平成22(ワ)11862商標権侵害差止等請求事件
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裁判所 |
請求棄却 大阪地方裁判所
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裁判年月日 |
平成23年12月15日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告ニューメディカ・テック
株式会社大倉
ら訴訟代理人弁護士川下清 原告ニューメディカ・テック
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法令 |
商標権
商標法38条2項4回 商標法38条3項3回 商標法38条1回 商標法36条1回
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キーワード |
商標権10回 許諾7回 侵害6回 差止5回 実施2回 意匠権1回 損害賠償1回
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主文 |
1 被告NMT販売は,別紙商品目録記載1の商品に別紙被告標章目録記載1-1,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載2の商品に別紙被告標章目録記載1-2,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載3の商品に別紙被告標章目録記載1-3及び同3の各標章をそれぞれ付し,又は同各標章を付した同各商品を販売し,販売のために展示してはならない。2 被告大倉は,別紙商品目録記載1の商品に別紙被告標章目録記載1-1,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載2の商品に別紙被告標章目録記載1-2,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載3の商品に別紙被告標章目録記載1-3及び同3の各標章をそれぞれ付し,又は同各標章を付した同各商品を販売し,販売のために展示し,貸し渡し,貸渡しのために展示してはならない。3 被告らは,別紙商品目録記載1ないし3の各商品に関する宣伝用のカタログ,パンフレットに別紙被告標章目録記載1-1ないし1-3,同2-1,同2-2及び同3の各標章を付して頒布してはならない。4 被告らは,その本店,事務所,及び倉庫に存在する別紙商品目録記載1ないし3の各商品及びこれらに関する宣伝用のカタログ,パンフレットから別紙被告標章目録記載1-1ないし1-3,同2-1,同2-2及び同3の各標章を削除せよ。5 被告大倉は,インターネット上のアドレス「http://www.grandwater.jp/」において開設するウェブサイトから,別紙被告標章目録記載3の標章を抹消せよ。6 被告NMT販売は,原告に対し,1742万9553円及びこれに対する平成22年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。7 被告大倉は,原告に対し,518万7654円及びこれに対する平成22年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。8 原告のその余の請求をいずれも棄却する。9 訴訟費用は,被告NMT販売に生じた費用の5分の3と原告に生じた費用の5分の2を被告NMT販売の負担とし,被告大倉に生じた費用の2分の1と原告に生じた費用の20分の3を被告大倉の負担とし,その余を原告の負担とする。10 この判決は,1項ないし7項に限り,仮に執行することができる。 |
事件の概要 |
1 前提事実(いずれも当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 原告
原告は,浄水器・浄水装置等の輸入,製造,販売,設計及び取付工事
並びに保守点検等を目的とする株式会社である。 |
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判決文
平成23年12月15日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成22年(ワ)第11862号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成23年10月3日
判 決
原 告 ニューメディカ・テック
株式会社
同訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎
同 辻 村 和 彦
同 井 口 喜 久 治
同 川 端 さ と み
同 森 本 純
同 中 村 理 紗
同 山 崎 道 雄
同 辻 淳 子
同 藤 野 睦 子
被 告 ニューメディカ・テック
販売株式会社
(以下「被告NMT販売」という。)
被 告 株式会社 大 倉
(以下「被告大倉」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 川 下 清
同 今 田 晋 一
同 高 橋 幸 平
主 文
1 被告NMT販売は,別紙商品目録記載1の商品に別紙被告標章目録記載
1-1,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載2の商品に別
