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平成22(行ケ)10072審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成22年11月24日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ミマキエンジニアリング井上義隆
原告あいホールディングス株式会社 グラフテック株式会社江崎滋恒
対象物 カッティングプロッタと該プロッタを用いたシール材のカット方法
法令 特許権
キーワード 審決53回
進歩性35回
無効5回
優先権2回
無効審判2回
実施1回
主文 原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。
事件の概要 本件は,原告らが,下記1のとおりの手続において,被告の下記2の本件発明に 係る特許に対する原告らの特許無効審判の請求について,特許庁が同請求は成り立 たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり) には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案であ る。

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判決文

平成22年11月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成22年(行ケ)第10072号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成22年11月10日
判 決
原 告 あいホールディングス株式会社
原 告 グラフテック株式会社
上記両名訴訟代理人弁護士
江 崎 滋 恒
城 山 康 文
篠 森 重 樹
後 藤 未 来
同 弁理士 山 川 茂 樹
被 告 株式会社ミマキエンジニアリング
同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
井 上 義 隆
小 林 英 了
同 弁理士 大 西 正 悟
主 文
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2009−800051号事件について平成22年1月21日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,原告らが,下記1のとおりの手続において,被告の下記2の本件発明に
係る特許に対する原告らの特許無効審判の請求について,特許庁が同請求は成り立
たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)
には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案であ
る。
1 特許庁における手続の経緯
(1) 本件特許(甲45)
被告は,平成10年3月12日,発明の名称を「カッティングプロッタと該プロ
ッタを用いたシール材のカット方法」とする特許出願(特願平10−82780号。
国内優先権主張日:平成9年10月6日,優先権主張番号:特願平9−29025
9号)をし,平成16年8月27日,設定の登録(特許第3589441号。請求
項の数:4。以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書(甲4
5)を「本件明細書」という。)を受けた。
(2) 原告らは,平成21年2月27日,本件特許(以下,本件特許に係る請求項
1ないし4に係る各発明を,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」といい,
これらを併せて「本件発明」という。)について,特許無効審判を請求し,無効2
009−800051号事件として係属した。
(3) 特許庁は,平成22年1月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との本件審決をし,同年2月2日,その謄本が原告らに送達された。
2 本件発明の要旨
本件発明の要旨は,本件明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし4に記
載された別紙「本件発明の要旨」のとおり(文中の「/」は原文の改行部分を示す。)
のものである。
3 本件審決の理由の要旨
(1) 本件審決の理由は,要するに,本件特許について,下記ア及びイの引用例に
記載された各発明(以下「引用発明1」及び「引用発明2」という。)やその他の
各引用例(甲4ないし35)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をす
ることができたものということはできないなどとし,本件特許を無効にすることが
できない,というものである。
ア 引用例1:特開平6−55892号公報(甲3)
イ 引用例2:特開平8−267868号公報(甲36)
(2) なお,本件審決が認定した引用発明1並びに本件発明1及び3と引用発明1
との各一致点及び相違点,引用発明2並びに本件発明1及び3と引用発明2との各
一致点及び相違点は,別紙「引用発明1及び2の認定並びに各一致点及び相違点」
のとおりである。
4 取消事由
(1) 本件発明1が引用例1を主引例とする関係で進歩性を有するとした判断の
誤り(取消事由1)
(2) 本件発明1が引用例2を主引例とする関係で進歩性を有するとした判断の
誤り(取消事由2)
(3) 本件発明2ないし4が進歩性を有するとした判断の誤り(取消事由3)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(本件発明1が引用例1を主引例とする関係で進歩性を有すると
した判断の誤り)について
〔原告らの主張〕
(1) 一致点・相違点の認定の誤りについて
ア 一致点の認定の誤り
本件審決は,引用発明1の「トンボA,B,C,D」は「複数のトンボ」である
という限りにおいて,本件発明1の「トンボ1,2,3」と共通するとした。
しかしながら,引用例1の図4及び機械的な精度の誤差の補正に必要な情報の取
得において,引用例1のトンボが形成されたフィルムテンプレート等が用紙載置部
分に正確に位置決めされること等に照らせば,引用例1のトンボA,B,C,Dの
位置関係については,縦線A1の中心線と縦線C1の中心線とが作図用紙の縦軸に
平行な同一の直線上にあり,縦線B1の中心線と縦線D1の中心線とが作図用紙の
縦軸に平行な同一の直線上にあり,横線A2の中心線と横線B2の中心線とが作図
用紙の横軸に平行な同一の直線上にあり,横線C2の中心線と横線D2の中心線と
が作図用紙の横軸に平行な同一の直線上にあることになる。
そうすると,引用発明1の「トンボA,B,C,D」と本件発明1の「トンボ1,
2,3」とは,各トンボがシート材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を有する点及
び横線の中心線と縦線の中心線との交点がシート材の所定の点に位置するトンボと,
前記所定の点を通り,シート材の縦軸に平行な直線を縦線の中心線とするトンボと,
前記所定の点を通り,シート材の横軸に平行な直線を横線の中心線とするトンボと
を有する点においても一致している。
したがって,トンボについて,本件発明1と引用発明1とで相違しているのは,
本件発明1では前記所定の点がシート材の座標原点と定義されているのに対し,引
用発明1では格別の定義がされているか不明な点,引用発明1は4つ目のトンボを
有しているのに対して,本件発明1ではシート材に4つ目のトンボを有しているの
か不明な点のみである。
引用発明1の「トンボA,B,C,D」と本件発明1の「トンボ1,2,3」と
が「複数のトンボ」という点でのみ共通しているとした本件審決の判断は,以上の
とおりの一致点を看過したものとして,誤っている。
イ 相違点3の認定の誤り
本件審決は,相違点3を想到することが容易ではなかったとする理由として,検
出手段を,トンボ1,2,3の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ
1,2,3の横線及び縦線の中心線上に位置する点の座標を検出する検出手段とす
ることについて,いずれの甲号各証にも記載されていないことを挙げる。
しかしながら,上記検出手段の構成のうち,トンボの横線及び縦線の中心線上の
点の座標を求めるという点については,本件発明1と引用発明1とで異なるところ
はないから,上記検出手段の構成のうち,本件発明1と引用発明1との相違点とな
り得るのは,トンボの横線及び縦線の中心線上の点の座標を求めるのに用いる座標
として,トンボの横線及び縦線の「左右の側縁の位置」を用いるか否かという相違
点2に相当する点だけである。
そうすると,本件審決は,相違点2として評価した事項と実質的に同一の事項を
相違点3としても評価していることになり,これは,実質的に同一の事項を本件発
明1の進歩性を肯定する要素として,二重に評価するものであって,不当な判断と
いうべきものである。
本件審決には,相違点として評価すべきでない事項を相違点3として認定した誤
りがある。
(2) 相違点2についての判断の誤りについて
ア 当事者間に争いがないこと
本件審決は,相違点2について当業者が容易に想到することができないものであ
るとした。
しかしながら,相違点2について当業者が容易に想到することができたことは被
告も争わず,このことは当事者間に争いがないものであるから,相違点2について
当業者が容易に想到することができないとした本件審決の判断の当否を検討するま
でもなく,本件審決は取り消されるべきものである。
イ 相違点2の容易想到性
仮に,本件審決の判断の当否について検討するとしても,その判断は以下のとお
り誤っている。
本件審決は,引用発明1が検知する「ピーク値座標」は,本件発明1のようにあ
らかじめ定めたトンボの線の中心線に関して対称な位置に存在する検知対象である
「左右の側縁の位置」とは技術思想を異にするとした。
しかしながら,本件発明1において,トンボの横線及び縦線の「左右の側縁の位
置を検知」するのは,それらがトンボの横線及び縦線の中心線上に関して対象な位
置にあり,それらの中間をとることによって当該中心線上の点の座標を検出するこ
とができるからである。そして,引用例1には,テストパターンの横線及び縦線の
中心線に関して対称な2点の座標を検出し,当該2点の座標から当該テストパター
ンの横線及び縦線の中心線上の点の座標を求める構成が開示されている。
そうすると,引用例1に接した当業者であれば,トンボの横線及び縦線の中心線
に関して対称な2点として,トンボの横線及び縦線の左右の側縁上の2点を選択し,
これに応じて,反射型フォトセンサを「高精度」なものとすることによって,相違
点2に係る本件発明1の構成とすることは,容易に想到することができたものであ
る。
トンボの横線及び縦線といった線分の中心線上の点の座標を求めるために,本件
発明1のように,あらかじめ定めた(トンボの横線及び縦線等の線分の)中心線に
関して対称な2点の座標の中間を取ること,このような対称な2点として左右の側
縁上の2点の座標を用いることは,本件特許の優先日当時の周知・慣用技術であっ
て,その構成に進歩性が見いだせる余地はない。
(3) 相違点3についての判断の誤りについて
ア シート材の傾き補正を行う構成の付加
(ア) 本件審決は,引用発明1において,機械的な精度の誤差を補正した後に引
き続きプロッタを使用する場合には,既にシート材は正確に位置決めされており,
シート材の傾き補正を行う構成を加える必要がないとした。
(イ) しかしながら,機械的な精度の誤差の補正に必要な情報の取得及び算出は,
プロッタの出荷前やプロッタの部品を交換した際に行われれば足り(現実には,プ
ロッタの一生において,数回程度),毎回の使用の際の機械的な精度の誤差の補正
(データの補正)は,プロッタの製造後又はプロッタの部品交換後に算出された補
正定数を利用してなされる。プロッタの本来の用途であるカッティング(作図)は,
ユーザーによっては一日に何十回も行われるが,その際に,毎回,機械的な精度の
誤差の補正に必要な情報の取得及び算出を行うことなどあり得ない。
(ウ) 他方,プロッタを使用する際には,ユーザーがシート材をプラテンに置く
ことになるところ,どうしても,定まらないばらばらの位置・傾きに,また伸縮の
程度もまちまちのシート材を置くことになってしまうことが避けられない。
したがって,プロッタを使用する際,正確なカッティング(作図)を行うために
は,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正が必須である。
そして,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正は,プロッタに対してシー
トが適切に置かれないこと,又はシート自体の伸縮を原因とした座標系の齟齬を解
消するための補正であって,補正のために必要な情報は使用のたびに変動するから,
原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正を行うために必要な情報は,使用のた
びに取得及び算出される必要がある。
(エ) このように,相違点3に係る構成である原点の位置ずれ補正機能,傾き補
正機能及び伸縮補正機能は,プロッタにとって必須の技術であり,プロッタが世に
