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令和7(行ケ)10115審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年4月22日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社NOBORDER
被告株式会社Spectee
法令 商標権
キーワード 無効20回
審決11回
商標権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に 顕著である。

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判決文

令和8年4月22日判決言渡
令和7年(行ケ)第10115号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年3月18日
判 決
原 告 株式会社NO BORDER
同訴訟代理人弁護士 喜 田 村 洋 一
同訴訟代理人弁理士 潮 崎 宗
10 同 渡 辺 貴 康
被 告 株式会社Spectee
同訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫
15 同 平 塚 健 士 朗
同 山 田 亮
同訴訟代理人弁理士 大 森 桂 子
主 文
1 原告の請求を棄却する。
20 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2024-890029号事件について令和7年10月15日
にした審決のうち、「登録第6152270号の指定役務中、第42類「全指
25 定役務」についての登録を無効とする。」とした部分を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に
顕著である。)
(1) 原告が商標権を有する登録第6152270号商標(以下「本件商標」と
いう。)は、別紙「商標目録」記載のとおり、「AIアナウンサー」を標準文
5 字で表した商標であり、同目録記載の役務を指定役務として、平成30年4
月19日に登録出願し、平成31年4月22日(以下「本件査定日」とい
う。)に登録査定、令和元年6月14日に設定登録されたものである。
(2) 被告は、令和6年6月14日、特許庁に対し、本件商標の指定役務のうち、
別紙商標目録に下線を付した役務について、商標法(以下「法」という。)
10 3条1項3号及び4条1項16号並びに同項7号に該当すると主張して、同
役務につき本件商標の商標登録を無効とする審判を請求した(以下「本件審
判請求」という。)。
特許庁は、本件審判請求を無効2024-890029号事件として審理
し、令和7年10月15日、「登録第6152270号の指定役務中、第4
15 2類『全指定役務』についての登録を無効とする。その余の指定役務につい
ての審判請求は成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、
その謄本は、同月24日、原告に送達された。
(3) 原告は、令和7年11月21日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提
起した。
20 2 本件審決の理由の要旨
本件審決は、被告(請求人)が主張する無効理由のうち、本件商標は、そ
の指定役務中、第42類「全指定役務」(電子計算機用プログラムの設計・作
成又は保守、電子計算機用プログラムの提供。以下「無効対象指定役務」と
いう。)につき、法3条1項3号及び4条1項16号に該当して無効であると
25 し、その余は無効理由に該当しないとした。上記各号該当性に係る判断は、
以下のとおりである。
すな わち 、 本件 商標 は、 本件 査 定日 当時 、「A I (人 工 知能 )を 用い て
ニュース原稿の読み上げを行うシステム(プログラム)」を指すものであると
理解、認識されていたといえるから、本件商標を無効対象指定役務に使用し
た場合には、これらの役務が、AI(人工知能)を用いてニュース原稿の読
5 み上げを行うプログラムに係る役務であること、すなわち、役務の質を表示
したものと理解されるにとどまり、法3条1項3号に該当する。
また 、本 件 商標 を、 無効 対象 指 定役 務 中 、「A I (人 工 知能 )に 用い て
ニュース原稿の読み上げを行うプログラムに係る役務」以外の役務について
使用した場合には、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものと認めら
10 れるから、法4条1項16号に該当する。
第3 取消事由及びこれに関する当事者の主張
1 取消事由1(法3条1項3号該当性に関する判断の誤り)
【原告の主張】
「AIアナウンサー」の語は比喩的・多義的で、特定の役務が一義的に導
15 かれるものではなく、本件査定日当時、無効対象指定役務の質を直接的に表
示する語として認識されていたということはできないから、本件商標は法3
条1項3号「役務の…質」を表示する標章に該当しない。
すなわち、本件審決が認定の根拠としたインターネットの紹介記事(甲3、
5、7、10)においては、「AIアナウンサー」は、現実世界のアナウン
20 サーを擬人化した存在(キャラクター)を指すものとして用いられており、
役務(プログラム)の内容を記述する語としては用いられていない。
また、一般に、新しい語が一定の内容を指称するものとして認識されてい
る場合、辞書、用語辞典等において見出し語(索引語)として採録され又は
業界本、専門書等において解説中に一定の用語として現れるのが実情である
25 ところ、「AIアナウンサー」については、本件査定日当時、このような例
をほとんど確認することはできない。
【被告の主張】
証拠(甲3、5~14、16)によれば、「AIアナウンサー」の語は、
AIを活用したアナウンスシステム、あるいはこれを提供するサービスとい
う意味合いで用いられており、より広くいえば、AIを活用したアナウンス
5 システムに係る役務であること、すなわち無効対象指定役務に関わる役務の
質を表示したものと理解される。
したがって、本件審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(法4条1項16号該当性に関する判断の誤り)
【原告の主張】
10 取引者、需要者が本件商標から無効対象指定役務の具体的な質を一義的に
把握し、これと異なる役務が提供された場合に質の誤認を生ずるという関係
までは認められないから、本件商標は法4条1項16号「役務の質の誤認を
生ずるおそれがある商標」には該当しない。
【被告の主張】
15 本件商標を無効対象指定役務に使用すると、これに接する取引者、需要者
は、AIを活用したアナウンスシステムとの役務の質を表示したものと理解