紙被告標章目録記載1-2,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目
録記載3の商品に別紙被告標章目録記載1-3及び同3の各標章をそれぞ
れ付し,又は同各標章を付した同各商品を販売し,販売のために展示して
はならない。
2 被告大倉は,別紙商品目録記載1の商品に別紙被告標章目録記載1-1,
同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載2の商品に別紙被告標
章目録記載1-2,同2-1及び2-2の各標章を,別紙商品目録記載3
の商品に別紙被告標章目録記載1-3及び同3の各標章をそれぞれ付し,
又は同各標章を付した同各商品を販売し,販売のために展示し,貸し渡し,
貸渡しのために展示してはならない。
3 被告らは,別紙商品目録記載1ないし3の各商品に関する宣伝用のカタ
ログ,パンフレットに別紙被告標章目録記載1-1ないし1-3,同2-
1,同2-2及び同3の各標章を付して頒布してはならない。
4 被告らは,その本店,事務所,及び倉庫に存在する別紙商品目録記載1
ないし3の各商品及びこれらに関する宣伝用のカタログ,パンフレットか
ら別紙被告標章目録記載1-1ないし1-3,同2-1,同2-2及び同
3の各標章を削除せよ。
5 被告大倉は,インターネット上のアドレス「http://www.grandwater.jp/」
において開設するウェブサイトから,別紙被告標章目録記載3の標章を抹
消せよ。
6 被告NMT販売は,原告に対し,1742万9553円及びこれに対す
る平成22年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
7 被告大倉は,原告に対し,518万7654円及びこれに対する平成2
2年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
8 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
9 訴訟費用は,被告NMT販売に生じた費用の5分の3と原告に生じた費
用の5分の2を被告NMT販売の負担とし,被告大倉に生じた費用の2分
の1と原告に生じた費用の20分の3を被告大倉の負担とし,その余を原
告の負担とする。
10 この判決は,1項ないし7項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 被告らは,別紙商品目録記載1ないし3の各商品(以下,個別に「被告
商品1」などといい,併せて「被告各商品」という。)に別紙被告標章目録
記載1-1ないし1-3の各標章(以下,個別に「被告標章1-1」など
といい,併せて「被告標章1」という。 ,同目録記載2-1及び2-2の
)
各標章(以下,個別に「被告標章2-1」などといい,併せて「被告標章
2」という。 ,及び同目録記載3の標章(以下「被告標章3」といい,被
)
告標章1ないし3を併せて「被告各標章」という。)を付し,又は被告各標
章を付した被告各商品を販売し,販売のために展示し,貸し渡し,貸渡し
のために展示してはならない。
(2) 主文3ないし5項同旨
(3) 被告NMT販売は,原告に対し,3389万円及びこれに対する平成2
2年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(4) 被告大倉は,原告に対し,1432万2000円及びこれに対する平成
22年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(5) 訴訟費用は,被告らの負担とする。
(6) 仮執行宣言
2 被告ら
(1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は,原告の負担とする。
第2 事案の概要
1 前提事実(いずれも当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 原告
原告は,浄水器・浄水装置等の輸入,製造,販売,設計及び取付工事
並びに保守点検等を目的とする株式会社である。
イ 被告ら
被告NMT販売は,浄水器・浄水装置等の輸出入,販売及び取付工事
並びに保守点検等を目的とする株式会社である。
被告大倉は,建設業,宅地造成業の外,浄水器のレンタル及び販売等
を目的とする株式会社である。
(2) 本件各商標権
原告は,次の各商標(以下,個別に「本件商標1」などといい,併せて
「本件各商標」という。)について,それぞれ商標権(以下,個別に「本
件商標権1」などといい,併せて「本件各商標権」という。)を有してい
る。
ア 本件商標1
登録番号 第4054568号
出 願 日 平成7年6月2日
登 録 日 平成9年9月12日
商品及び役務の区分 第11類
指定商品 家庭用浄水器,浄水装置,浴槽類
登録商標 別紙本件商標目録記載1のとおり
イ 本件商標2
登録番号 第4539857号
出 願 日 平成12年11月22日
登 録 日 平成14年2月1日
商品及び役務の区分 第11類
指定商品 家庭用浄水器,浄水装置,浴槽類
登録商標 別紙本件商標目録記載2のとおり
ウ 本件商標3
登録番号 第4054569号
出 願 日 平成7年6月2日
登 録 日 平成9年9月12日
商品及び役務の区分 第11類
指定商品 家庭用浄水器,浄水装置,浴槽類
