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令和8(ワ)3294損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所
裁判年月日 令和8年10月15日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社Presto
被告株式会社ファミリーマート
法令 商標権
商標法4条1項16号2回
商標法3条1項3号2回
民法709条1回
キーワード 無効11回
商標権6回
無効審判4回
損害賠償2回
侵害2回
許諾1回
実施1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本判決で用いる呼称(略語) (1) 本件商標(権) :商標登録第6095738号に係る商標(権) (2) 被告商品:別紙1及び別紙2の写真に係る煮卵が入ったおにぎり商品 2 事案の要旨 本件は、原告が、被告による被告商品の販売が、 「月見」ないし「月見おむ すび」との標章を使用するもので、登録商標を「月見」 、指定商品を第30類 (弁当、おにぎり)とする本件商標権を侵害したとして、被告に対し、民法7 09条に基づく100万円の損害賠償金(一部請求)及びこれに対する令和8 年2月7日(訴状送達の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの 割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。

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判決文

令和8年10月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和8年(ワ)第3294号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 令和8年9月10日

判 決

原 告 株式会社Presto

代表者代表取締役

被 告 株式会社ファミリーマート

代表者代表取締役

訴訟代理人弁護士 上 田 望 美

同 西 本 政 司

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和8年2月7日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本判決で用いる呼称(略語)

(1) 本件商標(権):商標登録第6095738号に係る商標(権)

(2) 被告商品:別紙1及び別紙2の写真に係る煮卵が入ったおにぎり商品2 事案の要旨本件は、原告が、被告による被告商品の販売が、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用するもので、登録商標を「月見」、指定商品を第30類(弁当、おにぎり)とする本件商標権を侵害したとして、被告に対し、民法709条に基づく100万円の損害賠償金(一部請求)及びこれに対する令和8年2月7日(訴状送達の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。

5 3 前提事実(争いのない事実、掲記各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

(1) 当事者ア 原告は、平成25年4月18日に設立された、コンサルティング事業等を目的とする株式会社である。イ 被告は、昭和23年8月19日に設立された(令和元年9月1日に商号変更された)、フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア等の経営及びコンサルタント事業等を目的とする株式会社である。

(2) 本件商標権原告は、次の内容の本件商標権を有している(甲1、弁論の全趣旨)。ア 登録番号 第6095738号イ 出願日 平成30年2月27日ウ 登録日 平成30年11月9日エ 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

第30類 弁当、おにぎり

オ 登録商標 (標準文字)月見

(3) 被告の行為

被告は、令和7年9月30日頃から同年10月13日頃まで、コンビニエンスストアに係る事業の一環として、「月見背徳メシ」と称するキャンペーンを実施し、その取扱商品の1つとして、煮卵が入ったおにぎり商品(被告商品)を、被告の直営店で小売販売するとともに、フランチャイズ店に卸販売した。被告商品の包装は、別紙1のとおりであるほか、被告商品の陳列場所に掲示されたショーカードは、別紙2のとおりであり、また、店舗に掲示された上記キャンペーンのポスターは、別紙3のとおりで、左側の列の真ん中に、被告商品が掲載されていた。

(4) 本訴に至る経緯

5 ア 原告は、令和7年10月1日から同年12月24日にかけて、被告に対

し、複数回にわたり、上記キャンペーンでの商品販売による本件商標権の侵害を理由として、その中止を求めるとともに、通常使用権許諾契約の締結等に向けた協議を提案したが、被告は、これを拒否した(甲9ないし11、乙4)。イ 原告は、令和8年1月27日、枚方簡易裁判所において、本訴を提起したが、被告の申立てを受けて、民事訴訟法18条に基づき、当庁に移送された。

4 争点

(1) 本件商標と別紙4記載1に係る標章が同一又は類似か(争点1)

(2) 本件商標と別紙4記載2に係る標章が同一又は類似か(争点2)

(3) 本件商標と別紙4記載3に係る標章が同一又は類似か(争点3)

(4) 本件標章と別紙4記載4に係る標章が同一又は類似か(争点4)

(5) 本件標章と別紙4記載5に係る標章が同一又は類似か(争点5)

(6) 商標的使用(争点6)

(7) 無効理由ないし権利濫用(争点7)

(8) 損害の有無及び金額(争点8)

第3 争点に対する当事者の主張

1 争点1(本件商標と別紙4記載1に係る標章が同一又は類似か)について

【

(原告の主張)

】被告は、被告商品の販売において、別紙4記載1のとおり、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用しているもので、これは本件商標である標準文字の「月見」と同一又は類似するものといえる。また、仮に、別紙4記載1で使用されている標章を「月見おむすびマヨたま」などといった文字列全体であるとの前提に立ったとしても、被告商品を含めた複数の商品が、「月見」の文字を共通としてキャンペーン展開がされているな

5 どの事情を踏まえると、「月見」が単に卵入りであることを示す説明的表示に

とどまるということはなく、「月見」の文字部分こそが、自他商品識別標識として、需要者に認識される主要部分であり、本件商標と同一又は類似との結論に違いはない。【

(被告の主張)

】

(1) そもそも、被告は、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用して

おらず、これを前提とする

(原告の主張)

に理由がないことは明らかである。別紙1において、包装に付されている表示は「月見おむすびマヨたま(こってりガーリックマヨ)」である。また、

(原告の主張)

