ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(ネ)10058 職務発明対価等請求控訴事件
| 裁判所 | 一部認容 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年4月27日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
特許権 特許法35条3項3回 |
| キーワード | 実施26回 職務発明16回 特許権4回 無効3回 |
| 主文 | 1 原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 2 被告は、原告に対し、1849万1370円及びこれに対する令和4年 4月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 被告の本件控訴を棄却する。 5 訴訟費用は、第1審、2審を通じてこれを5分し、その4を原告の負担 6 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 | 1⑴ 本件は、被告の代表取締役を退任した原告が、本件発明は原告が在任中に した職務発明である、原告は本件発明に係る特許を受ける権利を被告に承継 させたなどと主張して、被告に対し、改正前特許法35条3項所定の相当の 対価として、1億円及びこれに対する令和4年4月24日(訴状送達日の翌 日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求 める事案である(一部請求)。 被告は、原告が本件発明の発明者であること、被告が本件発明を実施した ことを争うとともに、本件発明に係る相当の対価の額を争っている。 ⑵ 原審は、① 原告は、本件発明の単独発明者ではなく、共同発明者の一人 である、② 被告の提供する本件各サービスに係る本件各システムは、一部 を除き本件発明の技術的範囲に属するものであり、被告は本件発明を実施し たといえるが、本件発明の構成要件を充足しない部分については、被告が本 件発明を実施したといえない、③ 被告が本件発明の実施を排他的に独占し 得る地位を取得することによって受けると見込まれる利益(独占の利益)を 本件発明により被告が受けるべき利益とし、使用者貢献度、共同発明者間の |
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令和8年4月27日判決言渡
令和7年(ネ)第10058号 職務発明対価等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)第7986号)
口頭弁論終結日 令和8年1月26日
判 決
控訴人兼被控訴人 X
(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 宮 川 利 彰
同 高 橋 元 弘
同 吉 羽 真 一 郎
被控訴人兼控訴人 株式会社エポスカード
(以下「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 鮫 島 正 洋
同 和 田 祐 造
同 藤 田 達 郎
主 文
1 原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
2 被告は、原告に対し、1849万1370円及びこれに対する令和4年
4月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 被告の本件控訴を棄却する。
5 訴訟費用は、第1審、2審を通じてこれを5分し、その4を原告の負担
とし、その余を被告の負担とする。
6 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
(原告)
5 1 原判決を次のとおり変更する。2 被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和4年4月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。(被告)1 原判決中、被告敗訴部分を取り消す。2 前項の部分につき、原告の請求を棄却する。
第2 事案の概要等(以下、特に断らない限り、略語は原判決の例による。)
1⑴ 本件は、被告の代表取締役を退任した原告が、本件発明は原告が在任中にした職務発明である、原告は本件発明に係る特許を受ける権利を被告に承継させたなどと主張して、被告に対し、改正前特許法35条3項所定の相当の対価として、1億円及びこれに対する令和4年4月24日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(一部請求)。被告は、原告が本件発明の発明者であること、被告が本件発明を実施したことを争うとともに、本件発明に係る相当の対価の額を争っている。
⑵ 原審は、① 原告は、本件発明の単独発明者ではなく、共同発明者の一人である、② 被告の提供する本件各サービスに係る本件各システムは、一部を除き本件発明の技術的範囲に属するものであり、被告は本件発明を実施したといえるが、本件発明の構成要件を充足しない部分については、被告が本件発明を実施したといえない、③ 被告が本件発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けると見込まれる利益(独占の利益)を本件発明により被告が受けるべき利益とし、使用者貢献度、共同発明者間の貢献割合、原告が既に得た利益等を考慮して、本件発明に係る相当の対価の額を算定するのが相当であるとして、原告の請求を220万3446円及びこれに対する令和4年4月24日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。
