令和8(行ケ)10008審決取消請求事件
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
| 裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和8年7月27日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告X 被告アルファクールインターナショナルゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング
|
| 法令 |
商標権
商標法4条1項7号6回 商標法4条1項15号1回
|
| キーワード |
無効31回 無効審判14回 審決14回 商標権6回 損害賠償2回 差止2回 侵害2回
|
| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
1 本件は、登録商標の商標登録無効審判請求について、特許庁が当該登録商標
を無効とした審決の取消しを求める事案であり、争点は、当該登録商標の商標
法4条1項7号該当性である。 |
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 商標権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
令和8年7月27日判決言渡
令和8年(行ケ)第10008号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年5月20日
判 決
原 告 X
同訴訟代理人弁護士 渡 邊 律
同訴訟代理人弁理士 福 田 信 雄
被 告 アルファクール インターナショナル ゲゼルシ
ャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
15 同訴訟代理人弁護士 松 永 章 吾
同 丸 山 悠
同訴訟代理人弁理士 前 川 砂 織
同 大 倉 桂 子
主 文
20 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2025-890027号事件について令和7年12月9日に
25 した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は、登録商標の商標登録無効審判請求について、特許庁が当該登録商標
を無効とした審決の取消しを求める事案であり、争点は、当該登録商標の商標
法4条1項7号該当性である。
2 特許庁における手続の経過等
5 ⑴ 原告は、登録商標(登録第6680828号、令和4年5月16日登録出
願、令和5年3月15日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者
である。
⑵ 被告は、本件商標について、商標登録無効審判請求をし、特許庁は、これ
を無効2025-890027号事件として審理した。
10 ⑶ 特許庁は、令和7年12月9日、本件商標は商標法4条1項7号に該当す
るとして、本件商標を無効とする審決(以下「本件審決」という。)をし、
その謄本は、同月19日、原告に送達された。
⑷ 原告は、令和8年1月15日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める本
件訴訟を提起した。
15 3 本件商標は、別紙「商標目録」記載のとおり、「Alphacool」の欧
文字を標準文字で表して成り、指定商品を、第9類の区分に属する「コンピュ
ータ周辺機器(コンピュータハードウエアを含む。)、コンピュータ・グラフ
ィックカード・マザーボード・プロセッサー・電子回路及び他のコンピュータ
構成部品の冷却用装置(コンピュータの冷却用の水の冷却用装置を含む)」等
20 とする商標である。
4 引用商標は、別紙「引用商標目録」記載1から3までのとおりであり(以下、
順に「引用商標1」の要領で表記し、併せて「本件引用商標」という。)、引
用商標1は、比例記号である「∝」様の青色の図形の右側に同色の「OOL」
の欧文字を配して成り、引用商標2は、「COOL」が青色の「alphaC
25 OOL」の欧文字を横書きにして成り、引用商標3は、「ALPHACOOL」
の欧文字を横書きにして成る商標である。
5 本件審決の理由の要旨
⑴ 被告は、「コンピュータ用冷却装置」を始めとした「コンピュータ周辺装
置」(以下「被告商品」という。)に本件引用商標を使用している。そして、
被告商品が、本件商標の登録出願時及び登録査定時におけるウェブサイトの
5 記事において、「Alphacool」の名称により、「世界的に著名」で
「日本でもファンが多い」などと紹介されていることや、被告商品は日本国
内において一定程度の売上げがあることからすると、本件引用商標は、本件
商標の登録出願時及び登録査定時において、被告商品を表示するものとして、
需要者の間に広く認識されているとまでいえないものの、一定程度は知られ
10 ているといえる。
⑵ 本件商標と引用商標2及び3は、いずれも特定の観念を生じず、観念にお
いて比較し得ないものの、構成文字を共通にすることから、外観において近
似した印象を与え、称呼(アルファクール)において共通するのであって、
類似する商標というべきである。
15 また、被告商品が「Alphacool」の名称により紹介され、本件引