について、このような表示のうち「月見」の文字部分を分離観察して類否判断することが許される旨の趣旨を含むものとしても、同表示は、「月見おむすびマヨたま」の文字と「(こってりガーリックマヨ)」の文字が左右二行に表示されてなり、行と行の間及び各行に記載された文字の間に空間は設けられていない。また、全体が同じ書体と縁取り色(文字の外周を文字より一回り大きい形で取り囲む白色の縁取り色)で表示され、文字の大きさは「月見おむすびマヨたま」がやや大きめ、「(こってりガーリックマヨ)」がやや小さめとなっている。このように、別紙4記載1の表示は、全ての文字が共通の色を縁取りとして空間等を設けずまとまりよく表示されているところ、百歩譲って行及び文字の大きさの違いから、需要者が「月見おむすびマヨたま」の文字と「(こってりガーリックマヨ)」の文字を区別して認識することがあったとしても、「月見おむすびマヨたま」の中の「月見」の文字部分だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているとはいえない。他方、上記表示のうち「月見」の文字が黒色の輪郭線のある黄色、それ以外の文字が黒色となっていることは確かであるが、前者については食材の卵から連想される黄色を使用したというものにすぎず、やはり「月見」の部分

5 だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているとはいえない。

(2) また、取引者や需要者の認識の観点からも、「月見」の語は、「卵黄を月

に見立てた料理」を表す語として普通に用いられている語であり、かかる意味での用例として、「月見そば」を典型例として、「月見〇〇」や「〇〇月見」のように「月見」の前後に料理名や食品名を配置する表現が広く一般的に用いられている。かかる用例において、「月見」は、その前後の料理名や食品名を説明・修飾する語句として位置付けられるものであり、需要者は、このような表現に接した場合、その全体を不可分一体のものとして理解するのが普通であり、「月見」を独立して出所表示機能を有する表示として認識することは考え難い。更に、本件においては、「月見」の語に「※月をイメージした卵が入っています。」との注釈も付されており、需要者は、「月見おむすびマヨたま」が上記「月見〇〇」又は「〇〇月見」(〇〇は料理名や食品名)の用例に従った不可分一体の表現であることを容易に理解でき、需要者が、「月見おむすびマヨたま」の文字を、「月見」と「おむすびマヨたま」とに区切って理解することはあり得ない。

(3) したがって、別紙4記載1に係る標章は、「月見」の文字が分離ないし要

部観察されるものではなく、原則通り、全体観察されるべきものであり、本件商標と類似しない。

2 争点2(本件商標と別紙4記載2に係る標章が同一又は類似か)について

【

(原告の主張)

】被告は、被告商品の販売において、別紙4記載2のとおり、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用しているもので、これは本件商標である標準文字の「月見」と同一又は類似するものといえる。また、仮に、別紙4記載2で使用されている標章を「月見おむすびマヨたま」などといった文字列全体であるとの前提に立ったとしても、争点1【

(原告の主張)

】

5 のとおり、「月見」の文字部分こそが、自他商品識別標識として、需要者に認識

される主要部分であり、本件商標と同一又は類似との結論に違いはない。【

(被告の主張)

】

(1) そもそも、被告は、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用して

おらず、これを前提とする

(原告の主張)

に理由がないことは明らかである。別紙2において、ショーカードに付されている表示は「大きなおむすび月見おむすびマヨたま」である。また、

(原告の主張)

について、このような表示のうち「月見」の文字部分を分離観察して類否判断することが許される旨の趣旨を含むものとしても、同表示は、「大きなおむすび」の文字と「月見おむすびマヨたま」の文字が二行に表示されてなり、行と行の間及び各行に記載された文字の間に空間は設けられておらず、全ての文字が共通の書体の影文字でまとまりよく表示されている。

(2) 他方、別紙4記載2に係る標章は、「月見」の文字が黄色、それ以外の文

字が白色となっているが、争点1【

(被告の主張)

】のとおり、「月見」の部分だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているとはいえない。したがって、別紙4記載2に係る標章は、「月見」の文字が分離ないし要部観察されるものではなく、原則通り、全体観察されるべきものであり、本件商標と類似しない。

3 争点3(本件商標と別紙4記載3に係る標章が同一又は類似か)について

【

(原告の主張)

】被告は、被告商品の販売において、別紙4記載3のとおり、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用しているもので、これは本件商標である標準文字の「月見」と同一又は類似するものといえる。また、仮に、別紙4記載3で使用されている標章を「月見おむすびマヨたま」などといった文字列全体であるとの前提に立ったとしても、争点1【

(原告の主張)

】

5 のとおり、「月見」の文字部分こそが、自他商品識別標識として、需要者に認識

される主要部分であり、本件商標と同一又は類似との結論に違いはない。【

(被告の主張)

】

(1) そもそも、被告は、「月見」ないし「月見おむすび」との標章を使用して

おらず、これを前提とする

(原告の主張)

に理由がないことは明らかである。別紙3において、被告商品のポスターに付されている表示は「大きなおむすび月見おむすびマヨたま」である。また、

(原告の主張)

について、このような表示のうち「月見」の文字部分を分離観察して類否判断することが許される旨の趣旨を含むものとしても、同表示は、「大きなおむすび」の文字と「月見おむすび」の文字と「マヨたま」の文字が三行に表示されてなり、行と行の間及び各行に記載された文字の間に空間は設けられておらず、全体が同じ書体・大きさの影文字で表示され、まとまりよく表示されている。

(2) 他方、別紙4記載3に係る標章は、「月見」の文字が黄色、それ以外の文

字が白色となっているが、争点1【

(被告の主張)

】のとおり、「月見」の部分だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているとはいえない。したがって、別紙4記載3に係る標章は、「月見」の文字が分離ないし要部観察されるものではなく、原則通り、全体観察されるべきものであり、本件商標と類似しない。

4 争点4(本件商標と別紙4記載4に係る標章が同一又は類似か)について

【

(原告の主張)

】被告は、被告商品の販売において、別紙4記載4のとおり、「月見」との標章を使用しているもので、これは本件商標である標準文字の「月見」と同一又は類似するものといえる。また、仮に、別紙4記載4で使用されている標章を「月見背徳」という文字列全体であるとの前提に立ったとしても、争点1【

