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令和7(ワ)70435民事訴訟 不正競争

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 令和8年7月15日
事件種別 民事
当事者 原告A
被告B
法令 不正競争
キーワード 損害賠償1回
差止1回
侵害1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 事案の概要 本件は、原告が被告に対し、被告がYouTubeチャンネルに投稿した別紙投 稿動画目録記載の動画(以下「被告動画」という。 )における別紙被告発言目録記載 の被告の発言(以下「被告発言」という。 )は原告の営業上の信用を害する虚偽の事 実を流布するものであり、被告の行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。 ) 2条1項21号所定の不正競争であるとして、不競法4条(侵害期間は令和7年7 月23日から同年8月22日まで)に基づき、損害金300万円及びこれに対する 不正競争以後の日である令和7年10月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済 みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案で ある。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に 認められる事実。以下、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は、全

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判決文

令和8年7月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和7年(ワ)第70435号 信用毀損行為差止等請求事件

口頭弁論終結日 令和8年5月27日

判 決

原 告 A

被 告 B

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は、原告に対し、300万円及びこれに対する令和7年10月22日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等

1 事案の概要本件は、原告が被告に対し、被告がYouTubeチャンネルに投稿した別紙投稿動画目録記載の動画(以下「被告動画」という。)における別紙被告発言目録記載の被告の発言(以下「被告発言」という。)は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり、被告の行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号所定の不正競争であるとして、不競法4条(侵害期間は令和7年7月23日から同年8月22日まで)に基づき、損害金300万円及びこれに対する不正競争以後の日である令和7年10月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は、全ての枝番号を含む。)

⑴ 当事者

5 ア 原告は、法律事務所を運営する弁護士である。イ 被告は、法律事務所を運営する弁護士であり、「C」というYouTubeチャンネル(以下「被告チャンネル」という。)を開設して動画を投稿している。

⑵ 原告と被告が関与した訴訟(甲5、乙2、3、6)被告が原告本人、原告訴訟代理人又は一審原告訴訟代理人として、原告が被告訴訟代理人又は一審被告訴訟代理人として関与した一審又は控訴審の訴訟事件のうち、令和7年7月23日までに判決が言い渡され又は同日に訴訟係属していたものは、いずれも不法行為に基づく損害賠償請求権(SNS上への投稿記事による名誉毀損等を理由とするもの)を訴訟物に含むものであり、請求額及び判決における認容額等は別紙事件一覧1ないし11記載のとおりである(以下、各事件を「事件1」などという。)。

⑶ 被告動画の投稿及び被告発言(甲3、4、17、乙4)被告は、令和7年7月23日、被告チャンネルに被告動画を投稿した。被告動画は、被告が原告訴訟代理人として関与した事件9で勝訴判決を得たとして、その内容等を自ら解説する9分53秒の動画である。被告発言は被告動画の6分46秒頃から 7 分22秒頃までにされた一連の発言であり、その内容は別紙被告発言目録のとおりである。被告は、令和7年8月22日以降、被告動画を削除した。3 争点

⑴ 被告動画の投稿が不競法2条1項21号所定の不正競争に当たるかア 同定可能性の有無(争点1)イ 被告動画の投稿が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を流布するものか(争点2)

⑵ 被告の故意又は過失(争点3)

⑶ 損害の発生及びその額(争点4)4 争点に対する当事者の主張

5 ⑴ 争点1(同定可能性の有無)について(原告の主張)

① グーグルやヤフーで「D 弁護士」と検索すると、原告が一番上に表示され、原告氏名と読みが同一の訴外E弁護士より検索画面の1頁目に表示される数が多いこと、②AIを用いて検索しても、被告が関わる訴訟で「Dと言及される人物は原告であると回答していること等からすれば、一般的な視聴者は、被告発言は原告を指すものと認識するから、同定可能性が認められる。(被告の主張)被告発言の「D」の漢字は不明であって、原告氏名と読みが同一で原告よりも知名度がある訴外E弁護士がいることからすれば、一般の視聴者が原告を指す発言であると認識できず、原告の主張するAIの回答も一般の視聴者の普通の注意と理解を反映したものとはいえないから、同定可能性は認められない。