5 原告及び被告は、これを不服として、それぞれ控訴を提起した。2 前提事実、争点、争点に対する当事者の主張は、次のとおり補正ないし補充し、第3のとおり当審における当事者の追加主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2及び3(原判決1頁25行目から6頁21行目まで)並びに「第3 争点に対する当事者の主張」の1から4まで(同頁23行目から31頁16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決5頁14行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 被告は、令和7年4月1日、本件各サービスにおいて付与されるポイントを、一部を除き、通常の3倍から2倍に変更している(乙153)。」
⑵ 原判決8頁7行目から8行目までを次のとおり改める。「 以上のとおり、原告は、原告主張の特徴的部分①及び②を、単独で着想、想到し、本件発明の完成に現実的に関与したのであり、本件発明の単独発明者である。」
⑶ 原判決8頁14行目末尾に「aは、原告の指示に従い、顧客の選択し得る加盟企業の数を3社までとし、ポイントを通常の3倍とした場合に採算がとれるか否かを検証するなど、本件発明の特徴的部分とは無関係の課題の解決に補助者として関与したにすぎない。また、bは、① ポイントを付与するタイミングを工夫するよう意見を述べた、② 「VISA加盟店の名称を使用して、VISA加盟店の履歴全てを引き当てることができるか」という課題の解決に関与したなどというが、これらは本件発明の特徴的部分と無関係である。仮に「前記会員IDおよび加盟企業コードに紐付けられたクレジット購入情報が送られてきたとき、前記加盟企業コードを前記指定加盟企業記憶手段に照らし、その加盟企業コードにより指定加盟企業であるか否かを判断」する構成(構成要件C)が本件発明の特徴的部分であるとしても、その内容は控訴人がaに告げたものであり、aやbが上記構成を想到したわけで
5 はない。」を加える。
⑷ 原判決8頁16行目の「発明者の認定に当たっては」を「従業者等は、特許に無効理由がある場合でも、職務発明について相当の対価の支払を受ける権利を有すること、また、特許を受ける権利の譲渡を受けた使用者等において、特許に無効理由がある旨の主張をするのは、譲渡契約時に予定されていなかった事情に基づき譲渡契約の効力を遡って斟酌しようとする点で背理であることからすると、職務発明の発明者の認定に当たっては」に、17行目の「従業者等が」を「従業者等も使用者等も」にそれぞれ改める。
⑸ 原判決9頁11行目の「顧客が」から17行目末尾までを「「加盟店利用の初期活性化をはかり初年度利用を上げ、カード利用率全体の向上につなげる」ため、ポイントを通常の5倍にする既存の優待特典(既存優待)に加え、1週間限定で5%の請求時割引を行うものである。c発明は、顧客の選択し得る加盟店の数を限定しない一方、その選択の対象を既存優待のある加盟店に限定するもので、本件発明とはその特徴的部分を異にする上、c発明は、顧客の日頃利用する店舗でのクレジットカードの利用促進につながるものではなく、本件発明とは課題もその解決手段も異にする。」に改める。
⑹ 原判決10頁1行目の「したがって」から2行目末尾までを「また、原告は、被告の策定する職務発明の対価決定のための基準が極めて低いことや、被告がこれを過去に遡って適用しようとしていたことから、職務発明につき適正な対価が支払われるよう意見を述べたにすぎない。原告の請求は、従前の対応、態度と矛盾するものではなく、信義誠実の原則や忠実義務に反するものではない。」に改める。
⑺ 原判決12頁12行目の「改正前特許法35条3項が」を「特許制度の趣旨(特許法1条)や特許出願の審査の実情に照らすと、発明の特徴的部分や比較対象となる従来技術は、いずれも客観的に把握すべきであり、被告等が乙7文献及び乙9文献の内容を検討していたかどうかなどの主観的事情を考
5 慮して、本件発明の特徴的部分を把握するのは相当でない。また、改正前特許法35条3項が」に改める。
⑻ 原判決13頁8行目の「指示をしたに過ぎない」から9行目末尾までを「指示をしたにすぎない。本件発明とc発明とでは、特典の実施形態がボーナスポイントの付与か、あるいは請求時割引かという点で相違するものの、これは当業者が適宜選択し得る設計事項である。仮に、期間限定で5%の請求時割引を行う点で相違するとしても、これも当業者が適宜選択し得る設計事項というべきである。「初年度利用率を上げ」るという、c発明の解決しようとする課題には、本件カードのメインカード化を図るとともに、加盟企業のリピーターを増やすという、本件発明の解決しようとする課題(本件明細書【0006】)も含まれること、c発明は、請求時割引をクレジットカード管理会社の負担で行う構成であり、ボーナスポイントをクレジットカード管理会社が負担する構成は既に開示されていたといえることなどを考慮すると、本件発明の特徴的部分は、被告主張の特徴的部分①及び②、すなわち、ポイント付与の仕組みに係る構成というべきであるが、原告は、当該部分の完成には現実に寄与していない。また、本件発明は、既存のシステムに「特別のボーナスポイント」を付与するシステムを追加する点に技術的な特徴があるところ、既存のシステムとの整合性を検討し、追加するシステムを具体的に構成したのは、a及びbである。いずれの点においても、原告は、本件発明の発明者ではない。」に改める。
