知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(行ケ)10114 審決取消請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和7(行ケ)10114審決取消請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年6月4日
事件種別 民事
当事者 原告CASE特許株式会社
被告特許庁長官
法令 特許権
特許法29条1項3号5回
キーワード 審決27回
実施5回
進歩性4回
分割4回
訂正審判3回
新規性3回
特許権1回
無効1回
優先権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は、原告が、特許請求の範囲についてされた訂正審判請求を不成立とした 審決の取消しを求める事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和8年6月4日判決言渡
令和7年(行ケ)第10114号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年4月16日
判 決
原 告 CASE特許株式会社
同訴訟代理人弁護士 高 橋 雄 一 郎
同訴訟代理人弁理士 望 月 尚 子
被 告 特 許 庁 長 官
同指定代理人 浅 野 麻 木
遠 藤 秀 明
西 山 智 宏
15 小 川 将 之
北 村 英 隆
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事実及び理由
第1 請求
特許庁が訂正2024-390094号事件について令和7年10月16日
にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
25 本件は、原告が、特許請求の範囲についてされた訂正審判請求を不成立とした
審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕著
である。)
⑴ 特許
特許第7270307号(以下「本件特許」という。)は、平成26年9月3
5 0日(以下「本件優先日」という。)にされた特許出願に基づく優先権を主張し
て平成27年9月29日にされた出願(特願2016-552064号)の分
割出願として、平成30年10月29日にされた出願(特願2018-203
031号)の分割出願として、令和元年11月6日にされた出願(特願201
9-201651号)の分割出願として、令和3年3月9日にされた出願(特
10 願2021-37384号)の分割出願として、令和4年1月18日に出願(特
願2022-5635号。以下、同出願の願書に添付された明細書及び図面を
併せて「本件明細書等」といい、本件明細書等の段落番号及び図面の番号を【】
の記号を用いて示す。)がされ、令和5年4月27日に設定登録がされた(請
求項の数27)。
15 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、2及び7の記載は、別紙1(特許
請求の範囲)の「前」欄に記載のとおりである。
⑵ 訂正審判請求
原告は、本件特許に係る特許の特許権者であるところ、令和6年8月19日、
本件特許の特許請求の範囲を訂正する訂正審判請求をし(以下、この請求に係
20 る訂正を「本件訂正」という。)、特許庁は、これを訂正2024-39009
4号事件として審理した。
原告の求めた訂正事項は、次の訂正事項1から3までのとおりである(下線
部は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
25 特許請求の範囲の請求項1に「前記運転モード設定部は、前記運転モードが
前記高度自動化モードに設定されているときに、前記乗員が前記シートベルト
を装着していないと前記運転モード設定部が判断すると、前記運転モードを前
記基本モードに切り替えるように構成されており、」と記載されているのを、
「前記運転モード設定部は、前記運転モードが前記高度自動化モードに設定さ
れているときに、前記乗員が前記シートベルトを装着していないと前記運転モ
5 ード設定部が判断すると、前記運転モードを前記基本モードに切り替え、高度
自動化切替条件が成立した場合、自動で前記基本モードから前記高度自動化モ
ードに切り替えるように構成されており、」と訂正する(請求項1の記載を引
用する請求項7から27までも同様に訂正する)。
(訂正事項2)
10 特許請求の範囲の請求項2に「前記運転モード設定部は、前記運転モードが
前記高度自動化モードに設定されているときに、前記急ブレーキ判断部により
前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記運転モードを前記基本モード
に切り替えるように構成されており、」と記載されているのを、
「前記運転モー
ド設定部は、前記運転モードが前記高度自動化モードに設定されているときに、
15 前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記
運転モードを前記基本モードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、
自動で前記基本モードから前記高度自動化モードに切り替えるように構成さ
れており、」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項7から27までも
同様に訂正する)。
20 (訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3に「前記運転モード設定部は、前記規定動作判断
部によって前記運転者が前記規定動作を行っていると判断された場合に、前記
運転モードを前記基本モードに切り替えるように構成されており、」と記載さ
れているのを、「前記運転モード設定部は、前記規定動作判断部によって前記
25 運転者が前記規定動作を行っていると判断された場合に、前記運転モードを前
記基本モードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、自動で前記基
本モードから前記高度自動化モードに切り替えるように構成されており、」と
訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4から27までも同様に訂正す
る)。
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2及び7の記載(以下、本件訂正
5 後の請求項に記載された発明を請求項の番号に応じて「訂正発明1」などとい
う。)は、別紙1(特許請求の範囲)の「後」欄に記載のとおりである(なお、
便宜上、訂正発明1及び2を分説し、各構成要件に1Aから2Iまでの符号を
付した。以下、各構成要件を「構成要件1A」などという。)。
⑶ 審決
10 特許庁は、令和7年10月16日、
「本件審判の請求は、成り立たない。」と
の審決(以下「本件審決」という。)をして、その謄本は、同月24日、原告に
送達された。
原告は、同年11月20日、本件審決の取消しを求める訴えを提起した。
2 本件審決の理由の要旨
