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平成22(行ケ)10336審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成23年1月25日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ビュウ 韓国農協インターナショナル株式会社 ら訴訟代理人弁理士華山浩伸
原告株式会社ユジャロン岡村太一
法令 商標権
商標法50条1項1回
キーワード 審決9回
商標権3回
許諾1回
主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 被告らは本件商標権者であるところ,本件は,不使用による商標登録取消しを求 めた原告の審判請求を成り立たないとした特許庁の審決の取消訴訟である。

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判決文

平成23年1月25日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成22年(行ケ)第10336号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成22年12月15日
判 決
原 告 株 式 会 社 ユ ジ ャ ロ ン
訴訟代理人弁理士 大 槻 聡
岡 村 太 一
被 告 株 式 会 社 ビ ュ ウ
被 告 韓国農協インターナショナル株式会社
被告ら訴訟代理人弁理士 華 山 浩 伸
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 原告が求めた判決
特許庁が取消2009-301395号事件について平成22年9月24日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
被告らは本件商標権者であるところ,本件は,不使用による商標登録取消しを求
めた原告の審判請求を成り立たないとした特許庁の審決の取消訴訟である。
1 特許庁における手続の経緯
被告らは,本件商標(登録第4906932号,平成17年11月11日登録,
指定商品 第30類「茶」 の商標権者であるが,
) 原告は,平成21年12月22日,
特許庁に対し,本件商標がその指定商品につき,継続して3年以上,日本国内にお
いて,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されてい
ないと主張して,商標法50条1項に基づいてその登録の取消しの審判の請求をし,
平成22年1月19日,本件商標につきその旨の(予告)登録がされた。
特許庁は,原告の請求につき取消2009-301395号事件として審理した
上で,平成22年9月24日,
「本件審判の請求は,成り立たない。 との審決をし,

その謄本は平成22年10月2日,原告に送達された。
【本件商標】
2 審決の理由の要点
前記審判請求の登録の日から3年以内に,日本国内において,被告ら及び本件商
標の通常使用権者と認められる原告によって,前記審判請求に係る指定商品に含ま
れる「柚子茶」につき本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していた
ことが証明されたから,原告の前記審判請求は理由がない。
第3 原告主張の審決取消事由(被告らが使用する商標と本件商標の同一性判断の
誤り)
本件商標は,欧文字からなる「YUJARON」 片仮名からなる
, 「ユジャロン」

ハングル文字からなる「유자론」を同じ大きさ,同一書体で,横三段書きしてなる
商標であり,上記欧文字部分及び片仮名部分から「ユジャロン」との称呼が生じる。
しかし,我が国の需要者及び取引者においては,上記ハングル文字部分を称呼す
ることはできず,上記ハングル文字部分からは特定の称呼は生じない。
また,本件商標からは特定の観念は生じない。
他方,審決が使用の事実を認めた商品に係る甲第4ないし9,11ないし16の
商標は,片仮名からなる「ユジャロン」を横一段書きしてなるもの,欧文字からな
る「YUJARON」を横一段書きしてなるもの,欧文字からなる「YUJARO
N」と片仮名からなる「ユジャロン」を横二段書きしてなるもののいずれかであっ
て,いずれもハングル文字部分が表記されておらず,本件商標と外観が著しく異な
る。また,我が国の需要者及び取引者にとってハングル文字がなじみが薄く,特定
の称呼及び観念を生じさせるものではないものであって,図形として認識されるべ
きものであることにかんがみると,被告らが使用する上記商標と本件商標とは称呼
及び観念を異にするものというべきである。なお,本件商標のうちハングル文字の
部分は商標全体の3分の1程度の面積を占め,他の欧文字部分及び片仮名部分とま
とまりよく一体的に表記されていることにかんがみると,本件商標をハングル文字
部分とその余の部分とに分けて観察することは相当でないというべきである。
したがって,使用商標と本件商標とは社会通念上同一の商標ではないから,両者
が社会通念上同一であるとした審決の判断は誤りである。
第4 取消事由に関する被告の反論
使用商標が付されていた商品は朝鮮半島由来の柚子茶であり,また,我が国には
朝鮮半島にルーツのある韓国・朝鮮系の者が多数居住していること,朝鮮半島由来
の柚子茶の需要者及び取引者には韓国語に詳しい者が少なくない。そうすると,柚
子茶に接した需要者及び取引者は,ハングル文字部分「유자론」を「ユジャロン」
と称呼することができる。
我が国の韓国語を解さない需要者及び取引者においても,本件商標のように固有
の称呼しか生じない名称については三段表記中のハングル文字部分から「ユジャロ
ン」との称呼が生じ,これをあくまで文字と理解するはずであって,図形として認
識することはない。
そうすると,被告らが使用していた商標と本件商標とは,ハングル文字部分を含
めて同一の称呼を生じるから,両者が社会通念上同一であることは明らかである。
第5 当裁判所の判断
1 本件商標は,アルファベット(欧文字)の大文字のみからなる「YUJAR
ON」,片仮名からなる「ユジャロン」,ハングル文字からなる「유자론」を概ね同
じ大きさ,明朝体ないしこれと同等の書体で,横三段書きしてなる外観を有するも
のであり,上記アルファベット文字部分,片仮名部分,ハングル文字部分との間で
格別の体裁の差は存しない。
ここで,我が国に居住する韓国・朝鮮系の者が少なくないことや,近年韓国等か
ら朝鮮半島に由来する商品が多数輸入されて消費されたり,韓国で製作されたテレ
ビ番組や映画が多数放映・上映されたりして,韓国等の文化や食品等の我が国にお
ける知名度が向上しているとはいえ,我が国の「茶」の消費者一般にとっては,未
だ韓国語ないしハングル文字の理解力が一般人にまで十分であるとはいい難いので
あって,需要者において,本件商標のハングル文字部分「유자론」につき,併記さ
れている「ユジャロン」の文字から,おそらくこのハングル文字も同じく称呼する
と認識する可能性もあり得るものの,
すべての者がこれを読んで正しく称呼したり,
その意味内容を理解したりするには至らないものと理解される。なお,仮に本件商
標が朝鮮半島に由来する飲料である「柚子茶」の容器等に付されて使用され,また
我が国の消費者において「柚子茶」が朝鮮半島に由来する飲料であると知って被告
らが販売する「柚子茶」を購入する消費者(需要者)があるとしても,そのような
消費者であっても韓国語ないしハングル文字を全く解しない者も少なくないものと
容易に推認できる(例えば,甲第4号証の商品の包装箱ではハングル文字が全く使
用されていない。。