登録商標 別紙本件商標目録記載3のとおり
(3) 被告らの行為
ア 被告商品1関係
被告NMT販売は,被告標章1-1又は被告標章2を付した被告商品
1(以下「本件フィルター1」という。)を使用した浄水器を販売してい
る。
被告大倉は,本件フィルター1を使用した浄水器を販売ないし貸与し
ている。
イ 被告商品2関係
被告NMT販売は,被告標章1-2及び被告標章2を付した被告商品
2(以下「本件フィルター2」という。)を使用した浄水器(被告商品3)
を販売した。
被告大倉は,本件フィルター2を使用した浄水器(被告商品3)を販
売ないし貸与した。
ウ 被告商品3関係
被告NMT販売は,被告標章1-3及び被告標章3を付した被告商品
3(以下「本件浄水器3」という。)を販売した。
被告大倉は,本件浄水器3を販売ないし貸与したほか,自社ホームペー
ジにおいて,被告商品3の宣伝広告に関し,被告標章3を使用した。
(4) 総販売代理店契約
被告NMT販売は,原告との間で,平成19年6月29日,原告商品を
販売するための総販売代理店契約を締結し(甲13) 本件各商標を付した
,
原告商品を販売していたが(上記契約の帰趨については争いがある。 ,そ
)
の後,上記(3)のとおり,被告各商品を販売するようになった。被告各商
品はいずれも,原告が製造した商品ではなく,被告NMT販売が製造した
商品である。
(5) 本件各商標及び指定商品との類似性
被告標章1は本件商標1と,被告標章2は本件商標2と,被告標章3は
本件商標3と,それぞれ類似する。
また,被告各商品は,本件各商標権の指定商品と同一ないし類似する。
2 原告の請求
原告は,被告各商品に関し被告各標章を使用する行為が,本件各商標権を
侵害するものであるとして,① 被告らに対し,商標法36条に基づき,被
告各商品に係る被告各標章の使用の差止め及び抹消を,② 被告NMT販売
に対し,不法行為に基づき,損害の一部である3389万円の賠償及びこれ
に対する平成22年9月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの遅
延損害金の支払を,③ 被告大倉に対し,不法行為に基づき,損害の一部で
ある1432万2000円の賠償及びこれに対する平成22年9月2日(訴
状送達の日の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払を,それぞれ求め
ている。
3 争点
(1) 使用許諾の有無(争点1)
(2) 原告の損害(争点2)
第3 争点に関する当事者の主張
1 使用許諾の有無(争点1)について
【被告らの主張】
被告NMT販売は,原告商品の販売事業を行うために設立された会社であ
り,設立後,直ちに原告商品を原告から購入して販売活動を開始した。
その際,原告は,被告NMT販売に対し,被告各標章の使用を許諾した。
【原告の主張】
原告は,被告NMT販売に対し,原告の真正品を販売することを委託した
ものであるが,被告各商品は,原告の真正品ではなく,被告らの主張は前提
を欠いている。
原告が,被告各商品に被告各標章の使用を許諾した事実はない。
また,原告と被告NMT販売間の総販売代理店契約は,平成20年7月9
日付の通知書により解除された。
2 原告の損害(争点2)について
【原告の主張】
(1) 被告NMT販売関係
被告NMT販売の行為により被った原告の損害は,以下のとおり,合計
1億4007万7009円を下らない(商標法38条2項)。
ア 被告商品1について
(ア) 販売台数
被告NMT販売は,本件フィルター1を使用した浄水器を,113
1台販売した。
(イ) 販売価格
本件フィルター1を使用した浄水器の販売価格は税抜き15万円で
ある(争いなし)。
(ウ) 利益率
本件フィルター1を使用した浄水器の原価は多くとも7万2356
円であるから,被告NMT販売の利益率は次の計算式による率を下ら
ない。
〔計算式〕(150,000-72,356)÷150,000≒0.518
(エ) 利益額
浄水器全体におけるフィルターの寄与率は30%を下らないから,
上記(ア)ないし(ウ)によれば,原告の損害額は,少なくとも2634万
4609円となる。
〔計算式〕1,131×150,000×前記(ウ)の利益率×0.3=26,344,609
イ 被告商品2,3について
(ア) 販売台数
被告NMT販売は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,
600台販売した。
(イ) 販売価格
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売価格は,税抜き2
7万2000円である。
(ウ) 利益率
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の原価は8万2446円
であるから,被告NMT販売の利益率は次の計算式による利益率を下
らない。
〔計算式〕(272,000-82,446)÷272,000≒0.697
(エ) 利益額
本件フィルター2を使用した本件浄水器3における被告標章1-2,
同2,同3の寄与率は100%といえるから,上記(ア)ないし(ウ)によ
れば,被告NMT販売の利益は,少なくとも1億1373万2400
円となる。
〔計算式〕600×272,000×前記(ウ)の利益率=113,732,400
(2) 被告大倉関係
被告大倉の行為により被った原告の損害は,以下のとおり,販売分につ
