ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和8(ネ)10010 特許権侵害差止等請求本訴、不正競争行為差止等請求反訴控訴事件
| 裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年10月1日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被控訴人日本遮熱株式会社
株式会社ライフテック
山創株式会社(以下「一審被告山創」といい、一審被告ライ |
| 対象物 | 凹凸素材の遮熱構造 |
| 法令 |
特許権 特許法2条3項1号3回 特許法102条2項2回 特許法100条1項1回 不正競争防止法2条1項21号1回 |
| キーワード | 侵害83回 特許権62回 無効17回 差止14回 進歩性7回 損害賠償5回 実施4回 訂正審判3回 新規性2回 審決1回 優先権1回 |
| 主文 | 1 一審原告の本件控訴に基づき、原判決中、反訴に係る部分を次のとおり変更 2 一審原告の本件控訴中本訴に係る部分及び一審被告らの本件控訴をいずれも 3 訴訟費用は、第1、2審を通じこれを10分し、その1を一審被告ライフテ |
| 事件の概要 | 1 本件本訴事件は、発明の名称を「凹凸素材の遮熱構造」とする特許権(以下 「本件特許権」という。 )を有する一審原告が、一審被告ライフテックが販売す る遮熱材を使用して一審被告山創が施工した遮熱構造は本件特許権に係る特許 (以下「本件特許」という。 )の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的 範囲に属し、一審被告山創による当該遮熱構造の生産及び一審被告ライフテッ クによる当該遮熱構造の譲渡の申出は本件特許権を侵害する旨主張して、一審 被告らに対し、特許法100条1項に基づき、原判決別紙物件目録記載の遮熱 構造の生産の差止めを求めるとともに、特許権侵害の共同不法行為に基づき、 連帯して、損害金1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(一審被 告山創につき令和6年4月24日、一審被告ライフテックにつき同月26日) から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を 求める事案である。 |
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令和8年10月1日判決言渡
令和8年(ネ)第10010号 特許権侵害差止等請求本訴、不正競争行為差止等
請求反訴控訴事件(原審 東京地方裁判所令和6年(ワ)第70096号、同第7
号)
口頭弁論終結日 令和8年8月18日
判 決
控訴人兼被控訴人 日本遮熱株式会社
(以下「一審原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 堀 籠 佳 典
同 服 部 謙 太 朗
同訴訟代理人弁理士 福 田 伸 一
同補佐人弁理士 高 橋 克 宗
被控訴人兼控訴人 株式会社ライフテック
(以下「一審被告ライフテック」という。)
被控訴人兼控訴人 山 創 株 式 会 社
(以下「一審被告山創」といい、一審被告ライ
フテックと併せて「一審被告ら」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 笠 原 基 広
同 野 村 信 之
同補佐人弁理士 木 村 満
同 長 谷 川 陽 子
同 佐 藤 彩 秋
同 庄 野 寿 晃
同 橋 本 幸 治
同 松 下 ひ ろ 美
同 加 藤 道 幸
同 中 嶋 幸 江
主 文
1 一審原告の本件控訴に基づき、原判決中、反訴に係る部分を次のとおり変更
する。
⑴ 一審原告は、一審被告ライフテックに対し、165万円及びこれに対する
令和6年6月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払
え。
⑵ 一審原告は、一審被告山創に対し、33万円及びこれに対する令和6年6
月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
⑶ 一審原告は、原判決別紙文言目録記載1及び3の各文言を第三者に告知し
てはならない。
⑷ 一審被告ライフテックのその余の請求をいずれも棄却する。
⑸ 一審被告山創のその余の請求をいずれも棄却する。
⑹ この判決の上記⑴ないし⑶は、仮に執行することができる。
2 一審原告の本件控訴中本訴に係る部分及び一審被告らの本件控訴をいずれも
棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じこれを10分し、その1を一審被告ライフテ
ックの負担とし、その4を一審被告山創の負担とし、その余を一審原告の負担
とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 一審原告
⑴ 原判決を次のとおり変更する。
⑵ 一審被告らは、原判決別紙物件目録記載の遮熱構造を生産してはならない。
⑶ 一審被告山創は、一審原告に対し、1000万円及びこれに対する令和6年4月24日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を、うち1000万円及びこれに対する同月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員については一審被告ライフテックと連帯して支払え。
⑷ 一審被告ライフテックは、一審原告に対し、1000万円及びこれに対する令和6年4月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を、一審被告山創と連帯して支払え。
⑸ 一審被告らの請求をいずれも棄却する。
⑹ 訴訟費用は、第1、2審とも、一審被告らの負担とする。2 一審被告ら
⑴ 原判決を次のとおり変更する。
⑵ 一審原告の請求をいずれも棄却する。
⑶ 一審原告は、一審被告らに対し、それぞれ330万円及びこれに対する令和6年6月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
⑷ 一審原告は、原判決別紙文言目録記載の各文言を第三者に告知してはならない。
⑸ 一審原告は、原判決別紙謝罪文目録記載の内容の謝罪文を、自ら運営するウェブサイト(http://topheat.jp/)のトップページに、180日間掲載せよ。
⑹ 訴訟費用は、第1、2審とも、一審原告の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件本訴事件は、発明の名称を「凹凸素材の遮熱構造」とする特許権(以下「本件特許権」という。)を有する一審原告が、一審被告ライフテックが販売する遮熱材を使用して一審被告山創が施工した遮熱構造は本件特許権に係る特許(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属し、一審被告山創による当該遮熱構造の生産及び一審被告ライフテックによる当該遮熱構造の譲渡の申出は本件特許権を侵害する旨主張して、一審被告らに対し、特許法100条1項に基づき、原判決別紙物件目録記載の遮熱構造の生産の差止めを求めるとともに、特許権侵害の共同不法行為に基づき、連帯して、損害金1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(一審被告山創につき令和6年4月24日、一審被告ライフテックにつき同月26日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。本件反訴事件は、一審被告らが、一審原告がその取引先に対して原判決別紙文言目録記載1~3の各文言を内容として含む電子データを配布した行為(以下「本件告知」という。)が、不正競争防止法2条1項21号の不正競争に該当する旨主張して、一審原告に対し、同法3条1項に基づき、同各文言の第三者への告知の差止めを求めるとともに、同法4条に基づき、一審被告らそれぞれにつき損害金330万円及びこれに対する不正競争(本件告知)の後の日である令和6年6月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め、併せて、本件告知により営業上の信用を毀損された旨主張して、同法14条に基づき、信用回復措置として、一審原告が運営するウェブサイトへの原判決別紙謝罪文目録記載の内容の謝罪文の掲載を求める事案である。原審が、本件本訴につき、一審原告の一審被告山創に対する請求を一部認容し、一審被告ライフテックに対する請求を全部棄却し、本件反訴につき、一審被告らの請求を一部認容したところ、一審原告及び一審被告らが原判決を不服としてそれぞれ控訴を提起した。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。以下、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は全ての枝番号を含む。)
⑴ 当事者ア 一審原告は、一般建築工事業、省エネルギー機器の製造・販売、土木建築用資材の製造・販売、土木建設業等を業とする株式会社である。イ 一審被告山創は、建設業、土木一式工事業等を業とする株式会社である。ウ 一審被告ライフテックは、建築資材及び機械の販売、インテリア用品の販売等を業とする株式会社である。
⑵ 本件特許権一審原告は、次の特許権(本件特許権)を有している。以下、本件特許に係る明細書(甲2)を、図面を含めて「本件明細書」という。(甲1、2)特許番号 特許第5445808号出願番号 2013-121593出願日 平成25年6月10日優先日 平成25年1月10日(以下「本件優先日」という。)優先権主張国 日本国設定登録日 平成26年1月10日発明の名称 凹凸素材の遮熱構造
⑶ 本件特許の特許請求の範囲の記載ア 一審原告は、令和6年9月27日付けで、本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1とその一群の請求項である請求項4、5及び6について、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判を請求し(訂正2024-390109。以下「本件訂正審判請求」という。)、特許庁は、令和7年1月30日付けで、本件訂正審判請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)を認める旨の審決をした。(甲23、33)イ 本件訂正後の請求項1の記載本件訂正による訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである(下線部が訂正箇所。以下、本件訂正による訂正後の請求項1に記載された発明を「本件訂正発明」という。)。【請求項1】「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と、該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とからなり、前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造であって、前記接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であり、前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させていることを特徴とする凹凸素材の遮熱構造。」ウ 本件訂正発明の構成要件の分説本件訂正発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、分説した構成要件を、付した符号に従い「構成要件A」などという。)。【A】表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と、【B】該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とからなり、【C】前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造であって、【F】前記接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であり、【D】前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている【E】ことを特徴とする凹凸素材の遮熱構造。