用商標が需要者の間に一定程度知られていることからすると、引用商標1の
構成中の前半部分は「α」の文字と「C」の文字をデザイン化して表したも
ので、全体として「αCOOL」の文字をデザイン化して表したものと理解
され、そうすると、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じず、
20 観念において比較し得ないものの、後半部分の「cool(COOL)」の
構成文字を共通にすることから、外観において近似した印象を与え、称呼
(アルファクール)において共通するのであって、類似する商標というべき
である。
⑶ 原告は、令和元年10月13日から令和6年8月6日までの間、本件商標
25 に係るものを含め80件もの登録出願(以下「原告出願」という。)をして
いるところ、原告出願に係る商標の多くは造語から成るものであるにもかか
わらず、他人が使用している商標と同一又は類似のものが多数存在し、その
中には「dyson」、「roomba」、「xiaomi」等の有名な商
標も含まれる。また、原告出願に係る商標のうち、商標登録されているもの
は48件であるのに対し、登録異議の申立て又は無効審判の請求がされてい
5 るものは合わせて16件であり、その割合は約33%であって、登録商標に
対する年間の登録異議の申立て又は無効審判の請求の割合(約0.5%)に
比し極めて高い。
そうすると、原告は、他人が使用している商標を意図的に集めて、数年の
間に大量の登録出願をし、その一環として、本件商標につき登録出願をした
10 というべきである。
⑷ 以上のとおり、原告は、他人が使用している商標を意図的に集めて、数年
の間に大量の登録出願をし、その一環として、被告商品を表示するものとし
て需要者の間に一定程度知られている本件引用商標と類似の本件商標につい
て登録出願をしたといえる。
15 そして、原告が平成27年から本件商標を使用していたことがうかがえる
としても、本件商標の登録出願時において、本件引用商標が被告商品を表示
するものとして需要者の間に一定程度知られていることを踏まえると、本件
商標について登録出願をした原告の行為は、他人の商標を剽窃する一環とし
て被告の商標を剽窃し、被告による本件引用商標の使用を妨害する、又は本
20 件引用商標の信用等に便乗するものといえ、これは、本件商標の登録出願の
経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定す
る秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当する。
そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある
商標というべきであるから、商標法4条1項7号に該当する。
25 第3 審決取消事由に関する当事者の主張
1 原告の主張
⑴ 原告は、平成24年頃、広く使用され汎用性の高い「Alpha」の語と
「Cool」の語を組み合わせて、独自に「Alphacool」(本件商
標)との造語を創造し、コンピュータ周辺機器等について、その使用を開始
した。原告が周知性のない本件引用商標に接する可能性はないし、仮に外国
5 企業である被告の存在を認識し得たとしても、本件商標が広く使用され汎用
性の高い語を組み合わせたものであることからすると、原告が本件引用商標
を模倣し、被告のブランドの信用等にただ乗りする目的で、本件商標を採択
したと推認することはできない。
⑵ 本件審決は、原告出願の経緯から、原告は、他人が使用している商標を意
10 図的に集めて、数年の間に大量の登録出願をし、その一環として、本件商標
につき登録出願をしたと推認するが、原告出願のうち、登録異議の申立てに
よる取消決定が確定したものは3件、無効審判の請求による無効の審決が確
定したものは2件と僅少であるし、そもそも、原告出願の経緯から本件商標
の登録出願の経緯の悪性を判断するのは、他事を考慮し原告の属性をもって
15 本件商標を無効とするもので、それ自体不合理である。さらに、原告出願の
大部分は本件商標の登録出願後のものであり、これをもって、遡及的に本件
商標の登録出願時における原告の主観的意図を推認するのは論理的に飛躍が
ある。
⑶ いずれにせよ、原告が、他人の使用している商標を意図的に集めて、数年
20 の間に大量の登録出願をしている事実はない。本件において、本件引用商標
の剽窃、妨害、便乗等の危険性を想定し得るほどの看過し難い具体的事実も、
本件商標に係る商標権の譲渡、売却等の申入れ等の顕著な悪性の徴表たる具
体的事実もなく、本件商標は商標法4条1項7号に該当しない。
2 被告の主張
25 ⑴ 本件において、① 原告が、令和元年10月13日から令和6年8月6日
までの間に、本件商標に係るものを含め80件もの登録出願(原告出願)を
していること、また、原告出願に係る商標のほとんどが造語であるにもかか
わらず、その多くは他人が使用している商標と同一又は類似の商標であり、
当該他人による使用に遅れて登録出願がされていること、さらに、原告出願
に係る商標の指定商品又は指定役務に一貫性はなく、原告の事業内容との関
5 連性もないこと、② 原告出願のうち、38件については拒絶査定がされ、
登録が取り消され、又は無効とされていること、また、原告出願のうち、1
6件について登録異議の申立て又は無効審判の請求がされていること、③
原告が、令和5年5月22日、被告商品の日本における販売代理店である株
