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令和3(ワ)24215商標権侵害行為差止等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 令和8年4月24日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ズーム
被告NECネッツエスアイ株式会社
法令 商標権
商標法38条2項10回
商標法38条3項6回
商標法2条3項7号5回
商標法2条3項8号4回
商標法26条1項6号3回
商標法4条1項11号2回
商標法2条3項2号2回
商標法2条3項2回
民法703条1回
商標法37条1項1回
商標法36条1項1回
キーワード 商標権79回
ライセンス58回
侵害50回
差止14回
損害賠償6回
許諾5回
審決4回
分割4回
無効3回
実施1回
主文 1 被告は、原告に対し、1614万4086円及びこれに対する令和3年10
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを25分し、その24を原告の負担とし、その余を被告の
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい、その登 録商標を「本件商標」という。 )を有する原告が、被告による別紙被告標章目録 記載1ないし5(以下、同目録の番号に応じて「被告標章1」などといい、こ れらを併せて「被告各標章」という。 )の使用により本件商標権が侵害されたと 主張して、被告に対し、商標法36条1項及び同条2項に基づき、被告各標章 の使用の差止め及び広告からの削除を求めるとともに、民法709条、719 条1項(ZOOM Communications,Inc. (変更前の商号は ZOOM Video Communications,Inc.である。以 下「ZCI」という。 )との共同不法行為)又は2項(ZCIの不法行為の幇助) に基づき、損害賠償金の一部である3億円及びこれに対する令和3年10月1

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判決文

令和8年4月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和3年(ワ)第24215号 商標権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 令和8年1月19日

判 決

原 告 株 式 会 社 ズ ー ム

同訴訟代理人弁護士 高 橋 鉄

池 上 健 太 郎

佐 野 真

林 い づ み

堀 籠 佳 典

服 部 謙 太 朗

同訴訟復代理人弁護士 井 上 圭

國 友 愛 美

同 補 佐 人 弁 理 士 豊 崎 玲 子

被 告 NECネッツエスアイ株式会社

同訴訟代理人弁護士 寺 澤 幸 裕

矢 倉 千 栄

和 田 信 博

秋 山 朋 子

同訴訟復代理人弁護士 児 玉 友 輝

関 川 隣 子

主 文

1 被告は、原告に対し、1614万4086円及びこれに対する令和3年10

月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、これを25分し、その24を原告の負担とし、その余を被告の

負担とする。

4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

5 1 被告は、別紙商品・役務目録記載1のソフトウェアに別紙被告標章目録記載1ないし5の標章を付し、又は同標章を付した同ソフトウェアを販売し、若しくは電気通信回路を通じて提供してはならない。2 被告は、電磁的方法により行う映像面を介した別紙商品・役務目録記載2の役務の提供に当たり、その映像面に別紙被告標章目録記載1、2及び4の標章を表示して役務を提供してはならない。3 被告は、別紙商品・役務目録記載1のソフトウェア及び同目録記載2の役務に関する被告のインターネット上のホームページ、パンフレット等の広告に別紙被告標章目録記載1、2及び4の標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に同標章を付して電磁的方法により提供してはならない。4 被告は、前項のホームページ、パンフレット等の広告から前項の標章を削除せよ。5 被告は、原告に対し、3億円及びこれに対する令和3年10月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 事案の要旨本件は、別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件商標」という。)を有する原告が、被告による別紙被告標章目録記載1ないし5(以下、同目録の番号に応じて「被告標章1」などといい、これらを併せて「被告各標章」という。)の使用により本件商標権が侵害されたと主張して、被告に対し、商標法36条1項及び同条2項に基づき、被告各標章の使用の差止め及び広告からの削除を求めるとともに、民法709条、719条1項(ZOOM Communications,Inc.(変更前の商号はZOOM Video Communications,Inc.である。以下「ZCI」という。)との共同不法行為)又は2項(ZCIの不法行為の幇助)

5 に基づき、損害賠償金の一部である3億円及びこれに対する令和3年10月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金を、選択的に、被告が本件商標権を使用することで法律上の原因なく利益を受け、原告はライセンス料相当の損失を被ったと主張して、被告に対し、民法703条及び704条に基づき、利得金の一部である3億円及びこれに対する同日から支払済みまで上記割合による利息の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

(1) 当事者ア 原告は、ハンディオーディオ/ビデオレコーダー、マルチエフェクター、デジタルミキサー/マルチトラックレコーダーやその周辺機器等の音楽用電子機器の開発及び販売等を業とする株式会社である。(甲1)イ 被告は、情報通信ネットワークシステムの企画、構築、調整、検査及び保守、並びに、これに関連する機材、機器、ソフトウェアの制作、販売及び賃貸等を業とする株式会社であり、平成29年7月に、米国法人であるZCIの日本における販売代理店(以下「リセラー」という。)第1号となった。

(2) 本件商標権ア 原告は、本件商標権を有している。(甲3、4)イ ZCIは、令和4年5月31日付けで、本件商標権の指定商品のうち、「電子計算機用プログラム(動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム、音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」、「電子計算機用プログラム(音響機器用の電子計算機用プログラム、ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム、動画の撮影・編集又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム、動画の撮影・編集のためのスマートフォン

5 用電子計算機用プログラム、音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」、「ウェブ会議・遠隔会議・ビデオ会議・テレビ会議用の電子計算機用プログラム」、「ウェブ会議・遠隔会議・ビデオ会議・テレビ会議のためのクラウドコンピューティングを介した通信用の電子計算機用プログラム、ウェブ会議システム・遠隔会議システム・ビデオ会議システム・テレビ会議システムの運営用の電子計算機用プログラム」、「インターネット及びその他の通信ネットワークのユーザー間の通信用の電子計算機用プログラム」の不使用を理由に、その商標登録を取り消す旨の審判を請求した。(乙93、138~141)

(3) 本件サービスア ZCIは、自社で開発したウェブ会議システム(以下「本件システム」という。)を使用したウェブ会議サービス(以下「本件サービス」という。)を提供している。イ ZCIは、本件サービスを提供するために、クラウド上でプログラムを運用しており(以下、このクラウド上のプログラムを「本件クラウドプログラム」という。)、ユーザーは、無料でダウンロードすることができる別紙商品・役務目録記載1のソフトウェア(以下「本件ソフトウェア」という。)を介して、又はウェブブラウザから直接本件クラウドプログラムに接続し、本件サービスを利用する。

(4) 被告サービス被告は、ZCIのリセラーとして、法人である顧客に、本件サービスを利用するための「プロライセンス」又はそれ以上のライセンスを取得させることを基本とするZoomミーティングに係るサービス(以下「被告サービス」という。)を提供している。(甲5~7、弁論の全趣旨)

(5) 被告各標章の表示ア 本件ソフトウェアの起動画面は別紙表示目録記載1又は9の表示のとお

5 りであり、被告標章1又は4が表示される。サインイン後の画面は同目録記載2及び4の表示のとおりであり、いずれも被告標章2が表示される。また、ユーザーが、本件ソフトウェアをスマートフォン等の端末にダウンロードした場合、ダウンロード先の端末の画面上には、同目録記載3又は10のように、本件ソフトウェアのアイコンとして、被告標章3又は5が表示される。(甲10、176)イ ユーザーが、ウェブページから直接本件サービスを利用する際には、当該ウェブページに別紙表示目録記載5の表示が現れ、被告標章1及び2が表示される。(甲10)ウ 被告は、「会議のあり方・働き方が変わる ビジュアルコミュニケーション ZOOM」との名称のパンフレット(以下「本件パンフレット」という。)を発行、提供しているところ、本件パンフレットには、別紙表示目録記載6及び7の表示があり、前者において被告標章1が、後者において被告標章1及び2の表示がある。(甲8)エ 被告が運営するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)には、別紙表示目録記載8及び11の表示があり、前者において被告標章1及び被告標章2が表示され、後者において被告標章2が表示される。なお、別紙表示目録記載11の表示においては、被告標章4と同様のフォントによる「ZOOM」の文字が表示されているが、被告標章4の白文字とは異なり、青文字で記載されている。(甲9、176)

(6) ZCIの商標等ア ZCIは、別紙関連商標権目録記載1及び2の商標権(以下、同目録記載の番号に応じて「本件関連商標権1」などといい、その登録商標を「本件関連商標1」などという。)を有している。(乙5、6、148~151)イ ZCIは、令和6年3月29日、訴外株式会社トンボ鉛筆(以下「訴外トンボ」という。)から、本件関連商標権3の分割移転を受け、同移転は、

5 同年4月22日付けで登録されたが、同商標権については、不使用を理由に商標登録の取消しの審判が請求され(審判の請求の登録日は令和3年2月26日である。)、令和6年3月28日に登録を取り消す旨の審決がされた。(甲205、乙16、291、292)3 争点

(1) 被告による被告各標章の使用の有無(争点1)ア 本件クラウドプログラムの提供における被告標章1、2及び4の使用(争点1-1)イ 本件ソフトウェアにおける被告各標章の使用(争点1-2)ウ 本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1、2及び4の使用(争点1-3)

(2) 本件商標と被告各標章の類否(争点2)

(3) 商品、役務の類否(争点3)

(4) 差止請求の可否(争点4)

(5) 被告の不法行為責任(争点5)

(6) 商標法26条1項6号の抗弁(争点6)

(7) 登録商標使用の抗弁(争点7)

(8) 権利濫用の抗弁(争点8)

(9) 原告の損害及び額(争点9)4 争点に関する当事者の主張

(1) 争点1(被告による被告各標章の使用の有無)についてア 争点1-1(本件クラウドプログラムの提供における被告標章1、2及び4の使用)について(原告の主張)本件サービスは、ユーザーが、本件ソフトウェアを介して、又はウェブブラウザから直接本件クラウドプログラムに接続して利用されるものであ

5 るところ、被告サービスは、本件クラウドプログラムの利用などのZCIの物質的資源の利用にとどまらず、これを超えた社会的、経済的な意義、価値を有するとともに、被告単独での提供サービスではなく、ZCIとの協力関係やサポートに裏打ちされた信頼性の高いサービスとして提供されている。また、被告は、被告サービスにおいて、本件サービスに係るライセンスを再販売しているところ、当該ライセンスは本件クラウドプログラムの利用許可であり、本件クラウドプログラムの提供の核心部分であるから、被告は、被告が構築した本件クラウドプログラムの提供の枠組において枢要な行為を行っているものといえ、ZCIは、被告の委託を受けて、クラウドサーバーの運営、管理と、ユーザーに本件クラウドプログラムを利用させるという部分を担っているにすぎない。以上によれば、被告は、本件クラウドプログラムの提供主体であるか、少なくともZCIと共同して提供行為を行っているといえる。そして、ユーザーが本件サービスを利用する際、ユーザーの端末における本件ソフトウェアの起動画面等又はウェブページの画面には、被告標章1、2及び4が表示されるところ、このような本件クラウドプログラムを提供する行為は、電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供するものであるから、商標法2条3項7号の使用に当たる。(被告の主張)否認ないし争う。本件クラウドプログラムを提供しているのはZCIであり、被告ではない。被告は、ZCIより委託を受け、日本のユーザーに対してZCIが提供する本件サービスを一定の内容で利用することができるライセンスの媒介あるいは取次サービスを提供し、かつ本件サービスを顧客が利用する際のサポートサービスを提供しているだけである。本件サービスを利用する

