知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(行ケ)10053 審決取消請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和7(行ケ)10053審決取消請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年4月23日
事件種別 民事
当事者 原告帝國製薬株式会社
被告特許庁長官
対象物 水性貼付剤
法令 特許権
特許法29条2項1回
キーワード 実施96回
審決67回
進歩性12回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、平成30年10月24日、発明の名称を「水性貼付剤」とする発 明について特許出願(特願2018-199959号。請求項の数は5。以 下「本願」といい、その明細書を「本願明細書」といい、図面を単に「図面」 という。 なお、 以下、 本願明細書、 引用文献等の段落の番号を記載する場合、 「段落」の表記は省略する。)をしたところ、令和4年7月11日付け拒絶 理由通知書を受領した。原告は、同年9月2日に意見書を提出したが、同年

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和8年4月23日判決言渡
令和7年(行ケ)第10053号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年2月24日
判 決
原 告 帝 國 製 薬 株 式 会 社
同訴訟代理人弁理士 草 間 攻
10 被 告 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 藤 原 浩 子
同 田 中 耕 一 郎
同 海 老 原 え い 子
同 阿 曾 裕 樹
15 主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
20 特許庁が不服2024-8237号事件について令和7年3月31日にした
審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は、平成30年10月24日、発明の名称を「水性貼付剤」とする発
25 明について特許出願(特願2018-199959号。請求項の数は5。以
下「本願」といい、その明細書を「本願明細書」といい、図面を単に「図面」
という。なお、以下、本願明細書、引用文献等の段落の番号を記載する場合、
「段落」の表記は省略する。)をしたところ、令和4年7月11日付け拒絶
理由通知書を受領した。原告は、同年9月2日に意見書を提出したが、同年
11月28日付け拒絶理由通知書を受領し、令和5年3月8日、意見書及び
5 手続補正書を提出し、同月10日に手続補足書を提出したが、同年6月5日
付け拒絶理由通知書を受領し、同年10月6日に意見書及び手続補正書を提
出し、同月10日に手続補足書を提出したが、同年11月27日付け拒絶理
由通知書を受領した。原告は、同年12月30日、意見書を提出したが、令
和6年3月4日付けで拒絶査定を受けた。(甲2)
10 ⑵ 原告は、令和6年5月17日、上記拒絶査定に対し不服の審判請求(不服
2024-8237号。以下「本件不服審判請求」という。)をしたが、同
年6月19日付けの拒絶理由通知書を受領した。原告は、同年9月19日、
意見書(以下「本件意見書」という。)を提出するとともに、手続補正を行
い(以下、この手続補正を「本件補正」という。本件補正後の請求項の数は
15 5。)、同月24日、手続補足書により比較実験報告書(甲6、8。甲8は
甲6の印刷が鮮明なものとして提出された証拠であり、内容は甲6と同一で
ある。以下「比較実験報告書」といい、証拠番号は甲8のみを挙げる。)を
提出した。(甲1、4、5)
⑶ 特許庁は、令和7年3月31日、「本件審判の請求は、成り立たない。」
20 との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年5月1日、原
告に送達された。
⑷ 原告は、令和7年5月27日、本件審決の取消しを求めて、本件訴訟を提
起した。
2 本件補正後の特許請求の範囲の記載
25 本件補正後の特許請求の範囲の記載のうち、請求項1の記載は以下のとおり
である(以下、請求項1の発明を「本願発明」という。)。
【請求項1】
膏体成分として、アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマーを10~20重
量%および多価アルコールを20~50重量%含有し、且つ、多価アルコール
の一種として少なくともグリセリンを10~40重量%および架橋剤を含有す
5 る、含水率が25~45重量%である低含水量の膏体を、厚み0.4~0.7
mm及び目付80~110g/m 2 の支持体に、塗工量として300~600
g/m 2 の範囲で塗布してなり、日本薬局方「一般試験 6.12 粘着力試験法」の
「3.2 傾斜式ボールタック試験法」による粘着力としてボールナンバー(No.)
10以上の粘着力を有することを特徴とする水性貼付剤であって、前記アクリ
10 ル系ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物およ
びポリアクリル酸から選択される1種又は2種以上である水性貼付剤。
3 本件審決の内容
⑴ 本件審決の理由の要点は、本願発明は、引用文献3(甲3)に記載された
発明(以下「引用発明」という。)及び引用文献3ないし6の記載事項に基
15 づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法2
9条2項により特許を受けることができない、というものである。
(引用文献一覧)
引用文献3:国際公開第2016/104227号(甲3)
引用文献4:一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修,医薬品製造
20 販売指針2015,株式会社じほう,2015年,第113頁(周知技術を示す
文献)
引用文献5:第十七改正 日本薬局方,2016年,第145~147頁(周知
技術を示す文献)
引用文献6:厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課,第十七改正日
25 本薬局方の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)
について[オンライン],2017 年,<URL:
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2613&dataType=1&pageN
o=1> 検索日 2023.11.27(周知技術を示す文献)
⑵ 本件審決は、上記判断をするに当たり、引用発明の内容、本願発明との一
致点及び相違点を、次のとおり認定した。
5 ア 引用発明の内容
下記表の実施例1の組成を有する膏体液を、剥離ライナーに均一に展延
し、その上に基布を積層して、剥離ライナーを剥離した、パップ剤。

