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令和7(ネ)10087意匠権侵害・不正競争行為差止等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年6月24日
事件種別 民事
法令 意匠権
意匠法37条1項1回
キーワード 意匠権25回
侵害16回
差止5回
損害賠償3回
主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事件の概要 1⑴ 本件は、原告意匠の意匠権者である被控訴人(以下「原告」という。)が、 控訴人株式会社Camellia(以下「被告Camellia」という。) 及び控訴人株式会社Kоuken(以下「被告Kоuken」という。)の 被告商品を製造、販売等する行為は、原告意匠権を侵害し、不競法2条1項

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判決文

令和8年6月24日判決言渡

令和7年(ネ)第10087号 意匠権侵害・不正競争行為差止等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第33621号)

口頭弁論終結日 令和8年4月22日

判 決

控 訴 人 株式会社Camellia

控 訴 人 株式会社Kоuke n

上記両名訴訟代理人弁護士 辻 村 和 彦

被 控 訴 人 ヤ ー マ ン 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 小 川 憲 久

同 上 田 望 美

同補佐人弁理士 新 保 斉

主 文

1 本件各控訴をいずれも棄却する。

2 控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。2 上記の部分につき、被控訴人の請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要等(以下、特に断らない限り、略語は原判決の例による。)

1⑴ 本件は、原告意匠の意匠権者である被控訴人(以下「原告」という。)が、控訴人株式会社Camellia(以下「被告Camellia」という。)及び控訴人株式会社Kоuken(以下「被告Kоuken」という。)の被告商品を製造、販売等する行為は、原告意匠権を侵害し、不競法2条1項

5 1号所定の不正競争に該当するなどと主張して、被告らに対し、選択的に、意匠法37条1項、2項、又は、不競法3条1項、2項に基づき、被告商品の製造、販売等の差止め、並びに、被告商品及びその製造のための金型の廃棄を求めるとともに、選択的に、民法709条、又は、不競法4条に基づき、被告Camelliaにつき、2億4052万4409円及びこれに対する令和4年1月20日(訴状送達の日の翌日)から、被告Kоukenにつき、660万円及びこれに対する同日から各支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

⑵ 原審は、被告らによる被告商品の販売等は不競法2条1項1号所定の不正競争に該当するものの、被告らが被告製品の販売を終了していることから差止め等の必要性はない、原告の受けた損害の額については全体の3割の限度で不競法5条2項による推定が覆滅されるなどとして、原告の被告らに対する損害賠償請求を、被告Camelliaにつき、1億6447万2231円及びこれに対する令和6年7月31日(損害の算定期間の最後の日)から、被告Kоukenにつき、427万5131円及びこれに対する同日から各支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を求める限度で認容し、差止等請求を含むその余の請求をいずれも棄却した。被告らは、原判決中、被告ら敗訴部分を不服としてそれぞれ控訴を提起した。原告は、不服の申立てをしておらず、差止等請求の当否は当審における審理の対象でない。2 前提事実、争点、争点に関する当事者の主張は、次のとおり補充ないし補正し(なお、明白な誤記については、特に補正しない。以下同じ。)、3のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 事案の概要等」の2及び3(原判決3頁20行目から6頁4行目まで)並びに「第4 争点に関する当事者の主張」の1から5まで(同頁6行目から29頁15行目まで)及び7(30頁11行目から43頁2行目まで)に記載

5 のとおりであるから、これを引用する。

⑴ 原判決20頁10行目末尾を改行の上、次のとおり加える。「 また、商品の形態は、それが同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し(特別顕著性)、かつ、長期間にわたり継続的かつ独占的に使用され、又は短期間であっても効果的な宣伝広告等がされた結果、出所識別機能を獲得するとともに、需要者に広く認識された場合に(周知性)、不競法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当し得るものであるところ、特別顕著性は、当該商品の形態が周知性を獲得し得る識別標識としての適格性を有していること、及び、独占適応性を有しない商品の形態に独占による保護を与えないことを担保するために必要とされる要件であることや、周知性は、現実の商品の形態に対する需要者の認識に基づき形成されるものであることに照らすと、現実の商品の形態からの特定の形態の抽出は、現実の商品の形態から抽出された特定の形態が、需要者から見て識別標識となり得る程度に特徴的で目立ち、需要者の注意をひく部分であることのみならず、現実の商品から捨象された形態が、需要者から見てありふれた、あるいは目立たないもので、需要者の注意を引かない部分であることを踏まえたものでなければならない。」

