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令和7(ワ)70274損害賠償請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 令和8年4月24日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社Be
被告Aⅰ
法令 著作権
著作権法114条3項2回
著作権法27条1回
著作権法2条1項1号1回
キーワード 侵害8回
損害賠償2回
許諾1回
主文 1 被告は、原告に対し、6万5000円及びこれに対する令和4年7月13日
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余は被告の負
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。 )の著作権を 有する原告が、被告が自身の管理するツイッター(インターネットを利用して ツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク。 現在の名称は「X」であるが、以下、名称変更の前後を問わず「ツイッター」 という。 )のアカウント(以下「被告アカウント」という。 )のアイコンの画像 として、本件写真をトリミングした写真を掲載した行為が、原告の著作権(複 製権及び公衆送信権)を侵害すると主張して、被告に対し、不法行為に基づき、 損害賠償金88万6674円及びこれに対する被告による本件写真をトリミン グした写真の掲載日である令和4年7月13日から支払済みまで民法所定の年 3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和8年4月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和7年(ワ)第70274号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和8年2月12日
判 決
原 告 株 式 会 社 B e
同訴訟代理人弁護士 齋 藤 理 央

被 告 Aⅰ
主 文
1 被告は、原告に対し、6万5000円及びこれに対する令和4年7月13日
15 から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余は被告の負
担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
20 事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は、原告に対し、88万6674円及びこれに対する令和4年7月13
日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
25 1 事案の要旨
本件は、別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の著作権を
有する原告が、被告が自身の管理するツイッター(インターネットを利用して
ツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク。
現在の名称は「X」であるが、以下、名称変更の前後を問わず「ツイッター」
という。)のアカウント(以下「被告アカウント」という。)のアイコンの画像
5 として、本件写真をトリミングした写真を掲載した行為が、原告の著作権(複
製権及び公衆送信権)を侵害すると主張して、被告に対し、不法行為に基づき、
損害賠償金88万6674円及びこれに対する被告による本件写真をトリミン
グした写真の掲載日である令和4年7月13日から支払済みまで民法所定の年
3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
10 2 前提事実(当事者間に争いのない事実、当裁判所に顕著な事実並びに後掲証
拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴ 当事者等
ア 原告は、化粧品、美容用品、食品、飲料等の企画、製造及び販売等を目
的とする株式会社である。
15 イ 被告は、別紙投稿記事目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)を
行った者である。
⑵ 本件写真
本件写真は、原告が、販売する商品の写真として、プロカメラマン(以下
「本件カメラマン」という。)に撮影を依頼し、令和元年7月19日に現像
20 されたものである。(甲18、20)
⑶ 写真撮影業務委託基本契約の存在
原告と本件カメラマンは、令和3年9月21日、原告が、本件カメラマン
に対し、原告の取り扱う商品等の写真の撮影及びデータ加工を委託する旨の
写真撮影業務委託基本契約書(以下「本件契約書」という。)を交わした。
25 本件契約書には、本件カメラマンによる写真の撮影及びデータ加工業務を
通じて生じた写真等の著作権(著作権法27条及び28条の権利を含む。)
等の権利は、発生と同時に原告に帰属する旨が定められている。(甲19)
⑷ 被告による投稿
被告は、本件投稿日である令和4年7月13日から令和7年10月9日ま
での間、被告アカウントのアイコン画像として、本件写真をトリミングした
5 写真を使用していた。
3 争点
⑴ 著作権侵害の成否(争点1)
ア 本件写真の著作物性(争点1-1)
イ 本件写真に係る著作権の帰属(争点1-2)
10 ⑵ 損害の発生及びその額(争点2)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(著作権侵害の成否)について
⑴ 争点1-1(本件写真の著作物性)について
(原告の主張)
15 本件写真は、原告の販売する商品の写真であるところ、光線や陰影の付け
方によって極めて鮮明に商品を立体的に描き出し流麗に映えさせる創意工夫
がされており、創作性が認められる。
(被告の主張)
本件写真は、単純な白背景で商品の正面を撮影した写真であり、構図は、
20 被写体を中央に正対させ、平面的に配置したのみであって、創作的な思想又
は感情の表現は含まれていないから、著作物性は認められない。
⑵ 争点1-2(本件写真に係る著作権の帰属)について
(原告の主張)
原告は、本件カメラマンから本件写真の著作権の譲渡を受けている。
25 原告と本件カメラマンとの間では、本件契約書を交わす前から、同契約書
に記載された内容の委託契約が存在したところ、本件契約書はこれを確認す
るために、改めて交わされたものである。
そして、本件契約書を交わす前に撮影された本件写真についても、現像さ
れた令和元年7月19日の時点で、その著作権は、本件カメラマンから原告
に対して譲渡された。
5 (被告の主張)
本件契約書の契約締結日は、本件写真の現像日よりも後であるところ、本