式会社サーフゲイト(以下「被告販売代理店」という。)に対し、「Alp
10 hacool」の表示を付してPC用冷却装置及びその付属品を販売する行
為は、本件商標に係る商標権の侵害であり、差止請求や損害賠償請求の対象
となるのみならず、刑事罰の対象になる旨の警告をし、「Alphacoo
l」の表示の使用の中止等を要求していることからすると、原告が、他人の
使用している商標を意図的に収集し、数年の間に大量に登録出願をしている
15 ことは明白である。
本件商標は、原告が、剽窃的な商標登録出願の一環として、被告のブラン
ドの信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドするという不正な目的の下、
登録出願されたものであり、その登録を維持するのは公序良俗に反すること
から、商標法4条1項7号により無効とされるべきである。
20 ⑵ 原告は、平成24年頃に本件商標の使用を開始した旨の主張をするが、原
告は、本件商標につき登録出願をする際、特許庁に提出した「早期審査に関
する事情説明書」(以下「本件事情説明書」という。)において、令和3年
5月から本件商標を使用していたと説明しているのであり、信用できない。
原告は、本件引用商標に接する可能性はない旨の主張もするが、本件審決
25 においても、本件引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時におい
て、「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして需要者の間に一定程度
知られていたとされている上、被告が、2004年(平成16年)2月23
日、ドイツにおいて、文字商標「Alphacool」につき登録出願をし、
同年6月2日に登録査定を受け、同年7月2日にその情報が公開されている
ことや、被告が、2018年(平成30年)8月13日、文字商標「Alp
5 hacool」につき欧州連合商標の登録出願をし、同年12月5日に登録
を受け、同月6日にその情報が公開されていることからすると、原告が本件
引用商標に接する可能性は十分にある。
第4 当裁判所の判断
1 掲記の証拠(証拠については枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、
10 次の各事実が認められる。
⑴ア 本件引用商標は、比例記号である「∝」様の青色の図形の右側に同色の
「OOL」の欧文字を配して成り(引用商標1)、「COOL」が青色の
「alphaCOOL」の欧文字を横書きにして成り(引用商標2)、
「ALPHACOOL」の欧文字を横書きにして成る(引用商標3)商標
15 である。
イ 被告は、2010年(平成22年)の設立当初から、被告商品である
「コンピュータ周辺装置」について本件引用商標を使用し、平成28年頃
から現在に至るまで、日本国内においても、インターネットを通じ被告商
品を販売するなどして、相当程度の売上高を上げている(甲3~43、甲
20 88)。
ウ 被告商品について、平成31年1月28日付けのウェブサイトの記事に
は、「ドイツに本社を構える老舗のDIY水冷メーカー、Alphaco
ol international gmbhが登場。」、「水冷メーカ
ーとしては世界的に著名なAlphacoolのDIY水冷キットです。」
25 との記載(甲3)が、同月9日付けのウェブサイトの記事には、「ドイツ
の水冷パーツメーカーAlphacoolは、数多くの水冷パーツをライ
ンナップし、カスタマイズの幅が広いことから日本でもファンが多い。」
との記載(甲6)がある。
⑵ア 本件商標は、「Alphacool」の欧文字を標準文字で表して成り、
指定商品を、第9類の区分に属する「コンピュータ周辺機器(コンピュー
5 タハードウエアを含む。)、コンピュータ・グラフィックカード・マザー
ボード・プロセッサー・電子回路及び他のコンピュータ構成部品の冷却用
装置(コンピュータの冷却用の水の冷却用装置を含む)」等とする商標で
ある。
イ 原告は、令和4年5月16日、本件商標について、登録出願(商願20
10 22-60708)をするとともに、同日、本件商標を令和3年5月から
使用しているので早期審査制度を利用する旨の記載をした本件事情説明書
を提出し、特許庁は、令和4年7月25日頃、原告に対し、本件商標の登
録出願を早期審査の対象としない旨の通知をした(甲1、乙5)。
ウ 原告は、本件商標について、令和5年2月13日に登録査定を、同年3
15 月15日に設定登録を受けた。本件商標に係る商標掲載公報の発行の日は、
同月24日である。(甲1)
エ 原告は、被告販売代理店に対し、令和5年5月22日差出に係る内容証
明郵便により、被告販売代理店が「Alphacool」や「Noctu
a」の文字を表記してPC用冷却装置及びその付属品を販売する行為は、
20 原告の本件商標等に係る商標権を侵害し、差止請求や損害賠償の対象とな
るのみならず、刑事罰の対象となるおそれもあるとして、商品への「Al
phacool」及び「Noctua」との表記の速やかな中止を求める
とともに、将来にわたって本件商標等に係る商標権の権利範囲内における
「Alphacool」及び「Noctua」との表記使用の中止を求め
25 る旨の通知(以下、この通知に係る書面を「本件通知書」という。)をし
た。本件通知書には、「本件につきまして、誠意ある対応が無い場合には、
