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令和6(ワ)70293損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 令和8年9月4日
事件種別 民事
当事者 原告Aⅰ
被告スカパーJSAT株式会社 株式会社スカパー・エンターテイメント ディスカバリー・ジャパン株式会社 株式会社インタラクティーヴィ
法令 著作権
著作権法19条2項3回
著作権法21条1回
キーワード 許諾53回
分割19回
侵害18回
損害賠償6回
ライセンス6回
実施2回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、外国映画である別紙映画目録記載の各映画(以下、番号に応じて 「本件映画1」及び「本件映画2」といい、これらを併せて「本件各映画」と いう。 )を翻訳した日本語字幕(以下、本件映画1の日本語字幕を「本件字幕

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判決文

令和8年9月4日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和6年(ワ)第70293号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 令和8年6月8日

判 決

原 告 Aⅰ

同訴訟代理人弁護士 小 倉 秀 夫

被 告 スカパーJSAT株式会社

(以下「被告スカパーJSAT」という。)

被 告 株式会社スカパー・エンターテイメント

(以下「被告スカパー・エンターテイメント」という。)

上記両名訴訟代理人弁護士 平 田 憲 人

渡 邉 峻

三 好 豊

被 告 ディスカバリー・ジャパン株式会社

(以下「被告ディスカバリー・ジャパン」という。)

同訴訟代理人弁護士 殿 村 桂 司

井 上 聡

カオ小池ミンティ

林 嵩 之

同訴訟復代理人弁護士 伊 藤 菜 月

被 告 株式会社インタラクティーヴィ

(以下「被告インタラクティーヴィ」という。)

同訴訟代理人弁護士 田 島 佑 規

被告ら補助参加人 株式会社フィールドワークス

(以下「補助参加人フィールドワークス」という。)

同訴訟代理人弁護士 大 栗 悟 史

池 田 真 理

被告ら補助参加人 Bⅰ

(以下「補助参加人Bⅰ」という。)

同訴訟代理人弁護士 増 子 和 毅

被告ら補助参加人 株式会社ニュージャパンフィルム

(以下「補助参加人ニュージャパンフィルム」という。)

同訴訟代理人弁護士 田 中 伸 一 郎

外 村 玲 子

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用(補助参加により生じた費用を含む。)は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告らは、原告に対し、連帯して4853万0240円及びこれに対する令和3年3月31日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

5 1 事案の要旨本件は、外国映画である別紙映画目録記載の各映画(以下、番号に応じて「本件映画1」及び「本件映画2」といい、これらを併せて「本件各映画」という。)を翻訳した日本語字幕(以下、本件映画1の日本語字幕を「本件字幕1」、本件映画2の日本語字幕を「本件字幕2」といい、これらを併せて「本件各字幕」という。)の著作者である原告が、被告スカパーJSAT、被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィ並びにジュピターエンタテインメント株式会社(以下「ジュピターエンタテインメント」という。)が共同して本件各字幕を付した本件各映画を放送等した行為により原告の本件各字幕に係る著作権(公衆送信権)が侵害され、また、その際、本件各字幕について原告の氏名が表示されていなかったことにより著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたと主張して、上記被告ら及び吸収分割によりジュピターエンタテインメントを承継した被告ディスカバリー・ジャパンに対し、連帯して、共同不法行為に基づく損害賠償金4853万0240円(著作権侵害に係る損害4453万0240円及び著作者人格権侵害に係る損害400万円)及びこれに対する令和3年3月31日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

⑴ 当事者等ア 原告は、外国映画の日本語字幕翻訳を業とする者である。イ 被告スカパーJSATは、放送・配信事業や放送・配信、通信等に関するプラットフォーム事業などを目的とする株式会社であり、放送法における衛星基幹放送のプラットフォームとして「スカパー!衛星基幹放送」及び有線一般放送に係るプラットフォームとして「スカパー!プレミアムサービス光」という名称のプラットフォームを運営するほか、インターネッ

5 ト配信に係る「スカパー!オンデマンド」という名称の配信サービスを行っている。(甲158)ウ 被告スカパー・エンターテイメントは、放送事業、人工衛星の利用による映像ソフト及びこれに関連する各種データ等の配給・販売などを目的とする株式会社であり、衛星一般放送に係るプラットフォームとして「スカパー!プレミアムサービス」という名称のプラットフォームを運営している。エ 被告ディスカバリー・ジャパンは、ドキュメンタリー・映画・ドラマ・その他エンターテイメント番組(映像・音声を含む)の供給事業及び放送事業などを目的とする株式会社である。オ 被告インタラクティーヴィは、放送法に基づく衛星基幹放送事業、衛星放送等の放送媒体を通じて行う通信販売事業などを目的とする株式会社である。カ 補助参加人フィールドワークスは、情報提供サービス業及び情報処理サービス業などを目的とする株式会社である。キ 補助参加人Bⅰは、Cⅰ(以下「Cⅰ」という。)と共同して、シネ・マイスター・エスエルシー(以下「シネ・マイスター」という。)の屋号で字幕制作等の業務を行っていた者である。ク 補助参加人ニュージャパンフィルムは、映画及びテレビジョンフィルムの国内販売及び輸出入業務、映像の日本語吹替版・字幕版制作及びDVD制作進行業務などを目的とする株式会社である。ケ ジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」との名称で、「スカパー!衛星基幹放送」、「スカパー!プレミアムサービス」、「スカパー!プレミアムサービス光」、「スカパー!オンデマンド」等のプラットフォームを用いて映画等を放送するチャンネル運営事業を行っていた。

⑵ 本件各映画

5 本件映画1は、「ゾンビ ディレクターズカット版」とのタイトルが付され、平成6年に日本の劇場で公開された映像作品(本編139分・英語)であり、本件映画2は、「ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版」とのタイトルが付され、昭和54年に日本の劇場で初公開された映像作品(本編119分・英語)である。(甲1、2)

⑶ 本件各字幕の制作ア 補助参加人フィールドワークスは、シネ・マイスターに対して本件各映画の日本語字幕の制作を委託した。補助参加人Bⅰは、平成21年12月9日、原告に対し、本件映画1の字幕翻訳の制作を依頼し、原告は、同月10日、これを承諾した。また、補助参加人Bⅰは、平成21年12月13日、原告に対し、本件映画2の字幕翻訳の制作を追加で依頼し、原告は、同日、これを承諾した。(甲4、5、8、9、202、丙A2、丙B2、3、6)イ 原告は、本件各字幕を制作し、平成22年3月31日、補助参加人Bⅰに納品した。その後、補助参加人Bⅰは、補助参加人フィールドワークスに対し、原告から納品された本件各字幕を付した本件各映画のデータを納品した。(甲177ないし190)なお、本件各字幕を放送等に利用することができる範囲については、後述のとおり争いがある。