15 ⑴ 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等
に記載された事項の範囲内における訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張
し又は変更するものに当たらない。
⑵ 独立特許要件
20 ア 甲1に記載された発明の認定
本件優先日前に公開された甲1(LEGACYアイサイト取扱説明書)には、次
の引用発明1及び2が記載されている。
(引用発明1)
「EyeSightであって、2台のCCDカメラを用いたステレオ画像処理により、
25 先行車や障害物、車線などを認識するステレオカメラを備え、運転者の判断
を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能がシス
テムによって動作し、全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速ク
ルーズコントロールが自動解除される場合があり、もしくはEyeSightが一時
停止されて定速クルーズコントロールを除くEyeSightの全ての機能が使用
できない場合があり、運転席のシートベルトを外したとき全車速追従機能付
5 クルーズコントロール、定速クルーズコントロールが自動的に解除され、
EyeSightが一次停止された原因が改善されると自動的にEyeSightが復帰し、
さまざまな前記機能は全車速追従機能付クルーズコントロール、プリクラッ
シュブレーキ、AT誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発
進お知らせ、定速クルーズコントロールを含む、EyeSight。」
10 (引用発明2)
「EyeSightであって、2台のCCDカメラを用いたステレオ画像処理により、
先行車や障害物、車線などを認識するステレオカメラを備え、運転者の判断
を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能がシス
テムによって動作し、全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速ク
15 ルーズコントロールが自動解除される場合があり、もしくはEyeSightが一時
停止されて定速クルーズコントロールを除くEyeSightの全ての機能が使用
できない場合があり、エンジン始動後、プリクラッシュ2次ブレーキが3回
作動したときにEyeSightが一時停止され、EyeSightが一次停止された原因が
改善されると自動的にEyeSightが復帰し、さまざまな前記機能は全車速追従
20 機能付クルーズコントロール、プリクラッシュブレーキ、AT誤発進抑制制御、
車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発進お知らせ、定速クルーズコントロ
ールを含む、EyeSight。」
イ 訂正発明1について
(ア) 訂正発明1と引用発明1を対比すると、別紙2(訂正発明1と引用発明
25 1の対比)に記載のとおりである。
以上によると、訂正発明1と引用発明1は、全ての点で一致し、相違点
はなく、訂正発明1は、特許法29条1項3号の規定により、特許を受け
ることができない。
(イ) 次に、訂正発明1の構成要件1Hのうち、
(a)の「自動発進」
「制御」、
(d)の「車線変更制御」、
(e)の「右左折制御」及び(g)の「駐車制
5 御」について検討すると、引用発明1は、運転支援機能を提供するもので
あるところ、運転支援機能の中には、ドライバーが行う外部認識、判断、
操作の一部を、自動で行うものが搭載されている。また、運転の自動化に
関する技術分野において、自動車の基本的な性能である「走る」
「曲がる」
「止まる」を支援するために、外部認識、判断、操作の全てもしくは一部
10 をシステムが行うことで、発進、車線変更、右左折又は駐車を実行するこ
とは周知技術である。
引用発明1において、運転者の判断を助け、安全・快適で疲れの少ない
運転を可能にするために、発進、車線変更、右左折又は駐車を実行する機
能を採用することには、十分な動機付けが存在し、かかる機能の採用に阻
15 害要因も存在しない。
したがって、引用発明1における運転動作として、自動発進制御、車線
変更制御、右左折制御又は駐車制御を採用することは、当業者が適宜なし
得たことにすぎない。
よって、訂正発明1は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて当業者
20 が容易に発明をすることができたものである。
ウ 訂正発明2について
(ア) 訂正発明2と引用発明2を対比すると、別紙3(訂正発明2と引用発明
2の対比)に記載のとおりである。
以上によると、訂正発明2と引用発明2は、全ての点で一致し、相違点
25 はなく、訂正発明2は、特許法29条1項3号の規定により、特許を受け
ることができない。
(イ) 次に、訂正発明2の構成要件2Hのうち、
(a)の「自動発進」
「制御」、
(d)の「車線変更制御」、
(e)の「右左折制御」及び(g)の「駐車制
御」について検討すると、引用発明2は、運転支援機能を提供するもので
あるところ、運転支援機能の中には、ドライバーが行う外部認識、判断、
5 操作の一部を、自動で行うものが搭載されている。また、運転の自動化に
関する技術分野において、自動車の基本的な性能である「走る」
「曲がる」
「止まる」を支援するために、外部認識、判断、操作の全てもしくは一部
をシステムが行うことで、発進、車線変更、右左折又は駐車を実行するこ
とは周知技術である。
10 引用発明2において、運転者の判断を助け、安全・快適で疲れの少ない
運転を可能にするために、発進、車線変更、右左折又は駐車を実行する機
能を採用することには、十分な動機付けが存在し、かかる機能の採用に阻
害要因も存在しない。
したがって、引用発明2における運転動作として、自動発進制御、車線
15 変更制御、右左折制御又は駐車制御を採用することは、当業者が適宜なし
得たことに過ぎない。
よって、訂正発明2は、引用発明2及び上記周知技術に基づいて当業者
が容易に発明をすることができたものである。
エ 訂正発明7について
20 甲1には、実質的にEyeSightを備えた車両が記載されているから、次の引
用発明3が記載されている。
(引用発明3)
「引用発明1又は引用発明2のEyeSightを備える車両。」
訂正発明7と引用発明3を対比すると、全ての点で一致し、相違点はない。
25 よって、訂正発明7は、特許法29条1項3号の規定により、特許を受ける
ことができない。
また、訂正発明7は、引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に
発明をすることができたものである。
オ 独立特許要件についてのまとめ
訂正発明1、2及び7は、特許法29条1項3号又は同条2項の規定によ
5 り、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではないから、
訂正事項1及び2は、いずれも同法126条7項の規定に適合しない。
第3 原告主張の審決取消事由(独立特許要件についての認定判断の誤り)
1 相違点を看過した誤り(理由1)
