令和7(ネ)10083職務発明対価等請求控訴事件
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| 裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和8年6月16日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
被控訴人株式会社日本コーティング
A
|
| 法令 |
特許権
特許法35条4項1回
|
| キーワード |
ライセンス5回 無効4回 職務発明1回 特許権1回 無効審判1回 新規性1回 侵害1回
|
| 主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 |
| 事件の概要 |
2の1。同第4の1以降において、被控訴人A本人及び被控訴人会社代表者を
単に「被控訴人A」と表記することも含む。なお、本件各出願及び本件各特許
の出願番号、特許番号、発明の名称を掲記すると、本判決添付別紙1のとおり
である。)に従う。ただし「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」
と、「別紙」を「原判決別紙」とそれぞれ読み替え、原判決別紙3については、
本判決添付別紙3に改める。) |
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判決文
令和8年6月16日判決言渡
令和7年(ネ)第10083号 職務発明対価等請求控訴事件(原審 大阪地方裁
判所令和6年(ワ)第9061号)
口頭弁論終結日 令和8年4月23日
5 判 決
控 訴 人 X
同訴訟代理人弁護 士 中 野 博 之
10 被 控 訴 人 株式会社日本コーティング
(以下「被控訴人会社」という。)
被 控 訴 人 A
15 上記両名訴訟代理人弁護士 澤 田 憲 治
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人会社は、控訴人に対し、1800万円及びこれに対する令和6年3
月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、200万円及びこれに対する令和
25 6年3月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
5 2、3項につき仮執行宣言
第2 事案の概要(略語(呼称)は原判決の表記(原判決「事実及び理由」中の第
2の1。同第4の1以降において、被控訴人A本人及び被控訴人会社代表者を
単に「被控訴人A」と表記することも含む。なお、本件各出願及び本件各特許
5 の出願番号、特許番号、発明の名称を掲記すると、本判決添付別紙1のとおり
である。)に従う。ただし「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」
と、「別紙」を「原判決別紙」とそれぞれ読み替え、原判決別紙3については、
本判決添付別紙3に改める。)
1 本件は、①控訴人の被控訴人会社に対する、出願Aないし出願Cに係る各発
10 明に関する平成27年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許
法」という。)35条3項に基づく「相当の対価」として、出願Dないし出願F
に係る各発明に関する特許法35条4項に基づく「相当の利益」として、合計
1800万円の支払請求(ただし、相当の対価ないし利益の額が、発明Aにつ
き3969万円、発明B及び発明Cにつき計432万円、発明D及び発明Eに
15 つき計1764万円、発明Fにつき1305万円をそれぞれ下回らないものと
して、その合計7470万円の一部請求)及びこれに対する被控訴人会社に対
して請求した日の翌日である令和6年3月27日から支払済みまで民法所定の
年3パーセントの割合による遅延損害金の附帯請求、②控訴人の被控訴人らに
対する、発明AないしC及び発明Eにつき、控訴人が発明者又は共同発明者で
20 あるにもかかわらず、発明者と記載することなく出願をし、もって、控訴人の
発明者名誉権を侵害したとして、被控訴人Aに対し不法行為に基づく、被控訴
人会社に対し会社法350条に基づく、発明一つにつき50万円の合計200
万円及びこれに対する被控訴人らに対して請求した日の翌日である令和6年3
月27日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金
25 の附帯請求(連帯請求)を求めた事案である。
原審が、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がその取消しを求
めて本件控訴を提起した。
2 前提となる事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、
後記第3のとおり当審における控訴人の主な補充主張を付加するほかは、原判
決「事実及び理由」中の(以下、原判決の「事実及び理由」中の記載を引用す
5 る場合に「事実及び理由中の」との記載を省略する。)第2の3、4及び第3(原
判決2頁22行目から32頁14行目まで。原判決別紙1を含む。)に記載のと
おりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決5頁9行目の「本件各特許に関する」を「職務上発明した本件各発
明について、特許を受ける権利を被控訴人会社に黙示に譲渡し、被控訴人会
10 社はこれにつき特許を取得したとして、本件各特許及び特許第554634
1号についての」と、同頁10行目の「発明Eに関する」を「発明E及び上
記特許第5546341号に関し、控訴人が発明者であるのに被控訴人会社
が出願するに際し発明者とされていないことにつき」とそれぞれ改め、同頁
11行目の末尾の次に「上記特許第5546341号は、発明の名称を『着
15 色透明被膜、熱線吸収用透明被膜及びその製造方法』とし、発明者を被控訴
人A及びKとして、平成22年5月14日に出願され平成26年5月23日
に特許登録がされたものであった(乙3の6。以下、この特許の発明を「3
41発明」という。)。」を加え、同頁26行目の「発明したものである。」を
「職務上発明し、本件各出願までに被控訴人会社が特許を受ける権利を承継
20 (控訴人は、慣習的・黙示的に譲渡したと主張する(訴状2頁))したことに
より、被控訴人会社において特許権を取得したものである。」と改める。
⑵ 原判決5頁19行目の「本件各発明の特許法35条7項の『相当の利益』
の額」を「本件各発明の改正前特許法35条3項の『相当の対価』の額ない
し特許法35条4条の『相当の利益』の額(以下、それらを特に区別せず『相
25 当の利益の額』という。)」と改め、同27頁24行目の「本件各発明の特
許法35条7項の『相当の利益』の額」を「本件各発明の改正前特許法35
条3項の『相当の対価』の額ないし特許法35条4項の『相当の利益』の額
(相当の利益の額)」と改める。
⑶ 原判決18頁22行目、同19頁3行目及び同頁5行目の各「シーバス
リンク社」をそれぞれ「シーバスリンク株式会社」と改める。
5 ⑷ 原判決30頁20行目の「相当の」を削り、同頁25行目、同31頁1
行目及び同頁3行目の各「相当な対価」をそれぞれ「相当の利益の額」と改
める。
⑸ 原判決31頁15行目から同頁25行目までを「否認し、争う。」と改め
る。
10 ⑹ 原判決32頁11行目の「4つ」を「四つ」と改める。
第3 当審における控訴人の主な補充主張
原判決には、以下に述べるとおりの誤りがあり、これらにつき正しい認定を
すれば、控訴人は本件各発明の発明者として認められるべきである。
1 「原告は、被告会社を退職するに際し、被告会社で保管、保存されていた本
15 件各発明に係る資料、メールなどを大量に、かつ、広範囲にわたって持ち出し
たものといえる」(原判決36頁7行目ないし9行目)と認定した点の誤り
⑴ 控訴人は、他の社員のハラスメント行為を注意したにもかかわらず、20
22年(令和4年)11月12日、些細な理由で逆に自らが突然配置転換さ
れ、研究開発をしていた本社から大物工場に異動させられた(甲176、1
20 93)。その日から、控訴人は、研究成果が保管されている本社には立ち入る
ことができなくなった。
⑵ 2023年(令和5年)5月7日、控訴人は、被控訴人Aから、会社は示
談で進めていきたい旨述べられ示談金500万円以上が必要であると示唆さ
れ、妻に内緒で金融機関から借り入れするよう提案された(甲177、17
25 8、193)。
そのため、同月12日、控訴人は適応障害となり(甲180)6か月間休
職を余儀なくされた(甲181、182)。
⑶ 控訴人は、休職している間の2023年(令和5年)10月27日に定年
を迎えた(甲50)。2022年(令和4年)11月12日の突然の配置転換
の日から、控訴人は、研究成果が保管されている本社には立ち入ることがで
5 きなくなっており、休職中に定年退職したのであるから、研究成果を「持ち
出す」ことは不可能であった(甲193)。
⑷ 控訴人が原審で提出した図面等は、中国出張を頻繁に行っていた控訴人が
(甲143ないし165など)出張用にスマートフォンなどに入れて所持し
ていたものであり、限定的な範囲のものにすぎない(甲193)。
10 ⑸ 本件各発明のためには、着想段階での構想図や回路図、各パーツ図面の平
面図(正面図、側面図等)、三次元図面、組立図面、仕様書、単体の評価実験
結果(単体の部品として評価できるものは評価をする、例えば冷却ファンで
あれば防水ファンを使用するので、ファン単体を水につけ回転させ、何時間
で不具合が発生する等のテスト、バルブとしてサンプル完成した場合、点灯
15 後出力調整等(明るさ調整)しながらバルブ自体の温度評価や、耐久性評価、
振動試験等)など一つの発明で少なくとも100~200個程度の図面や実
験データが必要である(甲193)。また、特許出願のためにも同様に大量の
図面作成を要する。原審で控訴人が提出した図面等の数は、六つの特許発明
の合計でわずか100個程度であり、その10倍以上を控訴人は作成して被
20 控訴人会社に置いてきている(甲193)。
したがって、原判決が「原告は、被告会社を退職するに際し、被告会社で
保管、保存されていた本件各発明に係る資料、メールなどを大量に、かつ、
広範囲にわたって持ち出したものといえる」とした認定は明らかに誤ってい
る。
25 ⑹ 原判決は、あたかも控訴人が、発明者でもないにもかかわらず不当な訴訟
を起こす目的で退職時に「本件各発明に係る資料、メールなどを大量に、か
つ、広範囲にわたって持ち出した」旨認定するが、真実は逆である。その後
も被控訴人Aは、社長という最高責任者でありながら、控訴人が原因で被控
訴人Aと被控訴人会社の社員との信頼関係が損なわれたために被控訴人Aの
精神的苦痛が金1000万円に相当するなどと主張して、控訴人の自宅の仮
5 差押えを行う(甲183)とともに、到底認められるはずのない不当訴訟を
起こし(甲184)、そのうえ、本訴提起によって被控訴人代理人に着手金・
報酬金として569万3710円の「支払を約束した」ことにより損害が発
生したなどと主張して再度控訴人の自宅の仮差押えを行い(甲185)、控訴
人を無理矢理経済的に追い詰めようとしている。
10 2 当事者双方の主張立証がないにもかかわらず「原告は、被告会社を退職する
に際し、被告会社で保管、保存されていた本件各発明に係る資料、メールなど
を大量に、かつ、広範囲にわたって持ち出したものといえる」
(原判決36頁7
行目ないし9行目)と認定した点の誤り
⑴ 原審裁判所は、当事者双方の立証がないにもかかわらず表題の事実を認定
15 しており、民訴法247条違反である。
⑵ 原判決は、表題の事実から、
「事実認定の補足説明」のイ(原判決36頁4
