ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(ネ)10089 原状回復請求控訴事件
| 裁判所 | 控訴棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年6月10日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
特許権 |
| キーワード | 実施12回 許諾7回 特許権4回 |
| 主文 | 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 控訴人の請求及び法的根拠は、原判決「事実及び理由」欄の第3の1(2 ~4頁)のとおりであるから、これを引用する。すなわち、控訴人は、被控 訴人に対し、(1)本件実施許諾契約を解除したとして、2160万円及び利息 の支払を(前記第1の2の請求) 、(2)本件動産契約に係る不当利得、債務不 履行又は不法行為を理由として432万円及び遅延損害金の支払を(同3の 請求)求めるものである。 |
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令和8年6月10日判決言渡
令和7年(ネ)第10089号 原状回復請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所令和6年(ワ)第1008号)
口頭弁論終結日 令和8年4月22日
判 決
控 訴 人 株 式 会 社 デ ン ケ ン
同訴訟代理人弁護士 安 部 茂
生 野 誉 士
小 野 裕 佳
小 白 川 類
被 控 訴 人 株式会社アルファ・プロダクト
同訴訟代理人弁護士 田 上 洋 平
冨 田 信 雄
小 野 夏 海
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
(略語は、以下のとおり訂正するほか、原判決の例による。)本件特許2: 発明の名称を「コンクリート製枕木のクラック検知法及び装置」とする特許(特許第5951218号)
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、控訴人に対し、2160万円及びうち2000万円に対する令和元年5月21日から、うち160万円に対する同年12月17日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
5 3 被控訴人は、控訴人に対し、432万円及びこれに対する令和6年11月16日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 控訴人の請求及び法的根拠は、原判決「事実及び理由」欄の第3の1(2~4頁)のとおりであるから、これを引用する。すなわち、控訴人は、被控訴人に対し、(1)本件実施許諾契約を解除したとして、2160万円及び利息の支払を(前記第1の2の請求)、(2)本件動産契約に係る不当利得、債務不履行又は不法行為を理由として432万円及び遅延損害金の支払を(同3の請求)求めるものである。2 原審は、(1)本件実施許諾契約において被控訴人は現実に製品の製造・販売に必要な情報(ノウハウ)を控訴人に提供し、実施に協力する義務を負わない、(2)控訴人から被控訴人に対する432万円の支払は、被控訴人による本件特許2の実施品の開発費用について、特に使途を特定・限定することなく支出する趣旨であるなどとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は、これを不服として本件控訴を提起した。3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、後記第3の2のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第3の2~4(4~13頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、
後記2において当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」欄の第4の1~5(13~22頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 これに対し、控訴人は、(1)本件実施許諾契約(争点1)について、①本件
実施許諾契約は「本件特許及びノウハウ」を許諾対象とするところ、「ノウハウ」とは、特許・実用新案の明細書には記載されない、実施に当たっての
5 補完的・付随的技術情報を指す概念として使われるのが通常であるから、
「ノウハウ」の提供義務はないとしたのでは当該文言を空文化してしまうこととなり、合理的な意思解釈として相当性を欠く、②特許発明又は登録実用新案を実施するためには特許公報・実用新案公報の記載のみでは把握できない補完情報が必要であり、殊に控訴人は本件特許等の分野における当業者でないのであるから、本件特許等に基づいて製造・販売を行うためには、追加的な技術情報・実施経験が不可欠である、(2)本件動産契約(争点2~7)について、①控訴人は、本件見積書に係る432万円の支出を「長期前払費用」として計上し、将来にわたる反対給付を前提として4年間の定額均等償却を行っているが、この会計処理は、単なる開発費拠出、使途自由の資金提供を前提とするものではなく、契約に基づく継続的・対価的な反対給付の存在を前提としている、②控訴人は、被控訴人の資金繰り支援のため、令和2年3月3日に500万円の金銭貸付けを行った実績を有しており、「使途を特定しない資金提供」なのであれば、本件のような売買形式を採用する必要がないと主張するが、以下のとおり、いずれも採用することができない。上記(1)について、発明及び考案とノウハウが異なるものであり、本件実施許諾契約の対象が本件特許権等に限られるとすると「ノウハウ」の文言が空文化することは控訴人指摘のとおりである。しかし、原判決を引用して説示したとおり、本件実施許諾契約において「本件特許及びノウハウ」とは本件特許権等をいうものである旨が明確に定義されており、他の条項をみても本件特許権等とは別に「ノウハウ」が対象となっていたと解することはできない。控訴人が当業者でなく、本件特許権等に係る発明又は考案の実施のために被控訴人から情報提供を受ける必要があったというのであれば、情報の内容や提供方法につき契約締結前に交渉し、契約書に条項を設けるべきものであるが、そのような事実は本件証拠上認めるに足りない。したがって、被控訴人が情報提供義務を負っていたとは認められない。
5 上記(2)について、控訴人から被控訴人への432万円の支払の趣旨が被控
訴人による量産型SEECの開発費用に充てることにあったことは原判決を引用して説示したとおりである。控訴人における会計処理は控訴人内部の事情であって上記認定の妨げになるものでない。また、控訴人から被控訴人への資金提供が、ある場合には返還義務のある貸金として行われ、他の場合にはこれと異なる態様で行われたとしてもそれ自体は不自然でなく、この点も本件の結論に影響するものでない。
第4 結論
以上によれば、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官長 谷 川 浩 二裁判官伊 藤 清 隆裁判官諸 岡 慎 介
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