⑷ 本件各字幕を付した本件各映画の放送の経緯本件各字幕が付された本件各映画は、以下の経緯により、「ムービープラス」のチャンネルを通じて放送等された。その際、本件各字幕について原告の氏名は表示されていなかった。ア 補助参加人フィールドワークスは、平成29年7月25日、補助参加人ニュージャパンフィルムに対し、本件各字幕を付した本件各映画の放送に

5 ついて、第三者に許諾、販売する権利を許諾した。補助参加人ニュージャパンフィルムは、平成29年7月31日、ジュピターエンタテインメントに対し、期間を同年8月1日から平成30年1月31日までとし、同社が運営する「ムービープラス」のチャンネルにおいて、本件各字幕を付した本件各映画を放送(CSデジタル放送並びにケーブルテレビ局(IPTV事業者を含む。)及びSMATV(業務施設に対する配信))する権利を許諾した。また、補助参加人ニュージャパンフィルムは、令和2年9月30日、ジュピターエンタテインメントに対し、期間を同年10月1日から令和3年3月31日までとし、同社が運営する「ムービープラス」において、上記と同様の条件で本件字幕1を付した本件映画1を放送する権利を許諾した。(乙B1、2、乙C19の2、丙C1ないし3)イ ジュピターエンタテインメントは、平成21年9月10日、株式会社スカパー・ブロードキャスティング(以下「スカパー・ブロードキャスティング」という。)との間で、「スカパー・プレミアムサービス」のプラットフォームにおいて「ムービープラス」チャンネルを放送することに係るチャンネル供給基本契約(以下「本件供給基本契約1」という。)を締結した。被告スカパー・エンターテイメントは、平成28年12月1日付け吸収分割により、スカパー・ブロードキャスティングの地位を承継し、「スカパー・プレミアムサービス」上の同チャンネルにおいて、平成29年8月から平成30年1月頃までの間に本件字幕2を付した本件映画2を、令和3年4月頃に本件字幕1を付した本件映画1をそれぞれ配信した。(乙A1、5)ウ ジュピターエンタテインメントは、平成18年4月1日、株式会社オプティキャスト(以下「オプティキャスト」という。)との間で、被告スカパーJSATが運営するプラットフォームにおいて「ムービープラス」チャ

5 ンネルを放送することに係る番組供給基本契約(以下「本件供給基本契約2」という。)を締結した。被告スカパーJSATは、平成26年4月1日付け吸収合併によりオプティキャストの地位を承継し、「スカパー!プレミアムサービス光」上の同チャンネルにおいて、平成29年8月から平成30年1月頃までの間に本件字幕2を付した本件映画2を、令和3年4月頃に本件字幕1を付した本件映画1をそれぞれ配信した。(乙A2、6)エ ジュピターエンタテインメントは、平成24年3月27日、被告スカパーJSATとの間で、「スカパー!オンデマンド」において「ムービープラス」チャンネルを配信することに係るIP通信網向け配信サービスに関わる契約(以下「本件供給基本契約3」という。)を締結した。被告スカパーJSATは、本件供給基本契約3に基づき、「スカパー!オンデマンド」上の同チャンネルにおいて、平成29年8月から平成30年1月頃までの間に本件字幕2を付した本件映画2を、令和3年4月頃に本件字幕1を付した本件映画1をそれぞれ配信した。(乙A3)オ 被告インタラクティーヴィは、平成14年7月1日、ジュピターエンタテインメントから「スカパー!衛星基幹放送」に係る放送業務の委託を受け、同プラットフォーム上の「ムービープラス」チャンネルにおいて、平成29年8月12日及び同年10月31日に本件字幕2を付した本件映画2を、令和2年10月7日から令和3年3月31日にかけて本件字幕1を付した本件映画1をそれぞれ配信した。(乙B3、5)

⑸ 被告ディスカバリー・ジャパンによる「ムービープラス」運営事業の承継被告ディスカバリー・ジャパンとジュピターエンタテインメントは、令和5年8月1日、ジュピターエンタテインメントが「ムービープラス」の名称で行っていた映画等の放送に係るチャンネル運営事業を被告ディスカバリー・ジャパンに承継させることなどを内容とする吸収分割契約(乙C1。以下、同契約に係る吸収分割を「本件吸収分割」という。)を締結した。

5 ⑹ 本件訴訟に至る経緯ア 原告は、令和6年2月27日、被告ディスカバリー・ジャパン及び被告インタラクティーヴィに対し、本件字幕1に関する原告の著作権及び著作者人格権侵害による損害の賠償をすること、また、本件映画2において本件字幕2が使用されているのであればその分についても原告の著作権及び著作者人格権侵害による損害の賠償をすることを催告した(被告スカパーJSATに対する催告の有無には争いがある。)。イ 原告は、令和6年7月5日、本件訴えを提起した。

⑺ 消滅時効の援用被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントは、令和7年2月25日の本件第2回弁論準備手続期日において、被告インタラクティーヴィ及び被告ディスカバリー・ジャパンは、同年12月3日の本件第6回弁論準備手続期日において、それぞれ消滅時効を援用する旨の意思表示をした。3 争点

⑴ ジュピターエンタテインメントによる公衆送信の有無(争点1)

⑵ 過失の有無(争点2)ア 被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントの過失の有無(争点2-1)イ ジュピターエンタテインメントの過失の有無(争点2-2)ウ 被告インタラクティーヴィの過失の有無(争点2-3)

⑶ 共同不法行為の成否(争点3)

⑷ 被告ディスカバリー・ジャパンの債務承継の有無(争点4)

⑸ 公衆送信及び氏名表示に関する許諾の有無(争点5)ア 公衆送信に対する許諾の有無(争点5-1)イ 氏名表示をしないことに対する許諾の有無(争点5-2)

5 ウ 著作権法19条2項の適用の有無(争点5-3)

⑹ 消滅時効の成否(争点6)

⑺ 損害の発生及びその額(争点7)4 争点に関する当事者の主張

⑴ 争点1(ジュピターエンタテインメントによる公衆送信の有無)について(原告の主張)ジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」の運営者として、本件各映画を公衆送信させる前提で、被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィに送信しているところ、被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィは、ジュピターエンタテインメントから見て個人的結合関係がない「不特定の者」に当たる。したがって、ジュピターエンタテインメントが、本件各字幕を付した本件各映画のデータを被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィに送信したことは公衆送信に当たる。仮に、上記被告らへの本件各映画のデータ送信が公衆送信に該当しないとしても、ジュピターエンタテインメントは、当時、被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィが「ムービープラス」の名の下に放送する番組の番組表を作成しており、「ムービープラス」の放送内容を決定していたものであるから、ジュピターエンタテインメントは、被告スカパー・エンターテイメントや被告インタラクティーヴィと共同して、本件各字幕を付した本件各映画を公衆送信したというべきである。(被告ディスカバリー・ジャパンの主張)「公衆送信」とは、「直接公衆」に受信させるものでなければならず、ポイント・ツー・ポイントの送信は公衆が対象ではないので公衆送信には含まれない。ジュピターエンタテインメントによる被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィへの本件各映画のデータの送信は、「直接