⑷ 一審被告山創の施工に係る遮熱構造ア 当初施工に係る遮熱構造(乙6、9、弁論の全趣旨)一審被告山創は、令和2年4月20日、訴外BX紅雲株式会社の工場屋根の遮熱工事(以下「当初施工」という。)に着工し、同工事は同年5月20日に竣工した(以下、当初施工の竣工直後の遮熱構造を「当初施工に係る遮熱構造」という。)。その施工の概要は、①折板屋根の下に施してあるぺフ(ポリオレフィンフォーム)を一部除去し、②折板屋根のガルバリュウム鋼板に両面テープを貼り付け、③両面テープにサーモバリアSを貼り合わせることにより取り付け、④強力な磁石(ネオジム磁石)を遮熱シートの内部に入れ込みさらに固定するというものである。当初施工に係る遮熱構造が、原判決別紙物件目録記載の構成を有すること並びに本件訂正発明の構成要件A、B、C及びEを充足することについては当事者間に争いがなく、当初施工に係る遮熱構造の構成によると、本件訂正発明の構成要件Fを充足する。イ 是正工事に係る遮熱構造(甲6、乙7、弁論の全趣旨)一審被告山創は、訴外BX紅雲株式会社から遮熱シートが剥がれている旨の苦情を受けたことから、両面テープの増し貼りなどの手直し工事を何度か行ったものの、サーモバリアSの捲れが修復されなかったことから、令和3年3月31日から、同社工場屋根に係るサーモバリアシートの是正工事(以下「是正工事」という。)に着工し、同工事は同年6月4日に竣工した(以下、是正工事の竣工直後の遮熱構造を「是正工事に係る遮熱構造」といい、当初施工に係る遮熱構造と併せて「本件遮熱構造」という。)。是正工事における施工概要は、折板屋根の凹部に下地鋼材を敷設し、当該下地鋼材にサーモバリアSをタッピングビスで固定するというものである。是正工事に係る遮熱構造が、本件訂正発明の構成要件A、B及びEを充足することについては当事者間に争いがない。
⑸ 先行文献ア 本件優先日より前に、発明の名称を「断熱折版屋根構造」とする公開特許公報(特開平6-336790、公開日平成6年12月6日。乙13。以下「乙13公報」といい、同公報に記載された発明を「乙13発明」という。)が公刊されていた。イ 本件優先日より前に、発明の名称を「住宅の断熱材保護用遮熱材」とする公開特許公報(特開2004-11240、公開日平成16年1月15日。乙17。以下「乙17公報」といい、同公報に記載された発明を「乙17発明」という。)が公刊されていた。ウ 本件優先日より前に、発明の名称を「主に折板屋根を有する建築物に内側断熱処理を施工する方法」とする公開特許公報(特開2008-190311、公開日平成20年8月21日。乙18。以下「乙18公報」といい、同公報に記載された発明を「乙18発明」という。)が公刊されていた。
⑹ 一審原告による本件告知一審原告は、令和6年3月27日付けで、一審原告のフランチャイズ加盟店に対し、原判決別紙文言目録1~3の記載(以下、付した番号に従い順に「文言1」などという。)を含む「遮熱ニュース」と題する電子データ(以下「本件遮熱ニュース」という。)を送信した。本件遮熱ニュースは、原判決67~68頁添付の別紙「遮熱ニュース2024年3月27日 No.2408」のとおりのものである。(乙1、29、30、弁論の全趣旨)3 争点
⑴ 本訴請求についてア 当初施工に係る遮熱構造の構成要件充足性及び実施行為該当性(争点1)(ア) 当初施工に係る遮熱構造が「凹部と…素材との間に空間を存在させている」(構成要件D)を充足するか(争点1-1)(イ) 一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造を「生産」したか(争点1-2)イ 是正工事に係る遮熱構造の構成要件充足性(争点2)(ア) 是正工事に係る遮熱構造が「凸部の裏面に…素材を接着手段により取り付けた」(構成要件C)及び構成要件Fを充足するか(争点2-1)(イ) 是正工事に係る遮熱構造が「凹部と…素材との間に空間を存在させている」(構成要件D)を充足するか(争点2-2)ウ 無効事由の有無(争点3)(ア) 乙13発明を主引例とする無効事由の有無(争点3-1)(イ) 乙17発明を主引例とする無効事由の有無(争点3-2)(ウ) 乙18発明を主引例とする無効事由の有無(争点3-3)エ 一審被告ライフテックの侵害主体性及び不法行為該当性(争点4)オ 差止めの必要性(争点5)カ 一審原告の損害及び損害額(争点6)
⑵ 反訴請求についてア 不正競争(不競法2条1項21号)該当性及び故意又は過失の有無(争点7)イ 一審被告らの損害及び損害額(争点8)ウ 差止め及び信用回復措置の必要性(争点9)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1-1(当初施工に係る遮熱構造が「凹部と…素材との間に空間を存在
させている」(構成要件D)を充足するか)について(一審
(原告の主張)
当初施工に係る遮熱構造は、折板屋根の凹部と遮熱シートとの間に空間が存在するから、本件訂正発明の構成要件D「凹部と…素材との間に空間を存在させている」を充足する。当該構成要件は、凹部と…素材との間の「空間」に何らかの部品を配置することを排除するものではない。(一審被告らの主張)本件明細書の記載(段落【0006】、【0022】~【0026】)によれば、「凹部と…素材との間の空間」は、輻射熱の移動を妨げない程度・性質の空隙であることを要する。当初施工に係る遮熱構造では、折板屋根材のガルバリューム鋼板に敷設されているペフが輻射熱の移動を著しく妨げるため、輻射熱の移動を妨げない程度・性質の空隙が存在するとはいえない。したがって、当初施工に係る遮熱構造は、本件訂正発明の構成要件D「凹部と…素材との間に空間を存在させている」を充足しない。
2 争点1-2(一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造を「生産」したか)に
ついて(一審
(原告の主張)
特許法2条3項1号の「生産」とは、当該発明の構成を充足する物を作り出す行為をいうものであり、その物が相当期間の使用に耐えることを必ずしも要件としない。当初施工に係る遮熱構造は、是正工事が着工するまでの間、工場屋根に取り付けられていたのであるから、当初施工に係る遮熱構造の取付けは生産に当たる。(一審被告らの主張)特許法2条3項1号の「生産」があったというためには、少なくともその物本来の経済的有用性や効能を発揮できる程度に物を完成する必要がある。本件訂正発明は遮熱構造であり、建築物に関するものであるから、同号の「生産」があったというためには、耐久財としての使用に耐える程度に完成していることを要する。当初施工に係る遮熱構造は、引渡直後より遮熱シートが剥落し、遮熱構造としての用をなさなかったものであり、一時的、過渡的に特許発明の構成要件を充足したとしても、同号の「生産」があったということはできない。
3 争点2-1(是正工事に係る遮熱構造が「凸部の裏面に…素材を接着手段に
より取り付けた」(構成要件C)及び構成要件Fを充足するか)について(一審
(原告の主張)
⑴ 原判決は、本件明細書の段落【0007】、【0017】の記載を根拠に構
成要件Cの「接着手段」につき、他の固定手段として、軽天材等で組む下地又は金具等を併用することを排除するものであると限定解釈をした。しかし、本件訂正発明は、凹凸面に沿って全ての面に連続的に密着して遮熱材を貼ると、水平面での屋根面積と遮熱施工面積では大きな差が出来ることから大幅なコストアップとなるという課題、及び、既設の建物でしかも凹凸の大きいものは凹部の奥まで器具が届かず施工不可能であるという課題を解決するものである(段落【0008】)。これらの課題は、是正工事に係る遮熱構造のように折板屋根材の凹部に下地鋼材を敷設し、当該下地鋼材に遮熱シートをタッピングビスで固定する構成であっても解決することができ、所定の効果を奏するので、原判決のような限定解釈をすることは誤りである。また、本件明細書の段落【0003】、【0007】、【0017】には、「屋根の下側に軽天材にて天井を作り、その天井に遮熱材を貼る施工法」という従来技術との関係で本件訂正発明の課題や効果が記載されているにすぎない。同明細書には、本件訂正発明において「軽天材」(軽量鉄骨)や金具等を付加的な形で利用することに問題があり、又は、これらの材料を一切使用しないことがその効果である旨の記載はない。以上のとおり、本件訂正発明において、従来技術(段落【0007】)との関係で、「屋根の下側に軽天材にて天井を作り、その天井に遮熱材を貼る施工法」は排除されているとしても、長時間剥がれないようにするために、「接着手段」と他の取付手段とを併用し、その際に、軽量鉄骨の下地や金具等を用いることは排除されていない。
⑵ 当初施工時に折板屋根材の裏面の凸部に張り付けられた両面テープは、是
正工事の時点で、少なくとも部分的には遮熱シートに貼り付く程度の粘着力が残っていたことが認められる(甲6、乙7)。是正工事に係る遮熱構造において遮熱シートを接着しているのは両面テープであるということができ、ビスは遮熱シートのめくれの心配を軽減するための付加的な構成にすぎない。したがって、是正工事に係る遮熱構造は構成要件C及びFを充足する。(一審被告らの主張)
⑴ 原判決の判断に誤りはない。本件訂正発明は、本件明細書の段落【000
7】に記載されているとおり、「屋根の下側に軽天材にて天井を作り、その天井に遮熱材を貼る施工法もあるが、軽天材による天井を作る費用が大きく費用対効果を見ても大きなメリットを生み出す事は難しい」との課題も解決しようとするものであり、段落【0017】には、この課題に対応する効果として、「軽天材等で組むアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を取り付ける下地も、又余分な金具等も一切必要としないので大幅なコスト削減が可能である」と記載されている。これらの記載からすれば、本件訂正発明は、軽天材等で組む下地又は金具等を併用することを排除するものである。
⑵ 是正工事は、両面テープの粘着力不足により、遮熱シートが剥落してきた
ことを理由に行われたものであり、仮に両面テープに部分的にごく弱い粘着力が残存していたとしても、両面テープに遮熱シートを固定できるほどの粘着力が残存していたと評価することはできない。是正工事に係る遮熱構造において、遮熱シートは下地鋼材にタッピングビスで固定されていたというべきである。また、本件訂正発明は「前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた」ことを構成要件とするものであるから、他の固定手段の併用が許容されるとしても、接着手段による固定が主であり、他の固定手段による固定は従であるか、接着手段による固定を補完する程度にとどまるものでなければならない。遮熱シートを下地鋼材にタッピングビスで固定することは、両面テープの粘着力を補完するものではなく、全く別個の固定方法である。是正工事に係る遮熱構造は、「前記アルミホイル等…素材」を、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ…取り付けた」とも、「接着手段により取り付けた」ともいえず、構成要件C及びFを充足しない。
4 争点2-2(是正工事に係る遮熱構造が「凹部と…素材との間に空間を存在
させている」(構成要件D)を充足するか)について(一審
(原告の主張)
是正工事に係る遮熱構造は、折板屋根の凹部と遮熱シートとの間に空隙が存在するから「凹部と…素材との間に空間」(構成要件D)を充足する。当該構成要件は、凹部と…素材との間の「空間」に何らかの部品を配置することを排除するものではない。(一審被告らの主張)本件明細書の記載(段落【0006】、【0022】~【0026】)によれば、「凹部と…素材との間の空間」(構成要件D)とは、輻射熱の移動を妨げない程度・性質の空隙であることを要する。是正工事に係る遮熱構造のうち、折板屋根の凹部には下地鋼材が敷設されており、折板屋根材と遮熱シートの間にはペフ及び下地鋼材が存在しているところ、ペフは輻射熱の移動を著しく妨げ、下地鋼材は折板屋根の凹部の空隙の大半を占めている。したがって、是正工事に係る遮熱構造には、輻射熱の移動を妨げない程度・性質の空隙があるとはいえず、「凹部と…素材との間の空間」(構成要件D)を充足しない。