⑴ 本件審決による引用発明1の認定
10 本件審決は、引用発明1において各種機能が動作する状態を4つの態様に区
別して認定している。すなわち、全ての機能が動作可能な態様が態様1、全車
速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロールが解除
されて他の機能のみが動作可能な態様が態様2、EyeSightが一時停止されて定
速クルーズコントロールを除くEyeSightの全ての機能が動作しない態様が態
15 様3、全ての機能が動作しない態様が態様4である。
また、本件審決は、上記各態様の遷移について、次のとおり認定している。
すなわち、全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコント
ロールが自動解除される場合(場合1)には、態様1から態様2へ遷移し、又
は態様3から態様4へ遷移する。EyeSightが一時停止される場合(場合2)に
20 は、態様1から態様3へ遷移し、又は態様2から態様4へ遷移する。EyeSight
が一時停止された原因が改善された場合(場合3)には、態様3から態様1へ
遷移し、又は態様4から態様2へ遷移する。
⑵ 看過相違点
原告は、本件審決による上記⑴の認定について争わない。
25 しかし、訂正発明1は、「前記運転モード設定部は、前記運転モードが前記
高度自動化モードに設定されているときに、前記乗員が前記シートベルトを装
着していないと前記運転モード設定部が判断すると、前記運転モードを前記基
本モードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、自動で前記基本モ
ードから前記高度自動化モードに切り替える」というものである。ここで、特
許請求の範囲には「前記」と記載されているのであるから、訂正発明1におけ
5 る「基本モード」及び「高度自動化モード」という語は、それぞれ、訂正発明
1の全体を通じて、同一の機能が動作し又は動作しない態様(モード)を指す
と解されるべきである。
引用発明1では、
「シートベルトを装着していない」と判断される場合とは、
「場合1」に当たるから、態様1から態様2へ遷移し、又は態様3から態様4
10 へ遷移するものである。他方で、EyeSightが一時停止された原因が改善された
場合は、
「場合3」に当たるから、態様3から態様1へ遷移し、又は態様4から
態様2へ遷移するものである。
このように、引用発明1では、同一の機能が動作し又は動作しない態様に復
帰するものではないから、訂正発明1と引用発明1には、本件審決が看過した
15 相違点(訂正発明1では「高度自動化切替条件が成立した場合、自動で前記基
本モードから前記高度自動化モードに切り替えるように構成されている」)が
ある。したがって、本件審決には、結論に影響を及ぼす誤りがある。
2 一致点及び相違点の認定の欠落並びに相違点に係る容易想到性の判断の誤り
(理由2)
20 ⑴ 相違点の認定の欠落
本件審決は、訂正発明1、2及び7と引用発明1から3まで(以下、併せて
「引用発明」という。)を対比すると、それぞれ全ての点で一致し、相違点はな
いとしながら、その後に、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすること
ができたものとしている。このように、本件審決は、新規性欠如の判断をして
25 いるのか、進歩性欠如の判断をしているのか不明であり、混乱が見られる。
正しい認定によると、訂正発明1、2及び7と引用発明との間には、次の相
違点が認められるべきである。
(相違点)
訂正発明1、2及び7において、前記高度自動化モードにおいて自動で実行
するように設定されている前記運転動作は、
「(a)前記車両を発進又は停止さ
5 せる自動発進/停止制御であって、信号機の色が赤又は黄の場合、前方に踏切
を認識して遮断機が下りていることを認識した場合、又は、前方に障害物を認
識した場合に前記車両を停止させる自動発進/停止制御、(d)前記車両に車
線変更を行わせる車線変更制御、(e)前記車両に右折又は左折を行わせる右
左折制御、又は(g)前記車両を目標駐車位置に駐車させる駐車制御を含む」
10 点。
⑵ 動機付けの不存在
引用発明は、先進安全技術(ASV)を体現した車に関するものであるため、
先進安全技術とは異なる目的から自動化を推し進める自動運転技術を単純に
引用発明に取り入れる動機付けはない。
15 また、引用発明は、現実に販売された自動車の取扱説明書であり、その性質
上、車の各種機能の技術的な最適化が極限まで施されているため、機能の一部
を変更又は追加する動機付けはない。
⑶ 阻害要因の存在
引用発明の自動車は、そもそも側方の周囲情報を取得せず、前方の周囲情報
20 のみを取得して、その範囲で運転支援を行うものとしている。そうすると、引
用発明の自動車において、前方を認識するステレオカメラに加えて、側方を認
識するセンサーを設けることには阻害要因がある。そして、側方を認識するセ
ンサーがない車両に車線変更制御、右左折制御及び駐車制御といった各種制御
を適用することは不可能である。
25 ⑷ まとめ
以上のとおり、本件優先日当時、当業者において、相違点に係る引用発明の
構成から訂正発明1、2及び7の構成に想到することが容易であったというこ
とはできない。これと異なる本件審決の判断には、結論に影響を及ぼす誤りが
ある。
第4 被告の反論
5 1 相違点を看過した誤り(理由1)について
原告の主張は、訂正発明1の構成要件1Fにおける「高度自動化モード」及び
「基本モード」と、構成要件1Gにおける「高度自動化モード」及び「基本モー
ド」とは、それぞれの運転動作が厳格に一致しているものと解釈すべきことを前
提としている。しかし、特許請求の範囲及び本件明細書等の記載に照らし、その
10 ように解すべき根拠はないというべきである。
すなわち、特許請求の範囲には、
「高度自動化モード」から「基本モード」へと
遷移し、
「基本モード」から「高度自動化モード」へと遷移するに際して、それぞ
れのモードでの運転動作の数が完全に一致することを要する直接的な記載はな
いし、間接的に運転動作の数を完全に一致させるような記載もない。
15 上記のような記載は、本件明細書等の発明の詳細な説明にもうかがわれない。
訂正発明1は、必要なときに自動運転レベルを落として安全を確保することを課
題とするところ、その課題解決のためには、所定の条件成立時に「高度自動化モ
ード」から「基本モード」へ切り替える機能を有していれば十分であり、それぞ
れのモードにおいて運転動作の数が完全に一致する必要はない。
20 したがって、運転動作の種類の数が減少する遷移であれば、「高度自動化モー
ド」から「基本モード」への切替えに該当し、運転動作の種類の数が増加する遷
移であれば、
「基本モード」から「高度自動化モード」への切替えに該当すると解
すべきである。
引用発明1における「EyeSightが一時停止された原因が改善されると自動的に
25 EyeSightが復帰する」挙動は、態様3から態様1への遷移、又は、態様4から態
様2への遷移であるところ、いずれの遷移も、運転動作の種類の数が増加する遷
移であるから、訂正発明1における「高度自動化切替条件が成立した場合、自動
で前記基本モードから前記高度自動化モードに切り替える」ことに相当するとい