5 ユーザーはZCIが定めるプロバイダサービス規約に服し、ライセンス契約もZCIとユーザーの間で成立するものである。本件クラウドプログラムの提供の枠組を被告が構築した事実はなく、被告がZCIにユーザーへの本件クラウドプログラムの利用等を担わせているという事実もない。したがって、被告は、本件クラウドプログラムの提供主体ではなく、ZCIと共同して提供行為を行っているともいえないから、商標法2条3項7号の「使用」をしていない。イ 争点1-2(本件ソフトウェアにおける被告各標章の使用)について(原告の主張)被告は、被告サービスの提供に際し、ユーザーに対してダウンロードセンターのURLを通知して本件ソフトウェアをダウンロードするよう促しており、ユーザーによる本件ソフトウェアのダウンロードは、被告サービスを提供する被告の誘引行為に基づいて行われる。本件ソフトウェアの提供は、ユーザーがダウンロードセンターにアクセスし、ダウンロードを要求し、ユーザーのコンピュータの記憶装置に電子計算機用プログラムのデータが保存されて初めて完了する一連のものであり、被告サービスにおいて被告がユーザーにダウンロードセンターのURLを通知することは、このような本件ソフトウェアの提供行為の不可欠な一部であるから、被告は、被告が構築した本件ソフトウェアの提供の枠組において枢要な行為を行っているといえる。ZCIは、被告の委託を受けて、ダウンロードセンターの運営、管理と、ユーザーの要求に応じてダウンロードさせるという部分を担っているにすぎない。したがって、被告は、本件ソフトウェアの提供主体であるといえるか、少なくともZCIと共同して提供行為を行っているといえる。そして、本件ソフトウェアの起動画面、サインイン後の画面及び本件ソフトウェアをダウンロードした端末の画面には、被告各標章が表示される

5 ところ、このような本件ソフトウェアを提供する行為は、商品に標章を付したものを電気通信回線を通じて提供するものであるから、商標法2条3項2号の使用に当たる。(被告の主張)(ア) 否認ないし争う。本件ソフトウェアを提供しているのはZCIであり、被告ではない。被告は、本件ソフトウェアのダウンロードを働きかけておらず、本件ソフトウェアのダウンロードセンターのURLを提供しているだけであり、そもそも、当該URLは一般に公開されている。また、本件ソフトウェアの提供の枠組を被告が構築した事実はなく、被告がZCIに本件ソフトウェアに係るダウンロードセンターの運営、管理等を担わせているという事実もない。被告がリセラーとして関与する行為は、ライセンスの受注行為及び購入者からオーナー登録に必要な情報の提供を受けて、ZCIのサイト上でオーナー登録を行う程度のものであり、ユーザーによる本件ソフトウェアのダウンロードに被告が提供するライセンスの購入は不要であるし、本件ソフトウェアのダウンロードセンターの運営、管理に被告は何ら関与していないから、上記被告の行為は、いずれも本件ソフトウェアの提供行為とはいえない。したがって、被告は、本件ソフトウェアの提供主体ではなく、ZCIと共同して提供行為を行っているともいえないから、商標法2条3項2号の「使用」をしていない。(イ) また、商標法上の「商品」は、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならないところ、本件ソフトウェアは、本件サービスの一部を利用するために無償で提供されるものであり、本件サービスの利用のためにのみ使用できるものであって、本件サービスと独立した流通性を有するものではないから、商標法上の「商品」に該

5 当しない。ウ 争点1-3(本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1、2及び4の使用)について(原告の主張)被告は、被告標章1及び2を付した本件パンフレットを発行、提供しているほか、本件ウェブサイト上においても、被告標章1、2及び4を付し、本件サービスの内容や機能、優位性等をアピールして、世間の多くの人に知らせ、興味を抱かせ、購入その他の行動を促している。このような表示は、本件ソフトウェア及び本件クラウドプログラムの提供で実現される本件サービスに関する広告であり、商品又は役務に関する広告に標章を付して頒布し、そのような広告を内容とする情報を電磁的方法により提供するものであるから、商標法2条3項8号の使用に当たる。(被告の主張)被告が本件パンフレットを発行、提供していること、本件ウェブサイトを運営していることは認めるが、その余は否認ないし争う。本件ウェブサイトに表示されている標章は、白色背景に青文字のものであり、青色背景に白文字である被告標章4ではない。被告は、本件ソフトウェアという商品、本件クラウドプログラムによる役務の提供を行っていない。本件パンプレットや本件ウェブサイトの表示は、被告が行う本件サービスに係るライセンスの取次サービスと被告のサポートサービスを紹介したものであり、本件ソフトウェア又は本件クラウドプログラムの提供という役務に関する広告ではない。本件パンプレット及び本件ウェブサイトにおいては、「Zoom」のビデオ会議サービスの提供主体がZCIであることが示されている。被告は、被告サービスの広告につき被告標章1、2及び4を使用しておらず、また、仮に、本件パンプレットや本件ウェブサイトの表示が、本件サービスに関する広告であり、

5 被告標章1、2及び4が使用されていると認められるとしても、被告は本件サービスを提供していないから、商標法2条3項8号の使用には当たらない。

(2) 争点2(本件商標と被告各標章の類否)について(原告の主張)ア 本件商標(ア) 本件商標の外観は、デザイン化された「ZOOM」のアルファベット4文字を横一列に配したものである。本件商標を全体として観察すれば、均等な大きさでかつ統一的なデザイン性のある4つのブロックが並んだ構成が看取され、デザイン化された一連の文字であると認識するのが一般的である。本件では本件商標は同じ太さの線で、同じ高さ、同じ幅から成るところ、その構成全体を眺めた場合、看者は図形を含んだ2つ又は3つの構成部分から成ると解するのではなく、全体として何らかの文字・単語をデザイン化したものではないかとまず考える。そして、本件商標が漢字や平仮名、片仮名から成るものでないことは明らかである以上、看者としては本件商標が何らかのアルファベットから成るのではないかと考え、本件商標が「ZOOM」の文字を表していると解することは明らかである。(イ) 本件商標からは、「ズーム」の称呼が生じ、また、元々の英語の語義である「急増する、急上昇する」といった観念を生じる。イ 被告標章1被告標章1の外観は、デザイン化された「zооm」のアルファベット4文字を横一列に配したものであり、「ズーム」の称呼が生じ、また、元々の英語の語義である「急増する、急上昇する」といった観念を生じる。ウ 被告標章2被告標章2の外観は、「Zoom」のアルファベット4文字を横一列に配

5 したものであり、「ズーム」の称呼が生じ、また、元々の英語の語義から「急増する、急上昇する」といった観念を生じる。エ 被告標章3(ア) 外観は、白いビデオカメラ様の図形を中央に配した水色の丸みを帯びた四角形状と当該図形の下に横一連に書した「Zoom」のアルファベット4文字を配した構成より成る。(イ) 「Zoom」との文字部分より「ズーム」との称呼を生じ、図形部分からは特定の称呼は生じない。(ウ) 「Zoom」との文字部分より、急増する、急上昇するとの観念を生じ、図形部分からはビデオカメラの観念が生じる。オ 被告標章4(ア) 外観は、デザイン化された「zооm」のアルファベット4文字を横一列に配したものであり、「m」の形は、書き始めの最左に位置する縦線の上部が突き抜けてはおらず、左右対称の形にデザインされたものとなっている。(イ) 被告標章4からは、「ズーム」との称呼が生じ、また、元々の英語の語義である「急増する、急上昇する」といった観念を生じる。カ 被告標章5被告標章5の外観は、角に丸みを帯びた水色の四角形状の中に、被告標章4が配された図形であり、その下には横一列に「Zoom」のアルファベット4文字の記載があるものであり、「ズーム」との称呼が生じ、また、元々の英語の語義である「急増する、急上昇する」といった観念を生じる。キ 類否(ア) 本件商標と被告標章1の類否本件商標と被告標章1は、いずれも同じアルファベット4文字を横書きに配置したものであり、横一列の配置に特徴はなく、いずれも「ズー

5 ム」という単語が読み取れる範囲内にあり、外観において類似しているといえる。また、称呼はいずれも「ズーム」であり、観念もいずれも「急増する、急上昇する」であるから、称呼、観念において同一である。したがって、本件商標と被告標章1は類似している。(イ) 本件商標と被告標章2の類否本件商標と被告標章2は、上記(ア)と同様の理由により、類似している。(ウ) 本件商標と被告標章3の類否ウェブ会議サービスやカメラに関するアプリのアイコンでは、ビデオカメラのロゴが使用される例は多数存在しており、被告標章3においては、「Zoom」という文字部分が、図形部分と比較して取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるから、被告標章3においては、上記文字部分を抽出して本件商標との類否を判断することが許される。そして、「Zoom」という文字部分については、上記(ア)と同様の理由により、本件商標と外観において類似しており、称呼、観念において同一であるから、本件商標と被告標章3は類似している。(エ) 本件商標と被告標章4の類否本件商標と被告標章4は、上記(ア)と同様の理由により、類似している。(オ) 本件商標と被告標章5の類否被告標章5の被告標章4と同一の文字部分、及び「Zoom」の文字部分は、いずれも同じアルファベット4文字を横書きに配置したものであり、横一列の配置に特徴はなく、いずれも「ズーム」という単語が読み取れる範囲内にあり、外観において類似しているといえる。また、称呼はいずれも「ズーム」であり、観念もいずれも「急増する、急上昇する」であるから、称呼、観念において同一である。

5 したがって、本件商標と被告標章5は類似している。(カ) 取引の実情商標の類否判断に当たり考慮することのできる「取引の実情」とは、その指定商品や役務の全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に当該商標が現在使用されている商品や役務についてのみの特殊的、限定的なそれは含まれないと解すべきであり、被告各標章が周知・著名であるといった局所的あるいは浮動的な現象は、取引の実情として考慮されない。また、①本件ソフトウェアのユーザーが、本件ソフトウェアの出所が原告であると誤認し、本件ソフトウェアの利用方法等について原告に問い合わせる例が相次いでいること、②原告が本件ソフトウェアを提供していると誤認した旨のコメントが多数寄せられていること、③令和2年6月に株式市場において多くの投資家が原告とZCIを混同して、原告の株価がストップ高になったことのほか、④原告のマイクやハンディレコーダー等についてZCIがウェブ会議用に音声システムを供給していると勘違いされるなど現に誤認混同の事例がある。さらに、商標権者の商品等の出所が侵害者であると誤認混同させる場合である、いわゆる「逆混同」も商品等の出所に係る誤認混同に当たる。逆混同は、商標権者と侵害者との間に何らかの関係があると誤認混同させるだけでなく、登録商標の価値を喪失させ、事業の同一性を強奪し、商標権者の信用に対するコントロールや、新しい市場を開発する能力を奪うものであり、商標権侵害に当たることは当然である。(被告の主張)ア 本件商標(ア) 本件商標の外観が「ZOOM」のアルファベット4文字であること、本件商標より「ズーム」の称呼が生じること、及び元々の英語の語義か

5 ら急増する、急上昇するといった観念を生じることはいずれも否認し、又は争う。本件商標は、その構成全体から特定の意味合いを想起させることはない。(イ) 本件商標は、看者をして特定の文字や数字を表したものと理解することができないものであるから、特定の称呼や観念を生じない。本件商標は、図形を含んだ2つ又は3つの構成部分から成るものとして把握できる可能性が考えられる。すなわち、冒頭の文字又は記号は、二箇所の屈曲部分が曲線で表されているため、直ちにアルファベットの「Z」であるとは看取し難く、これに何らかの意味を持たせようとした場合には、むしろ数字の「2」ないし漢字の「乙」を想起させる態様となっている。最も目をひく中央には、①(無限大を表す)「∞」記号のような図形、②横向きにした砂時計のような長方形状の図形(真ん中の部分がボトルネック形状で繋がっている図形)、③アイマスク、黒ぶち眼鏡、ズームが可能な双眼鏡又はゴーグルの形状とも言える図形を想起させ、あるいは④アルファベットの「C」を対面させたようなデザインが配置されており、特に中央部分が空いていることから、これを直ちに、アルファベットの「O」が連続して表記されているものと看取することは必ずしも容易ではない。また、最後の文字も、情報の二つの部分が「凹」のように表記され、アルファベットの「M」を表すものであると判断することは必ずしも容易ではない。本件商標を何らかの文字、数字又は記号のみから成る標章として把握することができると仮定した場合であっても、本件商標から生じ得る称呼や観念は確定的なものではあり得ない。すなわち、本件商標については、(1)三つの構成部分から成るものと把握する立場、(2)二つの構成部分から成るものとして把握する立場、(3)三つの算用数字と一つのアルフ