⑵ 争点2(被告動画の投稿が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を流布するものか)について(原告の主張)以下のとおり、被告動画の投稿(被告発言)は、「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を流布するものである。ア 民事訴訟の控訴審が続審制を採用していることからすれば、同じ事件の一審及び控訴審は併せて1件とすべきであり、被告動画の投稿時点の原告と被告の裁判は別紙事件一覧のとおり8件(事件11を含む)である。このうち被告勝訴は5件(①事件1及び2、②事件3及び4、③事件5、④事件7及び8、⑤事件9)、被告側の請求が全部棄却された場合以外は被告勝訴としても6件(上記①ないし⑤及び⑥事件10)にとどまり、勝訴率は9割に届かない。したがって、原告と被告が3、40件裁判をしており、9割以上で被告が原告に勝訴しているなどとする被告発言は虚偽である。

5 イ 以上に加えて、①チャンネル名に「弁護士」を含む被告チャンネルに投稿されており、弁護士等の業務広告に関する規程(以下「本件規程」という。)による制限をクリアした客観的に信憑性の高いものと認識される可能性が高いこと、②原告は本人訴訟で多く敗訴しているとされる被告に対する勝率が1割にも満たない能力の低い弁護士であると受け取られる可能性が極めて高いこと等からすれば、被告発言は、原告の営業上の信用を害するものである。(被告の主張)以下のとおり、被告動画の投稿(被告発言)は、「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を流布するものであるとはいえない。ア 裁判の件数及び勝敗は、依頼の趣旨からすれば、一審と控訴審に分けて判決で請求権が認められたか否かで区別すべきである。被告動画の投稿時点で判決がされていた裁判は10件(事件1ないし10)であり、これらのうち9件は被告勝訴であって、被告の勝訴率は9割であるから、被告発言と大きく齟齬するものではない。イ 以上に加えて、①被告が管理する被告チャンネルに投稿された動画内の発言にすぎず、一般の視聴者には、被告が自らに有利に語ったものと認識され、公平性、中立性及び客観性が担保された発言であるとは認識されないこと、②断定的な言い方でなく、不確かで記憶頼りの言い方をしており、一般の視聴者には、発言の信用性は低いと認識されること、③裁判の勝敗は事件の内容や依頼者の属性によって変わるものであり、勝訴した件数や勝率だけで弁護士の成果を推し量ることはできないこと等からすれば、被告発言は、原告の営業上の信用を害するものとはいえない。

⑶ 争点3(被告の故意又は過失)について(原告の主張)被告は、故意又は過失により不正競争を行って、原告の営業上の信用を害しており、「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した」(不

5 競法4条)に当たる。(被告の主張)否認ないし争う。

⑷ 争点4(損害の発生及びその額)について(原告の主張)原告は、被告の不正競争により営業上の信用を著しく毀損され、無形損害を被った。これを金銭評価すると300万円を下らない。(被告の主張)否認ないし争う。仮に不正競争が成立したとしても、信用毀損の程度は限定的であって損害額はわずかである。

第3 当裁判所の判断

事案にかんがみ、仮に同定可能性(争点1)が認められたとして、被告動画の投稿が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を流布するものか(争点2)について判断する。

1 被告発言は、記憶が定かでないなどとしながら、被告が原告と「何十件」と裁判

をしたが(裁判の件数)、被告が「9割又は9割以上」で勝訴したこと(勝訴率)を内容とするものである(前記前提事実⑶(別紙被告発言目録))。このうち裁判の件数は、被告発言の文脈において勝訴率の前提とされているから、原告と被告が関与する裁判のうち、被告発言の時点で判決言渡しがされていた裁判の件数をいうものと理解するのが自然である。ところで、前記前提事実⑶のとおり、被告動画は、被告が管理するYouTubeチャンネル「C」(被告チャンネル)に投稿された事件9の解説動画であり、このうち被告発言は、同事件の原告訴訟代理人である被告が同事件の被告訴訟代理人である原告の同事件における訴訟活動等を批評する前提として、それまでの裁判について、個別事件の内容に触れることなく、「おそらく記憶にある限り、」「ごめんなさい、あの、はっきりした記憶は定かではないんで、」「記憶定かじゃないですけど、