行目)において「原告の発明者性を根拠づける他の証拠が被告らのもとに存
在する可能性を念頭においての訴訟進行ないし証拠評価などをすべき事案と
はいえない」
(原判決36頁11行目ないし13行目)と評価し、表題の事実
20 を、控訴人が発明者ではない旨の認定の重要な間接事実に用いた。
しかし、原告が退職の際に被控訴人会社から本件各発明に係る資料、メー
ルなどを大量に持ち出したなどという事実は、両当事者のいずれも主張して
いない。にもかかわらず、原判決は、表題の事実を認定して重要な間接事実
として用いた。このような原審の認定判断は、弁論主義違反、釈明義務違反
25 であり、憲法31条の適正手続の規定に反する。
また、控訴人の退職は、本件各発明がなされた後の事実であり、本件訴訟
で争点となった発明者性とは無関係である。本来は控訴人の退職の経緯など
は主張立証の必要のない事実であるから、原判決で表題の事実を認定するの
であれば、少なくとも当事者に求釈明すべきである。原審の訴訟指揮は、釈
明義務違反であり、この点からも憲法31条の適正手続の規定に反する。
5 3 控訴人の電子印鑑が付されたファイルであってもJが作成したという、ファ
イルシステム上あり得ない内容の事実認定をした誤り
⑴ 原判決は、
「エクセルファイルの一部には、原告の印影を模した画像が張り
付けられたものがあるが、原告が部長職としての肩書を付与されていたこと
から、決裁ないし供閲したことを示したものとも解しうるところであり、こ
10 れを超えて、原告が技術的に関与した結果、これらのファイルが作成された
ものと認めるに足りる証拠はない」(原判決38頁22行目ないし同39頁
1行目)とし、「作成者」も「前回保存者」も「J’」となっている「X」の
電子印鑑が付されたファイルであってもそれらはJが作成したと認定した。
15 しかし、J自身も「X」の名前や電子印鑑は控訴人が付けたと思う旨陳述
し自らが付けたことを否定している。また、下記のとおり、控訴人が自分の
「印影を模した画像」を「張り付け」たら、当該ファイルの「前回保存者」
は控訴人が使用したエクセルのユーザー名に変わるはずである。上述のとお
り、当該ファイルの「前回保存者」が「J’」と表示されているのは、控訴人
20 が使用していたエクセルのユーザー名が当時「J’」であったからである。ま
た、当該ファイルの「作成者」も「J’」であることから、当該ファイルを最
初に作成した者も控訴人である。
⑵ 原判決は、
「原告は、本人尋問において、当時使用していたパソコンのログ
イン名が原告名義であったこと、そのため、インストール中にデフォルトで
25 表示されるユーザー名が原告のものであったことは認めているところ、原告
の主張するとおりであるとすると、原告は、自分のパソコンにエクセルをイ
ンストールする際、あえて、J名義でインストールしたこととなるが、裏付
けのないままで直ちには信用しがたい事実経過といえる(原告は、ライセン
ス上の問題があったとも述べるが、ユーザー名をJ名義にしたからといって
ライセンス上の問題が解決されるわけではない。)。」(原判決35頁17行目
5 ないし24行目)として、控訴人の供述を採用しなかった。
しかし、本件において、本当に「ライセンス上の問題が解決される」かど
うかは問題ではない。複数のPCにインストール可能なライセンスは当時実
際に多数存在していたのであるから、控訴人がそのような認識でJ名義(エ
クセルのユーザー名を「J’」名義とすること)でインストールしたこと自体
10 は不自然ではなく、控訴人の供述の信用性に疑問を持つ根拠にはならない。
また、当時被控訴人会社は、エクセルのライセンスを購入していなかった
のであり、これに反する被控訴人Aの証言「ちゃんとした正規のもの、マイ
クロソフトのものを買って。」は虚偽である。後述するとおり、当時は、Jに
15 はPCさえ専用のものが与えられていなかったため、J個人のPCを会社に
持ち込んで、空き時間にインターネットを閲覧するなどしていたのである。
4 作成者を控訴人とする書証として控訴人が提出した実験データにつき、被控
訴人らは、9か月間何ら作成者を争っていなかったにもかかわらず、裁判所か
らファイルのプロパティ上の「作成者」や「前回保存者」が「J’」となってい
20 る事実を指摘された途端に、当該データの作成者がJであると主張し始めると
いう不自然な訴訟追行を行っていたのに、ファイルシステム上あり得ないこと
が記載されたJの陳述書の記載内容を真実と認め、不自然さを無視して被控訴
人らの主張を真実と認めた誤り
⑴ ファイル名「LED各社データ 121108」のエクセルファイル(甲35(プ
25 ロパティ)、甲36(印刷物)。なお、その電子ファイルは甲127のDVD
中にある。)は、原審において令和6年11月15日付けの証拠説明書⑵とと
もに提出したものである。また、控訴人は、同時に提出した第1準備書面に
記載のとおり、甲36は控訴人が作成したものであると主張した。しかし、
被控訴人らが、このファイルの「作成者」が控訴人ではないと主張し始めた
のは、裁判所がファイルのプロパティ上の「作成者」や「前回保存者」が「J’」
5 となっている事実(甲186)を指摘した令和7年7月8日の原審弁論準備
手続から約2か月が経過した同年8月28日付けの被控訴人らの証拠説明書
⑺(Jの陳述書である乙27の説明を含むもの)が最初であり、甲36が提
出されてから9か月も経過した後である。
Jはその陳述書において、
「被控訴人A社長の補佐役の一人として、LED
10 部品加工部門の工場長を任され、次の開発品の相談や、台湾製の加工機械の
選定のため海外出張の同行を行ったり、社長から直接指示を受けて、データ
を纏めたり、部品の図面をCADで作成していました。」(乙27の1頁11
行目ないし13行目)と述べる。仮に、Jが被控訴人Aから直接指示を受け
てデータをまとめたりしたのであれば、指示をした張本人であるはずの被控
15 訴人Aは、甲36が被控訴人AがJに直接指示して作成させたものであるこ
とをすぐに見抜き、直ちにその旨反論するはずである。
しかし、被控訴人らが、プロパティ上の「作成者」や「前回保存者」が「J’」
であるファイルの「作成者」が控訴人ではない旨を主張したのは甲36が提
出されてから9か月も経過した後である。9か月間もの間、被控訴人らが反
20 論できなかったのは、そもそも被控訴人AがJにデータまとめなど指示して
いないからである。
Jはその陳述書において、
「社長から直接指示を受けて、データを纏めたり、
部品の図面をCADで作成していました。」(乙27の1頁13行目)と述べ
る。被控訴人らの主張によると、被控訴人AがJに直接指示をしているので
25 あるから、訴状が送達された時点で、甲140ないし142などLEDラン
プに関する実験結果をまとめた資料を証拠として提出し、実験したのは控訴
人ではなく、被控訴人AかJが実験していた旨主張できるはずである。
ところが、被控訴人らは、Jがデータをまとめて作成したとする成果を一
切提出しない。真実は、被控訴人AがJに指示などしていないからである。
⑵ 上記の事実からすると、被控訴人らは、裁判所がファイルのプロパティ上
5 の「作成者」や「前回保存者」が「J’」となっている事実を指摘したことを
知ってから、Jに虚偽内容の陳述書を作成させたとしか考えられない。以下
で述べるとおり、ファイルのプロパティ上の「作成者」や「前回保存者」が
「J’」であるファイルを作成したのは、Jではなく控訴人である。
10 ⑶ Jの陳述書には「資料のプロパティに私の名前が出ているのは、私が以前
に作ってメールしたものなので、当然のことです。Xさんは、それを自分で
作ったと主張していますが、実際には私が作ったものをメールで受け取って
から、後で自分の名前や電子印鑑を付けて提出しているだけだと思います。」
(乙27の1頁20行目ないし23行目)と記載されている。
15 しかし、上記で説明したとおり、後で自分の名前や電子印鑑を付けたら「前
回保存者」は電子印鑑などを追加した者(が使用したエクセルのユーザー名)
に変わるのである。したがって、甲36、140ないし142のように、
「X」
の記載や電子印鑑などを追加されているファイルの「前回保存者」が「J’」
と表示されているのは、
「X」の電子印鑑等を付した控訴人が使用していたエ
20 クセルのユーザー名が前回保存した当時「J’」であったことを示している。
同時に、これらのファイルの「作成者」も「J’」であることから、当該ファ
イルを最初に作成した者も控訴人であることが推定される。
もし、Jが陳述するように「これまで私は、Xさんにエクセルのソフトを
25 貸したこともありません。」
(乙27の1頁下から3行目)というのであれば、
控訴人が使用したエクセルのユーザー名、すなわち甲36、140ないし1
42のファイルの「前回保存者」が「J’
」と表示されることはない。そして、
Jが陳述するように「私が作ったものをメールで受け取ってから、後で自分
の名前や電子印鑑を付けて提出」したのであれば、これらのファイルの「前
回保存者」と「作成者」は異なるユーザー名を表示するはずである。例えば、
5 Hに外注先への問合せを指示して結果をまとめさせるために控訴人が作成し、
その後Hが結果を入力したエクセルファイルは、
「作成者」が「J’」
(控訴人
のエクセルのユーザー名)、
「前回保存者」が「lenovo」
(Hのエクセルのユー
ザー名)となっており、
「前回保存者」と「作成者」とは異なるユーザー名に
なっている(甲187(メール)、甲188(ファイル印刷物、プロパティの
10 印刷物)、甲192(電子データ))。
ところが、甲36、140ないし142のファイルの「作成者」も「前回
保存者」も「J’」となっており同一である。
「作成者」や「前回保存者」
(「最
終更新者」)の表示の仕組みは既に説明しているが、被控訴人らは、エクセル
ファイルなどのファイルシステムの仕組みを理解していないため、このよう
15 にファイルシステム上あり得ない内容の陳述書を作成させてしまうのである。
⑷ Jは現場のオペレーターであった。甲167、168のメール(他にも同
様のメールはある。)のとおり、被控訴人Aは、Jの勤務態度を問題にして控
訴人に相談していた。仮に被控訴人Aが述べるように、控訴人が単なる作業
20 員で、逆にJが特許発明に関する図面作成や実験データのまとめなどの知的
労働をしていたのであれば、被控訴人Aは甲167、168のように控訴人
にJのことを相談するはずがない。
甲167のメールは2013年(平成25年)3月30日に発信、甲16
8のメールは同年4月8日に発信されたものであり、本件特許Aを出願する
25 同月17日の直前である。また、被控訴人らの主張によるとJが作成したこ
とになる甲186のエクセルファイル(更新日2012年(平成24年)1
1月8日)や甲140のエクセルファイル(更新日同年10月18日)の最
終更新日の約半年後、同じくJが作成したことになる甲141のエクセルフ
ァイル(更新日2013年(平成25年)4月19日)、甲142のエクセル
ファイル(更新日同年3月12日)の最終更新日とほぼ同時期である。
5 このように、被控訴人らの主張によるとJが作成したことになるエクセル
ファイルの最終更新日の半年後又はほぼ同時期に、被控訴人Aから甲167、
168のような評価を受けていたJに対して、被控訴人Aが「直接指示を受
けて、データを纏めたり、部品の図面をCADで作成」
(乙27の1頁13行
目)させたとは到底考えられない。なお、甲168のメールの「サムライ」
10 (甲168の下から5行目)とは、「バッサリ切り捨てる役割」、つまり退職
させる役割の人を意味し、当時被控訴人Aは控訴人にこのような役割をさせ
ることがあった。また、Jには、PCやメールアドレスさえ専用のものが与
えられていなかった。当時、被控訴人会社内で専用のPCを貸与されていた