件契約書には、契約の効力が、締結日以前に撮影された写真にまで遡及する
ことは定められていないから、本件写真の著作権が原告に譲渡されたとはい
えない。
10 2 争点2(損害の発生及びその額)について
(原告の主張)
⑴ 著作権法114条3項による使用料相当額 55万円
原告において、本件投稿のように原告のブランド価値を毀損するような
利用を許諾することはあり得ず、その損害は、ブランド価値の填補を含む
15 使用料相当額として55万円が相当である。
⑵ 特定費用 25万6068円
原告は、被告を特定するために発信者情報開示請求及び弁護士会照会を
行ったことで以下の費用を支出しており、その合計である25万6068
円が損害となる。
20 ア 発信者情報開示請求に係る費用 13万7500円
イ 弁護士会照会費用 11万円
ウ 弁護士会照会実費 8568円
⑶ 弁護士費用 8万0606円
上記⑴及び⑵の合計額である80万6068円の10%に当たる8万06
25 06円が本件訴訟の弁護士費用となる。
(被告の主張)
⑴ 使用料相当額について
否認ないし争う。
本件写真の商品は、本件投稿の1年前に販売終了しており、ブランド価
値の毀損は認められないし、仮にブランド価値の毀損があったとしても、
5 それを損害に含めるべきではない。
⑵ 特定費用及び弁護士費用について
否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(著作権侵害の成否)について
10 ⑴ 争点1-1(本件写真の著作物性)について
前提事実⑵、証拠(甲13、18、甲A7)及び弁論の全趣旨によれば、
本件写真は、本件カメラマンが、原告の販売する商品を被写体として、配置
や陰影などを調整して撮影したものであり、撮影者である本件カメラマンの
個性が現れたものであると認められる。
15 そうすると、本件写真は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であ
り、かつ、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であると認め
られるから、「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当する。
⑵ 争点1-2(本件写真に係る著作権の帰属)について
証拠(甲18、19、甲A13)及び弁論の全趣旨によれば、本件カメラ
20 マンは、原告から委託を受けて撮影した商品の写真の全てについて、その著
作権を原告に譲渡していたこと、本件契約書は、締結日である令和3年9月
21日よりも前から存在した原告と本件カメラマンとの間の委託契約を確認
するために、改めて交わされたものであったことが認められる。
そして、前提事実⑵、証拠(甲18)及び弁論の全趣旨によれば、本件写
25 真は、本件カメラマンが、原告からの委託により、原告の商品を撮影したも
のであることが認められるから、著作権の帰属に関する本件契約書の規定に
も照らせば、本件写真の著作権は、本件カメラマンが本件写真を現像した令
和元年7月19日時点で、本件カメラマンから原告に対して譲渡されたもの
と認められる。
したがって、原告は、本件写真の著作権者であると認められる。
5 ⑶ 原告の著作権の侵害について
前提事実⑷及び証拠(甲1、2、20)によれば、被告のツイッターのア
カウントのアイコン画像として掲載した写真は、本件写真をトリミングして
作成されたものであり、本件写真の本質的特徴を直接感得することができる
ものであると認められる。
10 そうすると、被告による本件投稿は、本件写真を複製し、公衆送信したも
のといえるから、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものと
認められる。
2 争点2(損害の発生及びその額)について
⑴ 著作権法114条3項による使用料相当額
15 証拠(甲A14)によれば、協同組合日本写真家ユニオンが定める使用料
規程では、著作物をデジタル記録媒体に複製し、アイコンとして使用する場
合の使用料は、12か月以内で1万5000円、使用期間が12か月を超え
るときは次年度より毎年5000円とされていることが認められる。
そして、前提事実⑷のとおり、被告は、令和4年7月13日から令和7年
20 10月9日まで約3年3か月弱の間、本件写真をトリミングした写真を被告
のツイッターのアカウントのアイコン画像として利用していたこと、他方で、
本件写真はプロカメラマンが撮影したものではあるものの、商品を正面から
撮影したもので、その構図や内容に照らし、創作性が高いとまではいえない
こと、被告による本件写真の利用態様など本件に現れた諸事情を総合考慮す
25 ると、著作権侵害による損害額(使用料相当額)は、5万円と認めるのが相
当である。
⑵ 特定費用
インターネット上の投稿の発信者の特定に当たっては、これに必要な情報
の開示に向けた開示命令の申立て等各種手続が必要であり、そのための手続
費用を要するものであるし、また、被害者が自らこのような手続を行うこと
5 は困難であり、弁護士を選任することも少なくない。このため、これらの手
続に要した費用は、相当因果関係の認められる範囲内において、当該投稿に
よる損害と認めることができる。
証拠(甲27~29、甲A2、15~18)によれば、原告は、原告代理
人に対し、被告のアカウントを含む6件のアカウントの発信者情報開示請求
10 の手続を委任し、発信者情報開示請求に係る報酬として55万円を、弁護士
会照会費用として1件当たり8568円を支払っていることが認められる。
そして、被告により侵害されたとする権利の内容、発信者情報開示請求の
対象が被告以外のアカウントを含むものであること、上記各手続における委
任事務の内容その他一切の事情を踏まえると、被告の不法行為と相当因果関
15 係のある特定費用は1万円と認めるのが相当である。
⑶ 弁護士費用
原告は本件訴訟の追行を原告代理人に委任しているところ、被告の不法行
為と相当因果関係のある本件訴訟の弁護士費用は5000円と認めるのが相
当である。
20 ⑷ 小括
したがって、本件投稿と相当因果関係がある原告の損害は、6万5000
円と認められる。
第5 結論
以上によれば、原告の請求は主文掲記の限度で理由があるから、これを認容
25 し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり
判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
澁 谷 勝 海

裁判官
本 井 修 平

裁判官
浅 川 浩 輝

(別紙)
写真目録
ACTIVE商品写真
撮影機材 Canon EOS 5D Mark2
5 (シリアルナンバー 3811800110)

以上

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