いて4032万4000円(主位的に商標法38条2項,予備的に同条3
項),レンタル分について4452万円となる(商標法38条2項)。
ア 被告商品1について
(ア) レンタル台数
被告大倉は,本件フィルター1を使用した浄水器を,少なくとも1
000台レンタルした。
(イ) レンタル価格
本件フィルター1を使用した浄水器のレンタル価格は月額6300
円である(争いなし)。
(ウ) レンタル期間
被告大倉は,平成20年9月からの36か月間,本件フィルター1
を使用した浄水器をレンタルしている。
(エ) 利益額
本件フィルター1を使用した浄水器の仕入価格が前記(1)ア(イ)と
同じ15万円であるとすれば,24か月経過により仕入代金の回収が
終わり,以後はレンタル代金が全て利益となる。
また,浄水器全体におけるフィルターの寄与率は30%を下らない
から,前記(ア)ないし(ウ)によれば,被告大倉の利益は2268万円を
下らない。
〔計算式〕1,000×6,300×(36-24)×0.3=22,680,000
イ 被告商品2,3(販売による利益)について
(ア) 販売台数
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売台数は593台で
ある(争いなし)。
(イ) 販売価格
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売価格は,税抜き3
4万円である。
(ウ) 利益率
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の仕入代金は27万20
00円であるから,被告大倉の利益率は20%を下らない。なお,本
件商標2,3に係る実施料率(商標法38条3項)も,同様に20%
である。
〔計算式〕(340,000-272,000)÷340,000=0.20
(エ) 利益額
本件フィルター2を使用した本件浄水器3における被告標章2,3
の寄与率は100%といえるから,前記(ア)ないし(ウ)によれば,被告
大倉の利益は,少なくとも4032万4000円となる。
〔計算式〕593×340,000×0.2=40,324,000
ウ 被告商品2,3(レンタルによる利益)について
(ア) レンタル台数
被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,100
台レンタルした。
(イ) レンタル単価
本件フィルター2を使用した本件浄水器3のレンタル価格は,月額
1万3650円である。
(ウ) レンタル期間
被告大倉は,平成20年9月からの36か月間,本件フィルター2
を使用した本件浄水器3をレンタルしている。
(エ) 利益額
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の仕入価格が前記イ(ウ)
と同じ27万2000円であるとすれば,20か月経過により仕入代
金の回収が終わり,以後はレンタル代金が全て利益となる。
したがって,前記(ア)ないし(ウ)によれば,被告大倉の利益は,21
84万円を下らない。
〔計算式〕100×13,650×(36-20)=21,840,000 円
【被告らの主張】
(1) 被告ら共通の主張
ア 損害の発生について
被告各商品について,原告の商品であるとの誤認混同が生じているこ
とや,原告に損害が発生していることについては,何ら立証されていな
い。
特に,本件フィルター1が使用された浄水器は,一貫して被告の商品
として販売されているし,本件フィルター1は外部から視認できない筐
体内部の部品であるから,消費者において原告の商品であるとの誤認・
混同は生じる余地がなく,原告に損害は発生していない。
イ 損害の二重計上について
原告は,被告商品3の販売及びレンタルについて,別訴で意匠権侵害
を主張し,本訴と同様の算出方法により,本訴と同額の損害賠償を請求
している。
しかしながら,被告商品3の販売及びレンタルが,法的に複数の評価
を受け得るとしても,同一内容の損害が複数生じることはない。
したがって,損害額の認定にあたっては,別訴に係る損害額について
も考慮されるべきである。
ウ 寄与割合について
本件各商標権の侵害が問題となるのは,フィルターや筐体の一部など
に限られるから,浄水器全体における寄与割合を乗じた額が,損害とし
て認定されるべきである。
そして,被告各商品の売上げは被告らの営業努力に拠るところが大き
いし,被告標章1及び2は外部から視認できない態様で使用されている
から,その寄与はほとんどない。
(2) 被告NMT販売の主張
ア 被告商品1について
(ア) 販売台数
本件フィルター1を使用した浄水器の販売台数は270台である。
(イ) 利益率
本件フィルター1を使用した浄水器に係る利益率は33%である。
イ 被告商品2,3について
(ア) 販売台数
本件フィルター2を使用した本件浄水器3は,600台製造したが,
3台は廃棄しており,販売台数は597台である。
(イ) 販売価格
本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売価格は,税込み2
7万2000円である。
(ウ) 利益率
本件フィルター2を使用した本件浄水器3に係る利益率は50%で
ある。
(3) 被告大倉の主張
ア 被告商品1について
(ア) レンタル台数
本件フィルター1を使用した浄水器のレンタル台数は270台であ
る。
(イ) 利益額