のは、控訴人の他はI、N、Rなど数名であった。個人に貸与されたパソコ
15 ンについては、個人用のメールアドレスが設定されており、アドレスの「@」
の前には各人の姓を用いた形式となっていた。これらのメールアドレスの設
定作業は控訴人が担当し、各人に対してメールアドレス及び設定方法を個別
に連絡していた。2015年(平成27年)の初め頃、控訴人は、Jらが用
いる被控訴人会社の加工機部門のPCをセットアップし、同時にJらが用い
20 る共用アドレスを設定した。その共用アドレスは、甲169ないし173の
とおり、
「nihoncoatingfactory@nihoncoating.com」である。少なくとも控訴
人が出社しなくなった2023年(令和5年)5月まで、Jには個人名のメ
ールアドレスは与えられず、共用アドレスを使用していた。
5 控訴人が出願の半年以上前にCADで作成した部品図面を含む特許公報の図
25 面を被控訴人Aが目の前で手で書いたなどと事実に反する証言をしたC弁理士
の証言を信用して、被控訴人Aだけが発明者であり控訴人は発明者でないと認
定した誤り
⑴ 原判決は、
「特許Aの明細書に添付された図面は、その形態から、手書きで
作成されたものと認められる(甲2、証人C、被告本人)が、原告が図面作
成に関与したとも認められないし、その他、原告が、発明Aについて発明者
5 たりうる関与をしたと認めるに足りる証拠はない」(原判決39頁2行目な
いし5行目)と認定し、弁理士Cの証言内容を採用して、被控訴人Aを発明
者と認定する一方で、控訴人を発明者ではないとした。また、原判決は、
「特
許B及び特許Cの明細書に添付された図面は、その形態から、被告Aが手書
きで作成したものと認められる・・・が、原告が図面作成に関与したものと
10 も認められないし、その他、原告が、発明B及び発明Cについて発明者たり
うる関与をしたと認めるに足りる証拠はない」(原判決40頁7行目ないし
11行目)として、同様の認定をした。
⑵ これらの図面の大部分は発明者である控訴人がCADで作成したもので
ある。本件発明Bの特許公報甲3の図2の側面図における第2放熱台座(放
15 熱フィンの部分(内部に電動ファン含む))の図は、控訴人が2014年(平
成26年)8月7日にHに送付させたメール(甲86)の2番目の図(甲8
8)の向きを僅かに変えたものであり、これらは控訴人が3D(3次元)-
CADで作成したものである。
ところが、弁理士Cは、甲3の図2の側面図は被控訴人Aが手書きしたも
20 のを清書したと証言し、被控訴人Aは部品の写真をフリーハンドでトレース
して作成したと述べる。しかし、3D-CADで作成された図面(の少なく
とも一部)があるにもかかわらず、弁理士Cや被控訴人Aが証言するような
手間がかかる方法で図面を作成するはずがない。被控訴人らが、控訴人作成
にかかる図面等を開示しないため、現時点で控訴人は一部の図面に関する反
25 論しかできないが、以下で述べるとおり、被控訴人Aや弁理士Cの証言等は
全く真実とは異なることは明確である。
⑶ 弁理士Cは甲2(本件特許Aの特許公報)の図面は被控訴人Aが弁理士事
務所で全部手書きで作成し、それを弁理士事務所で清書した旨、甲3(本件
特許Bの特許公報)の図2も手書きを弁理士事務所で清書した旨を証言した。
しかし、これらの図面の大部分は控訴人がCADで作成したものである。
5 例えば、甲2の図9は、控訴人がCADで作成した甲49の図面とほぼ同じ
(甲49の図面は、控訴人が作成した後で、中国で加工を依頼する際加工し
やすいように若干変更され、確認の為Hから控訴人に送付された図である。)
である。また、甲3の図2(側面図)の第2放熱台座の放熱フィンの部品(中
に電動ファンが入っている。)は、控訴人が3D-CADで作成したものと同
10 じである(甲88、89)。なお、甲3の図2の正面図においては、第2放熱
台座の放熱フィンの部品は、甲89と上下逆になっているだけで同一である。
甲3の図2の側面図においては、甲88の放熱フィンのZ軸を中心に30度
程度回転させた角度から見た図になっているだけで放熱フィンの部品自体は
同一である。このように、これらの特許公報の図に描かれている部品は、控
15 訴人がCADで作成した図面の部品と向きが異なるだけで同一部品である。
控訴人は、被控訴人Aから求められ、CADで作成したこれらの部品の図
面のスクリーンショットを被控訴人Aに渡している。被控訴人Aはこれを弁
理士に提出し、それが特許公報にそのまま記載されたから、このように特許
公報の図面に描かれた部品と甲49(の変更前)、88、89の図面の部品と
20 が同一になるのである。
弁理士Cは、これらの特許公報の図面は、目の前で被控訴人Aが手書きで
作成したものをその後弁理士事務所で清書したものであると供述したが、仮
に弁理士Cの証言どおりであるならば、部品各部の大きさや位置が不正確に
記載されるであろう手書きの図を基にして、それを清書した特許公報記載の
25 図に描かれた部品が、控訴人が作成した図面の部品と酷似し、控訴人が作成
した図面の部品と寸分変わらないものになるはずがない。
⑷ 甲88、89の図は、控訴人が2014年(平成26年)8月7日にHに
送付させたメール(甲86)に添付されていたものであり、遅くともメール
の日付けの2014年8月7日の時点で完成していたはずである。
そうすると、甲88、89の図は本件特許Bを出願した2015年(平成
5 27年)3月5日より半年以上前に作成されていたことは明確である。それ
とほぼ同一の図面を被控訴人Aが弁理士の目の前で手書きで作成するはずが
ない。
⑸ 特許公報(甲3)の図2の「側面図」は放熱フィンの横穴(内部の電動フ
ァンやLEDチップ点灯用の電気配線を取り出す穴)が正面になる角度から
10 描かれた図面である。一方、甲87の2も同じ部品の三次元図であるが、放
熱フィンの横穴が正面ではなく30度程度斜めから見た図面である。手書き
図面でこのように同一部品につき視点の異なる二つの図を作成しようとする
と、角度の違いを計算するために莫大な時間がかかるため事実上不可能であ
る。この事実からも、特許公報(甲3)の図2の「側面図」は、三次元CA
15 Dを用いて作成されたことは明らかであり、手描き図面を清書して作成した
とする弁理士Cの証言内容は虚偽である。
⑹ 被控訴人Aは、特許公報の図に関し、全部手書きと述べたり、手書きは結
構あると述べたりして同一期日においても供述内容が変遷しているが、被控
訴人Aは、
「3DになっているのはOさんです」と供述し、三次元CADで作
20 成した図面はOが作成したとも述べている。
しかし、本件発明B(甲3)の出願日は平成27年3月5日であるところ、
Oが被控訴人会社に在籍していたのは平成28年4月から平成30年11月
までであり(乙16の4行目)、Oが甲3の図面を作成した可能性はない。
⑺ これらの事実から明らかなように、自らがこれらの図面を手書きで作成し
25 たとする被控訴人Aの供述、及び特許公報の図面を被控訴人Aが弁理士事務
所で全部手書きで作成したとする弁理士Cの証言内容は虚偽である。
6 被控訴人Aは、控訴人が研究開発に全く関係していない旨証言し、控訴人は、
「急ぎの部品とかをハンドキャリーで中国の工場、我々の協力工場に取りに行
く」などの補助者にすぎないとする一方で、他に図面を作成したとする者を差
し置いて、控訴人に名誉上の報奨をする趣旨で、控訴人の名を本件特許D,F
5 の発明者欄に記載した、などという矛盾した証言をしているにもかかわらず、
これらの被控訴人Aの証言に係る事実を真実と認め、特許公報上でも発明者と
記載され、特許庁審査官や審判官との面談にも同席していた控訴人を発明者で
はないと認定した誤り
⑴ 原判決は、
「同社代表者は、原告が開発に参加したことはない旨、述べてお
10 り(乙19)、かかる陳述は信用できるところ、その信用性を覆すに足りる証
拠はない。」(原判決42頁11行目ないし13行目)、「被告会社が、発明F
に係る特許出願において、発明者として、被告Aに加え、原告と記載したの
も、その当否はともかく、被告本人の供述するとおり、補助者として一定の
関わりをした原告に名誉上の報奨をする趣旨であったと理解される。」(原判
15 決42頁20行目ないし24行目)と認定し、被控訴人Aの供述内容を採用
して、被控訴人Aを発明者と認定する一方で、控訴人を発明者ではないとし
た。
⑵ 補助者として一定の関わりをした控訴人に名誉上の報奨をする趣旨で控
訴人を発明者欄に記載したとの被控訴人らの主張は以下のとおり不合理であ
20 る。
ア 被控訴人Aは、控訴人は、研究開発に関係したことは「全くない」と述
べ、控訴人は「工場の作業員」であるものの名誉として発明者に入れたと
供述する。
しかし、仮に被控訴人らの主張が正しいのであれば、実際に図面を作成
25 したりして研究に貢献した者(JやOなど)を差し置いて、控訴人を発明
者に入れるはずがない。被控訴人Aの供述によると、控訴人は「急ぎの部
品とかをハンドキャリーで中国の工場、我々の協力工場に取りに行く」こ
とで協力したにとどまるため、LEDランプの発明において名誉上の報奨
をする必要がないはずである。また、急ぎの部品等をハンドキャリーで中
国の工場に取りに行くのは出願後の工業化の段階であり、出願前に決めて
5 いるはずの発明者の決定の根拠にはなるはずもなく、この点からも被控訴
人Aの説明は不合理である。
イ 被控訴人らが提出したJの陳述書(乙27)によると、Jは「被控訴人
A社長の補佐役の一人として、LED部品加工部門の工場長を任され、次
の開発品の相談や、台湾製の加工機械の選定のため海外出張の同行を行っ
10 たり、社長から直接指示を受けて、データを纏めたり、部品の図面をCA
Dで作成していました。」
(乙27の1頁11行目ないし13行目)と述べ、
LEDランプの発明にかなり多くの寄与をしていることになっている。
また、被控訴人らが提出したOの陳述書によると、Oも「自動車用LE
D照明の試作品などを行っていました」(乙16の1頁9行目ないし10
15 行目)、「会社での開発案件の指示や業務に関しては、何を造るとか具体的
な指示や決定に関しては、すべて上司の」被控訴人A「社長が決めており、
私はその指示に従って業務を進めておりました。」(乙16の1頁16行目
ないし18行目)などと述べ、LEDランプの発明に寄与していることに
なっている。
20 このように、いずれの者も控訴人よりLEDランプの発明に寄与してい
ることになっており、これらの者を差し置いて控訴人だけを報奨するのは
極めて不自然である。
ウ 上記のとおり、被控訴人Aは、報奨のため控訴人を発明者に加えたと述
べた。しかし、控訴人は、被控訴人Aから発明者に加えられた事実を一切
25 聞いておらず、控訴人を発明者に加えた報奨の目的を達していない。この
ことからも、控訴人に名誉上の報奨をする趣旨で控訴人を発明者欄に記載
したとの被控訴人らの主張は不合理である。
エ 弁理士Dは、発明者ではない者を発明者に入れると、当該特許の無効理
由となること(特に米国特許出願などの際)を知りながら、被控訴人Aか
らそのような指示を受けた際にその理由を聞かず、何らのアドバイスもし
5 なかった旨証言した。
しかし、費用と時間をかけてせっかく出願しようとしている特許が無効
になるようなことを依頼者から頼まれた場合には、特許出願のプロフェッ
ショナルである弁理士は、それを避けるようアドバイスすることが職業倫
理上求められるはずである。にもかかわらず、その理由さえ聴かず、漫然
10 と無効理由を抱えたまま出願手続を進めるとは到底考えられない。弁理士
Dの証言は信用できない。
オ 控訴人は、意匠に係る物品を自動車用発光ダイオードランプとする意匠
の創作者であり創作者欄に記載されている(甲117ないし120)。これ
らの意匠は、本件発明と同時期に一連の発明・創作としてなされたもので