5 ァベットから成るものとして把握する立場など多くの把握の仕方があり得る。イ 被告標章1被告標章1の外観及び称呼については特に争わないが、被告標章1から元々の英語の語義により急増する、急上昇するといった観念を生じることは争う。被告標章1はZCIの提供する本件サービスを示すものとして日本において周知ないし著名であり、一般需要者は被告標章1から直ちにZCIの本件サービスやそれに関連するイベント(Zoom会議、Zoomセミナー、Zoom授業やZoom飲み会等)を想起するのであり、急増する、急上昇するといった観念を想起しない。ウ 被告標章2被告標章2の外観及び称呼については特に争わないが、上記イと同旨の理由により、被告標章2から元々の英語の語義により急増する、急上昇するといった観念を生じることは争う。エ 被告標章3被告標章3の外観については特に争わないが、上記イと同旨の理由により、その称呼及び被告標章3から元々の英語の語義により急増する、急上昇するといった観念を生じることは争う。また、被告標章3は、ビデオカメラのロゴと「Zoom」の文字を組み合わせた結合商標である。ビデオカメラのロゴは、全体の7割以上を占める大きさで、明るい青の四角形(但し四つ角は丸く描かれている)の背景に白色でビデオカメラが描かれている。他方で、「Zoom」の文字はビデオカメラのロゴの5分の1以下の大きさで、かつ細い文字で表され、しかも、一般的な又はありふれた書体で表示されているのであって、被告標章3の外観上「Zoom」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くようには構成されていない。したがって、被告標章3は、外観上、その大

5 きさと色彩から、ビデオカメラのロゴが強く支配的な印象を与えるとみるのが自然であり、需要者がこのロゴを無視して「Zoom」の文字のみを抽出して把握するとは考えにくい。そうすると、被告標章3は、全体として一体的に観察して把握するのが相当である。仮にビデオカメラのロゴが使用されているアプリのアイコンが多数存在するとしても、被告標章3の大部分を占めるビデオアイコン部分を除いて被告標章3の外観や観念を判断することはできない。オ 被告標章4被告標章4の外観及び称呼については特に争わないが、上記イと同旨の理由により、被告標章4から元々の英語の語義により急増する、急上昇するといった観念を生じることは争う。カ 被告標章5被告標章5は、「zооm」の文字を角に丸みを帯びた青色の四角形状の中央に配置し、その下部に「Zoom」の文字を配置した標章である。被告標章5については、その構成部分の一部が出所識別標識として「強く支配的な印象を与える」といった事情を認めることはできないし、被告標章5の特定の部分について「出所識別標識としての称呼、観念が生じない」と認められるような事情も存在していない。そうすると、被告標章5は、全体として一体的に観察して本件商標との類否を判断すべきことになる。称呼においては、「ズーム」の称呼が生じ、観念においても「ズームのアイコン」あるいは本件サービス及びこれを提供するZCI自身並びに本件サービスに関連するイベント(Zoom会議、Zoom授業、Zoom飲み会等)という観念が生じる。キ 本件商標と被告各標章の類否(ア) 本件商標は、専らその特徴的な図案を含んだ構成ないしは全体としてデザイン化された態様から導かれる特異な外観によって認識される商標

5 であって、特定の称呼、観念は生じない。仮に何らかの称呼や観念が生じるとしても、原告の主張するような、本件商標から、「ズーム」の称呼あるいは「急増する」等の観念が一義的に生じるということはない。一方で、被告各標章は、本件商標と外観において明確な違いを有しているほか、いずれも「ズーム」又は「ビデオカメラ」の称呼が生じ(ただし、被告標章3については一義的には定まらない。)、観念においても、日本において本件サービスを示すものとして一般に周知ないし著名となっており、被告各標章から直ちに本件サービスやそれに関連するイベント(Zoom会議、Zoomセミナー、Zoom授業やZoom飲み会等)を想起させるものである(被告標章3については、「Zoom Cloud Meeting」、「ズーム・ミーティング」、「クラウド・ミーティング」などの観念も生じる)から、本件商標と被告各標章は外観、称呼、観念のいずれをとってみても、明らかに非類似である。(イ) 取引の実情本件サービスは、2020年6月以降、日本において大幅にシェアを伸ばしており、被告各標章は本件サービスを示すものとして周知性ないし著名性を獲得している。そして、本件商標がウェブ会議サービスの分野で使用実績がないから、需要者において本件サービスや本件ソフトウェアの出所を原告と誤認するおそれはない。また、原告が主張する「逆混同」は誤認混同には当たらない。

(3) 争点3(商品、役務の類否)について(原告の主張)ア 本件クラウドプログラムの提供について本件クラウドプログラムの提供は、「電子計算機用プログラムの提供」という役務の提供に当たるところ、当該役務と、本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」は、これらに同一又は類似の商標を使用した

5 場合、同一の事業者が提供していると需要者に誤認させるおそれがある関係にあるから、類似している。イ 本件ソフトウェアについて本件ソフトウェアは、本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」と同一の商品である。ウ 本件パンフレット及び本件ウェブサイトについて本件パンフレット及び本件ウェブサイトは、本件ソフトウェアという商品及び本件クラウドプログラムの提供という役務に関する広告であるから、上記ア及びイのとおり、本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」と同一の商品ないし類似する役務について、被告各標章を使用するものである。(被告の主張)ア 本件クラウドプログラムの提供について否認ないし争う。本件クラウドプログラムの提供は、すなわち本件サービスという役務の提供であり、第38類の「テレビ会議用通信端末による通信、ビデオによる遠隔会議、テレビ会議通信端末による通信、ウェブ会議通信」に該当し、本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」とは類似しない。ウェブ会議サービスと「電子計算機用プログラム」では、その用途も機能も全く異なるものである上、その販売方法や提供方法も必ずしも一致するものではなく、非類似の商品、役務である。イ 本件ソフトウェアについて否認ないし争う。需要者が商品、役務として識別しているのは本件サービスであり、本件ソフトウェアではないから、被告各標章が使用されているのは本件ソフトウェアではない。

5 仮に、本件ソフトウェアに被告各標章が使用されているとしても、本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」と本件サービスは類似しておらず、本件サービスのみに利用される本件ソフトウェアも本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」とは非類似である。ウ 本件パンフレット及び本件ウェブサイトについて本件パンフレット及び本件ウェブサイトは、いずれも被告が行う本件サービスに係るライセンスの取次サービスを紹介したものであり、本件ソフトウェア又は本件クラウドプログラムの提供という役務に関する広告ではない。被告サービスは、第35類の「第三者のための電気通信サービス及びコンピュータサービスへの加入契約の取り次ぎ」であり、本件商標の指定商品である電子計算機用プログラムとは非類似である。また、被告サービスのうち、本件サービスのサポートサービスも、第38類の「電気通信(放送を除く)に関するコンサルティング」、「テレビ会議用通信端末による通信に関する情報の提供および助言」、第41類の「コンピュータソフトウェアの使用・設計・作成・更新又は保守の教育又はトレーニングに関する助言及び指導」に類する「ウェブ会議システムに使用方法に関する教育又はトレーニング並びに助言及び指導」、又は第42類の「コンピュータ機器の貸与」であるから、本件商標の指定商品とは非類似である。

(4) 争点4(差止請求の可否)について(原告の主張)原告は、本件商標権に基づき、被告による被告各標章の使用を差し止めることができる。商標権を侵害し、又は侵害するおそれのある行為に対しては、商標法37条1項により差止請求が認められ、差止めの結果、商標権侵害が発生しなくなることまでは差止請求の要件とはされていない。また、被告は、被告が構築した枠組に従って本件ソフトウェアを提供しているのであり、被告の行為

5 を差し止めることで、当然、被告の行為に基づく本件ソフトウェアのダウンロードはできなくなるのであるから、その限りで、ユーザーに対する本件ソフトウェアの提供は止まるといえる。(被告の主張)ア 差止請求の判断基準時は、事実審の口頭弁論終結時であるところ、本件サービスの認知度が上昇し、被告各標章は既に本件サービスを示すものとして一般に広く知られ、著名な標章として定着した状況にあるから、現時点において、本件商標との誤認混同が生じるおそれはない。イ また、被告は本件ソフトウェアや本件サービスの提供をコントロールする何らの権限も能力も有していない以上、被告の行為を差し止めてみても、実効性がない。仮に規範的評価を用いて使用主体を認定する場合があり得るとしても、その使用者の行為を差し止めることで問題となる行為(商標の出所識別機能が害される行為)が止まる場合にのみ差止めが認められるべきであり、被告の行為を差し止めても問題となる行為を止めることができないのであれば、当然、そのような被告行為は差止請求の対象とされるべきではない。

(5) 争点5(被告の不法行為責任)について(原告の主張)ア 本件ソフトウェア及び本件クラウドプログラムの提供について(ア) 被告が、本件ソフトウェアに被告各標章を、本件クラウドプログラムの提供において、被告標章1、2及び4を付した行為は、いずれも本件商標権を侵害するものであるから、被告は、上記行為につき、不法行為責任を負う。(イ) 仮に、被告が、本件ソフトウェア及び本件クラウドプログラムの提供につき、単独の提供主体でないとしても、被告及びZCIは、本件ソフトウェア及び本件クラウドプログラムの共同提供者である。そして、被

5 告及びZCIが、本件ソフトウェアに被告各標章を、本件クラウドプログラムの提供において、被告標章1、2及び4をそれぞれ付した行為は、いずれも本件商標権を侵害するものであるから、被告は、上記行為につき、ZCIと共に共同不法行為責任を負う。(ウ) 被告による被告サービスが、本件サービスを利用するためのライセンスの取次ぎ又は媒介及び被告サービスを導入・使用するための周辺サポートサービスの提供等であるとしても、ZCIによる本件ソフトウェアの提供及び本件クラウドプログラムによる本件サービスの提供を幇助していることは明らかである。本件ソフトウェア及び本件クラウドプログラムの提供において被告各標章が付されていることを認識している以上、幇助の故意は優に認められる。そして、ZCIが、本件ソフトウェアに被告各標章を、本件クラウドプログラムによる本件サービスの提供に被告標章1、2及び4を付した行為は、本件商標権を侵害し、不法行為を構成するから、被告は、ZCIの不法行為につき、幇助者としての責任を負う。イ 本件パンフレット及び本件ウェブサイト被告が、本件パンフレット及び本件ウェブサイトに被告標章1、2及び4を付した行為は、本件商標権を侵害するものであるから、被告は、上記行為につき、不法行為責任を負う。(被告の主張)否認ないし争う。被告の幇助者としての責任については、ZCIの行為は商標権侵害とならないから、被告の行為がその幇助になることもない。また、被告には、幇助行為の故意、過失がない。被告は、ZCIによる被告各標章の使用は、ZCIの有する商標を使用するものであると考えており、また、代理店にすぎない被告が、他人であるZCIによる商標権侵害の有無

5 を確認することは容易ではない。さらに、被告は、原告から通知書が届いた後ではあるが、専門家である弁護士から、本件商標と被告各標章は非類似であるとの見解を得ていた。