出て間もない昭和50年代以降,媒体の原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補
正を行う発明又は考案が多数出願されており(甲4,27,29∼36),これら
は本件特許の優先日前から当業者に周知・慣用されていた。
そして,カッティングプロッタは,昭和末期から平成初期にかけて,製造・販売
が開始されたが,ペンプロッタのペンをカッターに置き換えたものであるところ,
ペンプロッタで用いられた精密な位置制御技術や補正技術は,カッティングプロッ
タにそのまま承継された。
以上によると,プロッタが世に出始めたころから現在に至るまで,シートの位置
ずれ,傾き及び伸縮を原因とするプロッタの座標系とシートの座標系との齟齬によ
り作図(カット)が不正確になることとの本件発明1の課題が当業者に認識されて
おり,これを解決するための手段である原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補
正が,プロッタの基本かつ必須の技術として当業者に認識し続けられてきたもので
あって,引用発明1のプロッタにおいて,機械的な精度の誤差の補正機能と並存し
て,相違点3に係る構成(原点の位置ずれ補正機能,傾き補正機能及び伸縮補正機
能)を付加する十分な動機付けがあったということができる。
(オ) 引用発明1に係る機械的な精度の誤差の補正と,相違点3に係る原点の位
置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正は,いずれも,プロッタの座標系とシートの座
標系とが齟齬することによって,作図(カット)が不正確になるという課題に対し
て,このような座標系の齟齬を解消して正確な作図(カット)を行うことを目的と
している点で共通しており,両者は,座標系の齟齬が,機械的な誤差を原因とする
ものか,シートの位置ずれ等を原因とするものかという点で相違するが,課題・目
的という面では本質的に異なるところはない。
また,両者の補正は,互いに並存し得るものである。
(カ) 引用発明1と本件発明1とは,プラテン上に搭載されたシート材に,シー
ト材表面に形成された複数のトンボ(各トンボは,いずれもシート材の横軸−縦軸
と平行な横線−縦線を有し,その中には,横線の中心線と縦線の中心線との交点が
シート材の所定の点に位置するトンボと,前記所定の点を通り,シート材の縦軸に
平行な直線を縦線の中心線とするトンボと,前記所定の点を通り,シート材の横軸
に平行な直線を横線の中心線とするトンボとが含まれている。)を基準にして,記
憶手段に記憶させたデータに基づき,前記プラテン上に搭載されたシート材上をX
−Y方向に相対的に移動させるヘッドに装着された作業具により作業を行うプロッ
タであって,トンボの横線及び縦線の中心線に関して対称な2点の位置を検知する
ヘッドに装着された反射型フォトセンサと,前記複数のトンボの中心線上に位置す
る点の座標を検出する検出手段と,該検出手段で検出した座標から,補正のための
定数を算出する算出手段と,該算出手段により算出した補正のための定数に合わせ
て,前記記憶手段に記憶させたデータを改変する改変手段とを備えたプロッタであ
る点で一致しており,上記共通の課題を解決するための構成の重要部分において一
致している。
イ 引用発明1における原点の位置ずれ補正等の技術の内包
(ア) 引用発明1では,上記のとおり,プロッタの出荷前や保守時に行われる機
械的な精度の誤差の補正定数の算出・記憶の際に,原点の位置ずれ補正定数の算出・
記憶を行っている。そして,同発明では,ユーザーが作図を行う際,プロッタに記
憶されている原点の位置ずれ補正定数(x’A,y’A)に基づいて,作図データの
改変(原点の位置ずれ補正,具体的には平行移動)を行った後,その他の機械的な
精度の誤差の補正定数(台形歪補正定数,直角度補正定数)に基づき,作図データ
の改変(台形歪補正,直角度補正)を行うことになる。
すなわち,引用発明1では,原点の位置ずれ補正につき,台形歪補正として,作
図範囲の左下頂点を原点とし,点から点への変換を行うため,その際には,固定原
点(機械原点)から作図範囲の左下頂点(作図原点)への原点の位置ずれ補正(作
図データの改変)が必須である。
(イ) また,引用発明1では,傾き補正のための補正定数を得て(引用例【00
20】【図7】),それによって作図のたびに傾き補正(作図データの改変)が行
われている。
(ウ) さらに,引用発明1の台形歪補正は作図範囲をシートのトンボ(テストパ
ターン)で定まる範囲に合わせるものであるところ,台形状の図形が,作図範囲を
画する境界線に相当する矩形(長方形)より大きくなることも,小さくなることも
あり得るので,これは伸縮補正と何ら異ならない。
(エ) したがって,引用発明1には,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補
正のすべての機能が内包されている。
ウ 相違点3に係る構成と引用例の記載
(ア) 本件審決は,本件発明1に係るシート材の原点の位置ずれ補正,傾き補正
及び伸縮補正を行うため,トンボの横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記ト
ンボの横線及び縦線の中心線上に位置する点の座標を検出する検出手段とすること
について,引用例のいずれにも記載されていないことを根拠に,相違点3に係る構
成を想到することが容易ではないとした。
(イ) しかしながら,本件審決が挙げる上記検出手段の構成のうち,本件発明1
と引用発明1との相違点となり得るのは,相違点2に相当する事項だけである。
しかるところ,相違点2は別途検討しているのであるから,この点は除外して判
断すべきであることからすると(なお,前記のとおり,本件発明1の進歩性の有無
の判断において,相違点2について当業者が容易に想到することができたことは当
事者間に争いがないのであるから,容易に想到することができないと判断すること
は許されない。),相違点3に係る構成のうち,トンボの横線及び縦線の「左右の
側縁の位置」からトンボの横線及び縦線の中心線上の点の座標を検出するという構
成を除外しないで,これを本件発明1の進歩性の有無の判断の基礎とすることは許
されない。
(ウ) 本件発明1における原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正の技術的
意義は,①カッティングを行うシート上の複数のマーク(本件発明1では,複数の
トンボ)をセンサで読み取り,②読み取ったマークの位置データに基づいてプロッ
タの座標系とシートの座標系との対応関係(プロッタの座標系におけるシートの座
標原点,プロッタのX軸,Y軸に対するシートの横軸及び縦軸の傾き,及び複数の
トンボ間の設定距離に対する実測距離の比率)を求め,③当該対応関係に基づいて,
シートの座標系で表されたカットデータをプロッタの座標系で表されたデータに改
変(座標変換)するというものである。
上記①ないし③自体は,本件特許の優先日前からの周知技術であって(甲4,2
7,29,30∼32,34ないし36),本件発明1の相違点3に係る構成のう
ち,これらの周知技術と比べて新規な事項があるとしても,それは,複数のマーク
として3つのトンボの中心線上の6点を用いることだけである。
しかるところ,プロッタの座標系とシートの座標系との対応関係を求めるために,
3つのトンボの中心線上の6点を用いるとの座標変換を行うための具体的な構成は,
甲29等にも示されるように,当業者が適宜の方法で行い得る設計的事項にすぎな
い。
そして,前記ア(カ)のとおり,本件発明1と引用発明1とは,補正を行うための
構成の重要部分が一致している。
また,上記イのとおり,引用発明1には,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸
縮補正のすべての機能が含まれている。
(エ) なお,無地の作図用紙(シール材)に作図(カット)を行う場合,原点の
位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正を行う必要性が必ずしも高いとはいえないが,
そのような用途とは別に,プロッタには,既に作図用紙(シール材)に描かれた図
形と整合を取るように作図(カット)を行う場合があり,この場合,原点の位置ず
れ補正,傾き補正及び伸縮補正を行うことは不可欠であって,このような用途にお
いて,既に図形が描かれたシートの座標系を基準とした所定の位置に正確にカット
(作図)を行うという需要は古くから認識されており,このような需要にこたえる
補正技術に関して古くから多数の特許出願や実用新案登録出願がされてきた(甲4,
29,32,33,36,53)。
そのような用途が引用例1に明記されていないからといって,引用発明1のプロ
ッタにおいて,当業者が,当該用途をも念頭に置いて,原点の位置ずれ補正,傾き
補正及び伸縮補正を付加する動機付けが否定されるものではない。
無地の作図用紙(シール材)に作図(カット)を行う場合,原点の位置ずれ補正,
傾き補正及び伸縮補正を行う必要性が必ずしも高いといえないことが,引用発明1
のプロッタにおいて,相違点3に係る原点の位置ずれ補正機能,傾き補正機能及び
伸縮補正機能を付加する動機付けが存在することを否定する根拠とはなり得ない。
(オ) 以上のとおり,引用発明1が補正を行うための構成の重要部分において本
件発明1と一致していること,補正を行うための具体的な構成がそもそも設計的事
項であることに照らせば,引用発明1のプロッタに,原点の位置ずれ補正,傾き補
正及び伸縮補正を行える構成を加えることとなった場合,補正を行うための具体的
な構成として,本件発明1の構成を採用することは極めて自然かつ合理的である。
(4) 小括
以上によると,引用発明1との関係で,本件発明1が進歩性を有するとした本件
審決の判断には誤りがあるというべきである。
〔被告の主張〕
(1) 一致点・相違点の認定の誤りについて
ア 一致点の認定の誤り
原告らは,引用発明1の「トンボA,B,C,D」と本件発明1の「トンボ1,
2,3」とが,「複数のトンボ」という点でのみ共通しているとの本件審決の判断
は,一致点を看過したもので誤っていると主張する。
しかしながら,引用発明1におけるテストパターンのうち,読み取りが行われる
マーク(線)は,A1,A2,B1,C1,C2,D1上の部分にすぎない。
したがって,本件発明1と引用発明1とは,外観上,「トンボ」に見えるマーク
が複数形成されている以上の一致点を認めることはできず,原告らの主張は採用す
ることができない。
また,引用発明1の「テストパターン」は,メーカーによるメンテナンス時に使
用する機械的な精度の誤差補正に必要な情報を提供するためのマークであって,ユ
ーザが実際のカッティング時に使用するプテラン上に載置されたシール材について,
原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正に必要な情報を提供するマークである
本件発明1の「トンボ」とはその技術的意義が全く異なっており,本件発明1の「ト
ンボ」に相当するものでもない。
イ 相違点3の認定の誤り
原告らは,相違点3に係る構成中には相違点2に係る構成が含まれているとし,
本件審決は,実質的に同一の事項を本件発明1の進歩性を肯定する要素として二重
に評価するものであって,不当であると主張する。
しかしながら,相違点2は「反射型フォトセンサ」の構成を取り上げたものであ
るのに対し,相違点3は「検出手段」の構成(機能)を正確に認定したものであっ
て,この点について二重評価であるとすべき理由はない。
(2) 相違点2についての判断の誤りについて
相違点2はそもそも相違点を構成するものではない。
(3) 相違点3についての判断の誤りについて
ア シート材の傾き補正を行う構成の付加
原告らも,引用発明1の「テストパターン」がプラテン上に傾きなく正確に位置
決めされる必要があることが技術常識であることについては認めている。
したがって,機械的な精度の誤差を補正した場合には,既に「テストパターン」
が形成されたフィルムテンプレート(ないし作図用紙)が正確に位置決めされてい
る以上,このような補正をした後に引き続き,当該フィルムテンプレート(ないし
作図用紙)への作図を望んだ場合に,何らかの補正を加える必要はなく,そのよう
に判断した本件審決に誤りはない。
イ 引用発明1における原点の位置ずれ補正等の技術の内包
(ア) 原告らは,テストパターンが形成されたフィルムテンプレートは所定位置
からずれた位置に載置されるものであるとし,このようなずれの補正を行った後,
台形歪補正を行わなければならないと主張する。
しかしながら,引用発明1のフィルムテンプレートは「装置10の用紙設定位置
に配置」されるものである(引用例1【0013】)。
原告らの主張は,このような当然の前提事項を無視するものであって,失当であ
る。
(イ) 引用発明1には,X方向の傾き補正の技術は内包されていない。同発明は,
X方向の移動がベルトコンベヤで行われることによって「移動量」の誤差が生じる
ことを解決しようとした発明であり(引用例1【0003】),X方向への移動に
よって「傾き」の誤差(XYプロッタ装置の座標系X方向にまっすぐ線が引けない
こと)が生じないことは当然の前提となっている。
(ウ) 引用発明1においては,正確な作図を行うことが可能とするために行われ
る原点の位置ずれ補正やX・Y方向の傾き補正以外の補正(xinをx,yinを
yへと補正する。)が行われている。
しかしながら,本件発明1の伸縮補正(トンボ間の設定距離に対する実測距離の
比率)は,シール材に印刷されたトンボ線上の6点(AないしF点の合計12座標
