平成21(行ケ)10057審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成21年12月21日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告株式会社友企画 原告X株式会社
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法令 |
商標権
商標法4条1項7号14回 商標法4条1項2回 商標法4条1項15号1回
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キーワード |
審決14回 許諾10回 商標権8回 無効5回 無効審判2回 拒絶査定不服審判1回
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主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯
被告は,別紙1のとおり「TeddyBear」の文字を横書きしてなり,
指定商品を第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス,木製・竹製
」, 「 , , ,又はプラスチック製の包装用容器 第24類 布製身の回り品 かや 敷布
布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布 ,第25類「被服,仮装用」
衣服」とする登録第5114425号商標(平成19年6月26日登録出願,
平成20年1月29日登録査定,同年2月29日設定登録。以下「本件商標」
という )の商標権者である。。
原告は,平成20年6月10日,被告を被請求人とし,本件商標の商標登録
が商標法4条1項7号の規定に違反してされたことを理由として,同法46条
1項1号に基づき,本件商標の無効審判を請求した(無効2008−8900
52号 。)
特許庁は,平成21年2月16日 「本件審判の請求は,成り立たない 」, 。
との審決(以下「審決」という )をし,その謄本は,同月26日,原告に送。
達された。 |
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判決文
平成21年12月21日 判決言渡
平成21年(行ケ)第10057号 審決取消請求事件
平成21年10月28日 口頭弁論終結
判 決
原 告 X 株 式 会 社
被 告 株 式 会 社 友 企 画
訴訟代理人弁理士 曾 我 道 治
同 岡 田 稔
同 坂 上 正 明
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2008−890052号事件について平成21年2月16日
にした審決を取り消す。
第2 争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
被告は,別紙1のとおり「TeddyBear」の文字を横書きしてなり,
指定商品を第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス,木製・竹製
又はプラスチック製の包装用容器」 第24類「布製身の回り品,かや,敷布,
,
布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」,第25類「被服,仮装用
衣服」とする登録第5114425号商標(平成19年6月26日登録出願,
平成20年1月29日登録査定,同年2月29日設定登録。以下「本件商標」
という。)の商標権者である。
原告は,平成20年6月10日,被告を被請求人とし,本件商標の商標登録
が商標法4条1項7号の規定に違反してされたことを理由として,同法46条
1項1号に基づき,本件商標の無効審判を請求した(無効2008−8900
52号)。
特許庁は,平成21年2月16日 ,「本件審判の請求は,成り立たない 。」
との審決(以下「審決」という 。)をし,その謄本は,同月26日,原告に送
達された。
2 審決の理由の要点
別紙審決書写しのとおりであり,要するに,本件商標は,商標法4条1項7
号に該当せず,
その商標登録は同号の規定に違反してされたものではないから,
同法46条1項1号に基づいて本件商標の商標登録を無効にすることはできな
いとするものである。
審決の商標法4条1項7号該当性についての認定,判断の要点は,次のとお
りである。
(1) 辞書等の記載によれば, teddy bear」の語は,米国第26代大統領セ
「
オドア・ルーズベルトが1902年に狩猟中に一匹の小熊を追い詰めたが撃
たずに助けたというエピソードに由来する語であり,英米では「独特の形を
した小熊のぬいぐるみ」を意味する語として知られているものといえる。そ
して,「テディベアー」の語は,現在においては,我が国においても「独特
の形をした小熊のぬいぐるみ」を意味する語として知られているといえるも
のの,上記のセオドア・ルーズベルトにまつわるエピソードについてはそれ
程知られていないというべきであり,これを商標として登録することが,直
ちに上記ルーズベルト元大統領のエピソードに便乗するものとはいえない。
「テディベアー」の語が「独特の形をした小熊のぬいぐるみ」を意味する
語として認識されていたとしても,これを自己の商品について自由に使用で
きるのはせいぜい商品としての「ぬいぐるみ」についてであって,それ以外
の商品については自他商品を識別する商標として誰でも選択・使用すること
ができる状態にあったというべきである。
また,本件商標の登録出願時及び登録査定時において ,「独特の形をした
,
小熊のぬいぐるみ」が「teddy bear」 「テディベアー」として,例えば,米
国を象徴する存在となっている,米国民の重要な文化的資産として認識され
ているなどの事実を示す証拠はない。
(2) 本件商標を構成する文字自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若し
くは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであるし,他
の法律等によってその使用が禁止されているものでもない。
そして,前記の事情からすれば,本件商標が米国若しくは米国民を侮辱
し,又は一般に国際信義に反するものとは認められないばかりでなく,本件
商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めること
が商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないということも
できない。
したがって,本件商標は,公正な競争秩序又は公平の観念に反するもので
はなく,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とは認められな
い。
第3 取消事由に関する原告の主張
審決は,本件商標が商標法4条1項7号に該当せず,その商標登録は同号の
規定に違反してされたものではないと判断した点に誤りがあるから,違法とし
て取り消されるべきである。その理由は,以下のとおりである。
1 商標法4条1項7号該当性の判断基準
商標法4条1項7号該当性は,「7号に規定する『公序良俗』とは,一国に
おけるその時代の社会通念に従って,商標を指定商品又は指定役務に独占的に
使用することが社会公共の利益に反するかどうかによって,取引の実情を通じ
て判断されるべき相対的な概念であり,また特定の国又は国民を侮辱するよう
な商標や国際信義に反するような商標も,この規定に該当するものと解する」
との見解にしたがった判断基準によるべきである。また,「商標法4条1項7
号に該当する商標とは,商標の表示自体が公の秩序又は善良な風俗を害するお
それがあるものや,商標を使用することが社会公共の利益に反する場合に限定
されるものではなく,それを採択し権利化する行為が穏当でなく,国際信義に
反すると認められる場合においても,当該行為に係る商標は公正な取引秩序を
乱し公の秩序を害するものに該当すると解しても差し支えないというべきであ
る。」との見解を尊重すべきである。
2 被告又はそのライセンシーによる本件商標を用いた不正な販売方法
被告は,株式会社ドウシシャ(以下「ドウシシャ」という。)に本件商標の
使用を許諾し,多額の使用料を得ている。ドウシシャは , TEDDY BEAR」と
「
いう文字を付した商品に「 SINCE 1902」との文字を表示し,セオドア・ルー
ズベルトが小熊を助けたという逸話を連想させ,その商品が著名なセオドア・
ルーズベルトに関係のあるような印象を与えてその販売を行っており,被告又
はそのライセンシーは,不正な販売方法を採っている。
3 テディベア( テディーベア」 「テディベアー」 「テディ・ベア」 「テディ
「 , , ,
ー・ベア」「テディ・ベアー」を含む。以下,同じ 。
, )の著名性
(1) 辞典,雑誌,書籍等の記載等
ア 英和辞典
(ア) 「teddy bear」「 Teddy Bear」「TEDDY BEAR」など大文字を含
