比率(ロール数比率)は僅かに0.4%であり、売上比率も僅かに0.5%でしかない。また、この市場における傾向は、甲1の特許出願当時から本件発明の特許出願当時の5年半もの長期にわたり、ほとんど変化しておらず(甲14)、市場の動向からも「長巻き化」の傾向を読み取ることはできない。このように、本件審決が認定した「ニーズ」は、実際には市場において存在しなかった。本件審決は、長巻き化が「ニーズ」として古くから知られていたとするが、仮にそのような「ニーズ」が古くからあったにも関わらず、当該構成が広く採用されていないとすれば、当該構成の採用を妨げる事情があることがむしろ推認されるから、このような構成が「技術常識」として適宜採用できるも

5 のとなることはない。

さらに、引用文献1の記載はプライ数や具体的な巻長を挙げていないが、2plyの従来巻の巻長が23.1~30m程度であったことを考えると、その1.5倍程度の巻長であれば、高々45m程度であり、本件発明1が対象とするような2plyの長巻ロールが技術常識として知られていたことを裏付けるものではない。また、本件審決は、日本工業規格(JIS規格)に関する引用文献2に、トイレットペーパーに関して「『1巻(ロール)の長さ』(ロール製品の巻長)は27.5、32.5、55、65、75、100mとされ、かつ、1巻き(ロール)の長さについては、前記以外の寸法を定め得ること。」との記載があることを挙げ、長巻のロールが技術常識であったとの理解は、引用文献2の記載に符合すると判断した。しかし、引用文献2の該当箇所にはプライ数が明記されておらず、上記巻長が1ply品の巻長か、2ply品の巻長かは不明であるから、引用文献2の記載からは、2ply品について「65m、75m及び100mといった長いロールが」知られていたことまでは読み取れない。

⑵ 技術常識bについて

1列2段形態で4ロールを包装するパッケージが本件出願日当時に存在していたことは事実であるが、トイレットロールのパッケージは、大別して、本件発明1のようなガゼット包装の包装体と、甲2の【図2】のようなキャラメル包装の包装体の2種類があるところ、本件出願日当時、4ロールのものは主にキャラメル包装の包装袋に収納されて流通していた。12ロールの多ロールパッケージが登場し、1パッケージ当たりに収納されるロールの総重量が増大し、従来のキャラメル包装では持ち運びにくくなるという問題が生じ、このような多ロールパッケージにおいてはガゼット包装が用いられるようになったが、4ロールの軽量なパッケージにおいては引き続き従来タイ

5 プのキャラメル包装が用いられていた。

したがって、本件出願日当時に知られていた4ロール入りパッケージはあくまでキャラメル包装のものであり、「ロール製品を1列2段に並べて4ロールを包装するガゼット包装パッケージ」という本件発明1の構成が技術常識であったわけではない。後記〔

(被告の主張)

〕⑵の説明によれば、ガゼット包装にはコストの点でキャラメル包装と比較してデメリットがあり、決して適宜採用できるものではなく、何らかの必要性がなければ採用されなかったものである。本件審決は、そのような必要性が存在したか、及びその必要性がデメリットを上回るものであったかを検討しておらず、キャラメル包装とガゼット包装を区別して技術常識を認定することすらしていないのであるから、組合せの動機付けの評価において明らかな不備がある。

⑶ 技術常識cについて

2ply品で長巻とした場合、巻直径が大きくなるところ、これによって従来品向けのトイレットペーパーホルダーに収まりにくくなるため巻き硬さ等を調整しなければならないという課題がある。したがって、従来巻製品において2ply品が普及していたことをもって、長巻ロールにおいても2plyの採用をなし得たということはできない。〔

(被告の主張)

⑴ 技術常識aについて

引用文献1、2の記載及び甲2の記載には何ら誤りはなく、また、これらの文献の記載から、技術常識aが導かれることは明らかであるから、本件審決の当該認定には誤りはない。原告は、本件審決が、あたかも、「『省スペース、取替頻度減少のための長巻き化』が一般的な傾向である」と認定したかの如く主張し、当該「一般的な傾向」との認定が誤りであると主張する。しかし、進歩性の判断において

5 参酌される当業者の技術常識を市場の状況に基づいてのみ判断すべき理由が

ない。むしろ、当業者の技術常識は、本件出願時を基準として、公知の文献をも考慮して認定されるべきであるから、本件審決が、引用文献1、2及び甲2に基づいて、本件出願時における当業者の技術常識を認定したことには何ら誤りはない。

⑵ 技術常識bについて

本件審決は、「『軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装』することは古くから行われており」と認定したところ、これに対し原告は、「1列2段形態で4ロールを包装するパッケージが本件出願日当時に存在していたことは事実である」と主張している。そうすると、当該審決の判断について、何ら誤りであるということはできない。なお、乙6(【0002】、【0003】)によれば、トイレットロールは、通常ガセット包装やキャラメル包装で流通しているが、ガゼット包装は、簡易な操作でフィルム素材と一体的に強固な取っ手を形成することができるという利点がある反面、コストがかかるということで、個数が少ないパッケージにおいては、キャラメル包装が用いられることが多く、個数が少ない場合は、買い物袋に入ることからガゼット包装をしていなかったというのが従来技術の正しい理解である。そうすると、商品化に際して、コストの問題よりも、取っ手を設けるという利便性を優先したならば、少ない個数のロールに対してもガゼット包装を採用することは何ら問題がなく(特に、技術上は何ら困難ではない)、適宜採用できるというのが当業者の技術常識であったと理解できる。

⑶ 技術常識cについて

原告は、本件審決が技術常識cを認定した点が誤りであると主張するが、技術常識cは甲7に記載されているから、本件審決の認定には何ら誤りはない。また、本件出願時において2plyの長巻ロールが当業者に周知であっ

5 たことは、甲2及び乙1ないし4の記載から明らかであるから、原告の上記

主張は事実に反する。

2 取消事由2(相違点1に関する判断の誤り)について

(原告の主張)

⑴ 甲1発明に甲2記載事項を適用することができないこと

ア 甲1発明に甲2記載の構成を組み合わせる動機付けがないこと(ア) 本件審決は、ロールの長巻化及び1パッケージ当たりの個数を減ずることを検討することは本件出願時の技術常識に照らして当業者が適宜行うべきものであると抽象的に述べ、甲1発明に甲2記載事項を適用する動機付けが当業者に具体的に存在するかどうかを精査せず、個々の要素に係る数値範囲を単純比較するなどして安易に結論を導いている。しかし、本件審決の技術常識の認定に誤りがあることは前記1〔原告の主張〕のとおりである。本件審決が挙げる引用文献はいずれも、本件発明1が対象とするような63~103mという長い巻長の2plyのトイレットロールを、ガゼット包装の包装袋に4ロール収納するような構成が知られていたことを示すものではない。さらに、本件審決は、単に本件出願日当時に構成が公知であればこれが技術常識として適宜採用できるかのようにいうが、少なくとも、市場の状況(本件発明の対象となる巻長のロールは、本件出願日当時、金額ベースで市場のわずか0.5%、販売ロール数ベースで0.4%にしか相当しなかったこと)を見れば、長巻の2plyのトイレットロールが広く採用されていたとは到底いえず、このような構成を採用するに当たっては明確な動機付けが必要であったというべきである。また、長巻ロールを収納するパッケージの提供においては、ロールの重量の増加にもかかわらず、持ち運びやすく、収納されているロール製品が潰れにくく、フィルムの触感に優れたパッケージを実現するには

5 数々の課題があったのであるから、このような課題を解決する手段が当

業者に与えられていたかを何ら考慮せず、甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けは十分存在するなどということはできない。(イ) 甲1発明は、包装体としてはフィルムからなるガゼットタイプの包装袋に、上部を折り畳んで持手部を設け、持手部に複数本の指が挿通できる特定の形状の指同時掛け用スリットを有するものであり、内容物は従来巻のロール製品を平面上に縦2個・横2個で並べた段を、軸方向を上下にして2段重ねて(以下、このような収納形態を「2列2段形態」という。)収納したロール製品パッケージに関するものである。甲1発明には巻長の特定はないが、本件出願日当時のトイレットロール市場における巻長の状況によれば、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明のパッケージに包装されるロール製品として読み取るのは、当然、従来巻の23.1mから30mのロール製品であり、甲1の【0002】の背景技術の説明において、「持手部には購入者が運搬するための指掛け穴が備えられているが、特に多数のロールを収納した包装袋では重量が過大となり、2穴の指掛け穴では指先が痛くなることがある。また1つ穴の場合、持ち運ぶ途中、持手部が千切れることがある。」とあるとおり、甲1の課題は、専ら、従来巻のロール製品を多数収納した包装袋において、指の痛みや持手部の破損といった問題を解決することにあった。さらに、【0020】における「包装されるロール製品50の合計重量が500g以上では…」との記載や、【0033】における「600g分包装し…」との記載と、収納形態が2列2段形態(8ロール)であるとされていることを併せて読めば、想定されている1ロール当たりの重量は62.5g~75g程度であり、このことからしても、甲1発明は従来巻のロールを収納するパッケージにおける課題しか解決できないことは明らかであって、重量が重い長巻のロールについて甲1発明が適用できる

5 と当業者が読むことはない。

このように、甲1発明は中に収納される内容物として従来巻のロール製品を想定していることが明細書の記載上明らかであり、これを長巻のロール製品に変更することに関しては何らの記載も示唆もないことから、そもそも「当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測」すら成り立たないものであるが、仮にそのような推測自体は成り立つと判断されたとしても、パッケージに収納される内容物を甲1発明の出願時において主流から程遠い状況であった長巻のロール製品に変更し、収納形態も、2列2段形態から、ロール製品を平面上に2個並べた段を、軸方向を上下にして2段重ねる形態(以下「1列2段形態」という。)に変更し、フィルムの坪量を甲2記載のものと「したはずである」といえる程の示唆が甲1発明に存在しないことは明らかである。したがって、本件審決が甲1発明に甲2記載の構成を組み合わせる動機付けがあると認定したことには誤りがある。イ ガゼット包装とキャラメル包装の違い甲1発明は、ガゼットタイプの包装袋に、従来巻のロールを2列2段形態で収納する発明である。他方、甲2記載の発明は、キャラメル包装の包装体に、長巻ロールを1列2段形態で収納する発明である。両者は包装体の構造、内容物の性状、及び内容物の収納形態において根本的に異なるところ、それぞれの発明の構成はこれらの包装体の構造、内容物の性状、及び内容物の収納形態を前提として初めて意味を持つものであるから、甲2記載の発明の構成を甲1に適用することには阻害事由がある。トイレットロール用のガゼット包装の包装袋は、トイレットロールにフィットしつつ、トイレットロールを詰めやすい柔軟性と、これを保持できる堅牢性が同時に要求される。主に荷重が掛かるのは指掛け穴部分であり、この部分に破断が生じやすい。他方、把持部はパッケージ本体と全周にわ

