ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(ワ)70572 民事訴訟 特許権
| 裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年6月26日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告FutureTechnology株式会社 被告双日株式会社 |
| 対象物 | 加熱式タバコ用カートリッジ及び支持部材 |
| 法令 |
特許権 特許法102条2項1回 |
| キーワード | 実施30回 新規性10回 進歩性8回 分割8回 特許権5回 損害賠償2回 無効1回 刊行物1回 侵害1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。 |
| 事件の概要 | 1 事案の要旨 本件は、発明の名称を「加熱式タバコ用カートリッジ及び支持部材」とする 特許(特許第7570555号。以下「本件特許」という。 )に係る特許権(以 下「本件特許権」という。 )を有する原告が、別紙被告製品目録記載の各製品 (以下「被告製品」という。 )は本件特許の請求項1に記載された発明(以下 「本件発明」という。 )の技術的範囲に属し、被告による被告製品の輸入、販売 等は本件特許権を侵害すると主張して、被告に対し、民法709条に基づき、 損害賠償金1000万円(特許法102条2項により算定される損害額の一部 請求)及びこれに対する令和6年12月18日(訴状送達の日の翌日)から支 払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案であ る。 |
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令和8年6月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第70572号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和8年3月23日
判 決
原 告 Future Technology
株式会社
同訴訟代理人弁護士 溝 田 宗 司
郡 佑 太
被 告 双 日 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 吉 田 和 彦
高 石 秀 樹
同 補 助 参 加 人 フィリップ・モリス・ジャパン
合同会社
同代表者代表社員 フィリップモリスプロダクツエスアー
同訴訟代理人弁護士 古 城 春 実
堀 籠 佳 典
岡 田 健 太 郎
平 井 佑 希
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。)は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する令和6年12月18日
5 から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨本件は、発明の名称を「加熱式タバコ用カートリッジ及び支持部材」とする特許(特許第7570555号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告製品」という。)は本件特許の請求項1に記載された発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し、被告による被告製品の輸入、販売等は本件特許権を侵害すると主張して、被告に対し、民法709条に基づき、損害賠償金1000万円(特許法102条2項により算定される損害額の一部請求)及びこれに対する令和6年12月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
⑴ 当事者等ア 原告は、雑貨(ノンニコチンスティック等)商品の企画、製造、販売に関する事業を目的とする株式会社である。イ 被告は、たばこ等の輸出入及び売買等を目的とする株式会社である。ウ 被告補助参加人は、たばこの輸入及び販売等を目的とする合同会社である。
⑵ 本件特許権(甲1、2)ア 原告は、以下の本件特許権を有している(本件特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」といい、本件明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと記載する。)。特許番号 特許第7570555号
5 発明の名称 加熱式タバコ用カートリッジ及び支持部材出願日 令和6年8月16日出願番号 特願2024-137011分割の表示 特願2024-120192の分割原出願日 令和3年2月9日登録日 令和6年10月10日イ 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。加熱体により加熱されることにより、エアロゾルを発生するタバコ充填物集積体と、前記エアロゾルを濾過するフィルタと、前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置される支持部材と、前記タバコ充填物集積体、前記フィルタ、及び前記支持部材の外周に巻かれた包装部材と、を備え、前記支持部材は、第1端面と第2端面と、前記第1端面と前記第2端面の間に形成された周面部とを有する円筒状に形成され、前記第1端面から前記第2端面まで延びる貫通孔を有し、前記周面部は、前記支持部材の正面視において複数の凹部または凸部を有し、前記複数の凹部または凸部は、前記支持部材の軸方向に沿って延びて設けられ、前記複数の凹部または凸部は、前記支持部材の周面部の一部に周方向の全周に渡って設けられており、前記周面部と前記包装部材との間に複数の空隙が設けられている、加熱式タバコ用カートリッジ。ウ 本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した構成要件をその符号に従い「構成要件A」などという。)。
