知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成23(ワ)17393 著作権侵害差止等請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成23(ワ)17393著作権侵害差止等請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成23年11月29日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ワールドピクチャー
原告株式会社宣弘社
法令 著作権
著作権法114条3項4回
著作権法112条1項2回
キーワード 許諾22回
ライセンス11回
侵害9回
差止4回
損害賠償3回
主文 1 被告は,別紙商品目録記載の各DVD商品を複製し,頒布してはならない。
2 被告は,原告に対し,80万8500円及びこれに対する平成23年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事件の概要 本件は,テレビ映画の企画,製作及び販売並びに映像著作物の版権管理及び 利用開発等を業とする原告が,CD・DVDの製造販売等を業とする被告にお いて,故意又は過失により,原告から許諾を得ることなく,原告が著作権を有 するテレビ映画作品「月光仮面」及び「快傑ハリマオ」をDVDに複製すると ともに頒布することで原告の複製権及び頒布権を侵害したとして,被告に対し, 著作権法112条1項に基づきDVD商品の複製及び頒布の差止めを求めると ともに,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 著作権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成23年11月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成23年(ワ)第17393号 著作権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成23年11月10日
判 決
東京都渋谷区<以下略>
原 告 株 式 会 社 宣 弘 社
同訴訟代理人弁護士 山 崎 卓 也
同 金 沢 淳
同 中 陳 道 夫
東京都足立区<以下略>
被 告 株式会社ワールドピクチャー
同訴訟代理人弁護士 竹 内 俊 雄
主 文
1 被告は,別紙商品目録記載の各DVD商品を複製し,頒布してはなら
ない。
2 被告は,原告に対し,80万8500円及びこれに対する平成23年
6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告
の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主文第1項と同旨
2 被告は,原告に対し,133万5000円及びこれに対する平成23年6月
11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,テレビ映画の企画,製作及び販売並びに映像著作物の版権管理及び
利用開発等を業とする原告が,CD・DVDの製造販売等を業とする被告にお
いて,故意又は過失により,原告から許諾を得ることなく,原告が著作権を有
するテレビ映画作品「月光仮面」及び「快傑ハリマオ」をDVDに複製すると
ともに頒布することで原告の複製権及び頒布権を侵害したとして,被告に対し,
著作権法112条1項に基づきDVD商品の複製及び頒布の差止めを求めると
ともに,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。
1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めら
れる事実)
(1) 当事者
ア 原告は,テレビ映画の企画,製作及び販売並びに映像著作物の版権管理
及び利用開発等を業とする株式会社である(映像著作物の版権管理・利用
開発の目的につき弁論の全趣旨)。
原告の従前の商号は,「株式会社宣弘企画」であり,平成20年5月1
8日に現在の商号に変更した(弁論の全趣旨)。
イ 被告は,CD・DVDの製造販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告の著作権と被告によるDVDの複製・頒布等
ア 原告は,平成18年当時,別紙作品目録記載1及び2の各テレビ映画作
品(以下「本件両作品」という。)等の著作権を有していた(本件両作品