(6) 争点6(商標法26条1項6号の抗弁)について(被告の主張)被告が本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおいて被告標章1及び2を使用している態様は、被告による取次ぎ、サポートの対象となる役務である本件サービスの内容を説明するための記述的なものとして使用しているだけであり、商品・役務の出所を示す、いわゆる商標的使用には該当しない。なお、現在の最新の本件パンフレット及び本件ウェブサイトでは、例えば本件パンフレットにおいて、「ビジュアルコミュニケーション Zoomとは」や「Zoomの標準的なセキュリティ対策」と題して、本件サービスの概要、機能及び特徴が説明されているほか、「Zoomサービスのご提供内容について」というページでは、被告が提供する「基本ライセンス」と「オプションライセンス」の内容についての説明がされ、また「当社提供のサービスについて」及び「NECネッツアイから提供させて頂く特徴」のページでは、被告が代理店として提供するライセンス以外の各種サービスの説明がされている。また、最新の本件パンフレット及び本件ウェブサイトには、それぞれ「Zoom 及び Zoom 名称を含むサービスはZoom Video Communications,Inc.が提供するサービスです。」との記載がされている。(原告の主張)本件パンフレットでは、被告の表示と共に、「Zoom」が「ビジュアルコミュニケーション」のツール名として使用され、被告が「Zoomサービスの一次販売店」であることが記載されている一方で、被告の言う取次ぎやサポートを示す記載はない。すなわち、本件パンフレットでは、「ZOOM」サ

5 ービスを販売することが記載されており、被告標章1、2及び4は、被告が再販売する「ビジュアルコミュニケーション」のツールないしは本件システムにアクセスすることができる本件ソフトウェアの出所を識別する機能を果たしている。また、本件ウェブサイトにおいても、被告の言う取次ぎやサポートについては何ら記載がなく、「Zoom販売店」、「Zoom購入のお申込みはこちら」「Zoomの日本国内販売店第一号」、「数多くの企業のお客様に、Zoomを導入」、「ご提供中のZoomサービスのご紹介」など、被告がZoomサービスを提供、販売する主体であることが記載されており、被告標章1、2及び4は、被告が提供、販売する「Zoomサービス」ないしは本件システムにアクセスすることができる本件ソフトウェアの出所を識別する機能を果たしている。

(7) 争点7(登録商標使用の抗弁)について(被告の主張)ア ZCIは、被告標章1に関して、本件関連商標権1及び2を有しており、ZCIが提供している本件サービスは、本件関連商標1の指定役務である「ウェブ会議通信」に該当するので、ZCIは登録商標を使用しているにすぎず、仮に、本件サービスの提供が、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に該当するものであっても、同様である。したがって、ZCIによる被告各標章の使用は、ZCIが保有する登録商標と同一又は類似する標章を、指定役務と同一の役務又は商品について使用するものであって、かかる使用は、ZCIが有する登録商標に付与された専用使用権又は排他権の範囲内の行為であるから、ZCIには登録商標使用の抗弁が成り立つというべきである。また、ZCIから使用許諾を得ている被告も、当該抗弁を援用することができると解すべきである。イ ZCIは、令和6年3月29日に、訴外トンボから本件関連商標権3の

5 分割移転を受け、同年4月22日付けで登録されている。したがって、仮に、令和6年4月22日以降に、ZCI及び被告による「電子計算機用プログラム」に関する被告各標章の使用行為が存在するとしても、ZCIが有する上記商標に付与された専用使用権の範囲内の行為であるから、ZCIには登録商標使用の抗弁が成り立つというべきであり、ZCIから使用許諾を得ている被告も、当該抗弁を援用することができると解すべきである。(原告の主張)否認ないし争う。ZCIの登録商標は、本件ソフトウェアに使用されており、第9類の「電子計算機用プログラム」に関する使用であるから、第38類及び第42類で商標登録がされていたとしても、商標権侵害の成立は否定されない。仮に、

第42類の「電子計算機用プログラムの提供」での使用であるとしても、第

9類の「電子計算機用プログラム」と類似するから、被告標章1の商標登録は無効とされるべきものである。また、被告標章2ないし5は、登録商標とは同一でないから、抗弁は成立しない。なお、本件関連商標3については、令和6年3月28日に不使用を理由として商標登録を取り消す旨の審決がされており、審判請求の登録日である令和3年2月26日に遡って取消しの効力が生じている。

(8) 争点8(権利濫用の抗弁)について(被告の主張)ア 本件商標は、指定商品の一部である「電子計算機用プログラム(動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム、音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」、「電子計算機用プログラム(音響機器用の電子計算機用プログラム、ビデオレコーダーの操作用の電子計算機用プログラム、動画の撮影・編集

5 又は音響・音楽の制作・録音・編集のための電子計算機用プログラム、動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム、音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラムを除く)」、「ウェブ会議・遠隔会議・ビデオ会議・テレビ会議用の電子計算機用プログラム」、「ウェブ会議・遠隔会議・ビデオ会議・テレビ会議のためのクラウドコンピューティングを介した通信用の電子計算機用プログラム、ウェブ会議システム・遠隔会議システム・ビデオ会議システム・テレビ会議システムの運営用の電子計算機用プログラム」、「インターネット及びその他の通信ネットワークのユーザー間の通信用の電子計算機用プログラム」について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されておらず、上記指定商品の登録は取り消されるべきである。そして、本件サービスに含まれる電子計算機用プログラムの用途・目的は、あくまでもウェブ会議における利用者相互の映像データや音声データ等の通信であり、上記指定商品を除いた指定商品(以下「除外後指定商品」という。)とは用途・目的が全く異なり、相互に類似するものではないから、非類似である。原告は、登録が取り消されるべき指定商品が本件商標の指定商品に含まれていることを奇貨として、被告及びZCIの本件商標権侵害を主張しており、かかる主張は原告による本件商標権の濫用である。また、仮に、本件サービスにおいて提供される本件ソフトウェアが第9類の「電子計算機用プログラム」に当たり、本件ソフトウェアと原告の指定商品が同一であるとしても、本件ソフトウェアと除外後指定商品は非類似であり、いずれにしても原告による本件商標権の濫用である。イ 原告は音響・映像機器の専業メーカーであって、音響や映像クリエーターや演奏家を除く、「電子計算機用プログラム」の需要者間(電子計算機用プログラムを利用する一般の需要者層)においては、原告の名称はおろか、

5 本件商標の存在もほとんど知られていない。また、仮に何らかの「電子計算機用プログラム」について本件商標を使用していた事実があったとしても、除外後指定商品(動画の撮影・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム、音響・音楽の録音・編集のためのスマートフォン用電子計算機用プログラム等)以外の「電子計算機用プログラム」について本件商標の使用をした事実は存在しない。したがって、「電子計算機用プログラム」の需要者層においては、本件商標の識別力は低く、「電子計算機用プログラム」一般に関して言えば、本件商標に、商標権者としての信用が化体されているとは言えない。そうすると、「電子計算機用プログラム」一般に関して、本件商標には、商標権者としての信用が化体されているとはいえず、他方で、被告各標章は、需要者において直ちに本件サービスを示すものであることが分かるほど著名な標章であることから、ZCIが、本件サービスに被告各標章を使用しても、出所の誤認混同は発生せず、かえって、仮にその使用を禁止した場合には、被告各標章が現実の取引において果たしている商品の出所識別機能を著しく害し、これに対する一般需要者の信頼も損ねることになるから、原告による本件商標権の行使は、権利濫用として許されない。ウ 本件商標は、先願である本件関連商標3と外観、称呼及び観念において類似するものであり、指定商品も同一であるから、本件商標には商標法4条1項11号の登録拒絶理由及び無効理由があったこととなる。そうすると、本件関連商標権3を有するZCIに対して、原告が本件商標権を行使することは、商標法の趣旨に反するものであり、また、ZCIから正当に許諾を受けて被告各標章を使用している被告に対する権利行使も権利濫用と評価されるべきであり、許されない。(原告の主張)ア 商標登録取消しの効果は、審判請求の登録日よりも前には遡及しないか

5 ら、同日以前の被告による商標権侵害の責任につき何ら影響を与えるものではない。また、現行の取扱いにおいては、「電子計算機用プログラム」を一つの商品、「電子計算機用プログラムの提供」を一つの役務としており、特定の用途、目的の記載はない。イ 本件ソフトウェアの用途、目的は、①動画・音声を撮影し、これを端末から出力・送信する、②撮影した動画や音声を録画・録音し、(端末に)保存する(MP4形式、M4A形式)、③保存した動画や音声を編集ないしは2次利用することなどであり、本件クラウドプログラムの用途、目的は、

①端末から送信される動画・音声を他の端末に伝送する、②端末から送信される動画・音声をクラウド上に保存する(MP4形式、M4A形式)、③保存した動画や音声を編集ないしは2次利用することなどであるところ、被告の主張する本件商標権の除外後指定商品と用途、目的に顕著な差はなく、需要者層も重なっており、また、原告のソフトウェアにおいても、上記機能、用途を備えているものが多く存在する。ウ また、原告による本件商標の取得経過や取得意図、商標権行使の態様には何ら問題がなく、権利濫用の抗弁が認められる余地はない。エ ZCIは、本件商標の出願時において、本件関連商標3を使用していたことはなく、また、同商標がZCIの業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたこともあり得ず、被告についても同様であるから、原告による本件商標権の行使は権利濫用には当たらない。ZCIが本件関連商標権3の分割移転の登録を受けたのは令和6年4月22日であるから、それ以前の被告の行為に対して、本件関連商標権3の分割移転を理由として権利濫用の抗弁が成立する余地はない。なお、本件関連商標3については、令和6年3月28日に「電子計算機用プログラム」について不使用を理由とする取消審決がされており、審判請求の登録日である令和3年2月26日に遡って取消しの効力が生じてい

5 るから、ZCIが商標の移転を受けた令和6年4月22日以降の被告の行為に対しても、原告が本件商標権を行使することは権利濫用に当たらない。

(9) 争点9(原告の損害及び額等)について(原告の主張)本件商標権の侵害により原告に発生した損害は、①被告サービスの契約及び被告サービスの導入に際しての機器の調達、設置工事に係る利益額(商標法38条2項)、又は被告サービスの契約及び被告サービスの導入に際しての機器の調達、設置工事に係る本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額(同条3項)、②本件ソフトウェアの無償ダウンロードに係る本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額(同項)、③本件商標の希釈化、信用毀損による損害である。詳細は別紙「損害に関する原告の主張」のとおりである。なお、上記①の商標法38条2項の損害と同条3項の損害については、これらを選択的に請求するものである。また、上記①及び②の商標法38条3項により推定される損害額については、被告が本件商標と類似する被告各標章を使用するに当たり、原告が被告から受けるべきライセンス料相当額であるから、被告の不当利得にも当たる。(被告の主張)否認ないし争う。詳細は別紙「損害に関する被告の主張」のとおりである。