5 A 加熱体により加熱されることにより、エアロゾルを発生するタバコ充填物集積体と、B 前記エアロゾルを濾過するフィルタと、C 前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置される支持部材と、D 前記タバコ充填物集積体、前記フィルタ、及び前記支持部材の外周に巻かれた包装部材と、を備え、E 前記支持部材は、第1端面と第2端面と、前記第1端面と前記第2端面の間に形成された周面部とを有する円筒状に形成され、前記第1端面から前記第2端面まで延びる貫通孔を有し、F 前記周面部は、前記支持部材の正面視において複数の凹部または凸部を有し、G 前記複数の凹部または凸部は、前記支持部材の軸方向に沿って延びて設けられ、H 前記複数の凹部または凸部は、前記支持部材の周面部の一部に周方向の全周に渡って設けられており、I 前記周面部と前記包装部材との間に複数の空隙が設けられている、J 加熱式タバコ用カートリッジ。
⑶ 被告の行為被告は、被告製品を日本国内に輸入し、日本国内で販売又は販売の申出をしている。
⑷ 被告製品の構成被告製品は、フィリップ・モリス(被告製品の製造元であるフィリップモリスプロダクツエスアー、被告補助参加人、及びその関連会社を含む。)が販売する電気加熱式喫煙器具「IQOS ILUMA」に挿入して用いられる専用のタバコスティックである。
5 被告製品の外観は、別紙写真目録1のとおりであり、被告製品の巻紙を切り開き、分解した場合の構成は、別紙写真目録2のとおりであり、少なくとも以下の構成を有している。a 加熱式たばこ機器により加熱されることにより、たばこベイパーを発生するたばこ部分と、b 前記たばこベイパーを濾過するフィルタと、c 前記たばこ部分、エアーフローチャンバー、冷却プラグ及び前記フィルタの順位配列されたエアーフローチャンバー及び冷却プラグと、d フロントプラグの外周に巻かれた巻紙A、前記タバコ部分の外周に巻かれた巻紙B、前記エアーフローチャンバーの外周に巻かれた巻紙C、及び前記フィルタの外周に巻かれた巻紙Eと、前記フロントプラグ、前記たばこ部分、前記エアーフローチャンバー及び前記冷却プラグの外周に巻かれた巻紙F及び前記冷却プラグの一部及び前記フィルタの外周に巻かれた巻紙Gと、を備えj 加熱式たばこ機器用のたばこスティック。
⑸ 先行文献本件特許の原出願日前に頒布された刊行物として、以下のものが存在した。ア 国際公開公報(WO-2020/032610 A1。令和2年2月13日公開。丙21。以下「丙21公報」といい、丙21公報に記載された発明を「丙21発明」という。)イ 特許第6005735号公報(丙22。平成28年10月12日発行。以下「丙22公報」といい、丙22公報に記載された発明を「丙22発明」という。)ウ 米国特許第4149546号公報(丙24。昭和54年4月17日発行。以下「丙24公報」といい、丙24公報に記載された発明を「丙24発明」という。)
5 エ 公表特許公報(特表2010-527628公報。丙25。平成22年8月19日公表。以下「丙25公報」といい、丙25公報に記載された発明を「丙25発明」という。)3 争点
⑴ 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア 構成要件Cの充足性(争点1-1)イ 構成要件Dの充足性(争点1-2)ウ 構成要件Eの充足性(争点1-3)エ 構成要件FないしHの充足性(争点1-4)オ 構成要件Iの充足性(争点1-5)なお、被告製品が本件発明に係る構成要件A、B及びJを充足することは争いがない。
⑵ 無効の抗弁の成否(争点2)ア 分割要件違反を前提とする新規性欠如(争点2-1)イ 丙21発明に基づく新規性欠如(争点2-2)ウ 丙22発明に基づく進歩性欠如(争点2-3)エ 丙24発明及び丙25発明に基づく進歩性欠如(争点2-4)オ サポート要件違反(争点2-5)
⑶ 損害の発生及びその額(争点3)4 争点に関する当事者の主張
⑴ 争点1-1(構成要件Cの充足性)について(原告の主張)ア 【0030】には、「タバコ充填物集積体の支持部材20側への移動を抑制するとともに、タバコ充填物集積体10で発生したエアロゾルを含む気流をフィルタ30側に流通させる。支持部材20は、例えば円筒状かつ中実状に設けられ、その軸方向が中心軸Cに沿うようにタバコ充填物11と
5 フィルタ30との間に配置される。」と記載されている。また、【0048】には、「外部から圧力を加えられた際に、包装部材40がつぶれてしまうことなく、支持部材20の中実部分がタバコ充填物集積体10の支持部材20側への移動を抑制する」と記載されている。そして、本件明細書において、支持部材の個数は何ら限定されていない。これらの本件明細書の記載に加え、本件発明の「加熱式タバコ」がブレード加熱方式に限定されるといった記載がないことからすると、構成要件Cの「支持部材」には、ブレード加熱式たばこに係るブレードが挿入された場合のみならず、外部からの圧力がかかった場合に、タバコ充填物集積体の移動を阻止する機能を有するあらゆる態様のものが含まれ、その個数についても限定はない。そして、タバコ充填物集積体の移動を阻止する機能とは、タバコ充填物集積体と他の部材との距離が変更されないよう移動を阻止する機能である。イ 被告製品のエアーフローチャンバーは、たばこ葉が吸い口側に移動しないように抑制する機能を有するとともに、適度な量のたばこベイパー(蒸気)がたばこスティック内を通過する機能を果たすものであり、冷却プラグもエアーフローチャンバーと共に、たばこ葉が吸い口側に移動しないように抑制しつつ、たばこベイパー(蒸気)の温度を下げ、過度な加熱を防止してフィルタに流通させる機能を果たすものであるから、エアーフローチャンバー及び冷却プラグは支持部材に該当する。そして、エアーフローチャンバー及び冷却プラグは、たばこ部分とフィルタとの間に配置されている。以上によれば、被告製品は、構成要件Cを充足する。(被告及び被告補助参加人の主張)ア 【0002】ないし【0006】の記載や【0040】の記載から明らかなとおり、「支持部材」とは、加熱要素である加熱ブレードがタバコカー