5 たって連続しており、均一に力を伝えるため、把持部と本体部の接合部が

破断することはない。また、把持部に至る切妻屋根状の部分が、内容物を収納する本体部分と連続しているため、この部分の形状次第で内容物の安定保持性に影響が及んだり、トイレットロールの端部が潰れやすくなったりする。これに対し、トイレットロール用のキャラメル包装の包装袋は、ヒートシールの箇所が多くなるため、ヒートシール性が重要になる。また、持手部を設ける場合は別の帯状フィルムをパッケージに接合するが、運搬の際は持手部と本体の接合部に力が集中しやすく、この部分に破断が生じやすい。他方、トイレットロールの包装は把持部の形成とは独立に行われるため、把持部の形状によってトイレットロールの安定保持性に影響が生じたり、トイレットロールの端部が潰れやすくなるようなことはない。ガゼット包装とキャラメル包装は、包装袋の素材に要求される物性、把持部・持手部の形成において考慮すべき要素、構造上の強度等の点で大きく異なる。したがって、ガゼット包装の発明である甲1発明に、キャラメル包装の発明である甲2記載の発明の構成を適用しようとしても、甲2記載の発明で奏されるような作用効果が甲1発明において奏されることについては何ら期待できず、むしろ不測の不具合が生じることが予期されるから、両者を組み合わせることには阻害事由があるというべきである。ウ 内容物の収納形態の違い甲1発明は2列2段形態、すなわち8ロールを収納した状態で「内容物の重量によって持手部が破損する」との課題の解決を目的とするところ、1列2段形態へと変更することで収納されるロール製品の数は4ロールとなり、同一の重量のロールを収納する場合の総重量は2分の1となるから、重量による持手部の破損という課題を解決する甲1発明が想定する形態ではなく、むしろ、1列2段形態を取った場合には、甲1発明の解決し

5 ようとする課題がもはや存在しないものと当業者は理解する。したがって、

この観点からも、甲1に1列2段形態を組み合わせることには阻害事由がある。エ 包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量の比本件審決は、甲2発明の実施例について、包装袋内の4個の前記ロール製品の質量/前記フィルムの坪量の比が、本件発明1の「25~80(g/(g/m 2))」との数値範囲の多くの部分と重なっており、下限値の違いは微差にすぎず、上限については所定の乖離があるものの、当該上限値は、単なる強度設計の問題として物理的かつ客観的に必要な値が決定されるものであることを踏まえると、これを本件発明1の構成とすることは、内容物の重量に応じて当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないと判断した。しかし、甲1発明と甲2記載の発明は、ガゼット包装とキャラメル包装という包装形態の違いがあり、その包装形態に応じて包装材であるフィルムに要求される物性は全く異なるから、甲2に記載されたフィルムの坪量を甲1発明に適用すること自体にそもそも阻害事由がある。上記の点を措くとしても、甲2記載の発明は、包装体としてはフィルムからなるキャラメル包装の包装袋であって、帯状フィルムからなる持手部が包装袋の上面を跨いで、両端部がそれぞれ包装袋の対向する短辺側の側面に接合されているものであり、内容物は、長巻(巻長65~95m)のロール製品を1列2段形態で収納したロール製品パッケージに関する(図2、【0024】)。甲2発明が解決しようとする課題は、上記のような特定の包装体に上記のような特定の内容物を収納したパッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージの提供である(【0004】)。

5 そうすると、甲2記載の発明が当該構成を採用するのは、

「長巻のロール製品を包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージの提供」という甲2記載の発明の目的のためであり、「複数本の指を挿通しても指の痛みが生じず、持手部の破損を防止したスリットを有する包装体」を提供することを目的とする甲1発明において、当該構成を採用する動機付けはない。むしろ、甲1発明の技術的思想は「複数本の指を挿通しても指の痛みが生じず、持手部の破損を防止したスリットを有する包装体」であり、フィルムの坪量はその効果を奏するための本質的な構成であるから、当業者がこれを甲1発明と課題を共通にしない別の発明から取り出して甲1発明と組み合わせようとすることは、考えられない。本件発明1における「包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量」というパラメータの技術的意義は、「長巻のトイレットペーパーは、通常のトイレットペーパーに比べて1ロールの重量が重いため、通常のトイレットペーパー用のフィルムで包装すると、フィルムが破れやすい。一方、フィルムの坪量を高めて強度を高くすると、ロール製品を締め付ける力が強くなり、ロール製品が潰れやすくなる。そこで、本発明は、上記比として、包装袋100内のロール製品6の合計質量と、フィルムの強度(坪量)との相対値を適正な範囲に規定している。」との点にある(本件明細書【0018】)。また、ここにおいては、包装袋がガゼット包装であることが前提とされている。このパラメータに想到するには、ロール製品の質量とフィルムの坪量という二つの物性の相関関係を規定することで、包装袋を破れにくいものとしつつ、ロール製品を潰れにくいものとできるとの着想が必要であるところ、甲1にも甲2にもこのような着眼点はない。甲2の表1・表2中には各実施例について多数の物性の数値が記載されている

5 が、これはあくまで各実施例という具体的な物の属性としてそれぞれ独立

に記載されているものであって、この表の中に「ロール製品の質量」と「フィルムの坪量」の数値がそれぞれ含まれていたとしても、「ロール製品の質量とフィルムの坪量という二つの物性の相関関係を規定することで、包装袋を破れにくいものとしつつ、ロール製品を潰れにくいものとできる」との着眼点を有していなければ、その記載から「包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量」というパラメータを、具体的な実施例を離れた独立のパラメータとして当業者が読み取ることはできず、これを甲1発明に適用することもできない。さらに、甲2は包装袋がキャラメル包装であるところ、包装形態が異なれば、同じフィルムを使用していたとしても、包装袋の強度、破損箇所、ロール製品の潰れの機序が全て異なるから、甲1発明において「包装袋を破れにくいものとしつつ、ロール製品を潰れにくいものと」するに当たり、甲2の包装袋内の4個のロール製品の質量とフィルムの坪量との比は何ら参考とならない。

⑵ 本件審決の判断手法の誤り

本件審決は、様々な物性に係る相違点を相違点1としてまとめた上で、各物性について独立に検討しているが、このように、相違点1に係る各構成要素について独立して検討し、個々の容易想到性を論じる判断手法自体に誤りがある。本件発明1は、個々の発明特定事項である物性等が互いに組み合わさって複合的に作用効果を実現するものであるから、各相違点に係る構成についても、それらを組み合わせて発明の課題を解決しようという着想自体に進歩性が認められる。本件発明1のように複数の物性等の組合せによって複合的に作用効果を奏する発明について進歩性を否定するためには、発明の課題の解決のために、各物性等を本件発明1のとおりに組み合せること自体が容易想

5 到であったといえる必要がある。

本件発明は、フィルムからなる筒状のガゼット袋から構成される包装袋であって、本体部の上辺が上方に向かって切妻屋根型に延びて接合された把持部にスリット状の指掛け穴が形成されているものであり、内容物は長巻のロール製品を1列2段形態で収納したロール製品パッケージに関する。解決しようとする課題は、上記のような特定の包装体に上記のような特定の内容物を収納したパッケージにおいて、持ち運びやすく、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難く、さらに持ち運ぶ際にフィルムが破れにくく包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージの提供である。このような課題の認識があるからこそ、これを解決するために本件発明1の各構成が選ばれるのであり、本件発明1が容易想到であるというためには、単に相違点に係る構成がそれぞれ公知文献に記載されているというだけでは足りず、本件特許出願当時の当業者が、本件発明の内容を知らない状態で、これらを組み合わせて選び取る理由が必要である。しかし、本件発明1と甲1発明及び甲2記載の発明とは、包装材及び内容物がそれぞれ異なっており、甲1及び甲2からは、本件発明1の「長巻ロールをガゼット包装袋に収納する」場合に特有の課題が認識されず、このような本件発明1の課題が当時当業者に広く知られていた事実もない。このような課題の認識を欠く以上、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、相違点1に係る各構成に着目して、それらを本件発明1と一致するように変更しようと着想するとは思われない。さらにいえば、この観点は、相違点1に係る各構成のみならず、相違点1ないし4についても妥当する。本件においては、四つの相違点全てを本件発明1の構成に変更するという選択が必然であるかどうかが検討されるべきである。

5 〔

(被告の主張)

⑴ 本件審決の判断に誤りがないこと

主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に至る動機付けに関しては、主引用発明又は副引用発明の内容中の示唆、技術分野の関連性、課題や作用・機能の共通性等を総合的に考慮して動機付けの有無を判断するのであり、動機付けの根拠となる事項は上記のどれかに限られるものではない。甲1発明と甲2記載事項は、いずれも「ロール製品パッケージ」という同一の技術分野に属するものであるから、甲1発明に対して甲2記載事項を組み合わせる動機付けの基礎を備えている。また、甲1において課題を解決する手段を記載した【0006】には、「本発明の包装袋は、複数個のトイレットペーパー等のロール製品を収納する本体部と」との記載があり、甲1には、ロール製品の個数や、収納形態の特定はないと理解するのが相当である。このことは、甲1においてロール個数に関しては、「一例」である図4、5を除き、一貫して「複数個」と記載されていること(【0008】、【0010】、【0016】)や、多様なロール個数、収納形式に関する記載があること(【0025】~【0027】)からも裏付けられる。さらに、甲1に記載された、指掛け用スリットの形状の効果を検証する実験においては、パッケージにスリットを切り抜いて指を入れ、1.5kgの荷重を10分掛けたときの指の痛みを測定する試験がされているが、ここでは、ロールの具体的特徴、ロールの個数、収納方法によらず、ロール全体の重さが1.5kgであればパッケージによる指の痛みが生じないことが検証されていると理解できる。本件出願時の技術常識によれば、パッケージに収納するロールの個数、収納形式として、少なくとも、12個(4個×3段)(甲5、6、引用文献1)、8個(4個×2段)(甲1)、4個(2個×2段)(甲2、引用文献1)が公知であったのだから、甲1の技術的思想に触れた当業者は、ロール全体の重量が1.5kgを超えない範囲であれば、種々