イ 一致点
10 膏体成分として、アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマーを10~2
0重量%および多価アルコールを20~50重量%含有し、且つ、多価ア
ルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%および
架橋剤を含有する膏体を塗布してなる、水性貼付剤であって、前記アクリ
ル系ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物
およびポリアクリル酸から選択される1種又は2種以上である水性貼付
5 剤。
ウ 相違点
(ア) 相違点1
本願発明においては、膏体の「含水率が25~45重量%である低含
水量」であることが特定されているのに対し、引用発明では、約47.
10 42重量%である点。
(イ) 相違点2
本願発明においては、
「支持体」が「厚み0.4~0.7mm及び目付
80~110g/m 2 」であることが特定されているのに対し、引用発明
では、そのような特定がない点。
15 (ウ) 相違点3
本願発明においては、膏体を「塗工量として300~600g/m 2 の
範囲」で支持体に塗布することが特定されているのに対し,引用発明で
は、塗工量は特定されておらず、また、膏体液を剥離ライナー上に展延
し、その上に基布を積層している点。
20 (エ) 相違点4
「日本薬局方「一般試験 6.12 粘
本願発明においては、水性貼付剤が、
着力試験法」の「3.2 傾斜式ボールタック試験法」による粘着力として
ボールナンバー(No.)10以上の粘着力を有する」ことが特定されてい
るのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。
25 ⑶ 本件審決における相違点1ないし4についての判断、及び本願発明の効果
についての判断の内容は、別紙1「本件審決の判断」に記載のとおりである。
4 原告の主張する本件審決の取消事由
⑴ 取消事由1
引用発明の認定の誤り
⑵ 取消事由2
5 相違点の認定の誤り
⑶ 取消事由3
相違点の判断の誤り
⑷ 取消事由4
本願発明の効果についての判断の誤り
10 ⑸ 取消事由5
審判請求人の主張についての判断の誤り
第3 当事者の主張
1 取消事由1(引用発明の認定の誤り)について
〔原告の主張〕
15 本件審決における「引用発明」の認定は、引用文献3(甲3)に記載される
実施例1の記載内容の事実から判断すれば、
「引用発明」としてのパップ剤であ
るとする限りはそのとおりであるが、かかるパップ剤がいかなる背景のもとで
提供されたパップ剤であるかとの本質を全く考慮することなく「引用発明」で
あると認定した点には審理不備の誤りがある。
20 「引用発明」の本質は、引用文献3の[0005]に記載されるように、
「膏
体層にポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有する
パップ剤であって、より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能なパッ
プ剤を提供すること」として、引用文献3の請求項1に記載の構成とするもの
である。
25 したがって、本件審決がいう「引用発明」とは、より小さな力で剥離ライナ
ーを剥離することが可能なパップ剤としての上記構成の具体的一態様である実
施例1に記載の発明を「引用発明」とするものであり、その特徴点を考慮しな
いで、単に実施例1に記載のパップ剤をもって「引用発明」であるとする点に
は、審理不備の誤りがある。
〔被告の主張〕
5 本件審決における引用発明は、引用文献3の請求項1に記載された発明の具
体化物である実施例1に開示されたパップ剤を、そのとおりに認定したもので
あるから、本件審決における引用発明の認定に誤りはない。
原告が主張する「より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能なパッ
プ剤」の点は、引用文献3における「発明が解決しようとする課題」([000
10 5])又は「発明の効果」([0009])を表すものであって、この点を認定し
ていないからといって、実施例1に記載されたパップ剤に基づく引用発明の認
定に誤りがあるとはいえない。
仮に、引用発明における「パップ剤」を、
「より小さな力で剥離ライナーを剥
離することが可能なパップ剤」と認定しても、本願発明は、剥離力について何
15 らかの特定を有するものではないから、本願発明と引用発明との一致点及び相
違点は、本件審決におけるものと同じとなる。
2 取消事由2(相違点の認定の誤り)について
〔原告の主張〕
本件審決は、本願発明と引用発明の対比において、相違点1ないし4を挙げ
20 ている。
しかしながら、本願発明と引用発明との相違点は、本件審決が認定した相違
点だけではなく、以下に記載する相違点5が存在すると認定しなければならな
い。
<相違点5>
25 引用発明は、より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能なパップ剤
とするために界面活性剤としてモノステアリン酸PEG、およびポリ(アクリ
ル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)
(ニカゾールTS-620)を配
合するものであるのに対して、本願発明ではかかる成分の配合を必須とはして
いない点
この相違点5は、本願発明と引用発明の対比において考慮すべき引用発明の
5 目的に基づく本質部分に起因する相違点である。
これに対して本願発明では剥離ライナーの剥離は、通常の剥離力で可能とさ
れるものであることから、引用発明で配合するこれら成分の配合は要求されて
いるものではない。
したがって、本件審決は、本願発明と引用発明の対比において、両発明の本
10 質に基づく基本的な相違点が存在するにも拘わらず、その点を見落として判断
しなかった審理不備の誤りがある。
〔被告の主張〕
本願発明の水性貼付剤では、アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマー、多
価アルコール、グリセリン、架橋剤、水を含有することが特定されているが、
15 それ以外の成分を含むこと、あるいは含まないことについては特定されていな
いから、本願発明は、本願発明において特定されていない他の成分を含むこと
を許容している。
引用発明において必須とされる「ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-
エチルヘキシル)」は、パップ剤の時間経過による付着力の低下を抑制する成分
20 であるところ(引用文献3の[0007])、本願発明も、
「粘着力が良好に維持
される」(本願明細書【0005】)という課題を有するから、本願発明におい
て含有されていてもよい成分であることは明らかである。また、引用発明の「モ
ノステアリン酸PEG」は界面活性剤であるところ、
「界面活性剤」は、本願明
細書にも、適宜配合させることができる成分として明示されている(本願明細
25 書【0023】)。
そうすると、引用発明が、
「モノステアリン酸PEG」と「ポリ(アクリル酸
メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)(ニカゾールTS-620)」を含む
のに対し、本願発明が、かかる成分を含むことを特定していないこと(すなわ
ち、かかる成分の配合を必須とはしていないこと)は、本願発明と引用発明と
の相違点とはならない。
5 また、引用発明は、時間経過による付着力の低下を抑制するための成分であ
るポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有させるこ
とで、高くなってしまう剥離強度(ライナー剥離力)を、所定の界面活性剤を
含有させることにより低下させて、ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-
エチルヘキシル)を含むが所定の界面活性剤を含まないものと比較して、より
10 小さな力で剥離ライナーを剥離することを可能としたものであるから、引用発
明における剥離ライナーの剥離力が通常のものに比べて格段に小さいとは解さ
れず、原告が主張する剥離力の主張は、その前提に誤りがある。
3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
15 ⑴ 相違点1についての判断の誤り
本願発明においては、水性貼付剤に係る膏体について、その調製時に含有
させる水分量を低減させることが特徴の一つであり、かかる水の配合量は、
膏体重量に対して25~45重量%であり、より好ましくは30~40重
量%とするものである。
20 それに加えて、本願発明にあっては、膏体中に含有する水分量を低減させ
るとともに、膏体基剤成分として水溶性ポリマーおよび多価アルコールの両
者を特定量用い、その上でグリセリンを少なくとも多価アルコールの一種と
して特定量含有させた低含水量の膏体としているものであり、単に水分量の
みを低減させているものではない。
25 すなわち、各膏体成分との兼ね合いを踏まえた上で、水分量の低減を図っ
ているものである。
そうであれば、引用文献3の[0034]に、
「水の含有量は、膏体層の質
量を基準として、
・・・18~85質量%であることがさらに好ましい」との
記載があるからといって、
「引用発明における含水量を、上記記載の範囲内で
ある25~45%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことであ
5 る。」と認定し得ないことは明白である。
⑵ 相違点2についての判断の誤り
引用文献3の[0016]、[0019]の記載は、引用文献3の発明であ
る、
「パップ剤の膏体層に界面活性剤およびポリ(アクリル酸メチル/アクリ
ル酸2-エチルヘキシル)を含有させることによる、より小さな力で剥離ラ
10 イナーを剥離することが可能なパップ剤」における記載でしかない。
したがって、これらの記載があるからといって、本願発明が目的とする「膏
体の塗工量が少ない水性貼付剤において、フィルム等を積層していない厚み
の薄い不織布を支持体として用いたときであっても、製造時や保存時におい
ては膏体の支持体からの裏抜けがなく、かつ、使用時の粘着力が良好に維持
15 される水性貼付剤」を提供するという課題解決に関する記載も示唆もないた
め、本願発明を導き出す記載となるものではない。
また、引用文献3の実施例においては、調製されたパップ剤における基布
の厚み及び目付、並びに膏体層の塗工量は、具体的なものが一切記載されて
おらず、
[0016]、
[0019]の記載は、実施例に何ら明示されていない
20 パップ剤の調製に際しての基布の厚み及び目付の許容範囲を例示するもので
しかない。
したがって、本件審決の相違点2の判断につき、膏体に使用される不織布
においても、染み出しを防止することは周知の課題であるとしても、
「引用発
明における基布の目付及び厚みを、上記の基布の目付と厚みの範囲内の数値
25 である、『80~110g/m 2 』、『0.5~0.7mm』程度とし、染み出
しを防止することは、当業者が容易に想到し得たことである。」との認定は、
引用発明の調製に対して相当するものでしかなく、それをもって本願発明の
課題解決のための動機付けとなるとは判断されない。
⑶ 相違点3についての判断の誤り
引用文献3の[0038]における記載は、引用文献3の発明である、
「パ
5 ップ剤の膏体層に界面活性剤およびポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2
-エチルヘキシル)を含有させることによる、より小さな力で剥離ライナー
を剥離することが可能なパップ剤」における記載でしかない。
加えて、引用文献3の実施例においては、調製されたパップ剤における膏
体層の質量は、具体的なものが一切記載されていない。
10 したがって、引用文献3の上記記載は、実施例に何ら明示されていないパ
ップ剤の調製に際しての膏体層の質量の許容範囲を例示するものでしかない
から、本件審決の相違点3の判断における「膏体の塗工量を、引用文献3に
記載の数値の範囲である400~600g/m 2 とすることは当業者が容易
に想到し得たことである。」との認定は、引用発明の調製に対して相当するも
15 のでしかなく、それをもって本願発明の課題解決のための動機付けとなると
は判断されない。
⑷ 相違点4についての判断の誤り
本願発明が提供する水性貼付剤は、膏体成分として水溶性ポリマーを10
~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多
20 価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%含む点
に一つの特異的特徴を有し、その上で膏体の含水率が25~45重量%であ
る低含水量の膏体とする点に更なる特徴点を有し、これらの点が相まって、
意図する水性貼付剤の粘着性、保形性、耐熱性等が維持される。
この点は、本願明細書においては、例えば、多価アルコールの配合量が2
25 0重量%未満である場合には貼付剤の粘着性が悪化する点(【0016】)、さ
らには、膏体の含水量が45重量%を超える場合には、膏体粘度の低下によ
る粘着力の低下、及び貼付部位への接着力の不足がみられ、好ましくないも
のである点(【0021】)等を記載しているものである。
本願発明はこれらの点を充足する上で、本願発明の水性貼付剤については
「日本薬局方『一般試験6.12粘着力試験法』の『3.2 傾斜式ボールタック試
5 験法』による粘着力としてボールナンバー(No.)10以上の粘着力を有する」
ものであると特定しており、それらの点を本願明細書の「粘着力試験」で確
認しているから、仮に本件審決が認定する、日本薬局方における傾斜式ボー
ルタック試験法のボールNo.10の粘着力とは、貼付剤において一般に要
求される粘着力であったとしても、本願発明における粘着力の特定は、本願
10 発明の上記特徴点を踏まえた上での特定であって、本件審決が認定するよう
な、当業者が容易に想到し得るものとすることはできない。
また、引用文献3においては、そこで提供されるパップ剤の粘着力につい
ては一切明記されていない。まして、引用発明のパップ剤については、
「日本
薬局方『一般試験6.12粘着力試験法』の『3.2 傾斜式ボールタック試験法』
15 による粘着力としてボールナンバー(No.)10以上の粘着力を有する」もの
であるかは、一切判明しない。してみれば、
「引用発明において、一般に要求
される粘着力である日本薬局方の傾斜式ボールタック試験法においてボール
No.10以上の粘着力とすることは、当業者が容易に想到し得たことであ
る。」と認定することはできない。
20 〔被告の主張〕
⑴ 相違点1についての判断の誤りに関する原告の主張について
膏体成分の組成に関する本願発明と引用発明との相違点は、含水率(相違
点1)のみであるから、引用発明における含水率を「約47.42重量%」
から、本願発明の「25~45重量%」の範囲内となるように低減させるこ
25 とが、当業者において容易であったか否かを検討することとなる。
引用文献3には、「水の含有量は、膏体層の質量を基準として、・・・18
~85質量%であることがさらに好ましい。」([0034])と記載され、水
の含有量を変更してもよいことが記載されている。
また、
「水を含有する膏体を織布に展延すると織布の網目を通して、水が染
5 み出してくる虞」
([0019])があることも記載されていることを考慮する
と、水の含有量が少ない方が水の染み出しが少なくなるといえるところ、引
用発明における水の含有量(約47.42重量%)を、引用文献3の[00
34]に記載された範囲内(18~85質量%)で少なくすること、例えば
45重量%まで低減させて本願発明の「25~45重量%」の範囲内に調整
10 することは、当業者が容易になし得たことといえる。
なお、引用発明において、水の含有量を約47.42重量%から本願発明
の範囲内の数値である45重量%に低減させて、その差分(約2.42重量%)
を、本願発明で特定される他の成分について増加させても、引用発明におけ
る各成分の含有量は本願発明の範囲内に収まっており、一致点のままとなる。
15 ⑵ 相違点2についての判断の誤りに関する原告の主張について
動機付けの有無は、主引用発明を変更する動機付けがあるかないかによっ
て判断すべきであり、引用発明が本願発明とは異なる課題を有するからとい
って、それにより直ちに引用発明から本願発明への動機付けが否定されると
いうことにはならない。
20 引用文献3の基布の目付と厚みについての記載([0016]、
[0019])
が、引用発明を調製する場合の許容範囲としての数値を例示したものである
ことは原告も認めているところ、かかる目付と厚みを引用発明に適用するこ
とによって本願発明の構成に到達することができたのであれば、本願発明は
引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるというよりほ
25 かない。
⑶ 相違点3についての判断の誤りに関する原告の主張について
原告の主張は、膏体の塗工量について、相違点2に関するものと同様の主
張をするものと解されるところ、かかる主張が失当であることは、上記⑵の
とおりである。
膏体の塗工量に関する引用文献3の記載([0038]の「400~650
5 g/m 2」)が引用発明の調製に対して相当するものであることは原告も認め
ているところ、かかる塗工量を引用発明に適用することによって本願発明の
構成(「300~600g/m 2 」)に到達することができたのであれば、本願
発明は引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるという
よりほかない。
10 ⑷ 相違点4についての判断の誤りに関する原告の主張について
引用発明において、水の含有量を本願発明の「25~45重量%」の範囲
内に調整することは容易であること、及び、引用発明において、水の含有量
を例えば45重量%にしても、水溶性ポリマー、多価アルコール、グリセリ
ンの含有量は本願発明の範囲内に収まることは上記⑴で述べたとおりである。
15 そして、当業者が、引用発明において、引用文献3に好適であるとされた範
囲内で膏体の組成を変更する場合、貼付剤において一般に要求される粘着力
であるボールナンバー(No.)10以上(日本薬局方における傾斜式ボールタ
ック試験)を保つようにして、相違点4に係る本願発明の構成を有するもの
とすることは当然の前提といえるし、水の含有量を約47.5重量%から、
20 例えば45重量%へとわずかに変えただけで粘着力が急激に低下し、一般に
要求される粘着力すら達成することができなくなると解すべき根拠もない。
4 取消事由4(本願発明の効果についての判断の誤り)について
〔原告の主張〕
⑴ 本件審決は、本願明細書に記載する実施例1ないし6及び比較例1ないし
25 3の対比に基づく本願発明の効果について、「引用発明の水性貼付剤におけ
る、水溶性ポリマー、多価アルコール、グリセリンの含有量は、本願発明と
同じであるから、引用発明に比し、優れているということはできない。」と結
論付けた。
しかしながら、かかる判断は、引用発明においては膏体成分として「界面
活性剤及びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)」を必
5 須として含有しなければならない点を無視した、独善的な判断でしかない。
引用発明の効果は、「より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能
である。」
(引用文献3の[0009])とするものであり、かかる効果は、膏
体成分として「界面活性剤及びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エ
チルヘキシル)」を必須として含有することにより得られる効果である。
10 そうであれば、かかる点を必ずしも必要としない本願発明と引用発明との
対比として、
「引用発明の水性貼付剤における、水溶性ポリマー、多価アルコ