5 争点3-1(乙13発明を主引例とする無効事由の有無)について
(一審被告らの主張)
⑴ 本件訂正発明は、乙13発明と同一であるから、新規性がなく無効とされ
るべきものであるか、乙13発明に基づき容易に発明をすることができたものであるから、進歩性がなく無効とされるべきものである。
⑵ 「凹凸のある素材」(構成要件A~C)
ア 乙13発明は、折板屋根鋼板1の裏面にその折曲形状に沿って一面側が固着されたシート状断熱材2とその他面側にシート状断熱材2の厚み方向に貫通する糸6により縫着された面ファスナーとから構成される第1の部分が存在している。上記第1の部分は、全体として凹凸のある折板屋根素材であるということができるから、乙13発明は「凹凸のある素材」(構成要件A~C)に相当する構成を備えている。イ 上記第1の部分は、他の部材と組み合わせ加工された工作物であるが、本件明細書の実施例には加工が施されているものや他の部材と組み合わされたものも含まれており、本件訂正発明にいう「素材」には、一定の加工や他の部材と組み合わされたものも含まれると解すべきであるから、同部分は「素材」に該当する。
⑶ 「輻射熱に対して高反射率の素材」(構成要件B~D)
「素材」の解釈は、前記⑵記載のとおりであるところ、乙13発明には、板状断熱材5の一側の面に面ファスナー4が板状断熱材の厚み方向に貫通する糸7等により固着されて構成される第2の部分が存在している。そして、乙13公報には、同部分は、折板屋根構造の家屋内側に配置され、この断熱材はアルミ箔10で包まれていてもよいと記載されている。したがって、乙13発明は、「輻射熱に対して高反射率の素材」(構成要件B~D)に相当する構成を備えている。
⑷ 「接着手段」(構成要件C、F)
ア 乙13発明は、第1の部分に縫着された面ファスナー3と、これと対向する第2の部分の面ファスナー4が相互に係合することにより、第1の部分の凸部の裏面に対してのみ断熱材が取り付けられている。そして、「接着」の語義からすれば、対向する面を「くっつける」手段である「面ファスナー」は接着手段に該当することから、乙13発明は、「凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた」(構成要件C)に相当する構成を備えている。イ そうすると、本件訂正発明と乙13発明とは、本件訂正発明は、凹凸のある素材と高反射率の素材を「接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段」により取り付けるのに対し、乙13発明は、シート状断熱材2に「糸6により縫着され」た「面ファスナー3」と、板状断熱材5に「糸7により縫着され」た「面ファスナー4」とを対向して相互に係合することにより取り付ける点において相違する。原判決は、この相違点について、乙13発明において、糸により縫着された面ファスナーは、その課題解決のために不可欠のものであるから、これを「接着剤、熱溶着、両面テープ」のいずれかに置き換えることは、乙13発明の技術的意義を失わせるものであり、当業者が適宜選択し得る事項又は単なる設計事項であるということはできず、その動機付けがあったともいえないとして、本件訂正発明が進歩性を欠くとはいえないと判断した。しかし、本件訂正発明の効果は、主に、①誰でも簡単に施工でき、施工コストを大幅に削減できること、②下地も、余分な金具等も一切必要としないので大幅なコスト削減が可能であること、③金属素材にかかわりなく、コンクリートやプラスチック等あらゆる素材に使用でき、広範囲の使用が可能であることである。接着手段として接着剤や両面テープを用いた場合であっても、面ファスナーを用いた場合であっても、上記各効果を同様に奏するので、面ファスナーと「接着剤、熱溶着、両面テープ」とは、容易に置換可能な部材であり、本件訂正発明における構成要件F(「前記接着手段は、接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段であ」ること)の追加に技術的な意義はない。そして、乙13発明の面ファスナーを「接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段」に置換することは、乙13発明を、上記課題を解決しない従来の技術(退歩発明)に戻すものにすぎず、格別の動機付けは必要ない。両面テープ等による接着は、乙33、40、60に示されるように周知技術であり、また、乙61、62に示されるように、屋根材に部材を取り付けるときには、マジックテープ、両面テープ、接着剤は、それぞれ代替可能に使用される。上記相違点に係る本件訂正発明の構成は、乙13発明にこれらの周知技術を適用することによって容易に想到できたものである。(一審
(原告の主張)
⑴ 「凹凸のある素材」(構成要件A~C)
本件訂正発明にいう「素材」とは、その語義及び本件明細書の記載(段落【0001】、【0014】、【0016】、【0018】、【0019】、【0025】、【0031】、【0034】)によれば、屋根材や遮熱材の基となる材料のことをいうと解され、所定の目的のために別部材を組み合わせたものや加工したものは含まれない。乙13発明の第1の部分は、その下方に第2の部分を連結固定するという目的のために加工された工作物であり、第1の部分を構成する各部材も独立性を失っていないので、工作物である第1の部分全体は、「凹凸のある素材」(構成要件A~C)に相当しない。
⑵ 「輻射熱に対して高反射率の素材」(構成要件B~D)
「素材」の解釈は、前記⑴記載のとおりであるところ、乙13発明の第2の部分は、第1の部分の下方に連結固定できるようにするという目的のために加工された工作物であり、第2の部分を構成する各部材も独立性を失っていないので、「輻射熱に対して高反射率の素材」(構成要件B~D)に相当しない。
⑶ 「接着手段」(構成要件C、F)
ア 接着とは、二つの物体が接したときに働く、分子を引き付ける力で起こる現象を意味する語であり、本件訂正発明にいう「接着」もこれと異ならない。乙13発明の面ファスナーは二つの面ファスナーの相互の係合により二つの物を連結固定するものであり、本件訂正発明の「接着手段」(構成要件C)に相当しない。イ 乙13発明の面ファスナーが「接着手段」に相当するとしても、乙13発明において、糸により縫着された面ファスナーを接着剤、熱溶着、又は両面テープのいずれかの接着手段に置き換えることは、「面ファスナーがシート状断熱材の厚み方向に貫通する糸により縫着されていること」によって「面ファスナー部分に加わる荷重によって、シート状断熱材内で層間剥離が生じてシート状断熱材から板状断熱材が脱落されることを防止する」という乙13発明の技術的意義を失わせるものであるから、上記置換の動機付けは存しない。また、乙33、40、60~62には、本件訂正発明と乙13発明との相違点に係る構成に相当する周知技術は開示されていない。ウ 面ファスナーは、面ファスナー同士を脱着させる前に、他の部材に取り付ける必要があるため、当該他の部材に縫着等する必要があり、また、その脱着の原理も接着剤、熱溶着、又は両面テープによる接着とは異なる。面ファスナーを用いることと、接着剤、熱溶着、又は両面テープを用いることとの技術的意義は同一ではないので、本件訂正発明は乙13発明の退歩発明ではなく、その進歩性は否定されない。
6 争点3-2(乙17発明を主引例とする無効事由の有無)について
(一審被告らの主張)
⑴ 本件訂正発明は、乙17発明と同一であるから、新規性がなく無効とされ
るべきものである
⑵ 「凹凸のある素材」(構成要件A~C)
「素材」の解釈は、前記5(一審被告らの主張)記載のとおりであるところ、乙17発明は、フレーム10内の空気層空間Sに屈曲立体化した自立片15を挿入し、その一端又は両端で空間Sの隅端部SEに当接して接着剤Adを点付与して止着されているので、「凹凸のある素材」(構成要件A~C)に相当する構成を備えている。
⑶ 「凸部の裏面に対してのみ…接着手段により取り付けた」(構成要件C)
本件訂正発明にいう「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ…接着手段により取り付けた」(構成要件C)とは、素材凸部の裏面全てに取り付けられていることを要せず、凸部の一部であっても接着手段によって高反射率の素材に取り付けられていれば足りると解すべきである。乙17発明の自立片15は、輻射熱反射層Reがその凸部の一部にのみ取り付けられているから、上記要件を充足する。(一審
(原告の主張)
⑴ 「凹凸のある素材」(構成要件A~C)
「素材」の解釈は、前記5(一審
(原告の主張)
記載のとおりであるところ、乙17発明のうち、フレーム10内の空気層空間Sに屈曲立体化した自立片15を挿入し、その一端又は両端で空間Sの隅端部SEに当接して接着剤Adを点付与して止着されたものは、自立片15がフレーム10の立体形態を強固に、かつ、充分に保持するという目的に従って加工された工作物であって、「凹凸のある素材」(構成要件A~C)ではない。また、乙17発明の自立片15はシート材であって、それ自体は特定の形状を有するものではなく、それのみでは立体形態を保持することができないから、「凹凸のある素材」に当たらない。
⑵ 「凸部の裏面に対してのみ…接着手段により取り付けた」(構成要件C)
乙17公報には、フレーム10の下面シート12に輻射熱反射層Reを付与することは記載されているが(段落【0006】)、どのような手段により付与しているかは記載されておらず、「接着手段により取り付け」(構成要件C)の開示はない。また、輻射熱反射層Reが付与されるのはフレーム10の下面シート12であって自立片15ではなく、自立片15(単体)を本件訂正発明の「凹凸のある素材」に対応させるのであれば、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ…接着手段により取り付けた」の開示はない。
7 争点3-3(乙18発明を主引例とする無効事由の有無)について
(一審被告らの主張)
⑴ 本件訂正発明は、乙18発明に基づき容易に発明をすることができたもの
であるから、進歩性がなく無効とされるべきものである。
⑵ これに対し、原判決は、乙18発明と本件訂正発明とは、①本件訂正発明
は、凹凸のある素材に「アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」を取り付けた「遮熱構造」であるのに対し、乙18発明は、折板建材Aの下方に「断熱材」が取り付けられた「断熱構造」である点、②本件訂正発明は、「凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ…高反射率の素材を接着手段により取り付け」るものであるのに対し、乙18発明は、折板建材Aに磁力で固定した留め具HのピンEを断熱材Bに貫通させ、当該ピンEの先端にカバーFが取り付けられることで、折板建材Aに断熱材Bを取り付けている点において相違するとした上で、乙18発明において、上記②の相違点に係る構成は、その課題解決のために必須のものであるから、これを「接着剤、熱溶着、又は両面テープ」のいずれかに置き換えることは、乙18発明の技術的意義を失わせるものであって阻害要因があるとして、本件訂正発明が進歩性を欠くとはいえないと判断した。
⑶ 上記②の相違点に係る構成の容易想到性
乙18発明の構成は、接着加工といった専門的な工事や接着剤を用いることなく、断熱処理を施すことができるという技術的意義を有するところ、乙18発明のピン等を「接着剤、熱溶着、又は両面テープ」に置換することは、乙18発明を、上記課題を解決しない従来の技術(退歩発明)に戻すものにすぎず、そこに格別の動機付けは必要ない。両面テープ等による接着が周知技術であることは、前記5(一審被告らの主張)記載のとおりであり、上記②の相違点に係る構成は、乙18発明に周知技術を適用することによって容易に想到できるものである。また、乙28(特開2007-77741号公報。公開日平成19年3月29日。以下「乙28公報」という。)には、凹凸構造を有する屋根素材の室内側の凸部分に、鋼板を粘着剤で貼着した構成が開示されている。乙18発明と乙28公報に記載された発明とは構成の主要部分が同一であり、凹凸のある屋根素材を用いる断熱構造である点でも共通するから、乙18発明の留め具Hを乙28公報に記載された「粘着剤」に置換することは容易である。
⑷ 上記①の相違点に係る容易想到性
