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平成20(行ケ)10418審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成21年3月10日
事件種別 民事
当事者 被告ローム株式会社
原告オーツー・マイクロ・インターナショナル・リミテッド
法令 特許権
民事訴訟法62条1回
特許法29条2項1回
特許法181条2項1回
キーワード 審決27回
無効10回
訂正審判6回
特許権2回
無効審判2回
主文 1 特許庁が無効2006−80188号事件について平成20年7月7日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 原告は,下記1(1)の特許(以下「本件特許」という。)の特許権者である。特 許庁は,本件特許に対する無効審判請求(無効2006−80188号事件)につ いて,本件特許を無効とする審決をしたため,原告はその取消しを求める審決取消 訴訟を提起するとともに訂正審判請求(以下「前訂正審判請求」という。)をした ところ,知的財産高等裁判所は特許法181条2項の規定に基づく審決取消の決定 をした。これを受けた特許庁は,本件特許の無効審判請求について更に審理し,原 告による訂正請求(指定期間内に請求されたもの)に係る訂正を認めた上,本件特 許を無効とする旨の審決をした。

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判決文

平成20年(行ケ)第10418号 審決取消請求事件
平成21年3月10日判決言渡,平成21年3月3日口頭弁論終結
判 決
原 告 オーツー・マイクロ・インターナショナル・リミテッド
訴訟代理人弁理士 志賀正武,佐伯義文,渡辺隆,村山靖彦,木内敬二
被 告 ローム株式会社
訴訟代理人弁理士 豊岡静男,櫻井義宏
主 文
1 特許庁が無効2006−80188号事件について平成20年7月7日にした
審決を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
主文第1項と同旨の判決
第2 事案の概要
原告は,下記1(1)の特許(以下「本件特許」という。)の特許権者である。特
許庁は,本件特許に対する無効審判請求(無効2006−80188号事件)につ
いて,本件特許を無効とする審決をしたため,原告はその取消しを求める審決取消
訴訟を提起するとともに訂正審判請求(以下「前訂正審判請求」という。)をした
ところ,知的財産高等裁判所は特許法181条2項の規定に基づく審決取消の決定
をした。これを受けた特許庁は,本件特許の無効審判請求について更に審理し,原
告による訂正請求(指定期間内に請求されたもの)に係る訂正を認めた上,本件特
許を無効とする旨の審決をした。
本件は,原告が,同審決の取消しを求める事案であるところ,原告は,本訴提起
後に訂正審判請求(訂正2008−390125号)をし,特許庁は平成21年2
月2日に訂正を認める旨の審決をし,同審決は確定した。
-1 -
1 特許庁等における手続の経緯
(1) 本件特許
特許権者:原告
出願日:平成14年1月4日
発明の名称:「順次バーストモード活性化回路」
出願番号:特願2002−557170号
設定登録日:平成18年1月13日
特許番号:特許第3758165号
(2) 本件手続及び訂正審判手続等
審判請求日:平成18年9月21日(無効2006−80188号)
前訂正審判請求日:平成20年1月9日
取消決定日:平成20年3月17日
訂正請求日:平成20年4月2日
審決日:平成20年7月7日
審決の結論:「訂正を認める。特許第3758165号の請求項1ないし9に係
る発明についての特許を無効とする。」
審決謄本送達日:平成20年7月17日(原告に対し)
本訴提起日:平成20年11月11日
訂正審判請求日:平成20年11月21日(訂正2008−390125号)
訂正審決日:平成21年2月2日
訂正審決の結論:「特許第3758165号に係る明細書を本件審判請求書に添
付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」
訂正審決謄本送達日:平成21年2月12日
2 本件特許の出願に係る明細書における特許請求の範囲の記載
(1) 訂正審決による訂正前のもの(審決において認められた訂正請求に係るも
の)
-2 -
「【請求項1】 液晶装置のバックライトに用いられる複数の蛍光ランプ負荷の
調光制御のための可変パワー調整回路であって,該回路は,
前記蛍光ランプ負荷がオンである期間を規定する可変なパルス幅を有するパルス
信号を発生するパルス変調器と,
前記パルス信号及び周波数選択信号を受け,それぞれが前記周波数選択信号によ
って決まる周波数を有し,少なくとも四つが異なる開始タイミングである,前記複
数の蛍光ランプ負荷のための複数の位相シフトバースト信号を発生する位相遅延ア
レイと,
スクリーン表示の掃引に用いられるビデオ信号を基準信号として受け,該基準信
号に基づき前記周波数選択信号を発生する周波数セレクタと,
少なくとも四つの各前記蛍光ランプ負荷のために少なくとも四つのパワー調整信
号を発生する少なくとも二つの位相アレイドライバとを具備し,
前記周波数セレクタは,前記基準信号の周波数をk倍化した信号(kは基準信号
の倍係数)を前記周波数選択信号として発生し,