5 トリッジのエアロゾル形成基材内へ挿入される際にカートリッジが受ける力に抗するための部材であり、本件発明は、支持部材について、その周面部の形状を工夫することで組立機械が把持しやすいようにした発明である。本件明細書には、複数の部材を合わせて一つの「支持部材」とすることは開示されておらず、むしろ、【0092】には支持部材とフィルタの間に冷却部材等の別の部材を介在させることが開示されているが、当該部材は「支持部材」とは呼ばれていないし、当該別部材と支持部材20を合わせたものも「支持部材」とは呼ばれていない。これらの記載からすると、構成要件Cの「支持部材」とは、組立機械が把持する対象、すなわち物理的に一つの物を意味することは明らかである。また、支持部材について、本件明細書の【0007】や【0030】には、支持部材がタバコ充填物集積体とフィルタとの「間に配置され」ていると記載されており、本件明細書で開示されているその具体的な態様は、支持部材がタバコ充填物集積体と当接することのみである。そうすると、支持部材がタバコ充填物集積体とフィルタとの「間に配置される」とは、タバコ充填物集積体と直接当接して配置されることを意味すると解すべきである。イ 被告製品は、ブレード加熱式ではなく、誘導加熱式のデバイスに用いられるたばこ用カートリッジであり、加熱用ブレードが挿入されることはないことから、ブレードが挿入された際にタバコ充填物集積体の移動を防止するための部材である支持部材は存在しない。また、被告製品のたばこ部分、エアーフローチャンバー及び冷却プラグは、それぞれ外巻紙(巻紙F)に糊付けされていて、それぞれが長手方向に移動しないようになっているから、たばこ部分が移動しないように、被告製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグが「支持」しているわけではない。そのため、仮に巻紙ごとたばこスティック全体が軸方向につぶれてしまって
5 も、各部材の相対的な位置関係は変更されておらず、たばこ部分の位置は何ら移動していない。さらに、被告製品に含まれる部材のうち、少なくとも冷却プラグはたばこ部分と当接していないから、この部材は本件発明の構成要件Cの「間に配置される」を充足しない。以上のとおり、被告製品は、構成要件Cを充足しない。
⑵ 争点1-2(構成要件Dの充足性)について(原告の主張)ア 【0026】に「タバコ充填物集積体10、支持部材20、およびフィルタ30が長手方向D1に沿って配列され、包装部材40で巻かれることで一体化されて形成されている。」と記載されているとおり、構成要件Dの包装部材は、タバコ充填物集積体、フィルタ及び支持部材を一体化して形成するために巻くものである。イ 被告製品のたばこ部分、フィルタ、エアーフローチャンバーは、それぞれ内巻紙に包装されるとともに、外巻紙でも包装されている。また、冷却プラグは内巻紙に包装されていないものの、第1の外巻紙と第2の外巻紙(巻紙F及び巻紙G)の重なり部分に配置されているため、2枚の外巻紙により包装されている。そして、各内巻紙及び外巻紙は、接着剤等で接着され、一体の「保護ペーパー」として、被告製品の外周を各部材が円筒状に形成されるように包装している。したがって、被告製品の「保護ペーパー」は、「たばこ部分」、「フィルタ」及び「前記エアーフローチャンバー及び前記冷却プラグ」の外周を一体化して円筒状に形成するために包装するためのものであるため、「包装部材」に該当する。以上によれば、被告製品は、構成要件Cを充足する。(被告及び被告補助参加人の主張)ア 構成要件Dの文言に照らせば、1枚の部材でタバコ充填物集積体、フィ
5 ルタ及びタバコ充填物集積体より発生するエアロゾルを冷却する部材の全てが巻かれると理解するのが自然であるし、本件明細書の記載に照らしても、1枚の包装部材で3つの部材を全て巻く態様のものしか開示がされていない。特に【0049】には、包装部材の厚みや材料を調整することが記載されているが、複数枚の部材を組み合わせた場合は、それぞれの厚みや材料は異なり得るのであるから、この記載に照らしても、本件発明の包装部材としては、1枚の部材のものが想定されていることは明らかである。イ 被告製品の巻紙Fは、エアーフローチャンバー及び冷却プラグの一部を巻いているものの、フィルタは巻いていない。また、被告製品の巻紙Gは、冷却プラグの一部及びフィルタを巻いているものの、エアーフローチャンバーは巻いていない。このように被告製品では、エアーフローチャンバー、冷却プラグ及びフィルタの全てを巻いている巻紙は存在しない。以上のとおり、被告製品は構成要件Dを充足しない。
⑶ 争点1-3(構成要件Eの充足性)について(原告の主張)被告製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグは、繊維状のものが絡み合って形成された構造体であって、一方の端面と他方の端面と、これらの端面の間に形成された周面とを有する円筒状であり、一方の端面から他方の端面までを貫通している貫通孔を有していることから、構成要件Eを充足する。(被告及び被告補助参加人の主張)ア 本件明細書では、円筒状と従来技術である中空管状とは明確に区別して使用されているところ、被告製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグは中空管状であって、円筒状ではない。イ 構成要件Eにおける端面は、円筒状の物体の底面及び上面を指すものと
