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平成22(ワ)38525商標権侵害行為差止等請求事件

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裁判所 認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成24年5月30日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ホワイトハウス
原告株式会社インディアンモト
法令 商標権
商標法4条1項7号5回
商標法4条1項10号5回
商標法4条1項15号3回
商標法4条1項19号3回
商標法37条1号2回
特許法104条の32回
商標法36条1項2回
商標法47条1項1回
キーワード 商標権31回
無効21回
無効審判12回
侵害7回
差止7回
許諾6回
ライセンス2回
主文 1 被告は,別紙被告標章目録記載 1ないし3の標章のいずれかを付したオートバイを,輸入し,販売し,引き渡し,販売若しくは引渡しのため展示し,又は,ウェブサイト上で広告してはならない。
2 被告は,別紙被告標章目録記載 1ないし4の標章のいずれかを付したオートバイをウェブサイト上で広告するに際し,同目録記載5の標章を使用してはならない。
3 被告は,別紙被告標章目録記載 1ないし3の標章のいずれかを付した,オートバイの定価表,ちらし,パンフレット及びカタログを頒布してはならない。
4 被告は,別紙被告標章目録記載 1ないし4の標章のいずれかを付した,オートバイの定価表,ちらし,パンフレット及びカタログに,同目録記載5の標章を付してはならず,同標章を付した同定価表,ちらし,パンフレット及びカタログを頒布してはならない。
5 被告は,別紙被告標章目録記載 1ないし3の標章のいずれかを付したオートバイにつき,同オートバイに付した同目録記載1ないし3の標章を抹消せよ。
6 被告は,別紙被告標章目録記載1ないし3の標章のいずれかを付した,オートバイのちらし,パンフレット及びカタログを廃棄せよ。
7 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
事件の概要 本件は,商標権を有する原告が,被告の輸入販売に係るオートバイについて, 原告の登録商標に類似した標章を付すなどする被告の行為は原告の上記商標権 を侵害するものとみなされる (商標法37条1号)などと主張し,被告に対し, 商標法36条1項に基づく差止請求として,当該オートバイの輸入,販売等の 禁止(請求1∼4)を求めるとともに,同条2項に基づく廃棄請求として,当 該オートバイ等の廃棄(請求5)を求めた事案である。

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判決文

平成24年5月30 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成22年(ワ)第38525 号 商標権侵害行為差止等 請求事件
口頭弁論終結日 平成24年 2月22日
判 決
東京都渋谷区 <以下略 >
原 告 株 式 会 社 イ ン デ ィ ア ン モト
サイクルカンパニージャパン
同訴訟代理人弁護士 佐 藤 雅 巳
同 古 木 睦 美
愛知県名古屋市 <以下略>
被 告 株式会社ホワイトハウス
同訴訟代理人弁護士 五 十 嵐 敦
同 井 上 祐 子
同 小 林 央 典
同補 佐人弁 理 士 森 本 久 実
主 文
1 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 3の標章のいずれかを付したオート
バイを,輸入し,販売し,引き渡し,販売若しくは引渡しのため展示し ,又は,
ウェブサイト上で広告してはならない 。
2 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 4の標章のいずれかを付したオート
バイをウェブサイト 上で広告 するに際し,同目録記載 5の標章 を使用してはな
らない。
3 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 3の標章のいずれかを付した,オー
トバイの定価表,ちらし,パンフレット及びカタログを頒布してはならない 。
4 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 4の標章のいずれかを付した,オー
トバイの定価表,ちらし,パンフレット及びカタログ に,同目録記載5 の標章
を付してはならず ,同標章を付した同定価表,ちらし ,パンフレット及 びカタ
ログを頒布 してはならない 。
5 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 3の標章のいずれかを付したオート
バイにつき ,同オートバイ に付した同目録記載 1ないし 3の標章 を抹消 せよ。
6 被告 は,別紙 被告標章目録記載 1ないし 3の標章のいずれかを付した,オー
トバイのちらし,パンフレット及びカタログを廃棄せよ 。
7 原告 のその余 の請求を いずれも 棄却する 。
8 訴訟費用は, これを5 分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担
とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 4の標章を付したオートバイを,輸
入し,販売 し,引き渡し,販売若しくは引渡しのため 展示し,又は,ウェブサ
イト上で広告してはならない 。
2 主文 2項同旨
3 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 4の標章を付したオートバイの定価
表,ちらし ,パンフレット 及びカタログを頒布 してはならない 。
4 主文 4項同旨
5 被告 は,別紙被告標章目録記載 1ないし 4の標章を付したオートバイ,並び
に同オートバイのちらし,パンフレット及びカタログを廃棄せよ 。
第2 事案 の概要
本件 は,商標権を有する原告が,被告の 輸入販売に係るオートバイ について,
原告の登録商標に類似した標章を付すなどする 被告の行為は原告の上記商標権
を侵害するものとみなされる (商標法 37条1号)などと主張 し,被告 に対し,
商標法36 条1項に基づく差止請求として,当該オートバイの輸入,販売等の
禁止(請求 1∼4)を求めるとともに ,同条2項に基づく廃棄請求として,当
該オートバイ等の廃棄(請求 5)を求めた事案 である。
1 前提事実(後掲の証拠等を掲記 した事実以外は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 原告
原告は, 平成5年 6月に設立された 商標のライセンシング ・マーチャン
ダイジング 等を業とする株式会社である。
(乙46,弁論の全趣旨)
イ 被告
被告は, 昭和54 年11月に開業した(会社設立は昭和38年7月)輸
入車を中心 とした自動車・二輪車の販売等を業とする株式会社である。
(甲6の7,乙88 ,96,当裁判所 に顕著)
(2) 原告の商標権
原告は,次 のとおり 商標権を有している(以下,下記ア∼ウの商標権に係
る登録商標を順に「原告商標 1」「原告商標2」「原告商標3」という 。ま
た,原告商標1∼3を併せて「原告商標」ということがある 。)。
(枝番号を含めて甲1∼3)

ア 登 録番 号 第2674792 号
出 願 日 平成4年2月6 日
査 定 日 平成 6年1月14日
登 録 日 平成6年6月29日
更新登録日 平成 16年3月2日
指 定商 品 第12 類
船舶並びにその部品及 び附属品(「エアクッション 艇」を
除く。),エアクッション 艇,航空機並びにその部品及び
附属品,鉄道車両並 びにその 部品及び附属品 ,自動車並び
にその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれら
の部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷
車,馬車,リヤカー ,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムは
り付け片
登 録商 標
イ 登 録番 号 第4418464 号
出 願 日 平成11年6月 21日
査 定 日 平成 12年7月28日
登 録 日 平成12年9月 22日
指 定商 品 第12 類
船舶並びにその部品及 び附属品,航空機並びにその部品及
び附属品,鉄道車両並 びにその部品及び附属品,自動車並
びにその部品及び附属品,二輪自動車 ・自転車並びにそれ
らの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,
荷車,馬車,リヤカー,荷役用索道,カーダンパー ,カー
プッシャー ,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機
械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,陸上
の 乗 物 用 の 交 流 電 動 機 又は 直 流 電 動 機( そ の部 品 を除
く。),タイヤ又はチューブ の修繕用ゴムはり付け片,乗
物用盗難警報器 ,落下傘
登 録商 標
ウ 登 録番 号 第4915507 号
出 願 日 平成14年12 月28日
査 定 日 平成 17年10月19 日
登 録 日 平成17年12 月16日
指 定商 品 第12 類
船舶並びにその部品及 び附属品,航空機並びにその部品及
び附属品,鉄道車両並 びにその部品及び附属品,自動車並
びにその部品及び附属品,二輪自動車 ・自転車並びにそれ
らの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,
荷車,馬車,リヤカー,荷役用索道,カーダンパー ,カー
プッシャー ,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機
械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,陸上
の 乗 物 用 の 交 流 電 動 機 又は 直 流 電 動 機( そ の部 品 を除
く。),タイヤ又はチューブ の修繕用ゴムはり付け片,乗
物用盗難警報器 ,落下傘
登録商標
(3) 被告の行為
ア 輸入代理店契約
被告 は,平成22年 1月,米国法人Indian Motorcycle Company(以下
「現インディアン社 」という 。)との 間で,被告が現インディアン 社の輸
入代理店と して同社製のオートバイの 販売を行う旨を合意した。
(甲6の3,乙96 ,弁論の全趣旨)
イ 東京モーターサイクルショー における出展
被告は, 平成22 年3月26日から 同月28日まで,別紙被告標章目録
記載1∼4 の標章( 以下,順に「被告標章1」「被告標章2」「被告標章
3」「被告標章4」 という。)のいずれかを付した現インディアン 社製の
オートバイ (以下, 併せて「本件オートバイ」ということがある 。)を,
第37回東京モーターサイクルショー に出展して,販売のため展示し,本
件オートバイの定価表,カタログ及びちらしに ,同目録記載5の標章(以
下「被告標章5」という。) を付して 頒布した。