(原告の主張)

】のとおり、

5 「月見」の文字部分こそが、自他商品識別標識として、需要者に認識される主

要部分であり、本件商標と同一又は類似との結論に違いはない。【

(被告の主張)

】

(1) そもそも、被告は、「月見」との標章を使用しておらず、これを前提とす

る

(原告の主張)

に理由がないことは明らかである。別紙1の被告商品の包装及び別紙2の被告商品のショーカードに付されている表示は「月見背徳」である。

(2) また、

(原告の主張)

について、このような表示のうち「月見」の文字部分を分離観察して類否判断することが許される旨の趣旨を含むものとしても、同表示は、黄色い月のイラストを背景に、「月見背徳」の文字が上下二行に表示されてなり、文字の間に空間は設けられておらず、全体が同じ書体・縁取り色・同程度の大きさで表示され、まとまりよく表示されており、「月見」の部分だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているとはいえない。したがって、別紙4記載4に係る標章は、「月見」の文字が分離ないし要部観察されるものではなく、原則通り、全体観察されるべきものであるから、本件商標と類似しない。

5 争点5(本件商標と別紙4記載5に係る標章が同一又は類似か)について

【

(原告の主張)

】被告は、被告商品の販売において、別紙4記載5のとおり、「月見」との標章を使用しているもので、これは本件商標である標準文字の「月見」と同一又は類似するものといえる。また、仮に、別紙4記載5で使用されている標章を「月見背徳メシ」という文字列全体であるとの前提に立ったとしても、争点1【

(原告の主張)

】のとおり、「月見」の文字部分こそが、自他商品識別標識として、需要者に認識される主要部分であり、本件商標と同一又は類似との結論に違いはない。

5 【

(被告の主張)

】

(1) そもそも、被告は、「月見」との標章を使用しておらず、これを前提とす

る

(原告の主張)

に理由がないことは明らかである。別紙3の被告商品のキャンペーンポスターに付されている表示は「月見背徳メシ」である。

(2) また、

(原告の主張)

について、このような表示のうち「月見」の文字部分を分離観察して類否判断することが許される旨の趣旨を含むものとしても、同表示は、「月見背徳メシ」の文字が一行に表示されてなり、文字の間に空間は設けられておらず、全体が同じ書体の影文字で表示され、文字の大きさは、6つの文字が外側(1文字目と6文字目)から内側(3文字目と4文字目)に向けて均等に徐々に小さくなるように配置され、6つの文字全体として左右対称の形を構成し、まとまりよく表示されている。

(3) 他方、別紙4記載5に係る標章は、「月見」の文字が黄色、それ以外の文

字が白色となっているが、争点1【

(被告の主張)

】のとおり、「月見」の部分だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているとはいえない。したがって、別紙4記載5に係る標章は、「月見」の文字が分離ないし要部観察されるものではなく、原則通り、全体観察されるべきものであり、本件商標と類似しない。

6 争点6(商標的使用)について

【

(原告の主張)

】被告商品に係る上記各標章は、商品名・キャンペーン名・販促表示として、反復継続して、使用され、また、パッケージ、店頭ポスター、ショーカード等において、商品名として大きく、あるいは目立つ色・フォントで表示され、需要者の注意を強く惹く態様で使用されている。これらは、需要者に対し、当該商品群を識別させ、「月見」表示を商品選択の重要な要素として認識させて、購買を誘引する表示である。実際に需要者が接する販売現場では、店舗入口の巨大ポスター、売場の棚P

5 OP、ショーカード及び商品包装を通じ、一貫して「月見」「月見背徳メシ」

が販売促進上の主要な訴求表示として大きく表示されていた。需要者が接する販売態様の全体をみれば、「月見」が単なる説明表示にとどまらず、商品群を強く印象付ける表示として使用されてきたことは明らかである。被告自身、「月見背徳メシ」キャンペーンについて、「月見関連商品」「月見商品」などと呼んで、対外的に説明し、「月見」を単に卵が入っていることを説明する表示としてではなく、商品シリーズ及び季節キャンペーンを示す販売上の重要な表示として「月見」を用いており、「月見」は、単なる説明的表示ではなく、個々の商品説明を超えて、複数商品を横断するシリーズ又はキャンペーンを識別するものとして機能していたことを示している。また、原告が、「月見弁当」等、本件商標を含む表示を使用して商品販売を行っていた訴外主要事業者に対し、当該表示の使用中止を求めたところ、当該事業者において、当該表示の使用を終了し、別途、商標を出願するなど、主要事業者が「月見」の表示について、その使用方法や権利化を意識した対応を行っていることも、「月見」が説明的表示にとどまらないことを示す事情といえる。したがって、被告商品に係る上記各標章は、商標的に使用されていたものといえる。【

(被告の主張)

】

(1) 被告商品に係る別紙4記載1に係る標章は、全体として、「月に見立てた

卵が入ったガーリックマヨネーズ味のおむすび」であるという、おむすびの具材及び味付けの種類を説明する記述的表示・説明的表示にすぎず、出所表示機能・出所識別機能を果たすような態様で用いられているものとはいえない。

(2) そもそも「月見」という語は、「卵黄を月に見立てた料理」を表すものと

して普通に用いられている。これを、おにぎりをはじめとする食品類に用い

5 た場合、需要者としては、当該食品類の具材として月に見立てた卵が用いら

れていると認識するのが通常である。また、パッケージにおいて、「月見」の語に関連付けて「※月をイメージした卵が入っています。」という注釈が付されている。この注釈は、「月見」の意味をより明確に記述したものであり、このことからも、需要者としては、「月見」の語につき、被告商品の具材として月に見立てた卵が用いられていると認識し、更に、表示全体について、「月に見立てた卵が入ったガーリックマヨネーズ味のおむすび」であるという、おむすびの具材及び味付けの種類を説明する表示であると認識するのが通常であり、それ以外の認識を持つことはあり得ない。

