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令和7(ネ)10084不当利得返還請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年7月15日
事件種別 民事
対象物 画像表示方法および画像表示用プログラム
法令 特許権
特許法70条2回
特許法101条4号1回
キーワード 特許権8回
侵害7回
間接侵害5回
分割2回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事件の概要 1 本件は、発明の名称を「画像表示方法および画像表示用プログラム」とする 発明に係る特許(特許第5475856号。本件特許)の特許権者であった控 訴人サピエンス及び本件特許の特許権者である控訴人プラグインフリーが、被 控訴人が配信するHTML及びJavaScriptのソースプログラム及び地図画像 のデータ等(被告地図プログラム)並びにこれによりWebブラウザに地図を 表示させる方法(被告地図表示方法)が本件特許に係る発明の技術的範囲に属 するものであり、被控訴人による被告地図プログラムの配信は、本件特許に係 る特許権(本件特許権)の直接侵害又は間接侵害を構成すると主張して、被控 訴人に対し、不当利得に基づき、控訴人サピエンスに対して3218万600 0円及び遅延損害金、控訴人プラグインフリーに対して1億9771万400 0円及び遅延損害金の各支払を求める事案である(一部請求) 。 原審は、被告地図表示方法が本件発明1及び2の構成要件を充足しないな どとして、 控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、

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判決文

令和8年7月15日判決言渡

令和7年(ネ)第10084号 不当利得返還請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所令和6年(ワ)第70281号)

口頭弁論終結日 令和8年5月13日

判 決

控 訴 人 株 式 会 社 サ ピ エ ン ス

(以下「控訴人サピエンス」という。)

控 訴 人 プラグインフリー・パテント・

ホールディング株式会社

(以下「控訴人プラグインフリー」という。)

被 控 訴 人 LINEヤフー株式会社

同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二

小 林 英 了

木 村 広 行

亀 山 和 輝

同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘

主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、控訴人サピエンスに対し、3218万6000円及びこれに対する令和6年7月12日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員

5 を支払え。3 被控訴人は、控訴人プラグインフリーに対し、1億9771万4000円及びこれに対する令和6年7月12日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下、略語等は原判決の例による。)

1 本件は、発明の名称を「画像表示方法および画像表示用プログラム」とする発明に係る特許(特許第5475856号。本件特許)の特許権者であった控訴人サピエンス及び本件特許の特許権者である控訴人プラグインフリーが、被控訴人が配信するHTML及びJavaScriptのソースプログラム及び地図画像のデータ等(被告地図プログラム)並びにこれによりWebブラウザに地図を表示させる方法(被告地図表示方法)が本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、被控訴人による被告地図プログラムの配信は、本件特許に係る特許権(本件特許権)の直接侵害又は間接侵害を構成すると主張して、被控訴人に対し、不当利得に基づき、控訴人サピエンスに対して3218万6000円及び遅延損害金、控訴人プラグインフリーに対して1億9771万4000円及び遅延損害金の各支払を求める事案である(一部請求)。原審は、被告地図表示方法が本件発明1及び2の構成要件を充足しないなどとして、控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らがこれを不服として控訴した。2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決28頁3行目及び57頁2行目の「被告地図表示方法の本件発明4の構成要件4Aの充足性(争点3)」をいずれも「被告地図プログラムの本件発明4の構成要件4Aの充足性(争点3)」に改め、後記第3の3⑵から⑷まで及び4から6までのとおり当審における控訴人らの補充主張を付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第2の1及び2並びに第3(3頁4行目~107頁16行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。

5 第3 当裁判所の判断1 当審も、被控訴人による被告地図プログラムの配信は、本件特許権の直接侵害及び間接侵害を構成しないから、控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、以下のとおりである。2 本件各発明の内容原判決の「事実及び理由」欄の第4の1(107頁18行目~135頁23行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。3 被告地図表示方法の本件発明1及び2の構成要件充足性(争点1及び2)について

⑴ 下記⑵から⑷までのとおり当審における控訴人らの補充主張に対する判断を付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第4の2⑴(136頁1行目~139頁11行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。

⑵ 控訴人らは、原判決が判示した「直接演算」なる概念は、特許請求の範囲にも明細書にも存在しない独自のものである上、「Webブラウザによる演算」という技術常識を無視し、「JavaScriptによる直接的な数値の書き換え」のみを「演算」と限定して解釈したものであって、特許法70条のクレーム主義に反し、リパーゼ事件最高裁判決が禁ずる文言外限定を行うものであり、法令違反であると主張する。しかし、原判決を引用して説示したとおり、本件発明1及び2の構成要件1C、1E、1F、2C、2E及び2Fは、「各枠要素の原点の(移動すべき)座標を(それぞれ)演算」と規定していることからすると、本件発明1及び2に係る構成は、文字どおり、各枠要素の原点の座標自体を演算するものであり(原判決の「直接演算」との表現も、その内容からするとこれと同旨であり、「演算」の文言を限定して解釈したものではないと解される。)、これを被告地図表示方法についていえば、被告地図プログラムを受信して実行するWebブラウザが、分割画像の移動に当たり、他の要素による座標系を変更