上記カタログには ,被告標章1∼4 を表示した本件オートバイ の写真が
掲載されている。
(上記段落 につき甲6の2)
ウ 直営ショールーム の開設と販売
被告は, 平成22 年4月10日,愛知県東郷町 において,オートプラネ
ット 名古屋内に直営ショールーム (INDIAN NAGOYA)を,平成 23年4月
2日,東京都世田谷区 において,直営 ショールーム(INDIAN TOKYO)を開
設して,本件オートバイを販売のため 展示し,そのウェブサイト において,
被告標章1 ∼4を表示した本件オートバイの写真を広告し,ウエブページ
の左上に被告標章5 を付して掲示して いる。また,被告は,本件オートバ
イを輸入し ,上記各直営ショールーム で販売している。
(甲6の3,甲7,23∼31,乙87の1,弁論の全趣旨)
エ 本件オートバイの 定価表,ちらし, パンフレット及びカタログの頒布
被告は, 被告標章 2を表示 した本件 オートバイの写真が掲載されている
定価表(甲 24), 被告標章 1∼4を 表示した 本件オートバイ の写真が掲
載されているちらし ,パンフレット及 びカタログ(甲25∼28。ちらし
〔甲27, 28〕には少なくとも被告標章2,4が,パンフレット 〔甲2
6〕には被告標章2 が,カタログ〔甲 25〕には被告標章1∼3が付され
ている。) を頒布し ,これらの定価表 ,パンフレット ,カタログには被告
標章5が付 されている。
(甲24∼28)
(4) 本件に関わる米国における 経過
ア Indian Motocycle Company
Indian Motocycle Company ( 設 立 時 の 商 号 は Hendee Manufacturing
Companyで ある 。以下 「 旧イ ン ディ ア ン社 」 とい う。) は ,1 9 01 年
(明治34 年),米国マサチューセッツ 州において設立された会社であり,
その製造販売したオートバイ に,別紙 インディアン標章目録記載の各標章
(以下,併 せて「インディアン 標章」 という。)を使用した。旧インディ
アン社は, ハーレー ダビッドソンと並 ぶオートバイメーカー であったが ,
1953年 (昭和28年), 倒産によりオートバイの製造を中止 した。
(甲50,乙13,15,24,弁論の全趣旨)
イ Indian Motocycle Co., Inc
Indian Motocycle Co., Inc(以下「新 インディアン 社」という。)は,
1990年 (平成2 年)6月,A(以下「A」という。)によって米国マ
サチューセッツ 州においてオートバイ ,オートバイアクセサリー 等を製造
販売する目的で設立 された会社である 。新インディアン 社は,旧インディ
アン社の事業等を承継したものではなく ,旧インディアン 社とは関係のな
い会社であった。新 インディアン社は ,やがて 倒産するに至り,Aは,1
997年( 平成9年 )12月,米国マサチューセッツ 地区連邦裁判所 にお
いて,新インディアン 社の投資家から 金員等を詐取したなどの 証券詐欺等
により,拘禁90か 月に処せられるとともに ,100万ドルを超える損害
填補等の支払を命ずる旨の判決を受けた。
(乙6,13,14 ,86,弁論の全趣旨)
2 争点
(1) 原告商標1∼3と被告標章 1∼3及び5との 類否(争点1)
(2) 原告商標1∼3と被告標章 4との類否(争点 2)
(3) 原告商標が無効審判 により 無効にされるべきものであるか (争点3)
(4) 原告の商標権の行使が権利濫用に当たるか(争点4)
3 争点 に関する 当事者の 主張
(1) 原告商標1∼3と被告標章 1∼3及び5との 類否(争点1)
(原告 の主張)
ア 原告商標1∼3
(ア) 原告商標1及 び3は,次のとおりヘッドドレスロゴ とモトサイクル
ロゴからなる。
ヘッドドレスロゴ
モトサイクルロゴ
ヘッドドレスロゴ は,右向きの羽根飾りを冠した北米先住民 の図形と
その中に配 した筆記体の「Indian」の文字(インディアンロゴ )とから
なり,同図形及び「Indian」 の文字とを一体不可分のものとしてのみ 把
握しなければならないものではないから ,同図形に対応して,「インデ
ィアン」の 称呼及び「北米先住民」の観念が生じ,インディアンロゴ に
対応して「 インディアン」の 称呼及び「北米先住民」の観念が生ずるか
ら,ヘッドドレスロゴ からは ,「インディアン 」の称呼及び「北米先住
民」の観念 が生ずる 。
モトサイクルロゴ からは ,「インディアンモトサイクルカンパニーイ
ンク」の称呼及び「インディアンモトサイクル という 名前の会社」の観
念が生ずる 。同時に,モトサイクルロゴ において,「Co., Inc」は,法
人で あ る こ と を 示 す語 で あ る か ら, 識 別 力 に お い て弱 く , 「 Indian
Motocycle」はモトサイクルロゴ の要部 であるから ,モトサイクルロゴ
からは,「Indian Motocycle」に対応 して,「 インディアンモトサイク
ル」の称呼及び「北米先住民 のオートバイ」の観念が生ずる。
以上のとおり, 原告商標 1及び3 からは,「インディアン 」の称呼,
「北米先住民」の観念,「インディアンモトサイクルカンパニー 」の称
呼,「インディアンモトサイクルカンパニー という名前の会社 」の観念 ,
「インディアンモトサイクル 」の称呼及び「北米先住民 のオートバイ」
の観念が生 ずる。
(イ) 原告商標2
原告商標2は, ヘッドドレスロゴ からなるから,原告商標 2からは,
「インディアン 」の称呼及び「北米先住民 」の観念が生ずる。
イ 被告標章 1と原告商標1∼3との類似性
(ア) 被告標章1は ,次のとおりである 。
被告標章1は, 右向きの 羽根飾りを冠した北米先住民の図形及びその
中 に 配 し た 筆 記 体 の 「 Indian 」 の 文 字 か ら な る が , 同 図 形 及 び
「Indian」 の文字は,一体不可分のものとしてのみ 把握しなければなら
ないものではないから ,同図形に対応 して「インディアン 」の称呼及び
「北米先住民」の観念が生じ ,「Indian」の文字に対応して「インディ
アン」の称呼及び「北米先住民」の観念が生ずる。
以上のとおり, 被告標章 1からは ,「インディアン 」の称呼及び「北
米先住民」 の観念が生ずる。
(イ) 被告標章1と 原告商標 1∼3とを対比すると,両者は,「インディ
アン」の称呼及び「北米先住民」の観念において同一である。
さらに ,被告標章1は,原告商標 2と外観においても類似する。また,
原告商標1 及び3において, ヘッドドレスロゴ とモトサイクルロゴ とは ,
可分で独立 した要素 として把握されるものであり ,かつ,ヘッドドレス
ロゴとは, モトサイクルロゴ より大書 してあり ,ヘッドドレスロゴ は原
告商標1及 び3において支配的な要素 である。そして ,被告標章1は,
ヘッドドレスロゴと外観においても類似するから,原告商標1及び3と
外観においても類似 する。
(ウ) 以上 のとおり ,被告標章1は, 原告商標1∼3と外観,称呼及び観
念において 類似するから,原告商標1∼3と類似する。
ウ 被告標章 2と原告商標1∼3との類似性
(ア) 被告標章2は ,次のとおりである 。
被告標章2からは,「インディアン 」の称呼及び「北米先住民」の観
念が生じる 。
(イ) 原告商標 1∼3からは,「インディアン 」の称呼及び「北米先住
民」の観念 が生ずる 。
(ウ) 以上 のとおり ,被告標章2は, 原告商標1∼3と称呼及び観念にお
いて類似するから,原告商標 1∼3と類似する 。
エ 被告標章 3と原告商標1∼3との類似性
(ア) 被告 標章3は ,次のとおりである 。
被告標章3は, 右向きの 羽根飾りを冠した北米先住民の図形の中に筆
記 体 のア ル フ ァ ベ ッ ト「Indian」を 配 し た も の で あ る。 同 図 形 及び
「Indian」 の文字からは,それぞれ「インディアン」の称呼及 び「北米
先住民」の 観念が生ずる。
以上のとおり, 被告標章 3からは ,「インディアン 」の称呼及び「北
米先住民」 の観念が生ずる。
(イ) 被告標章3と 原告商標 1∼3とを対比すると,両者は,「インディ
アン」の称呼及び「北米先住民」の観念において同一である。
さらに ,被告標章3は,原告商標 2と外観においても類似する。また,
原告商標1 及び3において, ヘッドドレスロゴ とモトサイクルロゴ とは ,
可分で独立 した要素 として把握されるものであり ,かつ,ヘッドドレス
ロゴは,モトサイクルロゴ より大書してあり,ヘッドドレスロゴ は原告
商標1及び 3において支配的 な要素である。そして,被告標章 3は,ヘ
ッドドレスロゴと外観においても類似 するから ,原告商標1∼3と外観
においても 類似する 。
(ウ) 以上 のとおり ,被告標章3は, 原告商標1∼3と外観,称呼及び観
念において 類似するから,原告商標1∼3と類似する。
オ 被告標章 5と原告商標1∼3との類似性
(ア) 被告標章5は ,次のとおりである 。
被告標章5において,

とは,構成上可分 であり,一体不可分のものとしてのみ 把握しなければ
ならないものではな い。
被告標章5において,
は,「MOTORCYCLE」と比べ大書してなり,かつ,書体においても特色の
ある筆記体 でありかつ縁取りしており ,需要者 の注意を強く惹く 。
他方,
は,普通 に見る活字体であり「Indian」より著しく小書してあり,需要
者の注意を 惹くものではない 。
以上のとおり, 被告標章 5からは ,筆記体の「Indian」に対応して,
「インディアン」の称呼及び 「北米先住民」の称呼を生ずる。同時に,
被告標章5 からは,「Indian/MOTORCYCLE」に 対応して,「インディア
ンモーターサイクル 」の称呼及び「北米先住民 のオートバイ」の観念を
生ずる。
(イ) 被告標章5と 原告商標 1∼3とを対比すると,「インディアン」の
称呼及び「 北米先住民」の観念において類似するから ,被告標章5は,
原告商標1 ∼3と類似する。
加えるに,原告商標1及び3からは,モトサイクルロゴ 中の「Indian
Motocycle」 に 対 応 し て , 「 イン デ ィ ア ンモ ト サ イク ル」 の 称呼 及 び
「北米先住民のオートバイ」 の観念が生ずる。
称呼「インディアンモトサ イクル」と被告標章5から生ずる称呼「イ
ンディアンモーターサイクル 」とを対比すると ,両者 はそれぞれ11音
節及び 13音節からな るが ,そのうちの 「イ」「ン」「 ディ」「ア」
「ン」「サ 」「イ」「ク」「 ル」の9つの音節 において同一であり,相
違は「モ」 と「モー 」,「ト 」と「ター」にすぎない 。そして ,前者は
「モ」と「 モー」と,同一音 の長音か否かの相違にすぎない。後者は,
タ行音の「 ト」と「ター」との相違にすぎないから ,両称呼は,相紛れ
るおそれの 強いものであり, 両称呼は類似する 。
また,「インディアンモトサイクル 」も「インディアンモーターサイ
クル」も,「北米先住民のオートバイ 」の観念 において 類似する 。
こ の よ う に , 被 告 標 章 5 は , 原 告 商 標 1 及 び 3 中 の 「 Indian
Motocycle Co., Inc.」中の「Indian Motocycle」から生ずる称呼及び
観念と類似 するから ,被告標章5は,原告商標 1及び3と,この点にお