5 して使用されている。そして、上記アのとおり、被告製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグは円筒状ではなく、端面を有していない。原告は、エアーフローチャンバーと冷却プラグを組み合わせたものを支持部材として構成要件Eの充足性を主張しているところ、そのように解する場合には、エアーフローチャンバーのたばこ部分側の端面と冷却プラグのフィルタ側の端面が第1端面及び第2端面となり、そうすると第1端面と第2端面はそれぞれ異なる部材の端面となり、これらの間に周面部は形成されない。ウ 本件明細書では、円筒に対して複数の小さな貫通孔を設けた形状と、従来技術である中空部分を備えた中空管状の形状とは、明確に区別されているところ、被告製品のエアーフローチャンバーや冷却プラグの中空部分は本件発明の「貫通孔」には当たらない。また、原告は、エアーフローチャンバーと冷却プラグを組み合わせたものを支持部材として構成要件Eの充足性を主張しているところ、そのように解する場合には、エアーフローチャンバーの中空部分と冷却プラグの中空部分は異なることから、「前記第1端面から前記第2端面まで延びる」貫通孔を備えない。以上のとおり、被告製品は、構成要件Eを充足しない。
⑷ 争点1-4(構成要件FないしHの充足性)について(原告の主張)ア エアーフローチャンバーは、繊維状のものが絡み合って形成されており、その周面には複数の陥没部及び隆起部がエアーフローチャンバー及び冷却プラグの軸方向に沿って存在している。また、エアーフローチャンバー及び冷却プラグは一体として支持部材として機能していることから、その一部であるエアーフローチャンバーの周面部に陥没部及び隆起部が存在している。
5 そして、上記の陥没部は凹部、隆起部は凸部に該当することから、支持部材であるエアーフローチャンバー及び冷却プラグの正面視において複数の凹部及び凸部を有し、当該凹部及び凸部はエアーフローチャンバー及び冷却プラグの軸方向に沿って延びて設けられ、当該凹部及び凸部は、支持部材の一部であるエアーフローチャンバーの全周にわたって設けられている。以上によれば、被告製品は、構成要件FないしHを充足する。イ 本件発明の課題は、タバコ充填物が移動することを抑止する支持部材を用いたタバコカートリッジを提供することであり、具体的には支持機能の提供並びに冷却機能及び吸い心地の向上にあるのであって、被告及び被告補助参加人が主張するような組立機械が把持しやすくするというものではない。そのため、エアーフローチャンバーについて、組立機械で把持される内巻紙(巻紙C)に巻かれた状態で構成を特定すべきとはいえない。また、被告補助参加人において繊維状の素材を用いてエアーフローチャンバーを形成した結果、凹凸が生じているのであれば、当該凹凸は支持部材に設けられたものであると認められる。(被告及び被告補助参加人の主張)ア 本件発明は、加熱式タバコ用カートリッジの発明であるから、その構成要件である構成要件FないしHも、加熱式タバコ用カートリッジが備える構成である。しかし、原告は被告製品を分解して、巻紙を除去した状態におけるエアーフローチャンバーや冷却プラグの形状しか主張しておらず、たばこスティックの状態での、これらの部材の形状について主張も立証もしていない。イ 本件発明は、ブレード加熱方式に特有の加熱ブレードを挿入した際のタバコ充填物集積体の移動を防止するための支持部材について、その外部形
5 状を工夫することで組立機械が把持しやすいようにした発明である。被告製品を製造する際、エアーフローチャンバーは内巻紙(巻紙C)に巻かれた状態で組立機械によって把持され、組立てが行われることから、仮にエアーフローチャンバーの形状を構成要件FないしHと対比するのであれば、組立機械が把持する、内巻紙に巻かれた状態での対比が行われるべきである。そうすると、内巻紙(巻紙C)に巻かれたエアーフローチャンバーの表面に凹凸はない。ウ 本件明細書の【図4】、【図25】や【0042】を見ると、凸部は軸方向に沿って規則的に延びており、また【0045】や【0087】などを見ると、凸部の形状は精密に制御され得ることが示されている。また【図17】は周面部に凹部を設けた支持部材を示しているが、その断面における相対的に高さの高い箇所は凸部とはされていない。他方で、被告製品のエアーフローチャンバーは、セルロースアセテートの繊維が集積されて形成された柔らかい素材であるため、その表面が均一にならず、繊維が伸びている軸方向に不可避的に、かつ不規則な形状となっているにすぎず、このような不可避的かつ不規則に生じている形状は、本件発明の「凹部または凸部」であるとも、「軸方向に沿って延びて設けられ」ているともいえない。エ 仮にエアーフローチャンバーの周面部の不可避的かつ不規則な形状が本件発明の複数の凹部または凸部に当たるとしても、そのような不可避的かつ不規則な形状はエアーフローチャンバーの周面部の全領域に及んでいることから、「支持部材の周面部の一部」に設けられているとはいえない。以上のとおり、被告製品は、構成要件FないしHを充足しない。
⑸ 争点1-5(構成要件Iの充足性)について(原告の主張)被告製品のエアーフローチャンバーと内巻紙(巻紙C)との間には、エア
