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平成22(行ケ)10148審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成22年7月15日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告
対象物 介助機
法令 特許権
特許法171条2項5回
特許法174条1項1回
キーワード 審決24回
拒絶査定不服審判1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成9年8月20日,発明の名称を「介助機」とする発明について, 特許出願(特願平9−260785号)をしたが,平成17年3月15日に拒 絶査定がされ,これに対し,同年4月20日,不服の審判(不服2005−9 621号事件)を請求した。

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判決文

平成22年7月15日判決言渡
平成22年(行ケ)第10148号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成22年7月13日
判 決
原 告 X
被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 亀 丸 広 司
同 豊 永 茂 弘
同 紀 本 孝
同 小 林 和 男
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が再審2010−950001号事件について平成22年4月14日に
した審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成9年8月20日,発明の名称を「介助機」とする発明について,
特許出願(特願平9−260785号)をしたが,平成17年3月15日に拒
絶査定がされ,これに対し,同年4月20日,不服の審判(不服2005−9
621号事件)を請求した。
特許庁は,平成19年11月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との審決(以下「原審決」という。)をした。
原告は,平成19年12月24日,当庁に対し,原審決の取消しを求める訴
え(平成19年(行ケ)第10421号事件)を提起し,これに対し,当庁は,
平成20年6月26日,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
原告は,平成20年7月9日,上記判決を不服として上告(平成20年(行
ツ)第280号事件)を提起し,これに対し,最高裁判所は,平成21年1月
15日,上告を棄却し,原審決が確定した。
原告は,平成22年1月13日,原審決について再審(再審2010−95
0001号事件)の請求(以下「本件再審の請求」という。)をし,これに対
し,特許庁は,同年4月14日,「本件審判の請求を却下する。」との審決(以
下「審決」という。)をし,その謄本は,同年4月23日,原告に送達された。
2 審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。審決の判断の概要は,以下
のとおりである。
(1) 再審請求人は,原審決には虚偽の記述がある,無形偽造であり,刑法
156条所定の虚偽公文書作成罪(有印)に該当する疑いがある,と不服理
由を述べ,原審決には,民訴法338条1項4号及び同条2項所定の再審の
事由があると主張する。
(2) しかし,再審事由となる,特許法171条2項が準用する民訴法33
8条1項4号にいう「職務に関する罪」として,再審請求人が主張する刑法
156条所定の虚偽公文書作成罪については,公訴が提起されたものではな
く,まして有罪の判決又は過料の裁判が確定したものではない。さらに,証
拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決又は過料の確定裁判を
得ることができないとの事実が明らかにされたものでもない。そうすると,
再審請求人が再審事由として主張する事由は,特許法171条2項が準用す
る民訴法338条2項の規定に適合しないから,本件再審の請求は,不適法
なものとして,却下すべきものである。
第3 当事者の主張
1 取消事由に係る原告の主張
取消事由に係る原告の主張は, 「平成22年6月10日付け準備書面
別紙 (第
1回)」写し記載のとおりである。
2 被告の反論
取消事由に係る被告の反論は, 「平成22年6月21日付け準備書面
別紙 (第
1回)」写し記載のとおりである。
第4 当裁判所の判断
1 原告は,「原審決には虚偽の記述がある。無形偽造であり,刑法156条所
定の虚偽公文書作成罪(有印)に該当する疑いがある。よって,原審決には,
民訴法338条1項4号及び同条2項所定の再審の事由がある。そうであるの
に,審決は本件再審の請求を却下したから取り消されるべきである。」旨主張
する。
しかし,原告の主張は,採用の限りでない。その理由は,次のとおりである。
(1) 原告は,再審の事由として,特許法171条2項が準用する民訴法3
38条1項4号(「判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を
犯したこと。」)に該当する事由が原審決について存在する旨主張する。
ところで,民訴法上の再審の訴えにおいては,民訴法338条1項4号に
掲げる事由がある場合においては,「罰すべき行為について,有罪の判決若
しくは過料の裁判が確定したとき,又は証拠がないという理由以外の理由に
より有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限
り,再審の訴えを提起することができる。」(民訴法338条2項)と定め
られており,この要件は,再審の訴えを,再審事由の存在する蓋然性が顕著
な場合に限定して濫訴の弊害を防止しようとする趣旨によるものであると解
されるから,この要件を欠くときには,再審の訴え自体が不適法となり,同
条1項4号の再審事由自体の有無の判断に立ち入るまでもなく,再審の訴え
は却下を免れないものであると解される(最高裁判所昭和44年(オ)第7
93号昭和45年10月9日第二小法廷判決参照)。
そうすると,拒絶査定不服審判の確定審決に対する再審についても,これ
と同様に,特許法171条2項により準用される民訴法338条2項の要件
を欠くときには,再審の請求自体が不適法となり,同条1項4号の再審事由
自体の有無の判断に立ち入るまでもなく,再審の請求は,却下を免れないも
のであると解される。
(2) これを本件についてみると,原告が主張する原審決に係る民訴法33
8条1項4号にいう「職務に関する罪」に関しては,「有罪の判決若しくは
過料の裁判が確定した」ものではないことについて,当事者間に争いがない。
また,「証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過
料の確定裁判を得ることができないとき」に当たると認めるに足りる証拠も
ない。そうすると,本件再審の請求は,特許法171条2項が準用する民訴
法338条第2項の適法性要件を欠くものであるといわざるを得ない。
(3) よって,本件再審の請求は,「不適法な審判の請求であって,その補
正をすることができないもの」として,審決をもってこれを却下するのが相
当である(特許法174条1項,135条)。よって,これと同旨の審決に
誤りはない。
(4) これに対し,原告は,平成21年1月15日に原審決が確定した後再
審の理由を知った日から30日以内に再審の請求をしているが,その30日
の期間内に,罰すべき行為について,訴えを提起し確定判決に至ることは,
判決が有罪であるか無罪であるかを問わず,時間的に不可能であるから,本
件の場合は,「証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若し
くは過料の確定裁判を得ることができないとき」(民訴法338条2項)に
当たる旨主張する。
しかし,原告の主張は,採用の限りでない。すなわち,再審請求人が上訴
後に罰すべき行為の存在を知り,その有罪判決が確定したような場合には,
有罪判決が確定したことを知った日から30日の再審請求期間が起算され,
原告指摘のような不都合は生じないものと解されるから,本件の場合が「証
拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁
判を得ることができないとき」に当たると解すべきであるとする原告の主張
は,採用の限りでない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも理由が
なく,前記判断を左右するに足りない。
2 結論
以上のとおり,原告の主張は理由がないから,原告の請求を棄却することと
し,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯 村 敏 明
裁判官
齊 木 教 朗
裁判官
武 宮 英 子

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