いても類似 する。
(ウ) 以上 のとおり ,被告標章5は, 原告商標 1∼3と類似する。
(被告 の主張)
原告商標1 ∼3と被告標章1∼3及び 5が類似することは,積極的には争
わない。
(2) 原告商標1∼3と被告標章 4との類否(争点 2)
(原告 の主張)
ア 被告標章 4は,次 のとおりである。
被告標章 4は,① ミニスカートをはいた女子の図形,②女子の図形に一
部隠された 筆記体の 欧文字「Indian」 ,③女子 の図形及び「Indian」の文
字に一部隠 された星 の図形とからなる 。
女子 の図形 に一部隠された筆記体の欧文字 は,語頭の 「I」及び 末尾の
「ian」が明瞭に読みとれて,「I」の右に「n」の左半分 と読みとれる要
素及び「ian」の左に「d」の右の縦線 と読みとれる要素があるから,被告
標章4 に接した需要者は,女 子の図形に一部隠され た筆記体 の欧文字 が
「Indian」 であると ,容易に認識する 。
そして, 「女子の 図形」,「Indian」の欧文字及び「星の図形」は,一
体不可分のものとしてのみ 把握しなければならないものではないから ,被
告標章 4からは, 「Indian」 に対応して,「インディア ン」の称呼及 び
「北米先住民」の観念が生ずる。
イ 原告標章 1∼3からは,「インディアン」の称呼及び「北米先住民」の
観念が生ずる。
ウ 以上のとおり,被告標章4は,原告商標1∼3と称呼及び観念において
類似するから,原告商標1∼3と類似 する。
(被告 の主張)
ア 原告の主張は争う 。
イ 被 告 標 章 4 は , 女 性 の絵 の 背 後 に書 か れ て い る文 字 の う ち , 語 頭 が
「I」,語尾が「an」であることは辛うじて 読み取り可能なものの ,その
間の文字は 全く不明 であるから,特定 の称呼を持たない。少なくとも「イ
ンディアン 」ないしこれと類似の称呼 が生じるものではない 。また,女性
の絵が最前面に描かれていると 同時に ,女性の絵の背景には女性の絵より
も大きくこれを囲むように星が描かれており,これらの図形は,被告標章
4の構成上最も目立 つ態様にて表されている。したがって,被告標章4は,
需要者をして,「北米先住民 」の観念 を生じさせるものではなく ,全体と
して,「星 の中にいるミニスカートをはいた女性」あるいは「星に囲まれ
たミニスカートをはいた女性 」との観念を生じさせると考えるのが相当で
ある。
また,外観については,被告標章4 は原告商標1∼3には全く描かれて
いない星や 女性の絵 が色彩を伴って描 かれていることから ,原告商標1∼
3とは外観上顕著な 相異点を有するものである 。
ウ 以上より ,被告商標4は原告商標1 ∼3と称呼・観念・外観の点におい
て著しく相異するものであることから 全体として非類似 である。
(3) 原告商標が無効審判 により 無効にされるべきものであるか (争点3)
(被告 の主張)
ア 商標法4 条1項10号
インディアン標章 は,旧インディアン 社(又はその承継者である現イン
ディアン社 )のオートバイを表示するものとして ,需要者において広く認
識 されていた 。そして,原告 商標の指定商品 には, いずれも 「二輪自 動
車」が含まれており ,旧インディアン 社と同一 の商品(オートバイ)につ
いて使用するものである 。
したがって,原告商標は,商標法4 条1項10号の他人の業務に係る商
品を表示するものとして 需要者の間に 広く認識 されている商標であって ,
その商品について使用するものに該当 し,無効審判により無効にされるべ
きものである 。
なお,商標法47 条における無効審判請求 の除斥期間経過後 も,同法3
9条,特許法104 条の3によって, 権利阻止 の抗弁を主張することまで
妨げられるものではない 。仮に除斥期間経過後 は権利行使阻止 の抗弁を主
張することは妨げられると解するとしても,原告は,旧インディアン社と
何ら関係がないのに ,周知なインディアン標章 に類似する原告商標の登録
を受けたものであり ,不正競争の目的 で商標登録を受けたものであるから ,
無効審判請求 についての除斥期間の適用がなく (商標法47条1項),権
利阻止の抗弁をすることは妨げられない。
イ 商標法4 条1項1 5号
インディアン標章 は,旧インディアン 社(又はその承継者である現イン
ディアン社 )のオートバイを表示するものとして ,需要者において広く認
識されていた。
そして,「他人の 業務に係る商品又 は役務と混同を生ずるおそれがある
商標」であるか否かの判断に当たっては,その 他人の標章の周知度のみな
らず,その 他人の標章が創造標章であるかどうか ,その他人の標章がハウ
スマークであるかどうか 等も総合的に 考慮するものとされる (商標審査基
準〔改訂第 9版〕第 3の十三 )。本件 では,別紙インディアン 標章目録記
載1の標章 は,インディアン の酋長の 横顔を描き,ヘッドドレス の絵に重
ねて特徴のある字体 で「Indian」と記載する創造標章 であり,旧インディ
アン社そのものを示 すハウスマークである。さらに,原告商標 の指定商品
には,「二輪自動車 」と密接 な関係を 有する商品が含まれており ,当該商
品の取引者 ・需要者 が「二輪自動車」 のそれと 共通している度合いも高い
といわざるを 得ない 。したがって,原告商標をその指定商品について使用
した場合, インディアン標章 の著名性 にかんがみれば ,これに接する取引
者・需要者 は,その 商品が旧インディアン社と何らかの関係を有する者の
業務に係る 商品であるかのように ,その商品の出所について混同を生ずる
おそれがある から, 原告商標 は,商標法4条1項15号の他人の業務に係
る商品と混同を生ずるおそれがある 商標に該当 し,無効審判により無効に
されるべきものである 。
なお,商標法47 条における無効審判請求 の除斥期間経過後 も,同法3
9条,特許法104 条の3によって, 権利阻止 の抗弁をすることまで 妨げ
られるものではない 。仮に妨げられる と解する としても,原告は,旧イン
ディアン社 と何ら関係がないのに,周知なインディアン 標章に類似する原
告商標の登録を受けたものであり ,不正の目的 で商標登録を受けたもので
あるから, 権利阻止 の抗弁をすることは 妨げられない。
ウ 商標法4 条1項19号
インディアン標章 は,旧インディアン 社(又はその承継者である現イン
ディアン社 )の商品 を表示するものとして ,米国その他世界各国における
需要者の間 で広く認識されている。そして,原告は,旧インディアン社と
は何ら関係 がないのに,旧インディアン 社が培ったインディアン 標章の顧
客吸引力を 利用して マーチャンダイジングビジネス を行ってきたものであ
り,インディアン標章から不正の利益 を得る目的をもって,原告商標を出
願し,使用 したことは明らかである。 したがって,原告商標は,商標法4
条1項19 号の他人 の業務に係る商品 を表示するものとして 外国における
需要者の間 に広く認識されている商品 と同一の商標であって,不正の目的
をもって使用するものに該当 し,無効審判により無効にされるべきもので
ある。
エ 商標法4 条1項7 号
我が国において, 外国における他人 の標章の使用を知りながら,それと
無関係な者 が,当該他人の許諾を得ることなく ,当該商標又はこれに類似
する商標の 設定登録 を受けることは, 商標法4条1項15号等によって 商
標登録を受 けることができない 場合があり得ることはもとより ,その目的
が,我が国 で登録されていないことを 幸いに,当該他人の標章に便乗して
不正な利益 を得るなどの不正 な意図をもって使用することにあるものと 認
められる限 り,公正 な商取引 の秩序を 乱し,ひいては 国際信義 に反するも
のとして, 公序良俗 を害するおそれがある 商標 というべきであるから ,同
項7号によって商標登録を受けることができないと 解される(東京高裁平
成15年7 月16日判決参照 )。
原告は, 旧インディアン社と何ら関係がないにもかかわらず ,旧インデ
ィアン社が ハーレー ダビッドソンと並 び称される伝説のオートバイメーカ
ーであったという名声に便乗 して不正 な利益を得ようとしたものであり ,
不正な意図 が認められる。
したがって,原告商標は,まさに公正な商取引の秩序を害し,ひいては
国際信義に 反するものとして ,商標法 4条1項7号の公序良俗 を害するお
それがある 商標に該当し,無効審判により無効 にされるべきものである 。
(原告 の主張)
ア 商標法4 条1項10号について
被告の主張は否認 し争う。
旧インディアン社 は,1953年( 昭和28年)に倒産,操業停止して
消滅し,原告商標の 出願時・登録査定時に存在 していなかった 。インディ
アン標章が 原告商標 の出願時 ・登録査定時にオートバイに使用されたこと
はなく,我 が国においてオートバイの 需要者の間で周知であったこともな
い。
旧インディアン社 の商標権 は,すべて消滅し,何人にも譲渡されなかっ
た。また, 現インディアン社は,旧インディアン 社の承継人ではない。
イ 商標法4 条1項15号について
被告の主張は否認 し争う。
原告商標 の出願時 ・登録査定時には ,旧インディアン 社は存在していな
かったし, また,旧 インディアン社が かつて有した商標に対する商標権や
旧インディアンの製造販売するオートバイは存在していなかった 。
現インディアン社 は,旧インディアン 社の承継人ではない。
インディアン標章 は,原告商標の出願時・登録査定時 に,旧インディア
ン社のオートバイを 表示するものとして ,又は現インディアン 社のオート
バイを表示 するものとして,我が国の 需要者において 広く認識されていた
ことはない 。
ウ 商標法4 条1項19号について
被告の主張のうち ,原告が旧インディアン 社と関係がないことは 認め,
その余は否認し争う 。
エ 商標法4 条1項7 号について
被告の主張のうち ,被告主張の趣旨 の裁判例があることは認め,その余
は争う。
(4) 原告の商標権の行使が権利濫用に当たるか(争点4)
(被告 の主張)
ア 原告の営業活動
(ア) 原告 は,原告商標を付した自転車について,あたかも旧インディア
ン社に出所 を有するかのように 宣伝広告を行っている 。さらに ,原告は ,
自己の他の 商品の販売活動においても ,原告の商品があたかも 旧インデ
ィアン社に 出所を有するかのように宣伝広告を行っている。
しかし ,原告は ,旧インディアン 社とは一切関係 のない会社である。
このような 原告の行為は,原告と一切関係のない旧インディアン 社の承
継人ないしはその関係者あるいはその ライセンシーの業務であるかのよ
うな混同を 生じさせるおそれのあるものであり ,商標法上,本来保護さ
れるべき性質のものとはいい 難い。
(イ) そして,このような原告の宣伝広告活動 の結果として原告商標に蓄
積する信用 は,あくまで原告 とは一切関係のない旧インディアン 社に対
する信用のみであって ,原告 に対する 信用ではないから ,被告標章を付
した商品が 我が国に輸入・販売されても,原告 に対する信用が害される
ことはない 。すなわち,被告標章を付した商品 が我が国に輸入販売され
ても,需要者は,旧インディアン社の承継人ないしその 関係者 あるいは
そのライセンシーの業務に係 る商品であると出所を認識するものであっ
て,原告の 業務に係る商品であると認識するものではない 。ゆえに,実