( ,
めた表記のものを含む。以下,同じ。 の項目が掲載された英和辞典は ,
)
次のとおりである。
① 「ユニコン英和辞典」 株式会社文英堂 2003年 平成15年)
(
発行
② 「パーソナル英和辞典」第2版 株式会社学習研究社 2003年
(平成15年)発行
③ 「ワードパワー英英和辞典」 株式会社増進会出版社 2003年
(平成15年)発行
④ 「小学館−ケンブリッジ英英和辞典」 株式会社小学館 2004
年(平成16年)発行
⑤ 「Eゲイト英和辞典」 株式会社ベネッセコーポレーション 20
05年(平成17年)発行
⑥ 「ルミナス英和辞典」第2版 株式会社研究社 2006年(平成
18年)発行
⑦ 「ロングマン英和辞典」 株式会社ピアソン・エデュケーション
2007年(平成19年)発行
⑧ 「ニューヴィクトリーアンカー英和辞典」第2版 株式会社学習研
究社 2007年(平成19年)発行
⑨ 「エクスプレスEゲイト英和辞典」 株式会社ベネッセコーポレー
ション 2007年(平成19年)発行
⑩ 「コンサイス英和辞典」第13版 株式会社三省堂 2007年 平
(
成19年)発行
⑪ 「デイリーコンサイス英和・和英辞典」第6版 株式会社三省堂
2008年(平成20年)発行
⑫ 「アンカーコズミカ英和辞典」 株式会社学習研究社 2008年
(平成20年)発行
⑬ 「ジュニア・アンカー英和辞典 英単語表つき」第4版 株式会社
学習研究社 2008年(平成20年)発行
⑭ 「ジュニア・アンカー英和辞典」第4版 株式会社学習研究社 2
008年(平成20年)発行
⑮ 「スーパー・アンカー英和辞典」第3版 株式会社学習研究社 2
008年(平成20年)発行
⑯ 「ライトハウス英和辞典 」第5版 株式会社研究社 2008年 平
(
成20年)発行
「teddy bear」の項目にセオドア・ルーズベルトに関する逸話が掲載
されている英和辞典は,次のとおりである。
⑰ 「現代英和辞典」 株式会社研究社 1995年(平成7年)発行
⑱ 「新グローバル英和辞典 」第2版 株式会社三省堂 2001年 平
(
成13年)発行
⑲ 「小学館ランダムハウス英和大辞典」第2版 株式会社小学館 2
002年(平成14年)発行
⑳ 「旺文社レクシス英和辞典」 株式会社旺文社 2003年(平成
15年)発行
○
21 「旺文社新英和中辞典」 株式会社旺文社 2003年(平成15
年)発行
○
22 「プログレッシブ英和中辞典」第4版 株式会社小学館 2005
年(平成17年)発行
○
23 「ユースプログレッシブ英和辞典」 株式会社小学館 2005年
(平成17年)発行
○
24 「フェイバリット英和辞典」第3版 東京書籍株式会社 2006
年(平成18年)発行
○
25 「ビーコン英和辞典」第2版 株式会社三省堂 2006年(平成
18年)発行
○
26 「リーダーズ英和中辞典」 株式会社研究社 2006年(平成1
8年)発行
○
27 「ウィズダム英和辞典」第2版 株式会社三省堂 2007年(平
成19年)発行
○
28 「初級クラウン英和辞典」第11版 株式会社三省堂 2007年
(平成19年)発行
○
29 「グランドセンチュリー英和辞典」第2版 株式会社三省堂 20
08年(平成20年)発行
○
30 「ポケットプログレッシブ英和辞典」第3版 株式会社小学館 2
008年(平成20年)発行
○
31 「アドバンストフェイバリット英和辞典」 東京書籍株式会社 2
008年(平成20年)発行
○
32 「新英和中辞典」第7版 株式会社研究社 2008年(平成20
年)発行
○
33 「ベーシックジーニアス英和辞典」 株式会社大修館書店 200
8年(平成20年)発行
○
34 「ジーニアス英和辞典」第4版 株式会社大修館書店 2008年
(平成20年)発行
○
35 「プラクティカルジーニアス英和辞典」 株式会社大修館書店 2
008年(平成20年)発行
○
36 「オーレックス英和辞典」 株式会社旺文社 2008年(平成2
0年)発行
○
37 「アルファフェイバリット英和辞典」 東京書籍株式会社 200
8年(平成20年)発行
○
38 「コアレックス英和辞典」 株式会社旺文社 2008年(平成2
0年)発行
(イ) 原告が調べた英和辞典において , teddy bear」が掲載されていな
「
いものはなく,セオドア・ルーズベルトに関する逸話が掲載されている
ものは6割以上であった。したがって ,「テディベア」の語やセオドア
・ルーズベルトと小熊の逸話は,我が国においても周知であった。
イ 国語辞典等
(ア) 「テディベア」の項目が掲載されている国語辞典は,次のとおりで
ある。
① 「大辞泉」 株式会社小学館 1995年(平成7年)発行
② 「大きな活字の三省堂国語辞典」第5版 株式会社三省堂 200
1年(平成13年)発行
③ 「日本国語大辞典」第2版 株式会社小学館 2001年(平成1
3年)発行
④ 「大辞林」第3版 株式会社三省堂 2006年(平成18年)発
行
⑤ 「現代新国語辞典」第3版 株式会社三省堂 2007年(平成1
9年)発行
「テディベア」の項目が掲載されているカタカナ語辞典は,次のとお
りである。
⑥ 「大きな活字のコンサイスカタカナ語辞典」 株式会社三省堂 1
995年(平成7年)発行
⑦ 「最新カタカナ用語『読む見る』事典」 株式会社講談社 199
8年(平成10年)発行
⑧ 「角川モバイル カタカナ語辞典」 株式会社角川書店 2000
年(平成12年)発行
⑨ 「カタカナ語・略語辞典 」第3版 株式会社旺文社 2000年 平
(
成12年)発行
⑩ 「コンサイスカタカナ語辞典」第2版 株式会社三省堂 2000
年(平成12年)発行
⑪ 「日経新聞を読むためのカタカナ語辞典」 株式会社三省堂 20
01年発行
⑫ 「大きな字のカタカナ新語実用事典」 株式会社学習研究社 20
02年(平成14年)発行
⑬ 「用例でわかるカタカナ新語辞典」 株式会社学習研究社 200
3年(平成15年)発行
⑭ 「マスコミに強くなるカタカナ新語辞典」第6版 株式会社学習研
究社 2004年(平成16年)発行
⑮ 「カタカナ外来語/略語辞典」全訂版 株式会社自由国民社 20
06年(平成18年)発行
⑯ 「朝日新聞のカタカナ語辞典」 朝日新聞社 2006年(平成1
8年)発行
⑰ 「用例でわかるカタカナ新語辞典」改訂第2版 株式会社学習研究
社 2007年(平成19年)発行
⑱ 「大きな字のカタカナ新語辞典」第2版 株式会社学習研究社 2
009年(平成21年)発行
(イ) 日本人は,国語辞典を引く回数よりも英和辞典を引く回数が多く ,
また,外来語は国語辞典ではなくカタカナ語辞典などの外来語辞典に収
録されているから,国語辞典に「テディベア」という語が掲載されてい
ないとしても,「テディベア」という語が知られていなかったとはいえ
ない。
ウ 雑誌
(ア) 次の雑誌には,「テディベア」に関する記載がある。
① 「ノンノ」通巻285号 株式会社集英社 昭和58年10月20
日発行
② 「ノンノ」通巻294号 株式会社集英社 昭和59年3月20日
発行
③ 「ノンノ」通巻296号 株式会社集英社 昭和59年4月20日
発行
④ 「ノンノ」通巻312号 株式会社集英社 昭和59年12月20
日発行
⑤ 「ノンノ」通巻317号 株式会社集英社 昭和60年3月20日
発行
⑥ 「ノンノ」通巻325号 株式会社集英社 昭和60年7月20日
発行
⑦ 「ノンノ」通巻334号 株式会社集英社 昭和60年12月5日
発行
⑧ 「an an」通巻510号 株式会社マガジンハウス 昭和61
年1月10日発行
⑨ 「メンズ ノンノ」第1巻第7号 株式会社集英社 昭和61年1
2月1日発行
⑩ 「ノンノ」通巻406号 株式会社集英社 昭和64年2月5日発
行
⑪ 「オレンジページ」 平成3年10月17日発行
⑫ 「ノンノ」通巻473号 株式会社集英社 平成3年12月20日
発行
⑬ 「DIME」23号 株式会社小学館 平成4年12月3日発行
⑭ 「ノンノ」通巻495号 株式会社集英社 平成4年12月5日発
行
(イ) 上記の雑誌の紹介記事の内容から,「テディベア」が若い世代に
受け入れられていたことがうかがえる 。「ノンノ」は120万部発行さ
れ,300万人ないし500万人がこれを見たと考えられる。
エ 新聞
1993年(平成5年)11月3日の毎日新聞には,テディベアについ
ての記事が掲載されており,1984年(昭和59年)に東京に初のテデ
ィベア専門店が開店したことなどが記載されている。
オ 書籍
(ア) テディベアをテーマとした童話・絵本,カタログ等,漫画は,次
のとおりである。
a 童話・絵本
① 「英語のべんきょう テディの一日」 稲村松雄監修 株式会社
小学館 昭和46年4月1日発行
② 「くまのテディ・ロビンソン」ジョーン・G・ロビンソン著 福
音館書店 昭和54年(1979年)5月20日発行
③ 「テディ・ロビンソン まほうをつかう」ジョーン・G・ロビン
ソン著 福音館書店 昭和55年(1980年)9月30日発行
④ 「おやすみ,テディベア」赤川次郎著 株式会社光文社 昭和5
7年11月25日発行
⑤ 「うみへ いこうよ」(テディベアのえほん1)スザンナ・グレ
ッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)8月10日発行
⑥ 「ひっこし おおさわぎ」(テディベアのえほん2)スザンナ・
グレッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)8月30日発行
⑦ 「雨の日の うちゅうせんごっこ」(テディベアのえほん3)ス
ザンナ・グレッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)10月
5日発行
⑧ 「かいもの いっぱい 」(テディベアのえほん4)スザンナ・グ
レッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)10月30日発行
⑨ 「おいしい おりょうり」(テディベアのえほん5)スザンナ・
グレッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)12月15日発
行
⑩「かぞえてみよう 1・2・3」(テディベアのえほん6)スザン
ナ・グレッツ作 岩崎書店 昭和60年(1985年)2月5日発
行
⑪ 「ABCであそぼう」(テディベアのえほん7)スザンナ・グレ
ッツ作 岩崎書店 昭和60年(1985年)2月5日発行
⑫ 「かぜ ひいちゃった 」(テディベアのえほん8)スザンナ・グ
レッツ作 岩崎書店 昭和60年(1985年)3月5日発行
⑬ 「おやすみ,テディ・ベア 」(上)赤川次郎著 株式会社角川書
店 昭和60年12月25日発行
⑭ 「おやすみ,テディ・ベア 」(下)赤川次郎著 株式会社角川書
店 昭和60年12月25日発行
⑮ 「おやすみ,テディ・ベア 」(上)赤川次郎著 株式会社光文社
昭和61年12月20日発行
⑯ 「おやすみ,テディ・ベア 」(下)赤川次郎著 株式会社光文社
昭和61年12月20日発行
b カタログ等
① 「テディベア」 株式会社雄鶏社 昭和59年5月30日発行
② 「テディベアとかくれんぼ」 株式会社雄鶏社 昭和59年12
月25日発行
③ 「テディベアカタログ」 株式会社雄鶏社 昭和60年1月10
日発行
④ 「テディベアのワードローブ」 株式会社雄鶏社 昭和60年発
行
c 漫画
① 「テディ・ベア①」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和5
4年1月20日発行
② 「テディ・ベア②」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和5
4年8月5日発行
③ 「テディ・ベア③」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和5
5年3月25日発行
④ 「テディ・ベア④」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和5
5年11月15日発行
⑤ 「テディ・ベア⑤」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和5
8年12月10日発行
⑥ 「ベア」赤川次郎原作 株式会社光文社 昭和58年11月発行
(イ) このようにテディベアをテーマとした童話・絵本,カタログ等,
漫画が発行されていたことから,テディベアは,幼児,小中学生,若者
を中心に広く知られていた。
カ レコード
次のレコードに収録された曲の題名及び歌詞には,「テディベア」とい
う語が含まれていた。
① 「テディベアの頃−少女の香り−」 株式会社キャニオン・レコード
昭和60年10月21日発売
② 「シニフィエ」 昭和58年10月21日発売
これらのレコードは,当時若者に人気の高かった歌手,作詞者,作曲者
によるものであった。
キ テレビ番組
前記オ(ア)a⑬ないし⑯の小説をテレビドラマ化した「赤川次郎のお
やすみ,テディベア」という題名の作品が,TBSにより,昭和58年8
月9日放送された。
ク テディベア博物館等
平成21年3月現在,我が国に,熊のぬいぐるみやテディベア関係の資
料等を展示する博物館(テディベア博物館又はテディベア美術館など)が
12件存在し,テディベアの愛好家等により構成される日本テディベア協
会(会員数3000人,加盟店61店,加盟企業47社,加盟美術館10
件)が活動を行っている。
(2) 以上によれば ,「テディベア」の語及びその由来であるセオドア・ル
ーズベルトの逸話は,本件商標の登録査定時に我が国において著名であった 。
4 被告の行為と国際信義
米国のセオドア・ルーズベルト協会は,セオドア・ルーズベルト元大統領の
偉業を称えるために1907年に設立された公的団体である。原告は,米国の
セオドア・ルーズベルト協会より,「日露戦争終結100周年記念」のための
記念品の製造,販売を依頼され, ROOSEVELT TEDDY BEAR」との文字を付
「
したタオル類の製造,販売を瀧定大阪株式会社(以下「瀧定大阪」という。)
に委託したところ,被告が代理人弁護士を通じて,瀧定大阪に対し,本件商標
及び別件商標(商標登録第1953147号)の商標権に基づき,商品販売中
止と商品の破棄を求める内容証明郵便を送付し,瀧定大阪は,紛争を恐れ,商
品のすべてを回収・破棄し,数千万円の損害が発生し,原告の得べかりし利益
は失われ,原告の信用は毀損された。被告が,本件商標に係る商標権を有して
いることにより,米国のセオドア・ルーズベルト協会の活動を妨害し,得べか
りし利益を失わせることは,国際信義に反する行為である。
セオドア・ルーズベルト協会は, teddy bear」に対して知的財産権を有して
「
おり,原告は,同協会から「teddy bear」の名称等の使用許諾を受け,その許
諾に基づく商品化の同意を得ており,原告が我が国で「Teddy Bear Roosevelt」,
「Roosevelt Teddy Bear」,その他の関連商標の登録出願をすることにも同意を
得ており,原告は,同協会の代理人の立場で,被告が本件商標に係る商標権に
基づいて「テディベア」の語を独占することに反対している。
「テディベア」「Teddy Bear」の名称は,セオドア・ルーズベルトと小熊の
,
逸話に由来し,米国の誇る文化遺産といえるものであり,我が国においても広
く親しまれているから,その使用を一私企業が独占することは,日米両国の公
益を損なうおそれがあり,国際信義に反する。
5 「テディベア」の使用を独占させることの反社会性
セオドア・ルーズベルトが日露戦争の終結を仲裁したことから,セオドア・
ルーズベルト協会は,平成17年に日露戦争終結100周年の記念行事を行っ
たものであり,セオドア・ルーズベルト及び同人にまつわる逸話から生まれた
テディベアは,我が国との結びつきが強い。また,我が国には,前記3クの
とおり,日本テディベア協会,テディベア博物館(美術館)等があり,インタ
ーネットの「 Amazon」で販売されているテディベアに関する商品は合計20
3件見出される。テディベアは,前記3のとおり,本件商標の登録査定時に既
に著名であり,現在でも日本に定着しているから,被告が本件商標により「テ
ディベア」という語の使用を独占することを認めるべきではない。
「teddy bear」(又は「 Teddy bear」 「TeddyBear」 ,
, )「テディベア」(又は「テ
ディベアー」)という語を商標として登録し,それを特定の商標権者が独占す
ることは,セオドア・ルーズベルトの有名な逸話,又はテディベアの愛称をも
つ小熊のぬいぐるみの人気や著名性に便乗し,又は誰もが自己の商品にその テ
「
ディベア」等の名称を自由に使用できるという共通の認識を覆すことであり,
公正な競争秩序又は公平の観念に反する。
6 結論
以上のとおり,テディベアの著名性,被告又はそのライセンシーによる本件
商標の不正な使用,国際信義への配慮等に照らすならば,「テディベア」の使
用を被告に独占させるのは妥当でなく,本件商標は,商標法4条1項7号に該
当すると解すべきである。したがって,本件商標が商標法4条1項7号に該当
しないとした審決の判断には誤りがある。
第4 被告の反論
審決の認定,判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
1 「teddy bear」の語の由来については,セオドア・ルーズベルトの逸話以外
にも複数の説がある。小熊のぬいぐるみの人形は,ドイツの玩具会社シュタイ
フが「Bear PB55」として考案した。また,ヴィクトリア女王の長子であるエ
ドワード7世(愛称「テッド」)がロンドンの動物園の熊に興味を示したのが
「teddy bear」の語の由来であるとする説もある。セオドア・ルーズベルトの
大統領在職期間,シュタイフによる「Bear PB55」の完成時期,米国内での熊
のぬいぐるみの流行の時期が同じ時期に重なったことから, teddy bear」の語
「
の由来は,セオドア・ルーズベルトの逸話に特定することはできない。
2 「テディベア」「テディベアー」の項目は,2008年(平成20年)に発
,
行された「広辞苑第6版」において初めて国語辞典に掲載された。しかし, テ