熱源側と非熱源側とを隔てる空間を形成する素材として、アルミホイル等の輻射熱に対して高反射率の素材を用いることは、周知技術(乙19~22等)であり、これを乙18発明に適用することには動機付けがある。同様に、アルミホイルを家屋等の断熱材に用いることも周知技術(乙20、23~27)であり、これを乙18発明に適用することにも動機付けがある。したがって、乙18発明の断熱材において、アルミホイル等の「輻射熱に対して高反射率の素材」を用いることは容易に想到し得ることである。なお、本件訂正発明は遮熱構造に関するものであるが、「遮熱」構造であることは単なる特性の記載であるから、構成要件A~Dを充足する特定の構造を有していれば、これに該当するのであり、「遮熱」構造であるかどうかは進歩性の判断を左右しない。(一審
(原告の主張)
⑴ 上記②の相違点に係る構成の容易想到性
乙18発明は、折板建材Aに磁力で固定した留め具HのピンEを断熱材Bに貫通させ、当該ピンEの先端にカバーFが取り付けられることで、折板建材Aに断熱材Bを取り付けている。そして、当該構成は、接着加工といった専門的な工事や接着剤を用いることなく、断熱処理を施すことができるという技術的意義を有するものである(段落【0003】、【0006】)。乙18発明において、その課題解決のために必須である上記構成を「接着剤、熱溶着、又は両面テープ」のいずれかに置き換えることは、乙18発明の技術的意義を失わせることになるので、上記置換には阻害要因があり、乙18発明に基づいて本件訂正発明を容易に想到し得たとはいえない。また、乙18発明におけるピンを用いた構造では、折板建材Aに断熱材Bを取り付けている際に、折板建材Aに磁力で固定した留め具HのピンEを断熱材Bに貫通させ、当該ピンEの先端にカバーFが取り付けられる必要がある。乙18発明におけるピンを用いた構造と、接着剤、熱溶着、又は両面テープを用いることの技術的意義は同一ではないので、本件訂正発明が乙18発明の退歩発明であるとはいえず、その進歩性は否定されない。なお、乙33、40、60~62には、上記相違点に相当する周知技術は開示されていない。
⑵ 上記①の相違点に係る容易想到性
乙18には、「凹凸のある素材に「アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」を取り付けた」ことも「遮熱構造」であることも記載されていないから、この点は実質的な相違点であり、当該相違点に係る構成に想到し得る周知技術は一審被告らが挙げる証拠(乙19~27)には記載されていない。なお、「遮熱」とは熱輻射を防ぐことであるのに対し、「断熱」とは熱伝導を減らすことであり、両者は全く異なる概念であり、断熱構造であるからといって、遮熱構造になるわけではない。また、乙18発明の折板建材Aに取り付けられているのは、断熱材Bに、磁石Cとの間に緩衝材Gを挟んで、磁石Cを有する留め具HのピンEを貫通させて貫通させたピンEの先端にカバーを付けたものであって、これは乙18発明の目的に従って加工された工作物であるから、本件訂正発明の「素材」に相当しない。この点も相違点であるというべきである。
8 争点4(一審被告ライフテックの侵害主体性及び不法行為該当性)について
(一審
(原告の主張)
⑴ 侵害主体性
一審被告ライフテックは、そのホームページの「施工実績」において、当初施工の写真を掲載しており、その動画を「施工動画あり」として掲載している。「施工実績」はそのホームページに掲載されたものである以上、同被告の「施工」の「実績」であるとしか理解することができず、「施工動画あり」における施工も同被告による「施工」と理解するのが自然である。これらは、同被告が販売するサーモバリアSを用いた遮熱構造の詳細を需要者に紹介し、その導入を誘引するものである。また、是正工事に係る遮熱構造は本件訂正発明の技術的範囲に属するところ、一審被告ライフテックは甲4、6で当初施工に係る遮熱構造のみならず、是正工事に係る遮熱構造を大々的に広告している。甲6の動画は「株式会社ライフテック技術」という自己の社名を付したチャンネル名で「遮熱シート折板屋根下施工 サーモバリア 施工の様子 下地鋼材取付 不燃認定取得」というタイトルの動画であり、このような動画に接した需要者は、一審被告ライフテックが是正工事に係る遮熱構造を施工し、提供していると理解する。以上からすると、一審被告ライフテックは、当初施工及び是正工事に係る遮熱構造を一審被告山創と共同で「施工」したと認識していたものであり、これらに接した需要者も一審被告ライフテックが本件遮熱構造を提供するものと理解する。これらの遮熱構造をわざわざ「施工実績」、「施工動画」としてホームページに掲載し、「問い合わせフォーム」で引き合いを誘引していることは、引き合いがあれば同様の施工を行うことが可能であることを示し、その申込みを誘引するものであって、当初施工及び是正工事に係る遮熱構造の「譲渡の申出」に当たる。
⑵ 不法行為(幇助)該当性
一審被告ライフテックは当初施工に係る遮熱構造の写真(甲5)を施工実績として自社のホームページに掲載し、一審被告山創の施工の実施に応じて自社のホームページの施工実績を更新してきた。加えて、一審被告山創は、一審被告ライフテックのサーモバリアの取扱店であり、かつ、同被告の「スカイ工法」及び「フィット工法」の代理店であるなど、同被告と密接な関係がある。以上のとおり、一審被告ライフテックは、少なくとも当初施工の後に、当初施工内容を認識しこれに異議を述べることはなく、むしろこれを自社の施工実績としてホームページに掲載したのであるから、一審被告山創との間に共同利用関係が形成されており、一審被告山創による当初施工に係る遮熱構造の生産及びこれに関する譲渡の申出を幇助したものといえる。また、一審被告ライフテックは、一審被告山創が当初施工において本件特許権を侵害する態様でサーモバリアSを使用したことを認識しながら、是正工事に当たり新たにサーモバリアSを一審被告山創に提供した。この行為は、一審被告山創による是正工事に係る遮熱構造の生産及びこれに関する譲渡の申出の幇助に当たる。(一審被告ライフテックの主張)
⑴ 侵害主体性
建物の屋根に遮熱シートを施工すると、遮熱シートは不動産に従として付合することになり(民法242条)、施工後の遮熱構造の所有権は一貫して工場や倉庫の建物の所有者(多くの場合は施主)が保有しているので、一審被告らによって、譲渡又は譲渡の申出がされることはない。また、一審被告ライフテックは、一審被告山創の施工実績をそのホームページに掲載しているものの、譲渡価格や条件に関する記載もなく、かかる掲載行為は譲渡の申出に該当しない。当該ホームページの表示に触れた需要者は、一審被告ライフテックは遮熱材(サーモバリア)の紹介をしているにすぎないと認識するのであり、当初施工に係る遮熱構造の施工主体が一審被告ライフテックであるとか、一審被告山創とこれを共同で施工したという認識には至らない。
⑵ 不法行為(幇助)該当性
一審被告ライフテックは、代理店等に本件特許権を侵害しない下地鋼材を用いた施工方法を紹介しているにすぎず、当初施工に係る施工内容を知らず、推奨したこともない。一審被告ライフテックが事後的に当初施工に係る遮熱構造をホームページに掲載していたとしても、これを事前に知っていたことが裏付けられるものではない。以上のとおり、一審被告ライフテックは、一審被告山創による当初施工に係る遮熱構造を知らなかったのであるから、特許権侵害の幇助責任を負うことはない。また、是正工事に係る遮熱構造は本件訂正発明の技術的範囲に属さないから、是正工事へのサーモバリアの供給が特許権侵害の幇助に該当することもない。
9 争点5(差止めの必要性)について
原判決「事実及び理由」第3の11(21頁25行目~22頁7行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「原告」を「一審原告」、「被告」を「一審被告」と読み替え(以下、原判決の引用部分について同じ。)、21頁26行目に「特許権の範囲」とあるのを「本件訂正発明の技術的範囲」と改める。
10 争点6(一審原告の損害及び損害額)について
⑴ 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第3の12(22頁9
行目~23頁18行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。ア 原判決22頁10行目に「以下の⑴及び⑵によって推定される金額のうち」とあるのを「以下の⑴及び⑵のうち」と改める。イ 原判決22頁19行目、同頁22行目及び23頁15行目に「推定額」とあるのを「損害額」とそれぞれ改める。
⑵ 当審における当事者の補充主張
(一審被告らの補充主張)ア 限界利益の算出対象となる工事の範囲原判決は、当初施工による売上額660万円から当初施工に係る経費288万9115円を控除した残額である371万0485円を、一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造の生産によって得た限界利益額であるとし、同額が特許法102条2項により一審原告の受けた損害額と推定される旨判断した。しかし、当初施工に係る遮熱構造は、一時的、過渡的なものであり、経済的有用性のないものであったから、上記請負代金は、当初施工に係る遮熱構造を引き渡した対価であるとはいえず、是正工事を含む一連の工事の対価であるというべきである。また、請負契約における履行完了は、契約内容に適合する仕事が完成した時点となる。本件においては、当初施工の完了後、契約不適合責任に基づく履行の追完として是正工事がなされ、契約内容に適合する状態が実現したのは是正工事の完了時なので、請負代金は、契約内容に適合した状態の実現、すなわち、是正工事に係る遮熱構造を完成させたことへの対価である。以上によれば、請負代金660万円は是正工事までを含めた対価であり、限界利益の算出に当たっては、是正工事の経費を控除すべきところ、当初施工と是正工事の経費は請負代金額を優に超えるので、利益は発生していない。さらにいえば、当初施工に係る遮熱構造は、経済的有用性のない、一時的、過渡的な性質のものであり、ごく短期間しか存在しなかったので、660万円の売上げに対し、当初施工の貢献度はゼロであるか、そうでなくても著しく低く、30%を超えることはない。660万円の売上げの30%は198万円であり、当初施工の経費288万9515円を控除すると、一審被告山創の限界利益は存しない。イ 推定の覆滅仮に、一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造の生産によって得た限界利益額が原判決の判断のとおりであったとしても、推定の覆滅事由がある。一審原告は、反訴請求に関し、一審被告ライフテックと一審原告は、それぞれ異なる流通網を構築しており、相互に移動することはないから、商品の販売先(顧客)を共通にする可能性はないなどと主張しており、一審原告と一審被告らとは競争関係になく、両者の市場には重なり合いがないと自認している。市場の補完関係が全くないという事情は、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情であるから、一審被告山創が得た限界利益を一審原告の損害と推定することはできない。(一審原告の補充主張)ア 限界利益の算出対象となる工事の範囲当初施工の請負代金は、当初施工に係る遮熱構造を引き渡したことをもって支払われたものであり、是正工事を含まない。また、是正工事は、当初施工完了から約1年後に行われたもので、社会通念上も当初施工とは別個の工事である。イ 推定の覆滅一審
(原告の主張)
は、反訴請求につき、本件告知により一審被告らがその取扱店・代理店に対して構築した営業上の信用を害することはないので、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」に当たらないというにすぎず、一審原告と一審被告らの市場に重なり合いがないことを意味するものではないので、推定の覆滅事由は存在しない。
11 争点7(不正競争(不競法2条1項21号)該当性及び故意又は過失の有無)
について(一審被告らの主張)
⑴ 競争関係
「競争関係」とは、現実に競争関係がある場合に限られず、将来現実化する関係であれば足りると解される。一審被告らと一審原告は、どちらも遮熱工事に関する事業者であって、事業の性質が共通しており、営業活動上顧客を共通にする可能性があるから、「競争関係」にある。
⑵ 告知し又は流布する行為