値)によって求められるものであるところ,引用発明1で行われる上記の補正は,
このような6点の12座標値を全く検出していないものであって,本件発明1の伸
縮補正に相当するものではなく,引用発明1には,本件発明1の伸縮補正が内包さ
れているものではない。
ウ 相違点3に係る構成と引用例の記載
(ア) 原告らは,プロッタを使用する場合には,原点の位置ずれ補正,傾き補正
及び伸縮補正を行う必要があると主張する。
しかしながら,プロッタにおいて,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正
が必要か否かは,ユーザーがどのような出力結果を望むかによって決せられるもの
であって,あたかも常に必要であるかのように主張する原告らの主張は事実に反す
る。
すなわち,プロッタによって作図を行う際に原点の位置ずれ補正及び傾き補正を
行うことは,ずれて曲がった位置に描かれているよりきれいな結果を得ることがで
きるという程度の見栄えの問題であって,常に上記補正が必要となるものでなく,
また,伸縮補正については,機械的な誤差の補正が完了し,正確な寸法,角度にて
作図できるよう調整が完了したプロッタを,作図用紙が伸びたことをもって,図形
自体を拡張し,あえて不正確な作図を行わせる理由はない。
(イ) また,原告らは,原点の位置ずれ補正機能,傾き補正機能及び伸縮補正機
能という相違点3に係る構成が周知・慣用技術であったと主張する。
しかしながら,プロッタの補正に関する従来技術として原告らが主張する各引用
例において,上記3つの補正を行うものは,甲29と31のみであり,その他の多
数の引用例は,1つ2つの補正を行うのみである。そして,甲29と31において,
上記3つの補正が行われる理由は,これらの発明ないし考案が既に何らかの図形が
描かれた用紙を用いる際に生じる問題点を解決するためである。
これに対し,引用例1には,既に何らかの図形が描かれた用紙に対して作図を行
う旨の記載や示唆がなく,引用発明1に対して,相違点3に係る構成を付加する動
機は見当たらない。
そもそも,引用発明1のフィルムテンプレート上に形成された「テストパターン」
は,メーカーがメンテナンス時に使用するものであり,かつ,各「テストパターン」
はプラテン上に傾きなく正確に位置決めする必要がある以上,引用発明1に触れた
当業者において,これを本件発明1の「トンボ」として使用することが動機付けら
れるものではない。
(ウ) 原告らは,引用発明1に係る機械的な精度の誤差の補正と,相違点3に係
る原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正とが課題・目的において共通し,ま
た,引用発明1に係る機械的な精度の誤差の補正と,相違点3に係る原点の位置ず
れ補正,傾き補正及び伸縮補正とが構成の重要部分において一致していると主張す
る。
しかしながら,正確な寸法及び角度にて作図を行えるようにすることを目的とし
て,機械的な精度の補正を行った引用発明1のプロッタに対して,あえて伸縮補正
を付加して正確な寸法,角度で作図を行わない構成にする理由はない。
(4) 小括
以上のとおり,引用発明1との関係で,本件発明1が進歩性を有するとした本件
審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(本件発明1が引用例2を主引例とする関係で進歩性を有すると
した判断の誤り)について
〔原告らの主張〕
(1) 一致点の認定の誤りについて
ア データ改変手段
引用例2において,「メモリ上のデータのサイズを印刷されたデータのサイズに
一致するように拡大又は縮小」する際には,開始位置マークSPと終了位置マーク
EP間の設定距離(記憶手段上のSPからEPまでの距離)に対する実測距離(実
距離)の比率を用いていると考えるのが自然であり,実際にも,引用例2には,「重
ね印刷」に係る実施例に関して,メモリ上のデータのサイズを開始位置マークと終
了位置マークの実距離と基準距離の比率で補正する構成が開示されている。
したがって,引用発明2の「改変手段」は,複数のマーク間の設定距離に対する
実測距離の比率に合わせて文字や図形(シール)の輪郭のカットデータを改変する
という点でも,本件発明1の「改変手段」と一致しているにもかかわらず,本件審
決はこの点を看過している。
イ フォトセンサの構成
本件審決は,引用発明2の「フォトインタラプタ6a」及び「フォトインタラプ
タ6b」について,「フォトセンサ」という限りにおいて,本件発明1の「高精度
反射型フォトセンサ」と共通するとした。
しかしながら,引用例2の図2,6及び9等に照らせば,引用発明2のフォトセ
ンサは,発光素子と受光素子とがシートを間に挟んで配置される透過型フォトセン
サでなく,発光素子と受光素子とがシートに対して同じ側に配置される反射型フォ
トセンサと認められるから,引用発明2の「フォトインタラプタ6a」及び「フォ
トインタラプタ6b」は,「反射型フォトセンサ」という点でも,本件発明1の「高
精度反射型フォトセンサ」と一致しており,本件審決はこの点を看過している。
(2) 相違点8についての判断の誤りについて
ア 検知位置
本件審決は,引用例1に記載のフォトセンサがトンボの線を左右に横切った際の
ピーク値座標を検知するものである点で,トンボの線の左右の側縁の位置を検知す
る本件発明1とは異なること,両者の技術思想が異なること及びトンボの線の左右
の側縁の位置を検知することがいずれの引用例にも記載されていないことから,相
違点8が容易に想到できたものとはいえないとした。
しかしながら,前記1の〔原告らの主張〕の(2)のとおり,トンボの縦線及び横線
に関して検知する位置に係る構成(相違点2に相当する。)が容易に想到できたも
のでないと判断した本件審決は取り消されるべきであるから,引用例1に記載のフ
ォトセンサと本件発明1とのトンボの縦線及び横線に関して検知する位置について
の構成の異同は本件発明1の進歩性を基礎づけるものではなく,本件審決の判断は
誤っている。
イ 相違点8に係る本件発明1の構成の周知性
前記1(3)のとおり,本件発明1の課題及び相違点8に係る本件発明1の構成の本
質的部分は本件特許の優先日より前から当業者に周知されており,このような周知
の補正技術(原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正)を引用発明2のプロッ
タに組み合わせて相違点8に係る本件発明1の構成を想到することは,当業者にと
って容易であった。
ウ 引用発明2に引用発明1や周知技術を組み合わせて本件発明1に至ることの
容易性の有無
(ア) 前記1(3)のとおり,相違点8に係る本件発明1の各種補正を行うための具
体的な構成は,単なる設計事項であって,本件発明1の進歩性を基礎付けるもので
はない。
また,引用発明1と2とは,①いずれも,プロッタの座標系とシート(作図用紙
等)の座標系とが齟齬することによってカット(作図)が不正確になるという共通
の課題に対して,カット(作図)データを改変(座標変換)することによって,こ
のような座標系の齟齬を解消して,正確なカット(作図)を行うという点で,課題・
目的が共通し,また,その解決手段として,シートに印刷された複数のマークをセ
ンサで読み取り,読み取ったマークの位置データに基づいてカット(作図)データ
を補正するという点で共通していること,②引用発明1が属するXYプロッタの技
術分野と,引用発明2が属するカッティングプロッタの技術分野とは極めて近接し
ていること,③引用発明2において,引用発明1の「テストパターン」及びその読
み取り方法に係る構成を組み合わせることに格別の阻害要因が存在しないことに照
らすと,引用発明2に引用発明1の補正に係る構成(シート上に「テストパターン」
を設け,センサで検出した「テストパターン」中心線に関して対象な2点の座標か
ら当該中心線上の点の座標を求め,求めた中心線上の点の座標に基づいてカット(作
図)データを改変(座標変換)するという構成)を組み合わせることは,当業者で
あれば容易であったということができる。
さらに,引用例1に開示されている,本件発明1のトンボと同じ構成を有する「テ
ストパターン」及びその検知方法を用いて,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸
縮補正という周知の補正を行う際,補正の具体的な方法として本件発明1のように
構成することは,当業者が容易に行い得たことである。
(イ) ①相違点8に係る原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正は,プロッ
タにとって普遍的な課題を解決するための技術であったこと,②引用発明2と本件
発明1及び周知の補正技術(原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正)とは,
いずれも,用紙載置部分(プラテン)に対してシートが正確に置かれないことやシ
ートの伸縮を原因として,プロッタの座標系とシート(作図用紙等)の座標系とが
齟齬することによってカット(作図)が不正確になるという課題を解決することを
目的とする点で共通していること,③このような共通の課題に対応した,引用発明
2と本件発明1及び周知の補正技術の解決手段は,いずれも,シートに印刷された
複数のマークをセンサで読み取り,読み取ったマークの位置データから得られるシ
ートの座標系とプロッタの座標系との対応関係に基づいて,カットデータを補正す
るという点で構成が共通すること,④引用例2に開示されている,開始位置マーク
を検出手段で検出し,そこを印刷開始位置と判断して印刷を開始するという構成は,
シート上の基準となる位置に合わせてカットを行うという点で,本件発明1の原点
の位置ずれ補正と共通すること,⑤以上のとおりの引用発明2と相違点8に係る周
知の補正技術との目的の共通性等に照らすと,引用発明2のプロッタに対して,相
違点8に係る原点の位置ずれ補正,傾き補正及び帳表送り方向と垂直方向の伸縮補
正とを組み合わせることに何らの阻害要因も存在しないことが認められる。
以上によると,引用発明2に対して,相違点8に係る原点の位置ずれ補正,傾き
補正及び伸縮補正を組み合わせる十分な動機付けが存在していた。
(3) 小括
以上によると,引用発明2との関係でも,本件発明1が進歩性を有するとした本
件審決の判断には誤りがあるというべきである。
〔被告の主張〕
(1) 一致点の認定の誤りについて
本件審決においても,引用発明2は実測距離の比率を用いてデータを改変してい
ること,また,引用発明2の「フォトセンサ」も「反射型」であることを当然の前
提とするものであり,本件発明と引用発明2との一致点の認定に誤りがあるとする
原告らの主張は失当である。
(2) 相違点8についての判断の誤りについて
ア 検知位置
前記1(2)のとおり,相違点2は相違点を構成しないものであるから,原告らの主
張は失当である。
イ 相違点8に係る本件発明1の構成の周知性
引用発明2は,「開始位置マークSP」と「終了位置マークEP」を用いること
により,既に原点の位置ずれ補正及び伸縮補正を行うことができており,これによ
って「切り抜く際に元の図形を正しく切り抜くことができる。」という効果を得る
ことができる以上,「第1のフォトインタラプタ」及び「第2のフォトインタラプ
タ」の取付け位置をあえて「ヘッド」部分に変更してまで相違点8に係る構成を採
用すべき理由は見当たらない。
ウ 引用発明2に引用発明1や周知技術を組み合わせて本件発明1に至ることの
容易性の有無
原告らは,引用発明2に引用例1の補正に係る構成を組み合わせることは,当業
者にとって容易であったと主張する。
しかしながら,引用例1は,機械的な誤差の補正について開示するものである。
仮に,引用発明2に引用例1に記載された補正に係る構成を適用した場合に得られ
る構成としては,正確な位置関係に形成されたマークを読み込ませるという技術思
想(具体的には,正確な位置関係に形成された開始位置マーク(SP)及び終了位
置マーク(EP)を引用発明2のカッティングプロッタに読み込ませ,これにより
引用発明2が備える機械的な誤差を補正する構成)にすぎない。
したがって,引用発明2に引用例1に記載された補正に係る構成を適用した場合
であっても,相違点8に係る構成が得られるものではなく,原告らの主張は理由が
ない。
(3) 小括
以上のとおり,引用発明2との関係でも,本件発明1が進歩性を有するとした本
件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3(本件発明2ないし4が進歩性を有するとした判断の誤り)につ
いて
〔原告らの主張〕
本件審決は,本件発明1を容易に発明することができなかったとの判断を前提に,
本件発明2ないし4も当業者が容易に発明できたものとはいえないと判断した。
しかしながら,前記1及び2の各〔原告らの主張〕のとおり,本件発明1が容易
に想到することができたものではないとする本件審決の判断は取り消されるべきも
のであるから,このような判断を前提とした本件発明2ないし4についての本件審
決の判断も誤っており,取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
原告らの本件発明2ないし4が進歩性を有するとした本件審決の判断が誤りであ
るとの主張は,本件発明1が進歩性を有するとしたことが誤りであることを前提と
するものである。
しかしながら,本件発明1について,原告らが主張するような進歩性がないとす