5 公衆」に受信させるものではないから、「公衆送信」に該当しない。また、被告ディスカバリー・ジャパンは、本件各字幕を付した本件各映画の放送及び自動公衆送信には一切関与していない。

⑵ 争点2-1(被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントの過失の有無)について(原告の主張)被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントが、他の番組供給者から送られてきた番組をそのまま再送信することを業とするものであったとしても、番組放送前にエンドロールがどのようなものであるかについて当該番組供給者に照会して知ることは可能であること、自身の行う放送に関する権利処理について責任を持つためにも当該番組供給者から送られてくる番組の権利処理について事前に調査すべきであること、特に本件各映画は、外国映画であり、字幕翻訳者との間の権利処理が適正に行われていない可能性があることは容易に予測することができた。それにもかかわらず、本件各字幕を付した本件各映画を漫然とその放送設備を用いて放送したのであるから、過失が認められる。被告ら及び補助参加人らが主張する表明保証は、表明保証違反により生じた損害を保証者に補塡させることに意義があるものであって、表明保証により、表明された事実が実際にあることにはならないから、表明保証がされている事実について疑義を生じさせないというものではない。よって、表明保証は、過失を否定する事情とはならない。(被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントの主張)被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントが提供するプラットフォームにおいて、各チャンネルで放送する番組を選択するのはジュピターエンタテインメント等の各チャンネルを運営している番組供給者である。被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントは、放

5 送番組を選択しておらず、放送の中止や番組の内容の改変等は禁止されており、番組供給者から番組を受領すると同時に機械的に再送信しているにすぎないから、エンドロール等についてクレジット表示の確認を行うことは不可能である。上記に述べた被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントと番組供給者との関係からすれば、被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントは、侵害の有無について調査確認する注意義務を負わないというべきであり、仮に注意義務を負うとしても、その程度は各チャンネルを運営している番組供給者に比して低いというべきである。本件においては、本件各字幕について著作権や著作者人格権等の処理が適切になされているかについて疑義を生じさせる特段の事情も存在しなかったのであるから、被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントに過失はない。

⑶ 争点2-2(ジュピターエンタテインメントの過失の有無)について(原告の主張)ジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」に係る番組供給者として、衛星放送事業者に対して「一切の権利の処理」を行った状態で番組を供給する立場にあったところ、日本語字幕が組み入れられている番組を供給するに当たり、字幕翻訳についていかなる権利処理がされているのかを確認する義務があったし、本件各字幕を付した本件各映画のようにエンドロール等に字幕翻訳者の氏名が表示されていなかった場合、ライセンサーに対し、氏名表示についてどのような権利処理がなされているのかを確認する義務があった。それにもかかわらず、ジュピターエンタテインメントは、その確認を怠り、漫然と被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントに供給したのであるから、過失が認められる。

5 (被告ディスカバリー・ジャパンの主張)被告らのように映画の制作自体には関与しておらず、制作された映画のライセンスの商流のみに関与した業者においては、映画制作の過程で権利処理が適切にされていることを前提に、当該映画の制作者から特に指定がない限り提供を受けた映画をそのままの状態で放送するのが一般的である。また、外国映画を字幕翻訳付きで放送する際、字幕翻訳者の氏名が表示されないケースは相当数存在しており、字幕翻訳者の氏名表示が一般的とはいえないことからすれば、本件各映画のライセンスの商流のみに関与したジュピターエンタテインメントが、補助参加人ニュージャパンフィルムから提供を受けた本件各映画に字幕翻訳者の氏名が表示されていなかったとしても、氏名表示権に係る権利処理が適切になされた結果、字幕翻訳者から氏名表示の意向がなかったからだと考えるのが自然であり、ジュピターエンタテインメントにおいて、氏名表示権に係る権利処理について「疑義を生じさせる特段の事情」はなかった。さらに、ジュピターエンタテインメントは、その親会社であるJCOM株式会社からの指導に基づき、映画の放映権の許諾を得るに当たっては、権利処理及びその保証が契約書面上確認できない限り契約を締結しないという運用方針を採り、補助参加人ニュージャパンフィルムから本件各映画の放送に関して日本語字幕も含めた権利処理が完全にされていることについて保証を受け、本件各映画に係る放映権の許諾を得ている。したがって、ジュピターエンタテインメントにおいて、本件各字幕に関する著作権及び著作者人格権の処理状況について補助参加人ニュージャパンフィルム及び補助参加人フィールドワークスに問合せを行ったとしても、権利処理は全て完了している旨の回答がされることは明らかであり、本件各字幕に関する著作権及び氏名表示権の侵害が認められるとしても、ジュピターエンタテインメントにおいてその結果を回避することは不可能であった。

5 これらのことからすれば、ジュピターエンタテインメントに過失は認められない。

⑷ 争点2-3(被告インタラクティーヴィの過失の有無)について(原告の主張)被告インタラクティーヴィは、本件各字幕を付した本件各映画を放送するに当たり、本件各映画に組み込まれた著作物全てについて、放送することの許諾を著作権者から得ておく必要があった。このことは、権利処理をジュピターエンタテインメントが行っている場合においても変わらない。それにもかかわらず、被告インタラクティーヴィは、ジュピターエンタテインメントが本件各映画について適切に権利処理をしたかどうかを確認することなく漫然と放送しており、過失がある。被告ら及び補助参加人らが主張する表明保証は、表明保証違反により生じた損害を保証者に補塡させることに意義があるものであって、表明保証により、表明された事実が実際にあることにはならないから、表明保証がされている事実について疑義を生じさせないというものではない。よって、表明保証は、過失を否定する事情とはならない。(被告インタラクティーヴィの主張)膨大な権利者が存在する映画において、その放送許諾を受ける際に、特段の疑義を生じさせる事情がないにもかかわらず、映画に含まれる全ての要素について逐一、権利処理の有無を確認することは、およそ現実的でなく不可能である。また、映画が衛星放送等において放送される際の商流には極めて多数の関係者が介在するところ、自らの契約相手に対し、当該商流における全ての権利処理に関する契約書等の写しを徴収するなどということは多大なコストと手間を要するものであり全く現実的ではない。そのため、専門事業者から権利処理が適切にされていることの保証と共に、

