ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和8(ネ)10012 著作権侵害差止等請求控訴事件
| 裁判所 | 却下 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年7月27日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
著作権 著作権法112条3回 著作権法32条1項1回 |
| キーワード | 差止14回 侵害8回 分割1回 |
| 主文 | 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の当審における訴えの交換的変更後の請求に係る訴えを却下する。 3 控訴人の当審における追加請求を棄却する。 4 当審における訴訟費用は全て控訴人の負担とする。 5 なお、原判決中、被控訴人に対して著作物の複製、自動公衆送信をして |
| 事件の概要 | 1⑴ 本件は、控訴人が、被控訴人による原判決別紙投稿記事目録1記載の投稿 (本件投稿)は、控訴人の著作権(複製権又は譲渡権)を侵害するものであ るなどと主張して、被控訴人に対し、著作権法112条に基づき、本件投稿 の削除を求める(以下、これを「削除請求」という。)とともに、本件投稿 に添付された画像(本件画像)の元となった著作物(本件元画像)の複製、 自動公衆送信の差止めを求める(以下、これを「差止請求」という。)事案 である。 |
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令和8年7月27日判決言渡
令和8年(ネ)第10012号 著作権侵害差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和6年(ワ)第14955号)
口頭弁論終結日 令和8年6月10日
判 決
控 訴 人 セキュアラミル株式会社
被 控 訴 人 A
同訴訟代理人弁護士 神 原 元
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審における訴えの交換的変更後の請求に係る訴えを却下する。
3 控訴人の当審における追加請求を棄却する。
4 当審における訴訟費用は全て控訴人の負担とする。
5 なお、原判決中、被控訴人に対して著作物の複製、自動公衆送信をして
はならないことを求める訴えに係る部分は、控訴人の当審における訴え
の交換的変更により、失効している。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨並びに当審における追加請求及び訴えの交換的変更後の請求の趣
旨1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、原判決別紙投稿記事目録1記載の投稿を削除せよ。3 被控訴人は、別紙投稿記事目録記載の投稿を削除せよ(控訴人は、当審において、同目録記載の投稿の削除を求める請求を追加した。)。4 被控訴人は、別紙著作物目録記載1、2の著作物について、E(同人の氏名、ソーシャルメディアのアカウント名、その他同人を指し示すことが明らかな文言を含む。)と関連付ける文言を付して、複製又は自動公衆送信をしてはならない(控訴人は、原審において、被控訴人は、原判決別紙著作物目録記載の著
5 作物の複製、自動公衆送信をしてはならないとの請求をしていたが、当審において、このように訴えを交換的に変更した。なお、別紙著作物目録記載1の著作物は、原判決別紙著作物目録記載の著作物(本件元画像)と同一である。)。
第2 事案の概要等(以下、特に断らない限り、略語は原判決の例による。)
1⑴ 本件は、控訴人が、被控訴人による原判決別紙投稿記事目録1記載の投稿(本件投稿)は、控訴人の著作権(複製権又は譲渡権)を侵害するものであるなどと主張して、被控訴人に対し、著作権法112条に基づき、本件投稿の削除を求める(以下、これを「削除請求」という。)とともに、本件投稿に添付された画像(本件画像)の元となった著作物(本件元画像)の複製、自動公衆送信の差止めを求める(以下、これを「差止請求」という。)事案である。
⑵ 原審は、① 控訴人は本件元画像の著作権を有するものといえ、本件投稿において使用された本件画像は、本件元画像に係る創作的表現の一部分をそのまま切り取ったものであるから、被控訴人による本件投稿は、控訴人の本件元画像に関する著作権(複製権)を侵害するものの、本件投稿に本件画像を引用し利用することは、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われるものであるから、著作権法32条1項により違法性が阻却されるとして、削除請求を棄却し、② 訴えの交換的変更前の差止請求は、差止めの対象となる行為が具体的には一切特定されておらず不適法であるとして、当該請求に係る訴えを却下した。控訴人は、これを不服として控訴を提起し、当審において、差止請求に係る訴えを交換的に変更するとともに、別紙投稿記事目録記載の投稿(以下「本件投稿2」という。)の削除請求を追加した。なお、控訴人は、当審において、本件投稿により控訴人の有する本件元画像に関する著作権(譲渡権)が侵害された旨の主張を撤回した。2 前提事実、争点及びこれに対する当事者の主張は、次のとおり補正し、3の