ることはできないから,本件発明2ないし4が進歩性を有しないとする原告らの主
張も理由がない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1が引用例1を主引例とする関係で進歩性を有すると
した判断の誤り)について
(1) 本件発明1について
本件発明1は,別紙「本件発明の要旨」の請求項1記載のとおりのものである。
そして,本件明細書によると,本件発明は,シール材表面に印刷されたシールの
輪郭をカットするための「カッティングプロッタ」及び「カット方法」に関する発
明であって(【0001】),カッティングプロッタを使用して,シール材表面に
印刷されたシールの輪郭をカットした場合に,そのカット線が,シール材表面に印
刷されたシールの輪郭から大幅にずれる等してしまう理由が,①プラテン上に搭載
したシール材の横軸−縦軸の座標原点を,プラテンのX―Y軸の所望の座標位置に
正確に合わせることが困難なこと,②シール材の横軸−縦軸がプラテンのX−Y軸
と平行になるように,シール材をプラテン上に正確に搭載することが困難なこと,
③シール材が,湿気を含んだり,乾燥したりして,その縦軸方向又は横軸方向に伸
縮することによるとの認識に基づき(【0007】【0008】),シール材の座
標原点を示すトンボ1と,シール材の座標原点を通るシール材の縦軸を示すトンボ
2と,シール材の座標原点を通るシール材の横軸の位置を示すトンボ3とであって,
シール材の横軸x−縦軸yとそれぞれ平行な横線H−縦線Vを持つトンボ1,2,
3を基準にして,シール材表面に印刷されたシールの輪郭を,カッタによりカット
できるように構成し(【0031】),3つのトンボの各軸線の中心線上6点のX
Y座標値を求め(【0039】∼【0041】),これによって,プラテンのX−
Y軸上のシール材の座標原点,プラテンのX軸,Y軸に対する横軸x,縦軸yの傾
き,シール材の縦軸y方向及び横軸x方向の各伸縮率を算出し(【0042】【0
043】),この算出されたシール材の座標原点,横軸x,縦軸yの傾き,伸縮率
に合わせて,記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデータを改変する手段を
備え(【0046】【0047】),このようにして,プラテン上に搭載されたシ
ール材の横軸−縦軸の座標原点が,プラテンのX―Y軸の所望の座標位置から外れ
ていたり,シール材の横軸x,縦軸yがプラテンのX軸,Y軸に対して傾いていた
り,シール材が横軸x方向又は縦軸y方向に伸縮したりしていても,上記のとおり
のトンボ1,2,3を利用して把握したシール材の原点の位置ずれ,傾きや伸縮の
程度に合わせて,記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデータを改変でき,
シール材表面に印刷されたシールの輪郭を正確・美麗にカットすることができる
(【0009】【0075】)との「カッティングプロッタ」及び「カット方法」
に係る発明であると認めることができる。
(2) 引用発明1について
引用例1によると,引用発明1は,自己補正機能を有するXYプロッタ装置に関
するものであって(【0001】),1本のベルトでアームを制御する際において,
X方向に移動の際,Y座標値がベルトから離れるほどX方向における移動量の誤差
が大きくなり,また,アームを制御するベルトを2本にした構成にしても,実際の
作図範囲の原点に対する作図誤差が生じてしまうものであったところ【0003】 ,
( )
このような課題を解決するために,各コーナー付近にカギ型のパターンが形成され
ている矩形フィルムテンプレートを装置の用紙設定位置に配置し 【0013】 ,
( )
矩形作図範囲の境界付近に描かれたテストパターンのうち,センサをX方向とY方
向に移動させてこれらのテストパターンをセンサが横切ることにより得られた少な
くとも2組の座標距離と基準距離との差を読み取り,これらの値と基準値とを比較
して補正情報を得,これに基づいて作図データの距離寸法,直角度等を自己補正す
るとの構成を採用することによって(【請求項1】),メンテナンス時に,サービ
スマン対応で,容易に補正量の測定,入力及び記憶を自動的に行うことができ,個
人差のない正確な補正を短時間に行うことができるようになる(【0005】【0
022】)というペン式プロッタ装置の発明であると認めることができる。
(3) 一致点・相違点の認定について
ア 一致点の認定
(ア) 原告らは,引用発明1の「トンボA,B,C,D」と,本件発明1の「ト
ンボ1,2,3」とは,各トンボがシート材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を有
する点及び横線の中心線と縦線の中心線との交点がシート材の所定の点に位置する
トンボと,前記所定の点を通り,シート材の縦軸に平行な直線を縦線の中心線とす
るトンボと,前記所定の点を通り,シート材の横軸に平行な直線を横線の中心線と
するトンボとを有する点においても一致しているから,引用発明1の「トンボA,
B,C,D」と,本件発明1の「トンボ1,2,3」とが,「複数のトンボ」とい
う点でのみ共通しているとの本件審決の判断は,一致点を看過したものとして誤っ
ていると主張する。
(イ) しかしながら,上記(2)のとおり,引用発明1のテストパターンである「ト
ンボA,B,C,D」は,矩形フィルムテンプレートの各コーナー付近に形成され
た「カギ型のパターン」であり,これらのテストパターンに基づいて座標距離と基
準距離との差を読み取り,これらの値と基準値とを比較して補正情報を得,これに
基づいて作図データの距離寸法,直角度等をXYプロッタ装置自体が補正するよう
にするものであって,同装置のメンテナンス時に利用される機械的な精度の誤差補
正に必要となる情報を提供するためのマークということができ,各トンボは,プテ
ランのX−Y軸に平行な線となるように,傾きなくプテラン上に正確に位置決めさ
れる必要があるものということができる。
他方,本件発明1における「トンボ」についてみると,シール材の横軸x−縦軸
yと平行な横線H−縦線Vを持つものであって,プラテン上に搭載されたシール材
の横軸−縦軸の座標原点がプラテンのX―Y軸の所望の座標位置から外れていたり,
シール材の横軸x,縦軸yがプラテンのX軸,Y軸に対して傾いていたり,シール
材が横軸x方向又は縦軸y方向に伸縮したりしていても,トンボ1,2,3を利用
して把握したシール材の原点の位置ずれ,傾きや伸縮の程度に合わせて,記憶手段
に記憶させたシールの輪郭のカットデータを改変でき,シール材表面に印刷された
シールの輪郭を正確にカットできるようにしたものであり,本件発明1における「ト
ンボ」は,「プラテン上に載置されたシール材について,原点の位置ずれ補正,傾
き補正及び伸縮補正に必要な情報を提供するためのマーク」であって,プラテンの
X―Y軸に平行な線を有するものではなく,「シール材の横軸−縦軸の座標原点を
示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ2と,同
座標原点を通るシール材の横軸の位置を示すトンボ3とであって,シール材の横軸
−縦軸と平行な横線−縦線を持つシール材表面に印刷されたトンボ1,2,3」と
いうことができる。
(ウ) 以上によると,本件発明1の「トンボ1,2,3」と,引用発明1のテス
トパターンである「トンボA,B,C,D」とは,たといその形状が類似している
としても,本件発明1の「トンボ1,2,3」は,プラテンとは無関係に,シール
材の座標原点を通る縦軸又は横軸の位置を示す線となるように配置されるものであ
るのに対し,引用発明1の「トンボA,B,C,D」は,プラテンのX−Y軸に平
行な線となるように傾きなくプテラン上に正確に位置決めされる必要があるもので
あるから,両者の位置関係は相違するものということができる。
(エ) したがって,本件発明1の「トンボ1,2,3」と,引用発明1のテスト
パターンである「トンボA,B,C,D」とにおいて,その縦軸及び横軸の技術的
意義は異なるものであって,これを一致点とすることはできず,本件審決が,引用
発明1の「トンボA,B,C,D」と,「トンボ1,2,3」とが「複数のトンボ」
という限りにおいて共通するとしたことに誤りはなく,原告らの主張は採用するこ
とができない。
イ 相違点3の認定
(ア) 原告らは,トンボの横線及び縦線の中心線上の点の座標を求めるという点
については,本件発明1と引用発明1とで異なるところはなく,上記検出手段の構
成のうち,本件発明1と引用発明1との相違となり得るのは,トンボの横線及び縦
線の中心線上の点の座標を求めるのに用いる座標として,トンボの横線及び縦線の
「左右の側縁の位置」を用いるか否かという相違点2に相当する点だけであるとし,
また,本件審決は,相違点2として評価した事項と実質的に同一の事項を相違点3
としても評価していることになり,これは,実質的に同一の事項を本件発明1の進
歩性を肯定する要素として二重に評価するものであって,不当な判断であると主張
する。
(イ) しかしなから,発明の進歩性の判断において,判断対象となる発明と引用
発明との間に複数の相違点が認定された場合において,仮にこれらの相違点に重複
する構成要素が含まれていたとしても,各相違点ごとにその容易想到性の有無が適
切に判断される限り,各相違点に重複する構成要素が含まれていることによって進
歩性の判断に誤りが生ずるものではないから,複数の相違点において重複する構成
要素が含まれていることのみをもって,当該進歩性の判断が違法となるものではな
い。
(ウ) しかも,本件審決は,相違点3として,本件発明1の検出手段が「トンボ
1,2,3の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ1,2,3の横線
及び縦線の中心線上に位置するA点,B点,C点,D点,E点及びF点の座標であ
って,プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,
Y2),C点の座標(X3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の座標(X
5,Y5)及びF点の座標(X6,Y6)を検出する検出手段」であると認定して
いるところ,これは,相違点2のフォトセンサの構成の相違とは独立した相違点の
認定ということができるから,相違点2と相違点3とをもって,原告ら主張のよう
に同一の相違点について二重評価しているということもできない。
(エ) したがって,いずれの観点からも,原告らの主張は理由がない。
(4) 相違点3についての判断の誤りについて
以上の一致点・相違点の認定を前提に,まず,相違点3についての本件審決の判
断の誤りがあるとの原告らの主張から検討することとする。
ア 原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正機能を付加する動機付け
(ア) 原告らは,機械的な精度の誤差の補正に必要な情報の取得及び算出は,プ
ロッタの出荷前やプロッタの部品を交換した際に行われれば足りるが,他方,プロ
ッタを使用する際には,ユーザーがシート材をプラテンに置くため,どうしても,
定まらないばらばらの位置・傾きに,また伸縮の程度もまちまちのシート材を置く
ことになってしまうことが避けられないから,プロッタを使用する際,正確なカッ
ティング(作図)を行うためには,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正が
必須であると主張する。
(イ) しかしながら,前記1(1)のとおり,本件発明は「カッティングプロッタ」
及び「カット方法」に係る発明であって,本件発明が原点の位置ずれ補正,傾き補
正及び伸縮補正を行う必要がある理由は,プラテン上に搭載されたシール材から当
該シール材表面に印刷されたシールの輪郭を正確・美麗にカットすることができる
ことをその目的及び効果とするものということにある。これに対し,引用発明1は,
前記1(2)のとおり,作図を行うペン式プロッタ装置の発明であって,原点の位置決
め補正,傾き補正及び伸縮補正が予定されているものではないから,本件発明のよ
うに,プラテン上に置かれたシート材の原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補
正を行う動機付けは存在しない。
イ 引用発明1における原点の位置ずれ補正等の技術の内包
(ア) 原告らは,原点の位置ずれ補正につき,引用発明1の台形歪補正として,
作図範囲の左下頂点を原点とし,点から点への変換を行うため,その際には,固定
原点(機械原点)から作図範囲の左下頂点(作図原点)への原点の位置ずれ補正(作
図データの改変)が必須であると主張する。
しかしながら,引用発明1において,フィルムテンプレートは,装置の用紙設定
位置に配置されるものであるから(引用例1【0013】),機械的な精度の誤差
の補正を行うためには,シート材が正確に位置決めされる必要があることになり,
フィルムテンプレートの原点は,XYプロッタ装置の機械原点に一致しているもの
であるということができるから,原告らの主張は採用することができない。
(イ) また,原告らは,引用発明1では,傾き補正のための補正定数を得て,そ
れによって作図のたびに傾き補正(作図データの改変)が行われていると主張する。
しかしながら,前記1(2)のとおり,引用発明1は,アームがベルトによってX方
向に移動の際,Y座標値がベルトから離れるほどX方向における移動量の誤差が大
きくなるとの作図誤差を解決しようとする発明であって,X方向の傾きである水平
