令和8(ワ)1987損害賠償請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 大阪地方裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年6月11日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告株式会社PureWhite 被告A
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| 法令 |
著作権
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| キーワード |
損害賠償7回 許諾3回
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| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
本件は、原告が、被告に対し、原告が運営するライブ配信プラットフォーム
において配信された動画を、被告が原告の許諾なく無断で録画・保存し、他の
裁判手続における資料として使用したこと、原告の顧客に不当なDM(ダイレ
クトメール)を送信して動揺や不信感を与えたことが、同配信プラットフォー
ムの規約に違反し、原告に対する不法行為を構成するとして、不法行為又は債
務不履行に基づき、損害金384万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日
(令和8年1月15日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延
損害金の支払を求める事案である。 |
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判決文
令和8年6月11日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和8年(ワ)第1987号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和8年4月16日
判 決
原 告 株式会社Pure White
代表者代表取締役
被 告 A
10 訴訟代理人弁護士 日 高 伸 哉
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
15 第1 請求
被告は、原告に対し、384万円及びこれに対する令和8年1月15日から
支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、原告が運営するライブ配信プラットフォーム
20 において配信された動画を、被告が原告の許諾なく無断で録画・保存し、他の
裁判手続における資料として使用したこと、原告の顧客に不当なDM(ダイレ
クトメール)を送信して動揺や不信感を与えたことが、同配信プラットフォー
ムの規約に違反し、原告に対する不法行為を構成するとして、不法行為又は債
務不履行に基づき、損害金384万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日
25 (令和8年1月15日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延
損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認められる事実)
(1) 被告は、令和5年11月、B (以下「B 」という。)に対し、令
和4年末から令和5年6月にかけてB から被告が購入した商品に不具合が
5 あったと主張して、代金返還及び損害賠償を求める訴訟を提起した(以下
「別件訴訟1」という。乙18、弁論の全趣旨)。
B は、当初商品販売等の事業を自ら行っていたが、令和5年10月に原
告が設立されて以降、原告がその事業を行うようになり、B は原告の従業
員としてこれに従事するようになった。B は、令和6年5月頃から同年7
10 月頃にかけて、ライブ配信プラットフォーム「ピースユー」(以下「本件プ
ラットフォーム」という。)における原告のアカウントページにおいて、別
件訴訟1に関する情報をライブ配信した(以下「本件配信」という。争いな
し。弁論の全趣旨。)。
令和6年6月12日、別件訴訟1につき、被告のB に対する請求を一部
15 認容する判決がされた(乙18)。被告は、同判決の確定後、令和7年3月
に、B に対する債権差押命令を申し立てた(乙7)。
(2) 令和7年5月、B について破産手続が開始された(乙4)。
被告は、同年7月、B 、原告及び原告代表者に対し、本件配信の一部に
おいてB が被告を誹謗中傷したなどと主張して、損害賠償を求める訴訟を
20 提起し(以下「別件訴訟2」という。乙8)、同年8月、別件訴訟2のうち
B に対する訴えを取り下げた(乙10)。
被告は、同年8月、B の破産手続において、免責についての意見書を裁
判所に提出した。同意見書には、本件配信に係る画面のスクリーンショット
や本件配信の音声の反訳書が添付されていた。(甲1、争いなし。)
25 (3) 令和7年10月30日、別件訴訟2において、被告と原告及び原告代表者
との間で、原告及び原告代表者が被告に対して和解金として連帯して15万
円を支払うこと、被告が原告及び原告代表者に対し、原告の運営するライブ
配信にコメントを送付する等、直接接触しないと約束すること、原告及び原
告代表者が被告に対し、本件の経緯について謝罪することなどを内容とする