(3) さらに、包装において、被告商品を二つに割った状態(月に見立てた半割

り煮卵と、ガーリックマヨネーズが使用されていることがわかる状態)のイラストが描かれているところ、この点でも、需要者としては、「月見」の語につき、被告商品の具材として月に見立てた卵が用いられていると認識し、更に、上記表示全体について、「月に見立てた卵が入ったガーリックマヨネーズ味のおむすび」であるという、おむすびの具材及び味付けの種類を説明する表示であると認識するのが通常であり、それ以外の認識を持つことはあり得ない。

(4) 加えて、包装の左上部には、ファミマルKITCHENの標章が表示され

ている。当該標章の構成要素である笑顔を模した標章(これに「ファミマル」の文字を組み合わせた標章、「ファミマルKITCHEN」の文字を組み合わせた標章等を含む)は、「ファミリーマート」店で販売される多種多様なプライベートブランド商品に共通して付されている著名な標章であり、被告は、本標章につき、多種多様な生活用品及び食品(第30類 弁当を含む)を指定商品として商標登録を行っている。また、同じく当該標章の構成要素である「ファミマルKITCHEN」の文字からなる標章は、「ファミリー

5 マート」店で販売されるプライベートブランド商品のうち食品類に共通して

付されている著名な標章であり、被告は、本標章につき、多種多様な食品(第30類 弁当を含む)を指定商品として商標登録を行っている。これらの点から、ファミマルKITCHENの標章は、需要者からみて、被告商品の出所を表示するものと容易に認識されるものである。需要者としては、被告商品の出所については、かかるファミマルKITCHENの標章から想起するのが普通であり、「月見おむすびマヨたま(こってりガーリックマヨ)」の文字列から想起することはあり得ない。したがって、別紙4記載1に係る標章は、商標的に使用されたものとはいえないし、別紙4記載2及び3に係る標章についても、同様である。

(5) また、別紙4記載4及び5に係る標章についても、「月見背徳」あるいは

「月見背徳メシ」における「月見」の用語は、「月見背徳」あるいは「月見背徳メシ」というそれぞれの標章の一部にすぎない以上、各標章全体が目立つ態様で記載されていたり、繰り返し記載されたからといって、その中の「月見」の部分が出所表示機能を発揮する態様で使用されたことにはならない。したがって、別紙4記載4及び5に係る標章は、商標的に使用されたものとはいえない。

7 争点7(無効理由ないし権利濫用)について

【

(被告の主張)

】

(1) 本件商標は、商標法3条1項3号又は同法4条1項16号に違反して登録

されたものとして、同法46条1項1号に基づき無効審判により無効とされるべきものであり、無効理由の存在に基づく権利行使の制限(商標法39条、特許法104条の3第1項)、又は権利濫用(民法1条3項)により、権利行使は認められない。

(2) すなわち、「月見」という語は、「卵黄を月に見立てた料理」を表す語とし

5 て普通に用いられている語である。これを、料理の一種である「弁当、おに

ぎり」に用いた場合には、需要者に、原材料及び調理法として月に見立てた卵黄が使用されていると理解されるというほかない。そして、本件商標は、「月見」との標準文字からなる商標であるところ、商標法3条1項3号に違反して登録されたものとして、同法46条1項1号に基づき、無効審判により無効とされるべきものである。

(3) また、本件商標権の指定商品「弁当、おにぎり」は、原材料及び調理法と

して月に見立てた卵黄が使用されている商品に限定されていない。他方、本件商標は、「卵黄を月に見立てた料理」との意味合いを理解させるから、これを「月に見立てた卵黄を使用した弁当、おにぎり」以外の指定商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じるおそれがあり(商標法4条1項16号)、この点においても、本件商標は、商標法46条1項1号に基づき、無効審判により無効とされるべきものである。

(4) なお、本件商標は、無効審判が請求されないまま、商標権の設定登録の日

から5年を経過しているが、商標法4条1項16号に違反して登録された商標については、同法47条1項の除斥期間は適用されないし、同法3条1項3号に違反して登録された商標についても、同号及び同法47条1項の趣旨に鑑みれば、無効理由の存在に基づく権利行使の制限の抗弁(商標法39条、特許法104条の3第1項)あるいは権利濫用の抗弁が、認められるべきである。【

(原告の主張)

】否認ないし争う。

8 争点8(損害の有無及び金額)について

【

(原告の主張)

】被告は、全国規模で、「月見」表示を用いたおにぎり商品を販売し、原告の商標が有する業務上の信用及び顧客吸引力を利用して、相当額の利益を得てお

5 り、他方、原告は、被告による本件商標の無断使用により、相当額の損害を被

った。その損害は100万円を超えるものであるが、本訴においては、その一部である100万円を請求する。【

(被告の主張)

】否認ないし争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(本件商標と別紙4記載1に係る標章が同一又は類似か)について

(1) 本件商標本件商標は、標準文字で、漢字2文字の「月見」である(甲1)。

(2) 被告商品の包装上での表示について原告は、被告商品の包装(別紙1)に付された別紙4記載1の表示について、本件商標と同一又は類似の「月見」ないし「月見おむすび」の標章を使用するものである旨主張する。しかし、別紙4記載1のとおり、被告商品の包装に付されている文字表示は、「月見おむすびマヨたま」の文字を右側に、「(こってりガーリックマヨ)」の文字を左側に、いずれもゴシック体風の文字で、左右二行に縦書きされたもので、これら全体が一体のものとして表記されているといえる(以下、これを「被告標章1」という。)から、「月見」ないし「月見おむすび」との標章が使用されているとの原告の主張は採用することができない(「月見おむすびマヨたま」の文字部分のみで独立の標章を構成するとみる余地もあるが、そのような前提に立ったとしても、「月見」ないし「月見おむすび」との標章が使用されていると認められないとの結論に違いはない。)。他方、原告の主張は、被告商品の包装で使用されている標章が、被告標章1のとおりであるとの前提に立った場合も、商標の類否判断にあたって、「月見」の文字部分について、分離観察が許されるとの趣旨を含むものと解されるところ、この点を次に検討する。