第3 当裁判所の判断

1 認定事実

前提事実及び後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 本件システム及び本件サービスについて

ア 本件システムは、複数のユーザーがその利用する端末からZCIの管理するクラウド型サーバーにアクセスすることにより、同サーバーを介して

5 これらのユーザーの端末同士で映像や音声データ等の送受信(本件サービ

ス)を行うことができるようにしたものである。イ ユーザーは、パソコン、スマートフォン等のインターネットに接続可能な端末に内蔵されているカメラの映像やマイクの音声を、インターネットを通じてZCIが管理するサーバーに送信し、当該サーバーを介して、ウェブ会議の参加者である他のユーザーに送信、共有することができる。(甲143、乙17、19~21、24、弁論の全趣旨)ウ ZCIは、本件サービスを提供するために、クラウド上で本件クラウドプログラムを運用しており、ユーザーは、パソコンのブラウザやスマートフォンから本件クラウドプログラムに接続することで、ソフトウェアをダウンロードすることなく本件サービスを利用することができる。(乙19、弁論の全趣旨)エ ユーザーが、本件サービスを利用するに当たり、独自のミーティングやスケジュールを設定する場合には、ZCIのウェブサイトやアプリストアから、無料で提供されている本件ソフトウェアをダウンロードする必要がある。(乙3、21~23、73、弁論の全趣旨)オ ユーザーが、ZCIのウェブサイト、プロダクト、サービス、関連ソフトウェアを使用等するためには、ZCIの定めるサービス規約を遵守及び承諾することが条件とされており、ユーザーはZCIのサービスの利用等をした時点で上記規約等に同意したものとみなされる。(乙24)カ ユーザーが、本件サービスを利用してウェブ会議を開催するためには、ZCIからライセンスの付与を受ける必要があるところ、ライセンスには、無料で提供されるもののほか、「プロ」、「ビジネス」などの名称が付いた有料で提供されるものもある。(乙18、24、161)

(2) 被告サービスについて

ア ZCIは、本件サービスを提供するに当たり、特定のサービスの再販を

5 ZCIから許可されている多数のリセラーと協力関係を構築しており、被

告は、リセラーの一社として、被告サービスを提供している。(甲5、7、20、21、121、122、乙77、弁論の全趣旨)イ 被告サービスは、法人である顧客に、本件サービスを利用するための「プロライセンス」又はそれ以上のライセンスを取得させることを基本とするものであり、顧客がライセンスを取得する際の流れは、おおむね以下のとおりである。(甲7、56、弁論の全趣旨)(ア) 被告は、顧客から、ライセンスの注文を受けると、顧客のアカウントを作成するとともに、顧客に「オーナー」の権限を付与する個人(顧客の職員)を選定してもらい、顧客に代わり、顧客の名称、アカウント番号、「オーナー」の氏名及び「オーナーメールアドレス」等の情報を、ZCIのウェブサイト上で登録する。(イ) ZCIのウェブサイトでオーナーの登録がされると、登録された情報に基づき、ZCIから「オーナーメールアドレス」宛てに、「Zoomアカウントのアクティベート」という件名のメールが送付される。当該メールの本文には、①アクティベーションをするためのボタン、②当該ボタンが反応しなかった場合に利用するアクティベーションのためのURL、③サインイン用のメールアドレス(オーナーメールアドレス)と初期パスワードの情報が記載されている。「アクティベーション」とは、ユーザーが購入したライセンスを有効化する作業であり、オーナーが、ZCIのウェブサイト上で、「Zoomアカウントのアクティベート」をし、管理者の設定をし、設定された管理者が当該ライセンスを使用させる顧客内のユーザーの登録をして、当該ユーザーが当該ライセンスを有効化する作業をすると、各ユーザーにおいて、顧客が購入したライセンスを利用することが可能になる。ウ 被告は、顧客に対し、ライセンス取得時の手続のほかに、①トレーニン

5 グサービスの提供、②Symphonictサービスポータル(管理者・

利用者向けに被告のノウハウやナレッジを提供するポータルサイト)の提供、③サポートデスクの提供、④各種日本語マニュアルの提供、運用ルール作成支援、⑤被告が提供した機器やソフトウェアに係る保守運用サポートを行っている。(甲7)

2 争点1(被告による被告各標章の使用の有無)について

(1) 争点1-1(本件クラウドプログラムの提供における被告標章1、2及び

4の使用)について前提事実(3)のとおり、ユーザーが本件サービスを利用するには、本件ソフトウェアを介して、又はウェブブラウザから直接本件クラウドプログラムに接続するものとされ、認定事実(1)のとおり、本件サービスに関し、ユーザーに対する本件クラウドプログラムの提供、必要なライセンスの付与、ウェブサイトでの本件ソフトウェアの提供等、本件サービスの提供に係る主要な行為を行っているのはいずれもZCIであると認められる。他方で、認定事実(2)のとおり、被告は、ZCIのリセラーの一社として、法人の顧客が本件サービスを利用するための有料のライセンスを取得するに当たり、初回のシステム登録等の必要な手続を顧客の代わりに行うほか、サポートデスクの提供等を行うものであるのに対し、これを超えて、本件クラウドプログラムの提供に係る上記のような本件サービスに関する枠組の構築に関与したことを認めるに足りる証拠はない。以上のような被告サービスの内容やZCIと被告との関係に照らせば、被告は、ZCIの構築した本件サービスを提供する枠組において、リセラーとして、ユーザーとZCIとの間で、主とてユーザーが本件サービスを利用するためのライセンスの取次ぎ等を行うにとどまり、被告自身が本件クラウドプログラムの提供主体であると認めることはできないし、ZCIと共同して本件クラウドプログラムの提供を行っていると認めることもできない。

5 そうすると、前提事実(5)のとおり、ユーザーが本件ソフトウェアを介して

利用する場合は被告標章1、2及び4が表示され、ユーザーがウェブページから直接利用する場合は被告標章1及び2が表示されるとしても、これらの表示がZCIにより行われたものであると認める余地はあっても、被告が表示するものであると認めることはできないから、被告に商標法2条3項7号の使用行為があると認めることはできない。

(2) 争点1-2(本件ソフトウェアにおける被告各標章の使用)について

前提事実(3)に加えて、上記(1)に説示したところに照らせば、本件サービスはZCIにより構築され、その中でも本件ソフトウェアについては本件サービスの提供方法の一つとして主要な位置付けが与えられており、また、本件ソフトウェアはZCIのウェブサイトにおいて提供されていること、他方で、被告が、本件ソフトウェアの提供に係る枠組の構築に関与をしたことを認めるに足りる証拠もないことからすれば、本件ソフトウェアの提供主体はZCIであり、被告が本件ソフトウェアの提供主体であると認めることはできないし、ZCIと共同して本件ソフトウェアの提供を行っていると認めることもできない。そうすると、前提事実(5)のとおり、ユーザーが本件ソフトウェアをする場合は被告各標章が表示されるとしても、これらの表示がZCIにより行われたものであると認める余地はあっても、被告が表示するものであると認めることはできないから、被告に商標法2条3項7号の使用行為があると認めることはできない。

(3) 争点1-3(本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1、

2及び4の使用)についてア 前提事実(5)ウ及びエのとおり、被告は、被告標章1及び2を付した本件パンフレットを発行、提供し、また、本件ウェブサイト上において、被告標章1、2及び4を付して、本件サービスの内容や機能、優位性等を宣伝

5 していることが認められる。

なお、原告は、別紙表示目録記載11の表示において被告標章4も表示されていると主張するところ、前提事実(5)エのとおり、原告が、被告標章4であると主張する別紙表示目録記載11における「ZOOM」の表示は青文字で記載されており、白文字の「ZOOM」である被告標章4とは色彩において異なるから、本件ウェブサイトにおいて被告標章4が使用されていると認めることはできない。そこで、以下では、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1及び2の使用について検討する。イ 証拠(甲8、9)によれば、被告は、令和2年12月時点の本件パンフレットにおいて、「「Zoom」は、当社実績5,000社様以上にご採用いただいている、ビデオ会議のクラウドサービスです。」、「NECネッツエスアイはZoomサービスの一次販売店です。」などと記載し、また、本件ウェブサイトにおいても、「NECネッツエスアイは、“Zoomの日本国内販売店第一号”としてこれまで数多くの企業のお客様に、Zoomを導入してきました」、「最適な料金プランやライセンスをご提案しますのでお気軽にお問い合わせください。」、「国内販売店第1号 日本国内導入実績10,000社以上の当社だからできるご提案があります」などと記載するとともに、本件サービスの内容や利点を紹介していることが認められる。他方で、本件パンフレット(甲8)及び本件ウェブサイト(甲9)を見ても、本件サービスがZCIが開発、提供するクラウドサービスであるとの記載はあるものの、本件サービスの契約主体がZCIであることや、被告が本件サービスの利用に必要なライセンスの取次ぎ等をしているだけであることを明示した記載は見当たらない。このような本件パンフレット及び本件ウェブサイトの内容に照らせば、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける表示は、利用者において、

5 被告が、被告サービスにととまらず、本件サービスを提供する主体として、

本件サービスないし本件ソフトウェアについて宣伝するものであると認められる。以上によれば、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1及び2の表示は、被告による本件ソフトウェア及び本件クラウドプログラムの提供で実現される本件サービスに関する広告であり、商品又は役務に関する広告に標章を付して頒布し、そのような広告を内容とする情報を電磁的方法により提供するものであるから、商標法2条3項8号の使用に当たると認められる。

3 争点2(本件商標と被告各標章の類否)について

(1) 商標の類否判断の基準

商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。そして、商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されない。もっとも、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、一個の商

5 標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるから、この場合、一つの称

呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一又は類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。

(2) 本件商標について

本件商標を全体として観察すれば、均等な大きさであり、かつ、同じ太さの線、同じ高さ、同じ幅から成る4つの部分が一列に並んだ構成が看取され、全体として何らかの文字ないし単語をデザイン化したものと考えることができ、最後の部分がアルファベットの「M」と比較的容易に解することができることなどに照らせば、全体がアルファベット4文字で構成されているものと捉えた上で、「ZOOM」という一般的な単語を表すものと理解することができる。したがって、本件商標は、アルファベットの黒色の「ZOOM」をデザイン化したものとして、「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観念が生じる。これに対し、被告は、本件商標は看者をして特定の文字や数字を表したものと理解することができず、図形を含んだ2つ又は3つの構成部分から成るものとして把握する可能性が考えられるなどと主張する。確かに、本件商標の中央の二つの文字部分は、同一形状のものが左右対称に並べられることで、アルファベットの「C」を対面させたものや、無限大を表す「∞」の記号をデザイン化したものであると見ることもできるなど、一見すると多様な見方が生じ得るものといえる。しかし、仮に中央の二つの文字部分を上記のように解した場合、本件商標から特定の観念や称呼を導くことは困難であり、本件商標に接した看者においては、本件商標を全体として見てその意味や読み方を抽出しようとするのが合理的であることからする

5 と、本件商標については、上記のとおり、全体としてアルファベットの「Z

OOM」をデザイン化したものと理解するのが比較的に無理のない見方であるといえるから、被告の上記主張は採用することができない。

(3) 被告各標章について

ア 被告標章1被告標章1は、アルファベットの「ZOOM」を青色の丸みのあるフォントで表示したものであり、「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観念が生じる。イ 被告標章2被告標章2は、アルファベットの「Zoom」を一般的なフォントで表示したものであり、「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観念が生じる。ウ 被告標章3被告標章3は、角が丸い略正方形の青い背景の中央に白いビデオカメラ様のイラストが配置され、当該背景部分の下部に上記ビデオカメラ様のイラストの半分ほどの大きさのアルファベットの「Zoom」が白色の一般的なフォントで記載されているものである。被告標章3は、角が丸い略正方形の青い背景の中央に白いビデオカメラ様のイラストが配置された図形部分と、「Zoom」の文字部分が結合した標章であると認められるところ、上記のような構成からすれば、図形部分と文字部分は、取引上不自然であると思われるほどに不可分的に結合しているとは認められない。そうすると、被告標章3については、その全体として出所識別機能を有するほか、図形部分及び文字部分のそれぞれについても出所識別機能を有するものと認められる。そこで、文字部分を分離して観察すると、「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観念が生じる。