5 の特徴を有するロールを、4個、6個、8個、12個という形態で収納でき

ると理解し、そのようなロールを種々の形態で収納することを当然に試みるものである。そして、甲2における「2plyの長巻を2個×2段」収納する場合の重量は、実施例1ないし6によればいずれも1.5kg以下であるから、甲2に記載された具体的ロールを2個×2段で収納する場合においても、複数本の指を挿入しても指の痛みを生じず、持手部が破損しないとの効果を得るべく、甲2記載事項を甲1発明に組み合わせることは、当業者であれば当然に動機付けられる。また、フィルム坪量の要件に関しては、甲2には、トイレットロールが潰れにくく、フィルム強度にも優れ、かつゴワゴワ感が少ないという利点を得るために、フィルムの坪量を30~45g/m 2 とする技術的思想が記載されている。そして、ロール4個の質量/フィルム坪量の値は、実施例1ないし5に基づいてコア質量を考慮して計算すると、本件審決の認定のとおり、いずれの実施例においても、「(前記包装袋内の4個のロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/m 2))」の範囲内にある。そうすると、甲1発明に対しても、トイレットロールが潰れにくく、フィルム強度にも優れ、かつゴワゴワ感が少ないという利点を得るべく、甲2に記載された坪量を採用することは、当業者が容易になし得るものである。

(原告の主張)

に理由がないことア 動機付けに関する主張について原告は、本件審決の技術常識の認定に誤りがあるとの主張を繰り返しているが、本件審決の技術常識の認定に何ら誤りはない。原告は、「市場の状況に着目すべき」の一点張りで、相違点の非容易想到性を主張するものであるが、そもそもそのような主張自体が不合理である。文献からは当業者の技術常識であると読み取れる事項であるにもかかわらず、これに対応する製品が上市されていない、あるいは、シェアが少な

5 いなどの理由によって、技術常識ではないとすべき根拠ない。

(原告の主張)

は、「甲1発明は中に収納される内容物として従来巻きのロール製品を想定している」ことを前提としているが、上記⑴のとおり、当該前提が誤りである。また、原告は、「主流からほど遠い状況であった長巻のロール製品に変更」する動機付けがない旨主張するが、相違点1の容易想到性の判断において「市場における状況」を考慮すべき理由がない。むしろ、甲1に記載された技術的思想としては、複数個のロールを種々の収納形式で収納することを幅広く許容していることは明らかであるから、甲1発明のロール個数、収納形式を、甲2に記載されている、公知の個数、収納形式(甲2記載事項)に変更することを、当業者は強く動機付けられる。イ 阻害事由に関する主張について(ア) 原告は、ガゼット包装とキャラメル包装の違いについて述べるが、相違点1の容易想到性の判断は、甲1発明に対して、甲2に記載されている、ロール要件(中身)及びフィルム坪量の要件を組み合わせられるか否かという点に尽きるのであり、この判断において、甲2の包装形態はそもそも判断に何ら関係しない。仮に、関係したとしても、甲2記載事項は、何らキャラメル包装に限られたものではなく、ガゼット包装にもキャラメル包装の双方に適用可能な技術であるから、「ガゼット包装とキャラメル包装の違い」について縷々述べたところで、相違点1が非容易想到ということなどできない。本件出願日において、ロール製品の包装体としては、ガゼット包装とキャラメル包装の包装体を適宜選択して用いることができることが技術常識であった(乙6及び甲2)。原告は、ガゼット包装とキャラメル包装そのものの違いに基づいて、「ガゼット包装の発明である甲1発明に、キャラメル包装の発明である

5 甲2記載の発明の構成を適用」すると不測の不具合を生じると主張して

いるのであるが、相違点1との関係で、甲2記載事項として認定しているのは、「ロール要件」、すなわち、「包装の中身」であって、キャラメル包装ではなく、キャラメル包装をガゼット包装に適用しようとすると、不測の不具合が生じるとの主張は、相違点1の容易想到性の主張として明らかにずれており失当である。(イ) 内容物の収納形態の違いに関する主張についてこの点に関し、原告は、阻害事由の主張の前提として、甲1発明が2列2段状態(8ロール)を収納した状態での課題の解決を目的とすると主張しているが、甲1に記載された発明は、2列2段状態(8ロール)という特定のロール収納態様に対して、解決課題を提供したものではない。既に述べているとおり、特許請求の範囲及び明細書中には、一貫して「複数のロール製品」が対象となることが記載され、図4及び5についてのみ、2列2段状態(8ロール)が「一例」と記載されているだけである。したがって、

(原告の主張)

は、その前提が誤っており、そもそも失当である。仮に重量について、8ロールを1列2段形態(4ロール)にしたことによりロール総重量が軽くなったとしても、複数本の指を挿通しても指の痛みが生じなくなる、あるいは、持手部の破損が生じなくなる、といえる根拠がない。しかも、1列2段(4ロール)形態を取った場合の個々のロールの重量を、通常ロールに限定する必要もない。(ウ) 「包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量の比」に関する主張について本件審決は、甲2に「包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量の比」(以下「本件坪量要件」という。)を満足する例が記載されており、これを適用することが容易想到であることを前提に、「数値範囲」

5 の容易想到性について、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないと判

断したのであるから、原告が、本件審決の上記判断に対し、阻害要因や組み合わせられない理由を述べているのは、明らかにずれた主張であり、失当である。また、ロール製品の包装袋に用いられるようなプラスチックフィルムであれば、坪量が大きければ、厚くてゴワゴワし、坪量が小さければ、薄くて破れやすくなるのであって、これは当業者の技術常識である。この技術常識からすると、本件坪量要件の値が極端に大きくなる場合には、坪量が小さく薄いフィルムが採用されており破れやすくなり、本件坪量要件の値が極端に小さくなる場合には、坪量が大きく厚いフィルムが採用されておりゴワゴワすることが予想できる。そうすると、本件審決が「フィルムが破れにくい程度の強度とするための当該『包装袋内のすべてのロール製品の質量』と、『フィルムの坪量』との比の数値範囲を決定することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。」と判断したことに誤りはない。原告は、甲2がキャラメル包装を開示し、甲1がガゼット包装であるなどとして、甲2に記載された坪量に係る事項が甲1に適用できないかの如く主張する。しかし、甲2の【0013】においては、甲2記載の発明に含まれる包装袋に、キャラメル包装、ガゼット包装等の公知の包装が含まれることが明記されている。また、甲2の【0014】において、フィルムの坪量を25~45g/m 2 とする数値限定の理由として挙げられているのは、全て、パッケージ本体部分におけるフィルムに関して生じる不都合の解消であると理解され、坪量に係る事項は、キャラメル包装とガゼット包装の双方の課題を解決することができる。ウ 本件審決の判断手法の誤りの主張について相違点の容易想到性の判断において、本件発明の課題を認識する必要は

5 ない。しかも、長巻のロール製品に特化した、ロール製品の端部潰れの問

題を解決するという、本件発明1の解決課題は、技術的に見て明らかに理にかなっておらず、このような課題を認識できなければ相違点が容易想到とならないというのは不合理である。また、原告の「個々の発明特定事項である物性等が互いに組み合わさって複合的に作用効果を実現する」との主張は、それ自体が誤っている。原告もこの点については、構成要件を羅列した上で主張しているだけであり、具体的にそれぞれの物性等がどのように「複合的に作用効果を実現する」のかについては全く説明していない。むしろ、本件発明1の要件のうち、ロール製品に関する構成と、ロールの収納に関する要件は、自由に組み合わせられる。ロール製品がどのような構成を持っていたとしても、1列2段形式でロール製品を収納することができることは明らかである。ガゼット包装自体、本件出願時において、ロール製品のパッケージとして周知のものであり、これを構成するフィルムの材料も自由に採用できることは明らかであるから、これらのパッケージの形状、パッケージの材料、ロール製品に関する構成及び収納に関する構成は、適宜組み合わせられるものである。そうすると、本件発明1は、ロール製品に関する構成要件、ロール製品の収納に係る構成要件及びパッケージに係る構成要件を適宜組み合わせた(あるいは、寄せ集めた)発明であり、何ら「複合的に作用効果を実現する」ような発明ではない。

3 取消事由3(相違点2に関する判断の誤り)について

(原告の主張)

〕甲1において、パネル部の傾斜角θを20~50度とする根拠は、パネル部の傾斜角θが20度未満の場合、各パネル部山折り稜線が掴み難くなること、及びθが50度を越えると、ロール製品パッケージの包装がルーズになり、運搬がし難くなることにある(甲1【0024】)。一方、本件発明1でθが25

5 ~45度とされているのは、θを十分に大きくすることでロール製品の端部に

かかる負荷を軽減して潰れにくくしつつ、θが大きくなり過ぎて包装袋内でロール製品が動いて安定性が劣ったり、包装袋のサイズが大きくなってコストが高くなることを防ぐためであり、具体的には、「図4において、ロール製品パッケージ200を把持部4で持ち上げるのに必要な力を2Fとする。この力2Fは、長辺45,55にそれぞれ接するロール製品50の端部では、その半分の力Fとなって作用する。力Fは、パネル部41、51方向にはそれぞれ(F/sinθ)の分力として作用するから、θが大きくなるほど(F/sinθ)が小さくなり、長辺45,55に接するロール製品50の端部にかかる負荷が小さくなる。そこで、θを25度以上に規定する。」(本件明細書【0020】)との理由から定まる値である。このように、本件発明1と甲1は、たまたま近しい数値範囲を取るが、この数値範囲とする理由が全く異なる。傾斜角とロール製品の潰れに関係があるとの本件発明の着想は本件発明の出願当時に知られておらず、当業者はそもそも、ロール製品の潰れを防止するために傾斜角θを一定の値に調整しようという発想に至り得ない。まして、当業者が上記(F/sinθ)の意義に想到し、傾斜角θを本件発明の範囲とすることは、本件発明の独自の課題の設定によって初めて見出された解決手段であるから、当業者が適宜選択できる技術常識であるとは到底いえない。また、甲1発明における傾斜角の技術的意義は、2列2段形態を前提とした上で、山折り稜線の掴み難さと包装がルーズになることによる運搬のし難さを調整することにある。すなわち、2列2段形態を前提としてはじめて意味のある値であるから、これを甲2記載の1列2段形態と組み合わせることはできない。本件明細書にも、「ロール製品50を二列に並べると、長辺45,55同士の間隔が一列の場合の間隔Wの約2倍(2W)となり、それに比例してパネル部41、51とロール製品50の上端との隙間も2倍(2G)となってしまうの