5 (3) 判断手法商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日

第三小法廷判決・民集22巻2号399頁、最高裁平成6年(オ)第110

2号平成9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。(4) 被告標章1の分離観察の可否ア 被告標章1被告標章1は、「月見おむすびマヨたま」の文字が右側に、「(こってりガーリックマヨ)」の文字が左側に、いずれもゴシック体風の文字で、左右二行に縦書きされたものであり、左右の行の間や、それぞれの行の各文字の間に空間は設けられておらず、まとまりよく記載されている。また、左右いずれの行についても、各文字の外周に一回り大きい形で白色の縁取りが施されており、縁取りの中の文字の色は、「月見」の文字が黒色の輪郭線のある黄色で、それ以外の文字が黒色である。文字の大きさ

5 は、右側の「月見おむすびマヨたま」がやや大きめで、左側の「(こってりガーリックマヨ)」がやや小さめとなっている。そして、「月見」の文字の右肩の部位には注釈が存在することを示す「※」が小さく付されている。被告商品の包装に付された被告標章1のすぐ右側には、黄色の円の中に納まるように、上下二段で「月見」「背徳」との文字が表示され、被告標章の左側には、おにぎりを二つに割り、割れたおにぎりの左右に半分に切られた煮卵が入っている様子のイラストが描かれ、その説明であることがわかるように、「半割り煮たまご」「こってりガーリックマヨ」との記載とイラストが黒い線で結ばれ、上記イラストの下部には、「※月をイメージした卵が入っています。」との注釈が記載されている。(以上につき、乙1)イ 検討被告標章1は、上記のとおり、左右二行に縦書きでまとまりよく書かれているもので、特に、右側の「月見おむすびマヨたま」の文字部分は、「月見」の部分と「おむすびマヨたま」の部分とで文字の大きさ及び書体に差異はなく、両文字部分の間に空白部分なども存在しない。他方、被告標章1は、全体として黒色であるのに対し、「月見」の部分は、黒の輪郭線のある黄色とされていて、他の文字部分と差別化され、目立つ態様となっているものである。また、被告商品は、被告における「月見背徳メシ」のキャンペーンとして販売された商品の1つであるが、同キャンペーンを構成する複数の商品は、いずれも商品名の中に「月見」の文字を含んでおり、キャンペーン全体のポスター(別紙3)を見ても、各商品の「月見」の部分は、他の文字(黒の輪郭線のある白色)と異なり、黒の輪郭線のある黄色とされ、広告宣伝上、「月見」の文字が一貫して強調されているものといえる(乙3)。

5 しかし、上記アに記載の被告商品の包装上の注釈やイラストに加え、証拠(乙1~3、5)及び弁論の全趣旨によれば、被告商品を含むこれら商品群は、いずれも月に見立てた卵を具材に取り入れたおにぎり、ハンバーガーなどの料理であり、中秋の名月の季節にあわせ、月を愛でる意味での「月見」に掛けて、卵入りの食品を売り出そうとするキャンペーンとして商品名に「月見」を含め、これを強調して商品展開されたものと認められる。すなわち、被告商品を含めた上記キャンペーンの商品群において、「月見」の文字部分が目立つ態様で商品名が表記されていることは確かであるものの、この点は、これら商品に共通する商品コンセプトを前面に出す趣旨と解されるものであって、出所識別標識として強調されているとはいえないものである。また、より一般的に考えても、「月見」という用語自体は、上記のような元来の意味に加え、卵黄を月に見立てた料理を表す語としても用いられるものと広辞苑にも明記されており(乙5)、そのような料理について、「月見〇〇」又は「〇〇月見」として、「月見」の文字を含む料理名や食品名とする表現も広く一般的に用いられている(乙10ないし19)。このことも踏まえると、需要者においては、煮卵を具材とするおにぎりである被告商品に付された被告標章1も、「月見」に続く「おむすびマヨたま」の文字部分が食品を想起させることも相まって、上記のような食品名の用例に従ったものとして、「月見」の部分を分離することなく受け止めるものと考えられ、「月見」の部分のみが出所識別標識として際立った印象を与えるものとはいえない。さらに、中秋の名月の時期にあわせて、卵を具材に取り入れた料理や食品を、「月見〇〇」「〇〇月見」など「月見」の文字を含む名称で販売展開することは、被告に限らず、他社においても広く行われている(乙12~18)ところで、このような取引の実情を踏まえても、こういった