レンタルによる利益が出るのは,設置後2年からである。
イ 被告商品2,3(販売による利益)について
被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,被告大倉
が分譲するマンション・住宅の標準装備品としており,かつこれを分譲
価格に反映させていないから,本件フィルター2を使用した本件浄水器
3の販売による利益はない。
ウ 被告商品2,3(レンタルによる利益)について
(ア) レンタル台数
本件フィルター2を使用した本件浄水器3のレンタル台数は,4台
である。
(イ) レンタル価格
本件フィルター2を使用した本件浄水器3のレンタル価格は,月額
1万2600円(税込み)である。
(ウ) 利益額
レンタルによる利益が出るのは,設置後2年からである。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(使用許諾の有無)について
被告らは,被告NMT販売が,被告各商品に被告各標章を付することにつ
いて,原告から許諾を得ていたと主張する。
しかし,証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によると,原告としては,原告
商品の販売をするために,被告NMT販売との間で,総販売代理店契約を締
結したのであって,被告NMT販売が被告各商品を販売することや,同商品
に原告標章と類似する被告各標章を付することを許諾したとは,およそ考え
られず,これを窺わせるような事情もない。
よって,被告らの上記主張は,理由がない。
2 争点2(原告の損害)について
(1) 損害の発生
被告らは,被告各商品に関し,原告に損害は発生していないと主張する。
しかしながら,被告大倉は,従前は原告から浄水器を仕入れていたとこ
ろ,被告NMT販売が,本件各商標権を侵害する被告各商品を販売するよ
うになってからは,こちらを仕入れるようになったのであるから,原告に
は損害の発生を認めることができる。
したがって,以下,商標法38条に基づく損害額の算定を行う。
(2) 被告NMT販売関係
ア 被告商品1について
(ア) 販売台数
甲44によれば,本件フィルター1を使用した浄水器の販売台数は,
平成21年5月19日から,弁護士が送付した注意喚起文書の作成日
である同年9月15日までを出荷日とする293台と認められる。
なお,被告NMT販売は,販売台数は270台であると主張し,こ
れに沿う証拠(乙9)を提出する。しかしながら,乙9には,平成2
1年9月24日までの間に出荷されたものとして,管理 NO(製造番
号と同一)の下3桁(以下,全て下3桁で表記する。)が001~27
0の商品のみが記載されているところ,同日までには,弁護士による
注意喚起書が到達し,既に,被告標章1-1及び2を付したシールを
剥がした商品が存在することを否定できず,その一方で,甲44の資
料1によれば,製造番号はこれより後であるが,出荷は同日以前にさ
れている商品(たとえば,製造番号304~314の商品は,同年8
月13日から同月16日にかけて出荷されている。)も存在するから,
乙9は本件フィルター1を使用した浄水器の全てを計上しているもの
とはいえず,採用できない。
(イ) 1台当たりの利益
本件フィルター1を使用した浄水器について,販売価格が税抜き1
5万円であることは当事者間に争いがなく,その原価は多くとも7万
2356円であると認められるところ(甲44) 他に限界利益の算定
,
にあたって控除すべき経費は認められないから,1台当たりの利益は
7万7644円となる。
〔計算式〕150,000-72,356=77,644
(ウ) 被告NMT販売の受けた利益
前記(ア),(イ)によれば,被告NMT販売の受けた利益は2274万
9692円となる。
〔計算式〕77,644×293=22,749,692
(エ) 標章の寄与割合
a 被告標章1-1
被告標章1-1は,ハウスマークに係るものである。
そして,浄水器(フィルターを含む。)は,通常は,購入にあたり
製造・販売元が重視される商品といえる。被告大倉の分譲住宅の宣
伝広告によると,逆浸透膜浄水器(グラン ウォーター システムと
いう表示が使用されている。 を標準装備していることが強調されて
)
いるが,原告の商品であることを示す記載は見あたらず,被告大倉
が本件フィルター1を使用した浄水器(型番GW-1500EX)
を購入したのは,逆浸透膜浄水器だったからと推測でき(甲33の
2,甲39の2) 被告標章1-1の使用の必要があったとはいえな
,
い。
しかも,被告標章1-1は,外部から視認できないフィルターに
付された標章である。
したがって,本件フィルター1を使用した浄水器自体の販売にあ
たり,被告標章1-1の寄与は,小さいといえる。
b 被告標章2
被告標章2は,フィルターの名称(ミネマリンフィルター)に係
るものである。
そして,被告大倉は,逆浸透膜浄水器の説明や,これを標準装備
した分譲住宅の宣伝広告において,ミネマリンフィルターの使用を
謳っており(甲33の2,甲40の2) フィルターに
, 「ミネマリン」
と表記する必要があったといえるから,外部から視認できないフィ
ルターに付されていても,被告大倉に対する販売については,被告
標章2の寄与があると認められる。
もっとも,被告標章2は,浄水器全体に付された標章ではなく,
浄水器内部のフィルター4本のうち,ミネマリンフィルターである
1本のみに付された標章である(甲3の1~6)。
c 寄与割合