ール、グリセリンの含有量は、本願発明と同じである」点のみをもって、
「本
願発明の効果が引用発明に比し、優れているということはできない。」などと
結論付けられない。
15 また、本件審決では、本願発明の効果について、
「引用発明のように含水率
が約47.42重量%であり、多価アルコールが本願発明の範囲内である3
0重量%であった場合の裏付けや粘着力が記載されているわけではない」と
いう点のみを捉え、かつ、「引用発明と比較したin vitro皮膚透過性は記載さ
れていないので」という理由で、本願発明の効果が引用発明に比し、当業者
20 の予測を超えて優れているとはいえないとの判断をしている。
しかし、これらの判断も、引用発明における膏体成分として「界面活性剤
及びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)」を必須とし
て含有する点を一切考慮することなくしたものであり、独善的な判断である。
さらに、引用発明と本願発明は、発明が解決しようとする課題が異なるか
25 ら、引用発明から本願発明を導き出そうとする動機付けなど一切ないはずで
あるから、引用発明と比較したin vitro皮膚透過性試験を行おうとする考え方
は、本願発明の効果の確認を含めた発明の完成過程では生じてこないもので
あり、本願発明の効果の確認として、引用発明との対比でのin vitro皮膚透過
性試験を実施しなければならない必要性はない。
⑵ パップ剤は被告が主張するような「医薬部外品」ではなく、
「医薬品」であ
5 り、開発初期段階でin vitro皮膚透過性試験によりその効果を確認することが
なされており、本願発明においても実施例4(in vitro皮膚透過性試験)を記
載しているところである。
引用文献3にはin vitro皮膚透過性試験は一切記載されておらず、仮に試験
がなされていたとしてもどの程度の皮膚透過性を有するのかは一切不明であ
10 る。
そのような事実を押し曲げて、
「引用文献3の『パップ剤』も皮膚に適用さ
れるものであるから、当然in vitro皮膚透過性試験によりある程度の皮膚透過
性を有すると解される」などと被告が主張し、本願発明と対比することは、
事実認定に基づかない恣意的な主張である。
15 被告がいう「格別優れた効果を奏すると解すべき理由」とは何を意味する
か理解に苦しむし、引用文献3の皮膚透過性がどの程度であったのかも判明
しないにもかかわらず、
「本願発明の効果が引用発明に比して、当業者の予想
を超えて優れているとはいえない」などと認定することに正当性は認められ
ない。
20 〔被告の主張〕
本件審決は、引用発明の膏体の含水率(約47.42重量%)は本願発明の
膏体の含水率の上限(45重量%)とわずかに異なるのみであり、このような
わずかな含水率の差異が、膏体の裏抜けの有無や貼付剤の粘着力を左右すると
理解できるとは直ちにいえないところ、本願明細書をみても、例えば「引用発
25 明のように含水率が約47.42重量%であり、多価アルコールが本願発明の
範囲内である30重量%であった場合」に裏抜けや粘着力が本願発明のものに
劣るという実験データのような、上記理解に資する説明はないことから、
「本願
発明の効果が引用発明に比し、当業者の予測を超えて優れているとはいえない。」
と結論付けたものであり、
「引用発明のように含水率が約47.42重量%であ
り、多価アルコールが本願発明の範囲内である30重量%であった場合の裏抜
5 けや粘着力が記載されていないから」という点のみを捉えて上記判断を行った
わけではない。
また、実使用時の適用部位が皮膚である医薬部外品については、in vitro皮膚
透過性試験を行うことが要請されており(乙7)、引用文献3の「パップ剤」も
皮膚に適用されるものであるから、当然in vitro皮膚透過性試験によりある程度
10 の皮膚透過性を有するものと解されるところ、本願明細書をみても、本願発明
が、引用文献3のパップ剤が有すると解される皮膚透過性に比して格別優れた
効果を奏すると解すべき理由がなかったため、本件審決は、
「引用発明と比較し
たin vitro皮膚透過性は記載されていないので」本願発明の効果が引用発明に比
して、当業者の予測を超えて優れているといえないと判断したのであり、かか
15 る判断に誤りはない。
5 取消事由5(審判請求人の主張についての判断の誤り)について
〔原告の主張〕
本件審決は、理由第6の3において、原告(審判請求人)が提出した本件意
見書(前記第2の1⑵)の主張(本件審決が「主張⑴」ないし「主張⑸」とし
20 て挙げるもの。各主張の内容は、後記⑴ないし⑸に示す。)に対して判断してい
るが、以下のとおり、これらの判断には誤りがある(以下、後記⑴ないし⑸に
おける原告の主張を「取消事由5に係る原告の主張⑴」ないし「取消事由5に
係る原告の主張⑸」という。)。
⑴ 主張⑴に対する本件審決の判断について(取消事由5に係る原告の主張⑴)
25 主張⑴は、「『発明の解決すべき課題』は、本願発明を想到する上で重要な
事項であり、引用発明との間の『発明が解決すべき課題』の相違は、本願発
明の容易想到性(進歩性)の判断において考慮しなければならない事項であ
るにもかかわらず、合議体の『・・・課題が違うという点は、引用発明及び
引用文献3~6の記載に基づき本願発明が容易になし得たものであるという
上述の判断に関係するものではない。』とする判断は誤りである。」との主張
5 である。
原告の上記主張は、発明の解決すべき課題が異なることをもって、進歩性
は肯定されるべきとしているものではなく、発明の解決すべき課題は、発明
の目的に対応する本質部分となることから、進歩性判断においては、本願発
明と引用発明の「発明が解決すべき課題」の相違を判断しなければならない、
10 というものである。
本件審決は、かかる原告の主張に対し、「『発明の解決すべき課題』の共通
性は、進歩性の論理付けにおいて、進歩性が否定される方向に働く要素の一
つではあるが、課題が異なるからといって、必ずしも進歩性が肯定されるも
のではない。進歩性の判断においては、技術分野の関連性、作用、機能の共
15 通性、引用発明の内容中の示唆など、他の要素も考慮される。これらの様々
な要素を検討した結果、上記2に説示したとおりの判断となったものである。」
と判断したが、発明が解決すべき課題の相違を真正面から検討して判断して
おらず、その点で本件審決が誤りである点は、上記2〔原告の主張〕のとお
りである。
20 原告が主張する相違点5は、本願発明と引用発明の対比において考慮すべ
き両発明の目的に基づく本質部分の相違点であるが、本件審決では本願発明
と引用発明の対比において、考慮すべき相違点5について一切検討、判断し
ていない。
⑵ 主張⑵に対する本件審決の判断について(取消事由5に係る原告の主張⑵)
25 主張⑵は、
「引用文献3には、そこに記載される実施例で調製されたパップ
剤における基布の厚み及び目付、並びに膏体層の塗工量は、具体的なものが
一切記載されていない。したがって、引用文献3の摘記事項は、実施例に何
ら明示されていないパップ剤の具体的調製における基布の厚み及び目付の許
容範囲を例示するものでしかなく、その点からみても、本願発明を導き出す
記載、すなわち動機付けとなるものではないこと明白である。」との主張であ
5 る。
本件審決は、引用文献3の実施例の一つである引用発明を具体化するに当
たって、摘記3c、3gに記載された基布の目付や厚み、膏体層の塗工量の
好ましい範囲の範囲内の数値を採用することは、当業者が容易になし得たこ
とであると判断した。
10 本件審決の上記判断が誤りである点は、前記3〔原告の主張〕⑵、⑶で述
べたとおりである。
⑶ 主張⑶に対する本件審決の判断について(取消事由5に係る原告の主張⑶)
主張3は、
「本願発明の水性貼付剤における膏体中の水分含量は、本願明細
書にも記載するように、
『膏体成分として水溶性ポリマーを10~20重量%
15 および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多価アルコール
の一種として少なくともグリセリンを10~40重量%』含む点に一つの特
徴を有し、そのうえ、膏体の含水率を25~45重量%である低含水量の膏
体とする点に更なる特徴点を有するものであって、これらが相まって、目的
とする水性貼付剤の粘着性、保形性、耐熱性等が維持されるとするものであ
20 る。したがって、本願発明における水性ポリマー、多価アルコール、さらに
は多価アルコールとしてのグリセリンを組み合わせ、それぞれの配合量を特
定した膏体の含水率を規定するものであり、その点は、引用文献3の摘記3
fの記載があるからといって、容易に想到し得るものではないことは明白で
ある。」との主張である。
25 本件審決は、貼付剤の分野において、目的とする水性貼付剤の粘着性、保
形性、耐熱性を維持しながら、貼付剤の膏体成分を適宜調整することは、当
業者が通常に行うことであるから、引用発明において、引用文献3の摘記3
fの記載に基づき、含水率を調節しながら、目的とする粘着性、保形性、耐
熱性を有する貼付剤を製造することは、容易になし得るものであり、その結
果、粘着性、保形性、耐熱性が維持されたからといって、本願発明の効果が
5 本願発明の全ての範囲にわたり優れているとはいえないと判断した。
しかし、
「貼付剤の分野において、目的とする水性貼付剤の粘着性、保形性、
耐熱性を維持しながら、貼付剤の膏体成分を適宜調整することは、当業者が
通常に行うことである」としても、
「発明が解決すべき課題」が引用発明とは
異なる本願発明について、
「引用発明において、引用文献3の摘記3fの記載
10 に基づき、含水率を調節しながら、目的とする粘着性、保形性、耐熱性を有
する貼付剤を製造することは、容易になし得るものである」とは認定し得な
い。
⑷ 主張⑷に対する本件審決の判断について(取消事由5に係る原告の主張⑷)
主張⑷は、
「本願明細書の段落[0042]の[表5]及び[0043]の
15 [表6]の記載を見れば、本願発明の膏体の含水率が低い貼付剤(実施例1
~6の貼付剤)は、膏体の裏抜けがなく、保形性が良好なものであり、含水
率が高い貼付剤(比較例1の貼付剤)は、膏体の裏抜けが認められ保形性に
おいて『ダレ』が認められていることが判明する。したがって、合議体が要
求する『引用発明よりも含水率を低くしたことにより、裏抜けの発生が抑制
20 されるなどの効果が示されているわけでもないから、本願発明の効果が、引
用発明に比し、当業者の予測を超えて優れているとはいえない。』との指摘は、
たとえ、水分含量について、合議体が相違点4として挙げた引用発明の水分
含量が『47.42重量%』との対比ではないとしても、その効果が示され
ていないと認定することはできないはずである。」との主張である。
25 本件審決は、上記に示した当審の判断は、比較例1の貼付剤よりも実施例
1~6の貼付剤が、膏体の裏抜けがなく、保形性が良好であるという効果が
本願明細書に示されていないと判断しているわけではなく、本願発明におい
て進歩性が認められるためには、引用発明において、相違点1及び2に係る
本願発明の構成を備えることを、当業者が容易に想到することができたとい
える以上、本願発明の効果が、引用発明に比べ当業者の予測を超えた顕著な
5 効果を有することが必要であるところ、本願発明と引用発明とは、含水率が
「25~45重量%」であるか、
「約47.42重量%」であるかという、そ
の差が一番小さい場合には約2.42重量%という、非常に類似した組成を
有することから、本願発明の効果は、引用発明と比べて顕著な効果を奏する
ものではない、と判断したものである、と述べた。
10 これについては、引用発明において、相違点1及び2に係る本願発明の構
成を備えることを、当業者が容易に想到することができたといえないことは、
前記3〔原告の主張〕⑴、⑵で述べたとおりであり、本願発明の効果につい
ての本件審決の判断が誤りであることは、前記4〔原告の主張〕で述べたと
おりである。本願発明と引用発明の間には、
「発明が解決すべき課題」の相違
15 に基づく発明の本質部分の相違がある以上、本願発明が引用発明から容易に
想到できたものであるとか、引用発明に比べ当業者の予想を超えた顕著な効
果の存在が必要であるとかを問われる筋合いはない。
⑸ 主張⑸に対する本件審決の判断について(取消事由5に係る原告の主張⑸)
ア 主張⑸は、「令和6年9月24日提出の手続補足書で提出した比較実験
20 報告書に記載するとおり、引用文献3に記載された発明と本願発明との間
での比較実験を行ったところ、引用文献3に記載の実施例1に記載のパッ
プ剤(引用発明)では支持体への膏体の裏抜けが観察され、粘着力も低い
ものであった。また、有効成分としてケトプロフェンを配合したパップ剤
ではケトプロフェンの難溶性のため、膏体中に結晶の析出が認められ、そ
25 れに伴い薬物の皮膚透過性も著しく低いものであった。これに対して本願
発明の水性貼付剤では、支持体からの膏体の裏抜けは観察されておらず、
粘着性も優れており、膏体中にケトプロフェンの結晶化は観察されず、し
たがって、薬物の皮膚透過性も良好なものであり、引用文献3に記載の発
明に比較し、その優れた効果を発揮するものであった。」との主張である。
イ 本件審決は、比較実験報告書の表2に記載されているとおり、引用文献
5 3の実施例1のパップ剤において、支持体(織布)の目付を100g/㎡、
塗工量を500g/m 2 とした場合、停止したスチールボールNo.が13
以上であり、支持体への膏体の裏抜けのない貼付剤が得られており、そう
すると、引用文献3に記載の実施例1に記載のパップ剤(引用発明)では
支持体への膏体の裏抜けが観察され、粘着力も低いものであったとはいえ
10 ず、また、比較実験報告書において比較されたものは、引用発明の有効成
分をケトプロフェンに代えたもの(実験用製剤①~⑤)と、本願明細書の
実施例1(ケトプロフェン含有)においてポリアクリル酸中和物とゼラチ
ンの含有量を変更したもの(比較用製剤KP2%)とであって、これらは、
本願発明において特定されていない複数の成分の有無や含有量が異なる
15 ものであるから、上記比較された効果の差(ケトプロフェンの結晶析出と
皮膚透過性)を、有効成分の種類も含め実施例1以外の多様な組成が包含
される本願発明が、その全体にわたって奏する効果を裏付けるものである
と理解することはできない、と判断した。
ウ 比較実験の結果から明らかなように、引用文献3に記載の実施例1のパ
20 ップ剤(引用発明)では支持体への膏体の裏抜けが観察され、粘着力も低
いものであった。また、有効成分としてケトプロフェンを配合したパップ
剤ではケトプロフェンの難溶性のため、膏体中に結晶の析出が認められ、
それに伴い薬物の皮膚透過性も著しく低いものであった。これに対して本
願発明の水性貼付剤では、支持体からの膏体の裏抜けは観察されておらず、
25 粘着性も優れており、膏体中にケトプロフェンの結晶化は観察されず、し
たがって、薬物の皮膚透過性も良好なものであり、引用文献3に記載の発
明に比較し、その優れた効果を発揮するものであることが確認できる。
また、本願発明と引用発明の対比における比較実験は、それぞれの実施
例の処方に基づく貼付剤で行っており、その結果、本願発明の効果が裏付
5 けられている。
エ 本件審決では、比較用製剤における処方内容について、
「これらは、本願
発明において特定されていない複数の成分の有無や含有量が異なるもの
である。」と指摘しているが、比較用製剤に含まれる成分は本願発明の「水
溶性ポリマー」、「多価アルコール」又は貼付剤の技術分野で汎用されてい
10 る「賦形剤」、「安定化剤」、「可塑剤」等の一般的な成分であり、これらが
配合されたからといって、実験用製剤②~⑤との効果の対比に影響を与え
るものではない。
オ 本件審決では、「有効成分の種類も含め実施例1以外の多様な組成が包
含される本願発明が、その全体にわたって奏する効果を裏付けるものであ
15 ると理解することはできない。」と認定しているが、有効成分をケトプロフ
ェンからフェルビナク又はジクロフェナクナトリウムに変更した以外は
比較実験報告書と同様に比較を行った比較実験報告書⑵(甲7。以下「比
較実験報告書⑵」という。)によれば、その結果は比較実験報告書と同様で、
引用発明では膏体中に結晶の析出が認められ、薬物の皮膚透過性も著しく
20 低いのに対し、本願発明では膏体中に有効成分の結晶化はほとんど観察さ
れず、薬物の皮膚透過性も良好なものであり、引用文献3に記載の発明に
比較し、その優れた効果を発揮するものであることが確認できる。
〔被告の主張〕
⑴ 取消事由5に係る原告の主張⑴について
25 相違点5を認定しなかったことに誤りがないことは、前記2〔被告の主張〕
のとおりである。
本件審決は、引用発明が本願発明と異なる課題を有することを考慮して、
界面活性剤である「モノステアリン酸PEG」を配合したパップ剤を引用発
明と認定した上で、技術分野の関連性、周知の課題、周知の技術、引用発明
を開示する引用文献3の記載内容等を併せ考慮して、進歩性の判断をしたも
5 のであり、本件審決の、原告の主張についての判断に誤りはない。
⑵ 取消事由5に係る原告の主張⑵について
この点については、前記3〔被告の主張〕⑵、⑶のとおりである。
⑶ 取消事由5に係る原告の主張⑶について
本願発明と引用発明との課題が異なるからといって、直ちに引用発明から
10 本願発明への動機付けが否定されることにならないこと、及び原告が指摘す
る本件審決の上記判断に誤りがないことは、前記3〔被告の主張〕のとおり
である。
⑷ 取消事由5に係る原告の主張⑷について
この点については、前記3〔被告の主張〕⑵、⑶及び前記4〔被告の主張〕
15 のとおりである。
⑸ 取消事由5に係る原告の主張⑸について
ア 比較実験報告書には、引用文献3の実施例1の組成に従い膏体を調製し
たと記載されているが、比較実験報告書の表1によれば、
「その他の成分」
として「精製水」が用いられており、一方、引用文献3の表1をみると、
20 「その他の成分」とは別に、「精製水」が明示されているから、「その他の
成分」として「精製水」を用いていることは想定できない。そうすると、
比較実験報告書の比較実験①は、引用発明そのものを用いて比較した実験
であるとはいえない。
本願発明と引用発明の膏体の組成の相違点は、水の含有量のみであるか
25 ら、少なくとも水の含有量は引用発明と同じである膏体を用いた比較試料
を用い、これと本願発明とを比較して、本願発明が当業者が予測できない
顕著な効果を奏することを具体的に示すのであれば格別、水の含有量が引
用発明と異なる実験用製剤①を用いたのでは、本願発明の効果が引用発明
に比して優れることを示すことはできない。
イ 比較実験報告書の表2のうち、支持体①(目付85g/m 2 、厚み0.5
5 mm)に430、500g/m2 で塗工したものと、支持体②(目付100
g/m 2、厚み0.6mm)に430、500g/m 2で塗工したものとの4
例は、引用発明に基づいて、引用文献3の記載([0016]、
[0038])
を参照して当業者が容易に製造し得るものであるといえるところ、この4
例のうち、支持体②を用い、塗工量を500g/m 2 としたパップ剤は、停
10 止したスチールボールナンバー(No.)が13であって裏抜けもないから、
本願発明と同様の効果を奏している。
そうすると、比較実験報告書の実験用製剤①を用いた実験結果から理解
できるのは、引用発明に基づいて、引用文献3の記載を参酌して容易に製
造され得るパップ剤は、本願発明の実施例のものと同様の、良好な粘着力
15 を有し、裏抜けがないという効果を奏することもある、ということである。
他方、本願明細書の実施例には、支持体(不織布)として、特定の厚み
(0.5~0.6mm)及び特定の目付(100g/m 2 )のスパンレース
不織布を用いて、特定の塗工量(430g/m 2)で、特定の膏体を塗工し
て得た水性貼付剤が、比較例のものに比して、良好な粘着力を有し、裏抜
20 けがないという効果を奏することが記載されている。しかしながら、当該
特定の支持体、塗工量、及び組成に限らず、本願発明で規定する「厚み0.
4~0.7mm及び目付80~110g/m 2」の範囲内の厚み、目付を有
「塗工量として300~600g/m 2 」の範囲内で本願発明