5 とおり当審における追加請求に係る主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決1頁25行目から4頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決3頁9行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「⑹ 本件投稿2ア Dは、令和6年5月31日、「ずっとオコなの?」とのコメントを付して、別紙著作物目録記載2の著作物(以下「本件元画像2」という。)の右側の画像の一部を、同年6月1日、「♪ビルをー こわすーぞー じひびーき たてーてー」とのコメントを付して、本件元画像2の左側の画像の一部を、それぞれ「X」に投稿した(以下、これらを併せて「本件元投稿2」という。甲44、乙7、8)。イ 被控訴人は、令和7年頃、インターネットのウェブサイトに、本件元画像2を含む本件元投稿2の全部を引用した記事を投稿(本件投稿2)した(甲44、乙7、8)。ウ 本件元画像2は、Dが制作した著作物であり、控訴人は、本件元画像2の著作権を有している。
⑵ 原判決3頁22行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 控訴人は、DにEを揶揄する意図はなく、悪意を持って本件元画像を製作したものでもない旨の主張をするが、仮にそうであるとしても、Dは、本件元画像がインターネット上でEを誹謗中傷する趣旨のものと認識されていることを知りながら、本件元画像を投稿し、被控訴人は、自己の認識に基づき、Dによる誹謗中傷行為を批判する目的で本件元画像を引用し利用して本件投稿をしたのであるから、いずれにせよ、被控訴人が本件元画像を引用し利用したことは、引用の目的上正当な範囲内というべきである。」
⑶ 原判決3頁26行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「ア 被控訴人による本件投稿は、控訴人が本件元画像について有する著
5 作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものであり、当該侵害行為が反復継続される蓋然性は極めて高いことから、控訴人は、被控訴人に対し、著作権法112条に基づき、本件投稿の削除及び本件元画像の複製、自動公衆送信の差止めを請求することができる。」
⑷ 原判決4頁1行目を次のとおり改める。「イ 被控訴人の主張する「引用の抗弁」については、否認ないし争う。」
⑸ 原判決4頁5行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 また、本件元画像はDが悪意を持って制作したものではない。本件元画像がインターネット上でEを誹謗中傷する趣旨のものと認識されるようになったのは、第三者がDの意図を誤認して本件元画像を流用し、事後的に文脈を付与して拡散したことによるものである。」
⑹ 原判決4頁11行目の「従たる関係にある。」の次に「被控訴人は、DにEを揶揄する意図はないのに、これを誤認し、検証もせずにDによる誹謗中傷と決めつけ、出所を明示することなく、また、本来開示する必要のないDの本名を敢えて記載し、「こいつってまだこんなことやってるんだ」、「ゴミ」、「無敵の人」と罵倒するなどの人格的利益を著しく害する態様により本件元画像を引用し利用しているのであって、これは公正な慣行に合致するものであるとも、引用の目的上正当な範囲内で行われるものであるともいえない。」を加える。3 当審における追加請求に係る主張(控訴人)被控訴人による本件投稿2は、控訴人が本件元画像2について有する著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものであり、当該侵害行為が反復継続される蓋然性は極めて高いことから、控訴人は、被控訴人に対し、著作権法112条に基づき、本件投稿2の削除及び本件元画像2の複製、自動公衆送信の差止めを請求することができる。
5 本件投稿と同様の理由から、本件元画像2を引用し利用したことは、公正な慣行に合致するものであるとも、引用の目的上正当な範囲内で行われるものであるともいえない。(被控訴人)被控訴人による本件投稿2が、本件元画像2を複製し自動公衆送信するものであることについては、積極的に争わない。本件元画像2は公表された著作物であるところ、本件元投稿2に添付された本件元画像2がいずれも分割困難であることや、その一部の引用では、大学生であるEを自殺に負い込もうとする悪質な行為を批判するという目的を達し得ないことに照らすと、引用元として本件元投稿2のURLを記載し、従たる関係にある引用した部分と他の部分とを明瞭にして、本件元画像2を含む本件元投稿2の全部を引用し利用したことは、公正な慣行に合致するものであり、かつ、引用の目的上正当な範囲内で行われるものである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、控訴人の削除請求は、当審における追加請求を含めて理由がな
いと、また、控訴人の当審における訴えの交換的変更後の差止請求に係る訴えは不適法であると判断する。その理由は、次のとおり補正し、2のとおり当審における当事者の追加請求に係る主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から3まで(原判決4頁14行目から7頁24行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決4頁22行目及び23行目の「本件元動画」をいずれも「本件元画
像」に改める。
⑵ 原判決5頁3行目の「複製権」を「複製権、自動公衆送信権」に改め、4
行目から12行目までを削る。
⑶ 原判決5頁15行目の「甲13」を「甲13、44、乙7、8」に、16
行目の「D0 がEを誹謗中傷する画像を作成して投稿する趣旨」を「DがE
5 を誹謗中傷する画像を作成して投稿することを批判する趣旨」にそれぞれ改
める。
⑷ 原判決5頁24行目の「画像でもない旨主張する」を「画像でもない、本
件元画像がインターネット上でEを誹謗中傷する趣旨のものと認識されるようになったのは、第三者がDの意図を誤認して本件元画像を流用し、事後的に文脈を付与し拡散したことによるものである旨の主張をし、動画配信サービスに係るチャンネルの管理運営者作成名義の意見書(甲40)には、これに沿う記載がある」に改める。