⑵ 原判決20頁14行目の「被告ら主張特徴は、」の次に「本件特徴Vと不可分一体の部分であり(被告ら主張特徴⑤)、あるいは、装着型電気信号発生器付き美顔器という商品の機能に直接関連する部分であって(被告ら主張特徴①~④)、」を加える。

⑶ 原判決21頁13行目の「原告は、」の次に「需要者に訴求されているのは、被告ら主張特徴を含む商品全体の形態(デザイン)であるにもかかわらず、」を加える。

⑷ 原判決27頁6行目の「そして」を「原告商品の表示と被告商品のそれの類似性は、時と所を異にして離隔的に観察すべきである。そして」に改め、

5 10行目から11行目にかけての「取引者及び需要者において、」の次に「必ずしも原告商品の商品名やブランド名を正確に認識し記憶できるわけではないから、時と所を異にして商品に接した場合に、」を加える。

⑸ 原判決27頁15行目の「しかし、」の次に「需要者は、手に持つことなく、適切な位置に電気信号発生器による機能(EMS機能)を作用させられるかという観点から、原告表示に注目するところ、」を、16行目から17行目にかけての「目立たない箇所に係るものであり、」の次に「いずれも需要者に強い印象を与えるものではないし、」をそれぞれ加える。

⑹ 原判決28頁1行目の「価格の相違については」から2行目の「価格は強調されていないうえに」までを「価格の相違については、原告商品の紹介記事や宣伝広告において、必ずしも価格が表示されているわけではなく、表示されている場合でも、これが強調されているわけではない上」に改める。

⑺ 原判決28頁26行目の「これらの差異は、需要者の注目する部分に係る相違であって」を「特に、被告商品の電気信号発生器のスイッチ面にオレンジ色のボタンが配されていること(被告ら主張差異点④(不競法))は、需要者の注意をひき、強い印象を与えるものであって」に改める。

⑻ 原判決29頁8行目の「原告商品と被告商品は商品名が全く異なること」を「原告商品と被告商品は商品名が全く異なる上、原告商品の商品名は、市場において周知された原告のブランド名であり、被告商品の商品名も、宣伝広告等により一定の知名度を獲得していること」に、9行目から10行目にかけての「価格が全く異なること」を「価格が全く異なり、これにより、原告商品は、相対的に高機能で高価格の製品と需要者に認識される一方、被告商品は、相対的に機能が簡易で低価格の製品と認識されていること」にそれぞれ改め、12行目の「いないこと、」の次に「被告商品は、インターネットを通じてのみ販売されるところ、需要者は、何らかの媒体や商品の比較サイトを見て、被告商品を購入する強い動機を形成し、あるいは、インターネ

5 ット上で美顔器等を検索し、同種商品の一覧、商品の画像、商品名、ブランド名、価格等を検討した上で、被告商品を購入するという取引の実情があること」を加え、13行目の「出所を混同することは考え難い」を「出所を誤認混同することは考え難く、現に、原告商品との誤認混同は生じていない」に改める。3 当審における当事者の主張

⑴ 原告意匠権の存在について(被告らの主張)意匠権の存続期間満了後、当該意匠権の存在により生じた独占状態に基づき獲得又は維持された特別顕著性及び周知性のみを根拠として、不競法2条1項1号による保護を受けられるとするのは、意匠権の存続期間満了後も、