質的にみると,原告商標の出所表示機能 が害されたとはいえないのであ
る。ましてや,被告 の輸入する本件オートバイ は旧インディアン 社をそ
の出所とするものであるから ,被告標章を付した商品 が我が国に輸入販
売されても ,原告商標に蓄積 された旧インディアン社に対する 信用は害
されず,かつ出所の混同は起 きない。したがって,本件オートバイの輸
入により, 原告商標 に対する 信用を害することはなく ,その出所表示機
能が害されることはあり 得ない。
(ウ) また ,原告は オートバイの製造販売をしていない 。被告が本件オー
トバイを輸入したとしても, オートバイの製造販売を全く行っていない
原告には, 何ら実質的な損害 は生じない。
(エ) さらに,本件 オートバイは,非常に高価格のオートバイ であり,そ
の価格は378万円以上もするものであり ,ハーレーダビッドソンの最
上位車種をも上回るほどである 。そして,本件 オートバイは,シリンダ
ー,ピストン,フレーム,サスペンション ,ブレーキ のすべてのパーツ
について世界最高水準 のものを使用しており,かつ熟練工による手作業
で一台一台丁寧に製造されていることから ,その品質及び性能 は価格に
ふさわしいものである 。
このように,本件オートバイは高価かつ高品質のものであるから ,か
かるオートバイが日本市場に 輸入されたとしても ,原告又は原告商標の
信用が侵害 されるなどということはない 。
(オ) このように何 ら実質的 な損害が 生じていないにもかかわらず ,単に
同一又は類似した標章であると主張して,被告 による 本件オートバイの
輸入等の行為の差止 めを求めることは ,原告商標についての信用の維持
につながるものではなく ,また出所の混同を防止するものでもないから ,
かえって産業の発達 を阻害し ,需要者 の利益をも害するものである 。
イ 被告の営業活動の 正当性
(ア) 被告 は,名古屋市に本社を置き ,名古屋圏を中心に輸入車正規販売
及び輸入二輪車正規販売 などを営む株式会社である。被告の設立は,昭
和54年11月であり,平成 23年で開業31 年となる。売上高も,平
成22年3 月期の実績で,約 125億円を数える。
そして ,被告は ,現インディアン 社製のオートバイ のほかにも,二輪
車では,トライアンフ ,MV アグスタ ,DUCATI 及びベクトリック
スを取り扱 っている 。さらに ,四輪車 での被告 の取扱車種は,プジョー ,
MINI, ランドローバー, ジャガー ,BMW,VOLVO, アルファ
ロメオ,フィアット ,アバルト,サーブ,シトロエン ,キャデラック,
コルベット ,シボレー,ケーターハム 及びホンダと,多岐にわたる。
さらに ,被告は ,サービスネットワーク として愛知県内に25の拠点
を有し,また,「トライアンフ 名古屋 イースト /モトスクエア 」,「プ
ジョー名東 /中川/一宮/大府/豊橋 」,「フィアット ・アルファロメ
オ西名古屋 /名東/昭和/守山」,「 アバルト 守山」,「MINI 名東
/守山/岡崎」,「 ホンダカーズ名東 名東店 /徳重店/日進南店」,
「ボルボ・ カーズ中川」,「 名古屋南 BMW」 及び「シトロエン名東」
といった, ショールームを展開している。加えて,被告は,「 オートプ
ラネット名古屋」という名称 で,国内最大級の輸入車 ショールームを運
営している 。
以上のように, 被告は,昭和54 年の創業以来,着実に輸入車正規販
売及び輸入二輪車正規販売業 を展開してきたものである 。
(イ) 本件 オートバイは,米国において,旧インディアン 社のインディア
ン標 章 に 係 る 権 利 を 承 継 し た Indian Motorcycle International. LLC
(以下「IMI」という。) から許諾 を受けた 現インディアン 社が製造
販売したものである 。すなわち,米国 コロラド 州連邦地方裁判所 は,平
成10年( 1998 年),旧 インディアン社が保有していた「Indian」
ブランドに関する全ての商標権を含む知的財産権及びこれらの
「Indian」 ブ ラ ン ドを 利用 し た 第三 者 の知 的財 産 権 を一 括 し て IMCOA
Licensing America, Inc.(以下「IMCOA」 という。)に移転させ
ることを決定し,IMIはその権利を承継した 。IMIは現インディア
ン社の子会社であり ,現インディアン 社は,上記のとおりIMIから許
諾を受けて ,インディアン標章等を使用しているのである 。
現インディアン 社は,米国においてオートバイを製造販売 しているが ,
その規模は 相当なものであり ,現インディアン 社のディーラー は,北米
及びカナダ のみでも 26社が 存在し,世界では 33社に及んでいる。
また, 現インディアン社製のオートバイ は,旧インディアン 社の伝統
を継承する オートバイとして ,旧インディアン 社製のオートバイの愛好
家の間においても広く認知されている 。
このように,現 インディアン社は ,正当な営業活動を行っているもの
であり,被告としても,このような現インディアン社の正当な営業活動
を信頼して オートバイのディーラーとなったものであるから ,その営業
活動は正当 である。
(ウ) 被告 は,平成 20年4月,二輪部門を開設し,トライアンフ を二輪
初のブランドとして 取扱いを 開始したが,その 数年前 からハーレダビッ
ドソンの取扱いに向けた活動 を行っていた。その活動 の中,被告は,平
成21年初 めころ,現インディアン社によって インディアンブランド が
再度立ち上 げられたということを 知った。
被告代表者は, 米国において1901年創立のインディアン というオ
ートバイ・ ブランド が存在していたことは 古くから知っていた 。そこで ,
被告は,帝国データバンクに 対し,現インディアン社の調査を依頼する
こととした 。その結果,現インディアン 社が,既にオートバイ の製造を
開始していること,インディアンに関するすべての知的財産権 の獲得を
していることが判明 したことから,被告は,現インディアン社が取引を
開始するに 足る信用 のある会社であると判断し,平成 21年春 からコン
タクトを取 り始めた。
被告は ,平成21年8月,新規ディーラー 申請書を現インディアン 社
に提出し, 同年11 月,現インディアン 社の本社を訪問し,本社,工場
及び直営ショップを見学し, 経営陣とのミーティング を行った 。この際 ,
被告は,現 インディアン社の ディーラー開発部長であるBより ,「現イ
ンディアン 社の創立 に当たり ,同社会長のC及び同社社長のDの2名が
2004年 に旧インデ ィアン 社の知的財 産権(商標を含むすべての 権
利)を購入 した」旨の説明を 受けた。被告は,これにより帝国 データバ
ンクの調査 が裏付けられたものと 考え,現インディア ン社に対し,正式
に我が国における総代理店としての申請を行った。被告は,平成22年
1月,現インディアン 社との 間でディーラー合意書を締結した。
このように,被告は必要 な調査を 行った上で,オートバイ のディーラ
ーとなったものであるから , その営業活動は正当なものであり ,保護さ
れるべき必要性は高い。
ウ 以上のとおり,原告商標は旧インディアン 社の商標に由来するものであ
り,被告は 旧インディアン社のインディアン標章を正当に承継したIMI
が許諾する オートバイを輸入 するものである。被告による被告標章1∼5
の使用によって原告独自の信用が害されることはあり 得ず,原告が原告の
商標権に基 づく差止請求権を行使することは,正義公平の理念に反し,国
際的な商標秩序及び 公正な競争秩序を 害するものとして ,権利の濫用であ
ることは明 らかである。
(原告 の主張)
ア 被告の主張ア(ア)のうち,原告が旧 インディアン社とは一切関係のない
会社であることは認 め,その 余は否認 し争う。同ア(イ)及び(ウ)は否認し
争う。同ア(エ)第1 段落は知らない, 第2段落 は否認し争う。同ア(オ)は
争う。同イ(ア)のうち,被告 が名古屋市に本社 を置くことは認め,その余
は知らない 。同イ(イ)のうち ,IMI が旧インディアン 社のインディアン
標章に係る 権利を承継したことは否認 し,その 余は知らない。同イ(ウ)の
うち,第1 ∼3段落 は知らない,第4 段落は否認し争う。同ウは争う。
被告は, 旧インディアン社のインディアン 標章に対する商標権が存続し,
同商標に対 するのれんが存続 し,これらがIMIに譲渡されたとするが ,
旧インディアン社が 有した商標は,全 て消滅し,何人にも譲渡されなかっ
た(甲9∼ 17)。 仮に,その商標にのれんが 付随していたとしても ,の
れんも消滅 した。被告の主張 はその前提において誤っている。
コロラド 連邦地方裁判所の決定は, 財団の管財人が承認を求めた契約の
案(乙8) を承認したものにすぎず , 裁判所がかかる 決定をしたのではな
い。
イ 原告は自己の商品 が旧インディアン 社に出所を有するかのような 宣伝広
告はしていない。かつて存在 したが, 今から60年も前に既に倒産し操業
停止した会社の既に 消滅した 商標をマーチャンダイジングブランド の核と
して採択し ,商標登録をし,マーチャンダイジングビジネス を展開する行
為は,正当 な行為であり,何ら批判する余地はない。また,IMIは,旧
インディアン 社の商標権を承継したのではなく ,カリフォルニア 州法人で
あるIndian Motorcycle, Incが有した 商標に対する第12類の商標権を新
インディアン 社,IMCOA を経由して取得したにすぎず ,旧インディア
ン社の承継人ではない。
被告は, 輸入業者 として本件オートバイの輸入販売 が我が国における 他
者の商標権 を侵害しないことを 事前に 調査し確認してから輸入すべきであ
るのに,これを全く 怠り,その結果, 原告商標 に対する商標権侵害を行う
に至ったのである。
ウ 原告は, 正当に日本市場に「Indian」ブランドを導入し,展開し,我が
国における 「Indian」ブランドの正規 の出所として,市場で確固として認
められている 。
第3 当裁判所の判断
1 原告商標1∼ 3と被告標章1∼3及び5 との類否 (争点1)について
(1) 原告商標1∼3
ア 原告商標 1∼3は ,次のとおりである 。
原告商標1
原告商標2
原告商標3
イ 原告商標 1及び3
原告商標 1及び3 は,ほぼ 同一の商標である 。
原告商標 1及び3 は,北米 インディアンの頭部の図形(その一部に文字
を 含 む。 以 下 , 単 に 「 図 形 部 分 」と い う 。 ) と そ の 下 部 に 記 載 さ れ た
「 Indian Motocycle Co.,Inc.」の欧文字 (筆記体風 の文字。以下「文字
部分」という。)から成る図形と文字 の結合商標である 。
図形部分 の北米インディアン の顔は 右向きでやや上向きの横顔が描かれ,
首には首飾 りをつけ ,また横に垂らした頭髪は輪状の用具で纏められて い
る。頭頂前部から後頭部にかけては羽根飾り(ヘッドドレス)を被ってい
るが,羽根飾りの長 さは長く,描かれた頭部の幅の約3倍ほどの長さで顔
の向きとは 反対の左側へ向けて,たなびくように 緩やかに斜め下へ向けて
傾斜し,その下部は 水平に揃っている 。また,羽根飾りの中央部分には欧
文字(筆記体風の文字)で「Indian」 とやや大きく描かれている 。
文字部分 は,上記「 Indian Motocycle Co.,Inc.