⑸ 原判決5頁25行目の「証拠(乙1ないし3)」から6頁1行目の「相当
である。」までを削る。
⑹ 原判決6頁11行目の「これを本件についてみると、」の次に「前記前提
事実⑵及び⑶によれば、本件元画像は、本件投稿までに公表されていた著作物であり、」を加える。
⑺ 原判決7頁15行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「さらに、控訴人は、被控訴人がDの意図を誤認して人格的利益を著しく害する態様により本件元画像を引用し利用していることからすると、これは、公正な慣行に合致するものであるとも、引用の目的上正当な範囲内で行われるものであるともいえない旨の主張をする。しかしながら、そもそも、被控訴人がDの意図を誤認したとしても、これにより直ちに本件元画像を引用し利用することができなくなるわけではないし、前記認定のとおり、被控訴人が、DのEに対する誹謗中傷行為を批判する目的で、本件元画像を引用し利用して本件投稿をしたことに照らすと、当該投稿に「こいつってまだこんなことやってるんだ...。リプライしてるゴミも含めて醜悪。」、「敗訴は間違いないと思うけど、いわゆる「無敵の人」かな。」とのコメントが付されていることを考慮しても、被控訴人が人格的利益を著しく害する態様により本件元画像を引用し利用しているとまでいう
5 ことはできない。」
⑻ 原判決7頁17行目から24行目までを次のとおり改める。
「3 当審における訴えの交換的変更後の差止請求について控訴人は、被控訴人に対し、「被控訴人は、本件元画像及び本件元画像2について、E(同人の氏名、ソーシャルメディアのアカウント名、その他同人を指し示すことが明らかな文言を含む。)と関連付ける文言を付して、複製又は自動公衆送信をしてはならない」との請求をするが、当該請求は、差止めの対象となる行為の態様及び対象を具体的に特定するものではないし、「E(同人の氏名、ソーシャルメディアのアカウント名、その他同人を指し示すことが明らかな文言を含む。)と関連付ける文言を付して」との表現も、一義的で明確なものとはいい難い。そうすると、当審における訴えの交換的変更後の差止請求に係る訴えは、差し止めるべき対象が特定されていないものとして不適法であり、却下すべきである。」
2 当審における追加請求に係る主張に対する判断
⑴ 被控訴人による本件投稿2が、本件元画像2を複製し自動公衆送信するも
のであることについては、当事者間に争いはないところ、証拠(甲13、44、乙7、8)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、DがEを誹謗中傷する画像を作成し投稿することを批判する目的で、批判の対象である、本件元画像2を含むDによる本件元投稿2の全部を引用し利用して本件投稿2(甲44)をしたことが認められる。そして、本件元画像2は、いずれも本件投稿2までに公表されていた著作物であるところ、当該投稿は、「Dこと…のコンピューターグラフィック作品について」との表題の下、「X(旧ツイッター)ユーザーであるDこと…が発表しているコンピューターグラフィック作品の中に、対象としている個人(一般人である学生E)を特定できる形に描き侮辱しているものがありま
5 す。」、「当ポストでは、Dの作品の悪質性を検証するために…該当の画像
を引用して批評します。」、「以下に引用したおよび2点が示すように、Dは…2024年6月1日になっても、Eを容易に連想させるキャラクター(引用画像が示すように、ネクタイやスーツなど、Eを知る人であれば、Eをモデルにしたことが容易に特定できるモチーフが含まれています)を登場させ誹謗中傷する作品のアップロードをやめませんでした。非常に悪質だと思います。」、「」、「」などと記載し、本件元投稿2に係る「引用元URL」を記載した上、批判の対象である、本件元画像2を含むDによる本件元投稿2の全部を引用するものであり、本件投稿2の表現形式上、引用して利用する著作物と、引用されて利用される著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められることからすると、本件元画像2を引用し利用したことは公正な慣行に合致するものであり、かつ、引用の目的上正当な範囲内で行われるものであるといえる。
⑵ 控訴人は、被控訴人がDの意図を誤認し、本来開示する必要のないDの本
名を敢えて記載し罵倒するなどの人格的利益を著しく害する態様により本件元画像2を引用し利用していることからすると、これは公正な慣行に合致するものではない旨の主張をするが、前記のとおり、被控訴人に著作物の制作意図について誤認があったとしても、これにより直ちに当該著作物を引用し利用することができなくなるわけではないし、被控訴人がDのEに対する誹謗中傷行為を批判する目的で本件元画像2を引用し利用して本件投稿2をしたことに照らすと、本件投稿2に、批判の対象である著作物の製作者の本名が記載されているからといって、被控訴人が人格的利益を著しく害する態様により本件元画像2を引用し利用しているとまでいうことはできない。
3 以上によれば、控訴人の原審における削除請求を棄却した原判決は相当であ
5 り、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、控訴人の当審における追加請
求は理由がないから、これを棄却し、当審における訴えの交換的変更後の差止請求に係る訴えは不適法であるから、これを却下することとし、原判決中、訴えの交換的変更前の差止請求に係る部分は、上記の訴えの交換的変更により失効しているからその旨を明らかにすることとして、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官森 冨 義 明裁判官菊 池 絵 理裁判官頼 晋 一(別紙)投稿記事目録(別紙)別紙著作物目録いずれも省略
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