5 映画の放送許諾を受け、許諾元から提供された映像をそのまま放送することが業界慣習上広く行われている。本件では、少なくとも映画及びテレビ映画の国内販売及び版権輸入、外国映画の日本語吹替版・字幕版制作などの業務において優に50年以上の実績がある専門業者の補助参加人ニュージャパンフィルムが、放映権の許諾を行うに当たり、「放映権に関し必要な全ての権利を適法に取得していること」や「日本語字幕スーパー版の翻訳二次使用について、当該権利者に対する権利処理が、自身の責任と負担において既に完全になされていること」を明確に保証している。また、外国映画の日本語字幕版において、字幕翻訳の作成者の氏名がクレジット表示されていなければ、単に氏名不表示の要請ないし同意があったのだと認識するのが通常であり、このような事由は、字幕翻訳作成者の意向を確認していない可能性が高いなどといった疑義を生じさせる特段の事情となるものではない。したがって、被告インタラクティーヴィに過失は認められない。

⑸ 争点3(共同不法行為の成否)について(原告の主張)「ムービープラス」の名の下に行われる放送においては、ジュピターエンタテインメントが、どの映画をいつ放送するかに係る番組表を作成し、放送する番組の詳細(クレジット表示をどうするかを含む。)を最終的に決定する権限を有し、番組データを被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィが保有する放送用機材に送信し、被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィが同放送用機材で公衆送信をしている。また、被告インタラクティーヴィや被告スカパー・エンターテイメントとの視聴契約は被告スカパーJASTを代理人として行うものとされている。上記4社の関係からすれば、被告スカパー・エンターテイメント及び被告インタラクティーヴィが保有する放送用機材で行われる公衆送信は、ジュ

5 ピターエンタテインメントと被告スカパー・エンターテイメント、被告インタラクティーヴィ及び被告スカパーJASTが共同して行っているとみるべきである。(被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントの主張)被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントが、自ら以外の被告の行為について、全部連帯責任を負うにふさわしい程度の関連共同性は認められない。(被告インタラクティーヴィの主張)被告インタラクティーヴィは、「スカパー!衛星基幹放送」における「ムービープラス」の放送以外に関与しておらず、それ以外での本件各字幕を付した本件各映画の放送・配信に係る他の被告らの行為について全部連帯責任を負うにふさわしい程度の関連共同性は存在しない。(被告ディスカバリー・ジャパンの主張)上記⑴(被告ディスカバリー・ジャパンの主張)のとおり、ジュピターエンタテインメントは、公衆送信をしていない。また、放送を行うためには、その種類に応じて、放送法等における各種手続を履践する必要があるから、番組表の作成や番組データの提供のみをもって放送を共同したと評価することや、放送を幇助ないし教唆したものと評価することはできない。

⑹ 争点4(被告ディスカバリー・ジャパンの債務承継の有無)について(原告の主張)ア ジュピターエンタテインメントによる著作権侵害、著作者人格権侵害に基づく損害賠償債務は、被告ディスカバリー・ジャパンが承継した。イ 吸収分割契約について被告ディスカバリー・ジャパンとジュピターエンタテインメントとの間の本件吸収分割に係る契約において、被告ディスカバリー・ジャパンが承

5 継する流動負債として未払放映権が含まれている。「未払放映権」というのは独自の用語なのでその意味するところは必ずしも明らかではないが、これが流動負債として計上されていることに鑑みれば、既に放映した番組について著作物使用料等に係る債務を指すものと理解することができ、それは使用料相当損害金等をも含むと解するのが相当である。ウ 原告が格別の催告を受けていないこと吸収分割会社であるジュピターエンタテインメントに対し不法行為債権を有していた原告は、会社法780条1項2号により異議を述べることができる吸収分割会社の債権者に当たるところ、本件吸収分割について、会社法789条2項に定める各別の催告を受けていない。そのため、原告は、吸収分割承継株式会社である被告ディスカバリー・ジャパンに対し、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。エ 本件吸収分割が債権者を害することを知りながら行われたものであること本件吸収分割では、ジュピターエンタテインメントは、本件吸収分割の効果が生じた後、清算をすることが最初から予定されていたことから、被告ディスカバリー・ジャパンに承継されないジュピターエンタテインメントの債務の債権者は、債権の弁済を受ける当てがなく、害されることが明らかであり、このことは被告ディスカバリー・ジャパンも当然知っていた。そのため、仮に、原告が残存債権者に該当するとしても、被告ディスカバリー・ジャパンに対し、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。オ 会社法22条類推適用ジュピターエンタテインメントが原告に対して負っていた債務は、「ムー

5 ビープラス」の事業によって生じた著作権侵害及び著作者人格権侵害に基づくものであるところ、本件吸収分割では、「ムービープラス」という名称が、被告スカパーJSAT等が提供するプラットフォームにおける映画専門チャンネルの事業主体を表す名称として使用されているから、被告ディスカバリー・ジャパンは、会社法22条類推適用により、ジュピターエンタテインメントが「ムービープラス」の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。(被告ディスカバリー・ジャパンの主張)ア 被告ディスカバリー・ジャパンとジュピターエンタテインメントとの間の本件吸収分割では、令和5年8月1日以前に生じた、又は発生原因を有する「ムービープラス」に関するジュピターエンタテインメントの不法行為に基づく損害賠償債務が、被告ディスカバリー・ジャパンへの承継の対象から明確に除外されている。イ 未払放映権に損害賠償債務が含まれないこと未払放映権は、ジュピターエンタテインメントが、コンテンツの放映権を取得するに当たり取得先に対して負った契約上の支払債務を意味しており、不法行為に基づく損害賠償債務を含むものではない。ウ 原告に対する格別の催告は不要であることジュピターエンタテインメントは、本件吸収分割の効力発生日である令和5年8月1日の時点で、原告に対する不法行為債務の存在を認識していなかったことから、原告が各別の催告を受けなかったものに該当しない。エ 債権者を害することを知っていたとはいえないこと上記ウのとおり、ジュピターエンタテインメントは、本件吸収分割の効力発生日である令和5年8月1日の時点で、原告に対する不法行為債務の存在を認識していなかったのであるから、「残存債務者・・・を害することを知って吸収分割をした」ものとは認められないし、被告ディスカバリ

5 ー・ジャパンにおいても、そのような認識は当然有していなかった。オ 会社法22条類推適用の基礎を欠くこと「ムービープラス」という名称は、ジュピターエンタテインメントが運営していたチャンネル事業のうちの一つにすぎず、事業主体を表示するものとして用いられていたわけではない。また、被告ディスカバリー・ジャパンも、「ムービープラス」を含め合計7個のチャンネルを運営しており、「ムービープラス」という名称を、事業主体を表示するものとして用いた事実もない。そのため、本件は会社法22条類推適用の前提を欠くものである。

