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平成19(行ケ)10433審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年11月17日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告株式会社アソシエ
対象物 電子メール送信システム,意志確認方法及びシステム並びに意志収集方法及びシステム(但し,出願時の発明の名称は「電子メール,電子
法令 特許権
特許法159条2項4回
特許法29条2項1回
キーワード 刊行物70回
審決59回
実施7回
進歩性2回
主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,Aがした特許出願に係る発明について特許を受ける権利の譲渡を受けた 原告が,拒絶査定に対する審判請求を成り立たないとした審決の取消しを求める事 案である。

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判決文

平成19年(行ケ)第10433号 審決取消請求事件
平成20年11月17日判決言渡,平成20年10月8日口頭弁論終結
判 決
原 告 株式会社アソシエ
被 告 特許庁長官
指定代理人 和田志郎,山本章裕,江嶋清仁,桑原清,森山啓
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2004−15877号事件について平成19年11月2日にした
審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,Aがした特許出願に係る発明について特許を受ける権利の譲渡を受けた
原告が,拒絶査定に対する審判請求を成り立たないとした審決の取消しを求める事
案である。
1 特許庁における手続の経緯
Aは,発明の名称を「電子メール送信システム,意志確認方法及びシステム並び
に意志収集方法及びシステム」(但し,出願時の発明の名称は「電子メール,電子
メール送信システム,意志確認方法及びシステム並びに意志収集方法及びシステム 」
である。)とする発明について,平成12年12月8日に特許出願(以下「本件出
願」という 。)をしたが,平成16年6月18日付けで拒絶査定を受けたので,同
年7月29日,同拒絶査定に対する不服審判を請求し,平成19年6月25日,手
続補正をした(以下「本件補正」という 。。

特許庁は,上記不服審判請求を不服2004−15877号事件として審理し,
平成19年11月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その
謄本は同月28日,Aに送達された。
原告は,平成19年12月26日,Aから上記発明に係る特許を受ける権利を譲
り受け,同月27日,特許庁に対し,その旨の出願人名義変更届をした。
2 発明の要旨
審決は,本件補正後の明細書(甲6,7。以下「本願明細書」という。)の特許
請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という 。)を対象とし
たものであるところ,その要旨は次のとおりである(なお,請求項の数は12個で
ある。。

「 請求項1】
【 ネットワークを経由して相手方の情報端末に電子メールを送る
電子メール送信システムであって,
送信する電子メールのデータを記憶した記憶手段と,
記憶手段にデータが記憶された電子メールを所定のプロトコルに従って相手方に
送信する送信手段とを備えており,
前記記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の質問内容と,その質
問内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするものであっ
て,相手方の情報端末において所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネット
ワーク上の所定の場所にある回答先のコンピュータに送信するコマンド文を含んで
おり,
このコマンド文は,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所
の入力をすること無しに前記回答内容を送信するものであって,前記回答内容を処
理するプログラムを実行するものであることを特徴とする電子メール送信システ
ム。」
3 審決の理由の要旨
審決は,本願発明は,特開2000−267952号公報(甲1。以下「刊行物
1」という。)に記載された発明(以下「刊行物1発明」という。)及び後記周知技
術1,2から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29
条2項の規定により特許を受けることができないとした。
審決が上記結論に至った理由は,以下のとおりである。なお,審決の引用部分に
おいて,本訴の書証番号を付記した。
(1) 刊行物1発明の内容
刊行物1には,次の発明が開示されていると認めることができる。
「 a)