5 ーフローチャンバーの陥没部及び隆起部に起因した空隙が複数存在している。また、構成要件Iにおける空隙が一方端から他方端まで連通していることは求められていないし、空隙が存在する以上、タバコ充填物集積体を加熱したことにより発生したエアロゾルが流通する流路として機能することは明白である。以上によれば、被告製品は、構成要件Iを充足する。(被告及び被告補助参加人の主張)本件明細書において支持部材と包装部材との間に設けられる「空隙」とは、凸部が設けられることによって形成されるもの、すなわち、支持部材に設けられた隣接する凸部同士と包装部材とで囲まれた空間を意味することは明らかである。また、【0044】ないし【0049】によれば、構成要件Iの「空隙」は、エアロゾル形成基材の側からマウスピース側への空気やエアロゾルが流通する流路として機能するものである。被告製品において、エアーフローチャンバーを巻いている内巻紙(巻紙C)と外巻紙(巻紙F)との間に生じている隙間は隣接する凸部と包装部材とで囲まれた空間ではないから、本件発明の「空隙」に当たらないし、仮にエアーフローチャンバーと内巻紙(巻紙C)との間に隙間が存在するとしても、一方端から他方端に連通していること、つまり、空気やエアロゾルの流路として機能し得ることは何ら示されていない。以上のとおり、被告製品は、構成要件Iを充足しない。
⑹ 争点2-1(分割要件違反を前提とする新規性欠如)について(被告及び被告補助参加人の主張)被告及び被告補助参加人の主張は、別紙【分割要件違反を前提とする新規性欠如】記載のとおりであり、本件特許は、分割要件に違反してなされた分割出願に基づくものであるから、出願日遡及の効果を享受することができず、
5 その出願日は現実の出願日である令和6年8月16日となるところ、本件発明は、令和4年8月22日に公開された本件特許の原出願の特許公開公報(特開2022-122081。丙18)に記載された発明であるから、本件発明は新規性を欠く。(原告の主張)否認ないし争う。原告の主張は、別紙【分割要件違反を前提とする新規性欠如】記載のとおりである。
⑺ 争点2-2(丙21発明に基づく新規性欠如)について(被告及び被告補助参加人の主張)被告及び被告補助参加人の主張は、別紙【丙21発明に基づく新規性欠如】記載のとおりであり、本件発明は、丙21発明に記載された発明であるから新規性を欠く。(原告の主張)否認ないし争う。原告の主張は、別紙【丙21発明に基づく新規性欠如】記載のとおりである。
⑻ 争点2-3(丙22発明に基づく進歩性欠如)について(被告及び被告補助参加人の主張)被告及び被告補助参加人の主張は、別紙【丙22発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりであり、本件発明は、丙22発明に周知技術等を適用することで容易に発明をすることができた。(原告の主張)否認ないし争う。原告の主張は、別紙【丙22発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりである。
5 ⑼ 争点2-4(丙24発明及び丙25発明に基づく進歩性欠如)について(被告及び被告補助参加人の主張)被告及び被告補助参加人の主張は、別紙【丙24発明及び丙25発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりであり、本件発明は、丙24発明と丙25発明を組み合わせることで容易に発明をすることができた。(原告の主張)否認ないし争う。原告の主張は、別紙【丙24発明及び丙25発明に基づく進歩性欠如】記載のとおりである。
⑽ 争点2-5(サポート要件違反)について(被告及び被告補助参加人の主張)被告及び被告補助参加人の主張は、別紙【サポート要件違反】記載のとおりであり、本件特許はサポート要件に違反する。(原告の主張)否認ないし争う。原告の主張は、別紙【サポート要件違反】記載のとおりである。
⑾ 争点3(損害の発生及びその額)について(原告の主張)被告は、被告製品を譲渡、輸入又は譲渡等の申出により、少なくとも5億円の利益を受けている。したがって、原告が受けた損害は、少なくとも5億円を下らないと推定される。(被告の主張)否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項等
5 ⑴ 本件明細書には、以下の記載がある(図面は別紙図面目録を参照)。
ア 技術分野【0001】本発明は、タバコまたは非タバコ植物を材料とするタバコ充填物を有する加熱式タバコに用いられる加熱式タバコ用支持部材及びこれを有する加熱式タバコ用カートリッジに関する。イ 背景技術【0002】近年、タバコの禁煙の傾向に合わせるために、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引することで、タバコを楽しむための加熱式タバコ製品が普及し始めている。加熱式タバコ用カートリッジは、加熱式タバコ本体が有するブレード等の加熱体が差し込まれて加熱されるタバコ充填物と、吸口に設けられるフィルタと、タバコ充填物とフィルタの間に設けられる支持部材とを有し、これらが紙等の包装部材で巻かれることで形成される。このような加熱式タバコ用支持部材及び加熱式タバコ用カートリッジとして、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。【0003】また、特許文献2の加熱式タバコでは、加熱式タバコカートリッジのエアロゾル形成基材に加熱要素を挿入してエアロゾル形成基材を加熱し、タバコ成分を含むエアロゾルを生成する。加熱式タバコカートリッジは、エアロゾル形成基材を支持する中空管状の支持部材を有し、支持部材は、加熱要素がエアロゾル形成基材内へ挿入される際にカートリッジが受ける力に抗する。加熱によりエアロゾル形成基材から放出されたタバコ成分は、支持部材の中空の部分を通って、下流に位置するマウスピースに移送され、ユーザーによって吸引される。
5 ウ 特許文献