告知とは、不特定又は多数の者に対して流布しなくても、特定の者に対し告知さえすれば成立するものと解されるから、本件告知は不競法上の「告知し又は流布する行為」に該当する。
⑶ 営業上の信用を害する虚偽の事実
ア 文言1~3は、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、いずれも一審被告らが特許権侵害をし、又はその可能性があると読み取られるものであるところ、一審被告らが特許権を侵害した事実はないから、いずれも「虚偽の事実」に該当する。イ 文言1は「壁に両面テープを使用して直貼りした件」についての訴訟を提起したとされているが、本件特許に係る発明は壁に対する施工を対象とするものではないから、訴訟の帰趨にかかわらず、「虚偽」を含むものである。同文言を、「今回は、室内側の直貼り工法が対象」、「直貼り工法を見たら特許侵害を疑う」といった本件遮熱ニュースのその他の記載と併せ読むと、サーモバリアを室内側に直貼りすれば、特許権侵害行為に該当し、一審被告山創が、室内天井のみならず、室内側の直貼りにより特許権侵害を行ったと理解される。一審原告は、本訴請求の帰趨とは関係なく客観的に虚偽の事実の告知をしているのであり、特許権侵害訴訟を提起した事実及びその経緯を説明したものと解釈する余地はない。また、文言1は、一審被告ライフテックがあちこちで特許権侵害を行ったと受け取られるものであるところ、一審被告ライフテックが特許権侵害をした事実はないのであるから、「虚偽」を含むものである。仮に、一審原告が提訴に至った理由を説明する文脈でこの記載がされたとしても、虚偽の事実の告知であることに変わりはない。ウ 文言2は、「サーモバリアを使用して特許侵害に当たると思われる会社が複数社あった」としているが、一審原告が本件特許権を侵害したと主張する施工例は1例にすぎないのであるから、「虚偽」を含むものである。エ 文言3は、サーモバリアを用いる全ての会社が、その態様に関わらず、特許権侵害に当たり得ると読み取れるものであるところ、汎用品であるサーモバリアの使用がおよそ特許権侵害になるわけではなく、特許権侵害に該当し得るのはごく一部であるから、「虚偽」を含むものである。オ 文言1~3によるこれらの虚偽の事実の摘示は、一審被告らの社会的評価を低下させ、「営業上の信用」を害するものである。
⑷ 故意又は過失
一審原告は、一審被告らの競業者に対し、特段の検討をすることもなく、一審被告らの特許権侵害を断定し、告知しているので、一審原告には少なくとも過失がある。また、本件告知は、社会通念上必要と認められる範囲を超えたものであって、その実質は、一審被告らの信用を毀損し市場での競争において優位に立つことを目的としてなされたものであるから、違法性阻却事由も認められない。(一審
(原告の主張)
⑴ 競争関係
一審被告らと一審原告は、それぞれ完結した販売網を構築しており、その構成員は相互に他方から遮熱材を購入することはないので、一審被告らと一審原告との間に「競争関係」がない。
⑵ 告知し又は流布する行為
不競法上の「告知し、又は流布する行為」とは、他人の営業上の信用を害するおそれのある態様でなされたものをいうと解すべきところ、一審被告らと一審原告はそれぞれ完結した販売網を構築しており、その構成員は相互に他方から遮熱材を購入することはないから、一審原告の加盟店に対し、第三者への開示を禁止した上で「遮熱ニュース」を配布する行為は、一審被告らの営業上の信用を害するおそれはなく、不競法上の「告知し、又は流布する行為」に当たらない。
⑶ 営業上の信用を害する虚偽の事実
ア 「虚偽の事実」とは、客観的真実に反する事実のことであり、原判決が説示するように、公正な競争を阻害するかによって「虚偽の事実」の告知になるかが決まるわけではない。文言1のうち「兼ねてより、(株)ライフテックには特許侵害の疑いありと特許事務所より通告していました。ところが、あちこちで特許侵害が見受けられたので特許侵害訴訟を行うものです。」と記載されている部分は、一審原告が一審被告らに対して特許権侵害訴訟を提起するに至った経緯及びその理由を説明したものであって、客観的に特許権侵害が存在したという事実を述べたものではない。同部分では、「特許侵害の疑いありと特許事務所より通告していました。」、「あちこちで特許侵害が見受けられた」との表現が用いられており、訴訟で問題にされる余地のない確定した事実であるかのように記載しているわけでも、断定した表現を用いているわけでもない。訴訟提起の事実の告知を「虚偽」と認定するには、「裁判においても容易に認められ得る確実な事実」として記載されているなどの特別な事情が必要であるところ、上記のとおり、一審原告は、訴訟提起に至った経緯及びその理由を説明しているにすぎない。また、「見受けられる」との語は、「見てとる。見て判断する。」、「見かける」などを意味するところ、特許権侵害とは多分に特許発明の技術的範囲の解釈や事実の評価を伴う概念であり、人が直接目視で感得できるものではないから、「あちこちで特許侵害が見受けられた」とする文言は、一審原告が見て特許権侵害に当たるのではないかと判断されるものがあったことを述べたものにすぎない。一審被告ライフテックが甲4~6において本件遮熱構造を自己のホームページ等で宣伝していたことからすると、本件特許権を侵害するような態様の遮熱構造が「あちこちで」みられるという一審
(原告の主張)
は事実であり、「虚偽」ではない。仮に、上記文言をもって一審被告ライフテックが本件特許権を侵害している事実を告知するものと解釈されるとしても、一審被告ライフテックが本件特許権を侵害していることは事実であり、一審原告による上記告知は虚偽の事実ではない。イ 「今回は、短期間に終わらすため、室内天井や壁に両面テープを使用して直貼りした件に関しての訴訟とします。」(文言1)、「今回の訴訟で勝利すればサーモバリアを使用している全ての会社が特許侵害の可能性がある事になり」(文言3)と記載されている部分は、前者は訴訟提起に至った経緯及びその理由を説明したもの、後者は本件訴訟で勝訴した場合の影響の可能性についての意見を述べたものであって、いずれも虚偽の事実の告知には当たらない。また、本件訴訟(本訴)の対象に「壁」が含まれるかどうかは重要な点ではなく、仮にこの点が虚偽であったとしても「営業上の信用」を毀損しない。ウ 文言2は、一審被告らを本件訴訟(本訴)の相手方とした経緯ないし理由を説明するものにすぎず、それ自体は何ら事実に反しない。また、「サーモバリアを使用して特許侵害に当たると思われる会社が複数社有りました」という部分は、「思われる」とあるとおり、一審原告の認識した事実を述べたものであるから「虚偽」ではなく、一審被告らの「信用を害する」ものでもない。
⑷ 故意又は過失
一審原告が甲4~6の施工実績や動画からすると一審被告らが本件特許権を侵害し、このような構成の遮熱構造を広く販売していると判断したことには相当性が認められるから、一審原告には故意も過失もなく、違法性も阻却される。
12 争点8(一審被告らの損害及び損害額)について
(一審被告らの主張)一審原告は、権利行使の前に、一審被告らが特許権侵害をしている旨を断定する本件遮熱ニュースを、相当数の一審被告らの潜在的需要者に対して送信したものである。文言1~3には、特許権侵害訴訟の帰趨にかかわらず虚偽である事項が含まれており、しかも、「特許侵害は犯罪、懲役刑(10年以下)有り。」、「サーモバリアを使用している全ての会社が特許侵害の可能性」、「加盟店様に置かれましては、直貼りの情報を得ましたら特許侵害の話をすると受注し易くなると思います。」等の記載があるほか、「犯罪、懲役刑」という文言が冒頭赤字の大見出しで掲げられている。本件遮熱ニュースが一審原告のフランチャイズ加盟店のみに送信されたものであり、これら加盟店が一審原告に対し競業避止義務を負っていたとしても、一審被告らが入手したように、本件遮熱ニュースは、一審原告の加盟店以外の
第三者も事実上入手できる。また、加盟店がフランチャイズを離脱することも
あり得るのであるから、本件遮熱ニュースの送信を受けた加盟店が一審被告らの潜在的顧客であることも否定されない。これらの事情に照らせば、本件告知は、専ら一審被告らの信用を毀損して不利な立場におき、自らが競争上有利な地位に立つことを意図して行われた、極めて悪質なものである。本件告知により、一審被告らの社会的評価が低下しその営業上の信用が害された結果、一審被告らが被った無形損害はそれぞれ300万円を下らず、一審原告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用としてはそれぞれ30万円を認めるべきである。仮に一審被告山創について本件特許権の侵害が認められたとしても、本件遮熱ニュースの内容及びその悪質性に照らせば、その損害額は、一審被告ライテックと同額であり、330万円を下らない。(一審
(原告の主張)
⑴ 一審被告ライフテックの損害
損害賠償額はあくまでも実損填補を原則とすべきであって、「悪質性に鑑みると」などという抽象的な理由で算定されるべきものではない。本件においては、①本件遮熱ニュースを含む「遮熱ニュース」は一審原告の加盟店に対してのみ配布されるものであって、これを目にする人の範囲は極めて限定的であること、②一審原告は、加盟店との間でフランチャイズ契約を締結し、加盟店に対し、「当フランチャイズと同事業、又は類似の営業ないし営業部類に属する企業との取引を行ってはならない」(甲20・9条)との競業避止義務を負わせており、本件遮熱ニュースの配布先は競業避止義務を負った者に限られていること、③一審原告の加盟店は、本件遮熱ニュースを含む「遮熱ニュース」の第三者への配布を禁じられていること、④本件遮熱ニュースは1回配布されたにすぎない単発事案であること、⑤一審被告ライフテックのサーモバリアSの販売規模はそれほど大きいものではなく、一審被告ライフテックと取引先との関係において実際に具体的な影響が及ぼされたことについての具体的な立証もないことからすれば、仮に本件遮熱ニュースによって一審被告ライフテックが何らかの無形の損害を被ったとしても、その額は少額にとどまるというべきであり、原判決が300万円もの損害を認めたのは高額に過ぎる。
⑵ 一審被告山創の損害
仮に本件告知が不競法2条1項21号にいう不正競争に当たるとしても、一審被告山創については、少なくとも当初施工に係る遮熱構造が本件特許権を侵害するとして損害賠償が認められ、本件告知が真実(又は一部において真実)であった以上、仮に損害が発生したとしても、その損害額は少額にとどまるべきであり、原判決が損害額として100万円を認定したことは誤りである。
13 争点9(差止め及び信用回復措置の必要性)について
(一審被告らの主張)
⑴ 本件遮熱ニュースの送付は、不競法2条1項21号所定の不正競争に該当
し、一審被告らの営業上の利益を侵害するから、同法3条1項に基づき、原判決別紙文言目録記載の各文言の告知を差し止める必要性がある。
⑵ また、本件遮熱ニュースは既にメールで配布されており、配布先からこれ
を削除することはできない。そうすると、一審被告らの社会的評価の低下と、営業上の信用の毀損は継続し、新たな損害が発生し続ける具体的な危険性がある。今後の損害発生を予防し、一審被告らの信用を回復するためには、謝罪文の掲載が必要である。(一審
(原告の主張)
いずれも争う。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は、本訴請求については、原判決と同様に、一審原告の請求は、原
判決主文第1項及び第2項掲記の限度で理由があるから認容し、その余は理由
がないからいずれも棄却すべきであり、反訴請求については、原判決と異なり、
一審被告ライフテックの請求は、一審原告に対し、告知の差止め並びに165
万円及びこれに対する令和6年6月1日から支払済みまで年3パーセントの割
合による金員の支払を求める限度で、一審被告山創の請求は、一審原告に対し、
告知の差止め並びに33万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合に
よる金員の支払を求める限度でそれぞれ理由があるから認容し、その余は理由
がないからいずれも棄却すべきであると判断する。
その理由は、以下のとおりである。
本訴請求について
⑴ 本件明細書の記載事項
本件明細書の記載は、原判決「事実及び理由」第4の1(27頁20行目
~30頁10行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑵ 争点1-1(当初施工に係る遮熱構造が「凹部と…素材との間に空間を存