するから、本件商標を、AIを活用したアナウンスシステム以外の役務に付
して使用する場合には「役務の質の誤認を生ずるおそれ」がある。
第4 当裁判所の判断
20 1 本願商標は「AIアナウンサー」の文字を標準文字で表してなる商標であ
るところ、その構成上、「AI」と「アナウンサー」を組み合わせたものと容
易に看取できる。そして、証拠(甲53の1、2)及び弁論の全趣旨によれ
ば、「AI」は人工知能(artificial intelligence)を意味する語、「アナウ
ンサー」はラジオやテレビでニュースを読んだり、司会・実況放送などをし
25 たりする人や、劇場・競技場・駅頭などで、マイクで放送する人を意味する
語として、本件査定日当時、無効対象指定役務の取引者、需要者の間におい
て広く理解されていたと認めることができる。
これに加え、後掲の証拠によれば、本件査定日(平成31年4月22日)
当時、無効対象指定役務に関連して、次の事実を認めることができる。
(1) エフエム和歌山は、平成29年7月、米 Amazon Web Services(AWS)の
5 AIサービスである Amazon Polly を活用し、ニュースや天気予報を自動で
読み上げるプログラムを開発し、これを利用したラジオ放送を開始した。同
ラジオ放送及びプログラムを紹介するネットニュースでは、「“AIアナウン
サー”がラジオ放送」、「『AIアナウンサー』年間1000円の衝撃」、「エ
フエム和歌山が『ナナコ』と名付けたAIアナウンサーの運用を開始した」
10 などと紹介された。(甲3、7)
(2) 被告は、平成29年11月、AI技術を活用して、より人に近い音声で原
稿を読み上げたり、会話したりすることができるプログラムを開発し、当該
プログラムを「AIアナウンサー『荒木ゆい』」として発表した。同発表を
紹介するネットニュースでは、「AIアナウンサーはニュースだけでなく、
15 ドキュメンタリーやバラエティ番組のナレーション、劇場や美術館などの館
内放送、観光案内、結婚式やその他式典での司会など、さまざまなシーンで
の活用を見込んでいるという。」などと紹介された。(甲4~6、8)
(3) NHKは、平成30年3月、ロボット実況の技術をベースに開発した、人
間のアナウンサーに近い音声でニュース原稿を読み上げる新サービスを開始
20 することを発表した。同サービスを紹介するネットニュースでは、「NHK
に“AIアナウンサー”が登場 『ヨミ子さん』がニュースを読みます」、
「AIアナウンサーが発展して速報に対応できるようになると、NHKス
タッフの働き方改革の一環にも繋がる」などと紹介された。(甲9~11)
これらの事実によれば、本件査定日当時、①ニュース原稿等を人間のアナウ
25 ンサ-に代わって読み上げることのできるプログラムが複数開発され、実際の
ニュース番組等で使用されていたこと、②これらのプログラムは、これまで人
間のアナウンサーによって行われていたアナウンスをAIが代わりに行うこと
から「AIアナウンサー」と称されたことが認められる。そうすると、本件査
定日当時、本件商標である「AIアナウンサー」が、無効対象指定役務である
電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、電子計算機用プログラムの提
5 供に係る業務に使用された場合、取引者、需要者は、AI(人工知能)を用い
てニュース原稿の読み上げを行うシステム(プログラム)の設計や提供、保守
に係る役務、すなわち役務の質を指すものと認識したと認めることができる。
加えて、本件商標は、「AIアナウンサー」の文字を標準文字で表してなり、
格別の識別力を付加する要素はないから、役務の質を「普通に用いられる方法
10 で表示する標章のみからなる商標」に当たる。
したがって、本件商標は、本件査定日において、無効対象指定役務につき、
役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、ま
た「AIアナウンサー」業務とは関連しない役務については、役務の質につい
ての誤認を生じさせるおそれがあると認められるため、法3条1項3号及び4
15 条1項16号に該当する。
2 これに対し、原告は、本件査定日当時、「AIアナウンサー」の語は比喩
的・多義的で、現実世界のアナウンサーを擬人化した存在(前記1(1)~(3)の
「ナナコ」、「荒木ゆい」、「ヨミ子さん」)を指すものとしても用いられて
おり、役務(プログラム)の内容を記述する語として一義的ではなかったから、
20 本件商標は役務の質を表示するものではないと主張する。
しかしながら、「AIアナウンサー」の語が原告の主張するような意味で用
いられていたとしても、上記1で認定したとおり、本件査定日当時、既にAI
を用いてニュース原稿の読み上げを行うシステムが開発・実用化され、「AI
アナウンサー」という名称で報道されていたことに加え、「AI」(人工知能)
25 が電子計算機用プログラム(コンピュータプログラム)の一種であることも知
られていたことからすれば、本件商標が無効対象指定役務に使用された場合に、
その役務の内容を認識できないほど、比喩的・多義的であったとは認められな
い。
したがって、原告の上記主張には理由がない。
3 結論
5 以上のとおり、本件審決についての原告の取消事由に関する主張は採用でき
ず、そのほかに本件において本件審決を取り消すべき事由は認められない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとお
り判決する。
10 知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
長 谷 川 浩 二
裁判官
岩 井 直 幸
20 裁判官
安 岡 美 香 子

(別紙)
商標目録
登録商標(標準文字):
5 AIアナウンサー
指定役務:
第35類 新聞記事情報の提供,書類の複製,経営の診断又は経営に関する助
言,市場調査又は分析,広告業,文書又は磁気テープのファイリン
10 グ,コンピュータデータベースへの情報編集
第38類 報道をする者に対するニュースの供給,電気通信(「放送」を除
く。),電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与
第41類 技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電
子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯
15 楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除
く。),放送番組の制作における演出
第42類 電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログ
ラムの提供

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