⑼ 原判決13頁13行目の「原告は、」の次に「職務発明の権利処理に関する規程が存在しないことを認識しながら、これを放置し、」を、18行目末尾に「のみならず、原告は、丸井グループの常務執行役員及びM&C社の代表取締役に在任中の令和2年7月頃、職務発明の権利処理に関する規程の策定担当者に対し、「知財に強い知り合いの弁護士は訴えてもいいと言っている」、「1億くらいもらってもいいはずだ」、「僕の息がかかった人間はみ
5 んな反対させる」などと告げて、上記規程の策定に反対し、その後も、専ら自己の利益を図る目的で、a及びbに、原告が本件発明の発明者である旨の書面を作成させたり、丸井グループ退職直前(令和3年3月29日)に、被告及び丸井グループに対し、本件特許を含む7件の特許に係る相当の対価として、8億円強の金員の支払を請求したりしていて、忠実義務にも反する。」をそれぞれ加える。
⑽ 原判決13頁26行目末尾に「本件明細書において、「カード番号」はクレジットカードに表示されるものとされ、「会員ID」はクレジットカードに記憶されるもの(情報)とされていることに照らすと、「会員ID」には「カード番号」が含まれると解することに不自然はなく、これにより本件発明の技術的範囲が不明確となることもない。そして、このことは、本件明細書の「会員ID」の語と「顧客ID」の語が同義であったとしても変わらない。」を加える。
⑾ 原判決14頁18行目の「これらのシステムも決済端末自体は備えていることから」を「本件発明は方法の発明ではなく物の発明であるから、「店舗端末」を備える以上」に改める。
⑿ 原判決16頁1行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 被告は、構成要件B8が、「購入毎」、すなわち「購入のたびに」ボーナスポイント数と累計ポイント数を記憶する構成であることに照らすと、「クレジット購入情報が送られてきたとき」は、処理のタイミングないし時点を示すものと解するのが整合的である旨の主張をするが、構成要件B8は、「購入毎のポイント」を記憶する構成であり、処理のタイミングないし時点を示すものではない。」
⒀ 原判決16頁7行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 原判決は、VISA加盟店に係るシステムは、●省略●構成要件B5及びCを充足しないとする。
5 しかしながら、構成要件B5は、あくまで、顧客により指定された「加盟企業」の数が所定数であることを示すもので、「加盟企業コード」の数が所定数であることを示すものではない。仮に「指定された所定数」が「加盟企業コード」の数を意味するとしても、●省略●「加盟企業コード」の数は「指定された所定数」と一致するといえ、いずれにせよ、構成要件B5及びCを充足する。」
⒁ 原判決16頁16行目から17行目にかけての「区別していることから、」の次に「また、「会員ID」と「カード番号」を同視すると、本件発明の技術的範囲が極めて不明確になり、第三者の予測可能性を害することから、」を、18行目から19行目にかけての「記憶されてはいない。」の次に「そして、本件明細書の記載によれば、「会員ID」の語と「顧客ID」の語は同義であるし、「会員ID」に「カード番号」が含まれると解すると、①データセキュリティ上、「会員ID」を用いる都度、これを暗号化するなどの処理が必要になること、② クレジットカードの紛失を理由にこれを再発行する場合、新たな「カード番号」が付されることから、本件各システムに記憶された全ての「カード番号」の書換えが必要になること、③ 顧客がクレジットカードを複数保有する場合、クレジットカード管理会社は、全てのカードにつき顧客の住所等を登録したり、「カード番号」に紐付けられた複数のカード情報を取得したりする必要があることなどからすると、技術常識にも反する。」をそれぞれ加える。
⒂ 原判決17頁18行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 原判決は、本件明細書(【0016】)において、商品の購入についての決済は、「店舗端末」又は「顧客端末」のいずれかを選択的に使用して行い得るとされていることから、加盟企業の店舗が「店舗端末」を有している限り、ネット決済の場合にその決済の用に「店舗端末」が供されていないとしても、「店舗端末」(構成要件A4)を備えているというべきであると
5 する。しかしながら、上記の商品の購入についての決済の構成は、特許請求の範囲に何らの記載もなく、本件明細書の記載を根拠に、構成要件A4を充足するとするのは相当でない。」
⒃ 原判決19頁1行目末尾に「そして、これは、構成要件B8が、「購入毎」、すなわち「購入のたびに」ボーナスポイント数と累計ポイント数を記憶する構成であることとも整合する。」を加え、7行目の「したがって、本件各システムは本件発明の構成要件Cを充足しない。」を「また、仮に「クレジット購入情報が送られてきたとき」を条件と解するとしても、本件各システムは、通常ポイントの演算を行う前提として指定加盟企業であるか否かの判断を行っていないし、毎月所定の日時にボーナスポイントを演算し、これを、毎月別の日に通常ポイントを加算して演算された「新たな累計ポイント」に加算して、更に新たな累計ポイントを演算していて、「今回の今回ポイント数」と「(今回の)ボーナスポイント数」を演算し、これらを同じ「前回までの累計ポイント数」に加算することも行っていない。したがって、いずれにせよ本件各システムは構成要件Cを充足しない。」に改める。