⑺ 争点5-1(公衆送信に対する許諾の有無)について(被告ら及び補助参加人らの主張)補助参加人Bⅰは、平成21年12月28日、原告との間で、本件各字幕に関し、複製、上映、公衆送信、頒布等について、許諾する旨の合意(以下「「オールライツ・クリア」の合意」ともいう。)をした。仮に、明示的な「オールライツ・クリア」の合意がなかったとしても、①Cⅰは、補助参加人フィールドワークスからの平成21年12月28日の依頼に基づき、補助参加人Bⅰに対して、「オールライツ・クリア」で原告と交渉するように指示していたこと、②原告は、本件各字幕の翻訳後に、「チキン・オブ・ザ・デッド」という名称の映画につき、同じ翻訳料金で「オールライツ・クリア」の合意をして字幕翻訳を行っていること、③原告は、本件各字幕の制作後、補助参加人Bⅰから、本件字幕1を付した本件映画1がテレビ放送される旨の連絡を受けたり、本件各字幕を付した本件各映画がDVDで販売されるなどの連絡を受けたりした際、何ら請求をしていなかったことからすると、原告と補助参加人Bⅰは、「オールライツ・クリア」について黙示の合意が成立している。(原告の主張)

5 原告は、本件各字幕の依頼を受けた際、本件各字幕は、ゆうばり映画祭でのビデオ上映のために利⽤されるものと認識しており、本件各字幕を付した本件各映画がDVDに収録されて販売される場合は、別途利⽤許諾の確認と相応の著作物利⽤料が⽀払われると理解していたのであり、依頼を受けた時点で、「オールライツ・クリア」の合意をする理由はなかった。原告と補助参加人Bⅰとの間には、「オールライツ・クリア」の合意につき書面等の客観的な証拠はない。また、被告らが主張する上記①ないし③は、いずれも「オールライツ・クリア」に係る黙示の合意の根拠となるものではない。

⑻ 争点5-2(氏名表示をしないことに対する許諾の有無)について(被告ら及び補助参加人らの主張)上記⑺(被告ら及び補助参加人らの主張)のとおり、原告は補助参加人Bⅰとの間で「オールライツ・クリア」の合意をしているところ、同合意による許諾には著作者人格権の不行使も含まれていたというべきである。(原告の主張)上記⑺(原告の主張)のとおり、原告と補助参加人Bⅰとの間の「オールライツ・クリア」の合意は認められない。仮に同合意があったとしても、著作権法21条ないし28条に規定された各支分権についてその利用を許諾したというだけのことであり、著作者人格権の不行使を承諾したことにはならない。

⑼ 争点5-3(著作権法19条2項の適用の有無)について(被告ら及び補助参加人らの主張)翻訳者の氏名を表示するかについて、特にテレビ放送についてはテレビ放送社の裁量に委ねられているというのが業界の慣行であり、このことは翻訳者においても共通の認識である。原告は、本件各字幕の翻訳に際して、氏名を表示するという選択を行わなかった。また、本件各字幕を付した本件各映画の放送について連絡を受けた

5 際にも、自身の氏名表示について要望等を行わなかったのであり、原告は、本件各字幕について著作者名を表示しないという権利を行使したものといえる。(原告の主張)否認ないし争う。原告は、本件各字幕を付した本件各映画が公衆に提示又は提供される際に氏名表示をどうするのかを指示していないし、そもそも、利用許諾をしていないことから、「その著作物につきすでに著作者が表示している」ものがなく、著作権法19条2項が適用される余地はない。

⑽ 争点6(消滅時効の成否)について(被告ら及び補助参加人フィールドワークスの主張)原告は、令和元年6月28日の時点で別の配信サービスにおいて本件各字幕を付した本件各映画について氏名表示がなされていないといった事実を認識しており、その時点で、他の配信サービスにおける本件各字幕を付した本件各映画に係る配信の有無、侵害の有無等について調査を実施していたことは明らかである。したがって、原告は、上記時点で、「ムービープラス」における放送についても「損害及び加害者を知った」ものといえる。(原告の主張)原告が本件字幕1を付した本件映画1が無断かつ原告の氏名表示なく放送されていると認識したのは令和3年3月7日であり、また、本件字幕2を付した本件映画2が無断かつ原告の氏名表示なく放送されていると認識したのは同年4月30日頃であるから、消滅時効は完成していない。

⑾ 争点7(損害の発生及びその額)について(原告の主張)被告らによる本件各字幕を付した本件各映画の公衆送信により生じた使用料相当損害金は4453万0240円であり、著作者人格権侵害により生じ

5 た慰謝料は金400万円である。(被告ら及び補助参加人らの主張)否認ないし争う。

第3 当裁判所の判断

1 争点1(ジュピターエンタテインメントによる公衆送信の有無)について

前提事実⑷イないしエのとおり、ジュピターエンタテインメントは、被告スカパーJSAT、同社がその地位を承継したオプティキャスト及び被告スカパー・エンターテイメントがその地位を承継したスカパー・ブロードキャスティングとの間で本件供給基本契約1ないし3を締結し、被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントは、「スカパー!プレミアムサービス」、「スカパー!プレミアムサービス光」及び「スカパー!オンデマンド」において、本件各字幕を付した本件各映画を放送又は配信して公衆送信したことが認められる。そして、被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントによる上記放送等は、いずれもジュピターエンタテインメントが運営する「ムービープラス」のチャンネルを通じて行われたものであり、ジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」のチャンネルの契約者である特定多数の者への送信を目的として本件各字幕を付した本件各映画を配信したと認めることができるから、ジュピターエンターテイメントもまた、本件各字幕を付した本件各映画を公衆送信したものと認めることができる。これに反する被告ディスカバリー・ジャパンの主張は採用することができない。

2 争点2(過失の有無)について

⑴ 認定事実

前提事実並びに後掲証拠(枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認定することができる。ア 補助参加人フィールドワークスと補助参加人ニュージャパンフィルムとの間の契約内容(丙C1ないし3)