「
ディベア」の語が,現在,我が国において,独特な形をした小熊のぬいぐるみ
を意味する語として知られているとしても,セオドア・ルーズベルトの逸話が,
我が国において知られているとはいえない。
3 「テディベア」という語によって表される独特な形をした小熊のぬいぐるみ
を最初に製作したのはドイツのシュタイフ社であり,同社は,見本市に出品す
る予定で,サーカスの熊にヒントを得て小熊のぬいぐるみを製作した。そして ,
「teddy bear」の語の由来には複数の説があり,セオドア・ルーズベルトの逸
話に特定することはできない。したがって ,「テディベア」は,米国の重要な
文化的所産とはいえないし,米国を象徴する存在であるとはいえない。
4 原告は,セオドア・ルーズベルト協会は, teddy bear」に対して知的財産権
「
を有している旨主張するとともに,原告は,同協会から「 teddy bear」の名称
等の使用許諾を受け,その許諾に基づく商品化の同意を得ており,原告が
「Teddy Bear Roosevelt」 「Roosevelt Teddy Bear」
, ,その他の関連商標の登録出
願を我が国の特許庁にすることにも同意を得ており,原告は,同協会の代理人
の立場で,被告が本件商標に係る商標権に基づいて「テディベア」の語を独占
することに反対していると主張する。
しかし,セオドア・ルーズベルト協会が「 teddy bear」に対して有するとい
う知的財産権の内容は明らかでなく,同協会が「teddy bear」の名称等に対し
て知的財産権を有するという主張は,誰もが自己の商品に「テディベア」等の
名称を自由に使用できるという共通の認識があるという原告の主張と矛盾す
る。
5 「teddy bear」「TEDDY BEAR」の文字は,米国において,セオドア・ルー
,
ズベルト協会以外の者によって,様々な指定商品について商標登録されており ,
同協会による出願,登録はない。 teddy bear」の文字は,米国大統領の愛称に
「
準ずる名称であればそのイメージを損ないかねない「使い捨ておむつ」を指定
商品としてさえ登録されており, teddy bear」が米国民共通の財産として公的
「
機関によって指定ないし保護されているとか,特定の個人がその名称を使用す
ることが米国政府によって制限されているという事実を示す証拠はない。
6 被告は,瀧定大阪に対し,代理人弁護士を通じて内容証明郵便を送付し,瀧
定大阪との間で,解決金の支払と引換えに瀧定大阪に在庫の販売を一定期間認
めることを合意した。瀧定大阪が商品のすべてを回収・破棄したことはない。
7 したがって,本件商標は商標法4条1項7号に該当せず,その商標登録は同
号の規定に違反してされたものではない。
第5 当裁判所の判断
1 はじめに
商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある
商標」については,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若し
くは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む商標が,これに該当
することは明らかである。
また,当該商標の構成に,そのような文字,図形等を含まない場合であって
も,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,①法律によっ
て禁止されていたり,②社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反
していたり,③特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反するこ
とになるなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に
該当すると解すべき余地がある。ただし,①商標法は,同法4条1項7号の外
に,同項各号の規定によって,公益との調整,既存の商標権者や既に同一又は
類似の商標を使用している者との利益調整など ,
さまざまな政策的な観点から ,
登録されるべきでない商標を具体的かつ網羅的に列挙していること,②公の秩
序又は善良の風俗を害するか否かの判断は,社会通念によって変化し,客観的
に確定することが困難であること等に照らすならば,当該商標の構成それ自体
ではなく,当該商標を使用することが,いわゆる公序良俗に反するとして同法
4条1項7号に該当するとされる場合は,自ずから限定して解釈されるべきも
のといえよう。
特に,商標法4条1項15号,19号等の各規定が置かれている趣旨に照ら
すと,単に,他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがある場合,
他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国におけ
る需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正
の目的をもって使用をするもののような場合は ,
それぞれ同法4条1項15号 ,
19号等に規定された各要件を充足するか否かによって,同法4条1項所定の
不登録事由の成否を検討すべきであって,そのような事実関係が存在すること
をもって当然に同法4条1項7号の不登録事由に該当すると解するのは妥当と
はいえない。
なお,同法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれが
ある商標」に該当するか否かの判断は,登録査定時(拒絶査定不服審判の審決
時)を基準とすべきである。
上記の観点を前提として,本件商標の同法4条1項7号該当性について,検
討する。
2 「テディベア」の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話の周知性に
ついて
原告は ,「テディベア」の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話が
我が国で周知であることを前提に,本件商標が商標法4条1項7号に該当する
と主張する。
そこで ,証拠(当審において提出された証拠を含む。 により , テディベア」
) 「
の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話の周知性について検討する。
(1) 甲1ないし甲23(審判において提出された証拠)の記載等
ア 書籍(児童文学事典)
「英米児童文学辞典 」(株式会社研究社 2001年(平成13年)4
月第1版第1刷発行,甲1)の「teddy bear」の項には , テディ・ベア(ク
「
マのぬいぐるみ ).この名はアメリカ大統領シオドア・ルーズベルト
(Theodore Roosevelt,1858-1919)が狩猟中にクマの子を見つけ,これを見
逃してやったエピソードが1902年11月の ワシントン・イヴニング』
『
(The Washington Evening)紙の漫画に載ったことから生まれた.子ども
向けの本で最も有名なテディ・ベアは クマのプーさん』 Winnie-the-Pooh)
『 (
で,この場合はエドワード・ベアの愛称.・・・」と記載されている。
「1902年11月にニューヨーク・タイムズ紙で紹介 それが
『TEDDY BEAR』のはじまりです」との表題の書面(甲7)には,「テデ
ィベアの歴史」(翻訳文)として,「1902年11月,セオドア・ルーズ
ベルト元大統領は友人達とミシシッピーに狩猟に出かけました。数時間も
歩き回りましたが,野生動物にはなかなか遭遇しません。ついに,一行は
一匹の小熊を追い詰め,取り囲みました。ガイドの一人が,ルーズベルト
大統領にその熊を撃つよう促しましたが,彼はそれを拒否しました。この
エピソードがルーズベルト元大統領の優しい行為として国中に広まりまし
た。それからまもなくして,有名な風刺漫画家であるクリフォード・K・
ベリーマンが,ルーズベルト大統領の熊を救ったエピソードを元に漫画に
し,それを見たある店の主人が自分の店で熊のぬいぐるみを作って販売す
る事を思いつきました。彼は自分の店で販売するぬいぐるみに『テディベ
ア』という名前を使わせてくれるようルーズベルト大統領に許可を求めま
した。現在この熊のぬいぐるみは テディベア』
『 として知られていますが,
これがルーズベルト大統領の愛称,『テディ・ルーズベルト』にちなんで
付けられた名前であることはあまり知られていません 。」と記載されてい
る。
イ 英和辞典
「ジーニアス英和辞典《改訂版》2色刷」(株式会社大修館書店 19
99年(平成11年)4月1日改訂版6版発行,甲2)の「Teddy」の項
には,《愛称》テディー(→ Theodore)
「 .∼ bear[しばしばt∼](縫いぐ
るみの )クマの人形《◆米国の第26代大統領 Theodore Roosevelt 《愛称》
(
Teddy)が猟で子グマを助けた漫画から;英米の子供はたいていこの種のも
のを1つは持っている》」と記載されている。
.