⒄ 原判決19頁10行目の「命名ルールはなく、」の次に「信頼性に欠け、守秘性も有しない上、VISA加盟店については、」を、11行目の「紐付いている。」の次に「また、本件明細書(【0020】)には「その店舗の属する企業の加盟企業コード(店舗コード)」との記載がある一方、加盟企業コードが複数の店舗ごとに付与されることを特定する記載も示唆もないことから、構成要件Cの「クレジット購入情報」に紐付けられる「加盟企業コード」は、「その店舗」のコードではなく、当該店舗の属する企業(事業主体)のコードというべきである。」をそれぞれ加える。
⒅ 原判決23頁24行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 被告は、乙7発明と比較して技術的優位性を有する本件発明の特徴的
5 部分を用いた事実はなく、被告に独占の利益はない旨の主張をする。しかしながら、乙7発明は、顧客全体の購入額が少ない加盟店若しくは小売業者とのインセンティブ提供又は関係構築に困難を抱えていることを、その「解決しようとする課題」とするものであり(乙7文献【0006】)、「報酬ポイント」(同【0038】)をクレジットカード管理会社が負担する構成を特定するものでもない。したがって、そもそも乙7発明との比較において本件発明の技術的優位性を有する特徴的部分を認定するのは失当である。また、仮にそうでないとしても、競合他社が従来技術を認識していない場合には、職務発明により使用者等が得る利益に影響は及ばないことから、従来技術の存在は独占の利益を否定し減殺する事情とならない。本件において、競合他社が乙7文献を認識していた事実はなく、いずれにせよ、被告に独占の利益がないとはいえない。」
⒆ 原判決24頁10行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 原判決は、原告の主張する利益算定方式は、被告が会員に対して各種施策を提供していることや、その影響の程度は会員によって様々であることから採用し得ず、本件においては、仮想実施料率算定方式により算定するのが相当とする。しかしながら、原告の主張する利益算定方式は、同一年度にゴールド会員に切り替えた会員に係る本件各サービス登録後の年間利用額の増額分を算定の基礎とするものであるから、被告が会員に対して各種施策を提供していることの影響は排除されているし、仮にそうでないとしても、かかる影響の程度は超過売上の割合又は使用者の貢献度において配慮すれば足りる。他方、仮想実施料率算定方式による場合、本件各サービスにより、本件カードのメインカード化、GP会員への切替えが促進され、会員の利用額が増加することによる利益が反映されず相当でない。」
5 ⒇ 原判決26頁7行目から8行目にかけての「これに係る費用も大きなものではなく」を「本件各システムの開発費用は約1856万円、改修費用を含めても約3816万円にとどまる上」に改め、10行目末尾に「原告が在職中に支給を受けた報酬は、役職に応じて定められた係数に基づく役員としての報酬であって、本件発明の発明者としての貢献が考慮されたものではない。」を加える。
(21) 原判決27頁8行目の「本件発明の技術的意義の高さ、」の次に「本件各サービスは、競合他社にない高度の顧客吸引力を有すること、」を、12行目末尾に「仮想実施料率の算定においては、本件発明が仮想ライセンシーに及ぼす利益を重視すべきであり、被告が会員に対して他の各種施策を提供していることは考慮すべきでないし、仮にそうでないとしても、これは使用者貢献度の算定において考慮すれば足りる。しかるに、原判決は、被告が会員に対して他の各種施策を提供していることを、仮想実施料率の算定と使用者貢献度の算定において二重に考慮している。」をそれぞれ加える。
(22) 原判決28頁4行目の「一部の加盟企業との関係で」を「、ネット決済のみを行い「店舗端末」を備えない加盟企業や、顧客に指定された所定数以上のカタカナ店舗名を会員IDに紐付けるVISA加盟店との関係で」に改め、同行目から5行目にかけての「充足しないとしても、」の次に「ネット決済のみを行い「店舗端末」を備えない加盟企業が存在する場合であっても、顧客において、実店舗を有し「店舗端末」を備える加盟企業を一つでも選択していれば、本件発明を実施しているといえること、」を加える。
(23) 原判決28頁14行目から15行目にかけての「したがって、超過売上高に仮想実施料率を乗じて超過利益を算定すべきである」を「そして、独占の利益は、当該職務発明が従来技術と比較して技術的優位性を有する特徴的部分から生ずるところ、同部分は、当該職務発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する部分をもって認定
5 すべきである。本件発明の技術的思想のうち、① 顧客が指定した所定数のクレジットカード加盟企業においてクレジットカードを使用して商品等の提供を受けた場合に、購入金額に応じた通常ポイントに加えてボーナスポイントを付与する構成、② ボーナスポイントをクレジットカード管理会社が負担する構成は、いずれも乙7発明において開示されていることから、従来技術(乙7発明)と比較して技術的優位性を有する本件発明の特徴的部分は、クレジット購入情報が送られてきたときに、通常の今回ポイント数とボーナスポイント数の演算を行わせ、前回までの累計ポイント数に、今回の通常の今回ポイント数とボーナスポイント数を加算して新たな累計ポイント数とする構成(以下「本件演算構成」という。)というべきであるところ、本件各システムは、かかる演算を行っていないから、被告に独占の利益は存しない。また、仮にそうでないとしても、独占の利益は、超過売上高に仮想実施料率を乗じてこれを算定すべきである」に改める。