うべきである。したがって、本件審決が相違点を看過した旨の原告の主張には理
由がない。
5 2 一致点及び相違点の認定の欠落並びに相違点に係る容易想到性の判断の誤り
(理由2)について
⑴ 相違点の認定の欠落について
本件審決は、訂正発明の構成要件1H及び2Hに択一的に記載された構成の
うち、(a)に含まれる停止制御につき新規性欠如の判断を行い、その余の自
10 動発進、車線変更、右左折及び駐車につき進歩性欠如の判断を行っている。こ
のように、本件審決は、択一的発明の選択肢に応じて新規性と進歩性を区別し
て判断しているものであり、誤りはない。
⑵ 動機付けについて
先進安全技術(ASV)と自動運転技術とが密接に関わる分野であること、
15 運転支援と自動運転は、ドライバーとシステムの分担の比重が異なるものにす
ぎないこと、引用発明の目的が「運転者の判断を助け、安全・快適で疲れの少
ない運転を可能にする」ものであることなどから、先進安全技術に対して自動
運転技術を適用することに何らの困難性も認められず、むしろ強い動機付けが
あるといえ、本件審決の認定判断は正当である。
20 また、主引用例の種類によって進歩性判断の枠組みは異ならないから、引用
発明が現実に販売された自動車に関係するものであることは、動機付けを否定
する理由とはならないというべきである。
⑶ 阻害要因の存在について
原告は、引用発明において側方を認識するセンサーを設けることには阻害要
25 因があると主張するが、引用発明に周知技術である「車線変更制御、右左折制
御又は駐車制御」を適用することは、当業者が容易になし得たことであるとこ
ろ、車線変更制御、右左折制御又は駐車制御を行う車両に側方センサーを設け
る技術もまた周知技術であることから、引用発明において側方センサーを追加
することも、適宜なし得たことといえる。
第5 当裁判所の判断
5 1 訂正発明1及び2について
本件明細書等の記載によると、訂正発明1及び2については、次のとおりであ
る。
⑴ 訂正発明1及び2は、運転者による各種判断や操作などの、車両を走行させ
るために必要な運転者の各種運転動作のうち、一部又は全てを、運転者の操作
10 を要することなく自動で行わせることが可能な、自動運転制御装置に関する。
(【0002】)
⑵ 自動運転技術の最終目標の一つは、目的地を設定するだけで後は乗員が何ら
走行に関与することなく目的地へ到達できるようにすることであるが、それを
実現できるほどの信頼性の高いレベルにはまだ至っていない。信頼性が高いレ
15 ベルに至るまでは、自動運転技術を採用しつつも、必要に応じて、自動で実行
中の制御の一部又は全てを無効としてドライバーの操作に委ねることができ
ることが望ましい。また、自動で実行中の制御の一部又は全てを適切なタイミ
ングで停止させるようにできることが望ましい。
(【0005】~【0007】)
⑶ かかる課題を解決するため、訂正発明1及び2に係る自動運転制御装置は、
20 周囲情報取得部と、運転モード設定部と、自動制御部とを備える。運転モード
設定部は、車両の運転モードを、高度自動化モード(車両の走行に必要な複数
種類の運転動作の一部又は全てを周囲情報に基づいて自動で実行する運転モ
ード)及び基本モード(自動で実行する運転動作の種類が高度自動化モードよ
りも少ないかゼロである運転モード)のいずれかに設定する。高度自動化モー
25 ド中に基本モード切替条件が成立した場合は基本モードに切り替わる。運転モ
ードが基本モードの場合に、あらかじめ設定した高度自動化切替条件が成立し
た場合、運転モードを高度自動化モードに切り替えるようにしてもよい。
(【0
008】~【0011】)
⑷ このように構成された自動運転制御装置によれば、高度自動化切替条件を適
宜設定することで、高度自動化モードと基本モードの切替えを適切なタイミン
5 グで行うことが可能となる。(【0013】)
⑸ 訂正発明1において、運転モード設定部は、車両の乗員がシートベルトを着
用しているか否かを判断するように構成され、運転モードが高度自動化モード
に設定されているときに、乗員がシートベルトを装着していないと判断すると、
運転モードを基本モードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、自
10 動で基本モードから高度自動化モードに切り替えるものである。また、訂正発
明1において、高度自動化モードにおいて自動で実行するように設定されてい
る運転動作には、自動発進/停止制御、車線変更制御、右左折制御又は駐車制
御が含まれる。(【0028】、【0111】~【0116】、請求項1)
⑹ 訂正発明2において、自動制御部により車両の急ブレーキが作動したか否か
15 を判断するように構成された急ブレーキ判断部を備え、運転モードが高度自動
化モードに設定されているときに、急ブレーキ判断部により車両の急ブレーキ
が作動したと判断されると、運転モードを基本モードに切り替え、高度自動化
切替条件が成立した場合、自動で基本モードから高度自動化モードに切り替え
るものである。また、訂正発明2において、高度自動化モードにおいて自動で
20 実行するように設定されている運転動作には、自動発進/停止制御、車線変更
制御、右左折制御又は駐車制御が含まれる。
(【0028】、
【0171】~【0
175】、請求項2)
2 理由1(相違点を看過した誤り)について
⑴ 原告は、訂正発明1における「基本モード」及び「高度自動化モード」とい
25 う語は、特許請求の範囲に「前記」と記載されていることからすると、訂正発
明1の全体を通じて、同一の機能が動作し又は動作しない態様(モード)を指
すものと解すべきとした上で、引用発明1では、シートベルトが装着されてい
ないと判断される場合に態様1から態様2へ遷移し、又は態様3から態様4に
遷移するが、EyeSightが一時停止された原因が改善された場合は態様3から態
様1へ遷移し、又は態様4から態様2に遷移するのであるから、同一の機能が
5 動作し又は動作しない態様に復帰するものではなく、本件審決はこの相違点を
看過した誤りがあると主張する。
⑵ そこで検討すると、訂正発明1に係る特許請求の範囲には、「高度自動化モ
ード」について、車両の走行に必要な複数種類の運転動作の一部又は全てを周
囲情報に基づいて自動で実行するモードであって、当該複数種類の運転動作に
10 車線変更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれるものをいい、
「基本モード」
について、自動で実行する運転動作の種類が高度自動化モードよりも少ないか
ゼロであるモードをいう旨が記載され(構成要件1C)、その後、構成要件1
F及び1Gにおいて「前記高度自動化モード」及び「前記基本モード」として
再掲されているが、運転動作の数及び種類の組合せが、訂正発明1の全体を通
15 じて完全に一致することを要する旨の記載はない。
次に、発明の詳細な説明をみると、「課題を解決するための手段」において
は、「高度自動化モードとは、車両の走行に必要な複数種類の運転動作の一部
又は全てを周囲情報に基づいて自動で実行する運転モードである。基本モード
とは、自動で実行する運転動作の種類が高度自動化モードよりも少ないか若し
20 くはゼロである運転モードである。」
(【0008】)との記載はあるが、高度自