」の欧文字(筆記体風
の文字)が 北米インディアン の頭部及 び羽根飾 り全体の横幅とほぼ同じ長
さで図形の 下に比較的小さな 文字(羽根飾りの 文字の高さの2分の1ない
し3分の1 程度の大 きさ)で記載されている。
ウ 原告商標 2
原告商標 2は,北米インディアンの 頭部の図形及びその図形中の文字か
ら成る商標 である。
北米インディアン の顔は右向きでやや上向きの横顔が描かれ,首には首
飾りをつけ ,また横 に垂らした頭髪は 輪状の用具で纏められている 。頭頂
前部から後頭部にかけては羽根飾り( ヘッドドレス)を被っているが,羽
根飾りの長 さは長く ,描かれた頭部の 幅の約3倍ほどの長さで顔の向きと
は反対の左側へ向けて,たなびくように 緩やかに斜め下へ向けて傾斜し,
その下部は 水平に揃 っている 。また, 羽根飾りの中央部分には欧文字(筆
記体風の文字)で「Indian」とやや大 きく描かれている 。
(2) 被告標章1∼3及び5
ア 被告標章 1
被告標章 1は,別紙被告標章目録 1 のとおりであり ,北米インディアン
の頭部の図形(その 一部に文字部分を 含む。)から成る標章である。
北米インディアン の顔は右向きでやや上向きの横顔が描かれ,首には首
飾りをつけ ,また横 に垂らした頭髪は 輪状の用具で纏められている 。頭頂
前部から後頭部にかけては羽根飾り( ヘッドドレス)を被っているが,羽
根飾りの長 さは長く ,描かれた頭部の 幅の約3倍ほどの長さで顔の向きと
は反対の左側へ向けて,たなびくように 緩やかに斜め下へ向けて傾斜し,
その下部は 切りそろえられたように 水平に揃っている 。また,羽根飾りの
中央部分には欧文字 (筆記体風の文字 )で「Indian」とやや大きく描かれ
ている。
イ 被告標章2
「Indian」 の文字商標であるが,欧文字(筆記体風の文字)を横書きに
して成るものである 。なお,別紙被告標章目録 では,文字がピンク色に着
色されているが,原告が色を同色に限定する趣旨とは解されない 。
ウ 被告標章3
被告標章 1に色彩 を施した 標章であり,北米インディアンの頭部の図形
(その一部 に文字部分を含む。)から 成る標章 である。
北米インディアン の顔は右向きでやや上向きの横顔が描かれ,首には首
飾りをつけ ,また横 に垂らした頭髪は 輪状の用具で纏められている 。頭頂
前部から後頭部にかけては羽根飾り( ヘッドドレス)を被っているが,羽
根飾りの長 さは長く ,描かれた頭部の 幅の約3倍ほどの長さで顔の向きと
は反対の左側へ向けて,たなびくように 緩やかに斜め下へ向けて傾斜し,
その下部は 水平に揃 っている 。また, 羽根飾りの中央部分には欧文字(筆
記体風の文字)で「Indian」とやや大 きく描かれている 。
北米インディアン の顔及び羽根飾りの先端部近くは赤く着色され,羽根
飾りのほぼ 中央部分 の「Indian」の文字の周辺 は草色に着色されている 。
エ 被告標章 5
「Indian」と「MOTORCYCLE」の欧文字から成る文字標章である。
「Indian」の筆記体風の文字は比較的大 きく横書きされ,「I」 の文字
の上部及び 下部の文字の始点及び終点 の部分は湾曲して飾り文字風とされ
ている。また「n」「d」「a」「n」の 各文字の直線部分には小さな突起が
配され,飾 り文字風 とされている。また,文字全体について文字の輪郭線
の外側に細 い線が文字の輪郭線に沿って描かれている。
「MOTORCYCLE」の 文字は,ゴシック 体の比較的小さな文字であり,文字
の間隔が文字の大きさに比較 して大きいことも 相まって,全体のまとまり
がなく,印象が薄いものとなっている 。
(3) 原告商標1∼3と被告標章 1∼3及び5の対比
ア 原告商標 1及び3 と被告標章1との 対比
(ア) 原告商標1及 び3の図形部分と 被告標章1は,いずれも 北米インデ
ィアンの顔 は右向きでやや上向きの横顔が描かれ,首には首飾 りをつけ ,
また横に垂 らした頭髪は輪状 の用具で纏められている 。頭頂前部から後
頭部にかけては羽根飾り(ヘッドドレス )を被っているが,羽根飾りの
長さは長く ,描かれた頭部の 幅の約3倍ほどの 長さで 顔の向きとは反対
の左側へ向 けて,たなびくように 緩やかに斜め下へ向けて傾斜 し,その
下部は水平 に揃っている点も 共通である。さらに,羽根飾りの 中央部分
には欧文字 (筆記体風の文字 )で「Indian」とやや大きく描かれている
点も同じである。相違するのは,羽根 の先端の形状等 の細部のみである 。
原 告 商 標 1 及 び 3 に は , 被 告 標 章1 と 異 な り , 図 形 部 分 の 下 に
「Indian Motocycle Co.,Inc.」の欧文字(筆記体風 の文字)が 記載さ
れているが ,この文字自体は 比較的小 さく,図形部分 の印象が強いため ,
見る者に大 きな印象 を与えることはない 。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章 1の外観 は類似する。
(イ) 原告商標1及 び3の図形部分と 被告標章1は,いずれも 北米インデ
ィアンの横顔の図柄 であり, かつ,羽根飾りの 中央部分に比較的大きく
「Indian」 の文字が記載されているところから ,「インディアン 」との
称呼が生じ る。また ,原告商標1及び3の下部 の文字部分から ,「イン
ディアン モトサイクル」との称呼が生じる。原告商標1及び3の図形
部分から生 じる称呼 と被告標章1の称呼は同一 であり,原告商標1及び
3の文字部分から生じる称呼 と被告標章1の称呼はその一部が共通する
から,原告商標1及び3と被告標章1の称呼は類似する。
(ウ) 原告商標1及 び3は,その図形部分から,北米インディアン の観念
が生じ,その文字部分からは ,北米インディアン にちなんだモトサイク
ルの会社との観念が生じる。 一方,被告標章1からは 北米インディアン
の観念が生 じる。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章 1の観念 は類似する。
(エ) 以上 によれば ,原告商標1及び 3と被告標章1は,外観,称呼及び
観念のいずれにおいても 類似 するから ,原告商標1及び3と被告標章1
は類似する 。
イ 原告商標 1及び3 と被告標章2の対比
(ア) 原告商標1及 び3の図形部分と 被告標章2を対比すると,その外観
においては ,原告商標1及び 3の図形部分の羽根飾り中央に記載された
「Indian」 の文字と被告標章 2はほぼ 同一であるが,原告商標 1及び3
は図形部分 の与える 印象が強 いため,原告商標 1及び3の図形 と被告標
章2が外観 において 類似するとはいえない 。
また,原告商標1 及び3の文字部分「Indian Motocycle Co.,Inc.

は「Indian」の部分 を含むものの,「 Motocycle Co.,Inc.」の文字部分
も含むため ,原告商標1及び 3の文字部分と被告標章 2が外観 において
類似するとはいえない 。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章2は外観において類似しな
い。
(イ) 上記 ア(イ)のとおり,原告商標 1及び3の図形部分からは「インデ
ィアン」との称呼が生じ,その文字部分からは 「インディアン モトサ
イクル」との称呼が生じる。 一方,被告標章2からは 「インディアン」
との称呼が 生じる。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章2は称呼において類似する。
(ウ) 原告商標1及 び3は,その図形部分から,北米インディアン の観念
が生じ,その文字部分からは ,北米インディアン にちなんだモトサイク
ルの会社との観念が生じる。 被告標章 2からは ,北米 インディアンの観
念が生じる 。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章 2の観念 は類似する。
(エ) 以上 によれば ,原告商標1及び 3と被告標章2は,称呼及び観念に
おいて類似 する。また,外観 においては非類似 であるものの,原告商標
1及び3もその一部 に「Indian」の文字を含むものであるため ,その外
観の相違をそれほど 大きいものとみることはできない 。原告商標1及び
3と被告標章2は類似する。
ウ 原告商標 1及び3 と被告標章3との 対比
(ア) 原告商標1及 び3の図形部分と 被告標章3は,いずれも 北米インデ
ィアンの顔 は右向き,やや上向きの横顔が描かれ,首には首飾 りをつけ ,
また横に垂 らした頭髪は輪状 の用具で纏められている 。頭頂前部から後
頭部にかけては羽根飾り(ヘッドドレス )を被っているが,羽根飾りの
長さは長く ,描かれた頭部の 幅の約3倍ほどの 長さで 顔の向きとは反対
の左側へ向 けて,たなびくように 緩やかに斜め下へ向けて傾斜 し,その
下部は切りそろえられたように 水平に揃っている点も共通である。さら
に,羽根飾 りの中央部分には 欧文字(筆記体風 の文字 )で「Indian」と
やや大きく 描かれている点も 同じである。相違 するのは,色彩 の有無及
び羽根の先端の形状等の細部 である。
原告商標1及び 3の図形部分と被告標章 3とは,いずれも 北米インデ
ィアンに関 する印象的な図柄 であり,色彩の有無及び羽根の先端の形状
等の細部で 相違しているとしても ,外観は類似 しているものといえる 。
被告標章3には 図形部分 の下部に 文字部分はなく,原告商標1及び3
とこの点において異なるが, 図形部分 の印象が強いため,原告商標1及
び3の文字部分は全体の外観 に大きな 影響を与えるものではない 。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章 3の外観 は類似する。
(イ) 上記 ア(イ)のとおり,原告商標 1及び3の図形部分からは「インデ
ィアン」との称呼が生じ,その文字部分からは 「インディアン モトサ
イクル」との称呼が生 じる。被告標章 3には,羽根飾 り の中央部分に
「Indian」 の文字があり,「 インディアン」との称呼を生じる。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章3は称呼において類似する。
(ウ) 原告商標1及 び3は,その図形部分から,北米インディアン の観念
が生じ,その文字部分からは ,北米インディアン にちなんだモトサイク
ルの会社との観念が生じる。 被告標章 3からは ,北米 インディアンの観
念が生じる 。
したがって,原告商標1及び3と 被告標章 3の観念 は類似する。
(エ) 以上 によれば ,原告商標1及び 3と被告標章3は外観,称呼,観念
のいずれにおいても 類似するから,原告商標1及び3と被告標章3は類
似する。
エ 原告標章 1及び3 と被告標章5との 対比
(ア) 原告標章1及び3にはその図形部分の羽根飾りの中央部分に
「Indian」 の文字があり,また文字部分には 「Indian Motocycle」との
記載がある 。他方,被告標章 5は「Indian」の比較的大きな欧文字(筆
記体風の文字)とその下部の 比較的小 さな「MOTORCYCLE」の文字から成
り,それぞれの文字部分のみを比較すれば,原告商標 1及び3と被告標
章5は類似 する部分 がある。 しかし,原告商標 1及び3はその 図形の印
象が強いから,図形 部分中の 文字部分 との共通性があるからといって ,
全体としては外観が類似しているとはいえない 。
(イ) 上記 ア(イ)のとおり,原告商標 1及び3の図形部分からは,「イン
ディアン」 との称呼 が生じ, その文字部分からは「インディアン モト
サイクル」 との称呼 が生じる 。他方,被告標章 5からは,比較的大きい
装飾文字のみに注目 した「インディアン 」又は全体に着目した 「インデ
ィアンモーターサイクル 」の 称呼が生じる。