15 あり、これらの意匠公報に記載された図面も全て控訴人(または控訴人の
指示によるO)が作成したものである。特に、甲117の意匠は、アクア
用LEDランプのバルブ側の部分意匠であり、控訴人が本件特許Dの発明
者であることは明らかである(実際にも本件特許Dの発明者欄に控訴人の
氏名が記載されている。)。
20 これらの事実からも、控訴人が自動車用LEDランプの研究開発に従事
していたことは明らかであり、その他の控訴人の主張とも併せ考えると、
控訴人が発明者欄に記載されていない、本件特許A、本件特許B、本件特
許Cについても真実は発明者であることは明確である。
⑶ 少なくとも3回特許庁の審査官等と面接している控訴人を発明者ではな
25 いと判断するのは不合理である。
控訴人は、面接記録(甲24の1・2)のとおり、本件特許Aに関して2
回特許庁に行っている。また、本件特許Eの審査官とも平成30年12月1
9日に面接している(甲189)。
このように、少なくとも3回、特許庁の審査官等に対し技術的な面接をし
ている控訴人が発明者ではないと認定するのであれば、合理的な根拠がなけ
5 ればならない。
⑷ 被控訴人らは、後から判明した客観証拠に迎合するよう主張や供述を変遷
させており供述は信用できない。例えば、答弁書2頁14行目ないし15行
目では「原告は、被告らが特許出願を依頼した東京の弁理士と一度も協議し
ていない」と主張していながら、原審において令和6年11月15日付け原
10 告第1準備書面とともに甲24の1・2の面接記録が提出されると、
「面談に
出席する前後弁理士は原告と打合せなど一切会話していない。面談時も横に
座っていただけで発言もなく」(原審における令和7年1月22日付け被告
準備書面⑴の4頁24行目ないし26行目)と主張を変遷させた。
また、控訴人が特許庁に面接に行った回数についても、被控訴人Aは「2
15 回だけ」と言っている。これは、原審では証拠としては特許庁面接記録を二
つしか提出していないためと考えられ、平成30年12月19日(甲189)
の面接を考慮すると、実際には少なくとも3回控訴人は被控訴人Aとともに
特許庁に面接に行っている。
このように、被控訴人らは後から判明した客観証拠に迎合するよう主張や
20 供述を変遷させており供述等は信用できない。
⑸ 被控訴人Aは、控訴人と同行した理由につき、その後別の用事のため偶然
同行していた控訴人を「外で待っててもらっても良かった」が特許庁に入れ
た、「特許庁に行っただけ」と供述する。
しかし、特許庁の面接記録によると、控訴人と被控訴人Aは、
(弁理士を除
25 くと)2人だけで合計3回、特許庁に面接で訪れている。被控訴人Aが供述
するような、控訴人が別の用事のため偶然同行していたことが3回も生じる
偶然があるはずがない。被控訴人Aは、控訴人が研究開発に関係したことは
「ない」と供述するが、そのような研究開発に無関係な人物を特許庁に連れ
て行ったり、発明者欄に載せたりするはずがない。
また、控訴人は、被控訴人A、弁理士B、弁理士Cと少なくとも2回、特
5 許庁に行って審査官や審判官と面接している(甲24の1・2)。特許庁で審
査官や審判官と面接する前には、弁理士事務所等で審査官等にどのような説
明をするかを打ち合わせるのが通常である。現に、控訴人は、
(本件発明に関
し)「四谷の事務所で数回、C弁理士と会っています。」、「被控訴人A氏と一
緒に行きました。」と述べている。
10 このような事実に鑑みると、真実は控訴人が発明者(少なくとも共同発明
者)であるのであり、被控訴人Aは虚偽の供述・主張をしている。
⑹ 被控訴人Aは、控訴人は、研究開発に関係したことは「全くない」と述べ、
その一方で特許公報の図の作成者に関して「Oくんが作ったやつとかうちの
J君がつくったものを流用している部分もあります。3DのものはOさんで
15 す。」と供述する。
平成30年12月19日(甲189)の特許庁審査官との面接は、本件発
明E(甲6)の出願に関するものであるところ、甲6に記載された図面は、
いずれも3Dの図面である。仮に被控訴人Aの証言が正しいのであれば、研
究開発に全く関与していない控訴人ではなく、特許公報の図を作成したOか
20 Jを連れて行くはずである。ところが実際には、研究開発に関係したことは
「全くない」と被控訴人Aが供述するところの控訴人と一緒に面接に行って
いる。
このように、被控訴人Aの供述には、客観的事実と矛盾する点が多く信用
できない。
25 7 弁理士の前で差しとフリーハンドで特許公報の図面を全部書いたと供述した
被控訴人Aの証言を信用して被控訴人Aを発明者と認定した誤り
⑴ 特許公報の図面の大部分は控訴人がCADで作成したものである。被控訴
人Aは、甲2ないし7の特許公報に記載した図面は「特許事務所で弁理士の
先生の前で全部書きました」と証言し、使用したのは「差しとフリーハンド」
と述べ、直線定規(被控訴人Aが「差し」と述べるものは、「物差し」、つま
5 り直線定規と思われる。)を用いる以外は、フリーハンドで作成したと述べた。
被控訴人Aの陳述書にも同じ内容の記載がある。
しかし、甲3の図1と甲4の図1と図2以外は、到底フリーハンドと直線
定規で作成できるものではない。また、「特許事務所で弁理士の先生の前で」
書くとすれば膨大な時間がかかるのであり、弁理士にとっても被控訴人Aに
10 とっても合理的な時間の用い方ではない。被控訴人Aの供述内容は到底真実
とは考えられない。
このように被控訴人Aの供述内容はにわかに信用できるものではないため、
被控訴人ら代理人も本件特許Aの特許公報を示した上で「添付図面を示しま
す。図1から図9までありますけれども、これの中であなたが書かれた図面
15 はどれですか」と質問したところ、被控訴人Aは「全部です。恥ずかしい話、
本当に下手くそで。」と答え、書いた場所は「B事務所です。」と答えた。本
件特許Bについても特許公報を示された上で、「図1も図2もそう(手書き)
です。」と答えた。
被控訴人Aは、控訴人代理人からの「それは、打合せのとき、訪問してい
20 たときに、これを書いたということですか。」という質問に対しては、「明細
書に基づいて番号を振っていく必要がありますので、その説明のために書い
たと思います。」と答え、更に書いてくださいと言われて書いた旨述べた。
しかし、仮に被控訴人Aが発明者なのであれば、発明完成時に少なくとも
概念図はできているはずである。にもかかわらず被控訴人Aは、既に明細書
25 が出来ていて図面に番号を付する段階になって、弁理士の目の前で書いたな
どと不合理な供述をしており、被控訴人Aの供述は信用できない。
被控訴人Aは、写真を機械(を用いて)ではなく(フリーハンドで)トレ
ースしたと述べており、被控訴人Aの手書きを清書したとする弁理士Cの証
言と矛盾する。写真があるなら出願書類に写真を載せれば良いのであり、ト
レースする必要はない。また、仮に図面にする必要があるとしても、一旦被
5 控訴人Aが手書きでトレースする必要はなく、写真をもとに弁理士事務所で
清書すれば足りるはずであり、被控訴人Aの説明は不合理である。
⑵ 被控訴人Aは、甲2ないし7の明細書に記載した図面は「特許事務所で弁
理士の先生の前で全部書きました」と供述するが、その直後に「手書きは結
構あると思います。」と修正し、さらに「後半のものはCADのものも一部あ
10 りましたね」と訂正し、その後全部を弁理士の目の前で書いていないと訂正
し、最終的には、弁理士事務所に(渡す図面は)手書きで書くものが多いけ
れども、CADで渡すこともあり、CADで渡したものは「過去にほんと、
数えるくらい」と供述した。このように、被控訴人Aの供述は、同一期日の
当事者尋問中にも変遷しており、被控訴人Aの供述内容は信用できない。
15 ⑶ 被控訴人Aが陳述するようにCADで弁理士に図面を提出したなら、(仮
に被控訴人Aの供述どおり被控訴人Aはそれらを廃棄していたとしても)弁
理士事務所からそのファイルを取り寄せて、証拠として提出できるはずであ
る。また、当該ファイルは被控訴人らにとって有利な証拠になるはずである。
にもかかわらず被控訴人らはファイルを提出しない。このような態度からも
20 被控訴人Aの供述内容は信用できない。
8 設計図を廃棄したとの主張に疑問は挟まず被控訴人Aを発明者と認定した誤
り
⑴ 被控訴人らは、図面等がパソコンに保管されていたとしても10数年経過
した後も保管する会社はないと主張する。しかし、パソコン内やその他記録
25 媒体中に図面や実験データのファイルを保管しても保管場所を圧迫すること
はほとんどない。また、せっかく作成した図面等をわざわざ削除するにはか
なりの手間がかかる。被控訴人らの主張は不合理で信用できない。
⑵ 被控訴人Aは、「Oくんが作ったやつとかうちのJ君がつくったものを流
用している部分もあります。3DのものはOさんです。」と特許公報の図面の
一部はCADで作成したことを認める。CADで作成したファイルは、その
5 後起こりうる無効審判等の手続において、拡大図を作成したり、視野の角度
を変えて説明した図を作成するために保存しておくのが通常であり、合理的
な考えである。これに反して、特許公報の図面さえ廃棄した旨の被控訴人ら
の主張に疑問を挟まなかった原審の判断は誤っている。
9 Oが作成した図面も控訴人が指示・承認している証拠があるにもかかわらず、
10 控訴人は図面をOから提供を受けたにすぎないと認定した誤り
⑴ Oは、陳述書(乙16)において「業務においてX氏からの指示は受けた
ことはな」い旨や「X氏が開発に関わっていることを聞いたこともありませ
ん。」などと述べる。原判決もOの陳述書を信用し、「原告は、Oから図面の
提供を受けていたに過ぎない。」(原判決41頁7行目ないし8行目)、「O作
15 成の図面について、そこに具現化された上記技術思想が原告の指示に基づく
ものであったという趣旨の原告の供述をにわかに信用することは困難である
一方、Oの陳述書の内容の信用性を認めることができ」
(原判決41頁15行
目ないし18行目)るとした。
⑵ Oは控訴人からの指示に対して確認を求めるメールを送っており(甲56
20 ないし59)、また、甲58の添付ファイルである、
「中継ボックスケース.pdf」
(甲190)や「中継ボックスカバー.pdf」
(甲191)では、図面「O」承
認「X」となっている。
このように、業務上Oが控訴人の指揮下にあったことは明白であり、
「業務
においてX氏からの指示は受けたことはな」い旨のOの供述は虚偽である。
25 この供述を信用し、控訴人は図面をOから提供を受けたにすぎないと認定し
た原判決の判断も誤っている。
10 特許庁での面接記録に関し客観的事実に反する証言をしたC弁理士の証言
内容を採用して被控訴人Aだけが発明者であり控訴人は発明者でないと認定し
た誤り
⑴ 原判決は弁理士Cの証言内容を信用して、「被告A及び被告会社技術顧問
5 のKと弁理士であるB及びCとの間で、出願Aに至るまで、明細書の記載事
項について、メールや対面での打合せが行われていた」
(原判決38頁14行
目ないし16行目)、本件発明B及び本件発明Cについても、「被告Aは、L
から提供された試作品に着想を得たうえで、弁理士であるB及びCと協議の
上、出願B及び出願Cに至ったことが認められる(被告本人、証人C)」(原
10 判決39頁16行目ないし19行目)として、被控訴人Aだけが発明者であ
り控訴人は発明者でないと認定した。
⑵ 本件特許Aの関連出願の審査において、控訴人は、出願人の従業者・発明
者として、弁理士Cと共に平成27年10月20日に特許庁で審査官と面接
している(甲24の1)。また、本件特許Aの関連出願の異議審判において、
15 控訴人は出願人の従業者として、平成28年12月8日に弁理士Cと共に審
判官らと面接している(甲24の2)。いずれも、被控訴人会社側の出席者は
被控訴人Aと控訴人の2人だけ、弁理士事務所側の出席者はCとB弁理士だ
けで、同じメンバー4人で2回にわたり特許庁を訪れている。仮にそれまで