誠に遺憾ながら法的措置にて解決を図ることにもなりかねませんので、ご
失念無きよう申し添えます。」との記載がある。(乙10)
⑶ア(ア) 原告は、別紙「商標登録出願一覧表」記載のとおり、令和元年10月
13日から令和6年8月6日までの間に80件(本件商標に係るものを
5 含む。以下同じ。)、令和元年10月13日から令和4年5月16日
(本件商標の登録出願日)までの間に14件の登録出願(原告出願)を
しているところ、別紙「対比表」記載のとおり、その多くは、他人が使
用をする商標と同一又は類似の商標について、他人の使用に係る時期に
後れて登録出願をするものである。また、原告出願に係る商標の多くは
10 造語から成るもので、その中には、中国の企業である「xiaomi」、掃
除機の商標である「dyson」、「roomba」等の需要者の間に広く認
識されている商標と同一又は類似する商標も含まれる。(乙1、乙7)
(イ) 原告は、原告出願に係る商標中に需要者の間に広く認識されている商
標と同一又は類似する商標が含まれることについて、「私(原告)は2
15 012年~2013年の時点で既に『dyson/非球面メガネレンズ』
…『Xiaomi/フッ素樹脂ドライタイプ潤滑剤』…『Roomba
/自転車カバー…』といった商品を実際に取り扱い、販売しておりまし
た。」、「近年のAmazonの規制強化により、『商標権がないと商
品ページが作成できない』、『互換品や並行輸入品を継続販売するには
20 商標登録が必要である』と私が誤認してしまい、販売継続のために出願
したものです。」などと陳述(甲85)するが、その内容に照らし信用
することはできない。
イ 令和元年10月13日から令和6年8月6日までの間の80件の原告出
願のうち48件について、また、令和元年10月13日から令和4年5月
25 16日までの間の14件の原告出願のうち9件について、商標登録がされ
ているところ、前者の48件のうち、9件について登録異議の申立てが、
7件について無効審判の請求がされ、後者の9件のうち、2件について登
録異議の申立てが、3件について無効審判の請求がされている。本件通知
書に記載された商標「Noctua」についても、無効審判の請求がされ、
特許庁は、令和8年3月3日、当該商標は商標法4条1項15号に該当す
5 るとして、商標登録を無効とする審決をしている。(乙1~4)
2⑴ 前記認定事実によれば、本件引用商標は、本件商標の登録出願時(令和4
年5月16日)及び登録査定時(令和5年3月15日)において、被告商品
である「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に少な
くとも一定程度は知られていたものといえる。
10 また、本件引用商標のうち引用商標1は「αCOOL」の文字をデザイン
化して表したものと理解され、そうすると、本件商標と本件引用商標とでは、
引用商標1を含め、いずれも特定の観念を生じず、観念において比較し得な
いものの、称呼(アルファクール)において共通し、外観において近似する
ものであるから、類似の商標というべきである。
15 そして、① 上記のとおり、本件引用商標は、本件商標の登録出願時(令
和4年5月16日)及び登録査定時(令和5年3月15日)において、被告
商品である「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に
一定程度知られていたこと、② 原告が、本件商標の設定登録を受けた後、
商標掲載公報の発行の日(令和5年3月24日)から2か月以内(同年5月
20 22日)に、被告販売代理店に対し、本件引用商標の使用の中止及び誠意あ
る対応を求める本件通知書を差し出していること、③ 原告は、本件商標の
登録出願前から、コンピュータ周辺機器等について、本件商標を使用してい
た旨の主張をすることを踏まえると、原告において、被告が被告商品を表示
するものとして本件引用商標を使用していることを知らなかったというのは
25 不自然というべきであり、かかる事情に加え、前記1⑶の原告出願の状況を
も併せ考慮すると、本件において、原告は、被告が被告商品を表示するもの
として本件引用商標を使用していることを認識しながら、被告による本件引
用商標の使用を妨害し、あるいは、本件引用商標の信用等に便乗する目的で、
殊更に本件商標の登録出願をしたものと推認され、そうすると、本件商標は、
その登録出願の経緯に照らし、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認め
5 ることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものと
して、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当すると
いうべきである。
⑵ 原告は、平成24年頃から本件商標を使用していたのであり、原告におい
て周知性のない本件引用商標に接する可能性はない旨の主張をし、これに沿
10 う証拠(甲78~84)はあるが、本件事情説明書には、本件商標につき
「令和3年5月から使用中」と記載されていることに照らすと、上記証拠は
採用できず、他に原告が平成24年頃から本件商標を使用していたことを認
めるに足りる証拠はない。
また、原告は、原告出願のうち、登録異議申立てによる取消し又は無効審