する支持体に、
の規定を満たす膏体を塗工した場合にも、実施例と同様の効果が奏される
25 ことについては何ら説明がなく、そのように解すべき根拠もない。すなわ
ち、本願明細書の記載から理解できるのは、本願発明の範囲内の水性貼付
剤は、実施例と同様の、良好な粘着力を有し、裏抜けがないという効果を
奏することもある、ということにとどまる。
そうであれば、比較実験報告書をみても、本願発明がその全体にわたっ
て、引用発明から予測できない顕著な効果を奏することを示しているとは
5 いえない。
ウ 皮膚透過性について、本願明細書には、単に実施例1の貼付剤が比較例
1の貼付剤のものよりも優れたin vitro皮膚透過性試験結果を示したこと
が記載されているにとどまり(実験例4、
【表7】、図1)、例えば、皮膚透
過性と膏体の成分との関係や用いられる支持体との関係といった、優れた
10 皮膚透過性を発揮することの作用機序については何ら説明されていない。
この点について、実施例1と比較例1の貼付剤は、裏抜け(【表3】)、粘
着力(【表4】)及び保形性(【表5】、
【表6】)といった物性が異なるうえ、
膏体の組成についても、水の含有量に加えて、濃グリセリンとソルビトー
ル液の含有量、プロピレングリコールの有無が異なっているため、実施例
15 1と比較例1を比較してみても、優れた皮膚透過性を発揮することの作用
機序を窺い知ることはできない。
そうすると、本願明細書の記載からは、実施例1の貼付剤が、比較例1
の貼付剤よりも皮膚透過性に優れることは理解できたとしても、実施例1
の貼付剤以外の本願発明の範囲内にある貼付剤も、実施例1の貼付剤と同
20 等の効果を奏すると解すべき理由はなく、実施例1の皮膚透過性に優れる
という効果が、本願発明全体にわたって奏される効果であると認めること
はできない。
エ 比較実験報告書⑵は室温で1年間という長期にわたる保管後の試料を用
いた試験結果を示しているところ、本願明細書にはかかる長期間保管後の
25 皮膚透過性に優れることの記載や示唆は一切なく、比較実験報告書⑵で示
された試験結果と、本願明細書の実験例4や比較実験報告書の試験結果を
同視できる理由もないから、この点からみても、比較実験報告書⑵の試験
結果をもって、皮膚透過性に優れるという効果が本願発明全体にわたって
奏されるとはいえない。
原告は、膏体中に薬物の結晶化が観察されないことにより、薬物の皮膚
5 透過性が良好になると主張するようにもみえる。しかしながら、本願明細
書には、膏体中の薬物の溶解状態や結晶析出については何ら記載されてお
らず、ましてや膏体中の薬物の結晶化と皮膚透過性の関係については一切
記載されていないのだから、このような主張をもって、皮膚透過性に優れ
るという効果が奏されることの作用機序が明らかであるとして、当該効果
10 が本願発明全体にわたって奏されると理解できるということにはならな
い。
オ 比較実験報告書と比較実験報告書⑵における「比較用製剤」には、
「実験
用製剤」には含まれない「クロタミトン」等が配合されているところ、
「ク
ロタミトン」は、
「膏体層に含まれる成分が析出しないように添加する」
「溶
15 解補助剤」として周知の成分であり、比較実験報告書と比較実験報告書⑵
で有効成分として使用されたジクロフェナクナトリウムなどの種々の有
効成分を含む水性貼付剤において、有効成分を溶解させ、結晶の析出を防
止できるものとして汎用されている(例えば、乙8:請求項1、2、2頁
「実験例1」、乙9:請求項1、[0010]、[0047]~[0048]
20 実験例2)。
そうすると、少なくとも、比較実験報告書及び比較実験報告書⑵におけ
る「比較用製剤」にのみ含まれる「クロタミトン」は、
「実験用製剤」との
効果の対比に影響を与えるといえる。
カ したがって、比較実験報告書及び比較実験報告書⑵の比較実験は、本願
25 発明が当業者の予測し得ない顕著な効果を奏することを裏付けるものと
はいえず、本件審決の主張⑸についての判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
原告は、取消事由として取消事由1ないし5を主張している。しかし、取消
事由5は、原告が本件意見書で述べた主張である主張⑴ないし⑸に対する本件
審決の判断に誤りがある旨の主張であるところ、本件意見書は令和6年6月1
5 9日付けの拒絶理由通知書に対して提出したものであり(前記第2の1⑵)、主
張⑴ないし⑸は、拒絶理由通知書において示された本願発明の進歩性欠如に関
する審判合議体の見解(甲4)に対して述べられたものであるから、主張⑴な
いし⑸に対する本件審決の判断は、本願発明が進歩性を欠如しているとの判断
を示すものである。そうすると、取消事由5として原告が主張する内容は、本
10 来独立の取消事由として主張すべきものではなく、他の取消事由の中で主張す
べきものであるといえ、この判決では、取消事由5に係る原告の主張は、その
内容に応じ、他の取消事由の主張と併せて判断する。
1 本願発明について
⑴ 特許請求の範囲
15 本件補正後の本願の特許請求の範囲の記載のうち、請求項1の記載は、前
記第2の2記載のとおりである。
⑵ 本願明細書及び図面の記載
本願明細書及び図面の記載は、別紙2「本願明細書及び図面の記載」のと
おりである。なお、本願明細書及び図面の記載は、本件補正その他の補正に
20 よって補正されておらず、本願の際に添付されたものから変更されていない。
⑶ 本願発明の概要
上記⑴の特許請求の範囲並びに上記⑵の本願明細書及び図面の記載によ
れば、本願発明は、塗工量の少ない水性貼付剤において、厚みの薄い支持体
を用いた場合であっても、保存時においては膏体の裏抜けがなく、かつ使用
25 時の粘着力が良好に維持する水性貼付剤に関するものであり(【0001】)、
一般的に、貼付剤はその厚みが薄いものの方が、衣服に絡みつきにくく使用
感が良いため好まれているが、パップ剤に代表される水性貼付剤の場合にあ
っては、貼付剤基剤となる膏体が架橋するまでの間は流動性が高い状態に置
かれているため、膏体が支持体の裏側へ染み出してしまい、貼付時に手がべ
たつく問題があり、また、保管時に包装袋内部に貼付剤製剤が張り付くとい
5 った不都合がおこりやすいという課題があり、薄型の水性貼付剤を検討する
場合には、支持体から膏体の裏抜けを防止するためにフィルムが積層された
支持体を使用することが検討されてきているが、その場合であっても、通常
使用されている不織布等の支持体にフィルム層を積層することにより、皮膚
への追従性が悪くなり、また、貼付部分の皮膚がフィルムの積層により蒸れ
10 ることとなり、更には、製造コストが高くなるといった課題があった。(【0
002】、【0003】)
本願発明は、この課題を解決するため、水性貼付剤の膏体の調製において
含有する水分量を低減させると共に、膏体基剤成分として水溶性ポリマーお
よび多価アルコールの両者を特定量用い、その上でグリセリンを少なくとも
15 多価アルコールの一種として特定量含有させた低含水量の膏体を調製し、か
かる膏体を、フィルム等を積層していない厚みの薄い支持体に塗工すること
により、上記課題が解決できる水性貼付剤となり得ることを見出したもので
ある(【0006】)。
このような本願発明によれば、フィルム等を積層していない厚みの薄い不
20 織布を支持体として用い、膏体の塗工量の少ない薄型の水性貼付剤において、
製造時および保存時に支持体に対する膏体の裏抜けがなく、その上、優れた
粘着力を持続する水性貼付剤を提供することができる。(【0009】)
2 取消事由1(引用発明の認定の誤り)について
⑴ 引用文献3(甲3)には、別紙3「引用文献3の記載」のとおりの記載が
25 存在する。
⑵ 別紙3「引用文献3の記載」の内容、特に[0055]の「表1の記載の
組成にしたがい、各成分を十分に混合し、膏体液を調製した。得られた膏体
液を剥離ライナー上に均一に展延し、その上に基布を積層して、剥離ライナ
ーを剥離することにより、実施例1、2及び比較例1~3のパップ剤をそれ
ぞれ得た。」との記載及び[0056][表1]の実施例1の組成によれば、
5 引用文献3には、審決が認定した「引用発明」
(第2の3⑵ア)が記載されて
いると認められる。
⑶ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕のとおり、
「引用発明」の本質は、
「膏
体層にポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有す
るパップ剤であって、「より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能
10 なパップ剤を提供すること」(引用文献3の[0005])として、引用文献
3の請求項1に記載の構成とするものであり、本件審決が、このような本質、
特徴点を考慮せずに、単に実施例1に記載のパップ剤をもって「引用発明」
であるとしたことには誤りがある旨主張する。
しかし、審決が認定した引用発明は、引用文献3の[0055]に記載さ
15 れたパップ剤の調製工程と、[0056][表1]に記載された実施例1のパ
ップ剤の組成に基づいて、実施例1で製造されたパップ剤をそのまま認定し
たものであるから、その認定に誤りがあるとはいえない。
引用文献3では、上記実施例1のパップ剤のライナー剥離力を測定してお
り、これが[0059]
[表2]の実施例1の値である「ライナー剥離力が0.
20 072N/25mm」であるが、このライナー剥離力の値は調製工程と組成
によって特定される引用発明のパップ剤について一義的に決まるものであっ
て、引用発明のパップ剤が自ずと有する特性にすぎないものであるから、そ
の特性を認定しなかったからといって、引用発明の認定に誤りがあるとはい
えない。
25 また、引用発明として、仮に「ライナー剥離力が0.072N/25mm」
であることも構成要素として認定したとしても、本願発明は「ライナー剥離
力が0.072N/25mm」であるものを排除するものではないから、こ
の点は本願発明との対比において新たな相違点をもたらすものではなく、こ
のことからしても、引用発明として、
「ライナー剥離力が0.072N/25
mm」であるものを認定しなかったことが誤りであるとはいえない。
5 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑷ 取消事由1に関する結論
以上によれば、本件審決における引用発明の認定に誤りがあるとは認めら
れず、取消事由1には理由がない。
3 取消事由2(相違点の認定の誤り)及び取消事由5に係る原告の主張⑴につ
10 いて
⑴ 本件審決は、前記第2の3⑵イ及びウ(ア)ないし(エ)のとおり、本願発明と
引用発明の一致点及び相違点(相違点1ないし4)を認定したが、本願発明
と引用発明の内容に照らし、これらの一致点及び相違点の認定は相当である。
原告も、本願発明と引用発明について、本件審決が認定した一致点があるこ
15 と、及び相違点として相違点1ないし4があることは争っていない。
⑵ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕のとおり、本願発明と引用発明の相
違点として、「相違点5」も認定すべきである旨主張する。
また、原告は、取消事由5に係る原告の主張⑴のとおり、原告が主張する
相違点5は、本願発明と引用発明の対比において考慮すべき両発明の目的に
20 基づく本質部分の相違点であり、本件審決がこれを認定しなかったことは誤
りであると主張する。
しかし、本願発明は、前記第2の2に記載のとおりであり、
「界面活性剤と
してモノステアリン酸PEG」を配合することや、
「ポリ(アクリル酸メチル
/アクリル酸2-エチルヘキシル)(ニカゾールTS-620)」を配合する
25 ことを排除するような特定はない。
そして、本願明細書は、本願発明が提供する水性貼付剤において、必要に
応じて、界面活性剤を配合させることができるとしている(【0023】)。
また、「ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)(ニカ
ゾールTS-620)」は、引用文献3の[0004]の「本発明者らの知見
によれば、パップ剤の膏体層にポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エ
5 チルヘキシル)を含有させると、付着力の低下を抑制することが可能になる
が、膏体層から剥離ライナーを剥離するときの剥離強度(ライナー剥離力)
も高くなってしまう。」との記載によれば、パップ剤に付着力の低下を抑制す
るために配合される成分であり、小さな力で剥離ライナーを剥離することを
可能とすることを目的として配合される成分ではないと認められるものであ
10 る。これを前提とすると、
「ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチル
ヘキシル)(ニカゾールTS-620)」は、本願明細書の【0023】に例
示される、必要に応じて配合可能な成分の記載と矛盾するものとは認められ
ず、本願発明が解決しようとする課題として、使用時の粘着力が良好に維持
される水性貼付剤を提供することが挙げられていること(【0005】)も考
15 慮すれば、本願明細書の記載からしても、この成分を配合することが排除さ
れているとは解されない。
そうすると、本願発明は、界面活性剤である「モノステアリン酸PEG」
及び「ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)
(ニカゾー
ルTS-620)」の配合を必須とはしていないだけであって、これらの成分
20 を含まないものに限定しているわけではないから、引用発明がこれらの成分
を含む点は本願発明1との対比において相違点となるものではない。
以上によれば、本願発明と引用発明の相違点として、原告が主張する相違
点5を認定する必要があるとは認められない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
25 ⑶ 取消事由2及び取消事由5に係る原告の主張⑴に関する結論
以上によれば、本件審決における本願発明と引用発明の相違点の認定に誤
りがあるとは認められず、取消事由2には理由がなく、取消事由5に係る原
告の主張⑴も採用することができない。
4 取消事由3(相違点の判断の誤り)並びに取消事由5に係る原告の主張⑵及
び⑶について
5 ⑴ 相違点1について
ア 引用文献3には、
「本実施形態のパップ剤は、膏体層に水を含有する。膏
体層が水を含有することにより、薬物の皮膚透過性が向上し、薬理作用が
より効果的に発揮される。」([0033])、「水の含有量は、膏体層の質量
を基準として、10~90質量%であることが好ましく、15~88質
10 量%であることがより好ましく、18~85質量%であることがさらに好
ましい。」([0034])と記載されている。
そうすると、
「本実施形態のパップ剤」に相当する引用発明において、
「水」
に相当する「精製水」の含有量(含水率)を、さらに好ましいとされる「1
8~85質量%」の範囲内、かつ引用発明の「約47.42重量%」の近
15 辺で変更し、45質量%(45重量%)程度としてみることは、当業者が
容易に想到することである。
イ 原告は、前記第3の3〔原告の主張〕⑴のとおり、本願発明においては、
各膏体成分との兼ね合いを踏まえた上で水分量の低減を図っているから、
引用文献3の[0034]における記載があるからといって当業者が容易
20 になし得たとはいえない旨主張する。
しかし、発明の容易想到性は引用発明から出発して、相違点に係る構成
に容易に想到するか否かで検討するものであるところ、引用発明から出発
して含水率を45重量%程度とすることは当業者が容易に想到するもの
であることは、上記アのとおりであり、原告が上記主張において挙げる事
25 情を考慮してもこの結論は左右されない。
また、原告は、取消事由5に係る原告の主張⑶のとおり、本願発明と引
用発明は解決すべき課題が異なるから、
「引用発明において、引用文献3の
摘記3fの記載に基づき、含水率を調節しながら、目的とする粘着性、保
形性、耐熱性を有する貼付剤を製造することは、容易になし得るものであ
る」とは認定し得ないと主張する。
5 しかし、引用文献3の[0033]及び[0034]に上記アのとおり
の記載があることからすれば、本願発明と引用発明の課題が異なるとして
も、引用発明における含水率を45質量%程度とすることは当業者が容易
になし得ることであるとの結論は変わらない。
したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
10 ⑵ 相違点2について
ア 引用文献3には、
「基布が不織布である場合、
・・・好適な基布の目付は、
例えば、80~120g/m 2 であり、90~110g/m 2であることが
好ましい。好適な基布の厚みは、例えば、0.5~2mmである。」との記
載がある([0016])。この記載からすれば、上記のとおり好適とされた
15 数値の範囲内で、基布の目付及び厚みを調節し、目付を80~110g/
m 2、厚みを0.5~0.7mmとすることは、当業者が容易に想到するこ
とである。
イ 原告は、前記第3の3〔原告の主張〕⑵のとおり、①引用文献3の上記
記載は、引用文献3の発明である、
「パップ剤の膏体層に界面活性剤および
20 ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有させる
ことによる、より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能なパップ
剤」における記載でしかないこと、②相違点2に関して本件審決が挙げた
引用文献3の[0016]、
[0019]の記載があるからといって、
「膏体
の塗工量が少ない水性貼付剤において、フィルム等を積層していない厚み
25 の薄い不織布を支持体として用いたときであっても、製造時や保存時にお
いては膏体の支持体からの裏抜けがなく、かつ、使用時の粘着力が良好に
維持される水性貼付剤」を提供するという本願発明を導き出す動機付けと
ならないこと、③引用文献3の上記記載は、実施例に何ら明示されていな
いパップ剤の調製に際しての基布の厚み及び目付の許容範囲を例示する
ものでしかなく、
「膏体に使用される不織布においても、染み出しを防止す
5 ることは周知の課題である」としても、その判断は引用発明の調製に対し
て相当するものでしかなく、本願発明の課題解決のための動機付けとはな
らないことを主張する。
しかし、原告が主張する内容はいずれも、引用文献3の[0016]に
おいて、好適な基布の目付として80~120g/m 2 との範囲が挙げら
10 れ、好適な基布の厚みとして0.5~2mmとの範囲が挙げられている事
情の下において、これらの好適な数値の範囲内において、基布の目付及び
厚みを調節し、目付を80~110g/m 2 、厚みを0.5~0.7mmと
し、相違点2に係る構成を導くことが当業者にとって容易に想到すること
ができたものであるとの結論を左右するものとは解されない。すなわち、
15 引用発明が上記①において原告の主張するようなパップ剤に関する発明
であり、かつ、引用文献3の[0016]、[0019]の記載から本願発
明の課題解決に関する動機付けが得られないとしても、上記のとおり、引
用文献3の記載を前提として、引用発明において相違点2に係る構成を導
くことが当業者において容易に想到することができることは変わらない。
20 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
取消事由5に係る原告の主張⑵のうち、基布の目付及び厚みについて主
張する内容は、前記第3の3〔原告の主張〕⑵の主張のとおりと述べるも
のであり、同様に採用することができない。
⑶ 相違点3について
25 ア 「膏体層の質量は、例えば、214~1000g/m 2
引用文献3には、
であってもよく、400~1000g/m 2 であってもよく、400~65
0g/m 2であってもよい。好ましくは、400~650g/m 2 とするこ
とにより、フィット感良く、より長期間の付着性を向上することができる。
膏体層の質量が上記範囲であれば、パップ剤全体の厚みを小さくすること