面識がなかったとしても、同じ目的のために特許庁に行くのであるから、ビ
20 ジネスパーソンであれば名刺交換をして挨拶は行うはずである。
このように、わずか1年の間に、同じLEDに関する出願の審査・審判の
過程で、同じ4人のメンバーで特許庁を訪問しているのであり、その訪問か
らは10年経過していなかったのであるから、そのうちの一人のメンバーの
顔も名前も忘れるとは考えられない。
25 ところが、弁理士Cは、控訴人について「名前は・・・全く記憶にない」、
「顔を見ても記憶にはない」と証言しており、その証言は信用できない。
11 本件発明はLEDチップの発明ではなく、LEDチップ自体はメーカーか
ら購入すれば足りるためLEDの専門的知識は必要なく、LEDに関する「一
般的知見」があれば足りるにもかかわらず、
「一般的知見を超えて、本件発明の
開発に関与できるほどの知見があったとまでは認められない」(原判決37頁
5 14行目ないし16行目)と認定し、控訴人の発明者性を否定した誤り
⑴ 本件発明を完成させるに当たりLEDに関する知識や能力はほとんど必
要ない。なぜなら、本件発明は、LEDそのものの発明ではなく、LEDを
用いた自動車用ランプの発明であり、LEDチップそのものは、既製品を使
用するからである。本件発明に必要な知識と能力のうち最重要なのは、ラン
10 プの三次元構造の着想とそれを図面に具体化する知識と能力であり、これに
加えて材料科学、熱伝導の知識、電気の基本的な知識・能力があれば足りる。
上述のとおり、控訴人はLEDランプを設計して図面等を作成し外注先と
の技術的交渉を行っていたのであり、ランプの三次元構造の着想とそれを図
面に具体化する知識と能力を備えており、本件発明を完成させる能力があっ
15 た。
⑵ また、原判決は、
「発明A又はこれに関連しうる事項についてメールなどの
証拠上認められる原告の関与は、部材の仕入れや試作品の発注といった業務
としてのものであり(中略)、発明者と認定するだけの創作活動に関与したと
はいえない。」(原判決39頁6行目ないし9行目)とする。
20 しかし、控訴人は通訳のHを連れて中国各地の外注先を回って一人で技術
的交渉をこなし、図面の提供や修正、技術的意見交換などを行ったのであり、
これらの業務は、LEDランプの技術的知見なくして不可能である。控訴人
のこれらの活動は、控訴人が自動車用LEDランプの発明を成す能力があっ
たことを明白に示している。
25 12 控訴人の発明者性を否定しながら、その一方で被控訴人Aらに関し何らの
知見・能力を検討せず、安易に被控訴人Aの供述、証人の証言や従業員の陳述
書等を信用して知財部員の役割をしたにとどまる被控訴人Aを発明者と認定し
た誤り
⑴ 原判決は、「被告A及び被告会社技術顧問のKと弁理士であるB及びCと
の間で、出願Aに至るまで、明細書の記載事項について、メールや対面での
5 打合せが行われていた」
(原判決38頁14行目ないし16行目)ことを被控
訴人Aを発明者と認定した根拠とする。
しかし、弁理士と相談して明細書の記載事項の打合せをするのは、発明行
為ではなく、発明完成後の特許出願の準備であり、知財部員の役割である。
弁理士Cも、知的財産部門の仕事につき「担当の部長とか社長とか、この場
10 合は被控訴人A社長ですけども、そういう方が担当というか、あれされてい
る。」と証言し、被控訴人Aが知財部員の役割をしたと述べている。このよう
に、知財部員の役割をしたにとどまる被控訴人Aを発明者と認定した原判決
は誤っている。
⑵ 少なくとも本件特許D及びFについては、控訴人と被控訴人Aが特許公報
15 上発明者とされている。原判決は控訴人につき「本件発明の開発に関与でき
るほどの知見があったとまでは認められない」として発明者性を否定したが、
被控訴人Aに関し何らの知見・能力を検討せず発明者であると認定した。被
控訴人ら提出の証拠・証人の証言の内容は客観的事実に反しているのであり、
被控訴人Aを発明者と認定するのであれば、少なくともその知見・能力、特
20 に図面作成能力やLEDに関する基本的な知識は検討すべきである。
⑶ 原判決は、「被告A及び被告会社技術顧問のKと弁理士であるB及びCと
の間で、出願Aに至るまで、明細書の記載事項について、メールや対面での
打合せが行われていた」
(原判決38頁14行目ないし16行目)と認定した。
しかし、技術顧問のKも被控訴人Aも、液剤系のコーティング剤に関する
25 技術的知見はあるが、LEDの知見は有していない。原判決は、被控訴人A
の虚偽の証言に依拠して誤った認定を行っている。
⑷ OやJなどの陳述書は、いずれも1行目から3行目が「陳述書」
「大阪地方
裁判所」
「第21民事部 裁判官殿」という形式で記載され、それらのフォン
トや行間その他のフォーマットも類似しており、被控訴人らが作成した書面
に何者かが署名押印したにすぎないと推定される。上述のとおり、それらの
5 記載内容も客観的事実に反するものが多数含まれ信用できない。
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないからいずれも棄却すべきであると判
断する。その理由は、当審における控訴人の主な補充主張も踏まえ、次のとお
り原判決を補正し、後記2のとおり当審における控訴人の主な補充主張に対す
10 る判断を付加するほかは、原判決の第4の1及び2(原判決32頁16行目な
いし42頁26行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、
原判決別紙2を本判決添付の別紙2に改め、原判決34頁26行目、同35頁
6行目、同36頁6行目及び同37頁22行目の「別紙2」を、本判決添付の
「別紙2」に読み替える。
15 ⑴ 原判決33頁18行目の「補助者」の次に「(『社長のアシスタント』とさ
れている)」を加える。
⑵ 原判決34頁11行目から同頁13行目までを以下のとおり改める。
「本件各発明は、上記の経過の被控訴人会社における高輝度LED照明の開
発と関連するものとして行われたものであるところ、その詳細な事実経過
20 は、別紙2『時系列表』記載のとおりである。」
⑶ 原判決34頁16行目ないし17行目の「弁論の全趣旨」を「弁論の全趣
旨。なお、この点に関する控訴人の主張に対する判断は、後記⑷アのとおり
である。」と改め、同頁19行目の「原告は、」の次に「令和4年11月に配
置転換となった後、」を加え、同頁20行目の「退職に際し」を「退職までに」
25 と改め、同頁21行目の「現在に至るまで」の次に「電子データを含め」を
加える。
⑷ 原判決35頁24行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。
「しかも、エクセルにおけるプロパティ上の情報は、ファイルを作成した
者としての『作成者』、最後に保存した者としての『前回保存者』を記録した
ものであるところ、そこに登録される情報は、その作業に使用したエクセル
5 に事前に登録されている情報であって、当然のことながら実際に誰がどのよ
うな変更を行ったかを記録するものではない。また、ファイルにアクセス可
能な者が制限されていたか否かは明らかではないことを踏まえると、『作成
者』や『前回保存者』が、そこに保存されたファイルの画像・図面等を作成
したか否かは、ファイルのプロパティから特定されるものとはいえない。そ
10 うすると、エクセルにおけるプロパティ上の情報のみから作成者を特定する
ことはできないのであって、仮に控訴人が『前回保存者』であったとしても、
控訴人がそのファイルの画像・図面等を作成したことを示すものでもなく、
これは控訴人の電子印鑑が付された甲140、141についてみても同様で
ある。」
15 ⑸ 原判決36頁6行目の「論難するが、」の次に、「後記2⑶ウのとおり、控
訴人は、本件発明Aの創作に関し、
『2012年(判決注:平成24年)秋・
冬頃、・・・小型植木鉢、砂、銅丸棒、純アルミを購入し、・・・植木鉢に湿
らした砂を充填しその後φ20程度の円柱穴を空け、中心部に切断した銅棒
を立てその周りに、高温炉で溶融した純アルミを流し込んでこのような部材
20 ができるかどうかを実験してみた』
(甲46)などとする証拠を提出するのみ
で、控訴人が着想したとする技術内容に関し、いつどこでどのような実験を
行い、その成功・失敗の経緯や、その成果等をどのように被控訴人会社に引
継ぎ、特許出願に至らせたか、その時期や方法などについて全く明らかにせ
ず、証拠も提出していない。控訴人は、
『砂型成形で銅+アルミ素材の放熱部
25 品(熱伝導棒)を作成した。』として『この熱伝導棒の製作のために控訴人が
作成した平面図(正面図、側面図等)、組み立て図面、仕様書の提出を求める。』
(当審における令和8年3月3日付け第1準備書面4頁)などと主張するが、
そもそも控訴人による本件各発明の創作過程そのものの主張立証がなされて
おらず、不明であって、仮に発明者であればその創作過程と実験による実証、
これを被控訴人会社にどのような形で引継ぎ出願に至らせたかについて明ら
5 かにできると解されるところ、これらの点も特定できていない。しかも、」を
加え、同頁7行目の「退職するに際し」を「退職するまでに」と、同頁9行
目の「持ち出したものといえる」を「取得して持ち出し、電子データを含め
保有し続けている。その中には、控訴人のほか被控訴人Aも名宛人となった
社内文書であるH作成に係る平成25年4月22日から同年5月3日までの
10 各業務報告書(甲143ないし164)など、控訴人が作成したとする資料
以外のものも多数含まれている」とそれぞれ改める。
⑹ 原判決38頁6行目の「前記前提事実」から同頁9行目の「あること、」ま
でを、
「本件発明Aは、原判決別紙1の特許請求の範囲の記載及び特許明細書
の記載(甲2)に照らせば、発光ダイオードを用いた車両用前照灯において、
15 熱伝導部材と冷却装置を備えた発光ダイオード装置を備えた従来技術(段落
【0003】)に対して、『発光ダイオードで発生する熱を効率よく逃がす照
明灯の構造を見出す』ことを課題(段落【0008】)として、『半導体基板
を固着したアルミニウム板を、銅製の熱伝導棒に直接固定し、遮光壁Aと遮
光壁Bを形成するように、銅製の熱伝導棒の表面をアルミニウムで口金に達
20 する部位まで被覆した上部構造』
(請求項1)とすることをその解決手段とし、
これにより『本件発明の光源支持体は、光源支持体の芯を銅で作成し、その
周りをアルミニウムで囲った構造の支持体であり、本発明者はこの構造が良
好な熱伝導を確保することができることを見出したものである』。そして、
『遮光壁Aと遮光壁Bを形成するように、アルミニウムを削り込み、銅をむ
25 き出しにして平坦部を作り、平坦部に、発光ダイオードが搭載されている半
導体基板を固着したアルミニウム板を、超音波加熱等により固着させる。』
(いずれも段落【0019】)として、請求項1の構造が、良好な熱伝導を確
保することができ発生する熱を効率よく逃がすことができることを見出した
ものであると認められるところ、前記前提事実及び認定事実、特に別紙2『時
系列表』に記載された平成24年9月から平成25年2月頃までの経緯に照
5 らすと、」と改める。
⑺ 原判決39頁1行目の末尾の次に「前記アのとおり、本件発明Aの創作に
至るには、少なくとも銅製の熱伝導棒をアルミニウムで被覆することにより
良好な熱伝導を確保することについての創作が必要と考えられるところ、後
記ウのとおりの控訴人提出証拠は、仮に控訴人によりそのようなことが行わ
10 れたとしても、良好な熱伝導の確保がされたことについて触れるものではな
く、甲49の図面を控訴人が作成したものと認めるに足りる証拠もないから、
そうした創作行為を控訴人が行ったことを推認させる証拠は存しない。」を
加える。
⑻ 原判決39頁2行目ないし3行目の「その形態から、手書きで作成された