(ウ) 原告商標1及 び3は,その図形部分から,「北米インディアン」の
観念が生じ ,その文字部分からは,「 北米インディアン にちなんだモト
サイクルの 会社」との観念が 生じる。被告標章 5からは,比較的大きい
装飾文字のみに注目 した「北米インディアン」の観念又は全体 に着目し
た「北米インディアン にちなんだモーターサイクル の会社」との観念が
生じる。原告商標1及び3と 被告標章 5の観念 は類似する。
(エ) 以上 によれば ,原告商標1及び 3と被告標章5は,称呼及び観念に
おいて類似 する。その外観は 類似しないが,上記(ア)のとおり ,外観の
一部である 文字部分 には共通性があり ,外観の相違をそれほど 大きいも
のとみることはできない 。したがって ,原告商標1及び3と被告標章5
は類似する 。
オ 原告商標 2と被告標章1の対比
(ア) 上記(1)ウ及び(2)アのとおり, 原告商標2と被告標章1の外観はほ
ぼ同一である。
(イ) 原告商標2と 被告標章 1は,いずれも 「インディアン」の称呼を生
じるから, 称呼は同一である 。
(ウ) 原告商標2と 被告標章 1は,いずれも 「北米インディアン 」の観念
を生じるから,観念 は同一である。
(エ) 以上 によれば ,原告商標2と被告標章1は,同一又は類似である。
カ 原告商標 2と被告標章2の対比
(ア) 原告商標2と 被告標章 2を対比 すると,その外観においては,原告
商標2の図形部分の羽根飾りの中央に記載された「Indian」の文字と被
告標章はほぼ同一であるが, 原告商標 2はその 文字部分以外の図形部分
の与える印象が強いため,原告商標2と被告標章2が外観において類似
するとはいえない。
(イ) 上記オ(イ)のとおり ,原告商標2からは「インディアン」との称呼
が生じ,一方,被告標章2からも「インディアン 」との 称呼が生 じる。
したがって,原告商標2と被告標章2は称呼において同一である。
(ウ) 上記 オ(ウ)のとおり,原告商標 2からは,北米インディアン の観念
が生じ,被告標章2からも, 北米インディアン の観念が生じる。
したがって,原告商標2と被告標章2の観念は同一 である。
(エ) 以上 によれば ,原告商標2と被告標章 2は,称呼及び観念において
同一である 。また,外観においては非類似であるものの ,原告商標2の
羽根飾りの 中央に「Indian」 の文字を含むものであるため ,その外観の
相違をそれほど大きいものとみることはできない 。原告商標2と被告標
章2は類似 する。
キ 原告商標 2と被告標章3の対比
(ア) 原告商標2と 被告標章 3を対比 すると,その色彩及び羽根飾りの先
端等の形状 などの細部においては異なるものの ,外観は類似している。
(イ) 前記オ(イ)のとおり ,原告商標2からは「インディアン」の称呼が
生じ,被告標章3からも「インディアン 」との 称呼が生じる。
したがって,原告商標2と被告標章2は称呼において同一である。
(ウ) 前記 オ(ウ)のとおり,原告商標 2は,北米インディアン の観念が生
じ,被告標章3から も,北米 インディアンの観念が生じる。
したがって,原告商標2と被告標章3の観念は同一 である。
(エ) 以上 によれば ,原告商標2と被告標章 3は,称呼及び観念において
同一であり ,外観も類似している。
したがって,原告商標2と被告標章3は類似する。
ク 原告商標 2と被告標章5との対比
(ア) 原告標章2は ,羽根飾 りの中央部分に「Indian」の文字がある。他
方,被告標章5は「Indian」 の比較的大きな欧文字(筆記体風の文字)
とその下部 の比較的小さな「 MOTORCYCLE」の文字から 成り,それぞれの
文字部分のみを比較 すれば, 原告商標 2と被告標章5は類似する部分が
ある。しかし,原告商標2は 「Indian」の文字部分を除くその 余の図形
部分の印象 が強いから,図形中の文字部分及び文字部分の共通性がある
からといって,全体 としては 外観が類似しているとはいえない 。
(イ) 上記 オ(イ)のとおり,原告商標 2からは,「インディアン 」との称
呼が生 じ, 被告標章5 からは,比較的大 きい装飾文字 の みに注目した
「インディアン 」又は 全体に着目した「インディアンモ ーターサイク
ル」の称呼 が生じる 。そうすると,原告商標2と被告標章5は称呼にお
いて類似する。
(ウ) 上記 オ(ウ)のとおり,原告商標 2からは,「北米インディアン」の
観念が生じ ,被告標章5からは,比較的大きい 装飾文字のみに 注目した
「北米インディアン 」の観念又は全体 に着目した「北米インディアンに
ちなんだモーターサイクル の 会社」との観念が生じる 。したがって,原
告商標2と 被告標章 5の観念 は類似する。
(エ) 以上 によれば ,原告商標2と被告標章 5は,称呼及び観念において
類似する。 その外観 は類似しないが,上記(ア)のとおり,外観 の一部で
ある文字部分には共通性があり,外観 の相違をそれほど 大きいものとみ
ることはできない。したがって,原告商標2と被告標章 5は類似 する。
2 原告商標1∼ 3と被告標章4との類否( 争点2)について
(1) 被告標章4
被告標章4 は,図形 と文字の結合商標 であり,星形の縁取りをした模様の
上に,金髪の若い女性が描かれている 。女性の顔と上半身はやや右斜め前を
向き,下半身はほぼ横向きであり,右足の大腿部と左足の大腿部が上下にや
やずれた形で座っているような 形である。女性は右足の大腿部 をやや上方向
へ向け,左足の大腿部をやや下向き方向へ下げ,右足の膝から下は右足の大
腿部とは約45度の角度に折り曲げ,左足の膝から下は左足の大腿部とほぼ
重なるように 曲げ,肩から下が露出した右手を腰のあたりに添えている 。女
性は,上半身はタンクトップ の白い衣類をまとい,下半身のスカートは青色
で大腿部から下が露出している。女性と星形の間に赤色の文字が描かれ,文
字は女性の上半身の左側に「I」の文字,女性 の上半身 の右側に「ian」の3
文字が看取できるが ,その間の文字は女性の上半身の後方として描かれてい
るため,文字の縦線の一部しか見えず,いかなる文字かは読み取れない 。
(2) 原告商標1∼3と被告標章 4との対比
ア 原告商標1 ∼3は,前記 1(1)のとおり,北米インディアンの横顔と羽
根飾りを描 いた図形 が中心であり,羽根飾りの 中央には「Indian」の欧文
字(筆記体風の文字 )が,さらに,原告商標1及び3については ,図形の
下 に「 Indian Motocycle Co.,Inc.
」の欧文字(筆記体風の文字)が小 さ
く記載されている。
したがって,原告商標1∼3においては,北米インディアン の横顔及び
羽根飾りが 外観の中心を成すのに対し ,被告標章4は星形とその上に描か
れた若い女性の姿が 中心を成すものであって,両者の外観は異なり,類似
しない。
イ 原告商標 1及び3 からは「インディアン」又は「インディアンモトサイ
クル」の称呼が,原告商標2からは「 インディアン」の称呼が生じるのに
対し,被告標章4は 文字の一部が女性 の後方に隠れており,読み取ること
ができる分断された 「I」と「ian」の 文字からは,これを結合させた称呼
が生じることはなく ,原告商標1∼3 と被告標章4の称呼は類似 しない。
ウ 原告商標 1及び3 からは,「北米インディアン 」又は「北米インディア
ン にちなんだ モトサイクル の 会社」との観念が生じ ,原告商標 2から は
「北米インディアン 」との観念が生じる。被告商標4からは,「星と若い
女性」との 観念が生 じる。したがって ,両者の観念は類似しない 。
エ 以上によれば,原告商標1∼3と被告標章 4は,外観,称呼,観念のい
ずれにおいても 類似 せず,原告商標1 ∼3と被告標章4は類似しない。
(3)ア 原告は,被告標章4について,女子 の図形 に一部隠された筆記体の欧
文字 は,語頭の「I」及び末尾の「ian」が明瞭に読みとれて,「 I」の右
に「n」の左半分と 読みとれる要素及び 「ian」の左に「d」の右の 縦線と
読みとれる 要素があるから,被告標章 4に接した需要者は,女子の図形に
一部隠された筆記体 の欧文字 が「Indian」であると,容易に認識する旨主
張した上で ,「女子 の図形」,「Indian」の欧文字及 び「星の図形」は,
一体不可分 のものとしてのみ 把握しなければならないものではないから ,
「Indian」 に対応して,「インディアン 」の称呼及び「北米先住民」の観
念が生ずる 旨主張する。
原告の主張は,被告標章4についての,取引の実情に照らせば,たとえ
被告標章4 の文字の 一部が隠れていたとしても ,取引者・需要者は,これ
を「Indian」の文字 と認識し,そこから「インディアン 」の称呼及び「北
米先住民」 の観念が 生じるとするものと 解される。
イ そこで, 被告標章 4の使用状況について検討 する。
(ア) 被告 の平成22年3月現在のオートバイ のカタログ(甲6の2)は,
その表紙に インディアンの横顔及び羽根飾りを 形取った立体形 のエンブ
レムを装着 した被告 オートバイの拡大写真が掲載され ,その左上部には ,
比較的大きく被告標章5が掲載されている。裏表紙には,羽根飾りをか
ぶったインディアン の横顔を 黒いドーナツ形の円で囲み,囲み円の中に
は「INDIAN MOTORCYCLE・1901・」の文字が円形に記載された標章( 以
下「円形ロゴ」という。)がその中央 に大きく 掲載されている 。2枚目
(以下,甲 6の2の写しの枚数で示す。)の被告オートバイの写真によ
れば,被告 オートバイの一機種には,オイルタンク部分に被告標章1が
描かれており,さらに円形ロゴの写真 が掲載されている 。3枚目の被告
オートバイ の写真によれば, 被告オートバイの一機種 には,オイルタン
ク部分に被告標章2が描かれており,また,スピードメーター の中心上
部には,被告標章5が描かれている。4枚目の被告オートバイ の写真に
よれば,被告オートバイの一機種には ,エンジン部分 のカバー に被告標
章2が描かれている 。5枚目 の被告オートバイ の写真 によれば ,被告オ
ートバイの 一機種には,オイルタンク 部分に被告標章 2が描かれており ,
カタログの 5枚目上部には円形ロゴが描かれている。6枚目の被告オー
トバイの写真によれば,被告 オートバイの一機種には ,オイルタンク部
分に被告標章3が描かれており,カタログ6枚目の上部には円形ロゴが
描かれている。7枚目の被告 オートバイの写真 によれば,被告 オートバ
イの一機種 には,オイルタンク 部分に被告標章 4が描かれ,前輪カバー
の下端には 「BOMBER」の文字 が記載されている 。そして,カタログ7枚
目の説明には,表題 として「 インディアンモーターサイクル 社,限定版
チーフボンバー,ピンナップガールデザインモデル 発表。」との記載が
あり,その 説明として,「第二次世界大戦中 のノーズアートをヒントに ,
ウォーリアグリーンスモーク とウォーリアシルバースモーク の車体にピ
ンナップガールのデザインを 施した,2010 チーフボンバー 。レザー
のシートと サドルバックで, ボンバー のジャケットの暖かな肌触りとカ
ラーを再現 した,1年間限定 のスペシャルモデル 。」 との記載 がある。
8枚目の被告オートバイの写真によれば,7枚目と同じ被告オートバイ
の一機種であるチーフボンバー の写真 が掲載され,そのオイルタンクに
は被告標章 4が,前輪カバー の下端には「BOMBER」の文字が描かれてい
る。そして ,カタログ8枚目上部には ,円形ロゴが記載され,「PIN UP
GIRL TANK ART」の表題の下に,被告標章4 と同じ図柄(星形と文字を
除く。)の 左向きの 女性の図柄が色違 いで3つ描かれ ている。9枚目の
被告オートバイ写真 によれば ,被告オートバイ の一機種のオイルタンク
には,被告標章1が金色で描 かれており,カタログ9枚目の上部には,
円形ロゴが 描かれている。10枚目の被告オートバイ の写真によれば,