5 (ア) 基本契約

補助参加人フィールドワークスと補助参加人ニュージャパンフィルムは、平成25年4月1日、映像著作物のテレビ放送権の許諾・販売の委託に関する基本契約を締結した。同契約では、補助参加人フィールドワークスが、補助参加人ニュージャパンフィルムに対し、個別覚書によって特定された映像著作物について、そのテレビ放送権を、個別覚書に規定する範囲内で補助参加人ニュージャパンフィルムのために第三者に対し許諾・販売する独占的権利を許諾すること、個別覚書で特定された映像著作物について、補助参加人ニュージャパンフィルムとの契約に基づきテレビ局等の第三者がテレビ放送することについて、当該映像著作物の製作者、原作者、監督、脚本家、実演家その他の権利者、並びに補助参加人ニュージャパンフィルムに供給する一切の素材に関する文芸、美術、音楽の各著作物、著作者人格権、著作隣接権の権利者との間で権利の処理が全て完了しており、補助参加人ニュージャパンフィルム又は補助参加人ニュージャパンフィルムとの契約に基づき当該著作物をテレビ放送し、又はテレビ放送を許諾するテレビ局等の第三者がいかなる者からも何らの請求も受けないことを保証する旨が定められていた。(イ) 個別覚書補助参加人フィールドワークスは、平成29年7月25日、補助参加人ニュージャパンフィルムに対し、個別覚書により、同年8月1日から令和2年9月30日までを放映期間として本件各字幕を付した本件各映画のテレビ放送を第三者に対し許諾・販売する独占的権利を許諾した。その後、補助参加人フィールドワークスは、令和2年3月12日、補助参加人ニュージャパンフィルムに対し、個別覚書により、同年10月1日から令和3年9月30日までを放映期間として本件各字幕を付した本件各映画のテレビ放送を第三者に対し許諾・販売する独占的権利を許

5 諾した。

イ 補助参加人ニュージャパンフィルムとジュピターエンタテインメントとの間の契約内容(乙B1、2、乙C19)(ア) 平成29年7月31日付け放映権許諾契約補助参加人ニュージャパンフィルムとジュピターエンタテインメントは、平成29年7月31日、本件各字幕を付した本件各映画に係る放映許諾契約を締結した。同契約では、補助参加人ニュージャパンフィルムがジュピターエンタテインメントに対し、許諾期間を同年8月1日から平成30年1月31日までとして本件各字幕を付した本件各映画を「ムービープラス」で放送することを許諾することのほか、補助参加人ニュージャパンフィルムがジュピターエンタテインメントに対し、同契約に基づきジュピターエンタテインメントに許諾された放映権に関し必要な全ての権利を適法に取得していること、ジュピターエンタテインメントが同契約に定める条件において本件各映画の放映権を行使するために必要な著作権、著作隣接権等一切の権利処理が補助参加人ニュージャパンフィルムの責任と負担において完全になされていること及び日本語字幕スーパー版の翻訳二次使用について、当該権利者に対する権利処理が、補助参加人ニュージャパンフィルムの責任と負担において完全になされていることを保証する旨が定められていた。(イ) 令和2年9月30日付け放映権許諾契約補助参加人ニュージャパンフィルムとジュピターエンタテインメントは、令和2年9月30日、本件字幕1を付した本件映画1に係る放映許諾契約を締結した。同契約の内容は、許諾期間を同年10月1日から令和3年3月31日までとするほかは、上記(ア)と同様である。ウ ジュピターエンタテインメントと被告スカパー・エンターテイメントとの間の契約内容(乙A1)

5 本件供給基本契約1では、ジュピターエンタテインメントは被告スカパ

ー・エンターテイメントが「ムービープラス」を本契約の規定に従い、HD方式で衛星役務利用放送することに同意すること、被告スカパー・エンターテイメントは、「ムービープラス」を本件供給基本契約1の条件に従ってのみ放送し、ジュピターエンタテインメントの事前の承諾なしに放送番組の改変、カット、編成替え等を行わないこと、被告スカパー・エンターテイメントは供給された「ムービープラス」の信号に関し、圧縮、変換、その他の信号の技術的操作のみを加え、かつ、かかる改変を加えた信号を送信することができること、「ムービープラス」に含まれる番組に関する著作権の取得、その他被告スカパー・エンターテイメントによる放送に係る著作権その他一切の権利の処理は、チャンネル供給者の責任と費用負担において行うことなどが定められていた。エ ジュピターエンタテインメントと被告スカパーJSATとの間の契約内容(乙A2、3)(ア) 本件供給基本契約2本件供給基本契約2では、ジュピターエンタテインメントは、被告スカパーJSATに対し、被告スカパーJSATが視聴者に番組を送信することができるよう「ムービープラス」の番組を供給するものとすること、被告スカパーJSATは、ジュピターエンタテインメントが別途指定しない限り、ジュピターエンタテインメントの番組の全てを受信し、その全てに変更、その他一切の改変を加えることなく、受信と同時に視聴者に再送信すること、番組に関する知的財産権の処理は、再送信に際しての音楽著作権の処理を除き、番組供給者が自己の責任と費用において行うことなどが定められていた。(イ) 本件供給基本契約3本件供給基本契約3では、ジュピターエンタテインメントは、被告ス

5 カパーJSATに対し、同契約の定める条件の下で、被告スカパーJS

ATが本コンテンツ(本契約に基づき利用を許諾する一切のコンテンツのこと。本件においては、「ムービープラス」に係るコンテンツを指す。以下同じ。)を「スカパー!オンデマンド」で利用するために必要な権利を非独占的に許諾すること、被告スカパーJSATは、本コンテンツをジュピターエンタテインメントの承諾なしに改変してはならないこと、ジュピターエンタテインメントは、被告スカパーJSATに対し、同契約締結時及び契約期間中において、ジュピターエンタテインメントが、本権利及びこれを被告スカパーJSATに対して許諾する権限を適法かつ正当に有していることを表明し、保証することなどが定められていた。オ ジュピターエンタテインメントと被告インタラクティーヴィとの間の契約内容(乙B3)ジュピターエンタテインメントと被告インタラクティーヴィは、平成14年7月1日、放送に関する業務委託契約を締結した。同契約では、ジュピターエンタテインメントは、被告インタラクティーヴィに対し、ジュピターエンタテインメントが制作する番組を放送する業務を委託すること、ジュピターエンタテインメントは、被告インタラクティーヴィに対し、委託放送事業者として委託放送業務を行うことができるように、番組を直接受信世帯向けに放送する権利を付与することなどが定められていた。カ 「ムービープラス」において放送する映画の選定手順及び本件映画1の選定手続(ア) 放送する映画の選定手順(乙B6、7、乙C13ないし15)ジュピターエンタテインメントは、以下の手順で「ムービープラス」において放送する映画の選定を行っている。なお、ジュピターエンタテインメントは、アスミック・エース株式会社(以下「アスミック・エース」という。)に対し、映画の調達業務として、「ムービープラス」に編