15 ものと認められる」を「それほど複雑なものではなく、その形態に照らすと、
CAD等を用いなくとも、手書きの図面を清書して作成され得るものと認め
られ、弁理士から被控訴人会社に特許Aの願書に添付する書面のたたき台と
して2013年(平成25年)2月19日にメールで送られた文書には、甲
2(特許Aの特許公報)に掲載されたうちのいくつかの図面が手書きで掲載
20 され(乙10の45ないし48枚目)、同年3月10日に弁理士から被控訴人
会社に送付された、図面を新しくした旨のメールに添付された図面は、上記
の手書きの図面が清書されたものであり(乙10の94ないし97枚目)、甲
2に掲載された図面と同じか、それに非常に近いものとなっており、これら
の証拠から認められる図面の作成経過に照らしても、特許Aの明細書に添付
25 された図面は、被控訴人Aが手書きで作成した図面を弁理士事務所で清書し
たものと認められる」と改める。
⑼ 原判決39頁5行目の末尾の次を改行し次のとおり加える。
「加えて、本件発明Aの出願に係る過程は別紙2『時系列表』記載のとおり
であり、発明に至る着想を得たとされる平成25年1月から同年4月の出願
に至る過程において、被控訴人会社と弁理士との間で何度も出願関係のやり
5 取りがされているところ、その過程に控訴人の関与は全くみられない(乙1
0)
。本件発明Aに関しては、別紙2『時系列表』記載のとおり、平成25
年1月の着想に係るメモ作成の直後の同年2月には、LEDの取付部材を銅
とし、アルミのフィン付き冷却用台座、回転ファン及びヒートパイプを設け
ることはすべて周知であることが弁理士から報告されており、特許化のため
10 にはその回避が必須であることが被控訴人会社と弁理士との間の共通認識で
あったところ、これらにつき控訴人がどのように対応したのかについて、控
訴人からは何ら主張も立証もない。
控訴人は、本件発明Aの創作に関し、『2012年(判決注:平成24年)
秋・冬頃、銅のみを使用した場合はLEDバルブが出来上がったとしてもコ
15 ストが高く、総重量が重くなり不具合が発生する可能性があるところ、銅の
熱伝導率は高い、アルミは自己放熱性が高いため、銅+アルミが良いのでは
ないかと考えた。そして、小型植木鉢、砂、銅丸棒、純アルミを購入し、
・・・
植木鉢に湿らした砂を充填しその後φ20程度の円柱穴を空け、中心部に切
断した銅棒を立てその周りに、高温炉で溶融した純アルミを流し込んでこの
20 ような部材ができるかどうかを実験してみた』と記載された、令和6年10
月22日付け控訴人作成の『銅+アルミニウムの熱伝導棒ができるのかの実
験』と題する書面(甲46)を提出し、
『当初私は、この部分がアルミ製であ
っても特許化が可能かもしれないと考えていたためです。その後先行公知例
を回避するため、銅+アルミニウムの熱伝導棒を用いた技術だけを特許Aと
25 して出願しました。』と説明している(控訴人の令和7年6月9日作成の陳述
書(甲129)10頁)。
しかし、控訴人からは、発明Aの創作過程及びその創作の結果が被控訴人
会社から特許出願されるについて、その着想の時期、実験が行われたとする
場所、当時の業務との関係、実験に用した部材の購入やその精算・処分の過
程、実験の失敗や成功等の試行錯誤の経緯、その着想やそれら成果をどのよ
5 うに被控訴人会社に引継ぎ、出願に至らせたのか、出願の過程にどのように
関与したのかなどについて、全く主張も立証もされていない。これは、控訴
人が発明者であることについて大きな疑義を抱かせるものであるとともに、
X『氏は研究や開発など行う仕事では無く、普通のルート営業のセールスマ
ンです。』
(Sの陳述書。乙21)、X『さんは、主に中国製のHIDランプの
10 調達や購買の仕事を担当していましたので、私が作った図面や資料を、』X
『さんから打ち合わせで使うので、
『送ってほしい』と頼まれて、何度もメー
ルで送ったことがあります。資料のプロパティに私の名前が出ているのは、
私が以前に作ってメールしたものなので、当然のことです。』X『さんは、そ
れを自分で作ったと主張していますが、実際には私が作ったものをメールで
15 受け取ってから、後で自分の名前や電子印鑑を付けて提出しているだけだと
思います。』(Jの陳述書。乙27)などとする陳述書の記載が正しいことを
推認させるものである。
また、本件特許Aは、上記のとおりの出願過程における検討を経て公知技
術を回避して特許となっているところ、本件発明Aの特徴的部分は前記アの
20 とおりであり、その課題解決手段は、半導体基板を固着したアルミニウム板
を、銅製の熱伝導棒に直接固定し、遮光壁Aと遮光壁Bを形成するように、
銅製の熱伝導棒の表面をアルミニウムで口金に達する部位まで上部構造を被
覆することにある。被控訴人Aが本件発明Aにつき、
『LED光源支持体部に、
銅材の表面をアルミニュウムで被覆した特殊な材料を用いることにしまし
25 た。』、
『LED光源支持体に使用されていた、上部構造のヒートパイプ部だけ
を新たに発明した特殊な材料に置き換えました。』及び『銅の表面にアルミニ
ュウムを被覆した構造は、先行技術に見られず、新規性が認められるとして
権利化されました』と説明する(被控訴人Aの令和7年6月27日付け陳述
書(乙22)2、3頁)のは、先行する公知技術や本件発明Aが特許登録さ
れるに至った過程、本件特許Aの明細書等の記載に鑑みると、合理的な説明
5 であるといえる。被控訴人Aは、上記本件発明Aの特許出願に係るやり取り
において、平成25年2月19日に、B弁理士に対し、
『先程、ご連絡させて
いただきました、アルミと銅の材質につきまして、ご連絡をさせていただき
ます。アルミニュウム・・・番手6063 銅・・・・・ベリリウム銅 材
料を限定する必要は、無いと思いますが、当社で、実験している材料の情報
10 として下さい。』との連絡もしている(乙10の35枚目)。そして、本件特
許Aの明細書には、
『本件発明の・・・アルミニウムは・・・・一例としてア
ルミニュウム番手6063等が挙げられる。』
(段落【0018】)とされ、被
控訴人会社のLEDヘッドライト製品のカタログ(甲12、14頁)には、
『熱伝導率が高い アルミ(A6063)使用 熱伝導率の高いアルミは、
15 粘度が高く型に流し込めないため、削り出しで型を作るしか方法がありませ
ん。』との記載があり、これら本件特許Aの明細書の記載や実際の製品の仕様
は被控訴人Aの説明に沿うものである。」
⑽ 原判決39頁14行目の「使用した」を「使用し、このヒートパイプの扁
平体部位を放熱部品が挟む」と改め、同40頁7行目ないし8行目の「その
20 形態から、被告Aが手書きで作成されたものと認められる」を「甲3の図1、
甲4の図1,2の図面(番号を除く)は、被控訴人Aが手書きで作成したも
のか、被控訴人Aが手書きで作成した図面を弁理士事務所で清書して手書き
で書いたものであり、甲3の図2は、被控訴人Aが手書きで作成した図面を
弁理士事務所で清書したものと認められる」と改め、同頁11行目の末尾の
25 次を改行し、次のとおり加える。
「控訴人は、甲88ないし90に基づいて、甲3の図2を控訴人が作成した
旨主張する。しかし、甲88ないし90は、甲3の図2のうちの、放熱台座
の3D図が示されたものであって、本件発明B及びCが特徴とする放熱性向
上のための扁平体部位を含むヒートパイプを用いる技術思想に関するもので
はないから、本件発明B及びCについての創作過程についての立証とはいえ
5 ない。そもそも甲88ないし90については、控訴人により作成されたこと
が明らかなものではなく、仮に甲88ないし90が控訴人により作成された
ものであるとすれば、それらがメールで控訴人に送信されることは理解し難
い。また、甲88等の放熱台座の形態は、それら画像が2014年(平成2
6年)8月7日にメールで送信され、本件発明Bの出願日(平成27年3月
10 5日)より前に被控訴人会社で知られていたことや、本件発明BがLEDチ
ップを搭載する部材の変更を従来技術との差異とするものであること等に鑑
みると、甲3の図2においてLEDチップを搭載する部材以外の放熱フィン
につき、被控訴人会社内で知られた態様のものを記載したとしても不自然と
はいえない。したがって、甲88ないし90の存在を考慮しても、甲3の図
15 2を控訴人が作成したものとは認められない。」
⑾ 原判決41頁19行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。
「Oからのメール(甲56ないし59)や、Oが製図し同日控訴人が承認し
たことが記載された添付ファイルの図面(甲190、191)を見ても、控
訴人へのデータの送付や、控訴人による承認が行われたことは認められると
20 しても、これら図面の作成等について、控訴人がいかなる関与をしたのかは
明らかではないから、上記認定を左右するものではない。」
2 当審における控訴人の主な補充主張に対する判断は、以下のとおりである。
⑴ 控訴人は、前記第3の1及び2のとおり、控訴人が退職に際して資料やメ
ールを大量に持ち出したと原判決が認定したことは誤りで違法である旨を主
25 張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第4の1⑴、⑷イのとおり、控訴人は
退職までの間に資料やメールを取得し電子データを含めてこれを持ち出し保
有し続けていることは控訴人提出証拠から認められる事実であり、こうした
間接事実について、仮に直接の主張がなかったとしてもその認定について弁
論主義違背の問題は生じない。
5 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑵ 控訴人は、前記第3の3及び4のとおり、原判決は、控訴人が作成者であ
るのに作成者はJであると誤って認定した旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第4の1⑵、⑷アのとおり、ファイル
の「作成者」ないし「前回保存者」が直ちにその図面等の作成者を示すもの
10 ではないとしても、これらファイルの作成者はJであると認められるところ
である。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑶ 控訴人は、前記第3の5及び6のとおり、Cの証言は虚偽であり、被控訴
人Aも矛盾した供述をしているのに、特許庁審査官や審判官との面接にも同
15 席していた控訴人を発明者と認定しなかったことは誤りであり、控訴人は、
面接記録(甲24の1・2)のとおり、本件特許Aに関して2回特許庁に行
っており、控訴人が発明者ではないと認定するのであれば、合理的な根拠が
なければならないと主張する。
しかし、別紙2のとおり、上記面接記録は出願α(特願2013-088
20 950、甲24の1・2、甲25)に関するものであり、本件発明A(その
出願は特願2013-86690)に関するものではない。控訴人は、本件
各発明以外につき発明者である旨を主張したのは、補正の上で引用した原判
決第2の3⑷のとおり、341発明のみであって、これまで一度も発明αに
ついて発明者である旨を主張したことがないから、なにゆえ発明αに係る面
25 接に立ち会ったのか不明であり、さらにそれに立ち会ったことが本件発明A
の発明者認定とどのように関係するのかについても不明である。しかも、上
記面接記録において、控訴人は従業者を含む出願人とされ、発明者は明確に
被控訴人Aであるとされている。控訴人は、発明αを関連出願であるとも主
張するが、控訴人が関連出願であるとする理由も明らかではない(出願αは、
控訴人が公知技術であるとする心棒をアルミ棒としたものである。甲25)
5 から、控訴人の主張は前提を欠くというべきである。そして、補正の上で引
用した原判決第4の2⑶ないし⑹のとおり、本件各発明について控訴人は発