の著作権を原告が有することは当事者間に争いがない。本件両作品以外の
著作権につき甲3。)。
イ 原告は,平成18年12月ころ,有限会社アートステーション(以下「ア
ートステーション」という。)との間で,原告がアートステーションに対
して本件両作品等のDVDへの複製とその頒布を同月1日から平成20年
11月30日まで許諾し,その対価として,アートステーションが原告に
対し,テレビ映画作品「月光仮面」第1部「どくろ仮面」5巻について最
低保証金合計125万円(1巻につき25万円)を,テレビ映画作品「快
傑ハリマオ」第5部「風雲のパゴダ」4巻について最低保証金合計100
万円(1巻につき25万円)を,それぞれ支払うとともに,1巻の販売総
数が5000枚を超えた場合はその超えた分について1枚当たり25円の
ランニングロイヤリティを支払うなどといった内容のライセンス契約(金
額はいずれも消費税別。以下「本件契約」という。)を締結した(甲3)。
ウ アートステーションは,本件契約締結後,株式会社サイドエー(以下「サ
イドエー」という。)に依頼してテレビ映画作品「月光仮面」及び「快傑
ハリマオ」のうち本件両作品以外のものをDVDに複製してもらい,これ
らを被告に販売していた。
しかし,サイドエーが倒産したため,アートステーションは,以後,被
告に依頼してテレビ映画作品「月光仮面」及び「快傑ハリマオ」のうち本
件両作品以外のものをDVDに複製してもらうようになったものの,被告
に対して製造費を支払わなかった。このため,被告は,複製したDVDを
販売しながら製造費を回収している。
エ 被告は,平成20年6月ころから平成23年3月までの間に,本件両作
品を1万4000枚のDVDに複製するとともに,これらを別紙商品目録
記載の各DVD商品(以下「本件各商品」という。)として全部販売した
(甲1,乙1,3)。
2 争点及び当事者の主張
本件の争点は,①被告はアートステーションから本件両作品の複製及び頒布
に係る利用権を得たか,②被告の故意・過失,③損害である。
(1) 争点①(被告はアートステーションから本件両作品の複製及び頒布に係る
利用権を得たか)について
(被告の主張)
被告は,平成20年6月から同年7月にかけて,アートステーションに対
し,本件両作品を4万5000枚のDVDに複製して頒布する対価として,
1枚当たり50円(消費税別)のロイヤリティを支払い,アートステーショ
ンから,本件両作品のDVDへの複製とその頒布の許諾を得たから,アート
ステーションから本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得た。
(原告の主張)
原告は,本件契約において,アートステーションに対して本件両作品等の
複製及び頒布の再許諾を禁じていたから,仮に被告がアートステーションか
ら本件両作品の複製及び頒布の許諾を得たとしても,アートステーションか
ら本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得ていない。
(2) 争点②(被告の故意・過失)
(原告の主張)
被告は,アートステーションがサイドエーや被告に複製させていたDVD
に「発売元:㈲Art Station<C>宣弘企画」などという表示が付
されるとともに,本件各商品に「<C>A 宣弘社」という著作権者の表示を
付していたから,原告が本件両作品の著作権を有していることやアートステ
ーションが本件両作品の著作権を有していないことを知っていた。
被告は,アートステーションが本件両作品の複製及び頒布に係る再許諾権
を有していないことも知っていたから,本件両作品の複製及び頒布が原告の
著作権を侵害することを知っていた。被告は,仮にアートステーションが上
記再許諾権を有していないことを知らなかったとしても,DVDの製造・販
売業界では再許諾を禁じるのが通常である上,アートステーションは被告へ
の製造費も支払えなかったのであるから,原告がアートステーションに対し
て上記再許諾権を付与したとは考えられず,DVDの製造・販売業者として,
原告に対してアートステーションへの再許諾権付与の有無を問い合わせた
り,アートステーションに対してライセンス契約書を提出させたりして,ア
ートステーションが上記再許諾権を有しているかを確認すべき注意義務を負
っていたにもかかわらず,上記注意義務を怠ったというべきである。
したがって,被告には,原告が本件両作品について有する著作権(複製権
及び頒布権)を侵害したことにつき,故意又は過失がある。
(被告の主張)
アートステーションがサイドエーや被告に複製させていたDVDには,発