動化モード及び基本モードのそれぞれにおいて、運転動作の数及び種類の組合
せが、常に一致した状態であることを要する旨の記載はない。
かえって、
「発明を実施するための形態」においては、
「本実施形態では、高
度自動化モードにおいて上記7種類の自動制御機能のどれを実行させるかを
25 任意に設定することができる。」
(【0029】)、
「本実施形態において、高度自
動化モードとは、レベル1以上の自動運転レベルでの自動運転が行われる運転
モードである。一方、基本モードとは、高度自動化モードに対して相対的に自
動運転レベルが低い運転モードである。例えば、高度自動化モードがレベルn
の場合、基本モードは、レベルn-1~レベル0の何れかに設定可能である。」
(【0031】)、
「各運転モード毎のレベル設定は、運転モード毎に、運転席近
5 傍に設けられたレベル設定操作部45を操作することにより可能である。(中
略)そして、各運転モード毎に、現在設定されている自動運転レベルを任意に
設定変更することができる。」
(【0091】)などと、各運転モードにおける運
転動作の数及び種類の組合せを任意に変更できる実施形態が記載され、同組合
せが固定されている実施形態は開示されていない。
10 加えて、本件明細書等には、各運転モードにおける運転動作の数及び種類の
組合せを、切替えの前後で完全に一致させることによる技術的意義や、それに
より奏される効果等に関する記載も見当たらない。
⑶ 以上によると、訂正発明1の「高度自動化モード」及び「基本モード」が、
訂正発明1の全体を通じて、常に、運転動作の数及び種類の組合せが一致する
15 ことを要するものと認めることはできず、
「高度自動化モード」とは、
「基本モ
ード」よりも機能する運転動作の数が多いものであれば足りるものと認めるの
が相当である。
したがって、本件審決には訂正発明1と引用発明1の相違点を看過した誤り
がある旨の原告の主張は採用することができない。
20 3 理由2(一致点及び相違点の認定の欠落並びに相違点に係る容易想到性の判断
の誤り)について
⑴ 訂正発明1、2及び7において、構成要件1H又は2Hに含まれる運転動作
として、前記車両を停止させる自動停止制御であって前方に障害物を認識した
場合に前記車両を停止させる停止制御(構成要件1H及び2Hの(a)参照)
25 を選択したときは、同停止制御は、引用発明におけるプリクラッシュブレーキ
に相当するから、引用発明と変わるところはない。そうすると、訂正発明1、
2及び7は、引用発明との間に相違点を認めることができないから、特許法2
9条1項3号により、特許を受けることができない。
⑵ 次に、訂正発明1、2及び7において、構成要件1H又は2Hに含まれる運
転動作として、上記⑴の停止制御以外の自動発進制御、車線変更制御、右左折
5 制御又は駐車制御(構成要件1H及び2Hの(a)、
(d)、
(e)及び(g)参
照)を選択したときは、訂正発明1、2及び7がこれらの運転動作を含むのに
対して、引用発明が備える機能は全車速追従機能付クルーズコントロール、プ
リクラッシュブレーキ、AT誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警報、先
行車発進お知らせ、定速クルーズコントロールを含む点において、両発明は相
10 違する。
⑶ 引用発明は、車両に搭載される運転支援技術に係る発明であるところ、証拠
(甲2~4)によると、運転支援と自動運転とは、外界認識、判断及び操作を、
運転者とシステムが分担して行うに際し、その分担の比重が異なるものにすぎ
ないこと、自動運転技術は、自動車の基本的な性能である「走る」「曲がる」
15 「止まる」を支援して、安心・安全で快適な運転環境を提供することを目指す
ものであること、自動運転技術の分野において、アダプティブ・クルーズ・コ
ントロール(ACC)、レーンキープアシスト、車線変更システム等を組み合
わせることにより、車両の発進、加速、操舵及び制動のうち複数又は全ての操
作を行うことは、いずれも、本件優先日当時、周知の技術的事項であったと認
20 められる。
そうすると、運転支援技術に関する引用発明において、安心・安全で快適な
運転環境を提供するため、同様の目的を有する自動運転技術の分野において周
知となっていた、車両の発進、加速、操舵及び制動といった操作を車両が自動
で行うといった技術的事項を適用して、相違点に係る構成、すなわち、車両の
25 走行に必要な複数種類の運転動作として、自動発進制御、車線変更制御、右左
折制御又は駐車制御を含むものとすることは、本件優先日当時、当業者が容易
に想到できたものというべきである。
⑷ これに対し、原告は、引用発明が先進安全技術を体現した車に関するもので
あり、先進安全技術とは異なる目的から自動化を推し進める自動運転技術を単
純に引用発明に取り入れる動機付けはないと主張する。しかし、先進安全技術
5 も自動運転技術も、車両の運転に必要な外界認識、判断及び操作を、運転者と
システムが分担するという点において変わるところはないから、自動運転技術
の分野における周知の技術的事項を、先進安全技術に係る引用発明に採用する
動機付けは一般に肯定されるというべきである。
また、原告は、引用発明が現実に販売された自動車の取扱説明書であって、
10 その性質上、車の各種機能の技術的な最適化が極限まで施されているから、機
能の一部を変更又は追加する動機付けはないと主張する。しかし、引用発明が
製品として完成されているものであるからといって、一般に、当業者が当該引
用発明の機能の一部を変更又は追加する動機付けがないということはできな
い。
15 さらに、原告は、引用発明の自動車が前方の周囲情報のみを取得し、その範
囲で運転支援を行うものであるから、引用発明に側方を認識するセンサーを設
けることには阻害要因があり、側方を認識するセンサーがない車両に車線変更
制御、右左折制御及び駐車制御といった各種制御を適用することは不可能であ
ると主張する。しかし、引用発明に係る自動車が前方の周囲情報のみを取得し
20 ていることは、これに加えて側方を認識するセンサーを設けることの阻害要因
となるものではない。当業者は、引用発明に係る車両の走行に必要な複数種類
の運転動作として、発進制御、車線変更制御、右左折制御又は駐車制御を含む
ものとするに際して、これを実現するため、周知技術に属する側方センサーを
車両に設けることを適宜行うことができたというべきである。
25 ⑸ 以上によると、訂正発明1、2及び7は、引用発明と同一であるか、本件優
先日当時、引用発明に周知の技術的事項を適用して、当業者が容易に発明をす
ることができたものと認められる。本件審決の認定説示は、これと同旨をいう
ものと認められる。
したがって、本件審決に、一致点及び相違点の認定の欠落並びに相違点に係
る容易想到性の判断に誤りがある旨の原告の主張は採用することができない。
5 4 結論
以上のとおり、原告の主張する取消事由には理由がなく、本件審決に取り消さ
れるべき違法はない。
よって、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文のと
おり判決する。
10 知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官
15 増 田 稔