ができ、皮膚に追従しやすく、さらに、貼付した際に周縁部との段差が小
5 さくなるため、剥離しにくい傾向にある。」との記載がある([0038])。
この記載からすれば、上記の膏体層の質量として可能とされた範囲内で膏
体層の質量(膏体の塗工量)を調節し、300~600g/m 2 の範囲内と
することは、当業者が容易に想到することである。
また、引用文献3には、
「膏体液を基布に展延した後、剥離ライナーを積
10 層して製造してもよい」との記載があり([0050])、引用発明の「基布」
は本願発明の「支持体」に相当するから、引用発明において、膏体液を基
布に直接塗布することも、当業者が容易に想到することである。
イ 原告は、前記第3の3〔原告の主張〕⑶のとおり、引用文献3の上記記
載は、引用文献3の発明である、
「パップ剤の膏体層に界面活性剤およびポ
15 リ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有させるこ
とによる、より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能なパップ剤」
における記載でしかなく、また、引用文献3の実施例においては、調製さ
れたパップ剤における膏体層の質量は、具体的なものが一切記載されてい
ないから、引用文献3の上記記載は本願発明の課題解決のための動機付け
20 とならないなどと主張する。
しかし、原告が相違点3について上記のとおり主張する内容は、相違点
2について主張する内容と同様のものであり、相違点3についても、相違
点2についてと同様、原告が主張する内容はいずれも、引用文献3の記載
を前提として、引用発明において相違点3に係る構成を導くことが当業者
25 において容易に想到することができるとの結論を左右しない。
取消事由5に係る原告の主張⑵のうち、膏体の塗工量について主張する
内容は、前記第3の3〔原告の主張〕⑶の主張のとおりと述べるものであ
り、同様に採用することができない。
⑷ 相違点4について
ア 本件審決において引用された引用文献4ないし6には、別紙4「引用文
5 献4ないし6の記載」のとおりの記載が存在する。
引用文献4(一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修、医薬品
製造販売指針2015、株式会社じほう、2015年、113頁)には、
貼付剤の粘着力試験において、
「通常No.4以上の重いボールが停止した
場合に粘着力が良好であるといわれている」こと、ボールNo.4は直径
10 7.9mmのボールであることが記載されている。
引用文献5(第十七改正 日本薬局方、2016年、145~147頁)
には、傾斜式ボールタック試験法として、ボールNo.10が直径7.9
mmのボールであることが記載されている。
引用文献6(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課、第十七改
15 正日本薬局方の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q
&A)について[オンライン]、2017年)には、「Q10 粘着力試験
法の傾斜式ボールタック試験法について、従来、医薬品製造販売指針にお
いて示されていたボールNo.1~9(直径3.2mm~15.9mm)
は、本試験法の直径(mm)を参考にボールNo.を読み替えることでよ
20 いか。」に対し、「(答)よい。」と記載されている。
以上を総合すると、日本薬局方のボールNo.10(直径7.9mm)
は、医薬品製造販売指針におけるボールNo.4(直径7.9mm)に相
当し、引用文献4によれば、ボールNo.4以上のボールが停止した場合
に、通常粘着力が良好であるといわれていることになるから、本件審決が
25 認定するように、日本薬局方における傾斜式ボールタック試験法のボール
No.10の粘着力とは、貼付剤において一般に要求される粘着力である
と認められる。
そして、粘着力は、例えば粘着成分である膏体の塗工量を増やすことに
よって高められることは当業者が容易に理解することであり、このことは
比較実験報告書(甲8)において「比較実験①」とされた実験(以下「比
5 較実験①」という。)の結果を示した表2において、塗工量が増えるにした
がって停止したスチールボールNo.の値が大きくなっていることとも整
合する。
したがって、引用発明のパップ剤において、粘着成分である膏体の塗工
量を引用文献3の[0038]に記載された範囲内で調節し、上記貼付剤
10 において一般に要求される粘着力である、「日本薬局方における傾斜式ボ
ールタック試験法のボールNo.10の粘着力」が得られるようにするこ
とは、当業者が容易に想到することである。
イ 原告は、前記第3の3〔原告の主張〕⑷のとおり、本願発明が提供する
水性貼付剤は、膏体成分として水溶性ポリマーを10~20重量%および
15 多価アルコールを20~50重量%を含有し、かつ、多価アルコールの一
種として少なくともグリセリンを10~40重量%含む点に一つの特異
的特徴を有し、その上で膏体の含水率が25~45重量%である低含水量
の膏体とする点に更なる特徴点を有し、これらの点が相まって、意図する
水性貼付剤の粘着性、保形性、耐熱性等が維持されるのであり、本願発明
20 における粘着力の特定は、本願発明の上記特徴点を踏まえた上での特定で
あること、及び、引用文献3においてパップ剤の粘着力については一切明
記されていないことから、引用発明において、一般に要求される粘着力で
ある日本薬局方の傾斜式ボールタック試験法においてボールNo.10以
上の粘着力とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえ
25 ない旨主張する。
しかし、膏体成分として、水溶性ポリマーを10~20重量%及び多価
アルコールを20~50重量%含有し、かつ、多価アルコールの一種とし
て少なくともグリセリンを10~40重量%含むことは、本願発明と引用
発明との一致点である(前記3⑴、第2の3⑵イ)。引用発明は水の含有量
の点で本願発明と相違するが(相違点1)、水の含有量が引用発明の約47.
5 42重量%では一般に要求される粘着力を達成することができず、これを
本願発明の水の含有量の範囲である45重量%程度にわずかに変えただ
けで、一般に要求される粘着力が得られるようになると、当業者が認識す
るとは考え難い。
また、引用文献3には、粘着力試験により測定される粘着力に関する記
10 載はないが、貼付剤が一般に一定の粘着力を有することを要するのは明ら
かであるし、引用文献3にも「本発明のパップ剤は、膏体層にポリ(アク
リル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有することから、長
時間経過後のパップ剤の付着力の低下が抑制される。」([0007])、「膏
体層がポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含む
15 ことにより、膏体層の質量が比較的小さい場合であっても、長時間経過し
た後でも十分な付着力が維持されやすい傾向にある。」([0031])との
記載があり、一定の粘着性があることが必要であることを示す記載である
といえるから、引用文献3に接した当業者が、引用発明において、貼付剤
において一般に要求される粘着力である、「日本薬局方における傾斜式ボ
20 ールタック試験法のボールNo.10の粘着力」が得られるようにするこ
とは、容易に想到し得たことである。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑸ 取消事由3並びに取消事由5に係る原告の主張⑵及び⑶に関する結論
以上によれば、本件審決における相違点の判断に誤りがあるとは認められ
25 ず、取消事由3には理由がなく、取消事由5に係る原告の主張⑵及び⑶も採
用することができない。
5 取消事由4(本願発明の効果についての判断の誤り)並びに取消事由5に係
る原告の主張⑷及び⑸について
⑴ 本願発明の効果が予測できないものであるかについては、本願の出願日当
時、本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかっ
5 たものか否か、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超
える顕著なものであるか否かという観点から検討すべきである(最高裁平成
30年(行ヒ)第69号令和元年8月27日第三小法廷判決・裁判集民事2
62号51頁参照)。
⑵ 本願明細書には、本願発明の効果として、
「本発明によれば、フィルム等を
10 積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用い、膏体の塗工量の少な
い薄型の水性貼付剤において、製造時および保存時に支持体に対する膏体の
裏抜けがなく、その上、優れた粘着力を持続する水性貼付剤を提供すること
ができる。したがって、本発明の膏体中に消炎鎮痛剤等の薬効成分を含有さ
せた水性貼付剤は、優れた経皮吸収性、安定性、および高い保存安定性を兼
15 ね備えた水性貼付剤であり、その効果は多大なものである。」(【0009】)
との記載がある。
また、本願明細書には、実験の結果として、本願発明の水性貼付剤に含ま
れる実施例1ないし6は、支持体側への膏体の裏抜けがなく、傾斜式ボール
タック法による粘着力試験の結果、いずれもボールナンバーがNo.10以
20 上であって粘着力が良好であったが、本願発明の範囲外である比較例1ない
し3の水性貼付剤は、いずれも支持体側への膏体の裏抜けがあり、上記粘着
力試験の結果、いずれもボールナンバーがNo.10未満であって、粘着力
が低いものであったとされている(【0031】~【0040】)。
さらに、実施例1の水性貼付剤は、比較例1の水性貼付剤に比べてin vitro
25 皮膚透過性が優れているとの実験結果も示されている(【0048】~【00
52】)。
⑶ しかし、引用発明のパップ剤(水性貼付剤)は、基布にフィルム等を積層
しておらず、基布として不織布を用いることが可能であり([0014])、そ
の場合好ましい厚みは0.5~2mmとされていて([0016]、前記4⑵)、
その範囲において厚みの薄い不織布を含むものである。また、引用発明のパ
5 ップ剤は、膏体層の質量が400~650g/m 2 が好ましいとされていて
([0038]、前記4⑶)、膏体層の質量(膏体の塗工量)の好ましい範囲は、
塗工量を300~600g/m 2 とする本願発明と同程度に少ないものであ
るといえる。
裏抜けについて検討すると、本願明細書の【0002】、【0003】等の
10 記載からすれば、本願明細書にいう「裏抜け」とは膏体が支持体の裏側へ染
み出す現象を意味するものと解される。そして、本願明細書には、含水量が
45重量%を超えると膏体の裏抜けが見られるとの記載がある(【0021】)。
しかし、引用文献3には、
「水を含有する膏体を織布に展延すると織布の網目
を通して、水が染み出してくる虞がある」との記載があり([0019])、水
15 の含有量が多くなれば、膏体の粘度が下がり、裏抜けしやすくなることは当
業者が予測できるものである。そして、引用発明の含水率は約47.42重
量%であって、本願発明における含水率の上限である45重量%をわずかに
上回る程度にすぎない。そうすると、本願発明において、含水率を25~4
5重量%とすることによって、含水率が約47.42重量%である引用発明
20 に比べて、支持体側への膏体の裏抜けの抑制の点で当業者の予測できない効
果が得られているとは認められない。
本願明細書における実施例と比較例を用いた実験結果についてみると、比
較例1は膏体の水分量(含水率)及び多価アルコールの含有量が、比較例2
は水溶性ポリマーの含有量が、比較例3は濃グリセリンの含有量が、それぞ
25 れ本願発明の範囲外であり、その他の条件は本願発明の範囲に含まれるもの
であるところ、引用発明の水性貼付剤における水溶性ポリマー、多価アルコ
ール及びグリセリンの含有量は、本願発明と同じである。また、比較例1の
膏体の含水率は59.59重量%であり、引用発明の含水率約47.42重
量%よりもかなり多い。そうすると、比較例1ないし3と比較し、本願発明
に含まれる実施例1ないし6が、支持体側への膏体の裏抜けの抑制及び膏体
5 の粘着力の点で優れていることが示されたからといって、本願発明の効果が
引用発明に比して優れていると認められることにはならない。
実施例1と比較例1を用いたin vitro皮膚透過性の実験についても、上記の
とおり、比較例1は水分量だけでなく、多価アルコールの含有量も本願発明
の範囲外となるものであるから、in vitro皮膚透過性の差が水分量の差による
10 ものであるか否かは明らかでない。また、仮に両者の結果が「水分量の差」
によるものであるとしても、比較例1の含水率が本願発明の含水率の上限値
よりもかなり大きいのに対して、引用発明の含水率は約47.42重量%で
あって、本願発明の含水率の上限値に近いものであるから、皮膚透過性につ
いても、本願明細書に記載された実験結果により、本願発明の効果が、引用
15 発明に比して、当業者の予測を超えた優れたものであることが示されている
とはいえない。
そうすると、本願発明の効果が、本願の出願日当時、本願発明の構成が奏
するものとして当業者が予測することができなかったものであると認めるこ
とはできない。
20 ⑷ 原告は、前記第3の4〔原告の主張〕のとおり、①本願発明の効果に関す
る本件審決の判断は、引用発明においては膏体成分として「界面活性剤及び
ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)」を必須として含
有しなければならない点を無視したものであって不当である、②引用文献3
にはin vitro皮膚透過性試験は一切記載されておらず、仮に試験がなされてい
25 たとしてもどの程度の皮膚透過性を有するのかは一切不明であるから、in
vitro皮膚透過性について、本願発明の効果が引用発明に比して当業者の予想
を超えて優れているとはいえないと認定することはできないと主張する。
しかし、上記①の主張は、原告の主張する相違点5を認定しなかったこと
が誤りであるとの内容であるところ、本願発明と引用発明の相違点として、
原告が主張する相違点5を認定する必要があると認められないことは、前記
5 3のとおりである。
上記②の主張については、引用文献3にin vitro皮膚透過性試験について記
載がないとしても、引用発明が、水溶性ポリマー、多価アルコール、グリセ
リンの含有量において本願発明と相違がなく、含水率は約47.42重量%
であって、本願発明の含水率の上限値とわずかな違いしかないという事情の
10 下では、本願明細書に記載された実施例1と比較例1を用いた実験結果から、
in vitro皮膚透過性に係る本願発明の効果が、本願の出願日当時、本願発明の
構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものであると
認められないことは、前記⑶のとおりであり、本願明細書のその他の記載か
らも上記の点は認められない。
15 原告は、取消事由5に係る原告の主張⑷において、
「本願発明と引用発明の
間には、
『発明が解決すべき課題』の相違に基づく発明の本質部分の相違があ
る以上、本願発明が引用発明から容易に想到できたものであるとか、引用発
明に比べ当業者の予想を超えた顕著な効果の存在が必要であるとかを問われ
る筋合いはない。」と主張するが、特許発明の進歩性の判断に関する考え方と
20 して相当でないことは明らかである。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑸ 原告は、取消事由5に係る原告の主張⑸において、比較実験報告書(甲8)
及び比較実験報告書⑵(甲7)に記載された実験の結果は、本願発明が、引
用文献3に記載の発明に比較し、優れた効果を発揮するものであることを示
25 している旨主張するので、以下検討する。
ア 比較実験報告書について
比較実験報告書には、
「比較実験①」及び「比較実験②」とされる実験に
関する記載が存在する。比較実験報告書は、原告が、本件不服審判請求を
した後、令和6年6月19日付けの拒絶理由通知書を受領したことを受け
て、同年9月24日に手続補足書により特許庁に提出したものである(前
5 記第2の1⑵)。比較実験報告書に記載された実験は、原告の会社内におい
て、原告の従業員が行ったものである(甲8、弁論の全趣旨)。
イ 比較実験①について
(ア) 比較実験報告書の記載によれば、比較実験①の内容及び結果は以下の
とおりである。
10 引用文献3の実施例1の組成([0056]の[表1])において、内
容が不明な「架橋剤」及び「その他の成分」として、それぞれ「ジヒド
ロキシアルミニウムアミノアセテート」及び「精製水」を用いて膏体を
調製し、支持体として目付が85g/m 2 かつ厚みが0.5mm(以下「支
持体①」という。)、目付が100g/m 2 かつ厚みが0.6mm(以下「支
15 持体②」という。)、又は目付が130g/m 2かつ厚みが0.8mm(以
下「支持体③」という。)であるものを用い、膏体の塗工量を230、3
30、430、500、750又は1000g/m 2 の範囲で変更して、
パップ剤(比較実験報告書にいう実験用製剤①)を製造した。
その結果は比較実験報告書の表2に記載されているとおりであり、支
20 持体の種類により、以下の結果となった。
支持体①を用いた場合は、膏体の塗工量が750g/m 2 以下の場合
に「停止したスチールボールNo.」が10未満となり、本願発明で特定
される「10以上」とならず接着性に劣り、また膏体の塗工量が430
g/m 2以上の場合に「裏抜けの有無」が「有」となり裏抜けが生じた。
25 支持体②を用いた場合は、膏体の塗工量が430g/m 2 以下の場合
に「停止したスチールボールNo.」が10未満となり接着性に劣り、ま
た膏体の塗工量が750g/m 2 以上の場合に「裏抜けの有無」が「有」
となり裏抜けが生じた。
支持体③を用いた場合は、膏体の塗工量が430g/m 2 以下の場合
に「停止したスチールボールNo.」が10未満となり接着性に劣り、ま
5 た膏体の塗工量が750g/m 2 以上の場合に「裏抜けの有無」が「有」
となり裏抜けが生じた。
本願発明の要件である「厚み0.4~0.7mm及び目付80~11
0g/m 2 の支持体に塗工量として300~600g/m 2 の範囲で塗
布」したもののうち、「停止したスチールボールNo.」が「10以上」
10 で、裏抜けが「無」という、本願発明の効果が得られたのは、支持体②
を用い、塗工量を「500g/m 2」としたもののみであった。
(イ) 比較実験①の上記結果について検討する。
上記(ア)のとおり、比較実験①の膏体の組成は、引用文献3の実施例1
において、内容が不明な「その他の成分」として「精製水」を用いたも
15 のである。しかし、引用文献3の実施例1では、水は「精製水」として
配合されているから、
「その他の成分」は「精製水」とは異なる成分であ
ると考えられる。そうすると、比較実験報告書の比較実験①で用いられ
た膏体の組成は、引用文献3の実施例1の膏体の組成とは異なり、それ
よりも水(精製水)の含有量が多いものの結果を示すものにすぎない。
20 上記の点を措くとしても、比較実験①で示された結果から読み取れる
のは、支持体の目付が大きくなると裏抜けがしにくくなり、膏体の塗工
量が多くなると接着性は向上するが、裏抜けが起こりやすくなる傾向が
あることである。しかし、引用文献3には、目付を80~150g/㎡
程度とすることで水の染み出し(「裏抜け」)を抑えられる旨の記載が存
25 在しており([0019])、支持体の単位面積当たりの質量である目付が
大きくなれば、これに応じて支持体が厚くなり、液体が支持体から浸み
出しにくくなることは、当業者が認識し得る事項であるといえる。
そして、前記4⑷のとおり、粘着成分である膏体の塗工量を増やすこ
とによって粘着力が高められることは、当業者が容易に理解することで
ある。
5 なお、比較実験報告書の表2によれば、支持体①(目付が85g/m