線のずれが生じないことを前提とするものであるから,傾き補正の技術を内包する
ものということはできず,原告らの主張は採用することができない。
(ウ) さらに,原告らは,引用発明1の台形歪補正は作図範囲をシートのトンボ
(テストパターン)で定まる範囲に合わせるものであるところ,台形状の図形が,
作図範囲を画する境界線に相当する矩形(長方形)より大きくなることも,小さく
なることもあり得るので,これは伸縮補正と何ら異ならないと主張する。
しかしながら,上記(イ)のとおり,引用発明1は,X方向の伸縮補正を行ってい
るということはできるものの,X方向の伸縮補正とY方向の伸縮補正とを同時に行
うものではないから,本件発明1と同様の伸縮補正の機能が内包されているという
ことはできず,原告らの主張は採用することができない。
(エ) 相違点3に係る構成と引用例の記載とについて
原告らは,本件発明1における原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正の技
術的意義は,①カッティングを行うシート上の複数のマークをセンサで読み取り,
②読み取ったマークの位置データに基づいてプロッタの座標系とシートの座標系と
の対応関係を求め,③当該対応関係に基づいて,シートの座標系で表されたカット
データを,プロッタの座標系で表されたデータに改変するというものであって,こ
れらは,本件特許の優先日前からの周知技術であると主張する。
しかしながら,上記①ないし③は,カッティングプロッタにおいて印刷されたシ
ールの輪郭に合わせてシールをカットする際に求められる抽象的な課題であったと
ころ,本件における各引用例は,相違点3に係る補正の技術の具体的な解決課題を
提示し解決するものではなく,そのような周知技術の存在も認めることができず,
原告らの主張は採用することができない。
さらに,原告らが周知技術として挙げるものについてみても,甲29に記載され
たX−Yプロッタ装置に係る発明は,目盛線が印刷されている記録紙への記録,他
の図形が印刷されており,又は先に記録された図形が存在する記録紙上に既存の図
形に対する相対位置や寸法精度を良好に保って記録するために記録紙上に想定され
る固定した直角座標に関する位置データによって記録紙への記録を行うため,原点
の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正を行うものであるが,その補正内容は,位
置検出マークを利用し,あらかじめ記憶装置に格納した第1の座標に関する位置デ
ータと,検出して求めた第2の座標に関する位置データから,第1の座標に関する
位置データを第2の座標に関する位置データに変換する方法を決定するものであっ
て,補正量を求める手段は,相違点3に係る本件発明1とは異なるものである。
また,同じく原告らが周知技術として挙げる甲31に記載された自動作図装置に
係る発明は,共通項目,外形,枠等をあらかじめ印刷したシート作図用紙を用いて
作図を行う際,原点の位置ずれ補正機能,傾き補正機能及び伸縮補正機能を行うも
のであるが,その補正内容は,シート作図用紙の原点に手動送りによりペン先を合
わせて移動パルス指令をカウントするカウンタのリセットを行い,次に,目標点に
ついて,理論的座標値を演算回路に与え,また,ペン先を目標点に合わせてカウン
タの内容を演算回路に入力し,演算回路の内部演算によりシート作図用紙の傾き及
び伸縮を求めて補正データを得るものであって,補正量を求める手段は,相違点3
に係る本件発明1とは異なるものである。
本件発明1は,3か所に形成されたトンボの各軸線の中心線上の6点のXY座標
値を求め,これによって,座標原点の位置データ及び傾き・伸縮の補正量を算出す
る手段を採用するものであって,座標原点等の具体的な特定の点を表す目印ごとに
その位置データを求めようとする甲29及び31に記載された発明を含め,上記手
段を採用するものではなく,原告らが周知技術として挙げる各発明とは異なるもの
である。
さらに,前記1(2)のとおり,シール材への作図において,原点の位置決め補正,
傾き補正及び伸縮補正が予定されていない引用発明1に,本件発明1における上記
のとおりの3か所に形成されたトンボの各軸線の中心線上の6点のXY座標値を求
め,これによって,座標原点の位置データ及び傾き・伸縮の補正量を算出する手段
を採用するものではない甲4ないし35に記載された各発明や引用発明2を適用し
て,相違点3について容易に想到することができるものでもない。
(5) 小括
以上によると,引用例1を主引例とする関係で,本件発明1が進歩性を有すると
した本件審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(本件発明1が引用例2を主引例とする関係で進歩性を有すると
した判断の誤り)について
(1) 引用発明2について
引用例2によると,引用発明2は,単色用印刷プリンタ等でインクリボン交換等
により同一の帳表に繰り返し印刷して2色以上の印刷をしたり,印刷された帳表を
カッティングプロッタで切り抜く場合に,出力データの位置合わせ,位置ずれを補
正する出力装置に関するものであり(【0001】),いったん印刷した帳表をプ
リンタやカッティングマシンにセットするたびに正確な位置決め操作が必要になっ
たり,温度や湿度による帳表の伸縮やプラテンローラ等のフィード系の摩耗が距離
精度に影響を与えて,カットずれ等の版ずれを発生するおそれがあるとの課題につ
き(【0002】),簡単な操作で,同一帳表に同一データを繰り返し出力しても
版ずれを起こさない出力装置を提供することを目的とするものであり【0003】 ,
( )
図形や文字を印刷した帳表からその図形や文字を切り抜く場合には,帳表に印刷さ
れた開始位置マークから終了位置マークまでの実距離を計測し,計測した実距離と
記憶手段に記憶されているデータの開始位置マークから終了位置マークまでの距離
とを比較し,同じ距離になるように上記記憶手段に記憶されているデータのサイズ
を補正するとともに,補正したデータに基づいて帳表からデータを切り抜くことに
よって(【請求項4】【0048】∼【0052】),切り抜く際に元の図形を正
しく切り抜くことができる 【0056】 との発明であると認めることができる。
( )
(2) 一致点の認定の誤りについて
ア データ改変手段
(ア) 原告らは,引用発明2の「改変手段」は,複数のマーク間の設定距離に対
する実測距離の比率に合わせて文字や図形(シール)の輪郭のカットデータを改変
するという点でも,本件発明1の「改変手段」と一致しているにもかかわらず,本
件審決はこの点を看過していると主張する。
(イ) しかしながら,引用例2には,重ね印刷について,誤差以上のずれが存在
した場合は,メモリ3に記憶されているデータのサイズを実距離対基準距離の比率
で補正し,補正されたデータを検出した開始位置マークを印刷開始位置と認識して
出力することにより,版ずれを生ずることなく確実に重ね印刷を行うことができる
(【0047】)との記載があり,印刷データを開始位置マークと終了位置マーク
の実距離と基準距離の比率で補正する構成が開示されているが,そのような引用発
明2が一方向(帳表送り方向)の実距離と基準距離の比率で補正する構成を有する
としても,データの補正(改変)項目の部分的な一致は,「改変手段」全体として
の機能としての技術的意義を有するものではない。
(ウ) これに対し,前記1(1)のとおり,本件発明1の改変手段は,算出手段によ
り算出したプラテンのX―Y軸上でのシール材の座標原点,プラテンのX軸,Y軸
に対するシール材の横軸,縦軸の傾き,シール材表面のトンボ1,2間の設定距離
に対する実測距離の比率,及びシール材表面のトンボ1,3間の設定距離に対する
実測距離の比率に合わせて,シールの輪郭のカットデータを改変するものである。
(エ) そうすると,本件審決が,「シート11表面の開始位置マークSP,終了
位置マークEP間の実距離を算出し,メモリ3上のデータのSPからEPまでの距
離が実距離に等しくなるように,前記メモリ3に記憶させた文字や図形の輪郭のデ
ータを拡大又は縮小する手段」は,「シート材表面の複数のマーク間の実距離が設
定距離と等しくなるように,前記記憶手段に記憶させた印刷物の輪郭のカットデー
タを改変する改変手段」という限りにおいて,カットデータを改変する改変手段と
共通していると認定した点に誤りはなく,原告らの主張は理由がない。
イ フォトセンサの構成
(ア) 原告らは,引用発明2の「フォトインタラプタ6a」及び「フォトインタ
ラプタ6b」は,「反射型フォトセンサ」という点でも,本件発明1の「高精度反
射型フォトセンサ」と一致しているにもかかわらず,本件審決はこの点を看過して
いると主張する。
(イ) しかしながら,引用例2には,検出手段はフォトインタラプタで構成され
(【0018】),この検出手段について,第1のフォトインタラプタと,第2の
フォトインタラプタと,ロータリエンコーダとで構成され,第1のフォトインタラ
プタでSPを検出し,第2のフォトインタラプタでEPを検出し,検出結果は制御
手段に送られるように設けられている(【0029】)などと記載されているもの
の,フォトインタラプタの具体的構造についての記載はなく,また,引用例2の図
2,6及び9等を参照しても,フォトインタラプタ(6,6a,6b)として,小
さな円柱状の突起物の存在が見て取れるが,その具体的構造は明らかではない。
(ウ) そうすると,フォトインタラプタの受光部が「フォトセンサ」からなるこ
とは技術常識に基づいて認定できるとしても,引用例2において,フォトインタラ
プタが「反射型」フォトセンサであるかどうかは明示的な開示がないものといわざ
るを得ない。
(エ) したがって,引用例2には,フォトインタラプタが「反射型」のフォトセ
ンサであることの明示的な開示がないことから,本件審決が,フォトセンサが「反
射型」であることについて一致点と認定せず,「フォトセンサ」という限りにおい
て共通するとした上で,フォトセンサが「トンボ1,2,3の横線及び縦線の左右
の側縁の位置を検知する前記ヘッドに装着された高精度反射型」フォトセンサであ
ることについて,容易想到性の有無について検討されるべき相違点8における本件
特許発明1の構成の一部とした点に誤りがあるということはできず,原告らの主張
は理由がない。
(3) 相違点8についての判断の誤りについて
ア 検知位置
原告らは,本件審決が,引用例1に記載のフォトセンサがトンボの線を左右に横
切った際のピーク値座標を検知するものである点で,トンボの線の左右の側縁の位
置を検知する本件発明1とは異なることなどから,相違点8が容易に想到できたも
のとはいえないとしたことについて,トンボの縦線及び横線に関して検知する位置
に係る構成が容易に想到できたものでないと判断した本件審決が取り消されるべき
であるから,引用例1に記載のフォトセンサと本件発明1とのトンボの縦線及び横
線に関して検知する位置についての構成の異同が,本件発明1の進歩性を基礎づけ
るものではないと主張する。
しかしながら,引用例のいずれにも,トンボの線の中心線上に位置する点を検出
するために,トンボの線の中心線に関し対称な位置に存在する「左右の側縁の位置」
を検知するとの技術の記載はなく,本件発明1におけるトンボの縦線及び横線に関
して検知する位置に係る構成が容易に想到できたものでないと判断した本件審決に
誤りがあるということはできないから,原告らの主張は理由がない。
イ 相違点8に係る本件発明1の構成の周知性
(ア) 原告らは,本件発明1の課題及び相違点8に係る本件発明1の構成の本質
的部分は,本件特許の優先日より前から当業者に周知されていたと主張する。
(イ) しかしながら,前記1(4)のとおり,本件発明1は,3か所に形成されたト
ンボの各軸線の中心線上の6点のXY座標値を求め,これによって,座標原点の位
置データ及び傾き・伸縮の補正量を算出する手段を採用するものであるところ,原
告らが周知技術として挙げる各発明は,原点の位置ずれ補正,傾き補正及び伸縮補
正の構成があるものについても,上記手段を採用するものではないから,本件発明
1の構成の本質的部分が周知であるとする原告らの主張は採用することができない。
ウ 引用発明2に引用発明1や周知技術を組み合わせて本件発明1に至ることの
容易性の有無
(ア) 原告らは,相違点8に係る本件発明1の構成は単なる設計事項であること,
相違点8に係る補正はプロッタにとって普遍的な課題を解決するための技術である
ところ,本件発明1,引用発明2や周知技術においてカットデータの補正という構
成の共通性があることなどに照らすと,引用発明2に相違点8に係る原点の位置ず
れ補正,傾き補正及び伸縮補正を組み合わせる十分な動機付けが存在していたと主
張する。
(イ) しかしながら,上記(1)のとおり,引用発明2は,2色以上の重ね印刷,温
度・湿度による帳表の伸縮及びプラテンローラ等のフィード系の摩耗が距離精度に
影響を与えることによるカットずれ等の版ずれが発生するおそれがあるとの課題に
つき,帳表に印刷された開始位置マークから終了位置マークまでの実距離を計測し,
計測した実距離と記憶手段に記憶されている距離とを比較し,データのサイズを補
正するものであって,一方向(帳表送り方向)の伸縮補正のみを前提としているも
のである。そして,引用発明2においては,帳表が載置される際,帳表送り方向と
垂直方向の位置ずれや傾きを伴うと,フォトインタラプタ6a及び6bが走査され
るラインが開始位置マークSPや終了位置マークEPの位置とずれることとなるか
ら,フォトインタラプタによってこれらのマークを読み取ることが不可能となるこ