(24) 原判決30頁1行目の「このように」から2行目の「このため」までを「本件発明の従来技術に見られない特有の技術的思想は本件演算構成のみであることや、通常ポイントとボーナスポイントの演算については様々な方法が考えられることから」に改める。
(25) 原判決30頁21行目の「貢献に加え、」の次に「被告のショッピング事業の実施自体に係る貢献や、」を加える。
(26) 原判決31頁6行目の「本件発明の経緯を踏まえても」を「原告発明は、c発明や従来技術、被告内部の各種提案により、実質的には既に完成していたといえることを踏まえると」に改める。
(27) 原判決31頁16行目の「利用額を除くべきである」を「利用額を控除し、あるいは相当割合を減額すべきである」に改める。
第3 当審における当事者の追加主張(本件発明の均等実施の成否)
1 「店舗端末を備えるクレジットカード加盟企業の店舗サーバ」(構成要件A
5 4)について
(原告の主張)
クレジットカード加盟企業がネット決済のみを行い「店舗端末」を備えない場合に構成要件A4を充足しないとしても、次のとおり、被告は本件発明を均等実施したといえる。
⑴ 均等の第1要件
本件発明の本質的部分は、原告主張の特徴的部分①及び②であり、本件各システムについて、クレジットカード加盟企業が「店舗端末」を備えていることは、本件発明の本質的部分ではない。
⑵ 均等の第2要件
構成要件A4を、クレジットカード加盟企業が「店舗端末」を備えない構成に置き換えても、顧客の指定する加盟企業に被告の負担で特別のボーナスポイントを付与することにより、クレジットカード加盟企業の拡大を図るとともに、加盟企業の負担なくその販売網の拡大やリピーターの増加を図るという、本件発明と同一の作用効果を奏する。
⑶ 均等の第3要件
クレジットカードのネット決済技術は、遅くとも2010年代には一般化していて、ネット決済において、クレジットカード加盟企業が店舗に備えた「店舗端末」を用いなくとも決済可能であることは周知であるから、構成要件A4を、クレジットカード加盟企業が「店舗端末」を備えない構成に置き換えることは、当業者が容易に想到することができた。
⑷ 均等の第4要件
ネット決済のみを行うクレジットカード加盟企業に係る本件各システムが、本件特許出願時において、公知技術と同一であったこと、又は当業者が容易に推考できたことを基礎付ける事情はない。
⑸ 均等の第5要件
5 本件特許の出願経過や明細書の記載等を見ても、クレジットカード加盟企
業が「店舗端末」を備えない構成を、特許請求の範囲から意識的に除外したことなどの特段の事情はない。本件明細書の記載(【0016】)は、決済が顧客端末又は店舗端末のいずれかにより行われることを開示するにすぎず、構成要件A4を「店舗端末」を備えない構成に置き換え得ることを開示するものではない。また、仮に出願人において上記のように置き換え得ることを認識し得たとしても、本件発明の特許請求の範囲の記載は、「店舗端末」で決済を行う構成を特定するものではなく、どの端末で決済を行うかは特許請求の範囲と無関係であるから、「店舗端末」を備えない構成が、特許請求の範囲から意識的に除外されたとは評価できない。
(被告の主張)
次のとおり、被告が本件発明を均等実施したとはいえない。
⑴ 均等の第1要件
本件各システムにつき、クレジットカード加盟企業が「店舗端末」を備えていることは、本件発明の非本質的部分とはいえない。本件特許の特許請求の範囲には詳細な構成が記載される一方で、本件明細書には発明の説明や課題が簡単に記載されるにとどまるところ、かかる場合に、本件明細書に記載されない構成を全て非本質的部分とすると、特許請求の範囲の記載の公示機能を没却し、第三者の予測可能性を害することになる。
⑵ 均等の第5要件
本件明細書(【0016】)には、決済が「顧客端末50、または店舗に設けられた店舗端末62により行われる」との記載がある。そして、本件特許の特許出願当時(平成26年9月24日)において、「店舗端末」を備えない、いわゆるネット店舗が存在することは周知であったことを考慮すると、本件明細書において、決済を「店舗端末」若しくは「顧客端末」で行う構成、
5 又は「店舗端末」のみで行う構成を、「顧客端末」のみで行う構成に置き換
え得ることが開示されているといえ、「客観的、外形的に見て、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していた」といえる。また、原告は、特許出願手続において、明確性要件に違反する旨の拒絶理由通知が示されたことから、「店舗端末を備える」との構成を追加する補正をしたのであり、これにより、決済を顧客端末で行う構成は特許請求の範囲から意識的に除外されたものともいえる。したがって、クレジットカード加盟企業が「店舗端末」を備えない構成は、本件特許の特許出願時において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たり、均等の第5要件を充足しない。
2 「加盟企業コード」(構成要件B5、C)について
(原告の主張)
VISA加盟店に係るシステムについて、●省略●を会員IDに紐付けて指定加盟企業記憶手段に記憶させ●省略●、構成要件B5、Cを充足せず、本件発明と異なる部分があったとしても、次のとおり、被告は本件発明を均等実施したといえる。
⑴ 均等の第1要件
本件発明の本質的部分は、原告主張の特徴的部分①及び②である。VISA加盟店に係るシステムについて、本件発明の構成要件B5、Cと異なる部分があったとしても、これは、顧客により指定されたクレジットカード加盟企業をシステム内で特定するための手段にすぎず、本件発明の本質的部分ではない。