5 成する映画の提案や、調達交渉等を委託しており、具体的な調達業務に

ついては、アスミック・エースも対応していた。a ジュピターエンタテインメントは、複数のライセンサーからライセンスを有する映画一覧の提示を受け、当該一覧から「ムービープラス」において放送するにふさわしいと考える映画を記載した提案書をライセンサーに提示する。当該提案書には、映画の名称、許諾期間、放送回数、見逃し配信等の有無だけでなく、日本語字幕及び日本語吹替について、ライセンサーの責任と費用によって転用処理を行い、ジュピターエンタテインメントに追加費用が発生しないものとし、転用処理が必要な場合にはその旨明示することなどが記載されている。b 提案書の提示を受けたライセンサーは、ジュピターエンタテインメントに対し、ライセンス料の提示や提案書に記載された各条件の可否等について回答する。c ジュピターエンタテインメント又はアスミック・エースは、上記bの回答を踏まえ、ライセンサーと交渉し、購入条件を決定する。d ジュピターエンタテインメントは、上記cの交渉により決定した条件で当該映画のライセンスを取得し、ライセンサーから映画の提供を受ける。e ジュピターエンタテインメントは、ライセンサーから提供を受けた映画について、放送前に不適切な表現や描写が含まれていないか等の確認を外部業者に依頼する。f 上記eの確認の結果、不適切な表現や描写が含まれていた場合には、基本的にライセンサーに対して修正を依頼し、修正後の映画を放送する。修正内容や修正に要する時間によっては、当該映画の放送を見送る。(イ) 令和2年9月30日の本件字幕1を付した本件映画1の許諾に関する

5 経緯(乙C17ないし20)

a アスミック・エースは、令和2年7月6日、補助参加人ニュージャパンフィルムに対し、本件映画1を含む提案書を提示した。同提案書には、本件映画1の許諾の対象が日本語字幕版のみとされていた。b 補助参加人ニュージャパンフィルムは、令和2年7月21日、アスミック・エースに対し、本件映画1の直近の放送履歴として平成30年7月1日から令和元年6月30日まで「ムービープラス」以外のチャンネルで放送されていることをメールで回答するとともに、電話で本件映画1について日本語字幕版だけでなく日本語吹替版も対象となることやライセンス料について連絡した。また、補助参加人ニュージャパンフィルムは、令和2年7月21日頃、アスミック・エースに対し、本件映画1の日本語吹替版については、権利処理に係る転用費用が生じる旨連絡した。c アスミック・エースは、令和2年7月28日、補助参加人ニュージャパンフィルムに対し、上記bの内容を踏まえた内容の許諾に係る契約書案を送付するとともに、本件映画1の日本語吹替版の転用費用の処理状況を照会した。d 補助参加人ニュージャパンフィルムは、令和2年8月19日、アスミック・エースに対し、本件映画1の日本語吹替版の転用費用を連絡した。e ジュピターエンタテインメントは、令和2年9月30日、補助参加人ニュージャパンフィルムから本件映画1を含む3本の映画を「ムービープラス」において放送する権利の許諾を受けた。f 補助参加人ニュージャパンフィルムは、ジュピターエンタテインメントに対し、本件字幕1を付した本件映画1のデータを提供した。キ 被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントにおける

5 チャンネル数並びに「ムービープラス」における映画の放送状況等

(ア) 被告スカパーJSATのチャンネル数及び番組数被告スカパーJSATは、平成27年9月2日時点において、少なくとも141のチャンネルで映像作品の放送や配信を行っていた。また、同日の「ムービープラス」の番組数は15件、海外ドラマを放送するチャンネルの番組数は25件、アニメを放送するチャンネルの番組数は51件であった。(乙A9)(イ) 被告スカパー・エンターテイメントのチャンネル数及び番組数被告スカパー・エンターテイメントは、平成27年9月2日時点において、少なくとも150のチャンネルで映像作品の放送を行っていた。また、同日の「ムービープラス」の番組数は15件、海外ドラマを放送するチャンネルの番組数は25件、アニメを放送するチャンネルの番組数は51件であった。(乙A8)(ウ) 「ムービープラス」における放送映画数「ムービープラス」は、24時間365日、映画を放送するチャンネルであり、年間で約600本の映画が放送されていた。(乙B8)ク 外国映画の日本語字幕の放映に係る字幕翻訳者の氏名表示の状況(ア) 「ムービープラス」における字幕翻訳者の氏名表示の状況令和7年1月から12月までに「ムービープラス」で放送された日本語字幕を付した外国映画の本数は●(省略)●本であり、これらのうち字幕翻訳者の氏名が表示されていたのは、●(省略)●本であった。(乙C16)(イ) 字幕翻訳者の氏名表示に係る認識シネ・マイスターが令和7年1月16日付けで実施した翻訳者氏名表示の業界慣行に関するアンケート調査において、氏名表示についてほとんど表示されているとする回答や、制作会社の方針として表示されない

5 ことが多かったとする回答があり、基本的に氏名表示の有無は、映像作

品の制作会社の判断によるものが多いなどといった回答が多く認められた。(丙A19ないし27)

⑵ 争点2-1(被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメン

トの過失の有無)についてア 被告スカパーJSATについて認定事実エのとおり、被告スカパーJSATは、ジュピターエンタテインメントとの間の本件供給基本契約2及び3に基づき、ジュピターエンタテインメントから受信した番組の全てについて変更などの改変を加えることなく、受信と同時に視聴者に再送信又は提供することが義務付けられており、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから受信した番組を機械的に放送することになっていた。また、そのような再送信又は提供に際して、被告スカパーJSATは、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから、本件各映画を含む全ての番組について、音楽著作権の処理を除き、自己の責任と費用において処理している旨の表明保証を受けていた。加えて、認定事実キ(ア)及び(ウ)のとおり、被告スカパーJSATでは、毎日、大量の番組の放送や配信を行っており、「ムービープラス」だけでも1日当たり15件程度、1年間で約600本の映画を放送していた。上記のとおり、被告スカパーJSATは、番組供給者から受信した大量の映像作品の放送や配信を機械的に行っており、ジュピターエンタテインメントとの関係においても、変更などの改変を加えることなく、受信と同時に視聴者に再送信又は提供することが義務付けられていたことからすれば、被告スカパーJSATにおいて、事前に放送する個々の番組の内容を確認することは想定されていなかったし、実際にそのような対応は現実的ではなかった。そして、被告スカパーJSATは、このような事情を踏まえ、番組の権利処理について表明保証を受けており、本件全証拠によって