)を用いた場合、塗工量を750g/m 2 まで増やしても、停止したス
チールボールNo.は8であるから、支持体①を用いて塗工量を600
g/m 2として実験を行ったとしても、停止したスチールボールNo.は
10未満となると考えられる。しかし、本願明細書の実施例1ないし6
10 の水性貼付剤で用いられた支持体の目付はいずれも100g/m 2 のも
のであり、本願明細書に記載された粘着力試験(【0038】~【004
0】)は、いずれも支持体の目付が100g/m 2の支持体を用いた場合
の結果を示すにすぎず、実施例1ないし6において目付を85g/m 2
として本願明細書と同様の粘着力試験を行った場合に、停止したボール
15 ナンバーNo.が10以上となるか否かは、本願明細書の記載からは明
らかでない。
以上を総合すると、比較実験①で示された結果は、当業者にとって自
明な傾向を示すものにすぎず、引用発明において、目付、厚み、塗工量
等を引用文献3に記載された範囲内で適切に選択すれば、裏抜けがなく、
20 良好な粘着力が得られるであろうことは、当業者が予測できることであ
る。
ウ 比較実験②及び比較実験報告書⑵に記載された実験について
(ア) 比較実験報告書の記載によれば、比較実験②の内容及び結果は以下の
とおりである。
25 引用文献3の実施例4の組成(これは、引用発明における生理活性物
質([0022])である「サリチル酸グリコール」2質量%及び「酢酸
トコフェロール」1質量%を、別の生理活性物質「ケトプロフェン」3
質量%に置き換えたものである。)において、内容が不明な「架橋剤」及
び「その他の成分」としてそれぞれ「ジヒドロキシアルミニウムアミノ
アセテート」、
「精製水」を用い、支持体として織布(目付100g/㎡、
5 厚み0.6mm)を用い、実験用製剤②を調製した。また、実験用製剤
②の「ケトプロフェン」の含有量を2質量%、1質量%、0.5質量%
に変更し、その分精製水の使用量を増やした実験用製剤③ないし⑤を調
製した。他方、本願明細書の実施例1の組成(生理活性物質である「ケ
トプロフェン」を2質量%含む)に従い、比較用製剤を調製した(比較
10 実験報告書の表3において、比較用製剤の組成として、ゼラチン5.5、
ポリアクリル酸部分中和物1と記載されているが、これは誤りであり、
実際の実験で用いられた比較用製剤の組成は、ゼラチン1(質量%)、ポ
リアクリル酸部分中和物5.5(質量%)である(弁論の全趣旨)。)。
これらについて、室温保管1か月後の膏体中における薬物溶解状態を
15 確認したところ、実験用製剤②ないし⑤は、膏体中のケトプロフェンが
結晶化して析出が確認された。一方、比較用製剤では、甲8の表4、表
5(いずれも偏光顕微鏡による画像)を見る限り、ケトプロフェンの析
出は確認できない。
また、実験用製剤②、③と比較用製剤について薬物皮膚透過性試験を
20 行ったところ、実験用製剤②、③は比較用製剤に対し、24時間の累積
透過量が明らかに低い値(1/8~1/10倍)を示した。
(イ) 比較実験報告書⑵に記載された実験について
比較実験報告書⑵は、原告が本件訴訟において証拠(甲7)として提
出したものであり、本件不服審判請求に係る審判手続においては提出さ
25 れていなかった。比較実験報告書⑵に記載された実験は、原告の会社内
において、原告の従業員が行ったものである(甲7、弁論の全趣旨)。
比較実験報告書⑵の記載によれば、比較実験報告書⑵に記載された実
験(以下「比較実験③」という。)の内容と結果は、以下のとおりである。
引用文献3の実施例3、5の組成(これらは、引用発明における生理
活性物質に相当する「サリチル酸グリコール」2質量%及び「酢酸トコ
5 フェロール」1質量%を、別の生理活性物質である「フェルビナク」3
質量%又は「ジクロフェナクナトリウム」3質量%に置き換えたものに
相当する。)において、内容が不明な「架橋剤」及び「その他の成分」と
してそれぞれ「ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート」、
「精製水」
を用い、支持体として織布(目付100g/m 2 、厚み0.6mm)を用
10 い、実験用製剤①及び②を調製した。また、実験用製剤①の「フェルビ
ナク」の含有量を2質量%、実験用製剤②の「ジクロフェナクナトリウ
ム」の含有量を2質量%に変更し、精製水を1質量%増やした実験用製
剤③、④を調製した。他方、本願明細書の実施例1において、生理活性
物質である「ケトプロフェン」2重量%を「フェルビナク」2重量%又
15 は「ジクロフェナクナトリウム」2重量%に変更した比較用製剤⑤、⑥
を調製した。
これらについて、室温保管1か月後の膏体中における薬物溶解状態を
確認したところ、実験用製剤①ないし④は膏体中のフェルビナク又はジ
クロフェナクナトリウムが結晶化して析出が確認された。一方、比較用
20 製剤⑤、⑥では比較実験報告書⑵の表2を見る限り、フェルビナク又は
ジクロフェナクナトリウムの析出はほとんど確認できない。
また、実験用製剤①、③と比較用製剤⑤、及び実験用製剤②、④と比
較用製剤⑥について、それぞれ薬物皮膚透過性試験を行ったところ、実
験用製剤①、③は比較用製剤⑤に対し、また、実験用製剤②、④は比較
25 用製剤⑥に対し、それぞれ24時間の累積透過量は明らかに低い値(1
/24~1/90倍)を示した。
(ウ) 比較実験②及び③の上記各結果について検討する。
上記各結果によれば、
「架橋剤」として「ジヒドロキシアルミニウムア
ミノアセテート」を、
「その他の成分」として「精製水」を用いた点を除
き、引用発明において、生理活性物質である「サリチル酸グリコール2
5 質量%」及び「酢酸トコフェロール1質量%」を、同量の別の生理活性
物質である「ケトプロフェン」、「フェルビナク」又は「ジクロフェナク
ナトリウム」に置き換えた水性貼付剤(それぞれ、比較実験②の実験用
製剤②、比較実験③の実験用製剤①、②)は、同じ生理活性物質を用い
る本願発明に相当する水性貼付剤(比較実験②の比較用製剤、比較実験
10 ③の比較用製剤⑤、⑥。)と比較して、生理活性物質が析出し、かつ薬物
皮膚透過性も劣るものであったといえる。
また、比較実験②の実験用製剤②、比較実験③の実験用製剤①、②に
おける生理活性物質の含有量を、対応する比較用製剤と同じ2重量%と
し、精製水を1重量%増やした比較実験②の実験用製剤③、比較実験③
15 の実験用製剤③、④についても、同様の結果であったといえる。
含水率について、比較実験②の実験用製剤②、③及び比較実験③の実
験用製剤①ないし④(以下、これらを併せて「各実験用製剤」という。)
では、本願発明の上限値である45重量%よりも大きく、比較実験②の
比較用製剤及び比較実験③の比較用製剤⑤、⑥(以下、これらを併せて
20 「各比較用製剤」という。)では、本願発明の含水率の範囲内である。
しかし、本願明細書には、
「含水率」に関して「含水量が45重量%を
超えた場合、膏体粘度の低下による保形性の悪化、および膏体のべとつ
き、裏抜けが見られる。また、粘着力が著しく低下し、貼付部位への接
着力が十分に得られず好ましくない。また、含水量が25重量%未満で
25 は、膏体粘度が高くなりすぎて、展延工程の作業性が悪くなる。」との記
載はあるものの(【0021】)、「含水率」と薬剤の結晶化又は薬剤の皮
膚透過性との関係やその作用機序について記載はなく、任意の薬剤につ
いて「含水率」が高くなると、結晶化が起こりやすくなる、あるいは皮
膚透過性が悪化することが、本願の出願日当時における技術常識であっ
たとも認められない。そのため、比較実験②及び③における各実験用製
5 剤を用いた場合の結果と各比較用製剤を用いた場合の結果を比較しても、
その結果の違いが含水率の差によって生じたものと直ちに認められるも
のではない。
また、各実験用製剤と各比較用製剤とでは、含水率だけでなく、その
他の成分も異なっており、特に、各比較用製剤は全て「クロタミトン」
10 を含むものであるのに対し、各実験用製剤はそれを含まないものである
との相違点がある。
「クロタミトン」は、引用文献3の[0040]にも
記載されるように、
「膏体層に含まれる成分が析出しないように添加する」
「溶解補助剤」として働く成分である。そうすると、比較実験②及び③
における各実験用製剤を用いた場合の結果と各比較用製剤を用いた場合
15 の結果を比較しても、その結果の違いが含水率の差によって生じている
のか、それとも「溶解補助剤」として働く「クロタミトン」の有無によ
って生じているのかも、明らかでない。
(エ) 原告は、前記第3の5〔原告の主張〕⑸エのとおり、各比較用製剤に
含まれる成分は、本願発明の「水溶性ポリマー」、「多価アルコール」又
20 は貼付剤の技術分野で汎用されている「賦形剤」、
「安定化剤」、
「可塑剤」
等の一般的な成分であり、これらが配合されたからといって、各実験用
製剤との効果の対比に影響を与えるものではないと主張する。
しかし、上記(ウ)のとおり、少なくとも各比較用製剤に含まれる「クロ
タミトン」については、各実験用製剤を用いた場合の結果との差異、ひ
25 いては各実験用製剤との効果の対比に影響を与え得るものと認められる。
エ 以上によれば、比較実験報告書に記載された比較実験①、②及び比較実
験報告書⑵に記載された比較実験③の結果により、本願発明の効果が、本
願の出願日当時、本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測するこ
とができなかったものであると認めることはできない。
⑹ 取消事由4並びに取消事由5に係る原告の主張⑷及び⑸に関する結論
5 以上によれば、本件審決における本願発明の効果の判断に誤りがあるとは
認められず、取消事由4には理由がなく、取消事由5に係る原告の主張⑷及
び⑸も採用することができない。これまでに判断したとおり、取消事由5に
係る原告の主張は全て採用することができないから、取消事由5も理由がな
いことになる。
10 6 結論
以上のとおりであり、原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件
審決について、これを取り消すべき違法はない。したがって、原告の請求は棄
却されるべきである。
よって、主文のとおり判決する。
15 知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
20 中 平 健