第三者による当該意匠の利用が妨げられることになって、意匠の保護制度の

趣旨に反する。そして、① 意匠権の存続期間中に、当該意匠権の存在により生じた独占状態に基づき獲得又は維持された特別顕著性及び周知性のみを根拠として、商品の形態の不競法2条1項1号所定の「商品等表示」該当性を認め一旦これを保護すると、当該意匠権の存続期間満了時に突如その保護が受けられなくなって不合理であること(一方、この不合理を回避するために保護を受けられるとすると、当該意匠権の存続期間満了後も、第三者による当該意匠の利用が妨げられることになる。)、② 意匠権の存続期間中の、商品の形態が同一又は類似する他人の商品の排除は、意匠権の行使によることで足り、当該商品の形態の同号所定の「商品等表示」該当性を認めてこれを保護する必要性はなく実益に乏しいことからすると、上記の理は、意匠権の存続期間中においても妥当するというべきである。本件において、原告表示は、原告意匠を利用するものとして、原告意匠権の権利範囲に属するものを含むことになり、これを不競法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当するとして保護すべきでない。

5 (原告の主張)仮に、意匠権の存続期間満了後は、当該意匠権の存在により生じた独占状態に基づき獲得又は維持された特別顕著性及び周知性のみを根拠として、不競法2条1項1号による保護を受けることはできないと解するにしても、この理は、当該意匠権の存続期間中においては妥当しない。

⑵ 不競法5条2項による推定の覆滅事由について(被告らの主張)不競法2条1項1号所定の不正競争に該当することを理由に損害賠償請求をする場合において、他人の商品等と混同が生じていないときは、当該不正競争と損害との間に相当因果関係はない。また、他人の商品等と混同が生じたことによる損害の額は、他人の商品等と混同が生ずるおそれの程度に左右される。したがって、「他人の商品等と混同を生ずるおそれの程度」は、不競法5条2項による推定を覆滅する事由になるといえ、本件における「他人の商品等と混同を生ずるおそれの程度」は極めて小さいことや、被告商品において需要者に訴求されているのはEMS機能であり、本件特徴ⅠないしⅤは被告商品の顧客吸引力に寄与していないことからすると、上記推定の大幅な覆滅を認めるべきである。(原告の主張)不競法5条2項による推定は、不正競争によって営業上の利益を侵害された者(被侵害者)は、当該不正競争がなければ、侵害者が侵害行為によって受けた利益の額を、営業上の利益として受けられたはずであるという経験則を基礎とするものである。したがって、上記推定を覆滅する事由は、被侵害者の商品と侵害品との間に代替性がないことなど、かかる経験則が妥当しない事情というべきであり、「他人の商品等と混同を生ずるおそれの程度」は、これに該当しない。

5 第3 当裁判所の判断1 当裁判所も、原告の被告らに対する損害賠償請求は、原判決主文記載の限度で理由があると判断する。その理由は、次のとおり補充ないし補正し、2のとおり当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第5 当裁判所の判断」の1から4まで(原判決43頁4行目から69頁5行目まで)及び6(同頁19行目から76頁14行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

⑴ 原判決54頁22行目から23行目にかけての「その対象範囲が広範であり」を「その対象範囲が広範である上、需要者に訴求されているのは、被告ら主張特徴を含む商品全体の形態であるにもかかわらず」に改める。

⑵ 原判決55頁7行目の「被告ら主張の特徴については、」を「被告ら主張特徴については、原告商品の形態の特別顕著性及び周知性に関して検討され、あるいは、被告商品の形態の」に、9行目の「判断されるべきものであるから」から10行目の「検討する」までを「判断されるべきものである」にそれぞれ改める。

⑶ 原判決65頁13行目から14行目にかけての「最高裁昭和57年(オ)

第658号同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082

頁、」を削る。

⑷ 原判決66頁2行目の「、あるいはその営業につき主体が同一である」を削り、3行目末尾に「そして、このことは、原告商品の形態と被告商品のそれを、時と所を異にして離隔的に観察すると、一層明らかである。」を加える。