5 販売展開の一環をなすと理解される被告商品に付された被告標章1の「月見」の文字部分が、特定の出所と紐づけられ、これを識別する標識として機能することは考え難い。以上の検討に加え、被告商品のショーカードやポスターでの表記(別紙2、3)もあわせて考えれば、被告標章1については、その右側に記載された「月見」と「おむすびマヨたま」が一連一体となって、1つの商品名を構成しているものと需要者に受け取られるものである一方、需要者に対し、「月見」の部分から出所識別標識として強く支配的な印象を与えるなど、「月見」の部分のみを分離して商標類否の判断をすることを許容すべき事情があるとはいえず、むしろ、これを否定すべき取引の実情があるといえる(なお、「(こってりガーリックマヨ)」の部分は、括弧書で、文字の大きさも比較的小さい上、同一商品に係る別紙2及び別紙3の表示上には対応する記載がないことを踏まえると、ここにおいて、分離観察の余地があることを否定するものではない。)。そうすると、本件商標と被告標章1の類否を判断するにあたっては、被告標章1のうち、少なくとも「月見おむすびマヨたま」の文字を一連一体のものとして把握し、その構成部分全体を対比するのが相当である。被告標章1から「月見」の部分のみを分離して、商標の類否を判断すべきとする趣旨の原告の主張は、採用することができない。(5) 本件商標と被告標章1の類否の検討以上を前提に、本件商標と被告標章1のうち「月見おむすびマヨたま」の文字部分を対比すると、本件商標は、標準文字で漢字2文字の「月見」であるのに対し、被告標章1の上記文字部分は、「月見」の漢字2字に加え、仮名文字8字を加えた10字からなり、外観及び称呼上、類似しないことは明らかである。また、観念をみても、本件商標は、月を眺め、鑑賞するという「月見」の元来の意味を想起することに加え、指定商品に用いられた場合、

5 卵黄を月に見立てた料理の観念を生じさせるのに対し、被告標章1の上記文字部分からは、そのような「月見」の文字に伴う観念のほか、マヨネーズの味付けが施されたおにぎりとの観念も生じさせるから、両者は、観念においても相違するといえる。したがって、本件商標と被告標章1は、類似しない。

2 争点2(本件商標と別紙4記載2に係る標章が同一又は類似か)について(1) 本件商標本件商標は、標準文字で、漢字2文字の「月見」である(甲1)。(2) 被告商品のショーカード上での表示について原告は、被告商品のショーカード(別紙2)に付された別紙4記載2の表示について、本件商標と同一又は類似の「月見」ないし「月見おむすび」の標章を使用するものである旨主張する。しかし、別紙4記載2のとおり、被告商品のショーカードに付されている文字表示は、「大きなおむすび」の文字が上側に、「月見おむすびマヨたま」の文字が下側に、いずれもゴシック体風の文字で、上下二行に横書きされたもので、これら全体が一体のものとして表記されているといえる(以下、これを「被告標章2」という。)から、「月見」ないし「月見おむすび」との標章が使用されているとの原告の主張は採用することができない。他方、原告の主張は、被告商品のショーカードで使用されている標章が、被告標章2のとおりであるとの前提に立った場合も、商標の類否判断にあたって、「月見」の文字部分について、分離観察が許されるとの趣旨を含むものと解されるところ、この点を次に検討する。

(3) 被告標章2の分離観察の可否ア 被告標章2被告標章2は、「大きなおむすび」の文字が上側に、「月見おむすびマヨたま」の文字が下側に、いずれもゴシック体風の文字で、上下二行に横

5 書きされたものであり、行と行の間や、それぞれの行の各文字の間に空間は設けられておらず、まとまりよく記載されている。また、上下二行にわたる全体が黒色で影を付けた影文字で表示されており、文字の大きさは全て同じである。文字の色は、「月見」が黄色で、それ以外の文字が白色である。そして、「月見」の文字の右肩には注釈が存在することを示す「※」が小さく付されている。被告商品のショーカードに付された被告標章2の左側には、おにぎりを二つに割り、割れたおにぎりの左右に半分に切られた煮卵が入っている様子のイラストが描かれ、イラストの下部には、「※月をイメージした卵が入っています。※画像はイメージです。米飯(おむすび)」との注釈が記載され、イラストの左上には、黄色の円の中に納まるように、上下二段で「月見」「背徳」との文字が記載されている。(以上につき、乙2)イ 検討被告標章2は、上記のとおり、上下二行に横書きでまとまりよく書かれているもので、「月見」の部分と他の文字部分とで文字の大きさ及び書体に差異はなく、特に、「月見おむすびマヨたま」の文字部分は同一の行を構成し、各文字の間に空白部分なども存在しない。他方、被告標章2も、全体として白色であるのに対し、「月見」の部分は黄色で、他の文字部分と差別化され、目立つ態様とされているものではある。しかし、前記1での説示同様に、「月見」の部分が、出所識別標識として強調されているものではないと解されることに加え、「月見」の文字を含む料理・食品名の一般的な用例や他社の商品展開を含めた取引の実情を踏まえれば、被告標章2から「月見」の部分のみを分離して、商標の類否を判断することは許されない。かかる分離観察を肯定すべきとする趣旨の原告の主張は、採用することができない。

5 (4) 本件商標と被告標章2の類否の検討以上を前提に、本件商標と被告標章2を対比すると、被告標章2のうち、特に「月見」の部分を含む形で一体性が強いと解される「月見おむすびマヨたま」の部分のみで見ても、前記1での説示同様に、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない。したがって、本件商標と被告標章2は、類似しない。

3 争点3(本件商標と別紙4記載3に係る標章が同一又は類似か)について(1) 本件商標本件商標は、標準文字で、漢字2文字の「月見」である(甲1)。(2) ポスター上での表示について原告は、被告商品を含めた商品群のポスター(別紙3)に付された別紙4記載3の表示について、本件標章と同一又は類似の「月見」ないし「月見おむすび」の標章を使用するものである旨主張する。しかし、別紙4記載3のとおり、上記ポスターで被告商品に付されている文字表示は、「大きなおむすび」の文字が上側に、「月見おむすび」の文字が中側に、「マヨたま」の文字が下側に、いずれもゴシック体風の文字で、三行に横書きされたもので、これら全体が一体のものとして表記されているといえる(以下、これを「被告標章3」という。)から、「月見」ないし「月見おむすび」との標章が使用されているとの原告の主張は採用することができない。他方、原告の主張は、被告商品について上記ポスターで使用されている標章が、被告標章3のとおりであるとの前提に立った場合も、商標の類否判断にあたって、「月見」の文字部分について、分離観察が許されるとの趣旨を含むものと解されるところ、この点を次に検討する。(3) 被告標章3の分離観察の可否ア 被告標章3