「小学館ランダムハウス英和大辞典」 株式会社小学館
( 1998年(平
成10年)1月10日第2版第6刷発行,甲3)の「 teddy bear」の項に
は 1縫いぐるみのクマ.
「 ・・・⇒ BEAR 2 10. 1907. ;Theodore Roosevelt
[ 米
の別称 Teddy にちなむ ;狩猟中,彼は子グマの命を助けてやったといわれ
ることから]」と記載されている。
ウ 国語辞典等
「広辞苑第6版 」(株式会社岩波書店 2008年(平成20年)1月
11日第6版第1刷発行)には,「テディー・ベア」の項目が掲載され,
「熊のぬいぐるみの一種。テディーは,狩猟好きのアメリカ大統領Tルー
ズヴェルト 愛称テディー)
( が木につながれた小熊の命を助けたという ワ
[
シントンポスト]紙の漫画に因む名。 と記載されている(弁論の全趣旨)
」 。
(2) 甲24ないし甲57,乙1ないし乙10(当審で提出された証拠)の
記載等
テディベアに関する記載等のある辞書,雑誌,新聞,書籍,レコード,テ
レビ番組,及び熊のぬいぐるみ等を展示するテディベア博物館の状況等は,
次のとおりである。
ア 英和辞典
甲29の1,甲29の2によれば,以下の英和辞典には, teddy bear」
「
の項目が掲載されていることが認められる。
① 「ユニコン英和辞典」 株式会社文英堂 2003年(平成15年)
3月1日初版第3刷発行
② 「パーソナル英和辞典」第2版 株式会社学習研究社 2003年 平
(
成15年)3月10日第2版発行
③ 「ワードパワー英英和辞典」 株式会社増進会出版社 2003年 平
(
成15年)3月10日初版第4刷発行
④ 「小学館−ケンブリッジ英英和辞典」 株式会社小学館 2004年
(平成16年)4月1日初版第1刷発行
⑤ 「Eゲイト英和辞典」 株式会社ベネッセコーポレーション 200
5年(平成17年)12月初版第12刷発行
⑥ 「ルミナス英和辞典」第2版 株式会社研究社 2006年(平成1
8年)12月第2版第3刷発行
⑦ 「ロングマン英和辞典」 株式会社ピアソン・エデュケーション20
07年(平成19年)2月1日初版第1刷発行
⑧ 「ニューヴィクトリーアンカー英和辞典」第2版 株式会社学習研究
社 2007年(平成19年)2月1日第3刷発行
⑨ 「エクスプレスEゲイト英和辞典」 株式会社ベネッセコーポレーシ
ョン 2007年(平成19年)3月初版発行
⑩ 「コンサイス英和辞典」第13版 株式会社三省堂 2007年(平
成19年)11月10日第13版第8刷発行
⑪ 「デイリーコンサイス英和・和英辞典」第6版 株式会社三省堂20
08年(平成20年)1月20日第6版第5刷発行
⑫ 「アンカーコズミカ英和辞典」 株式会社学習研究社 2008年 平
(
成20年)1月25日初版発行
⑬ 「ジュニア・アンカー英和辞典 英単語表つき」第4版 株式会社学
習研究社 2008年(平成20年)2月23日第4版第4刷発行
⑭ 「ジュニア・アンカー英和辞典」第4版 株式会社学習研究社 20
08年(平成20年)2月23日第4版第7刷発行
⑮ 「スーパー・アンカー英和辞典」第3版 株式会社学習研究社 20
08年(平成20年)2月23日第3版第6刷発行
⑯ 「ライトハウス英和辞典」第5版 株式会社研究社 2008年(平
成20年)3月第5版第4刷発行
甲29の1,甲29の3によれば,以下の英和辞典には, teddy bear」
「
の項目に,セオドア・ルーズベルトに関する逸話又は「teddy bear」の語
がセオドア・ルーズベルトの愛称に由来する旨が掲載されていることが認
められる。
⑰ 「現代英和辞典」 株式会社研究社 1995年(平成7年)第22
刷発行
⑱ 「新グローバル英和辞典」第2版 株式会社三省堂 2001年(平
成13年)2月20日第2版第2刷発行
⑲ 「小学館ランダムハウス英和大辞典」第2版 株式会社小学館 20
02年(平成14年)1月10日第2版第9刷発行
⑳ 「旺文社レクシス英和辞典」 株式会社旺文社 2003年(平成1
5年)重版発行
○ 「旺文社新英和中辞典」 株式会社旺文社
21 2003年 平成15年)
(
重版発行
○
22 「プログレッシブ英和中辞典」第4版 株式会社小学館 2005年
(平成17年)2月20日第4版第3刷発行
○ 「ユースプログレッシブ英和辞典」 株式会社小学館
23 (
2005年 平
成17年)5月10日初版第3刷発行
○
24 「フェイバリット英和辞典」第3版 東京書籍株式会社 2006年
(平成18年)2月20日第3版第2刷発行
○
25 「ビーコン英和辞典」第2版 株式会社三省堂 2006年(平成1
8年)12月10日第2版第4刷発行
○
26 「リーダーズ英和中辞典」 株式会社研究社 2006年(平成18
年)12月第1版第4刷発行
○
27 「ウィズダム英和辞典」第2版 株式会社三省堂 2007年(平成
19年)1月10日第2版第1刷発行
○ 「初級クラウン英和辞典」
28 第11版 株式会社三省堂 2007年 平
(
成19年)12月10日第11版第5刷発行
○
29 「グランドセンチュリー英和辞典」第2版 株式会社三省堂 200
8年(平成20年)1月10日第2版第7刷発行
○
30 「ポケットプログレッシブ英和辞典」第3版 株式会社小学館 20
08年(平成20年)2月2日第3版第1刷発行
○
31 「アドバンストフェイバリット英和辞典」 東京書籍株式会社 20
08年(平成20年)2月28日初版第5刷発行
○ 「新英和中辞典」第7版
32 株式会社研究社 2008年(平成20年)
2月第7版第6刷発行
○
33 「ベーシックジーニアス英和辞典」 株式会社大修館書店 2008
年(平成20年)4月1日初版第6刷発行
○ 「ジーニアス英和辞典」第4版
34 株式会社大修館書店 2008年(平
成20年)4月1日第4版第3刷発行
○
35 「プラクティカルジーニアス英和辞典」 株式会社大修館書店 20
08年(平成20年)4月1日初版第4刷発行
○
36 「オーレックス英和辞典」 株式会社旺文社 2008年(平成20
年)10月7日初版発行
○
37 「アルファフェイバリット英和辞典」 東京書籍株式会社 2008
年(平成20年)11月28日初版第1刷発行
○
38 「コアレックス英和辞典」 株式会社旺文社 2008年(平成20
年)重版発行
イ 国語辞典
以下の国語辞典には ,「テディベア」の項目が掲載されていることが認
められる。なお,下記①,③,④には,セオドア・ルーズベルトに関する
逸話が掲載されており,②,⑤には,「テディ(ー)」がセオドア・ルーズ
ベルトの愛称である旨が記載されていることが認められる。
① 「大辞泉」 株式会社小学館 1995年(平成7年)12月1日第
1版第1刷発行(甲37の1)
② 「大きな活字の三省堂国語辞典」第5版 株式会社三省堂 2001
年(平成13年)5月1日第5版第1刷発行(甲37の2)
③ 「日本国語大辞典」第2版 株式会社小学館 2001年(平成13
年)9月20日第2版第9巻第1刷発行(甲37の3)
④ 「大辞林」第3版 株式会社三省堂 2006年(平成18年)10
月27日第3版第1刷発行(甲37の4)
⑤ 「現代新国語辞典」第3版 株式会社三省堂 2007年(平成19