5 で、包装袋100内でロール製品50が動き易くなってしまう。このようなこ

とから、パネル部41、51とロール製品50の上端との隙間を小さくするため、図5の鎖線で示すように、パネル部51x(パネル部41も同様)の傾斜角φをθよりも小さくしなければならず、その結果、パネル部41、51方向にそれぞれ作用する分力(F/sinφ)が大きくなり、ロール製品が潰れ易くなる。」(【0021】)とあり、1列2段形態と2列2段形態とでは、同じθをとると後者のGは前者の2倍となってロール製品が動きやすくなってしまい、同じGをとるように後者のパネル部傾斜角φを調整するとロール端部に掛かる力が全く異なってくるから、2列2段形態の構成で採用されているθを1列2段形態にそのままもってくることはできない。本件特許の傾斜角の範囲を採用するには、そもそもの前提となるロール製品の収納形態を甲1発明から1列2段形態に変更した上で、これを前提に、ガゼット包装袋にロール製品を収納する場合に特有の「端部の負荷軽減によるロール製品の潰れ防止」という観点からパネル部の傾斜角の数値範囲に着目する必要があるが、そのような着想を与える記載や示唆は甲1には含まれていない。〔

(被告の主張)

〕本件発明1において規定される、「傾斜角θが25~45度」については、ロール製品パッケージとしては、周知であり、パブリックドメインともいえる状態であった。すなわち、甲1には、これとほぼ重複する傾斜角20~50度が記載されているし、甲5、6の図からもロール製品パッケージの上記傾斜角が25~45度の範囲にあることは、明らかである。要するに、通常、ロール製品の当該ガゼット包装を設計したならば、このような範囲の角度を採らざるを得ない(むしろ、このような角度を避けるほうが不自然である)。のみならず、本件発明1において、当該「傾斜角θが25~45度」の上限値及び下限値はこれを限定した技術的意義を欠いている。まず、下限値(25度)については、原告が挙げる本件明細書の【0020】の説明は、単に、ロ

5 ール製品パッケージを持ち上げるのに必要な力を2Fとしたときに、長辺の端

部にF/sinθという力がかかること、また、θが大きくなれば、F/sinθが小さくなり、ロール製品50の端部に係る負荷が小さくなるという、高校レベルの数学で導かれる一般的「傾向」が示されているにすぎず、その後に、唐突に、「そこでθを25度以上に規定する」との記載があるだけであって、「25度」を下限値とする理由については全く示されていない。上限値(45度)についても、【0020】の説明では、θが大きくなり過ぎると、パネル部41、51が立ち上がり過ぎ、ロール製品が動いて安定性が劣ったり、包装袋のサイズが大きくなってコストが高くなったりするという、一般的傾向が説明されているにすぎず、その後に、唐突に、「そこで、θを45度以下に規定する」との記載があるだけであって、「45度」を上限値とする理由については全く示されていない。原告は「傾斜角とロール製品の潰れに関係があるとの本件発明の着想は本件発明の出願当時に知られておらず」と主張するが、傾斜角が小さくなりすぎると、ロールの角部に当たりやすくなり、潰れの原因になることは、当業者であれば、容易に理解できることである。しかも、本件明細書においては、「傾斜角θが25~45度」について、「長巻のロール」に特化して設定されたとの説明はされておらず、上記傾斜角θの採用は、「長巻ロール」においてロールが潰れる問題とは全く関係がない。さらに、原告は、本件発明1のような、1列2段形態と、甲1の2列2段形態では、パッケージの上面の形状が異なるなどとして、これに基づいて、上記傾斜角θの数値範囲を選択することが、当業者が容易に想到しえないかの如く主張する。しかし、本件明細書の段落【0020】においてされている傾斜角θの説明は、何ら、1列2段形態でロール製品を収納することに関係しておらず、

(原告の主張)

は失当である。

4 取消事由4(相違点3に関する判断の誤り)について

5 〔

(原告の主張)

〕前記2〔

(原告の主張)

〕⑴のとおり、そもそも甲1発明に甲2の記載事項を適用することはできないから、相違点3に関する本件審決の判断はその前提において誤っている。また、甲2の【0012】にはロール製品の巻き硬さについて、本件発明1の範囲となす具体的な示唆があるとはいえず、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断には何ら根拠がなく、後知恵に基づくものといわざるを得ない。〔

(被告の主張)

〕甲1発明に甲2の記載事項を適用することができないとの

(原告の主張)

が誤りであることは、前記2〔

(被告の主張)

〕のとおりである。また、甲2の段落【0012】には、本件発明1と同じ方法で巻き硬さを測定することが記載されている。そして、甲2の請求項1及び【0010】には、本件発明1と全く同じ巻き硬さの数値範囲(1.0~3.0mm)が記載されているから、甲2には、本件発明1の巻き硬さの数値範囲について具体的示唆がある。

5 取消事由5(相違点4に関する判断の誤り)について

(原告の主張)

〕把持部の長さに係る構成は、ロール製品の端部にかかる負荷が大きくなりすぎてロール製品が潰れることをより確実に防止するための構成であるところ、甲1においては、パッケージに接するロール製品の端部にかかる力を調整し、ロール製品の潰れを防止するという着眼点がないから、把持部の長さを本件発明1の範囲に調整する発想が生まれる余地がなく、この点について甲1の開示から想到することは当業者にとって容易でない。〔

(被告の主張)

〕把持部の長さに関する構成要件は、把持部の長さをロール製品巻直径の2倍(概ね下図の②の長さ)の72%以上100%以下とすることであるが、下図

5 の①の長さを短くしすぎると、持ち運びの際に安定せず、パッケージが持ちに

くくなるのは当業者でなくても容易に理解できるし、短辺側の包装袋が引っ張られ、ロールが潰れやすくなることは、当業者であれば、当然に理解するものである。したがって、把持部の長さ①の下限をパッケージの長辺(②)の72%とすることは、「自ずとそのような値を採らざるを得ない」ともいえるものであるところ、本件審決が、上記構成要件の数値限定につき、「当業者の通常の創作能力の範囲で適宜決定し得る程度のもの」(審決51頁1~2行)と判断したことに誤りはない。

6 取消事由6(本件発明3の容易想到性に関する判断の誤り)について

(原告の主張)

〕前記2〔

(原告の主張)

〕⑴のとおり、甲1発明に甲2記載事項を適用することはできないから、本件発明3の容易想到性に関する本件審決の判断はその前提において誤っている。また、甲2の【0014】には本件発明3の発明特定事項に至る具体的な示唆があるとはいえず、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断には何ら根拠がなく、後知恵に基づくものといわざるを得ない。〔

(被告の主張)

5 甲1発明に甲2記載事項を適用することができないとの

(原告の主張)

が誤りであることは、前記2〔

(被告の主張)

〕のとおりである。また、本件発明3においては、フィルムの坪量が「13g/m 2 ~39g/㎡」であることが規定されているところ、甲2には、フィルムの坪量が25~45g/m 2 であることが記載されており(【0014】)、両者の値は広範囲にわたって重複する。しかも、甲2の2plyの実施例1~6のうち、実施例1~4、6に記載された坪量は、本件発明3に係る上記坪量に含まれている。しかも、本件発明3及び甲2においては、本件明細書の【0017】及び甲2の【0014】の記載のとおり、その数値範囲が、全く同じ理由により導かれている。したがって、本件審決が、甲2の【0014】に本件発明3の発明特定事項に係る具体的示唆があるとした点は、何ら誤りではない。

7 取消事由7(本件発明4及び6の容易想到性に関する判断の誤り)について

(原告の主張)

〕前記2〔

(原告の主張)

〕⑴のとおり、甲1発明に甲2記載事項を適用することはできないから、本件発明4及び6の容易想到性に関する本件審決の判断はその前提において誤っている。また、甲2の【0016】には本件発明4及び6の発明特定事項に至る具体的な示唆があるとはいえず、また、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断には何ら根拠がなく、後知恵に基づくものといわざるを得ない。〔

(被告の主張)

〕甲1発明に甲2記載事項を適用することができないとの

(原告の主張)

が誤りであることは、前記2〔

(被告の主張)

〕のとおりである。本件発明4及び6においては、「(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2))0.035~0.13(mm/(g/m 2))」であることが規定されているが、これに対し、甲2には、これと全く同じパラメータが規定された上、その好適な範囲として、0.020~0.100という数

5 値範囲が記載されており(【0016】)、両者の値は広範囲にわたって重複する。

しかも、甲2の2plyの実施例1~6は、すべて、本件発明4及び6で規定される値に含まれている。その上、本件明細書においては、「(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2 ))」の数値範囲の具体的な技術的意義については、何ら説明されておらず、「特に、ロール製品の巻き硬さ/フィルムの坪量をコントロールすると、ロール製品がさらに潰れにくく、かつ、フィルムの強度を適正にすることができる。」(【0028】)との抽象的な記載があるに留まるところ、甲2にも、【0015】に全く同じ記載が存在する。したがって、本件審決が、甲2の【0016】に本件発明4及び6の発明特定事項に係る具体的示唆があるとした点は、何ら誤りではない。

8 取消事由8(本件発明7の容易想到性に関する判断の誤り)について

(原告の主張)

〕前記2〔

(原告の主張)

〕⑴のとおり、甲1発明に甲2記載事項を適用することはできないから、本件発明7の容易想到性に関する本件審決の判断はその前提において誤っている。また、甲2の【0017】には本件発明7の発明特定事項に至る具体的な示唆があるとはいえず、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断には何ら根拠がなく、後知恵に基づくものといわざるを得ない。〔

(被告の主張)

〕甲1発明に甲2記載事項を適用することができないとの

(原告の主張)

が誤りであることは、前記2〔

(被告の主張)

〕のとおりである。「シートの1枚当たりの坪量が13g/m 2を超え1本件発明7においては、7g/m 2以下」であることが規定されているが、これに対し、甲2には、「シートの坪量が13.1~17.0g/m 2 」であると記載されており(【0017】)、両者の数値範囲はほぼ一致する。しかも、甲2の2plyの実施例1~6に記載された値は、全て、本件発明7で規定される値に含まれている。した

5 がって、本件審決が、甲2の【0017】に本件発明7の発明特定事項に係る

具体的示唆があるとした点は、何ら誤りではない。

9 取消事由9(原告の防御権を保障しなかった手続上の違法)について

(原告の主張)