⑵ 均等の第2要件
本件発明の構成要件B5、Cを、VISA加盟店に係るシステムにおけるものと置き換えても、顧客により指定された加盟企業に被告の負担で特別の
5 ボーナスポイントを付与することにより、クレジットカード加盟企業の拡大
を図るとともに当該加盟企業の負担なくその販売網の拡大やリピーターの増加を図るという、本件発明と同一の作用効果を奏する。
⑶ 均等の第3要件
VISA加盟店からクレジットカード管理会社に送られるクレジット購入情報のうち、クレジットカード加盟企業の特定に資する情報がカタカナ店舗名であることや、カタカナ店舗名がクレジットカード加盟企業ごとに独自かつ複数作成されることは、本件各サービス開始時点(平成26年10月)で、当業者において公知の事実であったから、本件発明の構成要件B5、Cを、VISA加盟店に係るシステムにおけるものに置き換えることは、当業者が容易に想到することができた。
⑷ 均等の第4要件
VISA加盟店に係るシステムが、本件特許出願時において、公知技術と同一であったこと、又は当業者が容易に推考できたことを基礎付ける事情はない。
⑸ 均等の第5要件
本件特許の出願経過や明細書の記載等を見ても、VISA加盟店に係るシステムについて、本件発明と異なる部分を、特許請求の範囲から意識的に除外したことなどの特段の事情はない。
(被告の主張)
原告は、本件発明について、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在することを具体的に主張するものではなく、失当である。また、これを措くとしても、次のとおり、本件において、被告が本件発明を均等実施したとはいえない。
⑴ 均等の第1要件
本件発明は、構成要件B5及びCの構成により、過誤なく「通常の今回ポ
5 イント数」と「(今回の)ボーナスポイント数」を演算することを可能にす
るものである。VISA加盟店に係るシステムについて、本件発明と異なる部分は、本件発明の本質的部分であって、均等の第1要件を充足しない。
⑵ 均等の第2要件
本件発明の構成要件B5、Cを、VISA加盟店に係るシステムの構成中、これと異なる部分に置き換えると、カタカナ店舗名を逐一特定のショップコードに紐付ける必要が生じ、過誤が誘発されることになって、正確にポイント数の演算を行うことができなくなる。本件発明の構成要件B5、Cを、VISA加盟店に係るシステムの構成中、これと異なる部分に置き換えることにより、本件発明と同一の作用効果を奏するとはいえず、均等の第2要件を充足しない。
⑶ 均等の第3要件
本件各システムの製造時点において、VISA加盟店の売上に係るポイントをどのようにシステムに反映するかが課題となっていたのであり、本件発明の構成要件B5、Cを、VISA加盟店に係るシステムの構成中、これと異なる部分に置き換えることが、当業者において容易に想到することができたとはいえず、均等の第3要件を充足しない。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は、原告の請求は1849万1370円及び遅延損害金の支払を求
める限度で理由があると判断する。その理由は、2のとおり補正するほかは、
原判決「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」の1から3まで(原判
決31頁18行目から77頁22行目まで)に記載のとおりであるから、これ
を引用する。
⑴ 原判決48頁22行目の「他方、」の次に「本件各システムの具体的な設
計、開発に直接関与し、本件発明の特徴的部分②の完成に創作的に寄与した
のは、a及びbであり、」を加える。
⑵ 原判決49頁18行目の「しかし」を「しかしながら、職務発明について
は、当該発明が従来技術の存在等により無効理由を有する場合であっても、
使用者等が事実として当該発明の実施を独占し得る地位を取得することによ
る利益を得ている以上、従業者等は、なお相当の対価の支払を受ける権利を
失わないと解するのが相当であり、これを踏まえると、職務発明の特徴的部
分は、従来技術の存否、内容のみならず、その技術事項が周知技術であった
か否か、当該発明の着想に先立ち、従業者等や使用者等が当該従来技術を現
に認識していたか否かなどを併せ考慮して、これを把握するのが相当である。
しかるに」に改め、23行目末尾に「被告は、発明の特徴的部分は客観的に
把握すべきであり、被告等が乙7文献及び乙9文献の内容を検討していたか
どうかなどの主観的事情を考慮して本件発明の特徴的部分を把握するのは相
当でない旨の主張もするが、職務発明の特徴的部分は、従業者等や使用者等
が当該従来技術を現に認識していたか否かなどを併せ考慮して、これを把握
すべきであることは上記のとおりであり、採用できない。」を加える。
⑶ 原判決50頁10行目の「手段としていることから、」の次に「また、c
発明は、顧客の選択し得る加盟店の数を限定しない一方、その選択の対象を
「訴求加盟店」、すなわち既存優待のある加盟店に限定することから、」を
加える。
⑷ 原判決50頁22行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「 被告は、本件発明は、既存のシステムに「特別のボーナスポイント」
を付与するシステムを追加する点に技術的な特徴があるところ、既存のシス
テムとの整合性を検討し、追加するシステムを具体的に構成したのは、a及
びbである旨の主張もするが、そうであるからといって、原告が本件発明の
共同発明者の一人であることが否定されるわけではない。」