年)11月10日第3版第1刷発行(甲37の5)
ウ カタカナ語辞典
以下のカタカナ語辞典には,「テディベア」の項目が掲載されているこ
とが認められる。
① 「大きな活字のコンサイスカタカナ語辞典」 株式会社三省堂 19
95年(平成7年)5月10日初版第2刷発行(甲38の2)
② 「最新カタカナ用語『読む見る』事典」 株式会社講談社 1998
年(平成10年)3月2日第1刷発行(甲38の6)
③ 「角川モバイル カタカナ語辞典」 株式会社角川書店 2000年
(平成12年)3月25日初版発行(甲38の7)
④ 「カタカナ語・略語辞典」第3版 株式会社旺文社 2000年(平
成12年)8月25日第3版発行(甲38の4)
⑤ 「コンサイスカタカナ語辞典」第2版 株式会社三省堂 2000年
(平成12年)9月10日第2版第1刷発行(甲38の1)
⑥ 「日経新聞を読むためのカタカナ語辞典」 株式会社三省堂 200
1年(平成13年)4月10日第1刷発行(甲38の8)
⑦ 「大きな字のカタカナ新語実用事典」 株式会社学習研究社 200
2年(平成14年)6月25日初版発行(甲38の9)
⑧ 「用例でわかるカタカナ新語辞典」 株式会社学習研究社 2003
年(平成15年)3月24日初版発行(甲38の10)
⑨ 「マスコミに強くなるカタカナ新語辞典」第6版 株式会社学習研究
社 2004年(平成16年)3月22日第6版発行(甲38の3)
⑩ 「カタカナ外来語/略語辞典」全訂第3版 株式会社自由国民社20
06年(平成18年)4月10日全訂第3版発行(甲38の5)
⑪ 「朝日新聞のカタカナ語辞典」 朝日新聞社 2006年(平成18
年)8月30日第1刷発行(甲38の13)
⑫ 「用例でわかるカタカナ新語辞典」改訂第2版 株式会社学習研究社
2007年(平成19年)2月1日改訂第2版発行(甲38の11)
⑬ 「大きな字のカタカナ新語辞典」第2版 株式会社学習研究社 20
09年(平成21年)1月19日第2版発行(甲38の12)
エ 雑誌
以下の雑誌には , テディベア」に関する記載があることが認められる。
「
① 「ノンノ」通巻285号 株式会社集英社 昭和58年10月20日
発行(甲41の1)
② 「ノンノ」通巻294号 株式会社集英社 昭和59年3月20日発
行(甲41の2)
③ 「ノンノ」通巻296号 株式会社集英社 昭和59年4月20日発
行(甲41の3)
④ 「ノンノ」通巻312号 株式会社集英社 昭和59年12月20日
発行(甲41の4)
⑤ 「ノンノ」通巻317号 株式会社集英社 昭和60年3月20日発
行(甲41の5)
⑥ 「ノンノ」通巻325号 株式会社集英社 昭和60年7月20日発
行(甲41の6)
⑦ 「ノンノ」通巻334号 株式会社集英社 昭和60年12月5日発
行(甲41の7)
⑧ 「an an」通巻510号 株式会社マガジンハウス 昭和61年
1月10日発行(甲41の8)
⑨ 「メンズ ノンノ」第1巻第7号 株式会社集英社 昭和61年12
月1日発行(甲41の9)
⑩ 「ノンノ」通巻406号 株式会社集英社 昭和64年2月5日発行
(甲41の10)
⑪ 「オレンジページ」 平成3年10月17日発行(甲41の11)
⑫ 「ノンノ」通巻473号 株式会社集英社 平成3年12月20日発
行(甲41の12)
⑬ 「DIME」23号 株式会社小学館 平成4年12月3日発行(甲
41の13)
⑭ 「ノンノ」通巻495号 株式会社集英社 平成4年12月5日発行
(甲41の14)
上記のうち,セオドア・ルーズベルトの逸話が記載されたものは,④,
⑩,⑪,⑫である。
オ 新聞
1993年(平成5年)11月3日の毎日新聞には,テディベアについ
ての記事が掲載されており,平成5年4月にテディベアの愛好者らにより
日本テディベア協会が設立されたこと,テディベアという名は米国第26
代大統領セオドア・ルーズベルトの愛称にちなんで名付けられたこと,1
984年(昭和59年)に東京に初のテディベア専門店が開店したことな
どが記載されている(甲40の1,甲40の2)。
カ 書籍
(ア) 童話・絵本
小熊のぬいぐるみ又はそれと同様の形態の登場者等を「テディベア」
又は「テディ」として表した童話・絵本の書籍として,次のようなもの
があることが認められる。
① 「英語のべんきょう テディの一日」稲村松雄監修 株式会社小学
館 昭和46年4月1日発行(甲51の1)
② 「くまのテディ・ロビンソン」ジョーン・G・ロビンソン著 福音
館書店 昭和54年 1979年)
( 5月20日初版発行 甲51の2)
(
③ 「テディ・ロビンソン まほうをつかう」ジョーン・G・ロビンソ
ン著 福音館書店 昭和55年 1980年)
( 9月30日初版発行 甲
(
51の3)
④ 「おやすみ,テディベア」赤川次郎著 株式会社光文社 昭和57
年11月25日初版第1刷発行(甲51の4)
⑤ 「うみへ いこうよ 」(テディベアのえほん1)スザンナ・グレッ
ツ作 岩崎書店 昭和59年 1984年)
( 8月10日第1刷発行 甲
(
51の6)
⑥ 「ひっこし おおさわぎ 」(テディベアのえほん2)スザンナ・グ
レッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)8月30日第1刷発
行(甲51の7)
⑦ 「雨の日の うちゅうせんごっこ 」(テディベアのえほん3)スザ
ンナ・グレッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)10月5日
第1刷発行(甲51の8)
⑧ 「かいもの いっぱい」(テディベアのえほん4)スザンナ・グレ
ッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)10月30日第1刷発
行(甲51の9)
⑨ 「おいしい おりょうり 」(テディベアのえほん5)スザンナ・グ
レッツ作 岩崎書店 昭和59年(1984年)12月15日第1刷
発行(甲51の10)
⑩「かぞえてみよう 1・2・3 」(テディベアのえほん6)スザンナ
・グレッツ作 岩崎書店 昭和60年(1985年)2月5日第1刷
発行(甲51の14)
⑪ 「ABCであそぼう 」(テディベアのえほん7)スザンナ・グレッ
ツ作 岩崎書店 昭和60年(1985年)2月5日第1刷発行(甲
51の13)
⑫ 「かぜ ひいちゃった」(テディベアのえほん8)スザンナ・グレ
ッツ作 岩崎書店 昭和60年 1985年)
( 3月5日第1刷発行 甲
(
51の15)
⑬ 「おやすみ,テディ・ベア」(上)赤川次郎著 株式会社角川書店
昭和60年12月25日初版発行(甲51の17)
⑭ 「おやすみ,テディ・ベア」(下)赤川次郎著 株式会社角川書店
昭和60年12月25日初版発行(甲51の18)
⑮ 「おやすみ,テディ・ベア」(上)赤川次郎著 株式会社光文社
昭和61年12月20日初版1刷発行(甲51の19)
⑯ 「おやすみ,テディ・ベア」(下)赤川次郎著 株式会社光文社
昭和61年12月20日初版1刷発行(甲51の20)
(イ) カタログ等
テディベアのぬいぐるみの写真やぬいぐるみの作り方を掲載したカタ
ログには,次のようなものがあることが認められる。
① 「テディベア」株式会社雄鶏社 昭和59年5月30日再版発行 甲
(
51の5)