15 判の請求による無効の審決が確定した件数は僅少であり、本件商標の出願登
録に悪性はない、原告出願の状況により、遡及的に本件商標の登録出願時に
おける原告の主観的意図を推認するのは論理的に飛躍がある旨の主張もする
が、かかる主張を踏まえても、前記判断は覆らない。
3 以上によれば、本件商標は、商標法4条1項7号に該当するというべきであ
20 り、本件商標を無効とした本件審決の判断に誤りはない。
第5 結論
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文の
とおり判決する。
25 知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
5 森 冨 義 明
裁判官
10 菊 池 絵 理
裁判官
15 天 野 研 司
(別紙)
商標目録
省略
(別紙)
引用商標目録
1 引用商標1
2 引用商標2
3 引用商標3
ALPHACOOL
(別紙)
対比表
省略
(別紙)
商標登録出願一覧表
◆原告による商標登録出願
番号(乙1) 出願番号 出願日 登録番号 商標 証拠
1 2024-085270 2024年8月6日 mpu6050
2 2024-085269 2024年8月6日 MPU-6050
3 2024-084576 2024年8月5日 アカシア 乙2の1(拒絶)
4 2024-084569 2024年8月5日 BMP280 乙2の2(拒絶)
5 2024-062837 2024年6月11日 LiberLive 乙2の3(拒絶)
6 2024-062835 2024年6月11日 LiberLive 乙2の4(拒絶)
7 2024-007809 2024年1月28日 xiaomi 乙2の5(拒絶)
8 2024-006656 2024年1月24日 ELEGOO 乙2の6(拒絶)
9 2024-006403 2024年1月24日 Ecovacs 乙2の7(拒絶)
10 2024-006368 2024年1月24日 Logiccol 乙2の8(拒絶)
11 2024-006348 2024年1月24日 esp32 乙2の9(拒絶)
12 2024-006321 2024年1月24日 roomba 乙2の10(拒絶)
13 2024-006300 2024年1月24日 dyson 乙2の11(拒絶)
14 2023-109360 2023年10月2日 SwitchBot 乙2の12(拒絶)
15 2023-090186 2023年8月13日 ARCTIC 乙2の13(拒絶)
16 2023-090166 2023年8月12日 DeepCoolAK400 乙2の14(拒絶)
17 2023-090165 2023年8月12日 DeepCoolLT 乙2の15(拒絶)
18 2023-022854 2023年3月4日 Fiio 乙2の16(拒絶)
19 2023-022852 2023年3月4日 Alphacool 乙3(拒絶理由通知・中止)
20 2022-138252 2022年12月2日 LM2596
21 2022-138242 2022年12月2日 XL4015
22 2022-124882 2022年11月1日 GLONASS 乙2の17(拒絶)
23 2022-121904 2022年10月11日 SK本舗 乙2の18(拒絶)
24 2022-120754 2022年10月20日 SADIOT LOCK 乙2の19(拒絶)
25 2022-104432 2022年8月26日 TESSAN 乙2の20(拒絶)
26 2022-067089 2022年5月30日 atolla 乙2の21(拒絶)
27 2022-063906 2022年5月23日 VALKYRIE 乙2の22(拒絶)
28 2022-046774 2022年4月9日 FOBO 乙2の23(拒絶)
29 2022-038119 2022年3月18日 Fiio 甲71(拒絶)
30 2021-103270 2021年8月2日 Roborock 乙2の24(拒絶)
31 2020-141610 2020年11月2日 ugreen 乙2の25(拒絶)
32 2020-080859 2020年6月17日 Acton Tech
33 2024-025268 2024年3月12日 6933418 SABRENT
34 2024-007808 2024年1月28日 6933415 8bitdo
35 2024-007807 2024年1月28日 6900136 topmore
36 2024-006419 2024年1月24日 6892390 PICO
37 2024-006331 2024年1月24日 6892389 quest
38 2024-030521 2024年3月24日 6891502 jginyue
39 2024-006372 2024年1月24日 6889063 switch
40 2024-006512 2024年1月24日 6874173 dreame
41 2023-106296 2023年9月24日 6840750 ARCTIC
42 2023-104510 2023年9月19日 6824658 DEEBOT
43 2023-104509 2023年9月19日 6824657 ECOVACS
44 2023-090164 2023年8月12日 6811099 Assasinx
45 2023-065016 2023年6月13日 6811072 addlink