被告オートバイの一機種のオイルタンク には被告標章 2が描かれ,カタ
ログ10枚目の上部 には,円形ロゴが描かれている。11枚目 の「20
10チーフラインナップ 」と 題する部分には,被告オートバイ 22機種
の横向きの 写真が掲載されているが,そのうち 2台のオイルタンクには
被告標章4 が描かれている。 12枚目 には被告標章2,5や円形ロゴ等
が掲載されているが ,被告標章4は掲載されていない。
このほか,原告 が提出する被告の 東京ショールーム (平成23年4月
2日オープン〔甲24〕)の カタログ 中には被告標章 4を付したオート
バイは掲載 されておらず,もっとも頁数が多く主要なカタログ と認めら
れる甲25 にも,被告標章4 を付した オートバイは掲載されていない。
ただし,他 のカタログ(甲26,28 )には,被告標章4を付したオー
トバイが掲載されているものもある 。
(イ) 平成 22年10月の被告ウェブ サイトにおける 被告オートバイの広
告(甲7。 全22枚)中の12枚目と13枚目 には,オイルタンク部分
に被告標章 4が描かれたオートバイが「チーフボンバー 」として紹介さ
れている。
このほか,平成 23年2月の被告 ウェブサイト(甲23)には,取扱
いブ ラ ン ド 一 覧 と し て , 「 イ ン デ ィ ア ン モ ー タ ー サ イ ク ル/ Indian
Motorcycle」が挙げられ,被告標章5が付されている 。また,同ウェブ
サイト中の 「東京・世田谷に ,インディアン・ショールームが今春オー
プン」との 記事には ,被告オートバイ の写真が添付されており ,その機
種は「チーフボンバー 」であって,オートバイ には被告標章4が付され
ているものと考えられるが, 写真の像が鮮明でないため ,被告標章4を
明確に認識 することはできない 。
ウ 以上の証拠関係によれば,被告標章 4が使用されたオートバイ のカタロ
グには,被告標章1 ∼3及び5が掲載 されており,また,「インディアン
モーターサイクル 社 」の記載 や円形ロゴ等も掲載されているのであるから ,
当時,同カタログを 見た取引者・需要者,又は同オートバイの購入者等 は,
たとえ被告標章4の 文字が冒頭の「I」の部分 と末尾の「ian」の部分しか
見えないとしても, これを「インディアン」と認識することが 可能であっ
たと認められる。しかし,証拠からみる限り,被告標章4を付した被告オ
ートバイは 1年間の 限定車種 として販売されており,その後の被告のカタ
ログを見ると,必ずしも販売期間が厳格に1年間に限定しているとまでは
認められないものの ,少なくとも,被告標章4を付したオートバイの販売
が拡大しているとは 認め難い。
そして, カタログ 等の説明 なしに, 被告標章4を付したオートバイの現
物を見ただけでは, そこから 「Indian」の文字 を読み取ることはできない 。
しかも,被告自身が 被告標章 4を付したオートバイの名称としては「チー
フボンバー 」と名付 け,オートバイの 前輪カバーに「BOMBER」の文字を付
しているのであるから ,被告 標章4に接した者が広 く,被告標章4 か ら
「インディアン」との称呼又 は観念を 呼び起こされたものともいえない 。
以上の取引の実情 に照らせば,被告標章4から「インディアン 」の称呼,
「北米先住民」の観念が生じるものとは 認められないから,原告の主張を
採用することはできない 。
(4) したがって,被告標章 4については, その余について判断 するまでもな
く,商標法36条1項に基づく差止請求及び同条2項に基づく廃棄請求 は理
由がない。
3 原告商標が無効審判により無効 にされるべきものであるか (争点3)及び原
告の商標権 の行使が権利濫用 に当たるか(争点 4)について
(1) 前提事実 に加え,後掲の証拠等によれば,以下の各事実がそれぞれ認め
られ,これを覆すに足りる証拠はない。
ア 旧インディアン社 の商標権 に関する 事情
(ア) 旧インディアン 社は,1901 年(明治34年),米国マサチュー
セッツ州スプリングフィールド において設立された会社であり ,その製
造販売した オートバイに,インディアン 標章を使用した。旧インディア
ン社は,ハーレーダビッドソン と並ぶオートバイメーカー であったが,
1953年 (昭和28年), 倒産によりオートバイの製造を中止した。
旧インディアン社の有していた連邦商標登録は,期間満了又は不使用取
消審判請求 のため,いずれも 取り消された。
(前提事実(4)ア,枝番号を含めて甲9∼17)
(イ) 米国 コロラド 州連邦地方裁判所 は,1999年(平成11年)2月,
旧インディアン社,新インディアン社等の会社 が保有 していたすべての
商標権(コモンロー 商標権及 び付随する信用を含む。)をIMCOAに
移 転 さ せ る 旨 を 決 定 し た 。 そ の 後 , I M C O A と Credit Managers
Association of California
(以下「CMA」 という。)とは, 200
4年(平成 16年)5月12 日,IMCOAの全て財産をCMAに譲渡
する旨の契約をした 。さらに ,CMA とIMI とは,2004 年(平成
16年)7 月,上記契約によりCMA が取得した商標 をIMI に譲渡す
る旨の契約 をした。IMIは ,現インディアン 社に対してインディアン
商標をオートバイに使用することを許諾し,現インディアン社は200
8年(平成 20年)からオー トバイ事業を行っている 。なお,2011
年(平成23年)4月に,現 インディアン社の経営権 をポラリス・イン
ダストリーズ・インコーポレイテッド が取得している。
(乙6∼10,25 ,86, 97)
この点について,原告は, 甲9∼17を提出 し,旧インディアン社の
商標権は全 て消滅したと主張 する。しかし,これらの 原告が提出する証
拠によっては,上記(ア)で認定したとおり,甲9∼17の旧インディア
ン社の有していた商標について登録取消又は登録期間 が満了し,現在そ
れらの商標権が登録 されていないことは 立証されているとしても ,それ
を超えて, 米国コロラド州連邦地方裁判所 において,上記決定 がされた
ことが否定 されるものではない 。
イ 原告に関 する事情
(ア) Eは ,新インディアン 社から我 が国において商標を使用する権利を
取得し,平成4年2月,原告商標1に係る出願 をし,平成5年6月,株
式会社サンライズ社と共同出資して,原告を設立し,原告代表取締役に
就任した。 この間,同年1月 29日付 け「二輪車新聞 」(甲50,乙3
0)には,「よみがえるアメリカン インディアン復活」「7月4日米
国で1号車 を発表」との見出 しの下,「1920年代 から40 年代にか
けて全盛を 誇ったアメリカンモーターサイクル 『インディアン 』の製造
元インディアン・モトサイクル 社の40年ぶりの復活 が決定,1月22
日(金), 同社オーナーのA 氏の来日 に合わせ ,同社 の日本代表E氏の
同席のもと 記者会見 が行われた。当日 は,新生 インディアンモーターサ
イクルの概要および 今年7月 4日アメリカ独立記念日 に発表される第1
号モデルの 内容などが明らかにされた 。」との 内容を含む記事 が掲載さ
れた。また ,同月から同年11月までの間,雑誌「BRUTUS 」(甲
53∼73 )に,21回にわたり,新インディアン社の創業や,原告の
設立等についての記事が掲載 された。このうち ,雑誌 「BRUTUS」
同年10月 15日号(甲71 )には,「インディアン 社,アパレル事業
驀進。オーナーのE氏語る。」との見出しの下に,「 ついに,インディ
アン社 のアパレル 事業 がこの秋冬にかけ て本格的に動き出した。」,
「インディアン・モトサイクル ・ジャパンの代表でもあり,アパレルで
もアジア地区の総代理人であるE氏は,次のように語る。『アメリカ本
社のオーナー,A氏と私のアパレルにおける契約は,日本…を含んだア
ジア地区におけるものです 。 インディアン・モトサイクル ・ジャパンは ,
日本におけるマスターライセンシー であるサンライズ 社との共同出資で
設立しました。日本市場での ブランド 管理,ライセンスビジネス 事業,
輸入業務などを行います』」 との内容 を含む記事が掲載 された。
(甲1の1,甲50 ,51,53∼75,乙22の1及び2,
乙28,30)
(イ) また,平成5年7月24日付けの「 繊研新聞」(甲51) には,
「米アンティークバイク 『インディアン 』ウエア発売 」という 見出しの
下,「アンティークバイク として有名 なアメリカの『インディアン』を
イメージキャラクター にした 商品が今秋から日本で発売される 。同ブラ
ンドの世界戦略の一環で,すでに一部商品はアメリカ で販売されている
が,このほどインディアン・ モトサイクル・ジャパン (本社東京,E社
長)が設立 され,今秋から輸入販売をはじめる 。ライセンス事業も行い ,
日本では5 年後,20億−30億円を目標としている 。」との 内容を含
む記事が掲載され,同日付けの「日経流通新聞 」(甲52,乙50)に
も,同様の 内容の記事が掲載 された。そして,雑誌「POPEYE」同
年11月10日号(甲75, 乙28)には,「1940年代,アメリカ
でハーレー ・ダヴィッドソン と人気を二分したバイクメーカー が,イン
ディアン・ モトサイクル社だ 。…しかし,レッドアイアン (鉄の塊)と
も呼ばれた 重量感溢 れるその バイクとマークは,’53年の倒産以来,
幻となっていた。」「そのインディアン社が,実に40年の歳月を経て ,
一人のアメリカ人A氏の手によって復活した。しかも ,その復活第1号
はなんとバイクではなく,まずはアパレルなどのキャラクターグッズ か
らだという 。」「米国では既 にブーム となっている模様。日本 でも,ブ
ーム着火は 時間の問題だといえる。」 との内容 を含む記事が掲載され,
雑誌「DICTIONARY」 平成6年1月発行の35号(乙32)に
は,ヘッドドレスロゴ の下に 「est.1901」と記載された広告が掲載され
た。また, 同年6月25日付 けの「旬刊ファンシー」(乙79 )には,
「『インディアン』が復活 40年ぶりにバッグなど 商品化 ◇マルヨ
シ◇」という見出しの下,「 今回,新ブランド として 『インディアン』
を商品化。」「インディアン は1940年代,アメリカで,ハーレーダ
ビッドソン と人気を二分した バイクブランド。1953年の生産中止以
来,幻となっていたが ,実に 40年の歳月を経て復活 。しかも ,従来の
バイクメーカー独特 のハード なイメージとまったく違った物。」との内
容を含む記事が掲載 された。
(甲51,52,75,乙28,32 ,50,79)
(ウ) その 後,雑誌 「Goods Press」 平成6年11月号(乙3
4)には,「1901年,マサチューセッツ 州に誕生 したインディアン
モトサイクル社は,数々のレースで輝かしい成績を納めていた バイクメ
ーカーであった。しかし第二次世界大戦後 の53年,工場が閉鎖されて
姿を消してしまったのだ 。このインディアンが長い眠りから醒め93年
に復活。現在バイク は製作中 だが,それに先駆 けて,インディアングッ
ズが続々と 日本に上陸している。」との内容を含む記事が掲載 されたほ
か,現在に 至るまで ,原告及 びそのライセンシー は,雑誌等において,
そのブランドが旧インディアン 社に由来することを示唆する内容の広告
ないし記事 を繰り返し掲載し ている。
(乙26,27,29,33 ∼41,45,47∼49 ,51,52,
54∼56,58,59,62∼66,68∼75,77,78,
80,81 ,83,98,100の1及び2)
ウ 被告に関 する事情
(ア) 被告は,昭和54年11月に開業した( 会社設立は昭和38年 7
月)輸入車 を中心とした自動車・二輪車の販売等を業とする株式会社で
ある。被告 は,現インディアン 社製のオートバイのほかにも,二輪車で