⑸ 原判決51頁6行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「 被告は、原告が、丸井グループの常務執行役員及びM&C社の代表取
締役在任中、職務発明の権利処理に関する規程の策定に反対し、被告及び丸
井グループに対し、特許に係る相当の対価として多額の金員の支払を請求し
たことは、忠実義務にも反する旨の主張もするが、原告が本件発明の共同発
明者の一人であることを踏まえると、原告の地位や職責を考慮しても、対価
を決定するための基準に不満を表明して上記規程の策定に反対したり、特許
に係る相当の対価として多額の金員の支払を請求したりしたことをもって、
忠実義務に反するとまでいうのは困難である。」
⑹ 原判決58頁7行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「 被告は、「会員ID」に「カード番号」が含まれると解すると、本件
発明の技術的範囲が極めて不明確になる上、クレジットカード管理会社にお
いて煩瑣な処理を行う必要が生じ、技術常識に反する旨の主張もするが、
「会員ID」に「カード番号」が含まれると解することにより、本件発明の
技術的範囲が不明確になるとは認められないし、そのように解しても、本件
各システムにおいては、送信されたクレジット購入に含まれるクレジットカ
ード番号とデータベースとの間で照合が行われ、クレジットカード番号に対
応する顧客番号をクレジット購入情報に引き当て、顧客番号と紐付けて管理
されることからすると、被告の主張する煩瑣な処理を行う必要が生ずるとま
では認められず、「会員ID」に「カード番号」が含まれると解することが
技術常識に反するとも認められない。」
⑺ 原判決60頁23行目の「この点については」から24行目の「考慮する
こととする」までを「後述するとおり、この点を本件発明に係る相当の対価
の額の算定において考慮するのは相当でない」に改める。
⑻ 原判決62頁24行目の「そうである以上」を「しかしながら」に、26
行目の「特許出願人の合理的意思に沿う」から63頁2行目の「そうすると」
までを「特許出願人の合理的意思に沿うものである上、本件発明は、顧客に
選択された企業が、クレジットカード管理会社の提供する通常のポイントと
は別に、同じくクレジットカード管理会社の提供する特別のボーナスポイン
トを付与するようにして、クレジットカード加盟企業の拡大を図るとともに、
加盟企業の負担なく、その販売網を広げリピーターを増加させるというもの
であるところ(本件明細書【0006】)、クレジット購入情報が送られて
きたタイミングないし時点で処理を行う構成によることの技術的意義は、本
件明細書において何らの開示も示唆もされていないことからすると」にそれ
ぞれ改め、同頁4行目及び7行目の「処理を開始する」をいずれも「処理を
行う」に改める。
⑼ 原判決63頁5行目の「これに反する被告の主張は採用できない」を「被
告は、「クレジット購入情報が送られてきたとき」を処理のタイミングない
し時点と解するのが、構成要件B8の「購入のたびに」ボーナスポイント数
と累計ポイント数を記憶する構成と整合的である旨の主張をするが、構成要
件B8は、クレジットカードを使用して商品等の提供を受けた場合に、「購
入毎の購入金額」に応じて付与されるボーナスポイント数と累計ポイント数
を記憶する構成を特定するものであり、被告の主張はその前提において採用
できない。また、被告は、上記の「とき」を条件と解するとしても、本件各
システムが、通常ポイントの演算を行う前提として指定加盟企業であるか否
かの判断を行っていないことや、「今回の今回ポイント数」と「(今回の)
ボーナスポイント数」を演算し、これらを同じ「前回までの累計ポイント数」
に加算することは行っていないことから、構成要件Cを充足しない旨の主張
もするが、通常ポイントは指定加盟企業であるか否かにかかわらず付与され
るものであるし(構成要件A5、B6)、本件発明が解決しようとする課題
や発明の効果に照らすと、構成要件Cが各ポイントを演算、加算するタイミ
ングや方法についてまで特定するものとは解されず、上記主張は採用できな
い。」に改める。
⑽ 原判決64頁25行目から65頁7行目までを次のとおり改める。
「 そうであるとはいえ、構成要件B5は「前記顧客端末により、所定
数の加盟企業を指定できるようにすると共に、指定された所定数の加盟企
業の加盟企業コードを前記会員IDに紐付け」る構成を特定するものであ
るところ、本件発明は、特別のボーナスポイントを、加盟企業ではなく、
クレジットカード管理会社の負担としつつ、同管理会社にも利益があるク
レジット販売管理システムを提供することを目的(本件明細書【000
】)とするもので、同管理会社の負担に影響を及ぼす「加盟企業」の数
を所定数とすることの技術的意義は本件明細書において示唆されていると
いえるのに対し、「加盟企業コード」の数を所定数にすることによる技術
的意義は何らの開示も示唆もされていないことからすると、上記の構成は、
「加盟企業コード」の数を所定数とする構成を特定するものではなく、
「加盟企業」の数を所定数とする構成を特定するものと解するのが相当で
ある。
そして、VISA加盟店に係るシステムにおいて、●省略●「会員ID」
(クレジットカード番号)に紐付けられて●省略●VISA加盟店の場合
においても、構成要件B5、Cを充足するというべきである。被告は、
「カタカナ店舗名」について、命名ルールはなく、信頼性に欠け、守秘性
も有しない旨の主張もするが、これは上記判断を左右するものではない。」
⑾ 原判決65頁10行目から15行目までを次のとおり改める。