売元:㈲Art Station・宣弘社」という表示が付されていたから,
被告は,アートステーションと原告が本件両作品の著作権を有するものと認
識しており,アートステーションが本件両作品の著作権を有していないこと
も本件両作品の複製及び頒布に係る再許諾権を有していないことも知らなか
ったし,アートステーションが上記再許諾権を有しているかを確認すべき注
意義務も負っていなかった。
したがって,被告には,原告が本件両作品について有する著作権(複製権
及び頒布権)を侵害したことにつき,故意も過失もない。
(3) 争点③(損害)
(原告の主張)
ア 著作権法114条3項による損害額 73万5000円
本件契約においては,1巻の販売総数が5000枚以下の場合,1巻当
たり最低保証金25万円の対価を支払えば足りるとされていたから,DV
D1枚当たり50円(25万円÷5000枚)の利用料が定められていたものと
いうべきである。なお,1巻の販売総数が5000枚を超えた場合は,D
VD1枚当たり25円のランニングロイヤリティが定められていたもの
の,1巻の販売総数が5000枚を超えたことはない。(いずれも消費税
別)
したがって,本件両作品の複製・頒布に係る利用料相当額は,消費税込
みでDVD1枚当たり52.5円とするのが相当であり,原告が著作権の
行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は,52.5円
に被告が複製・頒布した1万4000枚を乗じた73万5000円を下ら
ないというべきである。
イ 弁護士費用 60万円
原告は,被告が誠意ある対応を行わなかったため,弁護士に対する交渉
や訴訟提起の委任を余儀なくされた。本件が著作権侵害事件という専門性
が要求される事件であることも考慮すると,弁護士費用は60万円を下ら
ない。
(被告の主張)
争う。
(4) よって,原告は,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件各商
品の複製及び頒布の差止めを求めるとともに,著作権侵害の不法行為に基づ
く損害賠償金133万5000円及びこれに対する不法行為の後の日である
平成23年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延
損害金の支払を求める。
第3 当裁判所の判断
1 争点①(被告はアートステーションから本件両作品の複製及び頒布に係る利
用権を得たか)について
証拠(甲4,乙2,3)によれば,アートステーションが被告との間で,平
成20年6月13日には,アートステーションが被告に対してテレビ映画作品
「月光仮面」第1部「どくろ仮面」5巻のDVD2万5000枚への複製とそ
の頒布を許諾し,その対価として,被告がアートステーションに対して映像使
用料125万円(1巻につき25万円)を支払う旨のライセンス契約を締結し,
同月20日には,アートステーションが被告に対してテレビ映画作品「快傑ハ
リマオ」第5部「風雲のパゴダ」4巻のDVD2万枚への複製とその頒布を許
諾し,その対価として,被告がアートステーションに対して映像使用料100
万円(1巻につき25万円)を支払う旨のライセンス契約を締結したことが認
められる。
しかしながら,証拠(甲3)によれば,アートステーションは,本件契約3
条1項により,本件両作品の複製及び頒布の再許諾を禁じられていたことが認
められる。
したがって,被告は,アートステーションとの前記ライセンス契約によって
は本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得ていないというべきであり,他
に被告が本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得たことを認めるに足りる
証拠はない。
2 争点②(被告の故意・過失)について
証拠(甲3,7の1・2,9,乙2,3)によれば,①アートステーション
がサイドエーや被告に複製させていたDVDのパッケージには,「<C>宣弘企
画」などと,原告を著作権者とする表示が付され,これを被告は認識していた
こと,②被告は,本件各商品のパッケージにも,「<C>A 宣弘社」と,原告
を著作権者とする表示を付していたこと,③アートステーションの代表取締役
であるBは,被告との間で前記ライセンス契約を締結した後,被告に対し,被
告から支払われた映像使用料の半分を原告に対して支払った旨繰り返し説明し
ていたことが認められる。これらの事実を総合すれば,被告は,原告が本件両
作品の著作権を有していることやアートステーションが本件両作品の著作権を
有していないことを知っていたものと推認することができる。
しかしながら,アートステーションが本件両作品の複製及び頒布に係る再許
諾権を有していないことを被告が知っていたことを認めるに足りる証拠はな
い。もっとも,前記認定の事実に証拠(甲9,乙3)を総合すれば,①DVD
の製造・販売業界では,再許諾を認めると,ライセンス対象物の管理や広告宣
伝,パッケージの表示内容,品質管理が困難となるため,再許諾を禁じるのが
通常であること,②アートステーションは,被告との間で前記ライセンス契約