5 する演算ではなく、そのimg要素(㋓の部分)自体の座標である「left、top」の値を演算することを意味するものと解される。そして、このような解釈は、上記構成要件の文言に従った解釈であるから、特許法70条に反するものではなく、最高裁判決が禁ずる文言外限定を行うものでもない。

⑶ 控訴人らは、被告地図表示方法においても、各枠要素(imgタグ)の表示位置は、親要素の移動やタグの再利用に伴い、Webブラウザによって「それぞれ」演算され、決定されていると主張する。しかし、原判決を引用して説示したとおり、被告地図表示方法では、ユーザが画面をスクロールした場合における分割画像の移動に当たり、div要素

(position)(㋐の部分)の「left、top」の値は変更されるものの、img要素(㋓の部分)は、div要素(position)(㋐の部分)と一体的に移動するため、img要素(㋓の部分)の「left、top」の値は、一切変更されないことは認められるが、それ以上に被告地図表示方法におけるWebブラウザの具体的演算内容は明らかではない。したがって、被告地図表示方法においてWebブラウザによって各枠要素の原点の座標が「それぞれ」演算され、決定されていると認めることはできない。

⑷ 控訴人らは、JavaScriptがWebブラウザを経由せずに直接OSに描画を依頼するというようなことは原理的にありえないから、Webブラウザが描画するに当たり、div要素(position)(㋐の部分)の開始タグの「left、top」の値に基づく座標系を設定することで、img要素(㋓の部分)の描画上の絶対位置に関する演算をOSに委ねることは誤りであると主張する。しかし、Webブラウザが描画するに当たり、上記絶対位置に関する演算をOS等の被告地図プログラム以外の手段に委ねる可能性があることは原判決を引用して説示したとおりであり、この説示は、JavaScriptがWebブラウザを経由せずに直接OSに描画を依頼することを説示したものではない。4 被告地図プログラムの本件発明4の構成要件4Aの充足性(争点3)につい

5 て控訴人らは、本件発明4の画像表示用プログラムはどのような構成の処理装置であれ、請求項1から3までのいずれか1つに記載の画像表示方法を処理装置に実行させるプログラムが特許請求の範囲であることを規定するものであるところ、被告地図プログラムも請求項1及び2に記載の画像表示方法を処理装置に実行させるプログラムであるから、本件発明4の構成要件4Aを充足すると主張する。しかし、本件発明4の構成要件4Aは、「請求項1から3のいずれか1つに記載の画像表示方法を処理装置に実行させることを特徴とする」ものであるところ、前記3で判示したとおり、被告地図表示方法は本件発明1及び2の構成要件を充足せず、その技術的範囲に属しないから、被告地図プログラムも、本件発明4の構成要件4Aを充足せず、その技術的範囲に属しない。5 本件特許権の間接侵害の成否(争点5)について控訴人らは、被告地図プログラムは被告地図表示方法の「使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)に該当するから、被控訴人による被告地図プログラムの配信が被告地図表示方法の「使用にのみ用いる物」の譲渡等に該当し、本件特許権の間接侵害が成立すると主張する。しかし、前記3で判示したとおり、被告地図表示方法は本件発明1及び2の技術的範囲に属しないから、そのためのプログラムである被告地図プログラムの配信につき、同条4号に基づき本件特許権の間接侵害が成立するとはいえない。6 原審に手続的違法が存在するとの主張等について控訴人らは、原審には、控訴人らが提出した決定的な新証拠(甲64~70)の取調べを拒否し、弁論再開を認めなかった手続的違法が存在するから、これは審理不尽であり、裁量権の逸脱・濫用であるなどと主張する。しかし、一件記録により認められる原審での審理経過に照らせば、原審の手

5 続に瑕疵があるということはできない上、控訴人らが提出した証拠については、原審において取り調べられなかった証拠も含めて当審において全て取り調べ済みであり、判決の基礎とされているから、上記主張は採用することはできない。その他、控訴人らは様々な主張をするが、いずれも以上の認定判断を左右するものではない。

第4 結論

以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官長 谷 川 浩 二裁判官伊 藤 清 隆裁判官諸 岡 慎 介

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