「 そうすると、本件各システムは、クレジつットカード加盟企業がネ
ット決済のみを行い「店舗端末」を備えない場合を除き、本件発明の技術
的範囲に属するものと認められ、被告は本件発明を実施するものといえ
る。」
⑿ 原判決67頁5行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「 被告は、本件発明の特徴的部分は本件演算構成のみであり、被告に
おいて当該構成を用いていないことから、被告に独占の利益は存しない旨
の主張をする。
しかしながら、前記のとおり、本件発明の特徴的部分は特徴的部分①及
び②というべきであるし、仮に、本件発明の特徴的部分が本件演算構成の
みであり、被告において同構成を用いていないとしても、使用者等は、職
務発明に係る特許権が存続する限り、当該特許権の行使により生ずる独占
の利益を享受し得ることを考慮すると、当該特許権の行使により現に利益
を受けているにもかかわらず、独占の利益が全く存しないなどとするのは
相当でない。」
⒀ 原判決67頁11行目の「ゴールド会員への切替え後」を「本件各サービ
ス登録後」に改める。
⒁ 原判決67頁22行目の「そうである以上」から23行目末尾までを「原
告の主張する算定方式は、前記の年間利用額の増額分の平均額をもって本件
発明の実施による売上高の増加額とする点において、上記の実情を踏まえる
ものではなく、採用できない。」に改める。
⒂ 原判決68頁2行目末尾に「原告は、仮想実施料率方式による場合、本件
各サービスにより、本件カードのメインカード化、GP会員への切替えが促
進され、会員の利用額が増加することによる利益が反映されない旨の主張も
するが、これらの利益は、後述する顧客一人当たりの売上高を算定する上で
考慮されている。」を加える。
⒃ 原判決73頁1行目及び13行目の「別紙「裁判所の認定額」の」をいず
れも「別紙「当裁判所の認定額」の」に改め、14行目末尾に「原告は、過
去の本件各サービスの利用者数やGP会員の増加数に照らすと、本件各サー
ビスの利用者数は、25万人ずつ増加するとすべき旨の主張をするが、急激
な増加傾向が長期にわたり継続するとは考え難いことは、上記のとおりであ
り、被告が、令和7年4月1日、本件各サービスにおいて付与されるポイン
トを、一部を除き、通常の3倍から2倍に変更していることからしても、上
記主張は採用できない。」を加える。
⒄ 原判決73頁16行目から21行目までを次のとおり改める。
「 クレジットカード加盟企業がネット決済のみを行い「店舗端末」を備
えない場合、構成要件A4を充足しないことは、前記のとおりである。
もっとも、構成要件A4は「前記メインサーバに接続され、店舗端末を備
えるクレジットカード加盟企業の店舗サーバ」を備える構成を特定するので
あるから、一部のクレジットカード加盟企業がネット決済のみを行い「店舗
端末」を備えない場合であっても、競合他社のクレジット販売管理システム
が「店舗端末を備えるクレジットカード加盟企業の店舗サーバ」を備える以
上、そのシステムは本件発明の技術的範囲に属することになり、当該システ
ムから、店舗端末を備え店舗サーバを備えているクレジットカード加盟企業
を殊更排除するなどの、およそ経済的合理性を有しない措置を講じない限り、
競合他社には本件特許権に基づく禁止権の効果が及ぶことからすると、本件
において相当の対価の額を算定するにあたり、売上高から前記の不実施部分
を減算するのは相当でない(したがって、構成要件A4に係る均等実施の成
否については、判断を要しない。)。」
⒅ 原判決74頁10行目の「同種技術分類における傾向を考慮しても」を
「同種技術分類における傾向に加え、本件カードの会員数の推移、被告によ
る本件各サービスに係る広告宣伝状況(甲40)を併せ考慮しても」に改め
る。
⒆ 原判決76頁7行目の「これらの事情を踏まえると、」の次に「被告の本
件各システム、本件各サービス等に係る負担のうち、仮想ライセンシーが本
件発明を実施する場合に通常負担すべきものについては、仮想実施料率の算
定において考慮するとしても、」を加える。
⒇ 原判決76頁21行目の「50%と評価するのが相当である」を「共同発
明者間における各共同発明者の貢献割合は、特段の事情がない限り、均等な
ものと推認するのが相当であるところ、前記の本件発明の経緯に照らすと、
本件において、上記特段の事情があるとは認められないことから、これを3
%と評価するのが相当である」に改める。
(21) 原判決77頁3行目の「別紙「裁判所の認定額」の」を「別紙「当裁判
所の認定額」の」に、6行目から7行目にかけての「●省略●」を「184
万1370円」にそれぞれ改める。
(22) 原判決77頁9行目から17行目までを次のとおり改める。
「 原告は、在職中、業績連動報酬を含む報酬を受けたことが認められる
が、上記報酬に、本件発明に係る特許を受ける権利の譲渡の対価に相当する
ものや、本件発明に関連して原告に付与された報酬に当たるものが含まれる
ことを認めるに足りる証拠はない。」
(23) 原判決77頁20行目の「220万3446円」を「1849万137
円」に改める。
第5 結論
以上によれば、原告の本件控訴は一部理由があるから、原判決を主文第2項
及び第3項のとおり変更し、被告の本件控訴は理由がないから、これを棄却す
ることとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森 冨 義 明
裁判官
菊 池 絵 理
裁判官
頼 晋 一
(別紙)「当裁判所の認定額」
省略
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