以上のとおり,被告標章1-1,同2は,本件フィルター1に使
用されているに過ぎない。しかも,被告NMT販売が販売した相手
は,被告大倉1社であったことを考えると,上記フィルターを装備
した浄水器の被告大倉への販売による利益全体に対する,被告標章
1-1及び被告標章2の寄与した割合は,合計2%とみるのが相当
である。
(オ) 原告の損害
以上のとおりであるから,原告の損害額は,45万4993円(1
円未満切捨て)と認められる。
〔計算式〕22,749,692×0.02=454,993
イ 被告商品2,3について
(ア) 販売台数
被告NMT販売は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を6
00台製造したことは認めるものの,うち3台は廃棄しており,販売
台数は597台であると主張している。
そして,甲44の資料2を見ても,表番号29,225,226の
3台について,本来であれば設置業者名が記載されるはずの「納品者」
欄に,被告NMT販売が引き取った旨の記載があり,かつ「設置先」
欄も空欄である。
したがって,上記3台は販売されなかったものと考えられるから,
販売台数は597台と認める。
(イ) 1台当たりの利益
本件フィルター2を使用した本件浄水器3は,全て被告大倉に販売
されているところ(甲47),甲44の資料3の1によれば,被告大倉
に対する販売価格は税抜き27万2000円と認められる。
本件フィルター2を使用した本件浄水器3に係る製造原価は8万2
446円であるところ(甲44) 他に限界利益の算定にあたって控除
,
すべき経費は認められないから,1台当たりの利益は18万9554
円となる。
〔計算式〕272,000-82,446=189,554
(ウ) 被告NMT販売の受けた利益
前記(ア),(イ)によれば,被告NMT販売の受けた利益は1億131
6万3738円となる。
〔計算式〕189,544×597=113,163,738
(エ) 標章の寄与割合
a 被告標章1-2及び1-3
被告標章1-2及び1-3は,ハウスマーク及び社名に係るもの
である。
そして,本件フィルター2を使用した本件浄水器3は,原告商品
(CVQ-2000)のコピー商品であるが,被告NMT販売がこ
れを製造したのは,上記原告商品を分譲住宅に標準装備する予定で
あった被告大倉に対し,同じサイズのものを納品する必要があった
からであり(甲43) 原告商品として販売する必要がどの程度あっ
,
たかは不明である。
浄水器は,通常は,購入にあたり製造・販売元が重視される商品
といえる。もっとも,被告大倉の分譲住宅の宣伝広告によると,逆
浸透膜浄水器(グラン ウォーター システムという表示が使用され
ている。 を標準装備していることが強調されているが,
) 原告の商品
であることを示す記載は見あたらず,被告大倉が本件浄水器3(本
件フィルター2を装備)を購入したのは,逆浸透膜浄水器だったか
らと推測でき(甲33の2,甲39の2),被告標章1-2,同1-
3の使用の必要がどの程度あったかは不明である。
しかも,被告標章1-2については,外部から視認できないフィ
ルターに付された標章である。
したがって,本件フィルター2を使用した本件浄水器3の被告大
倉への販売にあたり,被告標章1-2の寄与は小さく,被告標章1
-3の寄与も大きいとはいえない。
b 被告標章2
被告大倉は,逆浸透膜浄水器の説明や,これを標準装備した分譲
住宅の宣伝広告において,ミネマリンフィルターの使用を謳ってお
り(甲33の2,甲40の2),フィルターに「ミネマリン」と表記
する必要があったといえるから,外部から視認できないフィルター
に付されていても,被告大倉に対する販売については,被告標章2
の寄与があると認められる。
もっとも,被告標章2は,浄水器全体に付された標章ではなく,
浄水器内部のフィルター4本のうち,ミネマリンフィルターである
1本のみに付された標章である。
c 被告標章3
被告標章3は,逆浸透膜浄水器の名称に係るものである。
そして,被告大倉は,遅くとも平成21年7月14日までは,レ
ンタルに供している逆浸透膜浄水器として,被告標章3が付された
浄水器(ただし,本件浄水器3ではない。 の写真を使用しており
) (甲
19),被告NMT販売も,平成22年12月15日時点において,
「クリスタル・ヴァレー」の導入企業として,被告大倉を紹介して
いるから(甲26) 被告大倉に対する本件浄水器3の販売について
,
は,被告標章3の寄与があると認められる。
また,被告標章3は,本件浄水器3の正面上部中央に付されてお
り,目につきやすい位置に付されているといえる(甲5の1)。
d 寄与割合
以上のとおり,被告標章1-2,同2は,本件フィルター2に使
用されているに過ぎないが,被告標章1-3,同3は,本件浄水器
3に使用され,被告標章3については,目立つ位置に付されている。
被告大倉としては,できるだけ原告商品と同様のものを分譲住宅に
装備する必要があり,その限度で,上記の被告標章を使用するメリッ
トは否定できないが,それ以上に,どの程度,原告の商品にこだわ
る必要があったかは不明であることなどの事情を総合すると,上記
各被告標章の使用による本件浄水器3(本件フィルター2を装備)
の被告大倉への販売による利益全体に対する,被告標章1-2,同
1-3,同2,同3の寄与割合は,合計15%とみるのが相当であ
る。
(オ) 原告の損害
以上のとおりであるから,原告の損害額は,1697万4560円