明者であるとは認められない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑷ 控訴人は、前記第3の7ないし12のとおり、控訴人が本件各発明の発明
10 者であることを原判決が否定し、被控訴人Aが発明者であると認定したこと
は誤りである旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第4の2⑶ないし⑹のとおり、控訴人
の主張や証拠を詳細に検討しても、控訴人は本件各発明の発明者であるとは
認められない。
15 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
3 以上に認定判断したところは、当審における控訴人のその余の補充主張によ
っても、左右されるものではない。
4 よって、控訴人の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がな
く、いずれも棄却すべきであるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由が
20 ないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
25 裁判長裁判官
中 平 健
5 裁判官
今 井 弘 晃
裁判官
柵 木 澄 子
別紙1
1 出願A・特許A(発明A) (甲2)
特願2013-86690号 特許第5559386号
5 発明の名称:発光ダイオードを用いた照明灯及び車両用前照灯
2 出願B・特許B(発明B) (甲3)
特願2015-44092号 特許第5877597号
発明の名称:ヒートパイプ冷却シングル型高輝度LED前照灯
3 出願C・特許C(発明C) (甲4)
特願2015-44100号 特許第5877598号
発明の名称:ヒートパイプ冷却ダブル型高輝度LED前照灯
15 4 出願D・特許D(発明D) (甲5)
特願2017-178645号 特許第6344876号
発明の名称:LED前照灯
5 出願E・特許E(発明E) (甲6)
20 特願2017-149284号 特許第6538126号
発明の名称:LED前照灯用交換防水円筒状カバー
6 出願F・特許F(発明F) (甲7)
特願2020-100609号 特許第7274220号
25 発明の名称:LED灯火
別紙2
時系列表
日付 内容
被控訴人会社が、341発明に係る特許についての出願をした(乙3
H22.5.14
の6)。
被控訴人会社が、発明の名称を「車両方向指示器用着色ランプおよび
その製造方法」とする発明について、控訴人、被控訴人A、Kほか1
H23.7.7
名を発明者として特許出願をした。なお、同出願については審査請求
がされていない。(甲22)
複数のLEDサンプル及び被控訴人会社のプロトタイプ製品につい
て、光束、色温度、色度、電流値及び消費電力の時間変化をまとめた
エクセルファイル「LED-ジュナックbellofオリジナル130215.xlsx」
H24.5.30
が作成された。同ファイルには、控訴人の記名と、控訴人名義の印影
を模した画像が貼り付けられていた。なお、同ファイルのプロパティ
上の作成者はJ’であった。(甲31、127)
被控訴人会社及びLが代表者である株式会社仁和は、同社が保有す
る、ヒートパイプ構造を有することで、高い冷却効果と高い輝度を有
するLED照明のサンプルと使用説明書を被控訴人会社に提供する前
H24.9.1
提としての秘密保持契約を締結した。その後、被控訴人会社は、同サ
ンプル等を預かったが、既に特許化されていたことから、同サンプル
等の購入を断念し、同秘密保持契約を解除した。(乙7、8、26)
自動車用電球データシート(型式:HB4 口金:P22d)を貼り付けたエ
クセルファイル「JIS-H4-HB-H11.xlsx」が作成、保存、印刷された。
H24.9.13
同ファイルのプロパティ上の作成者及び前回保存者はいずれもJ’で
あった。(甲27、127)
平成24年11月6日にLから入手したヒートパイプを含む、他社製
ヒートパイプの光束、色温度、色度及び電流値の時間変化をまとめた
エクセルファイル「LED各社データ121108.xlsx」が作成、印刷さ
H24.11.8
れた。同ファイルには、「2012.11.12」の日付とともに、控訴人名義
の印影を模した画像が貼り付けられていた。なお、同ファイルのプロ
パティ上の作成者はJ’であった。(甲36、127)
エクセルファイル「LED各社データ121108.xlsx」が保存された。
H24.11.13 同ファイルのプロパティ上の作成者はJ’であった。(甲36、12
7)
LED用のドライバーを作成するための資料であるエクセルファイル
「LEDドライバー作製にあたり130122.xlsx」が作成、保存、印刷
H25.1.22
された。同ファイルのプロパティ上の作成者及び前回保存者はいずれ
もJ’であった。(甲28、127)
被控訴人Aは、自動車用二輪車用高輝度LEDランプに関し、散熱の
問題があることから普及が進んでいないこと等を課題として指摘し、
高輝度LEDモジュールを点灯したときに発生する熱をLEDチップ
固定用アルミ製導熱棒からアルミ製ヒートシンクに伝導し、ヒートシ
H25.1.24
ンクに内蔵された防水型小型ファンで効率よく散熱を行い、LED
チップの温度を常に80度以下に抑え、安定的に発光させること、導
熱棒の材質としてはアルミ、銅、銀が考えられること等を記載したメ
モを作成していた(乙10)。
被控訴人Aは、弁理士であるBに対し、ヘッドランプの特許文献調査
を依頼していたところ、Bは、被控訴人A及びKに対し、LED取付
部材(銅、銀)、フィン付き冷却用台座(アルミ)、回転ファン、
H25.2.4
ヒートパイプはすべて周知であるが、工夫しだいでは特許化できる可
能性があると返信した。なお、Kは、被控訴人会社の技術顧問との肩
書が付されていた。(乙10)
被控訴人Aは、Bに対し、LEDランプの特許申請について新規技術
H25.2.6 を検討している旨をメールで伝え、平成25年2月15日に打合せを
することとした(乙10)。
LEDサンプルごとに、測定時間と光束、色温度、色度、電流値、消
費電力等を測定した結果をまとめたエクセルファイル「LED縦横配
H25.2.14 光比較130214.xlsx」が作成された。同ファイルには、控訴人の記名
と、控訴人の印影を模した画像が貼り付けられていた。同ファイルの
プロパティ上の作成者はJ’であった。(甲29、127)
エクセルファイル「LED-ジュナックbellofオリジナル130215.xlsx」
H25.2.15 11:50 が、保存及び印刷された。同ファイルのプロパティ上の前回保存者は
J’であった。(甲31、127)
エクセルファイル「LED縦横配光比較130214.xlsx」が、保存及び
H25.2.15 11:56 印刷された。同ファイルのプロパティ上の前回保存者はJ’であっ
た。(甲29、127)
「アルミ冷却部分 130207-6.SGD」と題するCADデータが作成され
H25.2.15 19:43
た(甲32、127)。
被控訴人Aは、Bに対し、現在、被控訴人会社で実験をしている材料
に関する情報として、アルミニウムと銅の材質に関する情報(アルミ
H25.2.19 20:50
ニュウム:番手6063、銅:ベリリウム銅)をメールで送信した
(乙10)。
Bは、被控訴人Aに対し、出願Aの願書案を提示した。このとき、明
H25.2.19 22:56 細書に添付される【図2】ないし【図5】は、被控訴人Aが手書きで
作成したものであった。(乙10)
Kは、Bに対し、出願Aの願書案に対し、概ね、被控訴人Aの意図の
とおり記載されているとしたうえで、コメントを付した。なお、この
H25.2.22
ときに添付されていた図面は、被控訴人Aが手書きで作成したものを
なぞってデータ化したものとなっていた。(乙10)
Hが、控訴人に対し、防水ファンのサンプルが到着したことの報告と
H25.3.7
見積書を添付されたメールを送信した(甲78)。
「3.LED外観130308.SGD」と題するCADデータが最後に更新され
H25.3.8
た。ファイルの当初作成日は不明である。(甲69、127)
放熱用のフィンにアルミニウムを用い、その大きさが異なる二つのサ
ンプルについて、光束、色温度、減光率及び色度の時間変化をまとめ
たエクセルファイル「LED冷却フィン比較.xlsx」が作成、保存、
H25.3.11
印刷された。同ファイルには、控訴人の記名があった。同ファイルの
プロパティ上の作成者及び前回保存者はいずれもJ’であった。(甲
30、127)
控訴人は、Hから,LEDバルブ及び光束測定用の積分球が届いた旨
H25.3.18
の報告を受けた(甲54)。
控訴人は、被控訴人Aに対し、中国におけるLEDランプの部品の加
H25.3.26
工依頼状況について報告をした(甲55)。
H25.4.17 被控訴人会社が、出願Aをした。
被控訴人会社が、発明の名称を「発光ダイオードを用いた照明灯及び
車両用前照灯」とする発明(以下「発明α」という。)について、被
H25.4.20
控訴人Aを発明者として特許出願をした(以下「出願α」という。特
願2013-88950号。甲25)。
O(当時、PIAA株式会社所属)は、控訴人に対し、H11LED
バルブの配光確認結果が記載された「H11タイプLEDバルブ(NC,PIAA)
H25.5.8 測光-アクアFL 13A-0079.xlsx」と題するエクセルファイルを添付し
た「H11LEDバルブ配光確認結果の件」と題するメールを送信した。な
お、同メールは、被控訴人Aにも、CCで送信された。(甲63)
「6.H11口金130509.SGD」と題するCADデータが最後に更新され
H25.5.9
た。なお、ファイルの当初作成日は不明である。(甲73、127)
Hが、控訴人に対し、「2013_06_10_HEAT_SHINK.pdf」と題する図面
H25.6.10 が記載されたPDFファイルが添付されたメールを送信した(甲7
5、76)。
「PCB-4 130701 最終 Cロゴ入り.SGD」と題するCADデータが
H25.7.2 最後に更新された。なお、ファイルの当初作成日は不明である。(甲
68、127)
O(当時、PIAA株式会社所属)は、控訴人及び被控訴人Aに対
し、LEDバルブについて、再度一部検討したい箇所があるため、サ
H25.8.7
ンプルを作成してほしい旨を伝える「フォグ用LEDバルブの件」と
題するメールを送信した(甲61)。
O(当時、PIAA株式会社所属)は、控訴人に対し、控訴人から電
H25.8.27 話があったLEDバルブの口金に関する資料(「H11口金寸法.pdf」
と題するファイル)を添付したメールを送信した(甲62)。
Pが、控訴人に対し、高輝度LEDのコントローラーケースに関し、
耐食対策品の試験を行ったが、72時間で腫れが確認できたため中止
したこと、再度検討をしてほしいこと、参考として、HIDのバラス
トでは同様の試験をしても96時間経過後、問題がなかったことを記
H26.4.10
載した「Fwd:高輝度コントローラケースSST」と題するメールを送信
した。なお、同メールは、当時、PIAA株式会社に所属していたO
に対してもCCで送信された。また、同メールに添付された実験結果
の写真は、QからO及びPに送信されたものであった。(甲60)
341発明に係る特許について、発明の名称を「着色透明被膜、熱線
H26.5.23 吸収用透明被膜及びその製造方法」とし、発明者をA、Kとして特許
登録がされた(乙3の6)
H26.6.13 発明Aが特許登録された。
Hが、控訴人に対し、フィンの3DCADデータを写した画面のスク
リーンショットと「φ43丸型140306提出1.DXF」と題するCADデー
H26.8.7