裁判官
20 頼 晋 一

裁判官
25 天 野 研 司

(別紙1)
特許請求の範囲
前 後
【請求項1】 【請求項1】
車両に搭載される自動運転制御装置であって、 1A:車両に搭載される自動運転制御装置であ
って、
前記車両の周囲の情報である周囲情報を取得す 1B:前記車両の周囲の情報である周囲情報を
るように構成された周囲情報取得部と、 取得するように構成された周囲情報取得部と、
前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必 1C:前記車両の運転モードを、前記車両の走行
要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記 に必要な複数種類の運転動作の一部又は全てを
周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化 前記周囲情報に基づいて自動で実行する高度自
モード、及び、前記自動で実行する前記運転動作 動化モード、及び、前記自動で実行する前記運転
の種類が前記高度自動化モードよりも少ないか 動作の種類が前記高度自動化モードよりも少な
若しくはゼロである基本モード、の何れか一方 いか若しくはゼロである基本モード、の何れか
に設定するように構成された運転モード設定部 一方に設定するように構成された運転モード設
と、 定部と、
前記運転モード設定部により設定された前記運 1D:前記運転モード設定部により設定された
転モードに基づき、その運転モードにおいて前 前記運転モードに基づき、その運転モードにお
記自動で実行するように設定されている前記運 いて前記自動で実行するように設定されている
転動作を実行するように構成された自動制御部 前記運転動作を実行するように構成された自動
と、 制御部と、
を備え、 を備え、
前記運転モード設定部は、前記車両の乗員がシ 1E:前記運転モード設定部は、前記車両の乗員
ートベルトを装着しているか否かを判断するよ がシートベルトを装着しているか否かを判断す
うに構成され、 るように構成され、

前記運転モード設定部は、前記運転モードが前 1F:前記運転モード設定部は、前記運転モード
記高度自動化モードに設定されているときに、 が前記高度自動化モードに設定されているとき
前記乗員が前記シートベルトを装着していない に、前記乗員が前記シートベルトを装着してい
と前記運転モード設定部が判断すると、前記運 ないと前記運転モード設定部が判断すると、前
転モードを前記基本モードに切り替えるように 記運転モードを前記基本モードに切り替え、
構成されており、 1G:高度自動化切替条件が成立した場合、自動
で前記基本モードから前記高度自動化モードに
切り替えるように構成されており、
前記高度自動化モードにおいて自動で実行する 1H:前記高度自動化モードにおいて自動で実
ように設定されている前記運転動作は、(a)前 行するように設定されている前記運転動作は、
記車両を発進又は停止させる自動発進/停止制 (a)前記車両を発進又は停止させる自動発進
御であって、信号機の色が赤又は黄の場合、前方 /停止制御であって、信号機の色が赤又は黄の
に踏切を認識して遮断機が下りていることを認 場合、前方に踏切を認識して遮断機が下りてい
識した場合、又は、前方に障害物を認識した場合 ることを認識した場合、又は、前方に障害物を認
に前記車両を停止させる自動発進/停止制御、 識した場合に前記車両を停止させる自動発進/
(d)前記車両に車線変更を行わせる車線変更 停止制御、(d)前記車両に車線変更を行わせる
制御、(e)前記車両に右折又は左折を行わせる 車線変更制御、(e)前記車両に右折又は左折を
右左折制御、又は(g)前記車両を目標駐車位置 行わせる右左折制御、又は(g)前記車両を目標
に駐車させる駐車制御を含む、 駐車位置に駐車させる駐車制御を含む、
自動運転制御装置。 1I:自動運転制御装置。
【請求項2】 【請求項2】
車両に搭載される自動運転制御装置であって、 2A:車両に搭載される自動運転制御装置であ
って、
前記車両の周囲の情報である周囲情報を取得す 2B:前記車両の周囲の情報である周囲情報を
るように構成された周囲情報取得部と、 取得するように構成された周囲情報取得部と、

前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必 2C:前記車両の運転モードを、前記車両の走行
要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記 に必要な複数種類の運転動作の一部又は全てを
周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化 前記周囲情報に基づいて自動で実行する高度自
モード、及び、前記自動で実行する前記運転動作 動化モード、及び、前記自動で実行する前記運転
の種類が前記高度自動化モードよりも少ないか 動作の種類が前記高度自動化モードよりも少な
若しくはゼロである基本モード、の何れか一方 いか若しくはゼロである基本モード、の何れか
に設定するように構成された運転モード設定部 一方に設定するように構成された運転モード設
と、 定部と、
前記運転モード設定部により設定された前記運 2D:前記運転モード設定部により設定された
転モードに基づき、その運転モードにおいて前 前記運転モードに基づき、その運転モードにお
記自動で実行するように設定されている前記運 いて前記自動で実行するように設定されている
転動作を実行するように構成された自動制御部 前記運転動作を実行するように構成された自動
と、 制御部と、
前記自動制御部により前記車両の急ブレーキが 2E:前記自動制御部により前記車両の急ブレ
作動したか否か判断するように構成された急ブ ーキが作動したか否か判断するように構成され
レーキ判断部と、 た急ブレーキ判断部と、
を備え、 を備え、
前記運転モード設定部は、前記運転モードが前 2F:前記運転モード設定部は、前記運転モード
記高度自動化モードに設定されているときに、 が前記高度自動化モードに設定されているとき
前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが に、前記急ブレーキ判断部により前記急ブレー
作動したと判断されると、前記運転モードを前 キが作動したと判断されると、前記運転モード
記基本モードに切り替えるように構成されてお を前記基本モードに切り替え、
り、
2G:高度自動化切替条件が成立した場合、自動
で前記基本モードから前記高度自動化モードに
切り替えるように構成されており、

前記高度自動化モードにおいて自動で実行する 2H:前記高度自動化モードにおいて自動で実
ように設定されている前記運転動作は、(a)前 行するように設定されている前記運転動作は、
記車両を発進又は停止させる自動発進/停止制 (a)前記車両を発進又は停止させる自動発進
御であって、信号機の色が赤又は黄の場合、前方 /停止制御であって、信号機の色が赤又は黄の
に踏切を認識して遮断機が下りていることを認 場合、前方に踏切を認識して遮断機が下りてい
識した場合、又は、前方に障害物を認識した場合 ることを認識した場合、又は、前方に障害物を認
に前記車両を停止させる自動発進/停止制御、 識した場合に前記車両を停止させる自動発進/
(d)前記車両に車線変更を行わせる車線変更 停止制御、(d)前記車両に車線変更を行わせる
制御、(e)前記車両に右折又は左折を行わせる 車線変更制御、(e)前記車両に右折又は左折を
右左折制御、又は(g)前記車両を目標駐車位置 行わせる右左折制御、又は(g)前記車両を目標
に駐車させる駐車制御を含む、 駐車位置に駐車させる駐車制御を含む、
自動運転制御装置。 2I:自動運転制御装置。
【請求項7】 【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の自動運転 請求項1~6のいずれか1項に記載の自動運転
制御装置を備える車両。 制御装置を備える車両。
以 上