(1円未満切捨て)と認められる。
〔計算式〕113,163,738×0.15=16,974,560
ウ まとめ
以上のとおりであるから,被告NMT販売の行為による原告の損害は,
前記ア(オ)の45万4993円と,前記イ(オ)の1697万4560円の
合計額である1742万9553円となる。
(3) 被告大倉関係
ア 被告商品1について
(ア) レンタル台数
前記(2)ア(ア)のとおり,被告NMT販売は,本件フィルター1を使
用した浄水器を293台販売したと認められるところ,被告大倉は,
これを全てレンタルに供したと認められる。
(イ) 1台当たりの利益
本件フィルター1を使用した浄水器のレンタル価格が月額6300
円であることは,当事者間に争いがないところ,上記金額は消費税込
みであることが窺える(甲11,12,19)。被告大倉は,これを1
5万円(税抜き)で仕入れていると認められる(前記(2)ア(イ))。
そして,原告は,24か月経過により仕入代金の回収が終わると主
張するが,消費税込みの仕入代金は15万7500円であるから,レ
ンタル収入の合計額が仕入代金を超えるのは,25か月経過後である。
また,レンタル開始時期は,甲44の資料2に記載された出荷日頃
と認めるのが相当である。なお,乙4には,各商品に係る個別の納品
日・納品場所が記載されており,具体的なレンタル開始時期を示して
いるとも思えるが,その正確性に疑問があるので(例えば,納品日に
ついて,機械 NO(製造番号と同一)042の商品は,6月12日欄
と8月18日欄の双方に記載があり,同225の商品は,8月18日
欄と10月20日欄の双方に記載があり,同243の商品は,8月2
9日欄と9月30日欄の双方に記載がある等),採用できない。
したがって,正確なレンタル開始時期は不明であるところ,およそ
のレンタル期間は,平成21年5月出荷分について28か月(39台),
同年6月出荷分について27か月(81台) 同年7月出荷分について
,
26か月(75台)と認めるのが相当である(甲44の資料1) また,
。
同年8月以降の出荷分については,25か月を経過していないため,
利益が出ているとは認められない。
したがって,レンタルに係る利益は,212万4000円となる。
計算式:6,000×39×(28-25)=702,000
6,000×81×(27-25)=972,000
6,000×75×(26-25)=450,000
(ウ) 寄与割合
本件フィルター1を使用した浄水器がレンタルに供されるに当たり,
消費者が,浄水器の内部に装着された本件フィルター1を取り外して
まで確認することは考えにくく(装着されたままでは,本件フィルター
に付された被告標章1-1,同2を確認しづらい場合がある〔甲3の
2〕 )
。 ,被告大倉が,レンタルにあたり,フィルターの製造元を示して
いることを窺わせる証拠はない(甲34は作成の目的も使用の事実も
明らかではないし,甲35はフィルターの製造元の表記ではない。 。
)
したがって,本件フィルター1を使用した浄水器のレンタルによる売
上げに対する,被告標章1-2の寄与の割合は低いといえる。
しかしながら,被告大倉は,逆浸透膜浄水器の説明において,浄水
器内部のフィルターの状況を明らかにした上で,ミネマリンフィル
ターの使用を謳っているから(甲33の2。なお,表紙には「社内資
料」との表記があるが,後に公表されたと考えられる。 ,消費者への
)
レンタルによる売上げに対する,被告標章2の寄与は否定できない。
そして,前記(2)ア(エ)と同様,被告標章1-1及び被告標章2の寄
与割合は,合計2%とみるのが相当である。
(エ) 原告の損害
以上のとおりであるから,原告の損害額は,4万2480円と認め
られる。
〔計算式〕2,124,000×0.02=42,480
イ 被告商品2,3について
(ア) 販売について
a 販売台数
被告大倉が本件フィルター2を使用した本件浄水器3を593台
販売したことは,当事者間に争いがない。
b 原告の損害
(a) 商標法38条2項に基づく請求(主位的請求)について
原告は,被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器
3を34万円以上で販売していると主張するが,これを認めるに
足りる証拠はない。
また,被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3
を,その分譲するマンションや戸建て住宅に標準装備して,浄水
器付き住宅として販売しているところ,住宅の販売価格や,販売
価格における浄水器の占める割合を認めるに足りる証拠もない。
したがって,商標法38条2項に基づく原告の請求は認められ
ない。
(b) 商標法38条3項に基づく請求(予備的請求)について
前記(a)のとおり,本件フィルター2を使用した本件浄水器3の
販売により被告大倉が得た利益額は不明であるが,その売上額は,
仕入価格である税込み28万5600円に販売台数である593
台を乗じた1億6936万0800円を下回らないといえる。
そして,前記(2)イ(エ)の事情を考慮すれば,本件商標1-2,
同1-3,同2,同3の実施料率は,合計3%を相当と認める。
したがって,商標法38条3項により算定される原告の損害は,
508万0824円となる。
〔計算式〕169,360,800×0.03=5,080,824
(イ) レンタルについて
a レンタル台数