和解が成立した(以下「別件和解」という。乙1)。
5 同和解においては、「原告(本件における被告)と被告ら(本件における
原告及び原告代表者)は、原告と被告らとの間には、本和解条項に定めるも
ののほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。」との清算条項
(以下「別件清算条項」という。)が設けられた(乙1)。
2 争点及び争点に対する当事者の主張
10 (1) 被告が本件配信を録画・保存したことの不法行為ないし債務不履行該当性
(争点1)
【原告の主張】
ア 被告は、本件配信にかかる映像を原告の許諾なく録画・保存し、前記前
提事実(2)のとおり、B の破産手続上の資料として複数回利用した。
15 イ 被告の上記行為は、B を継続的に監視追跡する行為に該当し、同人に
精神的に著しい負担を与える結果となった。また、被告は、原告の顧客
に対し、不当な内容のDM(ダイレクトメッセージ)を送り、顧客に動
揺や不信感を与え、原告の顧客関係維持に多大な負担を与えた。
被告のこれら行為は、許可なき録画・保存を禁止するなど本件プラット
20 フォームにおける原告アカウントの利用規約に違反するものであり(甲
4)、原告の配信活動及び販売事業の信頼基盤を損なうものである。
ウ よって、被告は、不法行為ないし債務不履行に基づき、原告に対する損
害賠償義務を負う。
【被告の主張】
25 ア 被告が、本件配信にかかる映像を原告の許諾なく録画・保存し、自己の
訴訟資料として複数回利用したことは、認める。
イ 被告の上記行為が、原告に対する不法行為ないし債務不履行を構成する
との主張は、いずれも否認ないし争う。
なお、録画禁止の文言は、令和7年8月2日時点の本件プラットフォー
ムの原告アカウントのページには記載されていなかった。
5 (2) 原告の損害の有無及び額(争点2)
【原告の主張】
被告による不法行為ないし債務不履行により、原告には以下のとおり合計
384万円の損害が発生した。
ア 無断録画及び配信映像の使用による信頼失墜・営業損害
10 300万円
イ 録画行為に起因する配信停止及び売上減少等の実損
64万円
ウ 顧客への不当なDM送付による信用毀損・顧客離脱損害
20万円
15 【被告の主張】
否認ないし争う。
(3) 本件損害賠償請求権が別件清算条項により消滅したか(争点3)
【被告の主張】
別件清算条項にあるとおり、被告は、原告と被告との間の紛争を終局的に
20 解決する目的で別件和解をしたものであって、別件和解成立時点までの原告
と被告との間の紛争はすべて解決されている。
本件訴えは、和解成立前の違法行為及び和解成立前に発生した損害につい
て賠償を求めるものであり、別件清算条項により清算済みであって、原告に
は請求権がない。
25 【原告の主張】
本件訴えは、別件訴訟2の対象とは別個の紛争に基づくものであり、別件
清算条項の効力が本件訴えに係る請求にまで及ぶことはない。
第3 当裁判所の判断
1 争点3について
事案の性質に鑑み、争点3から判断する。
5 前記前提事実(3)のとおり、別件清算条項は「本件に関し」といった限定を
付さない包括的清算条項であり、その文言上、あらゆる債権債務を清算の対象
とする趣旨であると解されるところ、同文言上の解釈と異なる意味に解すべき
特段の事情は見当たらないのであって、したがって、別件清算条項は、別件和
解成立時に原告と被告との間に存在するあらゆる債権債務を清算の対象とする
10 ものと解するのが相当である。
そして、原告が不法行為ないし債務不履行の内容と主張する被告による本件
配信の録音・録画やその利用は、別件和解の成立よりも前に行われたもので
(前記前提事実(2)(3))、また、同じく原告が問題とする被告によるDMの送
信も、やはり別件和解の成立よりも前の行為である(甲8、9)ことに照らせ
15 ば、仮に別件和解成立時に原告・被告間に原告の主張する損害賠償請求権が存
在していたとしても、別件清算条項の対象となるというべきである。
この点、原告は、別件清算条項の効力は、別件訴訟2の対象となった紛争関
係の範囲に限定される旨主張するが、「本件に関し」との限定を付さない包括
的清算条項の解釈として相当なものではない。また、原告は、令和7年9月1
20 7日付の別件訴訟2の答弁書において、被告が本件配信を録画していることに
言及しており(乙11)、別件和解より前の段階で、原告が被告による録画・
保存の事実を認識していたと認められるほか、被告による上記DMの送信につ
いても、原告が別件和解よりも前に把握していた事項であり(甲8、9)、い
ずれについても、別件和解の成立時に、原告及び被告間の紛争ないしその経過
25 の一部をなすとの認識があったといえるのであるから、包括的清算条項たる別
件清算条項の対象となることは、より明らかといえる。
したがって、仮に本件訴えにかかる損害賠償請求権の成立が認められるとし
ても、これは別件清算条項によって消滅しているというべきである。
2 小括
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由
5 がない。
第4 結論
以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文
のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
10 裁判長裁判官
松 川 充 康
15 裁判官
小 野 健
20 裁判官
横 井 真 由 美
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