とが予想される。
以上のとおり,引用例2には,帳表送り方向と垂直な方向についての実距離の計
測や,帳表の傾きを補正することについての開示や示唆はなく,引用発明2は,帳
表送り方向と垂直な方向への伸縮補正や傾き補正が予定されていないものであって,
その動機付けも存在しないということができる。
(ウ) したがって,引用発明2は,帳表が載置される際に,帳表送り方向と垂直
方向の位置ずれや傾きが生じないことを前提とした発明であって,これらの位置ず
れや傾き補正を行うことには阻害要因があるということができ,引用発明2に,相
違点8に係る傾き補正及びY軸方向への伸縮補正を組み合わせる動機付けが存在す
るということはできず,原告らの主張は採用することができない。
(エ) なお,原告らは,引用発明2に,引用発明1の補正に係る構成(シート上
に「テストパターン」を設け,センサで検出した「テストパターン」中心線に関し
て対象な2点の座標から当該中心線上の点の座標を求め,求めた中心線上の点の座
標に基づいてカット(作図)データを改変(座標変換)するという構成)を組み合
わせることは,当業者であれば容易であったと主張する。
しかしながら,前記1のとおり,そもそも,引用発明1は,本件発明1における
ような,トンボの横線及び縦線の中心線上に位置する6点を検出して,原点の位置
ずれ補正,傾き補正及び伸縮補正のそれぞれの補正量を求め,シールの輪郭のカッ
トデータを改変するとの具体的構成を有するものではないから,いずれもこれらの
構成を有しない引用発明2に引用発明1を組み合わせることによっては,相違点8
に係る本件発明1の構成を導くことができないものである。
その上,前記1のとおり,引用発明1は,メンテナンス時の機械的な誤差の補正
に関するものであり,シール材への作図の段階において,原点の位置決め補正,傾
き補正及び伸縮補正が予定されたものではないから,いったん印刷した帳表を更に
印刷又はカットする際の誤差の補正を課題とする引用発明2とは,技術課題やその
適用の場面も異なるものであって,引用発明2に引用発明1の構成を適用する動機
付けを見いだすこともできない。
したがって,いずれにしても,原告らの主張は採用することができない。
(4) 小括
以上によると,引用例2を主引例とする関係でも,本件発明1が進歩性を有する
とした本件審決の判断に誤りはないといわなければならない。
3 取消事由3(本件発明2ないし4が進歩性を有するとした判断の誤り)につ
いて
原告らは,本件発明1が進歩性を有しないことを前提として,本件発明2ないし
4が進歩性を有しないと主張するところ,上記1及び2のとおり,本件発明1に進
歩性がないとすることはできないから,本件発明2ないし4が進歩性を有しないと
する原告らの主張も理由がない。
4 結論
以上の次第であるから,原告らの請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣
裁判官 本 多 知 成
裁判官 荒 井 章 光
(別紙) 本件発明の要旨
【請求項1】プラテン上に搭載されたシール材表面に印刷されたシールの輪郭を,
シール材の横軸−縦軸の座標原点を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材
の縦軸の位置を示すトンボ2と,前記座標原点を通るシール材の横軸の位置を示す
トンボ3とであって,シール材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つシール材表
面に印刷されたトンボ1,2,3を基準にして,記憶手段に記憶させたシールの輪
郭のカットデータに基づき,前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向
に相対的に移動させるヘッドに装着されたカッタによりカットするカッティングプ
ロッタであって,/前記トンボ1,2,3の横線及び縦線の左右の側縁の位置を検
知する前記ヘッドに装着された高精度反射型フォトセンサと,該センサで検知した
トンボ1,2,3の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ1,2,3
の横線及び縦線の中心線上に位置するA点,B点,C点,D点,E点及びF点の座
標であって,プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X
2,Y2),C点の座標(X3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の座標
(X5,Y5)及びF点の座標(X6,Y6)を検出する検出手段と,該検出手段
で検出したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C点の座標(X
3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の座標(X5,Y5)及びF点の座
標(X6,Y6)の値から,プラテン上に搭載されたシール材のプラテンのX―Y
軸上での座標原点(X0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,
縦軸の傾き,シール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,
及びシール材表面のトンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率を算出する
算出手段と,該算出手段により算出したプラテンのX―Y軸上でのシール材の座標
原点(X0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,縦軸の傾き,
シール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,及びシール材
表面のトンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率に合わせて,前記記憶手
段に記憶させたシールの輪郭のカットデータを改変する改変手段とを備えたことを
特徴とするカッティングプロッタ
【請求項2】請求項1記載のカッティングプロッタを用いて,プラテン上に搭載さ
れたシール材表面に印刷されたシールの輪郭を,シール材の横軸−縦軸の座標原点
を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ2と,
前記座標原点を通るシール材の横軸の位置を示すトンボ3とであって,シール材の
横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つシール材表面に印刷されたトンボ1,2,3
を基準にして,記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデータに基づき,前記
プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的に移動させるヘッドに装
着されたカッタによりカットするシール材のカット方法であって,次の工程を含む
ことを特徴とするカッティングプロッタを用いたシール材のカット方法
a 前記ヘッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的
に移動させて,ヘッドを前記トンボ1の近くに移動させる工程
b 前記ヘッドを,前記トンボ1の横線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をY方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ1の横線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ1の
横線の左右の側縁の位置から,トンボ1の横線の中心線上に位置するA点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1)を,検出手段により
検出する工程
c 前記ヘッドを,前記トンボ1の縦線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をX方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ1の縦線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ1の
縦線の左右の側縁の位置から,トンボ1の縦線の中心線上に位置するB点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのB点の座標(X2,Y2)を,検出手段により
検出する工程
d 前記ヘッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的
に移動させて,ヘッドを前記トンボ2の近くに移動させる工程
e 前記ヘッドを,前記トンボ2の横線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をY方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ2の横線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ2の
横線の左右の側縁の位置から,トンボ2の横線の中心線上に位置するC点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのC点の座標(X3,Y3)を,検出手段により
検出する工程
f 前記ヘッドを,前記トンボ2の縦線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をX方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ2の縦線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ2の
縦線の左右の側縁の位置から,トンボ2の縦線の中心線上に位置するD点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのD点の座標(X4,Y4)を,検出手段により
検出する工程
g 前記ヘッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的
に移動させて,ヘッドを前記トンボ3の近くに移動させる工程
h 前記ヘッドを,前記トンボ3の横線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をY方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ3の横線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ3の
横線の左右の側縁の位置から,トンボ3の横線の中心線上に位置するE点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのE点の座標(X5,Y5)を,検出手段により
検出する工程
i 前記ヘッドを,前記トンボ3の縦線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をX方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ3の縦線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ3の
縦線の左右の側縁の位置から,トンボ3の縦線の中心線上に位置するF点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのF点の座標(X6,Y6)を,検出手段により
検出する工程
j 前記検出手段により検出したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,
Y2),C点の座標(X3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の座標(X
5,Y5)及びF点の座標(X6,Y6)の値から,プラテンのX―Y軸上でのシ
ール材の座標原点(X0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,
縦軸の傾き,シール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,
及びシール材表面のトンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率を,算出手
段により算出する工程
k 前記算出手段により算出したプラテンのX―Y軸上でのシール材の座標原点
(X0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,縦軸の傾き,シ
ール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,及びシール材表
面のトンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率に合わせて,前記記憶手段
に記憶させたシールの輪郭のカットデータを,改変手段により改変する工程
l 前記改変手段により改変したシールの輪郭のカットデータに基づき,前記ヘ
ッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的に移動させて,
前記シール材表面に印刷されたシールの輪郭を,前記ヘッドに装着されたカッタを
用いて,カットする工程
【請求項3】プラテン上に搭載されたシール材表面に印刷されたシールの輪郭を,
シール材の横軸−縦軸の座標原点を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材
の縦軸の位置を示すトンボ2とであって,シール材の横軸−縦軸と平行な横線−縦
線を持つシール材表面に印刷されたトンボ1,2を基準にして,記憶手段に記憶さ
せたシールの輪郭のカットデータに基づき,前記プラテン上に搭載されたシール材
上をX―Y方向に相対的に移動させるヘッドに装着されたカッタによりカットする
カッティングプロッタであって,/前記トンボ1,2の横線及び縦線の左右の側縁
の位置を検知する前記ヘッドに装着された高精度反射型フォトセンサと,該センサ
で検知したトンボ1,2の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ1,
2の横線及び縦線の中心線上に位置するA点,B点,C点及びD点の座標であって,
プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),
C点の座標(X3,Y3)及びD点の座標(X4,Y4)を検出する検出手段と,
該検出手段で検出したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C
点の座標(X3,Y3)及びD点の座標(X4,Y4)の値から,プラテン上に搭
載されたシール材のプラテンのX―Y軸上での座標原点(X0,Y0),プラテン
のY軸に対するシール材の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2間の設定
距離に対する実測距離の比率を算出する算出手段と,該算出手段により算出したプ
ラテンのX―Y軸上でのシール材の座標原点(X0,Y0),プラテンのY軸に対
するシール材の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対す
る実測距離の比率に合わせて,前記記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデ
ータを改変する改変手段とを備えたことを特徴とするカッティングプロッタ
【請求項4】請求項3記載のカッティングプロッタを用いて,プラテン上に搭載さ
れたシール材表面に印刷されたシールの輪郭を,シール材の横軸−縦軸の座標原点
を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ2とで
あって,シール材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つシール材表面に印刷され
たトンボ1,2を基準にして,記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデータ
に基づき,前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的に移動さ
せるヘッドに装着されたカッタによりカットするシール材のカット方法であって,
次の工程を含むことを特徴とするカッティングプロッタを用いたシール材のカット
方法
a 前記ヘッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的
に移動させて,ヘッドを前記トンボ1の近くに移動させる工程
b 前記ヘッドを,前記トンボ1の横線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をY方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ1の横線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ1の
横線の左右の側縁の位置から,トンボ1の横線の中心線上に位置するA点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1)を,検出手段により
検出する工程
c 前記ヘッドを,前記トンボ1の縦線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をX方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ1の縦線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ1の
縦線の左右の側縁の位置から,トンボ1の縦線の中心線上に位置するB点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのB点の座標(X2,Y2)を,検出手段により
検出する工程
d 前記ヘッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的
に移動させて,ヘッドを前記トンボ2の近くに移動させる工程
e 前記ヘッドを,前記トンボ2の横線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をY方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ2の横線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ2の
横線の左右の側縁の位置から,トンボ2の横線の中心線上に位置するC点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのC点の座標(X3,Y3)を,検出手段により
検出する工程
f 前記ヘッドを,前記トンボ2の縦線を跨いで,プラテン上に搭載されたシー
ル材上をX方向に相対的に移動させて,ヘッドに装着された高精度反射型フォトセ
ンサにより,トンボ2の縦線の左右の側縁の位置を検知し,該検知したトンボ2の
縦線の左右の側縁の位置から,トンボ2の縦線の中心線上に位置するD点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのD点の座標(X4,Y4)を,検出手段により
検出する工程
g 前記検出手段により検出したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,
Y2),C点の座標(X3,Y3)及びD点の座標(X4,Y4)の値から,プラ
テンのX―Y軸上でのシール材の座標原点(X0,Y0),プラテンのY軸に対す
るシール材の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する
実測距離の比率を,算出手段により算出する工程
h 前記算出手段により算出したプラテンのX―Y軸上でのシール材の座標原点
(X0,Y0),プラテンのY軸に対するシール材の縦軸の傾き,及びシール材表
面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率に合わせて,前記記憶手段
に記憶させたシールの輪郭のカットデータを,改変手段により改変する工程
i 前記改変手段により改変したシールの輪郭のカットデータに基づき,前記ヘ
ッドを前記プラテン上に搭載されたシール材上をX―Y方向に相対的に移動させて,
前記シール材表面に印刷されたシールの輪郭を,前記ヘッドに装着されたカッタを
用いて,カットする工程
(別紙) 引用発明1及び2の認定並びに各一致点及び相違点
1 引用発明1との関係
(1) 引用発明1:用紙載置部分上に載置された作図用紙に,作図用紙表面に形成
されたトンボA,B,C,Dを基準にして,記憶手段に記憶させた作図データに基
づき,前記用紙載置部分上に載置された作図用紙上をX−Y方向に相対的に移動さ
せるペンヘッドに装着されたペンにより作図するXYプロッタ装置であって,前記
トンボA,B,C,Dの縦線及び前記トンボA,Cの横線を左右に横切った際のピ
ーク値座標を検知する前記ペンヘッドのペン駆動ユニットのフレームに装着された
光学センサと,該センサで検知したトンボA,B,C,Dの縦線及びトンボA,C
の横線を左右に横切った際のピーク値座標から,前記トンボA,B,C,Dの縦線
の線幅中央に位置する点のX座標及びトンボA,Cの横線の線幅中央に位置する点
のY座標を検出する検出手段と,該検出手段で検出した前記各点のX座標及びY座
標の値から,X軸,Y軸距離補正,台形補正,直角度補正の各定数を算出する算出
手段と,該算出手段により算出したX軸,Y軸距離補正,台形補正,直角度補正の
各定数を用いて,前記記憶手段に記憶させた作図データを自己補正する自己補正手
段とを備えたXYプロッタ装置
(2) 本件発明1と引用発明1との一致点:プラテン上に搭載されたシート材に,
シート材表面に形成された複数のトンボを基準にして,記憶手段に記憶させたデー
タに基づき,前記プラテン上に搭載されたシート材上をX−Y方向に相対的に移動
させるヘッドに装着された作業具により作業するプロッタであって,前記ヘッドに
装着されたフォトセンサと,前記複数のトンボの線の中心線上に位置する点の座標
を検出する検出手段と,該検出手段で検出した座標の値から,補正のための定数を
算出する算出手段と,該算出手段により算出した補正のための定数に合わせて,前
記記憶手段に記憶させたデータを改変する改変手段とを備えたプロッタである点
(3) 本件発明1と引用発明1との相違点
ア 相違点1:本件発明1は,「シール材表面に印刷されたシールの輪郭を」,
「シールの輪郭のカットデータに基づき」,「シール材上」をX―Y方向に相対的
に移動させるヘッドに装着された「カッタによりカットするカッティングプロッタ」
であるのに対し,引用発明1は,「作図用紙に」,「作図データに基づき」,「作
図用紙上」をX−Y方向に相対的に移動させるヘッドに装着された「ペンにより作
図するXYプロッタ装置」である点
イ 相違点2:複数のトンボの線の中心線上に位置する点の座標を検出するため
に,本件発明1は,フォトセンサとして,トンボの線の「左右の側縁の位置を検知
する」,「高精度反射型」フォトセンサを用いているのに対し,引用発明1は,フ
ォトセンサとして,トンボの線を「左右に横切った際のピーク値座標を検知する」
フォトセンサを用いている点
ウ 相違点3:本件発明1は,複数のトンボとして「シール材の横軸−縦軸の座
標原点を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ
2と,前記座標原点を通るシール材の横軸の位置を示すトンボ3とであって,シー
ル材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つ」,「トンボ1,2,3」を設けると
共に,検出手段,算出手段及び改変手段が,それぞれ「トンボ1,2,3の横線及
び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ1,2,3の横線及び縦線の中心線上
に位置するA点,B点,C点,D点,E点及びF点の座標であって,プラテンのX
―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C点の座標
(X3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の座標(X5,Y5)及びF点
の座標(X6,Y6)を検出する検出手段」,「該検出手段で検出したA点の座標
(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C点の座標(X3,Y3),D点の
座標(X4,Y4),E点の座標(X5,Y5)及びF点の座標(X6,Y6)の
値から,プラテン上に搭載されたシール材のプラテンのX―Y軸上での座標原点(X
0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,縦軸の傾き,シール
材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,及びシール材表面の
トンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率を算出する算出手段」及び「該
算出手段により算出したプラテンのX―Y軸上でのシール材の座標原点(X0,Y
0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,縦軸の傾き,シール材表面
のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,及びシール材表面のトンボ
1,3間の設定距離に対する実測距離の比率に合わせて,前記記憶手段に記憶させ
たシールの輪郭のカットデータを改変する改変手段」であるのに対し,引用発明1
は,複数のトンボとして「トンボA,B,C,D」を設けると共に,検出手段,算
出手段及び改変手段が,それぞれ「トンボA,B,C,Dの縦線及びトンボA,C
の横線を左右に横切った際のピーク値座標から,前記トンボA,B,C,Dの縦線
の線幅中央に位置する点のX座標及びトンボA,Cの横線の線幅中央に位置する点
のY座標を検出する検出手段」,「該検出手段で検出した各点のX座標及びY座標
の値から,X軸,Y軸距離補正,台形補正,直角度補正の各定数を算出する算出手