在させている」(構成要件D)を充足するか)
ア 本件訂正発明の構成要件Dは、「前記凹部と…素材との間に空間を存在
させている」というものであるところ、特許請求の範囲及び本件明細書に
は、上記「空間」の中に部品を配置することを妨げる記載はなく、これを
示唆するような記載も存在しない。当初施工に係る遮熱構造において折板
屋根材と遮熱シートとの間に空隙が存在することについては、当事者間に
争いがないところ、上記空隙は「空間」に該当するから、当初施工に係る
遮熱構造は構成要件Dを充足する。
イ 一審被告らは、本件明細書の記載(段落【0006】、
【0022】~【0
】)の記載によれば、構成要件Dにおける「空間」は、輻射熱の移動
を妨げない程度・性質の空隙をいい、当初施工に係る遮熱構造の空隙には、
輻射熱の移動を妨げるペフが敷設され、輻射熱の移動を妨げているから、
同構成要件の「空間」には該当しない旨主張するが、前記判示のとおり、
一審被告らの主張するような解釈は採用できない。
⑶ 争点1-2(一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造を「生産」したか)
ア 証拠(乙6、7)及び弁論の全趣旨によれば、一審被告山創による当初
施工が令和2年5月20日に竣工し、工場屋根に当初施工に係る遮熱構造
が取り付けられたこと、その後、数次の手直し工事を行ったものの遮熱シ
ートの捲れが改善されなかったため、同被告は、令和3年3月31日に是
正工事に着工し、同年6月4日に同工事が竣工したとの事実が認められる。
上記認定事実によれば、当初施工に係る遮熱構造は、同施工の竣工まで
に工場屋根への取付けが完了したものと認められ、同行為は、特許法2条
項1号にいう「生産」に該当する。
イ 一審被告らは、当初施工に係る遮熱構造は、引渡直後より遮熱シートが
剥落し、遮熱構造としての用をなさないものとなったのであるから、この
ように一時的、過渡的に特許発明の構成要件を充足したことをもって、同
号の「生産」があったということはできない旨主張する。
しかし、当初施工に係る遮熱構造は、上記認定のとおり、当初施工の竣
工までに工場屋根に取り付けられている以上、本件訂正発明の構成要件を
充足する遮熱構造を新たに作り出したものということができる。一審被告
らの主張する事情は、本件訂正発明の構成要件を充足する遮熱構造を生産
した後の事情にすぎず、当初施工に係る遮熱構造の取付けが「生産」に当
たるとの上記判断を左右しない。
⑷ 争点2-1(是正工事に係る遮熱構造が「凸部の裏面に…素材を接着手段
により取り付けた」(構成要件C)及び構成要件Fを充足するか)
ア 本件訂正発明の構成要件Cは、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対
してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段に
より取り付けた」というものであり、「取り付け」の手段に関し、「接着手
段により取り付け」ることは記載されているが、
「接着手段」によってのみ
取り付けなければならないとの限定はされていない。
また、他の特許請求の範囲及び本件明細書における接着手段に関する記
載を参照しても、
「本発明は、金属製の折板屋根材や角波外壁材、縦葺き屋
根等凹凸のある素材にボンド等の接着剤で貼れば良く」(段落【001
】)、
「施工方法は非常に簡単で、例えばあらゆる素材の凸部に接着剤を塗
布、その上からアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5を貼れば
よい。ただ、接着する時、素材とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率
の素材5との間には空気を含ませないことが大切であり、接着後空気が良
く抜けるようローラー等でしごく事が重要である。…素材5の接着方法に
は、上記のような接着剤による接着の他に熱溶着、両面テープなどによる
接着方法がある。なお、…素材5の接着を工場にて行う場合は、熱溶着又
は接着剤による接着が主体であり、現地工事の場合は、接着剤による接着
又は両面テープによる接着が主体となる。」
(段落【0034】)などの記載
があるにとどまり、
「接着手段」と接着以外の手段を併用することや、下地
等を併用することを制限し、又はそれにより本件訂正発明が効果を奏しな
くなるなどの記載は存在しない。
これに対し、一審被告らは、本件明細書の段落【0017】に「軽天材
等で組むアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を取り付ける下地
も、又余分な金具等も一切必要としないので大幅なコスト削減が可能であ
る」と記載されていることなどを根拠に、本件訂正発明は、軽天材等で組
む下地又は金具等を併用することを排除するものであると主張する。
しかし、本件明細書の同記載は、従来技術である「鉄骨建物の屋根の下
側に軽天材にて天井を作り、その天井に遮熱材を貼る工法」
(段落【000
】)との対比において、同工法を施工する上で必要となる下地や金具等が
本件訂正発明では不要となるのでコスト削減を図ることができるという
効果を説明したものにすぎず、同記載をもって、本件訂正発明の構成要件
Cの「高反射率の素材」の「取り付け」において「接着手段」以外の手段
を併用することや、そのために必要な下地や金具等を使用することが排除
されていると解することはできない。
イ 他方で、構成要件Cは、「高反射率の素材を接着手段により取り付けた」
ものであるから、接着手段以外の他の手段の併用を妨げるものではないと
しても、
「接着手段」が遮熱構造における二つの素材の取付手段として機能
し、当該「接着手段により取り付けた」といい得るものであることを要す
る。
証拠(甲6、乙7、乙42の2・3)及び弁論の全趣旨によれば、当初
施工の概要は、①折板屋根の下に施してあるペフを一部除去し、②折板屋
根のガルバリュウム鋼板に両面テープを貼り付け、③両面テープにサーモ
バリアSを貼り合わせることにより取り付け、④強力な磁石(ネオジム磁
石)を遮熱シートの内部に入れ込みさらに固定するというものであったが、
当初施工の竣工後、接着強度不足によるサーモバリアSの剥がれが認めら
れ、一審被告山創は、両面テープの増し貼り等の手直し工事を何度か行っ
たものの、サーモバリアSの「捲れ」が収まらなかったため、サーモバリ
アSをいったん剥がした上で、折板屋根の凹部に450mm~600mm
程度の間隔で下地鋼材を屋根全体に敷設し、当該下地鋼材にサーモバリア
Sをタッピングビスで固定するという是正工事を行ったものと認められ
る。
一審原告は、是正工事におけるタッピングビスによる固定手段は遮熱シ
ートの捲れの心配を軽減するための付加的なものにすぎないと主張する
が、上記のとおり、①当初施工後に両面テープの増し貼り等による手直し
工事を複数回行っても、サーモバリアSの捲れが収まらず、当初施工の竣
工から1年も経たないうちに是正工事が必要となったこと、②是正工事に
おける補強方法は、折板屋根の全体にわたり450mm~600mm程度
の間隔で下地鋼材を敷設し、タッピングビスで固定するという広範囲かつ
強固なものであったことなどによれば、是正工事の時点において、当初施
工で貼り付けられた両面テープが残置され、少なくとも部分的には、一定
程度の粘着力を残していたとしても、当初施工の際に貼り付けられた両面
テープに残存していた粘着力が遮熱材の取付手段として機能していたと
は認められない。
したがって、是正工事に係る遮熱構造は構成要件C及びFを充足しない。
ウ 以上によれば、是正工事に係る遮熱構造は、争点2-2について判断す
るまでもなく、本件訂正発明の技術的範囲に属しない。
⑸ 争点3-1(乙13発明を主引例とする無効事由の有無)
ア 乙13公報の記載事項及び乙13発明
原判決「事実及び理由」第4の5⑴(33頁16行目~37頁5行目)
に記載のとおりであるから、これを引用する。
イ 本件訂正発明と乙13発明との対比
本件訂正発明と乙13発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
(相違点)
本件訂正発明は、凹凸のある素材と輻射熱に対して高反射率の素材を
「接着剤、熱溶着、両面テープから選択される接着手段」により取り付け
るのに対し、乙13発明は、シート状断熱材2に「糸6により縫着され」
た「面ファスナー3」と、板状断熱材5に「糸7により縫着され」た「面
ファスナー4」とを対向して相互に係合することにより取り付ける点
ウ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 乙13公報の記載によれば、乙13発明は、折版屋根鋼板の裏面に固
着したシート状断熱材に対して、アルミ箔で包まれた板状断熱材を前記
折版屋根鋼板の裏面の凸部に連結固定した構造に係るものであり、連結
固定する手段として、シート状断熱部材の厚み方向に貫通する糸により
同シート状断熱部材に縫着された面ファスナーと、板状断熱材の厚み方
向に貫通する糸により同板状断熱材に縫着された面ファスナーを用いる
ことを課題解決手段とするものであると認められる。
そして、乙13発明は、上記課題解決手段を採用したことにより、板
状断熱材は、面ファスナーにより、シート状断熱材に連結・固定され、
折版屋根鋼板に支持されるが、シート状断熱材の面ファスナー部分は、
糸により縫着されているため、その厚み方向に貫通する糸により補強さ
れ、面ファスナー部分に加わる荷重によって、シート状断熱材内で層間
剥離が生じてシート状断熱材から板状断熱材が脱落することが防止され、
断熱折版屋根構造の簡略化を図っても、安全性や耐久性の低下が起こら
ないという効果を奏するものである(段落【0008】、【0024】)。
そうすると、本件優先日より前に、部材を連結固定する手段として、
接着剤、熱溶着又は両面テープを用いることや、それらが面ファスナー
と置換可能なものとして周知であった(乙33、40、60~62等)
としても、これらの手段は、部材の表面と表面とを接着するにすぎず、
荷重が加わる側の部材内で層間剥離が生じることを防止する機能を明ら
かに有するものであるとは認められないから、乙13発明において、板
状断熱材をシート状断熱材に連結固定する手段として、上記のいずれを
用いることが単なる設計事項であるとはいえない。また、シート状断熱
材の厚み方向に貫通する糸により縫着された面ファスナーに代えて、接
着剤、熱溶着又は両面テープを用いることに動機付けがあったともいえ
ない。
したがって、相違点に係る本件訂正発明の構成は、当業者において、
乙13発明に上記周知技術又は周知な技術事項を適用することにより容
易に想到することができたものであるとは認められない。
(イ) これに対し、一審被告らは、乙13発明において、面ファスナーを両
面テープ等に置換すると乙13発明の課題を解決することができなくな
る一方で、本件訂正発明において、構成要件Fの追加には特段の技術的
意義があるとはいえないので、乙13発明の面ファスナーを接着剤、熱
溶着又は両面テープから選択される接着手段に置換することは、乙13
発明を、上記課題を解決しない従来の技術(退歩発明)に戻すものにほ
かならず、そこに格別の動機付けも必要ではないと主張する。
しかし、面ファスナーは、面ファスナー同士を脱着させる前に縫着等
の手段により他の部材に取り付ける必要があり、また、その脱着の原理
も接着剤、熱溶着、又は両面テープによる接着とは異なり、面ファスナ
ーを用いることと、接着剤、熱溶着、又は両面テープを用いることとの
技術的意義は同一ではないので、本件訂正発明が乙13発明の課題を解
決しない従来技術に戻すものということはできない。
よって、一審被告らの上記主張は採用することができない。
エ 以上によれば、その余の構成要件について検討するまでもなく、本件訂
正発明は乙13発明と同一であるとは認められず、また、乙13発明に基
づいて容易に発明をすることができたものであるとも認められないから、
一審被告らの乙13発明を主引例とする無効の抗弁は理由がない。
⑹ 争点3-2(乙17発明を主引例とする無効事由の有無)
ア 乙17公報の記載事項及び乙17発明
原判決「事実及び理由」第4の7⑵ア(42頁2行目~44頁9行目)
に記載のとおりであるから、これを引用する。
イ 本件訂正発明と乙17発明との対比