他方,
「유자론」がハングル文字であること自体は我が国の需要者の間でも一般的
認識となっていると推測され,この部分を独立の図形として商標の構成を評価する
のは相当でなく,この部分も,称呼は判然としないものの何らかの文字を表すもの
として,本件商標からは,
「YUJARON」と「ユジャロン」の部分を合わせて一
体として「ユジャロン」との称呼が生じると解される一方,これは被告株式会社ビ
ュウの代表者が創作した造語であるから(弁論の全趣旨) そこからは特段の観念は

生じない。
2 原告が遅くとも平成19年9月ころまで被告らから譲り受けて我が国で販売
していた商品である「柚子茶」の包装箱の一側面には,
「香味柚子茶/YUJARO
N/ユジャロン」と横三段書きされた標章が付され,別の側面には,
「香味柚子茶/
YUJARON」と横二段書きした標章と,その下に柑橘類の図柄と「citro
n syrup tea」とのアルファベット文字を組み合わせた標章が付されて
いる(甲4)。なお,上記三段書きされた標章は,包装箱内のビン容器にも同様の体
裁のものが付されている(甲5の3,4)。
また,原告が遅くとも平成21年11月ころまで使用していたホームページのト
ップには,いずれもアルファベットからなりロゴ化された「YUJARON」の文
字標章が使用されている(甲5の1,2,4,甲8)。
そして,原告及び被告ビュウが遅くとも平成22年3月ころまで使用していたホ
ームページには,
「こうみゆずちゃ/香味柚子茶/YUJARON/ユジャロン」と
横書きした標章が使用されている(甲6,7)
さらに,平成21年9月ころまでの間に,原告が被告らとの間の取引に使用した
書類でも,片仮名からなる「ユジャロン」の標章が使用されている(甲9,13)

3 原告の前身である有限会社ユジャロンは,被告らが製造販売する柚子茶等の
我が国における総販売元として設立され,有限会社ユジャロン及びその後身である
原告は,被告らが製造販売する柚子茶を我が国で販売してきたものであったから(甲
11)前記2の柚子茶についての原告の標章の使用が本件商標の使用許諾に基づく

ものであることは明らかである。
そして,商標として使用されたと認められる前記各使用標章からは,「ユジャロン」
の称呼が生じることが明らかであるし,本件商標のアルファベット部分又は片仮名
部分の一方又は双方と同一の文字列をその構成部分としているものであるから,前
記各使用標章と本件商標とは社会通念上同一の商標であると評価することができる。
なお,
「유자론」の部分については前記のとおり図形として評価するよりも文字とし
て評価するのが相当であるから,前記各使用標章と本件商標の外観の相違は,上記
評価を左右するものではない。
4 したがって,原告による審判請求の登録の日(平成22年1月19日)から
3年以内に,日本国内において,本件商標の通常使用権者である原告によって,本
件商標の指定商品「茶」の一つである「柚子茶」につき,本件商標と社会通念上同
一の商標が使用されていたものであって,この旨をいう審決の判断に誤りはない。
第6 結論
以上によれば,原告が主張する取消事由は理由がないから,主文のとおり判決す
る。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩 月 秀 平
裁判官
真 辺 朋 子
裁判官
田 邉 実

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