5 被告標章3は、「大きなおむすび」の文字が上側に、「月見おむすび」の文字が中側に、「マヨたま」の文字が下側に、いずれもゴシック体風の文字で、三行に横書きされたものであり、行と行の間や、それぞれの行の各文字の間に空間は設けられておらず、まとまりよく記載されている。また、三行にわたる全体が黒色で影を付けた影文字で表示されており、文字の大きさは全て同じである。文字の色は、「月見」が黄色であり、それ以外の文字が白色である。そして、「月見」の文字の右肩には注釈が存在することを示す「※」が小さく付されている。また、被告標章3に一部重なり合うようにして、その背面には、おにぎりを二つに割り、割れたおにぎりの左右に半分に切られた煮卵が入っている様子のイラストが描かれ、ポスターの下部には、「※月をイメージした卵または卵黄風ソースが入っています。…※画像はイメージです。」との注釈が小さい文字で記載されている。(以上につき、乙3)イ 検討被告標章3は、上記のとおり、三行に横書きでまとまりよく記載されているもので、「月見」の部分と他の文字部分とで文字の大きさ及び書体に差異はなく、「月見」の部分とこれに続く「おむすび」の部分の間にも、各行の間にも、空白部分などは存在しない。他方、被告標章3は、全体として白色であるのに対し、「月見」の部分は黄色で、他の文字部分と差別化され、目立つ態様とされているものではある。しかし、前記1及び2での説示同様に、「月見」の部分が、出所識別標識として強調されているものではないと解されることに加え、「月見」の文字を含む料理・食品名の一般的な用例や他社の商品展開を含めた取引の実情を踏まえれば、被告標章3から「月見」の部分のみを分離して、商標の類否を判断することは許されない。かかる分離観察を肯定

5 すべきとする趣旨の原告の主張は、採用することができない。

(4) 本件商標と被告標章3の類否の検討以上を前提に、本件商標と被告標章3を対比すると、被告標章1及び被告標章2に係る前記認定・説示のもと、被告標章3のうち、「月見おむすびマヨたま」の部分を分離観察する余地があるとの前提に立ったとしても、前記1及び2での説示同様に、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない。したがって、本件商標と被告標章3は、類似しない。

4 争点4(本件商標と別紙4記載4に係る標章が同一又は類似か)について(1) 本件商標本件商標は、標準文字で、漢字2文字の「月見」である(甲1)。(2) 被告商品の包装及びショーカード上での表示について原告は、被告商品の包装(別紙1)及びショーカード(別紙2)に付された別紙4記載4に係る表示について、本件商標と同一又は類似の「月見」の標章を使用するものである旨主張する。しかし、別紙4記載4のとおり、被告商品の包装及びショーカードに付されている文字表示は、「月見」の文字を上側に、「背徳」の文字を下側に、飾り文字で、上下二行に横書きされたもので、これら全体が一体のものとして表記されているといえる(以下、これを「被告標章4」という。)から、「月見」との標章が使用されているとの原告の主張は採用することができない。他方、原告の主張は、被告商品の包装及びショーカードで使用されている標章が、被告標章4のとおりであるとの前提に立った場合も、商標の類否判断にあたって、「月見」の文字部分について、分離観察が許されるとの趣旨を含むものとして解されるところ、この点を次に検討する。(3) 被告標章4の分離観察の可否ア 被告標章4

5 被告標章4は、「月見」の文字を上側に、「背徳」の文字を下側に、飾り文字で、上下二行に横書きされたもので、上下の行の間や、それぞれの行の各文字の間に空間は設けられておらず、まとまりよく記載されている。また、上下いずれの行についても、各文字の外周に一回り大きい形で白色の縁取りが施されており、「月見」の文字部分を含む全体について、縁取りの中の文字の色は濃紺であり、文字の大きさは同程度である。そして、「月見背徳」の文字列の背景には、これらの文字列が丁度その内側に収まるように、黄色い満月のイラストが描かれている。(以上につき、乙1、2)イ 検討被告標章4は、上記のとおり、上下二行に横書きでまとまりよく書かれているもので、「月見」の部分と他の文字部分とで文字の大きさ、書体、色に差異はなく、行と行の間及び各文字の間に空白部分なども存在しない。「月見背徳」の4文字が、黄色い満月のイラストの中に丁度収まるように記載されており、それらの文字列が一連一体のものとして、特徴的な飾り文字で表記されているもので、「月見」の部分のみが強調されているわけではない。そして、前記1で認定・説示したとおり、被告は、中秋の名月の季節にあわせ、月を愛でる意味での「月見」に掛けて、卵入りの食品を売り出そうとするキャンペーンとして商品名に「月見」を含む商品群を販売展開していたものであることに照らせば、その一部をなす被告商品の包装及びショーカードに付された被告標章4が「月見」の文字を含むことも、需要者において、そのような趣旨のもとに理解されるもので、「月見」の文字部分が、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとはいえない。このことは、前記1で認定・説示した「月見」の語の一般的な意味・用例や他社の商品展開を含めた取引の実情を踏まえると、