〕引用文献1及び2は、本件審決の判断において核心となる事実の認定を基礎付ける証拠である。無効審判において審判体は職権で証拠調べをすることができるが(特許法150条1項)、その際には、その結果を当事者に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない(同5項)。当事者に対する不意打ちを防止し防御を尽くさせるとの同条の趣旨からすれば、審判体は、上記のとおり極めて重要な証拠である引用文献1及び2を職権で採用して取り調べるに当たっては、口頭審理の審理事項通知書においてこの点を予告するか、遅くとも口頭審理において言及し、かつ口頭審理終結後に上申書等の書面の提出機会を与えるなど原告に十分な反論の機会を与えるべきであった。また、本件審決予告に対し、原告が令和6年9月20日に訂正請求書を提出し、その中で、本件審決予告における引用文献に基づく認定の誤りを指摘したところ、本件審決においては、引用文献1に基づく認定が変更されたが、審判体は、このように本件審決において本件審決予告と異なる事実認定をするに当たっても、原告に対し追加の反論の機会を与えなかった。引用文献1は甲7として請求人(被告)が提出した証拠の続頁であり、請求人があえて証拠提出しなかった文献である。このような文献を審判体が職権で取り調べるのであれば、通常の場合にも増して、当該証拠を取り調べる旨及び当該証拠をもって認定しようとする事実と、これが無効理由の存否の認定にどのように関わるかを事前に詳細に明らかにした上で被請求人に反論・反証を尽くさせたのでなければ、公平に審判手続を指揮したものとはいえない。これらの点は本件審決の結論に影響を及ぼすから、本件審決には手続上の違

5 法がある。

(被告の主張)

〕職権審理の結果を当事者に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならないとする趣旨は、当事者の知らない間に不利な資料が集められて、何ら弁明の機会を与えられないうちに、審判体の心証が形成されるという不利益から当事者を救済するためである。原告は、本件審決予告において引用文献1、2に基づいて認定された当業者の技術常識に対して、令和6年9月20日付訂正請求書(甲12)において、新たに参考資料1(甲14と同じ内容のもの)を提出した上で明確に反論している。しかも、本件審決予告を受けて、特許請求の範囲の訂正を行っている。そうすると、原告には、引用文献1、2に基づいて認定された当業者の技術常識に対して、十分な防御の機会が与えられており、何ら弁明の機会を与えられないうちに審判体の心証が形成されたということはないから、本件審決に関し手続上の違法はない。本件審決予告には、その認定の根拠となる、引用文献1の記載が明記されているし、かつ、本件審決予告における認定と、本件審決における認定は、表現は異なるものの、ほとんど同じことを述べているのであるから、本件審決における表現が、本件審決予告における表現と異なっているとしても、原告が、本件審決予告の段階で引用文献1及びその認定について反論の機会が与えられたことは明らかであり、さらなる追加の反論の機会が与えられるべきとの主張には理由がない。

第4 当裁判所の判断

1 本件発明の技術的意義等

⑴ 特許請求の範囲本件特許に係る特許請求の範囲の記載は、前記第2の2のとおりである。

⑵ 本件明細書及び図面の記載

5 本件明細書及び図面の記載は、別紙1特許公報写しに記載のとおりである。

⑶ 本件発明の概要上記⑴の特許請求の範囲並びに上記⑵の本件明細書及び図面の記載によれば、本件発明の技術分野、背景技術、本件発明の効果は、以下のとおり認められる。ア 技術分野本件発明は、長巻のトイレットペーパーなどの薄葉紙のロール製品を複数個包装袋に収納したロール製品パッケージに関するものである。(【0001】)イ 背景技術トイレットペーパー等の包装袋として、ポリエチレン等の筒状フィルムにガゼットを対称的に折り込んで本体とし、その上部を平面状に折り畳んで把持部を構成したものが用いられている。把持部には購入者が運搬するための指掛け穴が備えられている。また、上記した包装袋の本体と別体の帯状の把持部を、包装袋の上面を跨いで、両端部をそれぞれ本体の対向する側面に接合したものが用いられている。一方、近年、トイレットペーパー等のロール製品を従来に比べてより長く巻き取り、1個のロール当りの有効使用量を多くし、持ち運び時及び保管時のコンパクト化を図ったものが販売されている。しかしながら、長巻のロール製品は1個のロール当りの重量が大きいため、ロール製品を包装したパッケージを消費者が持ち運ぶ際、持手部や包装袋の底面に荷重がかかる。そこで、包装袋の本体や持手部等の強度を確保するために、包装袋を厚くすることが考えられる。ところが、包装袋を厚くして強度を高くすると、ロール製品を包装した際、ロール製品を締め付ける力が増してロールが潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワしてフィルムの触感が悪くなるという問題がある。また、ロールが潰れにくく

5 なるようにロールを固く巻くと、ロールを持った時の柔らかさが劣るという問題がある。(【0002】)このようなことから、出願人(原告)は、ロール製品の巻長、質量、巻き硬さ、及び包装袋をなすフィルムの坪量を規定し、持ち運ぶ際にフィルムが破れにくく、かつロール製品が潰れ難いロール製品パッケージを開発した。(【0003】)ウ 発明が解決しようとする課題上記イの技術は、包装袋と別体の帯状の把持部を接合したタイプに関するものであるが、包装袋の対向する上辺から上方に向かって切妻屋根型に延びて接合される把持部を設けたガゼットタイプに長巻のロール製品を包装すると、包装袋の上辺と把持部の間に荷重が掛かり、この部位のロール製品の端部が潰れる場合があった。したがって、本発明は、長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運び易く、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難く、さらに持ち運ぶ際にフィルムが破れにくく包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージの提供を目的とする。(【0005】)エ 課題を解決するための手段上記ウの課題を解決するため、本発明のロール製品パッケージは、フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、前記把持部には指掛け穴が形成されており、前記ロール製

5 品の巻長が63~103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200~370gであり、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/m 2))であり、前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25~45度であり、前記長辺同士の間隔Wが105~134mmである。(【0006】)オ 本件発明の効果この発明によれば、長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運び易く、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難く、包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージが得られる。(【0008】)

2 取消事由1(本件審決の本件出願日時点における技術常識の認定の誤り)について本件審決は、引用発明1と、甲1に記載されている発明として認定した甲1発明との一致点及び相違点を認定し、相違点のうち相違点1及び2に関する判断の中で、本件出願の時点における技術常識として、技術常識aないしdが認められると認定した(第2の4⑶イ(ア))。原告は、取消事由1において、本件審決が認定した上記技術常識のうち、技術常識aないしcの認定が誤りであると主張するので、以下検討する。⑴ 技術常識aについて引用文献1は、本件出願日よりも前にインターネット上に掲載された記事の一部であり、その記載は別紙2「甲7及び引用文献1ないし4の記載」の2のとおりである。引用文献1には「1985年に12ロールパッケージが発売され、多ロール化が進んだ。だが、12ロールパッケージは持ち帰るのにかさばり、自宅でストックする際にもスペースを取ってしまう。それを解消するため、19

5 97年に8ロールで12ロール分の長さという、1.5倍巻きの商品を発売。12ロールパッケージに比べてかさばらず省スペースだが、同じ容量だ。買う頻度も取り替える頻度も少なくて済む。」との記載がある。上記記載によれば、1997年(平成9年)には、1ロールの巻長を従来のロールの1.5倍としつつ、1パッケージ当たりのロール数を12ロールから8ロールに減じて、省スペース化を図った商品が販売されていたことが認められる。そして、本件出願日の時点でも、1パッケージ当たりのロール数が8ロールである長巻のトイレットペーパーが販売されていたことは、当事者間に争いがない。そして、このように、長巻で1パッケージ当たりのロール数が少ないトイレットペーパーが商品化され、その販売が継続したのは、長巻化・ロール数削減に対する消費者の需要(ニーズ)があったことによるものと考えられる。そうすると、平成9年には、トイレットペーパーの長巻化・ロール数削減に対する消費者の需要(ニーズ)が存在し、本件出願日である平成27年8月31日当時には、このような商品の販売が継続していたことにより、長巻化・ロール数削減に対する消費者の需要(ニーズ)は広く一般に知られていたものと推認することができる。以上によれば、本件審決が、「1ロールの巻き長を長くしつつ、1パッケージ当たりのロール数を減じて省スペースを図るニーズが古くからあり、本件出願当時にあっては、技術常識として知られていたものと認められる。」と判断したことに誤りがあるとはいえない。⑵ 技術常識bについて引用文献1には、「1970年に4ロールパッケージ・・が発売され、」との記載が存在する。上記記載によれば、1970年(昭和45年)の時点で、1パッケージ当たりのロール数が4ロールである商品が販売されていたことが認められる。

5 また、4ロール入りの商品として、本件の証拠に現われるものは、ロール製品を軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて収納する形態(1列2段形態)であり、4ロール入りの商品の多くはこのように1列2段形態で包装袋に収納されて包装されていたものと推認される。以上によれば、本件審決が、「『軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装』することは古くから行われており、そのニーズがあったことは当該技術分野における技術常識であると認められる。」と判断したことに誤りがあるとはいえない。⑶ 技術常識cについて甲7は、本件出願日よりも前にインターネット上に掲載された記事(引用文献1を含む記事と同一である。)の一部であり、その記載は別紙2「甲7及び引用文献1ないし4の記載」の1のとおりである。甲7には、「トイレットペーパー市場全体の『シングル』と『ダブル』の売り上げは、ざっくりとシングル4割、ダブル6割。」との記載がある。また、甲7には、原告のマーケティング部長が話した内容の一つとして、「市場全体で再生紙のトイレットペーパーが6割を占め、再生紙はダブルが多いからです。再生紙のシングルはあまりありません。1回紙にしたものをもう1回紙にするため、繊維が短くなって弱くなるからです。」との記載も存在する。上記記載によれば、一般的に販売されているトイレットペーパーとして、シングル(1ply)のもの及びダブル(2ply)のものが存在することが認められる。また、消費者が、トイレットペーパーとして再生紙を用いた商品を選択した結果、再生紙のトイレットペーパーにはダブルのものが多いため、ダブルのトイレットペーパーを選択する結果となることがあることも認められ、このことからすれば、消費者がその嗜好によりトイレットペーパーのシングル(1ply)とダブル(2ply)のいずれかを選択していると認めることができる。

5 以上によれば、本件審決が、「『衛生薄葉紙』には『1plyのシートを巻いた』もの、及び『2plyのシートを巻いた』ものが存在し、消費者の嗜好に合わせて適宜選択するものであることは、本件発明の技術分野における当業者が広く認識していた技術常識といえる。」と判断したことに誤りがあるとはいえない。

⑷ 技術常識dについて本件審決は、前記第2の4⑶イ(ア)dのとおり、トイレットペーパーの芯の重さが4ないし6g程度であるとの技術常識を認定しているところ、上記箇所に挙げられた引用文献3、4の記載(別紙2「甲7及び引用文献1ないし4の記載」の3、4のとおり。)から上記内容が技術常識であると認定したことに誤りがあるとは認められない。