5 エ 被告標章4

被告標章4は、アルファベットの「ZOOM」を白色の丸みのあるフォントで表示したものであり、「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観念が生じる。オ 被告標章5被告標章5は、角が丸い略正方形の青い背景の中央に白色の丸みのあるフォントでアルファベットの「ZOOM」が記載され、当該背景部分の下部に上記文字とほぼ同じ大きさのアルファベットの「Zoom」が白色の一般的なフォントで記載されているものである。被告標章5は、角が丸い略正方形の青い背景の中央に白色の丸みのあるフォントでアルファベットの「ZOOM」が記載された部分と、「Zoom」の文字部分が結合した標章であると認められるところ、上記のような構成からすれば、各部分は、取引上不自然であると思われるほどに不可分的に結合しているとは認められない。そうすると、被告標章5については、その全体として出所識別機能を有するほか、上記各部分のそれぞれについても出所識別機能を有するものと認められる。そこで、「Zoom」の文字のみの部分を分離して観察すると、「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観念が生じる。

(4) 本件商標と被告各標章の類否

ア 本件商標と被告標章1の比較本件商標と被告標章1の外観は、上記(2)で説示したとおり、本件商標が多分にデザイン化され、一見すると多様な見方が生じ得るものであるため、外観上の差異があることは否定することができないものの、両者は「ZOOM」をデザイン化したものである点で共通しており、その意味で外観において類似しているものといえる。また、本件商標と被告標章1からは、いずれも「ズーム」との称呼、及び「(カメラなどの)ズーム機能」との観

5 念が生じるから、称呼及び観念において同一である。

イ 本件商標と被告標章2の比較本件商標と被告標章2は、上記(2)で説示したとおり、本件商標が多分にデザイン化され、一見すると多様な見方が生じ得るものであるため、外観上の差異があることは否定することができないものの、本件商標は「ZOOM」をデザイン化したものとして理解することができるから、アルファベットの「Zoom」の4文字から成る被告標章2とは外観において類似しているものといえ、また、上記アで説示したところと同様、称呼及び観念において同一である。ウ 本件商標と被告標章3の比較上記(3)ウのとおり、被告標章3については、文字部分のみを分離して観察することが可能であるから、本件商標と当該部分を比較すると、上記ア及びイで説示したところと同様、外観において類似しているものといえ、また、称呼及び観念において同一である。エ 本件商標と被告標章4の比較本件商標と被告標章4の外観は、上記アないしウで説示したところと同様、外観において類似しているものといえ、また、称呼及び観念において同一である。オ 本件商標と被告標章5の比較上記(3)オのとおり、被告標章5については、「Zoom」の文字部分のみを分離して観察することが可能であるから、本件商標と当該部分を比較すると、上記アないしエで説示したところと同様、外観において類似しているものといえ、また、称呼及び観念において同一である。カ 取引の実情(ア) 証拠(乙11~14、60~69、278、280)及び弁論の全趣旨によれば、本件サービスに関し、以下の事実が認められる。

5 a ZCIは、2011年(平成23年)に設立され、2012年(平

成24年)から、日本を含む全世界において、企業や個人に対し、「Zoom」の標章を用いて、ウェブ会議及びそれに関連するサービスを提供している。b 2019年(令和元年)には、日本において、40万人を超えるユーザーにより、800万件を超えるウェブ会議が実施された。c 2020年(令和2年)には、新型コロナウイルスの感染拡大と政府による緊急事態宣言が発令される中で、日本において、テレワーク導入企業が急増し、これに伴い本件サービスを含むウェブ会議システムの利用率も大幅に伸び、2019年(令和元年)12月末の日本での利用率は44%だったところ、2020年4月末には63%にまで上昇し、その中で、本件サービスのシェアは、同年5月時点で35%、令和3年10月には61%となった。d 本件サービスについては、2020年(令和2年)6月以降、利用数が飛躍的に増え、同年1年間で、ライセンスを10以上取得している日本国内顧客数が2,500社から20,000社に増加し、同年8月から10月にかけて行われた調査によれば、「Zoom」の認知度は74.7%であった。e 本件サービスは、2020年(令和2年)のコロナ禍において、企業活動の場面だけではなく、大学の授業等の教育現場でも広く利用されるようになった。f 「Zoom」は、「Yahoo!検索対象2020」の流行語部門賞を受賞したほか、2020年(令和2年)の「DIMEトレンド大賞」の「IT部門賞」を獲得した。(イ) 上記(ア)の事実によれば、新型コロナウイルスの感染拡大等に伴う社会状況の変化を受け、本件サービスを含むウェブ会議システムの利用率は

5 大幅に伸び、その中でZCIによる本件サービスのシェアも大幅に増加

した結果、令和2年7月以降におけるウェブ会議サービスとしての「Zoom」の認知度が74.7%という圧倒的な数値に達するなど、「Zoom」を含む被告各標章については、遅くとも同月以降、ウェブ会議サービスに関する事項に使用する場合、一般の需要者において、ZCIの出所を識別する著名な表示として認識されていたものと認められるから、本件商標と被告各標章の類否を検討する上においても、かかる事情は取引の実情として考慮するのが相当と認められる。(ウ) これに対し、原告は、商標の類否判断に当たり考慮することができる取引の実情は、指定商品や役務の全般についての一般的、恒常的なものであって、単に当該商標が現在使用されている商品や役務についてのみの特殊的、限定的な事情は含まれないと解すべきであり、被告各標章が周知・著名であるかといった局所的あるいは浮動的な現象は、取引の実情として考慮すべきではないと主張する。しかし、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであるから、その判断に当たり考慮すべき取引の実情について、指定商品や役務の全般についての一般的、恒常的なものに限定されるものと解すべき理由はなく、原告の上記主張は採用することができない。キ 以上を前提に、本件商標と被告各標章の類否を検討する。上記アないしオのとおり、本件商標と被告各標章は、本件商標が多分にデザイン化され、一見すると多様な見方が生じ得るものであるため、外観上の差異があることは否定することができないものの、両者はアルファベットの「ZOOM」又は「Zoom」の文字それ自体ないしこれをデザイン化したものである点で共通しており、その意味でいずれも外観において

5 類似しているものといえ、また、称呼及び観念において同一であるから、

両者の外観、観念及び称呼を全体的に考察すれば、一応類似するものということができる。もっとも、本件証拠上、原告において本件商標をウェブ会議サービスに使用していることは認められないのに対し、上記カのとおり、取引の実情として、被告各標章については、令和2年7月以降、ウェブ会議サービスに関する事項に使用する場合には、一般の需要者において、ZCIの出所を識別する著名な表示として認識されていたことが認められる。以上を総合して全体的に考察すれば、被告各標章は、これをウェブ会議サービスに関する事項において使用する場合、令和2年6月までは、一般の需要者において、原告の出所を識別するものとして誤認混同するおそれがあったと認められるものの、同年7月以降については、これがZCIの出所を識別する著名な表示として認識されることになった結果、もはや原告の出所を識別するものとして誤認混同するおそれがあると認めることはできない。なお、原告は、本件ソフトウェアの利用方法等について原告に問い合わせる例が相次いでいることなど、現に誤認混同が生じていると主張するが、原告が主張する事例は、いずれも原告の商号をもって本件サービスを提供するものであると誤認したものと解することができるのであって、本件商標と被告各商標が類似していることに起因するものとは直ちに認め難いから、原告の上記主張は採用することができない。また、原告は、商標権者の商品等の出所が侵害者であると誤認混同させる場合である、いわゆる「逆混同」も商品の出所に係る誤認混同に当たると主張するが、本件商標が付された原告の製品につき、その出所がZCIであると誤認混同するような事例が生じていることや、そのようなおそれがあると認めるに足りる証拠はなく、原告の上記主張は採用することがで

5 きない。

4 争点3(商品、役務の類否)について

(1) 商品、役務の類否判断の基準

指定商品・役務が類似のものであるかどうかは、それらの商品・役務が通常同一営業主により製造・販売又は提供されている等の事情により、それらの商品・役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造・販売又は提供する商品・役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)

第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730

頁参照)。

(2) 本件クラウドプログラムの提供

本件クラウドプログラムについては、これがユーザーに提供され、ユーザーにおいてパソコンのブラウザやスマートフォンから接続することで本件サービスを利用することができるようになるものであるから、本件クラウドプログラムの提供は「電子計算機用プログラムの提供」に該当し、当該役務と本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」は、これらに同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造・販売又は提供する商品・役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるから、類似するものであると認められる。これに対し、被告は、本件クラウドプログラムの提供は、ウェブ会議サービスである本件サービスを提供するもので、第38類の「テレビ会議用通信端末による通信、ビデオによる遠隔会議、テレビ会議通信端末による通信、ウェブ会議通信」に該当するとし、ウェブ会議サービスと「電子計算機用プログラム」では、その用途も機能も全く異なるものであるし、その販売方法や提供方法も必ずしも一致しないとして、非類似であると主張する。しかし、本件商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」について用途等の限

5 定はなく、本件クラウドプログラムの提供がウェブ会議サービスである本件

サービスの提供を目的とするものであるとしても、上記判断を左右するものではない。したがって、本件クラウドプログラムの提供における被告標章1、2及び4の使用は、本件商標の指定商品と類似する役務の提供についての使用と認められる。

(3) 本件ソフトウェア

商標法2条3項が規定する「商品」とは商取引の目的たり得べき物をいうものと解されるところ、証拠(甲84、86、161)によれば、本件ソフトウェアを使用した本件サービスの利用は、ウェブブラウザを介して本件サービスを利用する場合と比較して、使用できる機能が多く、利便性が高いとされており、ZCIも本件ソフトウェアの使用を推奨していることが認められる。そうすると、本件ソフトウェアは、ユーザーが本件サービスを利用するに当たり、付加的な価値があると認められ、独立して商取引の目的たり得べき物であるということができるから、商標法2条3項所定の「商品」に当たると認められる。本件ソフトウェアが現在無料で提供されていることなど、被告が主張する事情は、本件ソフトウェアの「商品」該当性を左右するものではない。そうすると、本件ソフトウェアは、「電子計算機用プログラム」に当たると認められるから、本件ソフトウェアにおける被告各標章の使用は、本件商標の指定商品と同一の商品についての使用と認められる。なお、本件ソフトウェアがウェブ会議サービスである本件サービスのみに用いられるものであるとしても、上記(2)と同様に、上記類否の判断を左右するものではない。

(4) 本件パンフレット及び本件ウェブサイト

上記2(3)のとおり、被告は、本件パンフレット及び本件ウェブサイトによ

5 り、本件クラウドプログラムの提供により実現されている本件サービスの提

供を宣伝しているところ、本件クラウドプログラムの提供における被告標章1、2及び4の使用は、本件商標の指定商品と類似する役務の提供についての使用と認められることは、上記(2)のとおりである。

5 争点4(差止請求の可否)について

上記2のとおり、被告による本件商標の使用は、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1及び2の使用の限度においてのみ認められるから、当該使用の差止請求の可否について検討する。原告の被告に対する本件商標権に基づく差止請求の可否につき、その判断の基準時は口頭弁論終結時であるところ、上記3のとおり、令和2年7月以降は、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1及び2の使用につき、本件商標との間で出所の誤認混同を認めることはできないから、口頭弁論終結時点において、本件商標権の侵害は認められない。したがって、原告の被告に対する本件商標権に基づく上記使用の差止請求は理由がない。

6 争点5(被告の不法行為責任)について

(1) 本件クラウドプログラムの提供及び本件ソフトウェア

ア 上記2ないし4のとおり、ZCIについて、本件クラウドプログラムの提供における本件商標1、2及び4の使用ないし本件ソフトウェアにおける被告各標章の使用が認められるところ、ZCIによる令和2年6月までの当該使用行為については、本件商標と被告各標章が類似するものであり、本件クラウドプログラムの提供及び本件ソフトウェアが、本件商標権の指定商品である「電子計算機用プログラム」と類似する役務ないし同一の商品であるから、本件商標権を侵害するものと認められる。イ 他方で、上記1及び2のとおり、被告については、本件クラウドプログラムの提供及び本件ソフトウェアにつき、商標法2条3項7号又は2号の