(別紙2)
訂正発明1と引用発明1の対比
⑴ 訂正発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「先行車や障害物、車線など」は前者の
5 「車両の周囲の情報である周囲情報」に、以下同様に、「2台の CCD カメラを用いたステレオ
画像処理により、先行車や障害物、車線などを認識するステレオカメラ」は「前記車両の周囲
の情報である周囲情報を取得するように構成された周囲情報取得部」に相当し、「運転者の判
断を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能」は「前記車両の走行
に必要な複数種類の運転動作」に、「動作」は「実行」に相当する。
10 ⑵ 「EyeSight」の各「機能」は、認識された先行車や障害物、車線などに基づいて、それぞれ
自動で制御動作するものであるといえる。ここで、訂正発明1における「高度自動化モード」
及び「基本モード」は、訂正発明1の特定事項によれば、実行される運転動作の種類の数が異
なる運転モードが複数あった場合、その中の2つに着目して、各運転モードで実行される運転
動作の種類の数を比較して、実行される運転動作の種類の数が多い方が「高度自動化モード」
15 に該当し、少ない方が「基本モード」に該当し、また、それで足りるものと解される。そし
て、引用発明1は「全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロール
が自動解除される場合」(以下「場合1」という。)と「EyeSight が一時停止され」る場合
(以下「場合2」という。)があるものであるから、引用発明1には、全ての機能が動作可能
な態様(以下「態様1」という。)、全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クル
20 ーズコントロールが解除されて他の機能のみが動作可能な態様(以下「態様2」という。)、
EyeSight が一時停止されて定速クルーズコントロールを除く EyeSight の全ての機能が動作し
ない態様(以下「態様3」という。)、全ての機能が動作しない態様(以下「態様4」とい
う。)があるものといえる。
ここで、訂正発明1の「高度自動化モード」と「基本モード」の上記した関係に鑑みれ
25 ば、引用発明1の各動作の組み合わせにつき、訂正発明1の「高度自動化モード」と「基本
モード」に対応するものは、態様1と態様2の組み合わせ、態様1と態様3の組み合わせ、

態様2と態様4の組み合わせ、態様3と態様4の組み合わせであるといえる。そして、場合
1のときに、態様1から態様2に遷移し、あるいは、態様3から態様4に遷移するものであ
り、場合2のときに、態様1から態様3に遷移し、あるいは、態様2から態様4に遷移する
ものとなっている。また、「EyeSight が一時停止された原因が改善されると自動的に
5 EyeSight が復帰する」ものであるから、「EyeSight が一時停止された原因が改善され」た場
合(以下「場合3」という。)に、態様3から態様1に遷移し、あるいは、態様4から態様
2に遷移するものといえる。
してみれば、引用発明1は、場合1であるかを判断して、態様1と態様2のいずれか、ま
たは、態様3と態様4のいずれかを設定しており、同様に、場合2、場合3であるかを判断
10 して、態様1と態様3のいずれか、または、態様2と態様4のいずれかを設定しているとい
え、また、引用発明1の態様1~4では、その態様で動作可能な全車速追従機能付クルーズ
コントロール、プリクラッシュブレーキ、AT 誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警
報、先行車発進お知らせ、定速クルーズコントロールの機能が動作することから、引用発明
1の「運転者の判断を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能が
15 システムによって動作し、全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコン
トロールが自動解除される場合があり、もしくは EyeSight が一時停止されて定速クルーズコ
ントロールを除く EyeSight の全ての機能が使用できない場合があり」という態様は、訂正発
明1の「前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必要な複数種類の運転動作の一部又は
全てを前記周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化モード、及び、前記自動で実行す
20 る前記運転動作の種類が前記高度自動化モードよりも少ないか若しくはゼロである基本モー
ド、の何れか一方に設定するように構成された運転モード設定部と、前記運転モード設定部
により設定された前記運転モードに基づき、その運転モードにおいて前記自動で実行するよ
うに設定されている前記運転動作を実行するように構成された自動制御部と、を備え」る態
様に相当する。
25 ⑶ 後者の「シートベルト」は前者の「シートベルト」に相当する。そして、後者の「運転席の
シートベルトを外したとき全車速追従機能付クルーズコントロール、定速クルーズコントロー

ルが自動的に解除され」る態様は、上記⑵の相当関係に鑑みれば、場合1として、運転席のシ
ートベルトを外したかを判断して、態様1から態様2に、あるいは、態様3から態様4に遷移
しているのであるから、前者の「前記運転モード設定部は、前記車両の乗員がシートベルトを
装着しているか否かを判断するように構成され」「前記運転モードが前記高度自動化モードに
5 設定されているときに、前記乗員が前記シートベルトを装着していないと前記運転モード設定
部が判断すると、前記運転モードを前記基本モードに切り替え」る態様に相当する。
⑷ そして、後者の「EyeSight が一時停止された原因が改善されると自動的に EyeSight が復帰
する」態様は、上記⑵の相当関係に鑑みれば、場合3であることを判断して、態様3から態様
1に、あるいは、態様4から態様2に遷移しているのであるから、前者の「高度自動化切替条
10 件が成立した場合、自動で前記基本モードから前記高度自動化モードに切り替える」態様に相
当する。
⑸ 後者の「プリクラッシュブレーキ」は前者の「前記車両を」「停止させる自動」「停止制御
であって、」「前方に障害物を認識した場合に前記車両を停止させる自動」「停止制御」に相
当する。
15 ⑹ 上記⑴から⑸までを踏まえると、後者の「EyeSight」は前者の「車両に搭載される」「自動
運転制御装置」に相当する。
以 上