② 「テディベアとかくれんぼ」株式会社雄鶏社 昭和59年12月2
5日発行(甲51の11)
③ 「テディベアカタログ」株式会社雄鶏社 昭和60年1月10日発
行(甲51の12)
④ 「テディベアのワードローブ」株式会社雄鶏社 昭和60年発行 甲
(
51の16)
上記のうち,セオドア・ルーズベルトの逸話が記載されたものは, ,
①
③,④である。
(ウ) 漫画
テディベアが登場する漫画には,次のようなものがあることが認めら
れる。
① 「テディ・ベア①」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和54
年1月20日初版発行(甲52の1)
② 「テディ・ベア②」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和54
年8月5日初版発行(甲52の2)
③ 「テディ・ベア③」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和55
年3月25日初版発行(甲52の3)
④ 「テディ・ベア④」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和55
年11月15日初版発行(甲52の4)
⑤ 「テディ・ベア⑤」あしべゆうほ作 株式会社秋田書店 昭和58
年12月10日初版発行(甲52の5)
⑥ 「ベア」赤川次郎原作 株式会社光文社 昭和58年11月発行 甲
(
52の6)
キ レコード
次のレコードに収録された曲の題名及び歌詞には,「テディベア」とい
う語が含まれていたことが認められる。
① 「テディベアの頃−少女の香り−」 株式会社キャニオン・レコード
昭和60年10月21日発売(甲53の1)
② 「シニフィエ」 昭和58年10月21日発売(甲54)
ク テレビ番組
前記カ⑬ないし⑯の小説をテレビドラマ化した 赤川次郎のおやすみ,
「
テディベア」という題名の作品が,TBSにより,昭和58年8月9日放
送された(甲55)。
ケ テディベア博物館等
①インターネット記事(甲32の1ないし甲32の13)によれば,平
成21年3月現在,我が国に,熊のぬいぐるみやテディベア関係の資料等
を展示する博物館(テディベア博物館又はテディベア美術館など)が12
件存在することが認められ,②甲31によれば,テディベアの愛好家等に
より構成される日本テディベア協会は,平成5年4月設立され,平成18
年12月現在,その会員数は約3000人,加盟店は61店,加盟企業は
47社,加盟美術館は10件と発表されていることが認められる。
コ テディベアに関する他の逸話の紹介
乙1には, teddy bear」
「 と呼ばれる独特の形をした小熊のぬいぐるみは ,
ドイツの玩具会社シュタイフに由来するという説があること, teddy bear」
「
の語の由来については,セオドア・ルーズベルトの逸話の他にも,イギリ
スのヴィクトリア女王の長子エドワード7世(愛称「テッド」)がロンド
ンの動物園の熊に興味を示したことに由来するという説があることが紹介
されている。
(3) 事実認定
ア 上記の辞書,雑誌,新聞,書籍,レコード,テレビ番組,テディベア博
物館等の状況と,「広辞苑第6版 」(2008年(平成20年)1月11日
第6版第1刷発行) 「テディー・ベア 」
に の項目が掲載されていること 前
(
記ウ)を併せ考えると,本件商標の登録査定時 平成20年1月29日 )
(
においては,我が国においても,「テディベア」との語は,独特の形をし
た小熊のぬいぐるみを意味する語として広く知られているものと認められ
る。しかし,セオドア・ルーズベルトの逸話は,それが紹介される頻度は,
「テディベア」との語が使用される頻度に比べて低いことから,「テディ
ベア」との語と同程度にまで広く知られているとは認められない。
イ 甲29の2中のロングマン英和辞典(株式会社ピアソン・エデュケーシ
ョン 2007年(平成19年)2月1日初版第1刷発行 ),ルミナス英
和辞典第2版(株式会社研究社 2006年(平成18年)12月第2版
第3刷発行)には, teddy bear」の写真が掲載されている。また,甲29
「
の1ないし3によれば,平成7年以降に発行された英和辞典(平成7年1
件,平成13年1件 ,平成14年1件 ,平成15年5件,平成16年1件,
平成17年3件,平成18年4件,平成19年6件,平成20年16件)
の多くには, teddy bear」の項目が掲載されており, teddy bear」の項目
「 「
に,セオドア・ルーズベルトに関する逸話が掲載されているものも存在す
ることが認められる。
これらの英和辞典の記載によれば,少なくとも英米において , teddy
「
bear」の語は,一般に独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する語とし
て理解されていたこと,及び「teddy bear」の語は,米国第26代大統領
であったセオドア・ルーズベルトが狩猟中に追い詰めた小熊を撃たずにそ
の命を助けたという逸話と関連して理解されていたことが推認される。
しかし,英和辞典に記載があることから,直ちに,「テディベア」との
語又はセオドア・ルーズベルトの逸話が,我が国において英米と同様に知
られているとはいえず,むしろ,前記の我が国の辞書,雑誌,新聞,書籍,
レコード,テレビ番組,テディベア博物館等の状況に照らすならば,前述
のとおり,本件商標の登録査定時(平成20年1月29日 )において, テ
「
ディベア」との語は広く知られているものの,セオドア・ルーズベルトの
逸話は,同程度にまで広く知られているとはいえない。
3 本件商標の商標法4条1項7号への該当性について
原告は,本件商標は商標法4条1項7号に該当すると主張し,その根拠とし
て,以下のとおり主張するが,原告の主張は,いずれも採用することができず ,
本件商標は同法4条1項7号に該当しないとの審決の判断に誤りはない。
(1) 原告は,本件商標の登録は,国際信義に反する旨主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。すなわち,本件商標の
登録査定時(平成20年1月29日)において,我が国において,「テディ
ベア」との語は広く知られているものの,セオドア・ルーズベルトの逸話は,
同程度にまで広く知られているとはいえない。そして,我が国はもとより,
英米においても, teddy bear」の語は,一般にセオドア・ルーズベルトを直
「
ちに連想させるほど同人と密接に関連した語として認識されていたとは認め
られないし,ぬいぐるみの名称として知られていることを超えて,米国又は
米国民と密接不可分な関係があるものとは認められない。
この点,確かに,英和辞典には , teddy bear」の項目が掲載されたものが
「
存在し,セオドア・ルーズベルトに関する逸話が掲載されたものも存在する。
また,甲33によれば,テディベアとセオドア・ルーズベルトの関連を取り
上げた書籍が存在する 。しかし,英和辞典においても, teddy bear」の語は,
「
小熊のぬいぐるみを意味するものとされ,セオドア・ルーズベルトの逸話は,
その語の語源又は由来の説明として位置づけられている。そして,乙1によ