甲44の資料2には,本件フィルター2を使用した本件浄水器3
のうち,表番号84,85,214,215の4台は「EX」であ
る旨の記載があるところ,本件フィルター2を使用した本件浄水器
3のうち,CVQ-2000が販売用であり,CVQ-2000E
Xがレンタル用であることは,当事者間に争いがない。
また,4台がレンタルされたとすれば,被告大倉の総仕入台数が
前記(2)イ(ア)のとおり597台であり,販売台数が前記(ア)aのと
おり593台であることとも整合する。
したがって,被告大倉のレンタル台数は4台であると認められる。
b 利益額
被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,27
万2000円(税抜き)で仕入れ,月額1万3650円でレンタル
しているが,レンタル料は消費税込みの金額であることが窺われる
(甲11)。
そして,原告は,20か月経過により仕入代金の回収が終わると
主張するが,消費税込みの仕入代金は28万5600円であるから,
レンタル収入の合計額が仕入代金を超えるのは,21か月経過後で
ある。
また,CVQ-2000EXの出荷日は,それぞれ,平成21年
2月9日(1台),同月19日(1台),同年4月6日(2台)であ
るところ(甲44の資料2),乙3によれば,レンタル開始時期は,
同年2月12日,同月21日,同年4月27日,同年7月5日と認
められるから,レンタル期間は,31か月(2台) 29か月
, (1台),
26か月(1台)である。
したがって,レンタルに係る利益は,42万9000円となる。
〔計算式〕13,000×2×(31-21)=260,000
13,000×1×(29-21)=104,000
13,000×1×(26-21)=65,000
c 標章の寄与割合
(a) 本件フィルター2について
本件フィルター2を使用した本件浄水器3がレンタルに供され
るに当たり,本件フィルター2が消費者の目に触れることはない
と考えられるし,被告大倉が,レンタルにあたり,フィルターの
製造元を示していることを窺わせる証拠はない。したがって,被
告標章1-2の寄与はほとんどないと考えられる。
しかしながら,前記ア(ウ)で述べたとおり,被告大倉は,逆浸
透膜浄水器の説明において,浄水器内部のフィルターの状況を明
らかにした上,ミネマリンフィルターの使用を謳っているから,
消費者へのレンタルにあたっても,被告標章2の寄与があると認
められる。
(b) 本件浄水器3について
浄水器は,通常は,購入にあたり製造・販売元が重視される商
品といえるが,被告大倉が,レンタルにあたり,その製造元を示
していることを窺わせる証拠はない。また,被告標章1-3は,
本件浄水器3の背面下部に付されており(甲5の7) レンタル前
,
には,消費者の目に触れることは少ないと考えられる。
他方,被告大倉は,遅くとも平成21年7月14日までは,レ
ンタルに供している逆浸透膜浄水器として,被告標章3が付され
た浄水器の写真を使用しており(甲19),被告NMT販売も,平
成22年12月15日時点において,
「クリスタル・ヴァレー」の
導入企業として被告大倉を紹介しているから(甲26) 本件浄水
,
器3のレンタルによる売上げにあたっては,被告標章3の寄与が
あると認められる。
また,被告標章3は,本件浄水器3の正面上部中央に付されて
おり,目につきやすい位置に付されているといえる(甲5の1)。
(c) 寄与割合
以上を総合すれば,本件フィルター2を使用した本件浄水器3
のレンタルによる売上げに対する被告標章1-2,同1-3,同
2,同3の寄与割合は,前記(2)イ(エ)と同様,合計15%とみる
のが相当である。
d 原告の損害
以上のとおりであるから,原告の損害額は,6万4350円(1
円未満切捨て)と認められる。
〔計算式〕429,000×0.15=64,350
ウ まとめ
以上のとおりであるから,被告大倉の行為による原告の損害は,前記
ア(エ)の4万2480円,前記イ(ア)b(b)の508万0824円,前記
イ(イ)dの6万4350円の合計額である518万7654円となる。
3 差止請求について
被告らは,被告標章1-2,同2,同3について,過去に使用したことが
あるとの限度で認めており,また,甲43の資料1によれば,本件フィルター
2を使用した本件浄水器3が製造されていたのは平成21年12月頃まで
であると認められる。したがって,被告らは,現在は,被告商品2,3に被
告標章1-2,同2,同3を使用していないと考えられるが,将来における
商標権侵害のおそれまでは否定できないので,原告の差止請求を認めること
とする。
もっとも,被告NMT販売が,被告各商品を貸し渡していた事実は認めら
れないから,被告NMT販売に対する差止請求のうち貸渡しに係る部分には
理由がない。
第5 結論
以上のとおりであるから,原告の請求は,主文記載の限度において理由が
ある。
よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁 判 長 裁 判 官 山 田 陽 三
裁 判 官 達 野 ゆ き
裁 判 官 西 田 昌 吾
(別紙)
商品目録
1 浄水器(型番GW-1500EX)内の浄水フィルター
2 浄水器(型番CVQ-2000,同EX)内の浄水フィルター
3 浄水器(型番CVQ-2000,同EX)
以 上
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