乙17公報には、
「自立片15の一端、又は両端で、端部15Eを空間S
の隅端部SEに当接して接着剤Adを点付与すれば良く…」と記載されて
いる(段落【0019】)。しかし、乙17公報には、自立片15の端部1
Eが凸部状であるとは記載されておらず、図1B、図2のほか、図6に
示された変形例でも、端部15Eが凸部状とはされていない。
そうすると、乙17発明は、本件訂正発明における「凹凸のある素材」
に相当する自立片15が、凸部状でない端部15Eで接着されるものであ
るから、本件訂正発明における「凹凸のある素材の凸部の裏面に対しての
み…接着手段により取り付け」る構成(構成要件C)を有しない。
したがって、その余の構成要件について検討するまでもなく、本件訂正
発明は、乙17発明と同一であるとは認められないから、一審被告らの乙
発明を主引例とする無効の抗弁は理由がない。
⑺ 争点3-3(乙18発明を主引例とする無効事由の有無)
ア 乙18公報の記載事項及び乙18発明
原判決「事実及び理由」第4の7⑶ア(45頁5行目~47頁4行目)
に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決45頁16
行目~17行目の「カバーである。」の次に「…また、C、D、E、及びG
は一体形状であり、一体形状を留め具Hと表記する。」を加える。
イ 本件訂正発明と乙18発明との対比
本件訂正発明と乙18発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
(相違点)
本件訂正発明は、「凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ…高反射
率の素材を接着手段により取り付け」るものであるのに対し、乙18発明
は、折板建材Aに磁力で固定した留め具HのピンEを断熱材Bに貫通させ、
当該ピンEの先端にカバーFが取り付けられることで、折板建材Aに断熱
材Bを取りつけている点
ウ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 乙18発明は、折板建材Aに磁力で固定した留め具HのピンEを断熱
材Bに貫通させ、当該ピンEの先端にカバーFが取り付けられることで、
折板建材Aに断熱材Bを取り付けている。そして、当該構成は、接着加
工といった専門的な工事や接着剤を用いることなく、現状の屋根や壁に
直接手を加えることなく、断熱処理を施すことができるという技術的意
義を有するものである(段落【0003】、【0006】)。そうすると、
乙18発明において、その課題解決のために必須である上記構成を、
「接
着材、熱溶着、両面テープ」のいずれかに置き換えることは、乙18発
明の技術的意義を失わせるものである。
したがって、乙18発明に接した当業者において、上記の置換えをす
ることには阻害要因があるといえるから、相違点に係る本件訂正発明の
構成は、乙18発明に周知技術又は乙28公報に記載された発明を適用
することで容易に想到することができたものであるとは認められない。
なお、一審被告らは、乙18発明には、接着剤によって断熱材を取り
付ける構造が従来技術として開示されている(段落【0003】、【00
】)旨主張する。しかし、仮に、当該記載部分により乙18発明を認
定した場合であっても、
「凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ…取
り付け」るに相当する構成が開示されているとは認められないから、乙
発明に接した当業者において、相違点に係る本件訂正発明の構成に
容易に想到することができたものであるとは認められない。
(イ) 一審被告らは、乙18発明の構成は、接着加工といった専門的な工事
や接着剤を用いることなく、断熱処理を施すことができるという技術的
意義を有するところ、乙18発明のピン等を「接着剤、熱溶着、又は両
面テープ」に置換することは、乙18発明を、上記課題を解決しない従
来の技術(退歩発明)に戻すものにほかならず、そこに格別の動機付け
が必要であるとはいえないから、容易想到である旨主張する。
しかし、前記判示のとおり、本件訂正発明と乙18発明では、接着原
理が異なる上、乙18発明におけるピン等の技術的意義と、本件訂正発
明における接着剤、熱溶着、又は両面テープを用いることとの技術的意
義も同じではないので、本件訂正発明が乙18発明の課題を解決しない
従来技術に戻すものということはできない。
よって、一審被告らの上記主張は採用することができない。
エ 以上によれば、その余の構成について検討するまでもなく、本件訂正発
明は、乙18発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると
は認められないから、一審被告らの乙18発明を主引例とする無効の抗弁
は理由がない。
⑻ 争点4(一審被告ライフテックの侵害主体性及び不法行為該当性)
ア 侵害主体性
証拠(甲3~5)及び弁論の全趣旨によれば、一審被告ライフテックは、
遮熱材であるサーモバリアSを販売する会社であり、サーモバリアSは、
「アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」に該当すること、同製
品の実際の販売又は施工は、一審被告ライフテックが代理店を通じて行っ
ていること、一審被告山創はサーモバリアSを販売又は施工する代理店の
一つであること、一審被告ライフテックのホームページには「施工事例」
の一つとして、一審被告山創が施工した是正工事の写真及び動画が掲載さ
れており、施工前の様子である当初施工に係る遮熱構造も撮影されている
ことの各事実が認められる。
上記認定事実によれば、一審被告ライフテックは、サーモバリアSを販
売する事業者であり、そのホームページにおいて、自社製品の一覧表示や
その特性等の説明に加えて、
「施工事例」として自社製品を使った複数の施
工実績を紹介していたとの事実は認められるものの、一審被告山創の行っ
た是正工事は当該「施工事例」の一つとして掲載されているにすぎず、当
該ホームページ上には、本件特許権の侵害に当たる遮熱構造に係る施工を
推奨するような記載は存在せず、顧客に対して個別の施工工事の価格や仕
様を提示するなどして、取引の申込みを仲介し又は受け付けていたことを
うかがわせる記載も存在しない。
そうすると、一審原告が指摘するように、一審被告ライフテックのホー
ムページにおいて、当初施工に係る遮熱構造が一部掲載され、サーモバリ
アに関する質問や相談を受け付ける「お問い合わせフォーム」(甲30の
・2)が用意されていたとしても、これらの事情をもって、一審被告ラ
イフテックが当初施工に係る遮熱構造の販売を申し出たものであるとい
うことはできない。
したがって、一審被告ライフテックが当初施工に係る遮熱構造の「譲渡
の申出」をしたと認めることはできない。
イ 不法行為(幇助)該当性
一審原告は、一審被告ライフテックが当初施工後に同施工の内容を認識
し、異議を述べることなくその写真をホームページに掲載したことなどを
指摘し、一審被告ライフテックが当初施工に係る遮熱構造の生産及び譲渡
の申出を幇助したと主張する。
しかし、一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造を生産するに当たり、
一審被告ライフテックが、本件特許権を侵害する態様で自社製品が使用さ
れることを認識し又は過失により認識せずにこれを納入したと認めるに
足りる的確な証拠はなく、一審被告ライフテックが当初施工の後に同施工
に係る遮熱構造の写真を「施工事例」としてホームページ上で掲載したと
しても、そのことをもって一審被告山創による生産を幇助するものである
ということはできない。したがって、一審被告ライフテックは、一審被告
山創による当初施工に係る遮熱構造の生産を幇助したということはでき
ない。
また、一審被告ライフテックが当初施工に係る遮熱構造の譲渡の申出を
幇助したと認めるに足りる証拠もない。
ウ 以上によれば、一審被告ライフテックは、当初施工に係る遮熱構造につ
いて、本件特許権の侵害を行ったとも、一審被告山創による特許権侵害を
幇助したとも認められない。
⑼ 争点5(差止めの必要性)
原判決「事実及び理由」第4の9(50頁18行目~50頁24行目)に
記載のとおりであるから、これを引用する。
⑽ 争点6(一審原告の損害及び損害額)
ア 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第4の10(50頁
行目~54頁5行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(ア) 原判決51頁12行目に「特許法102条2項にいう「利益」に該当
する」とあるのを「当初施工に係る遮熱構造の生産と因果関係を有する」
と改める。
(イ) 原判決51頁20行目に「155万3682円」とあるのを「155
万4682円」と改める。
(ウ) 原判決52頁8行目に「人件費」とあるのを「人件費等」と改める。
(エ) 原判決53頁19行目の「したがって、」から同頁20行目の末尾ま
でを削除し、同頁19行目の「経費であるとはいえない。」の後に改行の
上、次のとおり加える。
「一審被告らは、一審被告らと一審原告とは、それぞれ異なる流通網
を構築しており、相互に移動することはないから、商品の販売先(顧客)
を共通にする可能性はなく、両者の市場には補完関係がなく、推定覆滅
事由がある旨主張するが、一審被告山創及び一審原告は、いずれも遮熱
材を販売し、遮熱材を用いた遮熱工事を施工しているので、その市場や
需要者には重なり合いがあるというべきであり、それぞれの流通網が異
なることは、この認定を左右しない。他に損害の推定を覆滅すべき事由
が存すると認めるに足りる証拠はない。
したがって、一審被告らの主張は、いずれも採用することができない。」
(オ) 原判決54頁4行目に「原告の被告山創に対する損害賠償の額は」と
あるのを「一審被告山創が一審原告に対して賠償すべき損害額は」と改
める。
イ 当審における一審被告らの補充主張について
一審被告らは、当初施工に係る遮熱構造は、一時的、過渡的なものであ
って経済的有用性のないものであり、又は、契約内容に適合する状態が実
現したのは是正工事の完了時であるから、請負代金660万円は、当初施
工の対価ではなく、是正工事までを含む一連の工事の対価であるというべ
きであると主張する。
しかし、当初施工及び是正工事が行われた経過及びその内容は、前記⑶
ア記載のとおりであり、本件訂正発明の実施品に当たる遮熱構造は当初施
工において生産され、当該遮熱構造は注文主に引き渡されて同施工は竣工
している以上、当初施工と是正工事は別個の工事であり、上記請負代金は、
一審被告山創が当初施工に係る遮熱構造を生産した対価として得たもの
というべきである。そして、本件において、上記請負代金額の一部を是正
工事の費用に充てる旨の特約があったなどの事情も認められない。
よって、一審被告らの上記主張は採用することができない。
反訴請求について
⑴ 争点8(不正競争(不競法2条1項21号)該当性及び故意又は過失の有
無)
ア 競争関係
(ア) 証拠(甲3、4、10、14等)及び弁論の全趣旨によれば、①一審
原告は、一般建築工事業、土木建築用資材の製造・販売、土木建設業等
を業とする会社であり、遮熱材(トップヒートバリアー)を企画・販売
し、遮熱材を用いた遮熱工事を施工していること、②一審被告ライフテ
ックは、建築資材及び機械の販売等を業とする会社であり、遮熱材(サ
ーモバリア)を企画・販売していること、③一審被告山創は、建設業、
土木一式工事業等を業とする会社であり、一審被告ライフテックの代理
店として、遮熱材(サーモバリア)を販売し、遮熱材(サーモバリア)
を用いた遮熱工事を施工していることが認められる。
上記事実によれば、一審原告と一審被告ライフテックとは、少なくと
も遮熱材の販売につき、また、一審原告と一審被告山創とは、遮熱材の
販売及び遮熱工事の施工につき、その需要者又は取引者を共通にする可
能性があり、それぞれ不競法2条1項21号の規定する「競争関係」に
あるものと認められる。
(イ) 一審原告は、一審被告らと一審原告は、それぞれ異なる流通網(取扱
店・代理店、加盟店)を構築しており、その構成員は相互に移動するこ
とはないから、それぞれの顧客が他方から商品(遮熱材)を購入する可
能性はなく、一審被告らと一審原告とは不競法2条1項21号の「競争