5 使用は認められないものの、被告は、ZCIのリセラーという立場で、被

告サービスを提供し、ユーザーによる本件サービスの利用のためのライセンスの取得の取次ぎ等を行うとともに、本件仕様書において、本件サービスを利用する際の動作環境として、本件ソフトウェアのダウンロード先をユーザーに示していたものであって、以上の被告の行為については、ZCIによる本件商標権の侵害行為を幇助するものであったと認めるのが相当である。被告は、ZCIによる被告各標章の使用はZCIの有する商標を使用するものであるし、代理店にすぎない被告が、他人であるZCIによる商標権侵害の有無を確認することは容易ではないから、被告には幇助行為についての故意、過失がないと主張するが、被告は、ZCIが、本件クラウドプログラムの提供及び本件ソフトウェアに本件商標と類似する被告各標章を使用していることを認識していたのであるから、幇助の故意に欠けるところはなく、被告の上記主張は採用することができない。

(2) 本件パンフレット及び本件ウェブサイト

上記2ないし4のとおり、被告について、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおける被告標章1及び2の使用につき、商標法2条3項8号の使用が認められるところ、令和2年6月までの当該使用行為については、本件商標と被告標章1及び2が類似するものであり、本件商標権の指定商品である「電子計算機用プログラム」と類似する役務に係るものであるから、本件商標権を侵害するものと認められる。

7 争点6(商標法26条1項6号の抗弁)について

被告は、本件パンフレット又は本件ウェブサイト上で、被告が被告標章1及び2を利用している態様は、被告による取次ぎ、サポートの対象となる役務である本件サービスの内容を説明するための記述的なものとして使用しているだけであり、商品・役務の出所を示す、いわゆる商標的使用には該当しないと主

5 張する。

しかし、上記2のとおり、被告は、本件パンフレット及び本件ウェブサイトにおいて、被告標章1及び2を使用して、自身が提供主体であるかのように本件サービスを宣伝しているものであり、被告各標章は、本件サービスの提供につき被告の役務であると認識することができる態様により使用しているものといえるから、被告の上記主張は採用することができない。

8 争点7(登録商標使用の抗弁)について

(1) 被告は、ZCIによる被告各標章の使用は、ZCIが保有する本件関連商

標1及び2の使用であるから、ZCIの当該商標に係る専用使用権の範囲内の行為であり、ZCIから許諾を受けていた被告もこれを援用することができると主張する。しかし、上記3及び4のとおり、令和2年6月以前の時点におけるZCI又は被告による被告各標章の使用は、本件商標と類似する標章を、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品又は役務に使用するものであるから、仮にZCIが被告標章1について商標登録し、上記使用がZCIの保有する登録商標についての指定商品又は役務に係る使用に当たるとしても、本件商標権の侵害行為に係る上記判断を左右するものではない。なお、本件関連商標2に関しては、令和2年6月よりも後に商標登録されたものであるから、当該商標の使用は、同月以前の本件商標権の侵害行為に係る上記判断を左右するものではない。

(2) また、被告は、ZCIが訴外トンボから移転を受けた本件関連商標3を使

用するものであるとも主張するが、当該移転の登録日は令和6年4月22日であるから、当該商標の使用は、同目録記載2と同様に、令和2年6月以前の本件商標権の侵害に係る判断を左右するものではない。

9 争点8(権利濫用の抗弁)について

(1) 被告は、本件商標に関し、その指定商品である「電子計算機用プログラム」

5 の一部が、不使用を理由に取り消されるべきであり、取消後の本件商標の指

定商品は、ZCI及び被告による被告各標章の使用に係る商品及び役務と非類似であるところ、原告が、上記取り消されるべき指定商品が、本件商標の指定商品に含まれていることを奇貨として、ZCI及び被告による本件商標権の侵害を主張することは、権利の濫用であると主張する。しかし、前提事実(2)のとおり、ZCIが、令和4年5月31日付けで、本件商標権の指定商品の一部につき、不使用を理由に、その商標登録を取り消す旨の審判を請求しているものの、いまだ当該指定商品の一部について商標登録は取り消されておらず、また、仮に取り消されたとしても、取消しの効力は請求の登録日から生じるものであるから、令和2年6月以前のZCI及び被告の被告各標章の使用につき、原告による本件商標権の行使が権利濫用に当たることを基礎付けることになるとはいえない。

(2) また、被告は、本件商標は、「電子計算機用プログラム」に使用されておら

ず、商標権者としての信用が化体していないにもかかわらず、著名である被告各標章の使用につき本件商標権の侵害を主張することは、権利の濫用に当たると主張する。しかし、上記3のとおり、被告各標章につき著名性が認められるのは令和2年7月以降のことであり、同年6月以前におけるZCI及び被告による被告各標章の使用についての主張は前提を欠くものであるから、採用することができない。

(3) さらに、被告は、本件商標は、先願である本件関連商標3と、外観、称呼

及び観念において類似するものであり、指定商品も同一であるから、本件商標には商標法4条1項11号の登録拒絶理由及び無効理由があったところ、原告が、本件関連商標権3を譲り受けて保有するZCI、及びZCIから被告各標章の使用の許諾を受けた被告に対し、本件商標権を行使することは権利の濫用に当たると主張する。

5 しかし、本件関連商標3については、令和6年3月28日、不使用を理由

に商標登録を取り消す旨の審決がされており、取消しの効力は請求の登録日である令和3年2月26日から効力が発生するものである。そうすると、本件関連商標3について、訴外トンボの信用が化体していたものということはできないし、当該商標と被告各標章が類似するとしても、当該商標を譲り受ける以前のZCI及び被告による被告各標章の使用につき、これを保護すべき理由もない。そうすると、被告が主張する上記事情をもって、令和2年6月以前のZCI及び被告の被告各標章の使用につき、原告による本件商標権の行使が権利濫用に当たるとはいえない。

(4) その他、原告による本件商標権の行使が権利の濫用に当たることを基礎付

ける事情を認めるに足りる証拠はなく、以上によれば、被告の上記主張はいずれも採用することができない。

10 争点9(原告の損害及び額)について

(1) 商標法38条2項による損害額の推定

ア 被告サービスの契約に係る利益額(ア) 売上額弁論の全趣旨によれば、原告と被告は、被告サービスの契約に係る売上額の計算方法につき、下の①ないし④のとおり合意をしたことが認められる。なお、侵害期間中の全ての取引を対象として、当該方法により算出された売上額の合計が●(省略)●円であることは、当事者間に争いがない(ただし、原告は、下記(イ)のとおり、●(省略)●である1件の取引について、この売上額(●(省略)●円)は控除し、売上額の合計を●(省略)●円として計算することを主張している。)。

①被告がZCIに対してライセンスを発注し、ZCIから請求を受け

5 た金額について、被告が被告サービスの取扱いを開始した2017

年から2020年6月までの分(ライセンス料原価)を算出する。

②被告は、①の金額から、被告の社内設備において利用するために購

入した分を除外する。

③ZCIからのライセンス料の請求書は一括して発行されるが、被告

サービスの売上げは毎月計上されることから、月割りによりライセンス料を割り付けることにより、上記期間のライセンス料原価を算出する。

④被告は、③に被告の標準価格の構成要素であるライセンスサポート

費、間接費及び販売利益を乗じて算出した金額(ライセンス料原価に約●(省略)●%を乗じた額)を売上額として算出する。(イ) ●(省略)●の取引の取扱いについて原告は、●(省略)●となっている1件の取引につき、正常な取引ではないから除外すべきであると主張するが、正常な取引でないという点について、その理由は明らかにしていない。また、原告は、当該取引を除外すべき根拠として、本来、各取引は別々の不法行為を構成するから、原告において当該取引以外の部分だけを損害として請求することも可能であるなどとも主張するが、上記(ア)の計算方法は、侵害期間中の原告の損害額全体を推定するため当該期間中の被告の取引を抽出しているものであるから、●(省略)●であるか否かによってその一部を取捨選択することができるような性質のものとはいえない。そして、被告の受けた利益額を算出するに当たり、侵害期間中の取引を網羅的に抽出することには一定の合理性があり、恣意的に取引を抽出することは、かえって適正な損害額の算定を妨げるものといえる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。

5 そうすると、売上額の合計は、上記(ア)のとおり、●(省略)●円とし

て計算するのが相当である。(ウ) 控除すべき経費についてa 被告は、売上額からZCIへのライセンス料原価及びライセンスサポート費を差し引くべきであると主張するところ、弁論の全趣旨によれば、被告がZCIに支払ったライセンス料原価が●(省略)●円であること、ライセンスサポート費とは、ユーザーがウェブ会議サービスを導入、利用するに当たり、被告が提供する周辺サポートサービス(トレーニングサービス、サポートデスク、日本語マニュアルの提供など)に係る費用であり、上記計算方法においてライセンス料原価の●(省略)●%として計上していることが認められる。b 商標法38条2項が規定する「侵害行為により侵害者が受けた利益の額」とは、侵害行為による売上額から、侵害行為に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であると解されるところ、ライセンス料原価及びライセンスサポート費については、その内容からすれば、侵害行為に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認めるのが相当である。c これに対し、原告は、ライセンス料原価は共同不法行為者であるZCIに支払われるものであるから、控除すべきではないと主張する。しかし、本件において原告の損害額を推定するに当たり、その基礎となるべき「侵害者が受けた利益」は、あくまで被告が受けた利益をいうのであって、ZCIの利益等は検討対象に含まれるものではない。したがって、ライセンス料原価を控除するのが相当であり、原告の上記主張は採用することができない。d また、原告は、ライセンスサポート費について、被告サービスの契約に係る売上額の計算方法は、個別取引の確認が困難であるとの理由

5 から便宜的に採用されたものであるなどとして、控除すべきでないと

主張する。しかし、ライセンスサポート費は、被告サービスの契約に係る売上額の計算方法について原告も同意した上でその額を仮定し、売上額の計算に入れたものであることからすれば、算入した金額を前提として、ライセンスサポート費がその性質上控除すべき経費であるかどうかを検討すれば足りる。そして、上記のとおり、ライセンスサポート費の内容からすれば、被告サービスの提供に当たり直接関連して追加的に必要となった経費といえるから、原告の上記主張は採用することができない。e したがって、ライセンス料原価●(省略)●円及びライセンスサポート費として同額の●(省略)●%に当たる●(省略)●円は、控除すべき経費であると認められる。イ 被告サービスの導入に伴う機器の調達・設置工事に係る利益について被告サービスの導入に伴う機器の調達・設置工事に係る利益は、被告による周辺機器の調達・設置工事に係るものであるところ、証拠(甲209、212)及び弁論の全趣旨によれば、周辺機器とは、本件サービスの提供に特化したものではなく、第三者が製造した汎用性のあるパソコンやモニターなどであると認められる。そうすると、仮に、被告による調達・設置工事が、ユーザーが本件サービスの利用を開始する際に併せて行われたものであるとしても、本件サービスの提供に当たり必須のものではなく、被告サービスないし本件サービスとは切り離して利用することができるものであり、かつ、その売上げは、周辺機器の調達・設置工事という被告サービスないし本件サービスの提供とは別の商品の販売等ないし役務の提供に対する対価であるといえるから、侵害行為により被告が受けた利益には当たらないというべきである。