5 も、ジュピターエンタテインメントや本件各映画の関係者等から本件各字

幕の権利処理に疑義を生じさせるような指摘などを受けた形跡がないことからすれば、被告スカパーJSATにおいて、番組放送前に、本件各映画に係る本件各字幕について権利処理がされているかを確認すべき注意義務があったとは認められない。イ 被告スカパー・エンターテイメントについて認定事実ウのとおり、被告スカパー・エンターテイメントは、ジュピターエンタテインメントとの間の本件供給基本契約1に基づき、ジュピターエンタテインメントから供給された番組について、改変、カット、編成替え等を行わず、供給された信号に関し、圧縮等の技術的操作のみを加えた信号を送信することが義務付けられており、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから受信した番組を機械的に放送することになっていたものである。また、送信に際して、被告スカパー・エンターテイメントは、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから、本件各映画を含む全ての番組について、著作権の取得、その他被告スカパー・エンターテイメントによる放送に係る著作権その他一切の権利の処理を自己の責任と費用において処理している旨の表明保証を受けていた。加えて、認定事実キ(イ)及び(ウ)のとおり、被告スカパー・エンターテイメントでは、毎日、大量の番組の放送を行っており、また、「ムービープラス」においても1日当たり15件程度、1年間で約600本の映画を放送していた。上記のとおり、被告スカパー・エンタテインメントは、番組供給者から受信した大量の映像作品の放送や配信を機械的に行っており、ジュピターエンタテインメントとの関係においても、変更などの改変を加えることなく、圧縮等の技術的操作のみを加えた信号を送信することが義務付けられていたことからすれば、被告スカパー・エンタテインメントにおいて、事前に放送する個々の番組の内容を確認することは想定されていなかったし、

5 実際にそのような対応は現実的ではなかった。そして、被告スカパー・エ

ンターテイメントは、このような事情を踏まえ、番組の権利処理について表明保証を受けており、本件全証拠によっても、ジュピターエンタテインメントや本件各映画の関係者等から本件各字幕の権利処理に疑義を生じさせるような指摘などを受けた形跡がないことからすれば、被告スカパー・エンターテイメントにおいて、本件各字幕について権利処理がされているかを確認すべき注意義務があったとは認められない。ウ したがって、被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントに、原告の公衆送信権及び氏名表示権を侵害したことについて過失は認められない。

⑶ 争点2-2(ジュピターエンタテインメントの過失の有無)について

認定事実カのとおり、ジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」において放送する映画を選定する際、提案書において、日本語字幕を含め、配信するための転用処理が行われているか明示的に確認しており、実際に、本件映画1の日本語吹替版については転用処理が必要であるとしてライセンサーである補助参加人ニュージャパンフィルムに対応を求めているなど、権利処理に係る確認を行っていると認められる。また、認定事実イのとおり、ライセンサーである補助参加人ニュージャパンフィルムから本件各映画の放映権を行使するために必要な著作権、著作隣接権等一切の権利処理が補助参加人ニュージャパンフィルムの責任と負担において完全にされている旨の表明保証を受けていた。このように、ジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」において放送する映画の選定に際し、日本語字幕を含む権利処理についてライセンサーに明示的に確認していたこと、その確認を踏まえて、ライセンサーから権利処理について表明保証を受けていたことに加え、認定事実カ(イ)bのとおり、本件字幕1を付した本件映画1は、「ムービープラス」における放送以前

5 に別のチャンネルで放送されていたところ、その権利処理について疑義があ

るなどの事情が存在していなかったこと、認定事実クのとおり、日本語字幕を付した外国映画において字幕翻訳者の氏名が表示されていないものが多数存在しており、本件各映画に字幕翻訳者として原告の氏名が表示されていなかったとしても、権利処理の過程で氏名表示権の不行使の許諾が得られていると認識するものであり、氏名表示権の不行使の許諾がないことを疑わせる事情であるとはいえないこと、その他、本件において、本件各字幕に係る公衆送信の許諾及び氏名表示権の不行使の許諾がないことを疑わせる事情も認められないことからすると、ジュピターエンタテインメントにおいて、補助参加人フィールドワークスや原告等に対して本件各字幕の権利処理がされているかを確認すべき注意義務があったとは認められない。したがって、ジュピターエンタテインメントに、原告の公衆送信権及び氏名表示権を侵害したことについて過失は認められない

⑷ 争点2-3(被告インタラクティーヴィの過失の有無)について

認定事実オ及び弁論の全趣旨によれば、被告インタラクティーヴィは、ジュピターエンタテインメントから「ムービープラス」における放送についての業務委託を受けているところ、上記⑶のとおり、委託者であるジュピターエンタテインメントは、「ムービープラス」において放送する映画を選定する際、提案書において、日本語字幕を含め、配信するための転用処理が行われているか明示的に確認しており、認定事実イのとおり、ライセンサーである補助参加人ニュージャパンフィルムから本件各映画の放映権を行使するために必要な著作権、著作隣接権等一切の権利処理が補助参加人ニュージャパンフィルムの責任と負担において完全になされている旨の表明保証を受けていたものである。また、被告インタラクティーヴィには、ジュピターエンタテインメントの受託者として、別途権利処理の内容や調査内容の確認義務があるとしても、認定事実カ(イ)bのとおり、本件字幕1を付した本件映画1は、

5 「ムービープラス」における放送以前に別のチャンネルで放送されていたと

ころ、その権利処理について疑義があるなどの事情が存在していなかったこと、認定事実クのとおり、日本語字幕を付した外国映画の中には、字幕翻訳者の氏名が表示されていないものが多数存在しているから、本件各映画に字幕翻訳者として原告の氏名が表示されていなかったとしても、権利処理の過程で氏名表示権の不行使の許諾が得られていると認識したことが不合理であるとまではいえず、本件各映画に字幕翻訳者として原告の氏名が表示されていなかったことをもって、氏名表示権の不行使に係る許諾の有無につき疑義を抱かせる事情があったということはできない。その他、本件において、本件各字幕に係る公衆送信の許諾及び氏名表示権の不行使の許諾がないことを疑わせる事情も認められないことからすると、被告インタラクティーヴィにおいて、本件各字幕について権利処理がされているかを確認すべき注意義務があったとは認められない。したがって、被告インタラクティーヴィに、原告の公衆送信権及び氏名表示権を侵害したことについて過失は認められない。

⑸ 小括

以上によれば、本件各字幕に係る公衆送信権及び氏名表示権の侵害について、被告スカパーJSAT、被告スカパー・エンターテイメント、ジュピターエンタテインメント及び被告インタラクティーヴィに過失は認められない。

第4 結論

よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官澁 谷 勝 海裁判官塚 田 久 美 子裁判官浅 川 浩 輝(別紙)映画目録

1 「ゾンビ ディレクターズカット版」(139分の本編で1994年に日本の劇

場で公開されたバージョン。)

2 「ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版」(119分の本編で1979年に日本

の劇場で初公開されたバージョン。)以上

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