は,トライアンフ,MVアグスタ,DUCATI 及びベクトリックスを ,
四輪車では ,プジョー,MINI,ランドローバー ,ジャガー ,BMW,
VOLVO,アルファロメオ ,フィアット,アバルト ,サーブ ,シトロ
エン,キャデラック ,コルベット,シボレー,ケーターハム及びホンダ
を取扱い, 売上高(平成22 年3月期 の実績)は約125億円である。
(前提事実(1)イ,乙88,89の1∼7,乙96)
(イ) 現イ ンディアン社のディーラー は,北米及びカナダにおいて26社
が存在し, 世界では 33社に 及んでいる。また ,現インディアン 社の運
営するウェブサイト では,ライダーコミュニティ が形成され,旧インデ
ィアン社製 のオートバイを所有する者や,現インディアン 社製 のオート
バイを所有 する者が参加している。さらに,これらの 愛好家は,インデ
ィアン・ライダーズ ・グループと称する団体を形成しており,この団体
は1907 年(明治 40年) に創設された全世界で最古のライダーズ・
グループである。
(枝番号を含めて乙90∼95,弁論の全趣旨)
(ウ) 被告 は,平成 21年初 めころ, 現インディアン 社がインディアン と
いうオートバイを復活させたことを知った。そこで,被告は,帝国デー
タバンクに 対し,現インディアン社の調査を依頼し,現インディアン社
がインディアンの名称とすべての知的財産権を獲得して既にオートバイ
の製造を開始しているという 調査結果 であった ため,同年春から現イン
ディアン社 とコンタクトを取 り始めた 。被告は,同年 8月,新規正規代
理店申請書 を現インディアン 社に提出 し,同年 11月,現インディアン
社の本社を 訪問し,本社,工場及び直営ショップを見学し,経営陣との
ミーティングを行った。この 際,被告 は,現インディアン 社のディーラ
ー開発部長 から,現インディアン社の創立に当たり,会長及び社長の2
名が2004年(平成16年 )に旧インディアン 社の知的財産権(商標
を含むすべての権利 )を購入 した旨の説明を受けた。被告は,帝国デー
タバンクの 調査が裏付けられたものと 考え,現インディアン社に対し,
正式に我が 国における総代理店としての申請を行い,平成22 年1月,
現インディアン社との間で正規輸入代理店合意書 を締結 した。
(乙96)
(2) 以上に基づいて ,まず,原告商標が無効審判 により 無効にされるべきも
のであるか (争点3)について検討する。
ア 商標法4 条1項10号,15号及び 19号について
被告は, インディアン標章 が,旧インディアン 社(又はその承継者であ
る現インディアン社 )のオートバイを 表示するものとして ,需要者におい
て広く認識 されていた旨,又は米国その他世界各国における需要者の間で
広く認識されている 旨主張する。
そこで検討するに ,商標法 4条1項 10号,15号及び19号の判断時
点は商標登録の出願時かつ査定時であるところ (同条3項参照),原告商
標1∼3に 係る出願 時(順に平成4年 2月6日,平成11年6月21日,
平成14年 12月28日)及び査定時 (順に平成6年1月14日,平成1
2年7月28日,平成17年10月19日)において は,旧インディアン
社がオートバイの製造を中止 した1953年(昭和28年)から39年∼
52年が経過しており,現インディアン 社もオートバイの製造を行ってい
なかったのであり(前提事実(2)及び(4)ア,上記(1)ア),その他 ,原告
商標1∼3 に係る指定商品についてインディアン 商標が使用されていた 事
実も認められないのであるから ,インディアン 標章について,上記各号 に
定める「他人の業務 」があったとは認 められない。
そうすると,その 余について判断するまでもなく ,被告の主張はいずれ
も理由がない。
イ 商標法4 条1項7 号について
被告は, 我が国において,外国における他人の標章の使用を知りながら,
それと無関係な者が ,当該他人の許諾 を得ることなく ,当該商標又はこれ
に類似する 商標の設定登録を受けることは,その目的が,我が国で登録さ
れていないことを 幸 いに,当該他人の 標章に便乗して不正な利益を得るな
どの不正な 意図をもって使用 することにあるものと 認められる限り,公序
良俗を害するおそれがある 商標というべきである 旨主張し,原告は,旧イ
ンディアン 社と何ら 関係がないにもかかわらず ,旧インディアン 社がハー
レーダビッドソンと 並び称される伝説 のオートバイメーカー であったとい
う名声に便乗して不正な利益 を得ようとしたものであり ,不正な意図が認
められる旨主張する 。
そこで検討するに ,商標法 4条1項 7号の判断時点 は商標登録の査定時
であるところ (同条 3項参照 ),原告商標1∼3に係る査定時(順に平成
6年1月14日,平成12年7月28 日,平成 17年10月19日)にお
いては,旧 インディアン社がオートバイの製造 を中止した1953年(昭
和28年) から41 年∼52 年が経過 しており ,現インディアン 社もオー
トバイの製造を行っていなかったのであるから (前提事実(2)及び(4)ア,
上記(1)ア), 旧インディアン 社及 び現インディアン 社について, インデ
ィアン標章 の使用が 認められない。
そうすると,旧インディアン 社が著名な会社であったため,その事業継
続当時においてインディアン 標章も著名ないし 周知であったことや,旧イ
ンディアン 社のオートバイ製造中止及 び商標登録抹消 後においても,イン
ディアン標章がコモンロー商標権として米国において 効力を有することが
認められるとしても( 上記(1)ア参照),インディアン標章の使用が認め
られない以上,原告 において ,他人の 標章に便乗して不正な利益を得るな
どの不正な 意図をもって原告商標を使用する目的があったと推認すること
は困難であ り,上記(1)イに認定した事情 を併せ考慮しても同様であ って,
その他原告 の不正な 意図を認めるに足 りる証拠 はない。
したがって,被告 の主張は理由がない。
ウ 以上のとおり,原告商標が無効審判 により無効にされるべきものである
とは認められない。
(3) 続いて,原告の商標権の行使が権利濫用に当たるか(争点 4)について
検討する。
ア まず,原告に関する事情についてみるに ,原告は旧インディアン 社とは
一切関係のない会社 である(当事者間 に争いがない。) 。他方で,原告及
びそのライセンシー は,雑誌等において,その ブランド が旧インディアン
社に由来があることを 示唆する内容の 広告ないし記事を繰り返し掲載して
いる(上記(1)イ)。しかしながら ,従前において他者 が使用していた標
章であったとしても ,商標法上の拒絶理由に当たらない 限り,その商標登
録が許されるのであるから ,他者が使用していた標章であることのみで ,
商標権の行使が許されない事情に当たるとはいい 得ない 。また,原告商標
1に係る出願の時である平成 4年2月 6日には ,旧インディアン 社がオー
トバイの製造を中止 した1953年( 昭和28 年)から 39年が経過して
おり(前提事実(2)ア及び(4)ア,上記 (1)ア(ア)),そのころ我が国にお
いて旧インディアン 社やインディアン 標章が広く認識されていたことを 認
めるに足りる証拠はない。そうすると ,原告又はそのライセンシー が旧イ
ンディアン 社の沿革 を利用して広告等 を行ったと認められるものの,そう
だからといって ,原告が旧インディアン 社やインディアン 標章の信用・名
声にただ乗 りしたと もいい難い(労力 を費やして原告商標を含むブランド
を自己のものとして 再生したとの見方 も十分に可能である。)。
続いて, 被告に関 する事情 についてみるに,旧インディアン 社のオート
バイ製造中止及び商標登録抹消後においても,インディアン標章 がコモン
ロー商標権 として米国において効力を 有することが認められるとしても
(上記(1)ア参照),それはあくまで 米国における効力 であり,直ちに我
が国における原告の 商標権の行使を否定する事情にはならない。また,上
記(1)ウに認定した被告に関する事情 には,権利濫用の評価根拠事実は見
当たらない 。
イ 以上を総合して考慮すると ,被告標章1∼3及び5を使用することによ
って,実質的に原告商標の出所表示機能 や原告 ないし原告商標の信用を害
しないということはできないのであり ,その他本件に現れた事情 を考慮し
ても,原告 の商標権 の行使が権利濫用 に当たる 事情を認めることはできな
い。
ウ したがって,被告 の権利濫用の主張 は理由がない。
4 まとめ
被告標章1∼ 3及び5 が原告商標1∼3 と類似することは 前記1のとおりで
ある。そして,本件 オートバイは原告商標1∼3に係る商標権 の指定商品であ
る(前提事実(2))。また ,被告 は,平成22 年3月26日から同月28 日ま
で,本件オートバイ を,第37回東京 モーターサイクルショー に出展して,販
売のため展示し,本件オートバイの定価表,カタログ 及びちらしに(カタログ
については 被告標章1∼3 を表示した本件オートバイ の写 真が掲載されてい
る。),被告標章5を付して 頒布し(前提事実(3)イ),同年4月10 日以降,
直営ショールーム を開設して,本件オートバイ を販売 のため展示し,そのウェ
ブサイトにおいて,被告標章 1∼3を表示した 本件オートバイ の写真を 広告し,
ウェブページの左上 に被告標章5を付して掲示 し,本件オートバイを輸入販売
している(前提事実(3)ウ)。さらに,被告は,被告標章2を表示 した本件オ
ートバイの写真が掲載されている定価表,被告標章1∼3を表示した本件オー
トバイの写真が掲載 されているちらし ,パンフレット 及びカタログ(ちらし及
びパンフレット には被告標章 2,カタログには被告標章 1∼3が付されてい
る。)を頒布し,これらの定価表,パンフレット,カタログには被告標章5が
付されている(前提事実(3)エ)。
そうすると, 被告の上記各行為 は,いずれも原告の商標権を侵害するものと
みなされ(商標法37条1号),また ,定価表 ,ちらし及びパンフレット につ
いては,被告標章2を付したことが 認められるほか,被告標章 1及び3 を付す
るおそれがあると 認めるのが 相当であるから,原告の請求は,被告標章 1∼3
及び5について,商標法36 条1項に基づく差止請求 及び同条 2項に基 づく廃
棄請求を求める限度 で理由がある。ただし,オートバイの廃棄請求については,
被告標章1∼3を抹消したとしても オートバイ 本体がなお相当 の価値を 有する
ものと認められることに照らせば,被告標章1∼3の抹消をすることにより 侵
害の予防に必要な行為として 十分であると認められるので,その限度で 認容す
ることとする。他方 で,前記 3のとおり,被告 の抗弁はいずれも 理由がない。
なお ,主文2 項では「 別紙被告標章目録記載 1ないし4の標章のいずれか を
付したオートバイ をウェブサイト上で広告するに際し」,主文 4項では 「別紙
被告標章目録記載 1ないし4の標章のいずれか を付したオートバイの定価表,
ちらし,パンフレット及びカタログに」との文言があるが,これらは原告の請
求に従い被告標章5の使用禁止の対象 を限定するものであって ,被告標章4の
使用禁止を認めるものではない 。
5 結論
よって,原告 の請求は ,被告商標1∼3 及び5について ,商標法36条1項
に基づく差止請求及び同条2項に基づく廃棄請求を求める限度 (ただし ,廃棄
請求については,主文5,6項で認める限度)で理由 があるから認容し ,その
余は理由がないから 棄却することとし ,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第 29部
裁判長裁判官 大 須 賀 滋
裁判官 小 川 雅 敏
裁判官 森 川 さ つ き

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