段」及び「該算出手段により算出したX軸,Y軸距離補正,台形補正,直角度補正
の各定数を用いて,前記記憶手段に記憶させた作図データを改変する改変手段」で
ある点
(4) 本件発明3と引用発明1との一致点:プラテン上に搭載されたシート材に,
シート材表面に形成された複数のトンボを基準にして,記憶手段に記憶させたデー
タに基づき,前記プラテン上に搭載されたシート材上をX−Y方向に相対的に移動
させるヘッドに装着された作業具により作業するプロッタであって,前記ヘッドに
装着されたフォトセンサと,前記複数のトンボの線の中心線上に位置する点の座標
を検出する検出手段と,該検出手段で検出した座標の値から,補正のための定数を
算出する算出手段と,該算出手段により算出した補正のための定数に合わせて,前
記記憶手段に記憶させたデータを改変する改変手段とを備えたプロッタである点
(5) 本件発明3と引用発明1との相違点
ア 相違点4:本件発明3は,「シール材表面に印刷されたシールの輪郭を」,
「シールの輪郭のカットデータに基づき」,「シール材上」をX―Y方向に相対的
に移動させるヘッドに装着された「カッタによりカットするカッティングプロッタ」
であるのに対し,引用発明1は,「作図用紙に」,「作図データに基づき」,「作
図用紙上」をX−Y方向に相対的に移動させるヘッドに装着された「ペンにより作
図するXYプロッタ装置」である点
イ 相違点5:複数のトンボの線の中心線上に位置する点の座標を検出するため
に,本件発明3は,フォトセンサとして,トンボの線の「左右の側縁の位置を検知
する」,「高精度反射型」フォトセンサを用いているのに対し,引用発明1は,フ
ォトセンサとして,トンボの線を「左右に横切った際のピーク値座標の位置を検知
する」フォトセンサを用いている点
ウ 相違点6:本件発明3は,複数のトンボとして「シール材の横軸−縦軸の座
標原点を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ
2とであって,シール材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つ」,「トンボ1,
2」を設けると共に,検出手段,算出手段及び改変手段が,それぞれ「トンボ1,
2の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ1,2の横線及び縦線の中
心線上に位置するA点,B点,C点及びD点の座標であって,プラテンのX―Y軸
上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C点の座標(X3,
Y3)及びD点の座標(X4,Y4)を検出する検出手段」,「該検出手段で検出
したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C点の座標(X3,
Y3)及びD点の座標(X4,Y4)の値から,プラテン上に搭載されたシール材
のプラテンのX―Y軸上での座標原点(X0,Y0),プラテンのY軸に対するシ
ール材の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測
距離の比率を算出する算出手段」及び「該算出手段により算出したプラテンのX―
Y軸上でのシール材の座標原点(X0,Y0),プラテンのY軸に対するシール材
の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の
比率に合わせて,前記記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデータを改変す
る改変手段」であるのに対し,引用発明1は,複数のトンボとして「トンボA,B,
C,D」を設けると共に,検出手段,算出手段及び改変手段が,それぞれ「トンボ
A,B,C,Dの縦線及びトンボA,Cの横線を左右に横切った際のピーク値座標
から,前記トンボA,B,C,Dの縦線の線幅中央に位置する点のX座標及びトン
ボA,Cの横線の線幅中央に位置する点のY座標を検出する検出手段」,「該検出
手段で検出した各点のX座標及びY座標の値から,X軸,Y軸距離補正,台形補正,
直角度補正の各定数を算出する算出手段」及び「該算出手段により算出したX軸,
Y軸距離補正,台形補正,直角度補正の各定数を用いて,前記記憶手段に記憶させ
た作図データを改変する改変手段」である点
2 引用発明2との関係
(1) 引用発明2 プラテン上に搭載されたシート表面に印刷された文字や図形の

輪郭を,印刷開始位置を示す開始位置マークSPと,印刷終了位置を示す終了位置
マークEPとであって,シート表面に印刷された開始位置マークSP,終了位置マ
ークEPを基準にして,メモリに記憶させた文字や図形の輪郭のデータに基づき,
前記プラテン上に搭載されたシート上を前後−左右方向に相対的に移動させる切り
抜きヘッドにより切り抜く切り抜き手段を備えた出力装置であって,前記開始位置
マークSPの前後方向の位置を検出する,開始位置マークSPの移動軌跡上に適宜
手段で取着されたフォトインタラプタ6aと,前記終了位置マークEPの前後方向
の位置を検出する,終了位置マークEPの移動軌跡上に適宜手段で取着されたフォ
トインタラプタ6bと,該フォトインタラプタ6a,6bで検知した開始位置マー
クSPと終了位置マークEPの前後方向の位置から,シート表面の開始位置マーク
SP,終了位置マークEP間の実距離を算出し,メモリ上のデータのSPからEP
までの距離が実距離に等しくなるように,前記メモリに記憶させた文字や図形の輪
郭のデータを拡大又は縮小する手段とを備えた切り抜き手段を備えた出力装置
(2) 本件発明1と引用発明2との一致点 プラテン上に搭載されたシート材表面

に印刷された印刷物の輪郭を,シート材表面に印刷された複数のマークを基準にし
て,記憶手段に記憶させた印刷物の輪郭のカットデータに基づき,前記プラテン上
に搭載されたシート材上をX−Y方向に相対的に移動させるヘッドに装着されたカ
ッタによりカットするカッティングプロッタであって,フォトセンサと,シート材
表面の複数のマーク間の実距離が設定距離と等しくなるように,前記記憶手段に記
憶させた印刷物の輪郭のカットデータを改変する改変手段とを備えたカッティング
プロッタである点
(3) 本件発明1と引用発明2との相違点
ア 相違点7:本件発明1は,カット対象が「シール材表面に印刷されたシール」
であって,「シールの輪郭のカットデータに基づき」カットするのに対し,引用発
明2は,カット対象が「シート表面に印刷された文字や図形」であって,「文字や
図形の輪郭のカットデータに基づき」カットする点
イ 相違点8:本件発明1は,複数のマークが「シール材の横軸−縦軸の座標原
点を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ2と,
前記座標原点を通るシール材の横軸の位置を示すトンボ3とであって,シール材の
横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つ」,「トンボ1,2,3」であると共に,フ
ォトセンサが「トンボ1,2,3の横線及び縦線の左右の側縁の位置を検知する前
記ヘッドに装着された高精度反射型」フォトセンサであり,「該センサで検知した
前記トンボ1,2,3の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トンボ1,2,
3の横線及び縦線の中心線上に位置するA点,B点,C点,D点,E点及びF点の
座標であって,プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標
(X2,Y2),C点の座標(X3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の
座標(X5,Y5)及びF点の座標(X6,Y6)を検出する検出手段と,該検出
手段で検出したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y2),C点の座
標(X3,Y3),D点の座標(X4,Y4),E点の座標(X5,Y5)及びF
点の座標(X6,Y6)の値から,プラテン上に搭載されたシール材のプラテンの
X―Y軸上での座標原点(X0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材
の横軸,縦軸の傾き,シール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離
の比率,及びシール材表面のトンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率を
算出する算出手段と,該算出手段により算出したプラテンのX―Y軸上でのシール
材の座標原点(X0,Y0),プラテンのX軸,Y軸に対するシール材の横軸,縦
軸の傾き,シール材表面のトンボ1,2間の設定距離に対する実測距離の比率,及
びシール材表面のトンボ1,3間の設定距離に対する実測距離の比率に合わせて,
前記記憶手段に記憶させたシールの輪郭のカットデータを改変する改変手段とを備
え」ているのに対し,引用発明2は,複数のマークが「印刷開始位置を示す開始位
置マークSPと,印刷終了位置を示す終了位置マークEP」であると共に,フォト
センサが「開始位置マークSPのX方向の位置を検出する,開始位置マークSPの
移動軌跡上に適宜手段で取着された」フォトセンサと,「終了位置マークEPのX
方向の位置を検出する,終了位置マークEPの移動軌跡上に適宜手段で取着された」
フォトセンサとであり,「該センサで検知した開始位置マークSPと終了位置マー
クEPのX方向の位置から,シート表面の開始位置マークSP,終了位置マークE
P間の実距離を算出し,記憶手段に記憶されたカットデータのSPからEPまでの
距離が実距離に等しくなるように,前記記憶手段に記憶させた文字や図形の輪郭の
カットデータを改変する改変手段とを備え」ている点
(4) 本件発明3と引用発明2との一致点 プラテン上に搭載されたシート材表面

に印刷された印刷物の輪郭を,シート材表面に印刷された複数のマークを基準にし
て,記憶手段に記憶させた印刷物の輪郭のカットデータに基づき,前記プラテン上
に搭載されたシート材上をX−Y方向に相対的に移動させるヘッドに装着されたカ
ッタによりカットするカッティングプロッタであって,フォトセンサと,シート材
表面の複数のマーク間の実距離が設定距離と等しくなるように,前記記憶手段に記
憶させた印刷物の輪郭のカットデータを改変する改変手段とを備えたカッティング
プロッタ
(5) 本件発明3と引用発明2との相違点
ア 相違点9:本件発明3は,カット対象が「シール材表面に印刷されたシール」
であって,「シールの輪郭のカットデータに基づき」カットするのに対し,引用発
明2は,カット対象が「シート表面に印刷された文字や図形」であって,「文字や
図形の輪郭のカットデータに基づき」カットする点
イ 相違点10:本件発明3は,複数のマークが「シール材の横軸−縦軸の座標
原点を示すトンボ1と,前記座標原点を通るシール材の縦軸の位置を示すトンボ2
とであって,シール材の横軸−縦軸と平行な横線−縦線を持つ」,「トンボ1,2」
であると共に,フォトセンサが「前記トンボ1,2の横線及び縦線の左右の側縁の
位置を検知する前記ヘッドに装着された高精度反射型」フォトセンサであり,「該
センサで検知したトンボ1,2の横線及び縦線の左右の側縁の位置から,前記トン
ボ1,2の横線及び縦線の中心線上に位置するA点,B点,C点及びD点の座標で
あって,プラテンのX―Y軸上でのA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,
Y2),C点の座標(X3,Y3)及びD点の座標(X4,Y4)を検出する検出
手段と,該検出手段で検出したA点の座標(X1,Y1),B点の座標(X2,Y
2),C点の座標(X3,Y3)及びD点の座標(X4,Y4)の値から,プラテ
ン上に搭載されたシール材のプラテンのX―Y軸上での座標原点(X0,Y0),
プラテンのY軸に対するシール材の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2
間の設定距離に対する実測距離の比率を算出する算出手段と,該算出手段により算
出したプラテンのX―Y軸上でのシール材の座標原点(X0,Y0),プラテンの
Y軸に対するシール材の縦軸の傾き,及びシール材表面のトンボ1,2間の設定距
離に対する実測距離の比率に合わせて,前記記憶手段に記憶させたシールの輪郭の
カットデータを改変する改変手段とを備え」ているのに対し,引用発明2は,複数
のマークが「印刷開始位置を示す開始位置マークSPと,印刷終了位置を示す終了
位置マークEP」であると共に,フォトセンサが「前記開始位置マークSPのX方
向の位置を検出する,開始位置マークSPの移動軌跡上に適宜手段で取着された」
フォトセンサと,「前記終了位置マークEPのX方向の位置を検出する,終了位置
マークEPの移動軌跡上に適宜手段で取付けられた」フォトセンサとであり,「該
センサで検知した開始位置マークSPと終了位置マークEPのX方向の位置から,
シート表面の開始位置マークSP,終了位置マークEP間の実距離を算出し,記憶
手段に記憶されたカットデータのSPからEPまでの距離が実距離に等しくなるよ
うに,前記記憶手段に記憶させた文字や図形の輪郭のカットデータを改変する改変
手段とを備え」ている点

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