を締結した当時,資金繰りに窮しており,被告への製造費も支払えなかったこ
とが認められる。
以上の事実を前提とすれば,被告は,DVDの製造販売業者として,原告に
対してアートステーションへの再許諾権付与の有無を問い合わせたり,アート
ステーションに対してライセンス契約書を提示させたりして,アートステーシ
ョンが上記再許諾権を有しているか確認すべき注意義務を負っていたものとい
える。
そうであるにもかかわらず,証拠(乙3,弁論の全趣旨)によれば,被告は,
原告に対してアートステーションへの再許諾権付与の有無を問い合わせたり,
アートステーションに対してライセンス契約書を提示させたりしていないこと
が認められる。
したがって,被告には,原告が本件両作品について有する著作権(複製権及
び頒布権)を侵害したことにつき,過失があるというべきである。
3 争点③(損害)について
(1) 著作権法114条3項による損害額 73万5000円
前記第2の1(前提事実)(2)イのとおり,本件契約においては,1巻の販
売総数が5000枚以下の場合,1巻当たり最低保証金25万円の対価を支
払えば足りるとされていたから,実質的には,DVD1枚当たり少なくとも
50円(25万円÷5000枚)の利用料が定められていたものといえる。また,
前記1のとおり,アートステーションと被告との間で締結した本件両作品の
各ライセンス契約においても,DVD1枚当たり50円(125万円÷2万5000
枚,100万円÷2万枚)の映像使用料が定められていたものである。(いずれ
も消費税別)
したがって,被告による本件両作品の複製・頒布に係る利用料相当額は,
DVD1枚当たり消費税込みで52.5円とするのが相当であり,原告が著
作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は,52.
5円に被告が複製・頒布した1万4000枚を乗じた73万5000円を下
らない。
(2) 弁護士費用 7万3500円
本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して
7万3500円とするのが相当である。
4 結論
以上によれば,原告の請求は,被告に対し,本件各商品の複製及び頒布の差
止めを求めるとともに,損害賠償金80万8500円及びこれに対する不法行
為の後の日である平成23年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,
その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿 部 正 幸
裁判官 山 門 優
裁判官 志 賀 勝
(別紙)
商 品 目 録
1 商品名 月光仮面 どくろ仮面篇-1
盤 種 DVD
品 番 TVG-020
2 商品名 月光仮面 どくろ仮面篇-2
盤 種 DVD
品 番 TVG-021
3 商品名 月光仮面 どくろ仮面篇-3
盤 種 DVD
品 番 TVG-022
4 商品名 月光仮面 どくろ仮面篇-4
盤 種 DVD
品 番 TVG-023
5 商品名 月光仮面 どくろ仮面篇-5
盤 種 DVD
品 番 TVG-024
6 商品名 快傑ハリマオ 風雲のパゴダ篇-1
盤 種 DVD
品 番 TVH-017
7 商品名 快傑ハリマオ 風雲のパゴダ篇-2
盤 種 DVD
品 番 TVH-018
8 商品名 快傑ハリマオ 風雲のパゴダ篇-3
盤 種 DVD
品 番 TVH-019
9 商品名 快傑ハリマオ 風雲パゴダ篇-4
盤 種 DVD
品 番 TVH-020
(別紙)
作 品 目 録
1 番組名 「月光仮面」
第1部「どくろ仮面」篇(全71回)
監 督 D
2 番組名 「快傑ハリマオ」
第5部「風雲のパゴダ」篇(全13回)
監 督 D

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (3月3日~3月9日)

3月4日(火) -

特許とAI

3月6日(木) - 東京 港区

研究開発と特許

3月7日(金) - 東京 港区

知りたかったインド特許の実務

来週の知財セミナー (3月10日~3月16日)

3月11日(火) - 東京 港区

特許調査の第一歩

3月12日(水) - 東京 港区

はじめての特許調査(Ⅰ)

3月12日(水) - 愛知 名古屋市中区

技術情報管理と秘密保持契約

3月13日(木) - 東京 港区

はじめての特許調査(Ⅱ)

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

中山特許事務所

〒500-8842 岐阜県岐阜市金町六丁目21 岐阜ステーションビル304 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 訴訟 鑑定 コンサルティング 

弁理士法人IPアシスト

〒060-0002 札幌市中央区北2条西3丁目1番地太陽生命札幌ビル7階 特許・実用新案 商標 外国特許 訴訟 鑑定 コンサルティング 

藤枝知財法務事務所

千葉県船橋市本町6-2-10 ダイアパレスステーションプラザ315 特許・実用新案 商標 外国商標 コンサルティング