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平成21(行ウ)559情報非開示処分取消等請求事件

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裁判所 却下 東京地方裁判所
裁判年月日 平成22年2月4日
事件種別 民事
当事者 被告
原告
法令 特許権
特許法186条1項2回
キーワード
主文 1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 事案の概要 本件は,原告が,平成19年に特許庁に対し特許出願を行ったものの,原告 において,その出願書類の控え等を紛失し出願番号が不明であるため同特許出 願が存在することを確認する証明等の発行を受けられないとして,被告に対し, その証明等の発行を求めるとともに,同特許出願について「通常的な審査手続 への復帰に必要とする手続」をすることを求めた事案である。

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判決文

平成22年2月4日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成21年(行ウ)第559号 情報非開示処分取消等請求事件
口頭弁論終結日 平成21年12月22日
判 決
東京都板橋区<以下略>
原 告 A
東京都千代田区<以下略>
被 告 国
処 分 行 政 庁 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 竹 田 真
同 増 田 勝 義
同 市 川 勉
同 門 奈 伸 幸
同 天 道 正 和
主 文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,平成19年(2007年)中に原告のした,正時制御乳
房懸垂装置付婦人用ボディスーツを内容とする特許出願につき,
(1) 特許庁の所管する特許出願の登録される電子データベース上において当該の
特許出願の存在することの確認の証明を,出願人である原告に対して発行せよ。
(2) 当該の特許出願の正本の謄写を,出願人である原告に対して発行せよ。被告
がこれをもって(1)の代替とすることができると証する場合には,(1)の確認の
証明の発行は不要としても良い。
(3) (1)又は(2)又はその両方の原告に対する発行時点における,当該の特許出願
の登録に関する記録及び関する更新記録の全覧又はその写しを,更新の有無に
かかわらず,出願人である原告に対して発行せよ。
(4) 当該の特許出願が本訴訟に基づいて行われる調査の時点で特許庁の所管する
特許出願の登録される電子データベース上において存在しない場合,当該の特
許出願の登録に関する記録及び関する更新記録の全覧又はその写しを,出願人
である原告に対して発行せよ。
(5) その他,被告は出願人である原告が当該の特許出願の通常的な審査手続への
復帰に必要とする手続をせよ。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,原告が,平成19年に特許庁に対し特許出願を行ったものの,原告
において,その出願書類の控え等を紛失し出願番号が不明であるため同特許出
願が存在することを確認する証明等の発行を受けられないとして,被告に対し,
その証明等の発行を求めるとともに,同特許出願について「通常的な審査手続
への復帰に必要とする手続」をすることを求めた事案である。
2 法令の定め
(1) 特許法186条1項は,何人も,特許庁長官に対し,特許に関し,証明,
書類の謄本若しくは抄本の交付等の請求をすることができる旨規定している。
(2) 工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(以下「特例法」とい
う。)12条2項は,何人も,特許庁長官に対し,特例法2条1項の特許庁
の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されている事項を記載
した書類の交付の請求をすることができると規定している。
第3 当事者の主張
1 原告の主張
(1) 原告は,平成19年9月20日又は同月21日ころに,特許庁に対して,
正時制御による乳房懸垂装置付きの婦人用ボディスーツを内容とする特許出
願(以下「本件特許出願」という。)を行った。その後,原告は,本件特許
出願につき,同年末から平成20年初頭にかけて,特許庁において,出願後
の形式審査を経た正本が電子化されて特許庁所管の特許出願データベースに
登録される手続が完了したことを確認しようとしたところ,出願書類の控え,
出願料納付に係る特許印紙購入の領収書,出願の電子化手続料払込みの連絡
証票兼領収書等,関連書類一式を紛失していることに気がついた。
原告は,特許庁に対して,平成20年4月期と8月期の2度にわたり,デ
ータベース上の正本を閲覧して本件特許出願が記録されていることを確認し
て通常の審査手続に入るよう依頼したが,これらは受け入れられなかった。
特許出願は,本審査に入らないまま出願から3年を経過するとみなし取下
げになり出願人の権利が失われるので,原告は,正本の存在及びその内容に
誤りのないことを確認し,出願人の地位と権利を回復するため,本訴を提起
した。
(2) 被告は,請求の趣旨(1)ないし(4)に関し,原告において書類の交付請求を
行っていないため,訴えの要件を欠くと主張する。
しかしながら,書類の交付請求に際しては,少なくとも請求を行う出願人
を識別するための識別番号と,請求対象となる出願の出願番号の両方が必要
とされているところ,原告は,本件特許出願につき関係書類を紛失したため
に出願番号が不明となっている。原告は,特許庁の相談窓口で窮状を訴えた