5 ウ 被告が受けた利益の額

以上によれば、商標法38条2項の被告が受けた利益の額は、売上額合計●(省略)●円から、ライセンス料原価●(省略)●円、及びライセンスサポート費●(省略)●円を控除した●(省略)●円であると認められる。【●(省略)●-●(省略)●-●(省略)●=●(省略)●】エ 推定覆滅等商標法38条2項により侵害者が受けた利益の額が原告の損害と推定されるところ、同規定は推定規定であるから、侵害者の側で、侵害者が得た利益の一部又は全部について、商標権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主張立証した場合には、その限度で上記推定は覆滅される。(ア) 原告及びその製品証拠(甲1、2、12、13、104、105、甲A1~54、乙168、203~210)及び弁論の全趣旨によれば、①原告は、ハンディオーディオ/ビデオレコーダー、マルチエフェクター、デジタルミキサー/マルチトラックレコーダーやその周辺機器等の音楽用電子機器の開発及び販売等をする株式会社であり、令和2年当時は東証JASDAQスタンダードに上場していたこと、②原告の同年の年間売上額は104億円を超えていたこと、③原告の製品は、日本国内の複数の雑誌、広告で取り上げられた実績があるほか、日本国外において、複数の雑誌等に掲載された実績があること、④音楽、オーディオ機器に関する分野で数多くの表彰を受けてきたこと、⑤原告が提供するソフトウェアが、動画・音声を撮影し端末からこれを出力・送信する機能や、撮影した動画や音声を録画・録音し、保存する機能、保存した動画や音声を編集等する機能を有することが認められるところ、一方で、⑥原告の開発、販売等をする製品は、専門的な機材であり、明らかに一般人を対象としたも

5 のではなく、その需要者は映像、音楽の製作に携わっている者であるこ

と、⑦原告の製品が紹介されている上記雑誌も、そのような需要者向けのものであること、⑧原告が提供するソフトウェアも、映像や演奏の録画・録音、編集、提供等を目的として利用されるものであることが認められる。(イ) 市場の同一性等本件サービスは、ウェブ会議サービスを提供するものであり、需要者として、会社員、学生など幅広く一般人を対象とするものといえるところ、原告の販売等する製品は、上記のとおり、映像、音楽の製作者等を対象としており、全く重ならないとまでは言えないものの、需要者について明確な違いがある。また、本件サービスにおいても、ウェブ会議の性質上、映像や音声のやりとりが行われるものの、上記のとおり原告の製品は専門的な機材であり、その高い性能や価格などの面を考えると、本件サービスに利用される機材、ソフトウェア等と原告の製品等との間の代替性、競合性は低いといえる。(ウ) 本件商標の顧客吸引力等上記(ア)の原告の活動実績等に鑑みれば、映像、音楽の分野において、原告及び本件商標には一定の知名度があると認められるものの、原告が取り扱う製品の専門性の高さからすれば、本件サービスの需要者である一般の会社員等を対象にした場合に、原告や本件商標が広く知られているとは認められず、本件商標に高い顧客吸引力があると認めるに足りる証拠はない。他方で、本件サービスが急激に普及した背景には、ウェブ会議という本件サービスの持つ性質が大きく影響したといえるから、被告が受けた利益についても、本件サービス自体の内容が大きく貢献しているものと認めるのが相当であり、本件商標に類似する被告各標章を付したことによる貢献は極めて限定的であるというべきである。

5 (エ) 小括

以上によれば、商標法38条2項により被告の受けた利益を原告の損害額と推定するにつき、これを大きく覆滅すべき上記事情が認められるから、上記ウの限界利益のうち、原告の損害と相当因果関係のあるものは、●(省略)●%であったと認めるのが相当である。なお、被告は、そもそも商標法38条2項の適用を欠く旨主張するが、上記事情をもってしても、同項の適用を欠くまでの事情とは認められず、これを基礎付ける他の事情を認めるに足りる証拠もない。したがって、商標法38条2項による原告の損害は、367万3944円(小数点以下切り捨て)であると認められる。【●(省略)●×●(省略)●≒3,673,944】

(2) 商標法38条3項による損害額の推定

ア 損害額(ア) 使用料率商標法38条3項の使用の対価を算定するに当たっては、当該商標権の侵害があったことを前提として当該商標権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該商標権者が得ることとなるその対価を考慮することができるところ(同条4項)、証拠(甲207)によれば、商品及び役務の区分第9類の商標の使用料率の平均値は売上額の2.7%であることが認められる。そして、この使用料率の平均値には、通常の合意による使用料率も含まれており、商標権を侵害した者との間で合意をする場合には、平均値より高い使用料率になり得ることからすれば、上記

(1)エの事情を踏まえても、原告の受けるべき金銭の額は、被告の売上額

の●(省略)●%を下回らないものであると認める。(イ) 使用に対し受けるべき金銭の額a 被告サービスの契約については、上記(1)アのとおり、その売上額は、

5 ●(省略)●円であるから、商法法38条3項により推定される損害

額は、その●(省略)●%に当たる1334万2220円(小数点以下切り捨て)となる。【●(省略)●×●(省略)●≒13,342,220】なお、被告サービスの導入に伴う機器の調達・設置工事に係る売上額については、上記(1)イのとおり、被告サービスないし本件サービスの提供とは別の商品の販売等ないし役務の提供に係るものであるから、商標法38条3項による推定の基礎となる売上額には当たらない。b 原告は、被告が、無償で本件ソフトウェアを提供し、一定の制限付きで利用させた後、有償プランへの移行を推奨し、誘引しており、その結果として有償契約を獲得し、収益を上げており、原告に損害が生じていると主張する。しかし、原告が主張するような事例について、どの程度生じているのか、被告がこれによりどの程度の利益を受けているのかを認めるに足りる的確な証拠はないし、

(原告の主張)

する計算方法の根拠も不明である。また、ユーザーによる無償での本件サービスの利用につき、上記のような観点から被告の行為を問題とするのであれば、ユーザーが有償の契約に移行した場合の被告の利益は、現実的には、上記(ア)で検討した被告サービスの契約に係る利益と重なるものといえる上、ユーザーの利用が無償で利用することができる範囲にとどまる場合には、原告において財産的損害が生じたということが困難であるともいえる。したがって、無償で本件ソフトウェアを提供した後、有償契約を獲得した場合について、別途損害を考慮することは相当ではなく、原告の上記主張は採用することができない。イ 損害の不発生について被告は、被告による被告各標章の使用により、原告に損害が発生するこ

5 とがあり得ないと主張する。しかし、上記(1)エで認定した事情を考慮して

も、原告に損害の発生を観念することができるのであって、被告の上記主張は採用することができない。ウ 小括したがって、商標法38条3項による原告の損害は、1334万2220円であると認められる。

(3) 商標の希釈化、信用毀損による損害

原告は、本件商標権の侵害により、被告サービスないし本件サービスの問合せが原告に多数寄せられており、本件商標と原告との結び付きが希釈化されたほか、本件サービスの音質等の性能が低いことから、原告のブランドイメージが毀損されたとして、令和2年7月以降の原告の売上額の2%に相当する損害が生じている旨主張する。しかし、本件商標が、日本国内の一般の需要者において著名であったと認めることができないことは、上記(1)のとおりであり、

(原告の主張)

する希釈化やブランドイメージの毀損についての具体的な事実を認めるに足りる証拠もない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。

(4) 消費税の加算

原告は、損害金に消費税相当額として10%を加算することを主張するところ、被告は、

(原告の主張)

する損害が「資産の譲渡等の対価」に該当しないとして、これを争う。消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるところ(消費税法4条1項)、消費税法基本通達(5-2-5)において、「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの

5 は資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。」、「(2) 無体財産権の

侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」とされていることにも照らすと、商標権を侵害された者がその侵害者から不法行為に基づく損害賠償金の支払を受けた場合、これに対して消費税が課税されると解することができるから、商標権を侵害された者としては、損害賠償金のほか、これに対して課される消費税に相当する額の金員の支払を受けるのでなければ、その損害が十分にてん補されたとはいえない。そうすると、被告から原告に対し支払うべき損害金に10%の消費税相当額を加算するのが相当であり、被告の上記主張は採用することができない。そして、原告の商標法38条2項又は3項による損害は選択的に請求するものであり、後者(1334万2220円)が前者(367万3944円)を上回ることから、上記消費税相当額については、同条3項による損害額の10%である133万4222円であると認められる。【13,342,220×0.1=1,334,222】

(5) 弁護士費用

被告の不法行為又はZCIの不法行為に対する被告の幇助行為と相当因果関係のある弁護士費用は、商標法38条3項による損害額1334万2220円に消費税相当額10%を加算した額の10%に当たる146万7644円(小数点以下切り捨て)と認める。【(13,342,220+1,334,222)×0.1≒1,467,644】

(6) 小括

以上によれば、原告の損害額は、商標法38条3項による損害1334万2220円に上記(4)の消費税相当額及び上記(5)の弁護士費用を加えた合計である1614万4086円であると認められる。【13,342,220+1,334,222+1,467,644=16,144,086】

第4 結論

5 よって、原告の請求は、主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し、そ

の余の請求は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官澁 谷 勝 海裁判官本 井 修 平裁判官浅 川 浩 輝(別紙)商品・役務目録

1 商品

5 以下のダウンロード可能なソフトウェア

ミーティング用ZoomクライアントZoom Cloud Meetings(Android用)Zoom Cloud Meetings(iPhone/iPad用)

2 役務

訴外ZOOM Video Communications,Inc.が開発したWeb会議システムを利用するためのクラウド上のプログラムを提供する役務(別紙)被告標章目録12Zoom345(別紙)商標権目録登録番号 第4940899号

5 出願日 平成17年8月8日

登録日 平成18年3月31日商標商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

第9類 理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変

流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,録音済みの磁気カード・磁気シート・磁気テープ・コンパクトディスク・その他のレコード,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,メトロノーム,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,電子出版物,オゾン発生器,電解槽,ロケット,業務用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM及び磁気テープ,業務用テレビゲーム機,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,鉄道用信号機,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,消防艇,消防車,自動車用シガーライター,保安用ヘルメット,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,磁心,抵抗線,電極,新聞・雑誌・書籍・地図・図面・写真の画像・文字情報を記録させた電子回路・ROMカートリッジ・光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・磁気カード・磁気テープ,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,ガソリンス

5 テーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の

計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,家庭用テレビゲームおもちゃ専用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM及び磁気テープ,家庭用テレビゲームおもちゃ専用のコントローラ・ジョイスティック・メモリーカード・ボリュームコントローラ・マウス,その他の家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,検卵器,電動式扉自動開閉装置,磁石,永久磁石,標識用ブイ,二輪自動車用シガーライター,耳栓

第15類 調律機,楽器,演奏補助品,音さ

(別紙)表示目録12345678910(別紙)関連商標権目録

1 国際登録番号 1365698

5 登録日 平成30年5月18日

国際登録日 平成29年8月4日登録商標商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務の訳(参考)

第38類 音声会議通信,ネットワーク会議通信,インスタントメッセージ

による通信,電話会議通信,遠隔会議用通信端末による通信,テレプレゼンス会議通信,簡易電子メール通信,テレビ会議通信,ビデオによる遠隔会議,ビデオテキストによる通信,ウェブ会議通信,ウェブメッセージング通信

2 登録番号 第6417625号

登録日 令和3年7月16日登録商標商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

第42類 コンピュータハードウェアの設計及び開発に関する助言,電子計

算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,クラウドコンピューティング,コンピュータソフトウェアの貸与

3 登録番号 第4363622号

登録日 平成12年2月25日更新登録日 令和2年1月21日登録商標商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

第9類 電子計算機用プログラム

(別紙損害に関する

(原告の主張)

省略)(別紙損害に関する

(被告の主張)

省略)

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