⑸ 原判決66頁13行目から14行目かけての「原告商品は、電気信号発生器がマスクに嵌め込まれた状態で広告宣伝されており」を「原告商品は、電気信号発生器がマスクに嵌め込まれた状態で顔面に装着して使用するものであり、広告宣伝においても、この使用状態を示す写真が多く用いられていて」

5 に、19行目から20行目にかけての「認識するものとはいえない」を「直ちに認識するものとはいえないし、電気信号発生器が取り外し可能であることを認識した需要者に、電気信号発生器を取り外したときの嵌合部の形状の差異が強い印象を与えるものともいえない」にそれぞれ改める。

⑹ 原判決67頁4行目から5行目にかけての「電気信号発生器を付けた状態では」を「実際の使用状態である電気信号発生器を付けた状態では」に改め、6行目の「認識することはできないし、」の次に「認識し得たとしても、これが需要者に強い印象を与えるものとはいえない。さらに、」を加える。

⑺ 原判決68頁13行目の「原告商品と被告商品の形態の差異は、」の次に「電気信号発生器による美容効果、被告ら主張差異点①~④の位置等を考慮しても、」を加える。

⑻ 原判決68頁23行目の「ロゴは、」の次に「原告商品及び被告商品の周知性ないし知名度、ロゴの表示状況を踏まえても、」を加える。

⑼ 原判決69頁1行目の「解されるから」を「解される上、被告らのいう、原告商品が相対的に高機能で高価格の製品と需要者に認識される一方、被告商品は相対的に機能が簡易で低価格の製品と認識されていることを認めるに足りる的確な証拠もなく」に改める。

⑽ 原判決69頁5行目末尾に「被告らは、被告商品の取引の実情について縷々主張するが、かかる取引の実情があるからといって、前記判断は覆らない。」を加える。2 当審における当事者の主張に対する判断

⑴ 原告意匠権の存在について被告らは、原告意匠権の存続期間中において、原告意匠権の存在により生じた独占状態に基づき獲得又は維持された特別顕著性及び周知性のみを根拠として、不競法2条1項1号による保護を受けられるとすべきでない旨の主張をする。

5 しかしながら、意匠権の存続期間中に、意匠権者が登録意匠と同一又は類似する意匠を独占的に利用することができるのは当然であり、意匠権者が、意匠権の存続期間中に不競法2条1項1号による保護を受けることにより、登録意匠と同一又は類似する意匠を独占的に利用し得ることになるからといって、意匠の保護制度の趣旨に反するわけではない。被告らの主張は、採用することができない。

⑵ 不競法5条2項による推定を覆滅する事由について被告らは、「他人の商品等と混同を生ずるおそれの程度」は、不競法5条2項による推定を覆滅する事由になる旨の主張をする。しかしながら、不正競争によって営業上の利益を侵害された者(被侵害者)が、その損害の額を立証するのは必ずしも容易でないことから、侵害者が侵害行為によって受けた利益を損害の額と推定することにより、被侵害者の損害の額の負担を軽減する不競法5条2項の趣旨にかんがみると、同項による推定を覆滅する事由は、原判決の説示するとおり、① 市場の非同一性、②市場における競合品の存在、③ 侵害者の営業努力、④ 被侵害者の商品と侵害品の形態以外の特徴等の事情をいい、「他人の商品等と混同を生ずるおそれの程度」は、これに該当しないというべきである。被告らは、被告商品において需要者に訴求されているのは、EMS機能であり、本件特徴ⅠないしⅤは被告商品の顧客吸引力に寄与していない旨の主張もするが、被告商品のEMS機能が、原告商品と異なる顧客吸引力を有し、被告商品の販売に寄与していることを認めるに足りる的確な証拠はない。被告らの主張は、採用することができない。3 以上によれば、原判決は相当であり、被告らの本件各控訴は理由がないから、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官森 冨 義 明裁判官菊 池 絵 理裁判官頼 晋 一

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