前記パルス信号のパルス幅は,前記周波数選択信号の周期より小さな値であり,
前記位相遅延アレイは,前記周波数選択信号の周期を有し前記パルス信号のパル
ス幅を有する信号を,各蛍光ランプ負荷を独立して制御するための前記位相シフト
バースト信号として発生するものであり,
前記パワー調整信号は,前記位相シフトバースト信号の位相値に等しい位相値を
有しており,
各前記位相アレイドライバーは,180°位相が異なる二つの前記位相シフトバ
ースト信号を受けて,180°位相の異なる二つの各パワー調整信号を発生するこ
とを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項2】 請求項1に記載の回路において,前記複数の位相シフトバースト信
号の各位相シフトバースト信号は,各負荷を調整することを特徴とする可変パワー
調整回路。
-3 -
【請求項3】 請求項1に記載の回路において,前記パルス変調器は,前記パルス
幅を選択するための可変セレクタを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項4】 請求項3に記載の回路において,前記可変セレクタはDC信号を提
供するディマー回路と三角波を発生する発振器とを有し,前記パルス幅が前記DC
信号と前記三角波との交点によって決まることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項5】 請求項4に記載の回路において,前記ディマー回路は更に,前記D
C信号のDC値を設定するための調光セレクタと,前記パルス幅変調信号のパルス
幅を発生するために用いられる,前記DC信号と前記三角波の前記交点を決めるた
めの極性セレクタとを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項6】 請求項1に記載の回路において,前記位相遅延アレイは,前記位相
シフトバースト信号の少なくとも二つが異なる開始タイミングを有するように,前
記複数の位相シフトバースト信号の各位相シフトバースト信号のタイミングを取る
ためのカウンタを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項7】 請求項1に記載の回路において,前記位相遅延アレイは,少なくと
も一つの位相遅延値を発生するための位相遅延発生器を有していることを特徴とす
る可変パワー調整回路。
【請求項8】 請求項7に記載の回路において,前記少なくとも一つの位相遅延値
は一定値であることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項9】 請求項1に記載の回路において,前記位相遅延アレイは,発生すべ
き前記位相シフトバースト信号の数を決定するための少なくとも一つの選択信号入
力を有することを特徴とする可変パワー調整回路。」
(2) 訂正審決による訂正後のもの(下線部分は審決後の訂正箇所である。)
「【請求項1】 液晶装置のバックライトに用いられる複数の冷陰極蛍光ランプ
負荷の調光制御のための可変パワー調整回路であって,該回路は,
前記冷陰極蛍光ランプ負荷がオンである期間を規定する可変なパルス幅を有する
パルス信号を発生するパルス変調器と,
-4 -
スクリーン表示の掃引に用いられるビデオ信号を基準信号として受け,該基準信
号に基づき周波数選択信号を発生する周波数セレクタと,
前記パルス変調器および前記周波数セレクタに接続されているとともに,前記パ
ルス信号及び前記周波数選択信号を受け,それぞれが前記周波数選択信号によって
決まる周波数を有し,少なくとも四つが異なる開始タイミングである,前記複数の
冷陰極蛍光ランプ負荷のための複数の位相シフトバースト信号を発生する位相遅延
アレイと,
前記位相シフトバースト信号を受けるために前記位相遅延アレイに接続されてい
るとともに,少なくとも4つの前記冷陰極蛍光ランプ負荷への電力を調整するため
の高電圧ACパワー調整信号であって,前記位相シフトバースト信号のパルス幅に
対応したACパワー信号区間を持つ少なくとも4つの高電圧ACパワー調整信号を
発生する少なくとも二つの位相アレイドライバーとを具備し,
前記冷陰極蛍光ランプ負荷は,前記高電圧ACパワー調整信号をそれぞれ受ける
とともに,前記高電圧ACパワー調整信号の電力に基づいて発光し,
前記周波数セレクタは,前記基準信号の周波数をk倍化した信号(kは基準信号
の倍係数)を前記周波数選択信号として発生し,
前記パルス信号のパルス幅は,前記周波数選択信号の周期より小さな値であり,
前記位相遅延アレイは,前記周波数選択信号の周期を有し前記パルス信号のパル
ス幅を有する信号を,各前記冷陰極蛍光ランプ負荷を独立して制御するための前記
位相シフトバースト信号として発生するものであり,
前記高電圧ACパワー調整信号は,前記位相シフトバースト信号の位相値に等し
い位相値を有しており,
各前記位相アレイドライバーは,180°位相が異なる二つの前記位相シフトバ
ースト信号を受けて,180°位相の異なる二つの前記高電圧ACパワー調整信号
を発生し,
前記位相アレイドライバーの少なくとも一つは,対応する前記冷陰極蛍光ランプ
-5 -
負荷へ電力を供給するためのランプ回路を有し,
各前記位相アレイドライバは近接して配置されており,