【0004】【特許文献1】 実用新案登録第3212228号公報【特許文献2】 特許第6000451号公報エ 発明が解決しようとする課題【0005】一方、特許文献1および2に記載の支持部材を用いて電子加熱式タバコ用カートリッジを製造するときに、支持部材の表面が滑る場合があり、製造機械(組立機械)が支持部材を把持することができない場合がある。【0006】そこで、本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、組立機械が把持しやすい加熱式タバコ用支持部材をもちいた加熱式タバコ用カートリッジを提供することを目的とする。オ 課題を解決するための手段【0007】本発明の一実施形態によれば、電気制御式の発熱体を備えた加熱式喫煙具に装着して喫煙する加熱式タバコ用カートリッジであって、加熱されることにより、エアロゾルを発生するタバコ充填物集積体と、前記エアロゾルを濾過するフィルタと、前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置され、前記発熱体が前記タバコ充填物集積体の中に挿入されるときに前記タバコ充填物集積体が前記フィルタ側へ移動するのを防止する支持部材と、前記タバコ充填物集積体、前記フィルタ、及び前記支持部材の外周に巻かれた包装部材と、を備え、前記支持部材は、前記たばこ充填物集積体側に設けられた第1端面、前記フィルタ側に設けられた第2端面、および前記第1端面から前記第2端面の間に形成される周面部に設けられた少なくとも一つの凹部または凸部を有し、前記少なくとも一つの凹部また
5 は凸部は、対応する先端部を有する、加熱式タバコ用カートリッジが提供
される。カ 発明の効果【0020】本発明の一実施形態を用いることにより、組立機械が把持しやすい加熱式タバコ用支持部材及び加熱式タバコ用支持部材をもちいた加熱式タバコ用カートリッジを提供することができる。キ 発明を実施するための形態【0026】(1-1.加熱式タバコ用カートリッジの構成)図1は、本実施形態におけるタバコ充填物集積体10を有する加熱式タバコ用カートリッジ1の断面図である。図1に示すように、加熱式タバコ用カートリッジ1は、タバコ充填物集積体10、加熱式タバコ用支持部材20(以下単に支持部材20という)、吸口部となるフィルタ30、およびシート状の包装部材40を含む。加熱式タバコ用カートリッジ1では、タバコ充填物集積体10、支持部材20、およびフィルタ30が長手方向D1に沿って配列され、包装部材40で巻かれることで一体化されて形成されている。【0030】支持部材20は、タバコ充填物集積体10の支持部材20側への移動を抑制するとともに、タバコ充填物集積体10で発生したエアロゾルを含む気流をフィルタ30側に流通させる。支持部材20は、例えば円筒状かつ中実状に設けられ、その軸方向が中心軸Cに沿うようにタバコ充填物11とフィルタ30との間に配置される。支持部材20は、例えば、中心軸Cに沿った長さが3.0mm~50mm以下に形成される。なお、支持部材20は、適宜機能および構成に応じて上記とは異なる寸法を有していても
5 よい。支持部材20のその他の構成については、後述する。
【0034】図2は、加熱式タバコ用カートリッジ1の使用形態を表す断面図である。加熱式タバコ用カートリッジ1は、加熱式タバコ本体5に装着されて使用される。加熱式タバコ本体5は、加熱式タバコ用カートリッジ1を挿入させる挿入部50を有している。挿入部50には、挿入された加熱式タバコ用カートリッジ1のタバコ充填物11に対して挿入される針状あるいはブレード状の発熱体52が設けられる。発熱体52は、加熱式タバコ本体5内部に設けられた制御部により電気的に制御される。発熱体52は、タバコ充填物11に対して挿入された状態で発熱することにより、タバコ充填物11からエアロゾルを発生させることができる。この状態で、ユーザーがフィルタ30から吸うことにより、エアロゾルを含む気流を吸引することができる。また、支持部材20が、中実であり、タバコ充填物集積体10とフィルタとの間に設けられることにより、タバコ充填物集積体10がフィルタ30側に移動することを防止することができる。【0036】図3は、支持部材20の斜視図である。図3に示すように、支持部材20は、第1端面21、第2端面23及び周面部25を有する。支持部材20の第1端面21はタバコ充填物集積体10の端面に当接する。支持部材20の第2端面23はフィルタ30の端面に当接する。支持部材20は第1端面21から第2端面23まで延びる孔部27(貫通孔ともいう)を有しており、孔部27を通じて気流が流通する。支持部材20は、円筒状に設けられる。支持部材20を形成する材料には、例えば、シリコーン樹脂が用いられる。なお、支持部材20はシリコーン樹脂に限定されず、冷却効果が増す木材、金属(アルミ等)のような樹脂材以外の材料で形成されていてもよい。
5 【0037】
図4(A)は、支持部材20の側面図である。図4(B)は、支持部材20の第1端面21を正面とした図である。図4(A)および図4(B)に示すように、支持部材20は、長手方向D1と直交する平面で切断した断面形状において、第1端面21から第2端面23まで同じ形状を有する。【0040】
第1端面21は、孔部27の部分が空隙であり、それ以外の部分が中実
である。この中実部分がタバコ充填物集積体10の端面に当接する。タバコ充填物集積体10は、加熱式タバコ本体5の発熱体52が挿入される際には長手方向D1に力を受けるため、当接する支持部材20の中実部分でタバコ充填物集積体10を支持することができる。【0043】本実施形態において、周面部25に凸部251が設けられることで、組立機械の把持部が支持部材20を把持したときに、組立機械の把持部と凸部251の先端部251aとの間に摩擦力が生じる。これにより、組立機械の把持部は支持部材20を把持しやすくなり、加熱タバコ用カートリッジを安定して製造することができる。【0044】図5は、支持部材20を包装部材40が包装した状態の断面図である。図5に示すように、本実施形態において、支持部材20の外周に巻かれている包装部材40と支持部材20の周面部25との間には、凸部251が設けられることにより空隙26が設けられる。これにより、包装部材40と周面部25との間をエアロガスが流通することができる。したがって、エアロガスの流路が孔部27に加えて拡大し、エアロガスの流動性を向上させることができる。さらに、本実施形態の場合、空隙26が包装部材40に向かって広がる形状となるため、例えば凸部が略方形状を有する場合