裁判官
25 今 井 弘 晃
裁判官水野正則は、転補により署名押印することができない。

5 裁判長裁判官
中 平 健

別紙1
本件審決の判断
1 相違点について
⑴ 相違点1について
5 引用文献3の摘記3fには、
「水の含有量は、膏体層の質量を基準として、1
0~90質量%であることが好ましく、15~88質量%であることがより好
ましく、18~85質量%であることがさらに好ましい。」ことが記載されてい
るから、引用発明における含水量を、上記記載の範囲内である25~45%程
度に調整することは、当業者が容易になし得たことである。
10 ⑵ 相違点2について
引用文献3の摘記3cの[0016]には、
「基布が不織布である場合、
・・・
好適な基布の目付は、例えば、80~120g/m 2 であり、90~110g/
m2であることが好ましい。好適な基布の厚みは、例えば、0.5~2mmであ
る。」ことが記載されている。また、摘記3cの[0019]には、「水を含有
15 する膏体を織布に展延すると織布の網目を通して、水が染み出してくる虞があ
るが、ポリエチレンテレフタレート織布の目付けを80~150g/m 2 とす
ることにより膏体に含有される水が確実に織布の網目を通して染み出すことな
く展延できる傾向があり、かつ織布と膏体の間の投錨性を維持することができ
る。」ことが記載されている。
20 一方、膏体に使用される不織布においても、染み出しを防止することは周知
の課題であるから(要すれば、参考文献B(国際公開第2016/13655
6号)の摘記B1参照)、引用発明における基布の目付及び厚みを、上記の基布
の目付と厚みの範囲内の数値である、「80~110g/m 2 」、「0.5~0.
7mm」程度とし、染み出しを防止することは、当業者が容易に想到し得たこ
25 とである。
⑶ 相違点3について
引用文献3の摘記3gの[0038]には、
「膏体層の質量は・・・好ましく
は、400~650g/m 2とすることにより、フィット感良く、より長期間の
付着性を向上することができる。膏体層の質量が上記範囲であれば、パップ剤
全体の厚みを小さくすることができ、皮膚に追従しやすく、さらに、貼付した
5 際に周縁部との段差が小さくなるため、剥離しにくい傾向にある。」と記載され
ている。そうすると、引用発明において、フィット感や付着性を向上させるた
めに、膏体の塗工量を、引用文献3に記載の数値の範囲内である400~60
0g/m 2とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明においては、膏体液を剥離ライナー上に展延し、その上に基
10 布を積層しているものの、引用文献3には、
「水を含有する膏体を織布に展延す
る」([0019])こと、「膏体液を基布に展延した後、剥離ライナーを積層し
て製造してもよい」
([0050])ことも記載されているから、まず、引用発明
の「基布」は本願発明の「支持体」に相当し、そして、引用発明において、膏
体液を基布に直接塗布することも、当業者が適宜なし得たことといえる。
15 ⑷ 相違点4について
引用文献4の医薬品製造販売指針には、貼付剤の粘着力試験において、
「通常
No.4以上の重いボールが停止した場合に粘着力が良好であるといわれてい
る」こと、ボールNo.1は、直径3.2mmのボール、ボールNo4は、直
径7.9mmのボール、ボールNo.9は、15.9mmのボールであること
20 が記載されている。
一方、引用文献5の日本薬局方には、傾斜式ボールタック試験法としてボー
ルNo.4は、直径3.2mmのボール、ボールNo.10は、直径7.9m
mのボール、ボールNo.20は、直径15.9mmのボールであることが記
載されている。
25 そして、引用文献6は日本薬局方に関する質疑応答集であって、
「Q10 粘着
力試験法の傾斜式ボールタック試験法について、従来、医薬品製造販売指針に
おいて示されていたボールNo.1~9(直径3.2mm~15.9mm)は、本試験法の直
径(mm)を参考にボールNo.を読み替えることで良いか。」に対し「(答)よい。」
と記載されていることを考慮すると、医薬品製造販売指針(引用文献4)のボ
ールNo.1、4、9(引用文献5)は、それぞれ日本薬局方のボールNo.
5 4、10、20に相当する。
そうすると、日本薬局方における傾斜式ボールタック試験法のボールNo.
10の粘着力は、医薬品製造販売指針(引用文献4)に記載された貼付剤にお
ける良好な粘着力とされる、No.4以上の重いボールが停止する粘着
力に相当し、貼付剤において一般に要求される粘着力であるといえる。
10 したがって、引用発明において、一般に要求される粘着力である日本薬局方
の傾斜式ボールタック試験法においてボールNo.10以上の粘着力とするこ
とは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 本願発明の効果について
⑴ 本願明細書には、本願発明の水性貼付剤に含まれる実施例1~6の水性貼付
15 剤は、支持体側への膏体の裏抜けが無く、膏体の粘着力が良好であった一方、
(a)膏体の水分量が59.59重量%、多価アルコールが17重量%であり、
本願発明の範囲外であるが、その他の条件は一致する比較例1の水性貼付剤、
(b)水溶性ポリマーが8.5重量%であり、本願発明の範囲外であるが、そ
の他の条件は一致する比較例2の水性貼付剤、
(c)濃グリセリンが5重量%で
20 あり、本願発明の範囲外であるが、その他の条件は一致する比較例3の水性貼
付剤は、すべて支持体側への膏体の裏抜けが有り、膏体の粘着力が低いもので
あったことが記載されている。
⑵ しかしながら、引用発明の水性貼付剤における、水溶性ポリマー、多価アル
コール、グリセリンの含有量は、本願発明と同じであるから、これらの含有量
25 が異なる水性貼付剤(比較例1~3)と比較し、本願発明が優れることが示さ
れたからといって、本願発明の効果が引用発明に比し、優れているということ
はできない。
⑶ また、引用発明の水性貼付剤における含水率は約47.42重量%であって、
本願発明の含水率の上限である45重量%とは、わずかに異なるのみであり、
5 含水率以外の組成は、本願発明の範囲内である。そして、本願明細書には、上
述のとおり、膏体の水分量が59.59重量%であり、多価アルコールが17
重量%の比較例1の水性貼付剤は、支持体側への膏体の裏抜けが有り、膏体の
粘着力が低いものであったことから、比較例1の水性貼付剤よりも本願発明の
水性貼付剤の方が優れることが記載されているが、引用発明のように含水率が
10 約47.42重量%であり、多価アルコールが本願発明の範囲内である30重
量%であった場合の裏抜けや粘着力が記載されているわけではないから、本願
発明の効果が引用発明に比し、当業者の予測を超えて優れているとはいえない。
⑷ さらに、本願明細書には、本願発明の水性貼付剤に含まれる実施例1の水性
貼付剤は、膏体の水分量が59.59重量%であり、多価アルコールが17重
15 量%である比較例1の水性貼付剤に比べ、in vitro皮膚透過性に優れることが記
載されているが、引用発明と比較したin vitro皮膚透過性は記載されていないの
で、この点についても、本願発明の効果が引用発明に比し、当業者の予測を超
えて優れているとはいえない。
⑸ 以上のとおり、本願発明の効果が当業者の予測を超えて優れているとはいえ
20 ない。
以 上

別紙2
本願明細書及び図面の記載
1 技術分野
5 「本発明は、塗工量の少ない水性貼付剤において、厚みの薄い支持体を用いた場
合であっても、保存時においては膏体の裏抜けがなく、かつ使用時の粘着力が良
好に維持する水性貼付剤に関する。」(【0001】)
2 背景技術
「一般的に、貼付剤はその厚みが薄いものの方が、衣服に絡みつきにくく使用感
10 が良いため好まれている。そのため、できるだけ膏体の塗工量を少なくし膏体層
の厚みを薄くし、且つまた、支持体の厚みも薄くする等、両方の厚みを抑える検
討がなされている。
しかしながら、パップ剤に代表される水性貼付剤の場合にあっては、貼付剤基
剤となる膏体が架橋するまでの間は流動性が高い状態に置かれているため、膏体
15 が支持体の裏側へ染み出してしまい、貼付時に手がべたつく問題があり、また、
保管時に包装袋内部に貼付剤製剤が張り付くといった不都合がおこりやすい。
さらには、膏体が支持体にめりこみすぎることにより、粘着性の低下が起こる
といった問題もある。」(【0002】)
「そのため、薄型の水性貼付剤を検討する場合には、支持体から膏体の裏抜けを
20 防止するためにフィルムが積層された支持体を使用することが検討されてきて
いる(例えば、特許文献1及び2)。
しかしながら、この場合にあっても、通常使用されている不織布等の支持体に
フィルム層を積層することにより、皮膚への追従性が悪くなり、また、貼付部分
の皮膚がフィルムの積層により蒸れることとなり、更には、製造コストが高くな
25 るといった問題がある。」(【0003】)
3 発明が解決しようとする課題
「本発明は、上記の現状に鑑み、膏体の塗工量が少ない水性貼付剤において、フ
ィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用いたときであっ
ても、製造時や保存時においては膏体の支持体からの裏抜けがなく、かつ使用時
の粘着力が良好に維持される水性貼付剤を提供することを課題とする。」(【00
5 05】)
4 課題を解決するための手段
「かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果,水性貼付剤の膏
体の調製において含有する水分量を低減させると共に、膏体基剤成分として水溶
性ポリマーおよび多価アルコールの両者を特定量用い、その上でグリセリンを少
10 なくとも多価アルコールの一種として特定量含有させた低含水量の膏体を調製
し、かかる膏体を、フィルム等を積層していない厚みの薄い支持体に塗工するこ
とにより、上記課題が解決できる水性貼付剤となり得ることを新規に見出し、本
発明を完成させるに至った。」(【0006】)
5 発明の効果
15 「本発明によれば、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体とし
て用い、膏体の塗工量の少ない薄型の水性貼付剤において、製造時および保存時
に支持体に対する膏体の裏抜けがなく、その上、優れた粘着力を持続する水性貼
付剤を提供することができる。
したがって、本発明の膏体中に消炎鎮痛剤等の薬効成分を含有させた水性貼付
20 剤は、優れた経皮吸収性、安定性、および高い保存安定性を兼ね備えた水性貼付
剤であり、その効果は多大なものである。」(【0009】)
6 図面の簡単な説明
「【図1】実験例4におけるin vitro皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。」
(【0010】)
25 7 発明を実施するための形態
「本発明が提供する水性貼付剤において、膏体を構成する基剤成分である主成分
として用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、寒天、プルラン、
各種ガム類(キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム等)等とい
った天然ポリマーや、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、
5 ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセ
ルロース等といった半合成ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビ
ニルポリマー、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコ
ール、ポリビニルピロリドン等といった合成ポリマー、などを挙げることができ
る。
10 これらの水溶性ポリマーは単独または2種以上の組み合わせで用いることが
できる。」(【0012】)
「前記水溶性ポリマーの膏体組成中における配合量は、10~20重量%であり、
より好ましくは、10~15重量%である。
水溶性ポリマーの配合量が10重量%未満の場合には、膏体粘度が低すぎて、
15 貼付剤として成形することが難しくなる。
また、20重量%を超える場合には、膏体粘度が高くなりすぎて、膏体の展延
工程の作業性が悪くなる。」(【0013】)
「本発明が提供する水性貼付剤において、膏体を構成する他の基剤成分である主
成分として配合する多価アルコールは、例えば、グリセリン、D-ソルビトール
20 液、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等があげられるが、なかでも
D-ソルビトール液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および
グリセリンを使用するのが好ましい。」(【0014】)

「これらの多価アルコールは、前記した多価アルコールを、適宜複数種組合せて
用いることが重要であり、その中でも、グリセリンを多価アルコールの一種とし
て使用する必要がある。
グリセリンは、膏体の物性を保つために必須の成分であり、かかるグリセリン
5 としては通常、日本薬局方に規定する濃グリセリンが用いられる。」
(【0015】)
「多価アルコールの配合量は、20~50重量%であり、好ましくは30~45
重量%の範囲で使用するのが良い。
多価アルコールの配合量が50重量%を超える場合には、基剤の粘度が上昇す
ることから、製造時における作業性が悪くなり好ましくない。
10 また、多価アルコールの配合量が20重量%未満である場合には、基本的な貼
付剤の特性、例えば、粘着性、保形性、耐熱性等が悪化してしまい、好ましいも
のではない。」(【0016】)
「多価アルコールとしての必須成分となるグリセリンの配合量は、膏体の物性を
保つために10~40重量%の範囲で配合することが好ましい。また、配合する
15 多価アルコールの20%以上はグリセリンであることが好ましい。
なお、多価アルコールとしてのグリセリンの配合量が10重量%未満である場
合には、膏体の物性が保てず、支持体に対する膏体の裏抜けの原因となり、40
重量%を超える場合には、含有させる薬物によっては安定性に影響を与える可能
性も懸念されるため、好ましいものではない。」(【0017】)
20 「したがって、本発明が提供する水性貼付剤としては、膏体成分として水溶性ポ
リマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、
且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%含
む点に、一つの特徴を有し、この特徴点により、目的とする水性貼付剤の粘着性、
保形性、耐熱性等が維持されるのである。」(【0018】)
25 「本発明が提供する水性貼付剤において、水溶性ポリマーを架橋させる架橋剤と
しては、通常の多価金属塩を挙げることができる。具体的には、例えば塩化アル
ミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アルミニウムア
ンモニウム、水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アル
ミン酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げるこ
とができ、なかでも、好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、およびジ
5 ヒドロキシアルミニウムアミノアセテートである。」(【0019】)
「本発明が提供する水性貼付剤は、膏体の調製時に含有させる水分量を低減させ
ることにまた一つの特徴を有する。
かかる水の配合量は、膏体重量に対して25~45重量%であり、より好まし
くは30~40重量%である。
10 含水量が45重量%を超えた場合、膏体粘度の低下による保形性の悪化、およ
び膏体のべとつき、裏抜けが見られる。また、粘着力が著しく低下し、貼付部位
への接着力が十分に得られず好ましくない。
また、含水量が25重量%未満では、膏体粘度が高くなりすぎて、展延工程の
作業性が悪くなる。」(【0021】)
15 「その他、本発明が提供する水性貼付剤においては、必要に応じてカオリン、酸
化チタン、無水ケイ酸、酸化亜鉛、ベントナイト等の賦形剤; エデト酸塩、酒石
酸、クエン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ジイソプロパノールアミン等の安定化剤;
酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロ
ール等の抗酸化剤; L-メントール、ハッカ油、dl-カンフル等の清涼化剤;
20 トウガラシ末、トウガラシエキス等のトウガラシ由来物質、カプサイシン、ジヒ
ドロキシカプサイシン、カプシノイド等のカプサイシン類似体、ノニル酸ワニリ
ルアミド、ニコチン酸ベンジル等の温感刺激剤; メチルパラベン、プロピルパラ
ベン等の防腐剤; 脂肪酸エステル、クロタミトン、植物油等の可塑剤; ポリグ
リセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂
25 肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸
エステル、ソルビタンモノオレエート、オレイルエーテル等の界面活性剤等を、
適宜、適量配合させることができる。」(【0023】)
「本発明が提供する水性貼付剤にあっては、フィルム等の積層をしていない厚み
の薄い支持体を使用する点にまた一つの特徴がある。
5 すなわち、本発明で提供される水性貼付剤において用いられる支持体としては、
貼付後の貼付製剤の剥離を抑制する点から、身体の動きに追従する柔軟性に富む、
薄いものが望ましい。
また、支持体としての不織布は伸縮性を有するものであって、縦および/また
は横への伸び率が100%以上である不織布が好ましい。」(【0024】)
10 「本発明に用いられる厚みの薄い支持体である不織布としては、0.4~0.7
mm厚を有する不織布であって、目付量は、80~110g/m 2 が好ましい。」
(【0026】)
「本発明において、膏体の塗工量は水性貼付剤全体の厚みを抑えるために薄く
塗工するのが良く、膏体の塗工量としては、300~600g/m 2 程度が良い。」
15 (【0028】)
8 実施例
「以下に、実施例および比較例、並びに試験例等を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。」(【0030】)
「実施例1~4:(ケトプロフェン含有/低含水量の水性貼付剤)
20 下記表1に記載した処方(重量%)に基づいて、添加物を均一に混合し膏体を
調製し、得られた膏体を支持体(スパンレース不織布;厚み:0.5~0.6m
m/目付量:100g/m 2)に膏体の塗工量が430g/m 2 になるように展延
し、その膏体表面をプラスチックフィルムで被覆し、得られた貼付剤を10cm
×14cmの矩形に裁断し、本発明の低含水量の水性貼付剤を調製した。」
(【00
25 31】)
「比較例1~3:(ケトプロフェン含有水性貼付剤)
下記表2に記載した処方(重量%)に基づいて、添加物を均一に混合し膏体を
調製し、得られた膏体を支持体(スパンレース不織布;厚み:0.5~0.6m
m/目付量:100g/m 2)に膏体の塗工量が430g/m 2 になるように展延
し、その膏体表面をプラスチックフィルムで被覆し、得られた貼付剤を10cm
5 ×14cmの矩形に裁断し、比較例の水性貼付剤を調製した。」(【0032】)
「なお、実施例5、6として、有効成分であるフルルビプロフェンおよびフェル
ビナクを含有させた本発明の低含水量の水性貼付剤を、同様に調製した。」
(【00
33】)
「【表1】

」 」


(【0034】)
「【表2】


(【0035】)
「実験例1:支持体側への膏体の裏抜けの有無の検討
不織布上に膏体を展延した各実施例および比較例の貼付製剤について、保存時
5 における膏体の支持体側への裏抜けの有無を観察した。
膏体の支持体側への裏抜けは、製造後、試験貼付製剤を室温にて1週間保管後
に目視で調査した。
その結果を下記表3に示した。」(【0036】)
「【表3】