にもかかわらず,書類の交付請求を行うための手段について一切の教示を受
けられなかったために,本訴提起に至ったものである。
したがって,原告の訴えの当該部分については,申請型の処分の義務付け
の訴えというよりは,非申請型の処分の義務付けの訴えにむしろ近いと認識
されるべきであるから,行政事件訴訟法3条6項2号が適用される旨の被告
の主張は適切ではない。
(3) 被告は,請求の趣旨(5)に関し,原告からの本件特許出願がされていない
こと,存在しない特許出願に対する処分等を行う権限は特許庁長官に存しな
いことを主張する。
しかしながら,以前に原告がキーボードに関する別件の特許出願を誤って
重複して出願した際,特許庁は,先の出願について跡形もなく存在していな
いと回答するなどしており,全く合理性や遵法性が見られないことから,本
件特許出願が存在しないとする被告の主張には信憑性がない。
2 被告の主張
(1) 請求の趣旨(1)ないし(4)について
請求の趣旨(1)ないし(4)の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2
号所定の申請型の処分の義務付けの訴えであり,「行政庁に対し一定の処分
を求める旨の法令に基づく申請がされた場合」であることが必要である。原
告は,本件訴えを提起するに当たり,本件各書類の交付請求をしていないの
であるから,当該訴えは不適法である。
(2) 請求の趣旨(5)について
請求の趣旨(5)の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号所定の非
申請型の処分の義務付けの訴えであり,行政庁が当該処分をする法令上の権
限を有していることが所与の訴訟要件とされているものと解される。
原告は,平成19年9月20日又は同月21日に本件特許出願を行ったと
主張する。しかしながら,特許庁の運用として,特許出願がされた場合,す
べての特許出願がファイルに記録・保存されることになっているにもかかわ
らず,被告がファイルを検索しても,本件特許出願に係る記録を確認するこ
とはできない。また,原告は,本件特許出願に係る控えを一切持っていない。
これらのことからすれば,原告は本件特許出願をしていないものと思われる。
このように,原告が本件特許出願を行ったことを認めるに足りる証拠はな
く,特許庁長官は,本件特許出願に関し,原告の求める「通常的な審査手続
への復帰に必要とする手続」をする法令上の権限を有していないから,当該
訴えは不適法である。
第4 当裁判所の判断
1 原告の請求は,原告がしたとする「正時制御乳房懸垂装置付婦人用ボディス
ーツ」を内容とする特許出願(本件特許出願)について,同出願が存在するこ
との確認の証明の発行(請求の趣旨(1)),同出願に係る正本の謄写(謄本の趣
旨と解される。)の発行(請求の趣旨(2)),同出願に係る登録に関する記録及
び更新記録の閲覧又は謄本の発行(請求の趣旨(3)及び(4)),同出願に係る通
常的な審査手続への復帰に必要な手続を行うこと(請求の趣旨(5))を求めるも
のと解される。
2 請求の趣旨(1)ないし(4)に係る請求について
(1) 当該訴えが行政事件訴訟法の定めるいかなる類型の訴えに当たるかについ
て,原告の主張は必ずしも明確ではないが,「非申請型の処分の義務付けの
訴えにむしろ近いと認識されるべきである」と主張していることから,同法
3条6項1号に規定する訴えであるとの主張と解される。
しかしながら,原告が発行を求める各書類は,本件特許出願が存在するの
であれば特許法186条1項,特例法12条2項に基づき交付請求を行うこ
とができるものと解される。このように法令において原告の求める各書類の
交付を求めるための申請権が認められている以上,この申請権を行使するこ
とで一定の処分を求める機会が与えられているのであるから,出願番号が不
明であるとの事情を考慮しても,「損害を避けるため他に適当な方法がない
とき」(行政事件訴訟法37条の2第1項)に該当すると認めることはでき
ず,上記の訴えは不適法といわざるを得ない。
(2) また,上記の訴えを行政事件訴訟法3条6項2号に定める義務付けの訴え
と解したとしても,原告が特許法又は特例法に基づく各書類の交付申請を行
ったことの主張立証はないから,「行政庁に対し一定の処分又は裁決を求め
る旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合」(行政事件訴訟法3条
6項2号)に該当せず,上記の訴えは不適法である。
(3) 以上のとおり,請求の趣旨(1)ないし(4)に係る請求は,不適法である。
3 請求の趣旨(5)に係る請求について
原告は,被告に対し,本件特許出願に係る通常的な審査手続への復帰に必要
な手続を行うことを求めているところ,かかる訴えは,行政事件訴訟法3条6
項1号に定める義務付けの訴えに該当するものと解される。
しかしながら,本件に表れた一切の事情を考慮しても,原告が本件特許出願
を行ったことを認めることができず,原告が「処分をすべき旨を命ずることを
求めるにつき法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法37条の2第3項)
であると認めることはできないから,原告は,上記の訴えにつき原告適格を欠
くものといわざるを得ない。
したがって,請求の趣旨(5)に係る請求は,不適法である。
4 結論
よって,本件訴えは,いずれも不適法であるから,これを却下することとし,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿 部 正 幸
裁判官 山 門 優
裁判官 舟 橋 伸 行

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