関係」にはない旨主張する。
しかし、同号の「競争関係」にあるというためには、必ずしも現在の
商品販売上の具体的競争関係があることを要せず、その需要者又は取引
者を共通にする可能性があれば足りる。上記のとおり、一審原告と一審
被告ライフテックとは、少なくとも遮熱材の販売を行っている点で、一
審原告と一審被告山創は、遮熱材の販売及び遮熱工事の施工を行ってい
る点で共通しているのであるから、その市場は重なり合い、需要者又は
取引者を共通にする可能性があり、一審原告が主張する上記事情が認め
られるとしても、それをもって、一審原告と一審被告らが競争関係にあ
ることを否定することはできない。
イ 告知又は流布
本件遮熱ニュースは、原判決67~68頁添付の別紙「遮熱ニュース2
年3月27日 No.2408」のとおりのものである(乙30)とこ
ろ、前記第2の2⑹のとおり、一審原告は、文言1~3を含む本件遮熱ニ
ュースを一審原告の加盟店に送付(送信)し、これにより、文言1~3の
内容を告知した(本件告知)ものと認められる。
一審原告は、その加盟店に対し第三者への開示を禁止した上で配布する
行為は一審被告らの営業上の信用を害するおそれがないから告知又は流
布に当たらない旨主張する。しかし、本件遮熱ニュースが一審原告の加盟
店に対し仮に第三者への開示を禁止した上で配布されたものであるとし
ても、配布ないし送付された以外の者に対し開示されその内容が伝播され
る可能性は十分にあるというべきであるから、不競法2条1項21号にい
う告知又は流布に当たるものというべきである。
ウ 本件告知の内容の虚偽性等
(ア) 一審被告ライフテックに対する関係
文言1のうち「(株)ライフテックには特許侵害の疑いありと特許事務
所より通告していました。ところが、あちこちで特許侵害が見受けられ
たので特許侵害訴訟を行うものです。」との記載は、本件遮熱ニュースを
受け取った者の普通の注意と読み方とを基準として判断すれば、一審被
告ライフテックが、あちこちで特許侵害行為を行っていることを告知す
るものと理解される。しかし、既に説示したとおり、一審被告ライフテ
ックを相手方とする本件訴訟において、一審被告ライフテックが本件特
許権を侵害したものとは認められず、また、同被告が他の「あちこち」
で特許侵害行為を行っていると認めるに足りる証拠もないので、この記
載は虚偽の事実の告知に当たる。
また、同文言のうち、
「今回は、短期間に終わらすため、室内天井や壁
に両面テープを使用して直貼りした件に関しての訴訟とします。」との
記載は、一審被告らが両面テープを使用し室内天井や壁に直貼りしたこ
とにより本件特許権が侵害された旨を告知するものと理解されるが、本
件は室内の壁に両面テープを使用して直貼りした事案ではなく、また、
室内の壁に両面テープを使用してサーモバリアを直貼りすれば本件特
許権を侵害するということもできないので、いずれも虚偽の事実の告知
に当たる。
文言3のうち、
「今回の訴訟で勝利すればサーモバリアを使用している
全ての会社が特許侵害の可能性がある事になり、大企業等からは排除さ
れること大になる」との記載は、一審被告らのサーモバリアを使用すれ
ば一審原告の特許権が侵害される可能性があることを告知するものと理
解されるが、本件訴訟の帰趨にかかわらず、サーモバリアを使用するの
みで本件特許権の侵害とならないことは明らかであるから、これも虚偽
の事実の告知に当たる。
したがって、文言1及び3は虚偽の事実を記載したものであり、本件
遮熱ニュースを一審原告のフランチャイズ加盟店に対して送信すること
は、一審被告ライフテックの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に
該当するものと認められる。
なお、文言2は、サーモバリアを使用して特許侵害に当たると思われ
る行為を行っている会社が複数社あり、そのうち一審被告らに絞って訴
訟を行った旨が記載されているところ、同記載は、本件訴訟に至る経過
の告知と理解し得るものであり、一審被告ライフテックの営業上の信用
を害する虚偽の事実の告知には該当しない。
(イ) 一審被告山創に対する関係
文言1は、「被告::(株)ライフテック、山創(株)」「今回は、室内
側の直貼り工法が対象」
「室内天井や壁に両面テープを使用して直貼りし
た件に関しての訴訟とします。」との記載を含むところ、本件遮熱ニュー
スを受け取った者の普通の注意と読み方とを基準として判断すれば、同
記載は、一審被告山創が、室内天井や壁にサーモバリアを両面テープで
直貼りした行為により一審原告の特許権を侵害し、一審原告は、一審被
告山創を相手方として、上記行為を対象として特許権侵害訴訟を提起し
たものと理解される。
一審被告山創を相手方とする本件訴訟において、当初施工に係る遮熱
構造の生産が本件特許権の侵害に当たることは既に説示したとおりであ
り、上記記載のうち、室内天井に両面テープを使用して直貼りした行為
が本件特許権を侵害する旨の記載については虚偽には当たらないが、一
審被告山創が室内天井のほか壁にサーモバリアを両面テープで直貼りし
た行為により一審原告の特許権を侵害したとは認められないので、上記
記載は虚偽の事実を含むものである。
また、上記(ア)と同様の理由により、文言3の「今回の訴訟で勝利すれ
ばサーモバリアを使用している全ての会社が特許侵害の可能性がある」
との記載は虚偽の事実の告知に当たり、文言2は、営業上の信用を害す
る虚偽の事実の告知には該当しない。
(ウ) 一審原告は、文言1及び3は、一審原告が特許権侵害訴訟を提起する
に至った経緯及びその理由を説明するものにすぎず、客観的事実に反す
るものではないから、営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に該当し
ない旨主張する。
しかし、「あちこちで特許侵害が見受けられた」、「室内天井や壁に両
面テープを使用して直貼りした件」、
「今回の訴訟で勝利すればサーモバ
リアを使用している全ての会社が特許侵害の可能性がある事になり」な
どの記載は、本件特許権の及ぶ範囲、本訴で問題とされた一審被告らの
行為、本訴の影響などに関する虚偽の事実を含むものであり、単に本件
特許権に関する侵害訴訟を提起するに至った経緯及びその理由を客観
的に説明しているにとどまらず、また、
「見受けられた」
「可能性がある」
などの文言を一部使用しているとしても、本件遮熱ニュースの記載内容
全体、フォントの大きさや色などを総合すると、一審被告らが本件特許
権を侵害した旨を読み手に強く印象付けるものというべきである。
したがって、一審原告の上記主張は採用できない。
エ 一審原告の故意又は過失、違法性
本件遮熱ニュースの内容及び告知態様に照らせば、一審原告には、文言
及び3を告知した行為につき、少なくとも過失が認められる。
また、本件遮熱ニュースの内容及び告知態様に照らせば、上記告知は、
競業者の信用を毀損して特許権者が市場において優位に立つことを目的
としてされたものということができ、また、その内容も社会通念上相当と
認められる範囲を逸脱するものであって、特許権の正当な権利行使の一環
としてなされたものであるとは認められないから、文言1及び3の告知行
為が違法性を欠くものとは認められない。
オ 以上によれば、一審原告は、文言1及び3の告知行為により一審被告ら
に生じた損害について、賠償すべき責任を負う。
⑵ 争点9(一審被告らが受けた損害の額)
ア 一審被告ライフテックの損害及びその額
(ア) 無形損害
前記⑴イのとおり、一審原告による文言1及び3の告知行為は、一審
原告のフランチャイズ加盟店に向けたものであるとはいえ、一審被告ラ
イフテックの企画・販売する遮熱材の需要者及び取引者になり得る者に
対するものであったから、これにより、一審被告ライフテックの営業上
の信用が毀損されたものと認められる。
そして、文言1及び3は、室内天井にサーモバリアを両面テープで直
貼りした行為により一審原告の特許権を侵害した旨の告知にとどまら
ず、サーモバリアを使用すると一審原告の特許権を侵害することになり、
大手企業等との取引から排除されることになるなどと指摘するものであ
り、その内容は、一審被告ライフテックが企画・販売する遮熱材である
サーモバリアを一般的に攻撃するものであって、信用棄損の程度は大き
いというべきである。
他方で、本件告知に掲載された本件遮熱ニュースは、一審原告のフラ
ンチャイズ加盟店を対象とするにとどまり、広く一般に向けられたもの
ではないこと、また、本件告知は遮熱ニュースの特定の号に1回掲載さ
れたにすぎず、複数号にわたって継続的に告知が行われたわけではない
こと等の事情が認められ、本件遮熱ニュースによる本件告知の後にサー
モバリアの販売や取引に実害が生じたなどの事情もうかがわれない。
以上に加え、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、一審被告ライフ
テックの営業上の信用が毀損されたことによる損害(無形損害)の額は、
万円と認めるのが相当である。
(イ) 弁護士費用
弁護士費用相当の損害としては、前記損害額150万円の1割に相当
する15万円を一審原告の不正競争と相当因果関係のある損害として認
めるのが相当である。
(ウ) 以上によれば、一審被告ライフテックの損害賠償請求は、一審原告に
対し、165万円及びこれに対する不正競争の後の日である令和6年6
月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損
害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
イ 一審被告山創の損害及びその額
(ア) 無形損害
前記のとおり、一審原告による文言1及び3の告知行為は、一審原告
のフランチャイズ加盟店に向けたものであるとはいえ、サーモバリアを
販売し、遮熱工事を施工する一審被告山創の需要者及び取引者になり得
る者に対するものであったから、これにより、一審被告山創の営業上の
信用が毀損されたものと認められる。
他方、一審被告山創については、当初施工に係る遮熱構造が一審原告
の特許権を侵害したとする点は虚偽ではなく、本件遮熱ニュース中にお
いて、サーモバリアの販売会社として明記されているのは一審被告ライ
フテックのみであるなどの事情も認められる。これに加えて、前記判示
の本件遮熱ニュースの対象、告知の掲載の回数、取引への実害の有無等
を含め、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、一審被告山創の営業上
の信用が毀損されたことによる損害(無形損害)の額は、30万円と認
めるのが相当である。
(イ) 弁護士費用
弁護士費用相当の損害としては、前記損害額30万円の1割に相当す
る3万円を一審原告の不正競争と相当因果関係のある損害として認める
のが相当である。
(ウ) 以上によれば、一審被告山創の損害賠償請求は、一審原告に対し、3
円及びこれに対する不正競争の後の日である令和6年6月1日から支
払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を
求める限度で理由があり、その余は理由がない。
⑶ 争点10(差止め及び信用回復措置の必要性)
本件遮熱ニュースの送付による不正競争が一審被告らの営業上の利益を侵
害するものであることは明らかであるから、一審原告が原判決別紙文言目録
記載1及び3の各文言を第三者に告知することを差し止める必要性が認めら
れる。他方、本件遮熱ニュースの対象、告知の掲載の回数・期間、取引への
実害の有無等に照らすと、謝罪広告を掲載する方法による信用回復措置を命
じる必要があるとはいえない。
したがって、一審被告らの不競法3条1項に基づく差止請求は、上記各文
言の差止めを求める限度で理由がある。
第5 結論
以上の次第で、本訴請求についての原判決の判断は相当であり、反訴請求に
ついての原判決の判断は一部失当であるから、一審原告の本件控訴に基づき、
原判決中、反訴に係る部分を主文第1項のとおり変更し、一審原告の本件控訴
中本訴に係る部分及び一審被告らの本件控訴をいずれも棄却することとして、
主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
佐 藤 達 文
裁判官
今 井 弘 晃
裁判官
柵 木 澄 子
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