(【0037】
「実験例2:粘着力試験
5 傾斜式ボールタック法
各実施例および比較例の貼付製剤について、膏体の粘着力を調べるため、日本
薬局方の傾斜式ボールタック法による粘着力試験を行った。
水平に対して30度の角度を有する傾斜板上アクリル板上に貼付剤の粘着面
を上に向けて置き、上部10cm、下部15cmの部分を適当な紙で覆い、中央
10 に5cm幅の粘着面を残し、径3.2mm~18.3mmの一連のスチールボー
ルを斜面の上端より転がして、中央の粘着面で転落を止め得る最大のボールナン
バーを調べた。
なお、ボールナンバーがNo.10以上であれば、粘着力は良好である。
その結果を、下記表4に示した。」(【0038】)
15 「【表4】


(【0039】)
「実施例1~4(有効成分:ケトプロフェン)および実施例5(有効成分:フル
20 ルビプロフェン)並びに実施例6(有効成分:フェルビナク)の各貼付剤の粘着
力は良好であるのに対し、比較例1~3の貼付剤の粘着力は実施例の製剤と比較
して著しく低いものであった。」(【0040】)
「実験例3:各実施例並びに比較例の貼付剤の膏体における、水分量、多価アル
コール、グリセリン、水溶性ポリマーの含有量と、保型性等に及ぼす影響の検討
下記表5及び6に、各実施例並びに比較例の貼付剤における、水分含有量、多
価アルコール/濃グリセリンの配合量、並びに水溶性ポリマーの含有量の比較を
5 まとめた。」(【0041】)
「【表5】


(【0042】)
「【表6】


(【0043】)
「アンダーライン:本発明の配合規定量の範囲外」(【0044】)
「各実施例の貼付剤、並びに試験例の貼付剤について製造後1週間保存における
5 膏体の支持体への裏抜けの有無、および膏体の支持体上における保型性を目視で
検討し、その結果を併せて表5及び6中に示した。」(【0045】)
「実施例1~4(有効成分:ケトプロフェン)および実施例5(有効成分:フル
ルビプロフェン)並びに実施例6(有効成分:フェルビナク)の各貼付剤は、膏
体として、本発明の基本的態様である、
10 ○:水溶性ポリマーを10~20重量%、
○:多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、
○:グリセリン(濃グリセリン)を10~40重量%含む、
○:含水率が25~45重量%である低含水量の膏体、
を充足するものであり、膏体の支持体への裏抜けがなく、また、膏体のダレの発
15 生がなく、保型性は良好なものである。」(【0046】)
「これに対して比較例1の貼付剤は、膏体の含水量が本発明の規定量の25~4
5重量%を超える高含水量の膏体であり、その上、多価アルコールの配合量が本
発明の20~50重量%の範囲を逸脱するものである。
また、比較例2の貼付剤にあっては、水溶性ポリマーの配合量が本発明の10
~20重量%の範囲を逸脱するものであり、比較例3はグリセリンの配合量が本
発明の10~40重量%の範囲を逸脱するものである。
その結果、比較例1~3の貼付剤にあっては膏体の支持体側への裏抜けが認め
5 られ、さらに膏体の保型性が悪く、ダレが生じていた。」(【0047】)
「実験例4:in vitro皮膚透過性試験
表1と2に記載の処方に基づく実施例1と比較例1の貼付剤について、ヘアレ
スラット皮膚を用いたin vitroでの皮膚透過試験を行った。」(【0048】)「<方
法>
10 雄性ラット(HWY系、8週齢)の側腹部摘出皮膚を37℃に保温した縦型の
透過試験用拡散セルに固定し、摘出皮膚の角質層側には試験対象である製剤を貼
付し、内側(真皮層側)にはレシーバー液としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
を10mL加えた。その後、経時的にレシーバー液を0.2mL採取し、液体ク
ロマトグラフ法によりケトプロフェン透過量を測定し、累積透過量(μg/cm

15 )を計算した。」(【0049】)
「<結果>
各群4匹を用いて実験を行い、試験開始4、6、8、22及び24時間後にお
けるケトプロフェンの累積透過量(μg/cm 2)の平均値を下記表7に示し、そ
の経時的な累積透過量の推移を図1に示した。」(【0050】)
20 「【表7】


(【0051】
「表中及び図に示した結果からも判明するように、本発明製剤である実施例1の
水性貼付剤は、比較例1の水性貼付剤と比較して著しく高い皮膚透過性を示す貼
付剤であった。」(【0052】)
「以上の結果から判断すると、本発明の特異的な膏体、すなわち、上記の低含水
5 量の膏体は、支持体として、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支
持体として用いて貼付剤を調製した場合には、製造時や保存時においては膏体の
支持体からの裏抜けがなく、かつ使用時の粘着力が良好に維持される水性貼付剤
となることが理解される。
また、含有される薬物の皮膚透過性も極めて良好なものであることが判明す
10 る。」(【0053】)
9 図面(【図1】)



以 上
別紙3
引用文献3の記載
背景技術
5 「パップ剤は、薬物を含有する膏体層を基布上に備える貼付剤の一種であり、膏体
層は通常剥離ライナーで被覆される。パップ剤は、一般に水分を多く含んでおり、
膏体層に厚みがあることから、有効成分の皮膚透過が促進され皮膚への刺激も低減
される。しかし、時間経過とともに膏体層中の水分が蒸発することから、パップ剤
の付着力は経時的に低下することがある。」([0002])
10 発明が解決しようとする課題
「本発明者らの知見によれば、パップ剤の膏体層にポリ(アクリル酸メチル/アク
リル酸2-エチルヘキシル)を含有させると、付着力の低下を抑制することが可能
になるが、膏体層から剥離ライナーを剥離するときの剥離強度(ライナー剥離力)
も高くなってしまう。」([0004])
15 「そこで、本発明の目的は、膏体層にポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エ
チルヘキシル)を含有するパップ剤であって、より小さな力で剥離ライナーを剥離
することが可能なパップ剤を提供することにある。」([0005])
課題を解決するための手段
「本発明は、基布、膏体層及び剥離ライナーをこの順に備えるパップ剤であって、
20 上記膏体層は、生理活性物質、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水、界面活性剤
及びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有し、上記界
面活性剤は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソル
ビタン脂肪酸エステルを含む、パップ剤を提供する。」([0006])
「本発明のパップ剤は、膏体層にポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチル
25 ヘキシル)を含有することから、長時間経過後のパップ剤の付着力の低下が抑制さ
れる。また、所定の界面活性剤が膏体層中の他成分と共存することで、ライナー剥
離力を低く保つことが可能になる。」([0007])
発明の効果
「本発明のパップ剤によれば、より小さな力で剥離ライナーを剥離することが可能
である。」([0009])
5 発明を実施するための形態
「基布としては、不織布又は織布が好ましく、所定の伸長回復率を有する不織布又
は織布が特に好ましい。ここで、伸長回復率とは、
『JIS L 1096 織物及
び編物の生地試験方法』にしたがって測定される値である。伸長回復率を有する不
織布又は織布を用いることで、関節等の可動部に貼付した際に、貼付部位の動きに
10 応じて、基布が伸縮するため、好ましい。」([0015])
「基布が不織布である場合、50%伸長時荷重は、例えば、縦方向(長軸方向)1
~5N/2.5cmであり、横方向(短軸方向)0.1~3N/2.5cmである
ことが好ましい。また、50%伸長回復率は、例えば、60~99%であり、65
~95%であることが好ましく、70~90%であることがより好ましい。好適な
15 基布の目付は、例えば、80~120g/m 2 であり、90~110g/m 2 である
ことが好ましい。好適な基布の厚みは、例えば、0.5~2mmである。また、基
布の剛軟度(剛軟度の測定方法はJIS L 1096 45°カンチレバー法に
よる。)は、例えば、縦方向(長軸方向)20~40mm、横方向(短軸方向)10
~35mmとすることができ、好ましくは縦方向(長軸方向)25~35mm、横
20 方向(短軸方向)15~30mmである。」([0016])
「水を含有する膏体を織布に展延すると織布の網目を通して、水が染み出してくる
虞があるが、ポリエチレンテレフタレート織布の目付けを80~150g/m 2 と
することにより膏体に含有される水が確実に織布の網目を通して染み出すことなく
展延できる傾向があり、かつ織布と膏体の間の投錨性を維持することができる。」
25 ([0019])
「膏体層は、生理活性物質、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水、界面活性剤及
びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有し、上記界面
活性剤は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビ
タン脂肪酸エステルを含む。」([0021])
「生理活性物質は、経皮吸収性を有し、体内に投与された場合に薬理活性を示すも
5 のであればよい。生理活性物質は、水溶性物質であってもよく、脂溶性物質であっ
てもよい。生理活性物質は、パップ剤の膏体層が多量の水分を含有することから、
水溶性物質であることが好ましい。生理活性物質が脂溶性物質である場合には、界
面活性作用を有するものであればよい。生理活性物質としては、例えば、フェルビ
ナク、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、サリチ
10 ル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロ
フェン等の非ステロイド系抗炎症剤またはこれらのエステル、ジフェンヒドラミン、
クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、アスピリン、アセトアミノフェン、イブ
プロフェン、ロキソプロフェンナトリウム等の鎮痛剤、リドカイン、ジブカイン等
の局所麻酔剤、塩化スキサメトニウム等の筋弛緩剤、クロトリマゾール等の抗真菌
15 剤、クロニジン等の降圧剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド等の血管拡張剤、
ビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)、酢酸トコフェロール、ビタミンK、オ
クトチアシン、酪酸リボフラビン等のビタミン類、プロスタグランジン類、スコポ
ラミン、フェンタニール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド、l-メン
トールなどが挙げられる。生理活性物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を
20 組み合わせて用いてもよい。」([0022])
「膏体層は、ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有す
る。従来のパップ剤は膏体層の重量が小さいと、水含有量が低下しやすく、付着力
が低下しやすい。しかしながら、膏体層がポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2
-エチルヘキシル)を含むことにより、膏体層の質量が比較的小さい場合であって
25 も、長時間経過した後でも十分な付着力が維持されやすい傾向にある。」([003
1])
「ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)としては、媒体とし
て水を用いた水性エマルジョンが好ましい。ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸
2-エチルヘキシル)エマルジョンとしてはまた、ポリオキシエチレンノニルフェ
ニルエーテルを界面活性剤又は保護コロイドとして用いたエマルジョンであること
5 が好ましい。また、媒体の沸点以上の加熱(例えば、105℃で3時間)による蒸
発残留物(不揮発分)が57~61%であることが好ましい。このようなエマルジ
ョンとしては、ニカゾールTS-620(商品名、日本カーバイド工業株式会社製)
が挙げられる。医薬品添加物規格(2013年)によれば、ニカゾールTS-62
0を水浴上で蒸発乾固した後、105℃で3時間乾燥するとき、蒸発残留物の量が
10 57~61%である。」([0032])
「本実施形態のパップ剤は、膏体層に水を含有する。膏体層が水を含有することに
より、薬物の皮膚透過性が向上し、薬理作用がより効果的に発揮される。」
([003
3])
「水の含有量は、膏体層の質量を基準として、10~90質量%であることが好ま
15 しく、15~88質量%であることがより好ましく、18~85質量%であること
がさらに好ましい。」([0034])
「膏体層の質量は、例えば、214~1000g/m 2 であってもよく、400~1
000g/m 2であってもよく、400~650g/m 2 であってもよい。好ましく
は、400~650g/m 2とすることにより、フィット感良く、より長期間の付着
20 性を向上することができる。膏体層の質量が上記範囲であれば、パップ剤全体の厚
みを小さくすることができ、皮膚に追従しやすく、さらに、貼付した際に周縁部と
の段差が小さくなるため、剥離しにくい傾向にある。」([0038])
「膏体層には、その他の成分として、溶解補助剤、架橋剤、保湿剤、清涼化剤、安
定化剤、無機粉体、着色料、着香料、pH調整剤等をさらに添加してもよい。」
([0
25 039])
「溶解補助剤は、膏体層に含まれる成分が析出しないように添加するものである。
溶解補助剤としては、例えば、クロタミトン;N-メチルピロリドン;ポリエチレ
ングリコール(PEG)、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;
ポリビニルアルコール;ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジエチル等の脂肪
酸エステルを挙げることができる。これらの溶解補助剤は、1種を単独で用いても
5 よく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶解補助剤の含有量は、膏体層の質
量を基準として、0.1~10質量%であることが好ましい。」([0040])
「本実施形態のパップ剤は、例えば、以下のように製造することができる。まず、
生理活性物質、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水、界面活性剤及びポリ(アク
リル酸メチル/ポリアクリル酸2-エチルヘキシル)を十分に混合し、膏体液を調
10 製する。得られた膏体液を剥離ライナー上に均一に展延し、その上に基布を積層し
て、パップ剤を得る。なお、パップ剤を製造するに当たり、膏体液を基布に展延し
た後、剥離ライナーを積層して製造してもよい。」([0050])
実施例
「(パップ剤の調製)
15 表1の記載の組成にしたがい、各成分を十分に混合し、膏体液を調製した。得ら
れた膏体液を剥離ライナー上に均一に展延し、その上に基布を積層して、剥離ライ
ナーを剥離することにより、実施例1、2及び比較例1~3のパップ剤をそれぞれ
得た。なお、ポリ(アクリル酸メチル/ポリアクリル酸2-エチルヘキシル)とし
て、ニカゾールTS-620(商品名、日本カーバイド工業株式会社製)を用いた。」
20 ([0055])
「[表1]

([0056])
「(評価)
得られたパップ剤を幅2.5cmとなるように切断し、テンシロン型引張試験機(商
5 品名:RTA-100、
(株)エー・アンド・デイ社製)を用いて、300mm/分
の速度で定速剥離したときの剥離に要する荷重を測定した。」([0057])
「結果を表2に示す。膏体層にポリ(アクリル酸メチル/ポリアクリル酸2-エチ
ルヘキシル)を含有する比較例3のパップ剤は、比較例1のパップ剤と比較して、
ライナー剥離力が増大した。一方、膏体層にポリ(アクリル酸メチル/ポリアクリ
10 ル酸2-エチルヘキシル)に加えて、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(P
EG)又はポリソルベート80をさらに含有する実施例1及び2のパップ剤のライ
ナー剥離力は、比較例1のパップ剤と同程度であった。」([0058])
「[表2]

([0059])
「実施例1におけるサリチル酸グリコール、酢酸トコフェロールに代えて、フェル
ナビク、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウムを、それぞれ膏体層全体の質
5 量に対して、3%となるように配合して、実施例3~5のパップ剤を得た。」
([00
60])
「実施例3~5のパップ剤においても、ライナー剥離力を測定したところ、実施例
1と同様の結果が得られた。」([0061])
以 上
別紙4
引用文献4ないし6の記載
1 引用文献4(「医薬品製造販売指針2015」)(乙3)
5 「


2 引用文献5(第十七改正 日本薬局方)(乙4)



3 引用文献6(「第十七改正日本薬局方の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関
する質疑応答集(Q&A)について」)



以 上

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

来週の知財セミナー (8月17日~8月23日)

8月19日(水) - 東京 千代田区

テレビ番組制作に係る法律実務2026

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

かもめ特許事務所

横浜市中区本町1-7 東ビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

商標登録・特許事務所富士山会

大阪府大阪市北区西天満3丁目5-10 オフィスポート大阪801号 特許・実用新案 意匠 商標 訴訟 コンサルティング 

金原商標登録事務所

〒152-0034 東京都目黒区緑が丘一丁目16番7号 意匠 商標 外国商標 訴訟 コンサルティング