46 2023-064142 2023年6月11日 6811011 Atmega
47 2023-090187 2023年8月13日 6804583 Thermalright
48 2023-090163 2023年8月12日 6803333 PANO-MOUNTS
49 2023-079170 2023年7月16日 6796864 HC-SR501
(別紙)
50 2023-081459 2023年7月21日 6794670 Dreame
51 2023-027947 2023年3月16日 6794664 ESP32 乙4の1(異議申立て・取消)
52 2023-070233 2023年6月25日 6792789 Geekshare
53 2023-070232 2023年6月25日 6792788 HEYSTOP
54 2023-081563 2023年7月24日 6787002 TP-Link 甲69、乙4の2(異議申立て・取消)
55 2023-081562 2023年7月24日 6776716 TP-Link 甲69、乙4の3(異議申立て・取消)
56 2023-065023 2023年6月13日 6772990 Fiio
57 2023-064141 2023年6月11日 6772981 8bitdo 甲69(異議申立て・維持)
58 2022-063907 2022年5月23日 6744049 AC Infinity
59 2023-022903 2023年3月5日 6739878 kingbank
60 2023-022902 2023年3月5日 6739877 KLEVV 乙4の4(無効)
61 2022-011762 2022年1月20日 6739857 Roborock
62 2023-022849 2023年3月3日 6735791 VL53LOX
63 2023-022848 2023年3月3日 6735790 SABRENT 甲69(異議申立て・維持)
64 2022-145424 2022年12月21日 6716584 FractalDesign 甲69(異議申立て・維持)
65 2022-067090 2022年5月30日 6712179 KLEVV 乙4の5(無効)
66 2022-060709 2022年5月16日 6712178 WoodTrick
67 2022-138255 2022年12月3日 6688972 HC-SRO4
68 2022-138254 2022年12月3日 6688971 ATmega328P 甲69(異議申立て・維持)
69 2022-060708 2022年5月16日 6680828 Alphacool 本件商標(異議申立て・無効)
70 2022-138253 2022年12月2日 6674284 BME280
71 2022-129699 2022年11月14日 6670082 DHT11
72 2021-058441 2021年4月26日 6660074 Roborock
73 2022-106704 2022年9月1日 6651990 suparee 弁論の全趣旨(無効審判請求)
74 2022-021704 2022年2月11日 6648840 Noctua 乙4の6(無効)
75 2022-046775 2022年4月9日 6633111 SUPAREE 弁論の全趣旨(無効審判請求)
76 2022-087885 2022年7月14日 6624983 SUPAREE 弁論の全趣旨(無効審判請求)
77 2022-046776 2022年4月9日 6621847 Vela.Yue
78 2020-118958 2020年9月10日 6447339 Hiletgp 甲69(異議申立て・維持)
79 2019-138030 2019年10月13日 6318551 bcase
80 2019-138029 2019年10月13日 6318550 bcase
◆本件商標の出願までの原告による商標登録出願
番号(乙1) 出願番号 出願日 登録番号 商標 証拠
80 2019-138029 2019年10月13日 6318550 bcase
79 2019-138030 2019年10月13日 6318551 bcase
32 2020-080859 2020年6月17日 Acton Tech
78 2020-118958 2020年9月10日 6447339 Hiletgp 甲69(異議申立て・維持)
31 2020-141610 2020年11月2日 ugreen 乙2の25(拒絶)
72 2021-058441 2021年4月26日 6660074 Roborock
30 2021-103270 2021年8月2日 Roborock 乙2の24(拒絶)
61 2022-011762 2022年1月20日 6739857 Roborock
74 2022-021704 2022年2月11日 6648840 Noctua 乙4の6(無効)
29 2022-038119 2022年3月18日 Fiio 甲71(拒絶)
28 2022-046774 2022年4月9日 FOBO 乙2の23(拒絶)
75 2022-046775 2022年4月9日 6633111 SUPAREE 弁論の全趣旨(無効審判請求)
77 2022-046776 2022年4月9日 6621847 Vela.Yue
69 2022-060708 2022年5月16日 6680828 Alphacool 本件商標(異議申立て・無効)
最新の判決一覧に戻る