前記位相アレイドライバは,第1位相アレイドライバと第2位相アレイドライバ
とを少なくとも有して構成され,
前記第1位相アレイドライバは,前記高電圧ACパワー調整信号の一つである第
1高電圧ACパワー調整信号を出力する第1出力端と,前記第1高電圧ACパワー
調整信号とは180°位相が異なる第2高電圧ACパワー調整信号を出力する第2
出力端とを有し,
前記第2位相アレイドライバは,前記高電圧ACパワー調整信号の一つである第
3高電圧ACパワー調整信号を出力する第3出力端と,前記第3高電圧ACパワー
調整信号とは180°位相が異なる第4高電圧ACパワー調整信号を出力する第4
出力端とを有し,
前記第1高電圧ACパワー調整信号の位相は,前記第3高電圧ACパワー調整信
号の位相よりも進んでおり,
前記第3高電圧ACパワー調整信号の位相は,前記第2高電圧ACパワー調整信
号の位相よりも進んでおり,
前記第2高電圧ACパワー調整信号の位相は,前記第4高電圧ACパワー調整信
号の位相よりも進んでおり,
前記第1出力端と第2出力端と第3出力端と第4出力端とは,該第1出力端,第
2出力端,第3出力端,第4出力端の順序で配置されており,
前記第1出力端と第2出力端と第3出力端と第4出力端とは,それぞれ,前記冷
陰極蛍光ランプ負荷のそれぞれの一つに接続されていることを特徴とする可変パワ
ー調整回路。
【請求項2】 請求項1に記載の回路において,前記複数の位相シフトバースト信
号の各位相シフトバースト信号は,各負荷を調整することを特徴とする可変パワー
調整回路。
-6 -
【請求項3】 請求項1に記載の回路において,前記パルス変調器は,前記パルス
幅を選択するための可変セレクタを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項4】 請求項3に記載の回路において,前記可変セレクタはDC信号を提
供するディマー回路と三角波を発生する発振器とを有し,前記パルス幅が前記DC
信号と前記三角波との交点によって決まることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項5】 請求項4に記載の回路において,前記ディマー回路は更に,前記D
C信号のDC値を設定するための調光セレクタと,前記パルス幅変調信号のパルス
幅を発生するために用いられる,前記DC信号と前記三角波の前記交点を決めるた
めの極性セレクタとを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項6】 請求項1に記載の回路において,前記位相遅延アレイは,前記位相
シフトバースト信号の少なくとも二つが異なる開始タイミングを有するように,前
記複数の位相シフトバースト信号の各位相シフトバースト信号のタイミングを取る
ためのカウンタを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項7】 請求項1に記載の回路において,前記位相遅延アレイは,少なくと
も一つの位相遅延値を発生するための位相遅延発生器を有していることを特徴とす
る可変パワー調整回路。
【請求項8】 請求項7に記載の回路において,前記少なくとも一つの位相遅延値
は一定値であることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項9】 請求項1に記載の回路において,前記位相遅延アレイは,発生すべ
き前記位相シフトバースト信号の数を決定するための少なくとも一つの選択信号入
力を有することを特徴とする可変パワー調整回路。」
3 審決の理由の要旨
審決は,原告による訂正請求を認め,本件特許に係る各発明の要旨を上記2(1)
のとおり認定した上,これらの発明は,甲第1号証に記載された発明又は甲第3号
証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができ
たものであるから,これらの発明に係る特許は,いずれも特許法29条2項の規定
-7 -
に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきもの
であるとした。
第3 審決取消事由
審決は,本件特許に係る発明の要旨を上記第2の2(1)のとおり認定し,これに
基づき,上記第2の3のとおり,本件特許を無効とすべきであると判断したが,訂
正審決が確定したことによって,本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,第2の
2(2)のとおりとなったものであるから,審決は,結果的に本件発明の要旨の認定
を誤ったことになり,取消しを免れない。
第4 当裁判所の判断
本件特許に係る特許請求の範囲の記載が訂正審決により原告主張のとおりになっ
たことは当事者間に争いがなく,これによれば,審決は結果的に本件特許に係る発
明の要旨の認定を誤ったものというべきであるから,本訴請求は理由がある。
よって,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用し
て,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田 中 信 義
裁判官
浅 井 憲
-8 -
裁判官
杜 下 弘 記
-9 -

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