5 に比べてエアロゾルの流路を大きくとることができる。
【0048】つまり、本実施形態を用いることにより、外部から圧力を加えられた際に、包装部材40がつぶれてしまうことなく、支持部材20の中実部分がタバコ充填物集積体10の支持部材20側への移動を抑制するとともに、包装部材40との間に複数の空隙26が設けられることで、孔部27に加え、空隙26の空隙をエアロゾルが流通することで、エアロゾルを流通させる効果を高めることができる。【0050】<第2実施形態>本発明の第1実施形態では、支持部材において周面部の長手方向に凸部が延びて配置される例を示したが、本発明ではこれに限定されない。本実施形態では、第1実施形態とは異なる支持部材について説明する。具体的には、凸部が、長手方向に対して傾いた方向に設けられる支持部材について説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、適宜説明を省略する。【0051】図6は、支持部材20Aの側面図である。図6に示すように、支持部材20Aは、周面部25Aに凸部251Aを有する。凸部251Aは、長手方向D1に交差する方向に延びて設けられてもよい。具体的には、凸部251Aは、長手方向D1に対して傾いた方向に設けられる。この場合、凸部251Aが長手方向D1に延びる場合に比べてエアロゾルの流路を長くなり、冷却時間を増加させることができる。したがって、本実施形態を用いることにより、組立機械の把持部(製造装置)が支持部材20Aを把持しやすくなり、加熱タバコ用カートリッジを安定して製造することができるとともに、凸部251Aが直線状に設けられる場合と比べてエアロゾル
5 を吸い込んだ時の吸い心地に変化を及ぼすことを可能とする。
【0052】<第3実施形態>本発明の第1実施形態では、支持部材において周面部の長手方向に凸部が延びて配置される例を示したが、本発明ではこれに限定されない。本実施形態では、第1実施形態とは異なる支持部材について説明する。具体的には、曲線状に配置された凸部を有する支持部材について説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、適宜説明を省略する。【0053】図7は、支持部材20Bの側面図である。図7に示すように、支持部材20Bの周面部25Bにおいて、凸部251Bは、先端部を有するとともに、第1端面21から第2端面23に向かって曲線状に配置されてもよい。この場合、凸部251Bが長手方向D1に直線状に延びる場合に比べてエアロゾルの流路を長くすることができる。これにより、製造機械(組立機械)が把持しやすくなり、加熱タバコ用カートリッジを安定して製造することができるとともに、凸部が直線状に設けられる場合と比べて喫煙者がエアロゾルを吸い込んだ時の吸い心地に変化を及ぼすことを可能とする。【0054】<第4実施形態>本実施形態では、第1実施形態とは異なる支持部材について説明する。具体的には、凸部が、第1端面から第2端面に向かって波形状に設けられる支持部材について説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、適宜説明を省略する。【0055】図8(A)は、支持部材20Cの側面図である。図8(B)は、支持部
5 材20Cの第1端面21を正面とした図である。図8(A)および図8
(B)に示すように、支持部材20Cにおいて、凸部251Cは、第1端面21から第2端面23に向かって長手方向D1に波形状に配置されてもよい。この場合、凸部251Cが長手方向D1に直線状に延びる場合に比べてエアロゾルの流路を長くすることができる。これにより、エアロゾルの冷却時間も変化する。したがって、本実施形態を用いることにより、組立機械の把持部(製造装置)が支持部材20Cを把持しやすくなり、加熱タバコ用カートリッジを安定して製造することができるとともに、凸部251Cが直線状に設けられる場合と比べて喫煙者がエアロゾルを吸い込んだ時の吸い心地に変化を及ぼすことを可能とする。
⑵ 上記⑴によれば、本件発明の技術的意義は次のとおりである。
本件発明は、タバコ充填物集積体とフィルタとの間に支持部材を備えた加熱式タバコ用カートリッジに関し、製造するときに支持部材の表面が滑り、製造機械(組立機械)が支持部材を把持することができない場合があるという課題があったことから、支持部材の周面部に凹部又は凸部を設け、組立機械が支持部材を把持したときに凹部又は凸部との間で摩擦力が生じやすくすることにより、組立機械が支持部材を把持しやすくなるという解決手段を提供するものである(【0001】ないし【0007】、【0020】、【0043】)。
2 争点1-4(構成要件FないしHの充足性)について
事案に鑑み、争点1-4から判断する。
⑴ 「支持部材」の意味
ア 構成要件FないしHは、いずれも「支持部材」の構成を包含するものであることから、その意味について検討する。構成要件Cは「前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置される支持部材と、」と規定しているところ、本件明細書には、「支持部材」
5 の機能としてタバコ充填物集積体の支持部材側への移動を抑制するものと