5 多分」などと、言い直しながら述べられた極めて曖昧な部分である。このような発

信媒体の性質や発言の文脈及び内容に照らせば、一般の視聴者の普通の注意と捉え方とを基準にした場合に、被告発言は、厳密な正確性を期したものではないと受け取るものというべきである。以上によれば、被告発言の内容は、厳密に正確性を期したものでないことを前提として、原告と被告が関与する裁判につき何十件と判決言渡しがされたが、被告が9割又は9割以上の事件で勝訴したという事実を示すものと認められる。

2 これに対し、客観的には、原告と被告が関与する裁判のうち、被告発言の時点で

判決言渡しがされていた裁判は合計10件(事件1ないし10)であり、これらのうち9件(事件6以外の事件)において、①一部認容判決(一審)がされたか、②その結論を維持する内容の控訴審判決がされたことが認められる(前記前提事実⑵(別紙事件一覧))。そして、勝訴の件数について、提訴者側である被告から見れば、

①一審については、請求権(不法行為)を認めて全部又は一部認容された事件、②

控訴審についても同様の結論となった事件を勝訴として数えることには一定の合理性があるから、この意味で被告は9割(9件/10件)の事件で勝訴したと認められる。

3 そこで、被告発言の内容が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」に当たる

といえるかについて検討すると、被告発言のうち、弁護士の営業上の信用に特に関係するのは勝訴率に関する部分であるところ、原告と被告が関与する裁判の件数に関する部分(「何十件」)は不正確であるものの、勝訴率の算出の基礎となる裁判の件数は客観的事実として10件と相当数に及んでいること(前記2)、被告発言は厳密に正確性を期したものでないことを前提とするものであること(前記1)、被告は原告と被告が関与する裁判について9割以上の事件で勝訴したといえること(前記2)を考慮すれば、被告発言の内容は、客観的事実に反する事実、すなわち、虚偽の事実を示すものであるとはいえないし、原告の営業上の信用を害するものであるともいえない。

5 4 これに対し、原告は、①被告動画の投稿時点の原告と被告の裁判は8件、被告側

の請求が全部棄却された場合以外を被告勝訴としても6件にとどまり、勝訴率は9割に届かないこと、②被告チャンネルは、チャンネル名に「弁護士」を含んでおり、被告発言は本件規程による制限をクリアした客観的に信憑性の高いものと認識される可能性が高いこと、③原告は本人訴訟で多く敗訴しているとされる被告に対する勝率が1割にも満たない能力の低い弁護士であると受け取られる可能性が極めて高いことなどから、被告発言の内容が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であると主張する。しかしながら、上記①について、裁判の件数が合計10件であること及び勝訴率が9割であることは前記2のとおりであり、

(原告の主張)

する点は前記3の判断を左右するものではない。また、上記②について、本件規程によって弁護士による業務広告が制限されているとしても、一般の視聴者において、被告発言について、厳密な正確性を期したものでないと受け取ることに変わりはない。さらに、上記③について、被告が自ら提起した本人訴訟で多く敗訴しているとしても、そのことは、前記3の判断を左右するものではない。したがって、

(原告の主張)

を採用することはできない。

5 小括

以上によれば、被告動画の投稿が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」(不競法2条1項21号)を流布するものであるとはいえない。したがって、被告動画の投稿は、同号所定の不正競争に当たらない。

第4 結論

よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 髙 橋 彩裁判官 西 山 芳 樹裁判官 瀧 澤 惟 子(別紙)投稿動画目録閲覧用 URL https:// 以下省略タイトル 省略投稿日 2025/07/23(別紙)被告発言目録「さらに、あ、これね、代理人がDっていう、僕、この弁護士と多分何十回と、下手

5 したら4、50回裁判やってるんですけど、1件も敗けたことないですね。はい、おそ

らく記憶にある限り、うん、もしかしたら1、2件敗けてるかもしれない。あの、ごめんなさい、あの、はっきりした記憶は定かではないんで、1件も敗けたことないは言い切れるほど記憶定かじゃないですけど、多分、えっと、何十件てやってますね。何十件てやってるけど敗訴した記憶がないぐらいなんで、ほぼほぼ、あの、9割とか、あの、それ以上の確率で勝訴しているはずですけど。」(別紙)事件一覧以下省略

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