れば, teddy bear」と呼ばれる独特の形をした小熊のぬいぐるみは,ドイツ
「
の玩具会社シュタイフに由来するとの説があり, teddy bear」の語の由来に
「
ついては,セオドア・ルーズベルトの逸話の他にも,イギリスのヴィクトリ
ア女王の長子エドワード7世(愛称「テッド 」)がロンドンの動物園の熊に
興味を示したことに由来するという説もあることが認められる。また,乙4
によれば,米国において, teddy bear」との文字は,様々な指定商品につい
「
て商標登録されており,その指定商品には,「使い捨ておむつ」(登録番号1
218462) 「女性用コート」
, (登録番号0987934)なども含まれ
ていることが認められる。これらの事実に照らすと, teddy bear」の語は,
「
一般にセオドア・ルーズベルトを直ちに連想させるほど同人と密接に関連し
た語として認識されているとは認められないし,ぬいぐるみの名称として知
られていることを超えて,米国又は米国民と密接不可分な関係があるものと
は認められない。
その他 , teddy bear」の語又はその語によって表される独特の形をした小
「
熊のぬいぐるみが,米国又は米国民にとって重要な意義を有するものと認め
るに足りる証拠はなく,また,本件商標の商標登録を認めることが,米国,
若しくは米国と我が国との関係に影響を与えるものとは認められないし,我
が国の公益を害したり,国際的に認められた一般原則や商慣習等に反するも
のとも認められない。
そうすると,本件商標の商標登録は,国際信義に反するとは認められない。
(2) 原告は,被告のライセンシーであるドウシシャは, TEDDY BEAR」
「
という文字を付した商品に「SINCE 1902」との文字を表示し,セオドア・
ルーズベルトが小熊を助けたという逸話を連想させ,その商品が著名なセオ
ドア・ルーズベルトに関係のあるような印象を与えてその販売を行ってお
り,被告又はそのライセンシーは不正な販売方法を採っていると主張する。
しかし,原告の主張は,その主張に係る事実があったとしても,当該事実
は,本件商標が商標法4条1項7号に該当するか否かについて,何ら影響を
与えるものではなく,その主張自体失当である。
甲18によれば , SINCE1902」との文字は , TeddyBear」との表示に併
「 「
記され, TeddyBear」との表示とともに,小熊のぬいぐるみの絵が描かれた
「
クッキーの缶の蓋に付されたり,小熊のぬいぐるみを象ったタオルハンガー
や小熊のぬいぐるみの描かれたタオルを収納した箱の上面等に付されてお
り,それらの商品の写真がカタログに掲載されていることが認められる。そ
して, SINCE 1902」との文字は,セオドア・ルーズベルトの逸話を連想さ
「
せるものであると解される。
しかし,仮に,上記の「 TeddyBear」との表示の使用が,商標的使用に当
たると解したとしても,前記のとおり「teddy bear」の語は,一般にセオド
ア・ルーズベルトを直ちに連想させるほど同人と密接に関連した語として認
識されているとは認められず,米国又は米国民と密接不可分な関係があるも
のとは認められないこと,また,本件商標の登録査定時,我が国において,
セオドア・ルーズベルトの逸話が「テディベア」との語と同程度に知られて
いたとは認められないことに照らすならば, SINCE 1902」との文字が併記
「
されていることによって,本件商標が公序良俗を害するおそれがある商標に
該当すると認定すべきことにはならない。
(3) 原告は,①セオドア・ルーズベルト協会が「 teddy bear」に対して知
的財産権を有している旨主張するとともに,原告は,同協会から teddy bear」
「
の名称等の使用許諾を受け,その許諾に基づく商品化の同意を得ており,原
告が「Teddy Bear Roosevelt」 「Roosevelt Teddy Bear」
, ,その他の関連商標の
登録出願を我が国ですることにも同意を得ており,同協会(原告が代理人)
は,被告が本件商標により「テディベア」の語を独占することに反対してい
ること,②被告が,本件商標に係る商標権を有し,その権利行使をすること
は,米国のセオドア・ルーズベルト協会の活動を妨害し,国際信義に反する
こと,③我が国には日本テディベア協会(会員数約3000人,加盟店61
店,加盟企業47社,加盟美術館10件 ),合計12件のテディベア博物館
(美術館)があり,インターネットの「 Amazon」で販売されているテディ
ベアに関する商品は合計203件見出されるように,テディベアは我が国に
定着していることから,本件商標の登録は,商標法4条1項7号に該当する
などと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
原告の主張は,要するに,セオドア・ルーズベルト協会から許諾を受けた
原告のみが「teddy bear」 「テディベア」との語を商標登録し又は使用する
,
ことができるとするものである。
原告は,本件の無効審判において提出した平成21年1月15日付け上申
書(乙3)において,「そもそも『テディベア』の名称は現在アメリカで設
立された同大統領を記念した『セオドア・ルーズベルト協会』が所有する名
称であることは全世界で認められています。その日本の代理人であり『商品
化事業』の展開と『商標登録』を委託されている請求人の『商標登録』の権
利を認めない特許庁の判断については ,大変請求人は不満に思っています。」
と述べている。また,原告は,前記のとおり,セオドア・ルーズベルト協会
から「teddy bear」の名称等の使用許諾を受け,その許諾に基づく商品化の
同意を得て,原告が「Teddy Bear Roosevelt」 「Roosevelt Teddy Bear」
, ,その
他の関連商標の登録出願を我が国ですることにも同意を得ていると主張し,
その主張に沿う契約書(甲8,甲44),通知書(甲9 ),同意書(甲10)
を証拠として提出している。
これらの経緯に照らすと,原告の主張は,セオドア・ルーズベルト協会 い
(
かなる知的財産権等を有しているかは明らかでない 。)から許諾を受けた原
,
告のみが「teddy bear」 「テディベア」との語を商標登録し又は使用するこ
とができるという趣旨を述べていることと理解される。
しかし,原告が述べる内容は ,「テディベア」の名称等の使用を独占する
ことは,日米両国の公益を損なうおそれがあり,国際信義に反し,その商標
登録が商標法4条1項7号に該当するとの本訴における原告の主張と相矛盾
するものであって,その点からも,採用することができない。
4 結論
以上のとおり,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しないものと認めら
れ,審決の判断に誤りはない。原告は,その他縷々主張するが,審決にこれを
取り消すべきその他の違法もない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯 村 敏 明
裁判官
中 平 健
裁判官
上 田 洋 幸
別 紙 1
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