⑸ 原告の主張についてア 原告は、技術常識aにつき、前記第3の1〔原告の主張〕⑴のとおり、本件出願日当時において、長巻のトイレットペーパーは一般的ではなく、市場における売上比率等も極めて低いものであり、本件審決が認定した「ニーズ」は存在しなかった、仮にそのようなニーズが古くからあったにもかかわらず、長巻の構成が広く採用されていないとすれば、当該構成の採用を妨げる事情があったと推認され、このような構成を技術常識として採用できないなどとして、本件審決が技術常識aを認定したことは誤りである旨主張する。しかし、本件審決が認定した技術常識aは、1ロールの巻長を長くしつつ、1パッケージ当たりのロール数を減じて省スペースを図ることについて、消費者の需要(ニーズ)が古くから存在し、本件出願日時点でも存在したことが技術常識で知られていたというものであって、このことは、前記⑴のとおり、平成9年の時点で、長巻でロール数を削減したトイレットペーパーの商品が販売され、本件出願日時点でもこのような商品が販売さ

5 れていたこと等から認められるのであって、仮に、原告が主張するように、長巻のトイレットペーパーの売上比率等が低いなどの事情が存在したとしても、上記内容の消費者の需要があるとの認定は左右されないし、ロール製品を長巻にすることを妨げる事情があったと推認することもできない。また、技術常識aは、2plyで長巻であるトイレットロールを技術常識として認定したものではない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は、技術常識bにつき、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、本件出願日当時に知られていた4ロール入りパッケージはあくまでキャラメル包装のものであり、「ロール製品を1列2段に並べて4ロールを包装するガゼット包装パッケージ」という本件発明1の構成が技術常識であったわけではないなどとして、本件審決が技術常識bを認定したことが誤りであると主張する。しかし、本件審決が認定した技術常識bは、キャラメル包装であるかガゼット包装であるかを問わず、包装袋内の4ロールの配置に関して認定したものである。原告自身、1列2段形態で4ロールを包装するパッケージが本件出願日当時に存在していたことは事実であると認めていることからしても、技術常識bの認定が誤りであるとは解されない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。ウ 原告は、技術常識cにつき、前記第3の1〔原告の主張〕⑶のとおり、従来巻製品において2ply品が普及していたことをもって、長巻ロールにおいても2plyの採用をなし得たということはできないなどとして、本件審決が技術常識cを認定したことが誤りであると主張する。しかし、本件審決が認定した技術常識cは、長巻ロールにおいて2plyを採用することが技術常識であったとの内容ではなく、単に2plyに

5 することが技術常識であったというものであるから、原告の主張を考慮しても、本件審決の認定が誤りであるとは解されない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。なお、技術常識b及びcに関する原告の主張は、当該技術常識を根拠の一つとした、甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けの有無に関する本件審決の判断が不当であるとの主張と解する余地もあるが、この点に関する本件審決の判断については、後記3において検討する。

⑹ 取消事由1に関する結論以上によれば、本件審決が技術常識aないしcを認定したことに誤りがあるとは認められず、取消事由1には理由がない。

3 取消事由2(相違点1に関する判断の誤り)について⑴ 甲1発明について甲1には、別紙3の公開特許公報(特開2011-189965号)(写し)のとおりの記載がある。上記のとおりである甲1の記載によれば、甲1には、本件審決が認定した甲1発明(前記第2の4⑴)が記載されていると認められる。また、甲1発明が前記第2の4⑴のとおりであるとすれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、本件審決が認定した一致点及び相違点1ないし4(前記第2の4⑶ア)のとおりであると認められる。⑵ 甲2記載事項について甲2には、別紙4の公開特許公報(特開2015-101388号)(写し)のとおりの記載がある。上記のとおりである甲2の記載、特に甲2の第2の実施形態並びに実施例1ないし6のトイレットロール及びフィルムの特性によれば、甲2には本件審決が認定した甲2記載事項(前記第2の4⑵)が記載されていると認められる。

5 ⑶ 相違点1の容易想到性について甲2記載事項は、巻長が66m、75m又は93mである2plyのロール製品(トイレットロール)を、軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて(2列2段形態)包装袋20に包装してなるものである。また、甲2の【0013】には、「包装袋2は、・・公知の包装方法(例えば、キャラメル包装、ガゼット包装等)で包装されている。」との記載があり、甲2に記載された発明の包装方法として、キャラメル包装に限るものではなく、ガゼット包装でもよいことが示唆されている。そうすると、ガゼット包装を採用する甲1発明において、技術常識aないしc、特に技術常識aの内容を踏まえ、当業者において、2plyのシートの巻長を長くし、1パッケージ当たりのロール数を減らす方向となる甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けがあったと認められる。また、甲1発明において、甲2記載事項のロール製品を収納する際、甲2記載事項のロール製品の重量等に応じて、甲2記載事項の包装袋の厚さ、すなわち坪量を選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、適宜選択し得た設計的事項というべきである。そして、甲1発明に甲2記載事項を適用すれば、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることができること、甲2記載事項は、相違点1に係る本件発明1の数値範囲の全てを開示するものではないが、本件発明1において、甲2記載事項に具体的に開示されていない数値範囲は、甲2記載事項を甲1発明に適用するに際して当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないと解されることは、本件審決の判断(前記第2の4⑶イ(ウ))のとおりである。以上によれば、甲1発明に甲2記載事項を適用し、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであると認められる。⑷ 原告の主張について

5 ア 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴アのとおり、甲1発明に甲2記載の構成を組み合わせる動機付けがないと主張する。しかし、本件審決の技術常識の認定に誤りがあると認められないことは、前記2の説示のとおりである。本件出願日当時における長巻で2plyのトイレットロールの売上比率が低いものであったとしても、そのことによって、甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けがないことにはならない。また、長巻ロールを収納するパッケージにつき、持ち運びやすく、収納されているロール製品が潰れにくく、フィルムの触感に優れたパッケージを実現するための課題を解決する手段が当業者に与えられていて初めて、当業者が甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けを有するに至るなどとは解されず、甲2記載事項を甲1発明に適用した場合に、パッケージが持ち運びにくくなるとか、収納されるロール製品が潰れやすくなるといった問題が生ずることを示す記載が甲1又は甲2に存在するとも認められない。原告が前記第3の2〔原告の主張〕⑴ア(イ)において挙げる甲1の記載を考慮しても、甲1発明のパッケージに収納されるトイレットロールとして長巻のものが想定されていないと解することはできず、その他甲1において原告の主張する解釈を採るべき根拠となる記載があるとは認められない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴イのとおり、ガゼット包装とキャラメル包装は、包装袋の素材に要求される物性、把持部・持手部の形成において考慮すべき要素、構造上の強度等の点で大きく異なるから、ガゼット包装の発明である甲1発明に、キャラメル包装の発明である甲2記載の発明の構成を適用しようとしても、甲2記載の発明で奏されるような作用効果が甲1発明において奏されることについては何ら期待できず、むし

5 ろ不測の不具合が生じることが予期されるから、両者を組み合わせることには阻害事由がある旨主張する。しかし、本件で問題となっているのは、甲2記載事項のロール製品及びその収納形態を甲1発明に適用する動機付けの有無であって、ガゼット包装とキャラメル包装の構造等の相違により、甲2記載事項のロール製品及びその収納形態を甲1発明に適用すると不測の不具合が生じることが予期されるとは解されない。しかも、前記⑶のとおり、甲2に記載された発明の包装方法としては、ガゼット包装でもよく、キャラメル包装に限られるものではないから、原告の主張するような阻害事由があるとは認められない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。ウ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴ウのとおり、甲1発明は2列2段形態における「内容物の重量によって持手部が破損する」との課題の解決を目的とするものであるところ、1列2段形態へと変更することで収納されるロール製品の数は4ロールとなり、同一の重量のロールを収納する場合の総重量は2分の1となるから、重量による持手部の破損という課題を解決する甲1発明が想定する形態ではなく、むしろ、1列2段形態を用いた場合には、甲1発明の解決しようとする課題がもはや存在しないものと当業者は理解するから、甲1に1列2段形態を組み合わせることには阻害事由があると主張する。しかし、甲1発明において、甲2記載事項であるロール製品を適用する場合、ロール数は8ロールから4ロールに減少するものの、甲2記載事項のロール製品は巻長が66m、75m又は93mという長巻の2plyのロール製品であるから、重量が2分の1に減少するとは解されず、甲1発明の課題が存在しなくなるとは認められないから、甲1発明に甲2記載事項のロール製品を適用することに阻害事由があるとも解されない。

5 したがって、原告の上記主張は採用することができない。エ 原告は、「包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量の比」に関する主張として、前記第3の2〔原告の主張〕⑴エのとおり主張する。しかし、原告の上記主張には、甲2記載の発明がキャラメル包装であることを前提とする主張が含まれるところ、上記⑶及び上記イのとおり、甲2に記載された発明の包装方法としては、ガゼット包装でもよく、キャラメル包装に限られるものではない上、本件で問題となっているのは、甲2の包装形態ではなく、甲2記載事項のロール製品及びその収納形態を甲1発明に適用する動機付けであるから、甲2記載の発明がキャラメル包装であることを前提に、甲1発明に甲2記載事項を適用することができないとか、阻害要因があるとする原告の主張は、その前提を欠くものである。また、原告は、甲2の記載から本件坪量要件(包装袋内の4個のロール製品の質量/フィルムの坪量の比)のパラメータを、具体的な実施例を離れた独立のパラメータとして当業者が読み取ることができなければ、甲2の記載事項のロール製品を甲1発明に適用することができない旨主張するが、原告が主張するように解すべき根拠はない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。オ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑵のとおり、本件審決について、相違点1に係る各構成要素について独立に検討し、容易想到性を論じた手法を用いたことが誤りである、本件発明1は、個々の発明特定事項である物性等が互いに組み合わさって複合的に作用効果を実現するものであり、このような発明について進歩性を否定するためには、発明の課題解決のために、各物性等を本件発明1のとおりに組み合わせること自体が容易想到であったといえる必要があるところ、本件発明1と甲1発明及び甲2記載の発明とは、包装材及び内容物がそれぞれ異なっており、甲1及び甲2からは、本件発明1の「長巻ロールをガゼット包装袋に収納する」場合に特