5 なおさらといえる。他方で、被告標章4のうち「背徳」の文字部分は、被告商品との関係で普通名称などというわけではなく、出所識別標識としての機能を一定有するものといえる。したがって、被告標章4から「月見」の部分のみを分離して、商標の類否を判断することは許されない。かかる分離観察を肯定すべきとの趣旨の原告の主張は、採用することができない。(4) 本件商標と被告標章4の類否の検討以上を前提に、本件商標と被告標章4を対比すると、本件商標は、標準文字で漢字2文字の「月見」であるのに対し、被告標章4は、「月見」の漢字2文字に加え、「背徳」の漢字2文字を加えた4文字からなり、外観及び称呼上、類似しないことは明らかである。また、観念をみても、本件商標は、前記1のとおり、月を眺め、鑑賞するという「月見」の元来の意味を想起することに加え、指定商品に用いられた場合、卵黄を月に見立てた料理の観念を生じさせるのに対し、被告標章4からは、そのような「月見」の文字に伴う観念のほか、「背徳」の文字に伴い、道徳などに反することに加え、食品関係の市場では、健康上の心配を抱かせるような高カロリーな食品といった観念(乙20、21)も生じさせるから、両者は、観念においても相違するといえる。したがって、本件商標と被告標章4は、類似しない。

5 争点5(本件商標と別紙4記載5に係る標章が同一又は類似か)について(1) 本件商標本件商標は、標準文字で、漢字2文字の「月見」である(甲1)。(2) 被告商品を含めた商品群に係るポスター上での表示について原告は、被告商品を含む商品群のポスター(別紙3)に付された別紙4記載5に係る表示について、本件商標と同一又は類似の「月見」の標章を使用するものである旨主張する。

5 しかし、別紙4記載5のとおり、上記ポスターに付されている文字表示は、「月見背徳メシ」の文字が、いずれも飾り文字で一行に横書きされたもので、これら全体が一体のものとして表記されているといえる(以下、これを「被告標章5」という。)から、「月見」との標章が使用されているとの原告の主張は採用することができない。他方、原告の主張は、上記ポスターで使用されている標章が、被告標章5のとおりであるとの前提に立った場合も、商標の類否判断にあたって、「月見」の文字部分について、分離観察が許されるとの趣旨を含むものとして解されるところ、この点を次に検討する。(3) 被告標章5の分離観察の可否ア 被告標章5被告標章5は、上記のとおり、「月見背徳メシ」の文字が一行に、飾り文字で、横書きされたものであり、各文字の間に空間は設けておらず、全体が同じ書体で、黒色で影を付けた影文字で表示されている。また、文字の大きさは、6文字が外側(1文字目と6文字目)から内側(3文字目と4文字目)に向かって均等に徐々に小さくなるように配置され、全体として左右対称の形を構成し、まとまりよく表示されている。文字の色は、「月見」が黄色で、それ以外の文字が白色であり、「月見」の文字の右肩には注釈が存在することを示す「※」が小さく付されている。上記ポスターに付された被告標章5の中央部分(3文字目と4文字目)に当たる「背徳」の文字辺りの背景には黄色い満月のイラストが描かれており、同ポスターの左下部には、小さく「※月見:月をイメージした卵または卵黄風ソースが入っています。※地域・店舗によっては、一部商品を取り扱っていない場合がございます。※画像はイメージです。」と注釈が記載されている。(以上につき、乙3)

5 イ 検討被告標章5は、上記のとおり、一行に横書きでまとまりよく書かれているもので、「月見」の部分と他の文字部分とで文字の書体に差異はなく、文字の大きさとしても、左端の「月」と右端の「シ」、左右それぞれ次の文字である「見」と「メ」が同じ大きさであるなど左右対称の構成が採られており、各文字の間に空白部分なども存在しない。他方、被告標章1ないし3と同様、被告標章5も、「月見」の部分は黄色で、その他の「背徳メシ」の部分が白色であることとは差別化され、「月見」の部分が目立つ態様とされているものではある。しかし、前記1で認定・説示したとおり、被告は、中秋の名月の季節にあわせ、月を愛でる意味での「月見」に掛けて、卵入りの食品を売り出そうとするキャンペーンとして商品名に「月見」を含む商品群を販売展開していたもので、被告標章5は、被告商品を含めたそれら商品群全体を宣伝するポスターの上部に大きく表示されていたものであるところ、これら商品に共通する商品コンセプトを前面に出す趣旨として、「月見」の文字部分を差別化したと解されるもので、出所識別標識として強調されたものとはいえない。これに加えて、前記1で認定・説示した「月見」の語の一般的な意味・用例や他社の商品展開を含めた取引の実情に加え、「背徳」の文字に係る前記4の説示も踏まえれば、被告標章5から「月見」の部分のみを分離して、商標の類否を判断することは許されない。かかる分離観察を肯定すべきとする趣旨の原告の主張は、採用することができない。(4) 本件商標と被告標章5の類否の検討以上を前提に、本件商標と被告標章5を対比すると、本件商標は、標準文字で漢字2文字の「月見」であるのに対し、被告標章5は、「月見」の漢字2文字に加え、「背徳」の漢字2文字及び「メシ」のカタカナ2文字を加え

5 た6文字からなり、外観及び称呼上、類似しないことは明らかである。また、観念をみても、本件商標は、前記1のとおり、月を眺め、鑑賞するという「月見」の元来の意味を想起することに加え、指定商品に用いられた場合、卵黄を月に見立てた料理の観念を生じさせるのに対し、被告標章5からは、そのような「月見」の文字に伴う観念のほか、「背徳」「メシ」の語に伴って、道徳などに反する食事、これが転じて、健康上の心配を抱かせるような高カロリーの食事といった観念も生じさせるから、両者は、観念においても相違するといえる。したがって、本件商標と被告標章5は、類似しない。

6 小括以上によれば、本件商標と被告標章1、本件商標と被告標章2、本件商標と被告標章3、本件標章と被告標章4、本件標章と被告標章5は、いずれも類似しないから、その余の争点について検討するまでもなく、原告の請求には理由がない。

第5 結論

よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部

裁判長裁判官

松 川 充 康

裁判官

小 野 健

裁判官横井真由美は、差支えのため、署名押印することができない。

裁判長裁判官

松 川 充 康

(別紙1)

(別紙2)

(別紙3)

(別紙4)

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1

2

3

4

5

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