(別紙3)
訂正発明2と引用発明2の対比
⑴ 訂正発明2と引用発明2とを対比すると、後者の「先行車や障害物、車線など」は前者の「車
5 両の周囲の情報である周囲情報」に、以下同様に、「2台の CCD カメラを用いたステレオ画像
処理により、先行車や障害物、車線などを認識するステレオカメラ」は「前記車両の周囲の情
報である周囲情報を取得するように構成された周囲情報取得部」に相当し、「運転者の判断を
助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能」は「前記車両の走行に必
要な複数種類の運転動作」に、「動作」は「実行」に相当する。
10 ⑵ 「EyeSight」の各「機能」は、認識された先行車や障害物、車線などに基づいて、それぞれ
自動で制御動作するものであるといえる。ここで、訂正発明2における「高度自動化モード」
及び「基本モード」は、訂正発明2の特定事項によれば、実行される運転動作の種類の数が異
なる運転モードが複数あった場合、その中の2つに着目して、各運転モードで実行される運転
動作の種類の数を比較して、実行される運転動作の種類の数が多い方が「高度自動化モード」
15 に該当し、少ない方が「基本モード」に該当し、また、それで足りるものと解される。そして、
引用発明2は「全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロールが自
動解除される場合」(場合1)と「EyeSight が一時停止され」る場合(場合2)があるもので
あるから、引用発明2には、全ての機能が動作可能な態様(態様1)、全車速追従機能付きク
ルーズコントロール及び定速クルーズコントロールが解除されて他の機能のみが動作可能な態
20 様(態様2)、EyeSight が一時停止されて定速クルーズコントロールを除く EyeSight の全て
の機能が動作しない態様(態様3)、全ての機能が動作しない態様(態様4)があるものとい
える。
ここで、訂正発明2の「高度自動化モード」と「基本モード」の上記した関係に鑑みれば、
引用発明2の各動作の組み合わせにつき、訂正発明2の「高度自動化モード」と「基本モード」
25 に対応するものは、態様1と態様2の組み合わせ、態様1と態様3の組み合わせ、態様2と態
様4の組み合わせ、態様3と態様4の組み合わせであるといえる。そして、場合1のときに、

態様1から態様2に遷移し、あるいは、態様3から態様4に遷移するものであり、場合2のと
きに、態様1から態様3に遷移し、あるいは、態様2から態様4に遷移するものとなっている。
また、「EyeSight が一時停止された原因が改善されると自動的に EyeSight が復帰する」もの
であるから、「EyeSight が一時停止された原因が改善され」た場合(場合3)に、態様3から
5 態様1に遷移し、あるいは、態様4から態様2に遷移するものといえる。
してみれば、引用発明2は、場合1であるかを判断して、態様1と態様2のいずれか、また
は、態様3と態様4のいずれかを設定しており、同様に、場合2、場合3であるかを判断して、
態様1と態様3のいずれか、または、態様2と態様4のいずれかを設定しているといえ、また、
引用発明2の態様1~4では、その態様で動作可能な全車速追従機能付クルーズコントロール、
10 プリクラッシュブレーキ、AT 誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発進お知
らせ、定速クルーズコントロールの機能が動作することから、引用発明2の「運転者の判断を
助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能がシステムによって動作し、」
「全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロールが自動解除され
る場合があり、もしくは EyeSight が一時停止されて定速クルーズコントロールを除く
15 EyeSight の全ての機能が使用できない場合があり」という態様は、訂正発明2の「前記車両の
運転モードを、前記車両の走行に必要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記周囲情報に
基づいて自動で実行する高度自動化モード、及び、前記自動で実行する前記運転動作の種類が
前記高度自動化モードよりも少ないか若しくはゼロである基本モード、の何れか一方に設定す
るように構成された運転モード設定部と、前記運転モード設定部により設定された前記運転モ
20 ードに基づき、その運転モードにおいて前記自動で実行するように設定されている前記運転動
作を実行するように構成された自動制御部と、」「を備え」る態様に相当する。
⑶ 後者の「プリクラッシュ2次ブレーキ」は前者の「急ブレーキ」に相当する。また、訂正発
明2に「前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると」と特定され
ていることを踏まえれば、当該判断に「急ブレーキが作動した」回数は特定されていないから、
25 複数回の急ブレーキの作動を判断することも、当該判断に含まれる(かかる解釈は、本件特許
の段落【0173】とも整合する。)。してみれば、後者の「エンジン始動後、プリクラッシ

ュ2次ブレーキが3回作動した」ことは前者の「前記車両の急ブレーキが作動した」ことに相
当する。そして、後者の「エンジン始動後、プリクラッシュ2次ブレーキが3回作動したとき
に EyeSight が一時停止され」る態様は、上記⑵の相当関係に鑑みれば、場合2として、車両の
急ブレーキが作動したかを判断して、態様1から態様3に、あるいは、態様2から態様4に遷
5 移しているのであるから、前者の「前記運転モードが前記高度自動化モードに設定されている
ときに、」「前記車両の急ブレーキが作動したか否か判断するように構成された急ブレーキ判
断部」を備え「前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記
運転モードを前記基本モードに切り替え」る態様に相当する。
⑷ そして、後者の「EyeSight が一時停止された原因が改善されると自動的に EyeSight が復帰
10 する」態様は、上記⑵の相当関係に鑑みれば、場合3であることを判断して、態様3から態様
1に、あるいは、態様4から態様2に遷移しているのであるから、前者の「高度自動化切替条
件が成立した場合、自動で前記基本モードから前記高度自動化モードに切り替える」態様に相
当する。
⑸ 後者の「プリクラッシュブレーキ」は前者の「前記車両を」「停止させる自動」「停止制御
15 であって、」「前方に障害物を認識した場合に前記車両を停止させる自動」「停止制御」に相
当する。
⑹ 上記⑴から⑸までを踏まえると、後者の「EyeSight」は前者の「車両に搭載される」「自動
運転制御装置」に相当する。
以 上

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (7月13日~7月19日)

来週の知財セミナー (7月20日~7月26日)

7月23日(木) - 東京 港区

著作権法の実践力養成講座

7月24日(金) - オンライン

第64回東北大学知財セミナー

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

角田特許事務所

〒130-0022 東京都墨田区江東橋4-24-5 協新ビル402 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

加藤特許事務所

福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号  博多駅前ビジネスセンター411号 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

辰己国際特許事務所【中小企業様~中堅企業様、歓迎致します】

バーチャルオフィス化(個人宅をワークスペースにしており、原則として各人がリモートワークをしております。)に伴い、お客様、お取引先様にのみ個別にご案内させていただいております。 特許・実用新案 商標 外国特許 外国商標 コンサルティング