5 有の課題が認識されず、このような本件発明1の課題が当時当業者に広く知られていた事実もないから、課題の認識を欠く以上、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、相違点1に係る各構成に着目して、それらを本件発明1と一致するように変更しようと着想することはないなどと主張する。しかし、特許発明と主引用発明との相違点の容易想到性の判断に関し、当該特許発明の課題を認識しなければ、相違点に係る特許発明の構成を適用することを想到し得ないなどと解することはできない。本件に関しても、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、これらの記載から本件発明1が解決しようとする課題を認識することができないとしても、そのことをもって、当業者が甲1発明に甲2記載事項を適用する動機付けがないとか、阻害要因があるとは解されない。そして、本件発明1と甲1発明との相違点として、ロール製品の巻長、質量、4個のロール製品の質量/フィルムの坪量といった複数の数値範囲を要素に含む相違点1を認定したことに誤りがあるとはいえず、甲1発明に甲2記載事項のロール製品及びその収納形態を適用することによって、これらの数値範囲に係る本件発明1の構成を得ることができるか否かを判断することが、容易想到性の判断として不当であるとは解されない。原告は、相違点1に係る各構成のみならず、相違点1ないし4についても、四つの相違点全てを本件発明1の構成に変更するという選択が必然であるかどうかが検討されるべきであると主張する。しかし、本件発明1の進歩性の判断に際し、本件発明1と、主引用発明である甲1発明との相違点を相違点1ないし4と認定したことに誤りはなく、これらの相違点について、全ての相違点を本件発明1の構成に変更するという選択が必然であるかどうかという基準で容易想到性を判断すべき根拠は見当たらない。なお、原告は、相違点1以外の相違点に関する主張においても同旨の主張をするが、同様に理由がない。

5 したがって、原告の上記主張は採用することができない。⑸ 取消事由2に関する結論以上によれば、相違点1に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由2には理由がない。

4 取消事由3(相違点2に関する判断の誤り)について⑴ 相違点2の容易想到性についてア パネル部の傾斜角θについて甲1の【0024】には、「パネル部の傾斜角θが20度未満の場合、各パネル部山折り稜線43、53が側面23の上辺に近くなり、同様に山折り稜線43、53の一方を掴み難くなる傾向にある。一方、パネル部の傾斜角θが50度を越えると、ロール製品パッケージ200が縦方向に長くなり過ぎ、包装がルーズになり、運搬がし難くなる傾向にある。」と記載されている。甲1の【0024】は、上下方向に軸を揃えて2個重ねたロール製品を縦横2列(合計8個)収納した形態を前提としたものであるが、傾斜角θが小さくなりすぎた場合、あるいは大きくなりすぎた場合に、それぞれどのような問題が生じるかについて記載がされており、傾斜角θを規定する上でどのような技術的事項を考慮する必要があるのかについて、当業者であれば容易に理解することができる内容であるといえる。そして、甲1発明のガゼット包装において、甲2記載事項を適用し、軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて包装袋に包装するようにすることは、前記3⑶のとおり容易想到であるところ、その際、収納する甲2記載事項のロール製品及びその収納形態に合わせて、甲1の【0024】に記載された20~50度という角度も参考に、包装袋の山折り稜線を掴みやすいものとし、かつ、縦方向に長くなりすぎないような傾斜角θを決めることは、当業者であれば容易に想到する事項である。

5 また、本件発明1において、傾斜角θの下限を25度、上限を45度とすることについて、格別の技術的意義があるとは認められず、傾斜角θを25~45度にすることによって格別顕著な効果が奏されるとも認められない。そうすると、甲1発明に甲2記載事項を適用する場合に、傾斜角θを25~45度とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項であると認められる。イ 相違点2の長辺同士の間隔Wの容易想到性について甲1発明に甲2記載事項を適用して、軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて包装袋に包装する構成にした場合、収納する甲2記載事項のロール製品及びその収納形態に合わせて収納袋の短辺と長辺が設定されることとなり、長辺同士の間隔、すなわち短辺の長さは、ロール製品の直径とほぼ同様になる。甲2記載事項のロール製品(実施例1ないし6)の直径は120mm又は133mmであるから、長辺同士の間隔もほぼこの値となるところ、この数値は相違点2に係る本件発明1の長辺同士の間隔Wの構成に相当する。また、本件発明1において、長辺同士の間隔Wの下限値を105mm、上限値を134mmとすることについて、格別の技術的意義があるとは認められず、長辺同士の間隔Wを105~134mmにすることによって格別顕著な効果が奏されるとも認められない。そうすると、甲1発明に甲2記載事項を適用する場合に、長辺同士の間隔Wを105~134mmとすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項であると認められる。ウ 以上によれば、甲1発明に甲2記載事項を適用し、相違点2に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであると認められる。

5 ⑵ 原告の主張について原告は、前記第3の3〔原告の主張〕のとおり、本件発明1の傾斜角と甲1発明の傾斜角とでは、それぞれの数値範囲をとる理由が異なり、傾斜角とロール製品の潰れに関係があるとの本件発明の着想は本件出願日当時に知られておらず、当業者はロール製品の潰れを防止するために傾斜角θを一定の値に調整しようという発想に至らないこと、甲1発明の傾斜角は2列2段形態を前提として初めて意味のある数値であって、これを甲2記載の1列2段形態と組み合わせることはできないことなどから、相違点2のうち傾斜角θの相違に関する容易想到性についての本件審決の判断が誤りである旨主張する。しかし、本件発明1において傾斜角の数値範囲が規律された根拠たる事情と、甲1発明において傾斜角の数値範囲が規律された根拠たる事情が異なるとしても、上記⑴アのとおり、甲1発明に甲2記載事項を適用する場合に、傾斜角を本件発明1における傾斜角の数値範囲にすることが、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項であると認められるのであって、このことからすれば、傾斜角に関する相違点についての本件発明1の構成を得ることが容易に想到されるといえる。また、本件発明1において傾斜角の数値範囲が規律された根拠たる事情は、本件明細書の【0020】に記載されているが、この段落の記載によっても、傾斜角θの下限値を25度、上限値を45度とした技術的意義は明らかでなく、傾斜角θを25~45度とすることについて、格別顕著な効果を奏するとは認められないことは、上記⑴アのとおりである。甲1において傾斜角θに言及している【0024】の記載は、上記⑴アに挙げたとおりであり、この記載は、2列2段形態を前提としたものであるが、傾斜角θが小さくなりすぎた場合、大きくなりすぎた場合に、それぞれどのような問題が生じるかに関する部分は、甲1発明に甲2記載事項を適用して、

5 長巻のロールを1列2段形態で収納した場合にも考慮することのできる事情であるから、上記の場合に、これらの事情を考慮しつつ、収納する甲2記載事項のロール製品及びその収納の形態に合わせて、甲1の【0024】に記載された20~50度という角度も参考に、包装袋の山折り稜線を掴みやすいものとし、かつ、縦方向に長くなりすぎないような傾斜角θを決めることは、当業者であれば容易に想到する事項であるといえる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。⑶ 取消事由3に関する結論以上によれば、相違点2に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由3には理由がない。

5 取消事由4(相違点3に関する判断の誤り)について⑴ 相違点3の容易想到性について甲2記載事項の実施例1ないし6の巻き硬さ(mm)は、1.2、1.7、1.8又は2.3であり、本件発明1で特定されている巻き硬さである「1.0mm~3.0mm」の数値範囲内のものである。しかも、甲2の請求項1及び【0010】には巻き硬さの数値範囲を、本件発明1と同じ範囲である1.0~3.0mmとすることが記載されている。また、甲2の【0012】には、「ロール製品6の巻き硬さが上記下限値未満であると、トイレットロールが固すぎて、ロールの触感(柔らかさ)が劣る。ロール製品6の巻き硬さが上記上限値を超えるものは、ロールをフィルムで包装する際、ロールが潰れて見た目が悪くなる。」との記載があり、この記載は、本件発明1のトイレットロールの巻き硬さを規定する方法に関する本件明細書の記載(【0015】)と同一である。そうすると、甲2の【0012】の記載内容を前提として、甲1発明に甲2記載事項を適用する際に、ロール製品の巻き硬さについて、本件発明1の範囲とすることは、当業者であれば適宜決定し得たことである。

5 ⑵ 原告の主張について原告は、前記第3の4〔原告の主張〕のとおり、相違点3の容易想到性に係る本件審決の判断が誤りである旨主張する。しかし、甲1発明に甲2記載事項を適用し、相違点3に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであると認められる。甲2の【0012】に、本件発明1の巻き硬さの数値範囲が記載されていないとしても、ロール製品の巻き硬さと、ロールの触感やロールが潰れて見た目が悪くなることの関係についての示唆があり、これに基づいて、甲1発明に甲2記載事項を適用する際に、巻き硬さを本件発明1の範囲とすることが当業者であれば適宜決定し得たと判断できるのであり、この判断が後知恵に当たるために許されないものであるとは解されない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。⑶ 取消事由4に関する結論以上によれば、相違点3に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由4には理由がない。

6 取消事由5(相違点4に関する判断の誤り)について⑴ 相違点4の容易想到性について甲1の持手部4の長さについては、甲1の図4等の記載からして、持手部4のパネル部山折り稜線45、55の長さを超えて設定することは想定し得ず、パネル部山折り稜線45、55の長さを著しく下回る長さとすることも想定しがたいものといえる。甲1発明に甲2記載事項のロール製品及びその収納形態を適用した場合、甲1の持手部4のパネル部山折り稜線45、55に沿う長さの方向にロール製品が2個収納されることになるから、包装袋とロール製品の間に余分な隙間が生じないよう、持手部4のパネル部山折り稜線45、55に沿う長さを、

5 ロール製品の巻直径のほぼ2倍とすることは、当業者が必要に応じて適宜決定し得た設計的事項であるということができる。また、本件発明1では、把持部4と切妻屋根型の屋根に当たる部分とがどのように接続されているのか、具体的には、屋根に当たる部分と把持部4の長さに違いがあるのか、屋根の長辺に当たる部分が上方に行くに従って幅が短くなっているのか、さらには、包装袋の長辺方向の長さとガゼット部の長さとの関係について何ら特定されていないから、本件発明1の把持部4の長さの上限と下限の範囲に特段の技術的意義が存在するとは認められず、この長さの数値範囲をとることによって格別顕著な効果が奏されるとも認められない。以上によれば、甲1の持手部4の長さについて、その上限をロール製品の巻直径の2倍とし、その下限を、巻直径の2倍以下であるが、これを著しく下回るものでない72%とすることは、当業者が通常の創作能力の範囲で適宜なし得た設計的事項であるというべきである。⑵ 原告の主張について原告は、前記第3の5〔原告の主張〕のとおり、把持部の長さに係る構成は、ロール製品の端部にかかる負荷が大きくなりすぎてロール製品が潰れることをより確実に防止するための構成であるところ、甲1においては、パッケージに接するロール製品の端部にかかる力を調整し、ロール製品の潰れを防止するという着眼点がないから、把持部の長さを本件発明1の範囲に調整する発想が生まれる余地がないと主張する。この点、甲1において、把持部の長さに係る構成が、ロール製品の端部にかかる負荷を調整してロール製品が潰れることを防止することに関わるものであるとの記載はなく、把持部の長さをどのように規定するかに関する記載もないが、甲1発明に甲2記載事項のロール製品及びその収納形態を適用した場合、持手部4のパネル部山折り稜線45、55に沿う長さを、ロール製