されている(【0030】、【0034】)が、これ以外に配置又は機能について限定する記載はない。そうすると、「支持部材」とは、タバコ充填物集積体とフィルタとの間に配置されるものであって、その機能としてタバコ充填物集積体が支持部材側、つまりフィルタ側に移動することを防止するものと解するのが相当である。イ 前提事実⑷のとおり、被告製品は、たばこ部分とフィルタとの間に、エアーフローチャンバー及び冷却プラグが配置されているところ、証拠(甲9)によれば、これらは別々の部材であり、それぞれたばこ部分がエアーフローチャンバー及び冷却プラグ側、つまり、フィルタ側に移動することを防止する機能を有していると認められる。したがって、被告製品におけるエアーフローチャンバー及び冷却プラグはいずれも「支持部材」に該当する。
⑵ 構成要件FないしHの支持部材に設けられる凹部または凸部の意味
ア 構成要件Fは「前記周面部は、前記支持部材の正面視において複数の凹部または凸部を有し、」と、構成要件Gは「前記複数の凹部または凸部は、前記支持部材の軸方向に沿って延びて設けられ、」と、構成要件Hは「前記複数の凹部または凸部は、前記支持部材の周面部の一部に周方向の全周に渡って設けられており、」とそれぞれ規定しているところ、上記1⑵のとおり、本件発明が前提とする課題及びその解決手段は、組立工程における支持部材の把持に係るものであることからすれば、支持部材に設けられる凹部または凸部は、組立機械の把持の対象となる単位、つまり、部材ごとに備える必要があると解するのが相当である。そして、上記⑴のとおり、被告製品のエアフロ-チャンバーと冷却プラグは、それぞれ支持部材に該当するから、構成要件FないしHを充足する
5 というためには、いずれの部材についても、個別に構成要件FないしHが
規定する凹部又は凸部を備える必要がある。イ これに対し、原告は、本件発明の課題は、タバコ充填物が移動することを抑止する支持部材を用いたタバコカートリッジを提供することであり、具体的には支持機能の提供並びに冷却機能及び吸い心地の向上にあるのであって、被告及び被告補助参加人が主張するような組立機械が把持しやすくするというものではない旨主張する。確かに、本件明細書において、本件発明の一部の実施形態においては、原告が指摘する冷却機能及び吸い心地の向上という効果があることが記載されているものの(【0050】ないし【0055】など)、これらいずれの実施形態も、組立機械が支持部材を把持しやすくなるという効果を有することが記載されていることからすれば、
(原告の主張)
する上記効果は、本件発明における一部の実施形態において発揮する副次的な効果にすぎないというべきであり、上記1⑵のとおり、本件発明の課題は組立機械が把持しやすい支持部材を提供することであるというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑶ 構成要件FないしHの充足性の有無
ア エアーフローチャンバー証拠(甲3、4、8、丙2)によれば、被告製品のエアーフローチャンバーは繊維が絡み合って形成されており、エアーフローチャンバーの軸方向に沿ってその周面部の全周に渡って陥没部及び隆起部が存在すると認められる。そうすると、原告が「凹部または凸部」と主張するエアーフローチャンバーの陥没部及び隆起部は、その「周面部の一部に周方向の全周に渡って設けられて」いるとはいえず、被告製品が構成要件Hを充足すると認めることはできない。
5 イ 冷却プラグ
証拠(甲3、4、8、丙2)によれば、被告製品の冷却プラグは繊維が絡み合って形成されているものであるものの、その軸方向に沿って複数の陥没部及び隆起部が存在するとは認められない。そうすると、冷却プラグには、「凹部または凸部」が存在しないから、被告製品が構成要件FないしHを充足すると認めることはできない。
⑷ したがって、被告製品は、構成要件FないしHを充足しない。
3 小括
以上によれば、被告製品が本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。
第4 結論
よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官澁 谷 勝 海裁判官本 井 修 平裁判官浅 川 浩 輝(別紙)被告製品目録・テリア ブラック サンシャイン メンソール
5 ・テリア ハイブリッド パール グリーン フルーツ
・テリア ハイブリッド パール スムース ミント・テリア サン パール・テリア オアシス パール・テリア リッチ レギュラー・テリア レギュラー・テリア スムース レギュラー・テリア バランスド レギュラー・テリア ウォーム レギュラー・テリア ルビー レギュラー・テリア ブラック メンソール・テリア メンソール・テリア ミント・テリア ブラック パープル メンソール・テリア パープル メンソール・テリア フュージョン メンソール・テリア ブラック ルビー メンソール・テリア ブラック イエロー メンソール・テリア イエロー メンソール・テリア ブラック トロピカル メンソール・テリア トロピカル メンソール・テリア ブライト メンソール・センティア ジューシー レッド・センティア ディープ ブロンズ・センティア ピュア ティーク
5 ・センティア バランスド ゴールド
・センティア バランスド イエロー・センティア スムース ゴールド・センティア クリア シルバー・センティア アイシー ブラック・センティア フロスト グリーン・センティア クール ジェイド・センティア フレッシュ エメラルド・センティア アイシー パープル・センティア フレッシュ パープル・センティア シトラス グリーン・センティア トロピカル イエロー以上(別紙)写真目録12以上(別紙)図面目録図1図2図3図4図5図6図7図8以上
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