タを添付した「φ43丸型140306提出1」と題するメールを送信した
(甲86ないし91)。
控訴人が、株式会社フジクラのホームページから、薄型ヒートパイプ
を使用したいので、詳しい資料を送ってほしいと問い合わせたのに対
H26.8.18
し、同社技術部担当者Mが、控訴人に対し、サーマル関係の一般資料
及び薄型資料を送信した(甲33、34)。
控訴人は、Mに対し、Mから提供されたヒートパイプの資料を検討し
た上で、仕上がり厚み1mm~1.5mm、長さ50mm~70mmのものを検討した
H26.8.19 10:04
いことを伝えたうえで、サンプルの入手方法、量産移行になった場合
の価格、量産時の納期等について質問をした(甲37)。
Mは、控訴人からの質問に対する回答のメールを送信した(甲3
H26.8.19 11:12
8)。
Hが、控訴人に対し、「クリーム半田確認しました。ショットしてい
ません!(テストしました)20倍拡大鏡確認します。銅は100%露出
しないようにすると!サンプルは微妙に露出がありますが!改善するよ
H26.9.25 うにします!」との内容に、2個の発光ダイオードを搭載したプリン
ト配線基板を張り付けた端子付配線付の銅板のサンプル品の写真4点
が添付された「クリーム半田」と題するメールを送信した。(甲93
ないし98)
控訴人は、特許Aの公報を持参して、被控訴人Aと弁護士事務所を訪
H26.11.13
ねた(乙24)。
Jが、控訴人に対し「PIAA HBA棒試作20150220.SGD」と題するCAD
H27.2.21 時刻不 データを添付した「PIAA HB試作」と題するメールを送信した。同
明 メールには「PIAA HBアルミ棒 図面書きましたので確認お願いしま
す。」と記載されていた。(甲169)
Iが、控訴人に対し、「ヒートパイプ固定部試作.SGD」と題するCA
Dデータを添付し、「ヒートパイプ用口金の図面を送ります。」との
H27.2.21 13:25 内容のメールを送信した。なお、添付されたファイルには図面ととも
に「ヒートパイプ固定部 試作 2015/2/9」との記載があった。(甲
84、85)
H27.3.5 被控訴人会社が、出願Bをした。
H27.3.5 被控訴人会社が、出願Cをした。
Hが、被控訴人会社の従業員であるNに対し、カップシェードのサン
プル写真を2点添付したうえで、「カップ部分少し研磨してよろしい
H27.6.18 時刻不 でしょうか、少し銅が見えてしまいますが、ご確認ください。もし、
明 問題なければ作業行います。」との内容の「カップシェード」と題す
るメールを送信した。なお、同メールは、控訴人に対してもCCで送
信された。(甲99ないし101)
控訴人が、Iからのメールに対し、「HPφ8-75mm.SGD」「HPφ
8-68mm.SGD」「HPφ10-80mm.SGD」と題するCADデータを添
H27.6.18 17:22 付したうえで「こんな感じであれば問題ないという事ですね。今日中
に返事ください。」との内容のメールを返信した(甲80ないし8
3)。
Iが、控訴人に対し、「現在、試作している物はほぼ」控訴人「から
いただいた形状で作っています。ただ、ヒートパイプの下から31m
H27.6.18 17:59 mの部分までは8パイの真円でないとヒートパイプ固定部に入れにく
くなるので、ヒートパイプがつぶれないようにお願いします。」との
内容のメールを送信した(甲80)。
Jが、控訴人に対し「ハイエースフィン改定.SGD」と題するCAD
データを添付した「ハイエースフィン改定」と題するメールを送信し
H27.6.19
た。同メールには「ハイエースフィン改定図面です。確認お願いしま
す。」と記載されていた。(甲170)
控訴人、被控訴人A、B及びCが、出願αについて、特許庁審査官と
面談し、発明αに関する拒絶理由通知の補正内容について協議した。
H27.10.20 このとき、控訴人は、面接記録の「出願人(従業者(知的財産部員、
発明者等)を含む)」欄に、被控訴人Aは、同記録の「発明者(出願
人の従業者は除く)」欄に自署した。(甲24の1)
発明αが、被控訴人Aを発明者として特許登録された(以下「特許
H27.12.4
(権)α」という。特許第5846691号。甲25)。
H28.2.5 発明Bが特許登録された。
H28.2.5 発明Cが特許登録された。
Oが、控訴人に対し、「2016.6.23 ダイナ車両確認結果.xlsx」と題
H28.6.24 するエクセルファイルを添付した「ダイナ確認結果の件」と題する
メールを送信した(甲56)。
Oが、控訴人に対し、「H4カップシェード.SGD」と題するファイルを
H28.7.4 添付した「ZRAYH4カップシェード図面の件」と題するメールを送信し
た(甲57)。
Jが、控訴人に対し、「Al FB寸法、教えて下さい。」との内容の
H28.7.11
「AlFB寸法」と題するメールを送信した。(甲171)
Jが、控訴人から「ZEUS H11ダブル」と題する、「10セットもあれ
ば十分 お願いします」との内容のメールを送信されたことに対し、
H28.7.25 「アルミ棒、最終試作品。フィン φ45使用、横穴-φ10、φ8 ファ
ン前、3ミリ堀りでいいですか?」との内容のメールを返信した。
(甲172)
Jが、控訴人に対し、「ZEUS系 H4導熱棒の新しい寸法教えて下さ
H28.8.8 い。」との内容の「ZEUS系 新H4導熱棒」と題するメールを送信し
た。(甲173)
Oが、控訴人に対し、「中継ボックス カバー.pdf」「中継ボックス
カバー.stp」「中継ボックス ケース.pdf」「中継ボックス ケー
H28.8.22
ス.stp」と題するファイルを添付した「中継ボックス図面データの
件」と題するメールを送信した(甲58)。
控訴人及び被控訴人Aと弁理士であるB及びCは、特許庁において、
特許αに対する特許異議申立がなされたのに対し(審判2016-7
H28.12.8 00606号)、特許請求の範囲の訂正案について審判官と協議し
た。このとき、被控訴人Aは発明者、控訴人は従業者としてB及びC
に同伴したと記録された。(甲24の2)
Oが「アクア専用キット.xlsx」と題するエクセルファイルを作成し
た。同エクセルファイルは、平成30年1月18日に最終更新された
ところ、その時点では、TOYOTA アクアLEDバルブについて
H29.1.16 の基盤の画像等が張り付けられたシートが2つあり、その一つは、右
下に2018.1.18の日付とともにOの記名が、もう一つには、2017.9.8
の日付とともにOの記名があった。なお、同ファイルのプロパティ上
の作成者は控訴人であった。(甲110、111、127)
「(仮)防水カバー穴なし.3dm」と題するCADデータが作成された
H29.6.5
(甲42、127)。
マ マ
Oが作成した「防水カバー ドライバー内臓1.3dm」と題するCAD
H29.6.27 データが更新された。なお、ファイルの当初作成日は不明である。
(甲108、127)
Oが作成した「アクア ヴィッツ検討.SGD」と題するCADデータが
H29.7.10 更新された。なお、ファイルの当初作成日は不明である。(甲10
4、127)
マ マ
発明Eの内容をまとめたエクセルファイル「ドライバー内臓カバー特
H29.7.11 許資料.xlsx」が作成された。なお、同ファイルのプロパティ上の作
成者は被控訴人会社であった。(甲40、127)
マ マ
エクセルファイル「ドライバー内臓カバー特許資料.xlsx」が保存、
H29.7.19 印刷された。なお、同ファイルのプロパティ上の前回保存者は被控訴
人会社であった。(甲40、127)
H29.8.1 被控訴人会社が、出願Eをした。
Oが作成した「バルブA’SSY②.3dm」と題するCADデータが更
H29.9.5 新された。なお、ファイルの当初作成日は不明である。(甲105、
127)
H29.9.19 被控訴人会社が、出願Dをした。
被控訴人会社が、意匠に係る物品を「自動車用発光ダイオードラン
プ」とする意匠2件について、控訴人及び被控訴人Aを創作者とする
H29.9.19
意匠出願をした(意願2017-20347号・意願2017-20
352。甲117、118)。
意願2017-20347号・意願2017-20352に係る出願
H30.4.20 について意匠登録された(意匠第1604477号・意匠第1604
622号。甲117、118)。
「H4切削冷却フィン180524.SGD」と題するCADデータが更新され
H30.5.25
た。なお、ファイルの当初作成日は不明である。(甲45、127)
H30.6.1 発明Dが特許登録された。
控訴人が、家電量販店から、「IPF LEDデュアルカラーフォグランプ
H30.7.2 バルブ 6500K/2800K H8/ 11 /16タイプ 2個入り 50DFLB」と称する
商品を購入した(甲51)。
Oが、控訴人に対し、「エンジンOFFハイロー.xdt」「エンジンO
H30.8.31 FFハイローLEDレバー行き過ぎ.xdt」と題するファイルを添付し
た「ハイゼット波形」と題するメールを送信した(甲59)。
控訴人は、被控訴人A、D弁理士と共に発明E(特許出願2017-
149284)に関する補正案について、特許庁に審査官との面接に
H30.12.19 行った。面接記録には、控訴人は被控訴人Aと共に、出願人(従業者
(知的財産部員、発明者等)を含む)の欄に氏名が記載されている
(甲189)。
被控訴人会社が、意匠に係る物品を「自動車用発光ダイオードラン
プ」とする意匠2件について、控訴人及び被控訴人Aを創作者とする
H31.4.26
意匠出願をした(意願2019-9534号・意願2019-953
5。甲119、120)。
R1.6.14 発明Eが特許登録された。
被控訴人会社が、発明の名称を「消臭抗菌器具」とする発明につい
て、控訴人及び被控訴人Aを発明者として特許出願をした。なお、同
R1.7.2
出願については審査請求がされていない。(特願2019-1236
71号。甲21)
被控訴人会社が、意匠に係る物品を「消臭抗菌用容器」とする意匠に
R1.7.2 ついて、控訴人及び被控訴人Aを創作者とする意匠出願をした(意願
2019-14845号。甲121)。
被控訴人会社は、この頃、中国のエナジー社に対し、「フォグ 白黄
R1.8.10 色切り替えドライバー開発費用」として、2000米ドルを支払った
(乙19)。
エナジー社は、被控訴人会社から委託された、フォグランプの白黄色
R1.10.23
切り替えドライバーの開発に成功した(乙19)。
意願2019-14845号に係る出願について意匠登録された(意
R2.1.15
匠第1651913号。甲121)。
意願2019-9534号・意願2019-9535に係る出願につ
R2.1.30 いて意匠登録された(意匠第1653087号・意匠第165308
8号。甲119、120)。
R2.6.10 被控訴人会社が、出願Fをした。
「H4カラーチェンジドライバー221102.xlsx」と題するエクセルファ
イルが作成、印刷、保存された。同ファイルは、LEDバルブの現在
R4.11.2 の検討状況をまとめたうえで「検討をお願いします」と指示を出すも
のであった。同ファイルのプロパティ上の作成者及び前回保存者は控
訴人であった。(甲113、127)
「Lo側デュアルH4.SGD」と題するCADデータが更新された。なお、
R4.11.8 同CADデータには「XD4-XHP H4 量産用 2018.4.27」との記載が
あるが、ファイルの当初作成日は不明である。(甲43、127)
R5.5.8 発明Fが特許登録された。
色塗りがされている行は、以下の対応のとおりの発明に関する事情であると当事者が
主張していることを意味する。
発明A
発明B
発明C
発明D
発明E
発明F
別紙3 省略
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