5 品の巻直径のほぼ2倍とすることは、上記⑴のとおり、当業者が必要に応じて適宜決定し得た設計的事項であるし、把持部4の長さを持手部4のパネル部山折り稜線45、55に沿う長さより著しく下回るものとすることが考えがたいことも、上記⑴のとおりであって、把持部4の長さをロール製品の巻直径×2の72~100%とすることは、当業者が通常の創作能力の範囲で適宜なし得た設計的事項であるといえるとの結論は左右されない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。⑶ 取消事由5に関する結論以上によれば、相違点4に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由5には理由がない。

7 取消事由6(本件発明3の容易想到性に関する判断の誤り)について⑴ 本件発明3と甲1発明の相違点の容易想到性についてア 本件発明3は、フィルムの坪量が13~39g/m 2 である本件発明1のロール製品パッケージである。そうすると、本件発明3と、甲1発明の相違点としては、本件発明1と甲1発明との相違点1ないし4と同一の相違点のほか、「本件発明3では、『フィルムの坪量が13~39g/m 2 』であるのに対し、甲1発明ではフィルムの坪量について特定していない点」がある。イ 上記アの相違点について検討すると、甲2記載事項の実施例1ないし6のうち、実施例1ないし4及び6のフィルムの坪量(g/m 2 )は、25.5又は32.5であり、本件発明3のフィルムの坪量の上記範囲内のものである。また、甲2の【0014】には、フィルムの坪量を25~45g/m 2とすることが記載され、さらにフィルムの坪量が25g/m 2未満であると、パッケージの運搬時等に包装袋が破れ、45g/m 2 を超えると、ロール製品が潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワすることが記載されており、

5 フィルムの坪量を規定する上で考慮すべき技術的事項が示唆されている。そして、本件発明3において、フィルムの坪量の下限を13g/m 2、上限を39g/m 2 とすることについて、格別の技術的意義があるとは認められず、フィルムの坪量の数値範囲を13~39g/m 2 とすることよって格別顕著な効果が奏されるとも認められない。そうすると、甲1発明に甲2記載事項を適用した場合に、甲2の【0014】に示唆されたフィルムの坪量を規定する上で考慮すべき技術的事項を踏まえて、フィルムの坪量の数値範囲を本件発明3の13~39g/㎡とすることは、当業者であれば適宜選択し得た設計的事項であるというべきである。ウ 原告は、前記第3の6〔原告の主張〕のとおり、甲2の【0014】には本件発明3の発明特定事項に至る具体的な示唆があるとはいえず、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断は誤りであると主張するが、上記イの説示に照らし、採用することができない。⑵ 取消事由6に関する結論以上によれば、本件発明3の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由6には理由がない。

8 取消事由7(本件発明4及び6の容易想到性に関する判断の誤り)について⑴ 本件発明4及び6と甲1発明の相違点の容易想到性についてア 本件発明4は、本件発明1の構成要件のうち、「前記ロール製品の巻き硬さが1.0~3.0mmであり、」との要件が「(前記ロール製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2 ))が0.035~0.13(mm/(g/m 2))であり、」との要件になっているロール製品パッケージである。また、本件発明6は、本件発明1の発明特定事項に加え、「(前記ロール

5 製品の巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m 2))が0.035~0.13(mm/(g/m 2 ))であり、」との要件が加えられているロール製品パッケージである。そうすると、本件発明4及び6と、甲1発明との相違点として、「本件発明4及び6では、『(ロール製品の巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/㎡))が0.035~0.13(mm/(g/m 2 ))』であるのに対し、甲1発明では(ロール製品の巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/㎡))について特定していない点」がある。また、上記相違点を除き、本件発明4及び6と甲1発明との相違点として、本件発明1と甲1発明との相違点に含まれないものはない。イ 上記アの相違点について検討すると、甲2記載事項の実施例1ないし6のロール製品6の巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m 2 )は、0.037、0.044、0.052、0.055又は0.071であり、いずれも本件発明4及び6の数値範囲内のものである。また、甲2の【0016】には、巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m 2)を好ましくは0.020~0.100とすることが記載され、さらにフィルムの坪量がロールを締め付ける強さに関係し、巻き硬さがロールの潰れやすさに関係することが示唆されている。そして、本件発明4及び6において、巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m 2)の下限を0.035、上限を0.13とすることについて、格別の技術的意義があるとは認められず、巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m 2)の数値範囲を0.035~0.13とすることによって格別顕著な効果が奏されるとも認められない。そうすると、甲1発明に甲2記載事項を適用した場合に、甲2の【0016】に示唆された技術的事項を踏まえて、巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m 2 )を、本件発明4及び6に規定する数値範囲である0.0

5 35~0.13とすることは、当業者であれば適宜選択し得た設計的事項であるというべきである。ウ 原告は、前記第3の7〔原告の主張〕のとおり、甲2の【0016】には本件発明4及び6の発明特定事項に至る具体的な示唆があるとはいえず、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断は誤りであると主張するが、上記イの説示に照らし、採用することができない。⑵ 取消事由7に関する結論以上によれば、本件発明4及び6の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由7には理由がない。

9 取消事由8(本件発明7の容易想到性に関する判断の誤り)について⑴ 本件発明7と甲1発明の相違点の容易想到性についてア 本件発明7は「前記シートの1枚当たりの坪量が13g/m 2 を超え17g/m 2以下である請求項1、3、4、6のいずれか一項記載のロール製品パッケージ」である。そうすると、本件発明7と、甲1発明との相違点として、「本件発明7で『シートの1枚当たりの坪量が13g/㎡を超え17g/m 2 以下であは、る』のに対し、甲1発明ではシートの1枚当たりの坪量について特定していない点」がある。また、上記相違点を除き、本件発明7と甲1発明との相違点として、本件発明1と甲1発明との相違点に含まれないものはない。イ 上記アの相違点について検討すると、甲2記載事項の実施例1ないし6のシート1ply当たりの坪量(g/m2 )は、15.0又は16.8であり、いずれも本件発明7の数値範囲内のものである。また、甲2の【0017】には、ロール製品が2plyの場合、シートの坪量が13.1~17.0g /m2 であることが好ましいことが記載されており、これは本件発明7の「13g/m 2 を超え17g/m 2 以下」と

5 ほぼ一致するものといえる。さらに、同【0017】には、シートの坪量が上記下限値(13.1)未満であると、強度が低下すると共に使用感(嵩高さ)も低下することがあり、シートの坪量が上記上限値(17)を超えると、シートが固く感じて使用感が低下したり、これを長く巻いたときに巻直径が大きくなって、ペーパーホルダーに装着しにくくなることが記載されており、これは本件発明7におけるシート1枚当たりの坪量を規定する方法(本件明細書【0029】)と同一の内容である。そして、本件発明7において、シートの1枚当たりの坪量の下限を13g/m 2、上限を17g/m 2 とすることについて、格別の技術的意義があるとは認められず、上記坪量の数値範囲を13g/㎡を超え17g/m 2以下とすることによって格別顕著な効果が奏されるとも認められない。そうすると、甲1発明に甲2記載事項を適用した場合に、甲2の【0017】に示唆された技術的事項を踏まえて、シートの1枚(1ply)当たりの坪量を、本件発明7に規定する数値範囲である13g/㎡を超え17g/m 2 以下とすることは、当業者であれば適宜選択し得た設計的事項であるというべきである。ウ 原告は、前記第3の8〔原告の主張〕のとおり、甲2の【0017】には本件発明7の発明特定事項に至る具体的な示唆があるとはいえず、この点を技術常識から導くこともできないから、本件審決の容易想到性の判断は誤りであると主張するが、上記イの説示に照らし、採用することができない。⑵ 取消事由8に関する結論以上によれば、本件発明7の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由8には理由がない。

10 取消事由9(原告の防御権を保障しなかった手続上の違法)について⑴ 原告は、前記第3の9〔原告の主張〕のとおり、引用文献1及び2を職権

5 で採用して取り調べるに当たっては、口頭審理の審理事項通知書においてこの点を予告するか、遅くとも口頭審理において言及し、かつ口頭審理終結後に上申書等の書面の提出機会を与えるなど原告に十分な反論の機会を与えるべきであったのに、このような機会を与えなかったこと、及び、引用文献1に基づく事実認定として、本件審決において本件審決予告と異なる事実認定をするに当たり、原告に対して追加の反論の機会を与えなかったことについて、手続的な違法があると主張する。しかし、前記第2の1⑷の事実及び証拠(甲12、13、21)によれば、本件審決をした審判体は、本件審決予告(甲21)において、引用文献1及び2を、引用文献3及び4とともに挙げ、これらに基づいて、本件出願日当時に存在した技術常識を認定したこと、原告は、本件審決予告を受けて、本件訂正請求をしたが、本件訂正請求に係る訂正請求書(甲12、13)において、「付言」として、本件審決予告においてされた技術常識の認定が誤りであるとの主張をしたことが認められる。これらの事情によれば、原告は、引用文献1及び2に対する反論の機会を実質的に与えられていたと認められる。本件審決をした審判体がした技術常識に関する事実認定のうち、本件審決における技術常識a、bの認定は、これらに相当する技術常識に関する本件審決予告における認定と対照すると、表現が異なる部分がある。しかし、事実認定の基礎とした引用文献1中の具体的な記載部分及び甲2の段落(【0002】)は同一であり、省スペース、取替頻度減少のための長巻き化についての技術常識、及び4ロールパッケージについての技術常識の認定である点も変わりない。これらの事情によれば、本件審決をした審判体が、本件審決において本件審決予告と異なる事実認定をするに当たり、原告に対して追加の反論の機会を与えなかったことをもって、原告の防御権が侵害されたとはいえない。以上によれば、原告の主張を検討しても、本件審判請求に基づく審判手続

5 について手続的な違法があるとは認められない。⑵ 取消事由9に関する結論以上によれば、本件審判請求に基づく審判手続に手続的な違法があるとは認められず、取消事由9には理由がない。

11 その他、原告は、各取消事由について種々の主張をするが、これらの主張を検討しても、本判決の結論は左右されない。

12 結論以上のとおりであり、原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件審決について、これを取り消すべき違法はない。したがって、原告の請求は棄却されるべきである。よって、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官

中 平 健

裁判官

今 井 弘 晃

裁判官水野正則は、転補により署名押印することができない。

裁判長裁判官

中 平 健

別紙1 省略

別紙2

甲7及び引用文献1ないし4の記載

5 1 甲7「」2 引用文献1「」3 引用文献2「」引用文献3「」5 引用文献4「」以 上

別紙3 省略

別紙4 省略

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