電子メールの通信システムであって,無線通信可能な携帯型の電話機1,無線公衆網2,ク
ライアントメールサーバ3,ネットワーク4およびメールサービスサーバ5で構成され,電話
機1と該電話機1のメール管理を行うクライアントメールサーバ3とは無線公衆網2を介し
て,クライアントメールサーバ3とメールサービスサーバ5とはインターネットなどのネット
ワーク4を介して,それぞれ電子メールを送受信するものであって,
メールサービスサーバ5から送信されたメールは,インターネットなどのネットワーク4を
介してクライアントメールサーバ3に与えられ,さらに無線公衆網2を介して電話機1で受信
され,
(b)
メールサービスサーバ5は,記憶部64,メッセージ解析部65を有し,記憶部64は,各
種情報を一括して記憶し管理し,メッセージ解析部65は,受信したメールを解析して,任意
形式,すなわちサーバ5に応じた形式のメッセージが含まれているか否かを判断し,
(c)
電話機1の新規メールフォームの追加処理については,ステップPA1で新規メールフォー
ムを入手するためのメールをサーバ5に向けて送信し,ステップPA2でサーバ5からのメー
ルを受信してInBox部27に保存すると,ステップPA3では,保存されたメールに所望
のメールフォームが含まれるか否かを判断し,所望のメールフォームが含まれるときにはステ
ップPA4に進み,所望のメールフォームが含まれないときにはステップPA1に戻って,所
望のメールフォームが得られるまでステップPA1∼PA3の動作を繰返し,ステップPA4
では,得られたメールフォームのメールフォーム登録部36へのリスト登録操作を行い,次の
ステップPA5で登録すると判断したときにはステップPA6に進んで,メールフォームをリ
スト登録して処理を終了し,ステップPA5で登録しないと判断したときにはそのまま処理を
終了し,
(d)
実行されるメールフォームのスクリプト91の例としては,スクリプト91の実行によって
実現されるデータの入力補助画面92∼95の例において,スクリプト91は,WWWシステ
ムで利用され,HTMLなどのブラウザ言語のスクリプトで拡張して定義されるテキストや画
像で構成される所定形式のデータであり,データ入力補助UI実現部32は,該スクリプト9
1を解釈して実行し,前記所定の形式に適応して定義されるフォームダグ(判決注: フォー

ムタグ」の誤記と認める。 を用いた入力補助機能のための入力補助画面92∼95を実現し ,

実現される画面92∼95は,たとえば航空券の予約,ホテルの宿泊予約および商品の購入申
込み予約時におけるデータ入力のための画面であり,例示した画面92∼95は,商品の購入
申込み予約時におけるデータ入力のための画面であり,入力補助画面92∼95は,たとえば
チェックボタン,チェックボックスおよび文字入力ボックスを含み,チェックボタンはオペレー
タによって選択され,またチェックボックスや文字入力ボックスにはオペレータによってデー
タが入力され,また,入力補助画面92∼95は,画像やグラフィックによって表示される入
力ガイダンスを含み,
(e)
電話機1から送信されたメールは,無線公衆網2を介してクライアントメールサーバ3に与
えられ,さらにインターネットなどのネットワーク4を介してメールサービスサーバ5で受信
され,
メールサービスサーバ5は,電話機1からのメールを受信し,返信スクリプト生成処理にお
いて,メッセージ解析部65が,受信メールのメッセージを解析し,返信用のスクリプトの生
成が必要か否かを判断し,必要であったときには,スクリプトメッセージ生成部62が返信用
スクリプトを生成し,作成された返信用スクリプトから返信用メール作成部63が返信用メー
ルを作成し,送信して処理を終了し,
(f)
実行されるメールフォームのスクリプト91の例としては,HTML言語で記載され( L>及びタグ参照),Form タグ(
及び
タグ参照 。)中において ,「購入希望
商品名」 「購入希望商品数 」 「支払い方法選択」というメッセージ内容と,そのメッセージ内
, ,
容に対する回答内容( アイテム1−1000円・・・アイテム5−3000円 」 「1個・・
「 ,
・5個」 「方法1・・・方法3」参照。
, )とが表示されるようにするとともに,これらの回答
はチェックボックス(プルダウンメニュー ),チェックボタン(ラジオボタン)で選択するよ
うに表示(タグ中の type="radio"参照。 )され,所定の操作がされた
際にその回答内容を回答先のコンピュータであるメールサービスサーバに送信するコマンド文
を含んでおり(タグ中の type="submit",value="送信"参照 。,送信ボタンをクリック

すると,このコマンド文は,相手方の情報端末において回答先のコンピュータの場所の入力を
することなしに,回答内容を送信する
タグの action 属性において mailto:に続いてメー

ルアドレスが設定されており,送信ボタンが操作された際にこの∼
タグ内のフ
ォームの内容がこのメールアドレスに送信される 。)スクリプト,であり,
(g)
スクリプト91の実行によって実現されるデータの入力補助画面92∼95の例としては,
「購入希望商品名」 「購入希望商品数 」 「支払い方法選択」というメッセージに対する回答内
, ,
容として「アイテム1−1000円・・・アイテム5−3000円 」 「1個・・・5個」 「方
, ,
法1・・・方法3」から選択するチェックボックス98及びチェックボタン99,及び送信を
行う送信ボタン101を表示する画面,であり,
(h)
返信用スクリプト121の例として,HTML言語で記載され(及びタグ参
照。 ,Form タグ(
及び
タグ参照 。
) )中において ,「意思確認」というメッセージ
内容と,そのメッセージ内容に対する回答内容( 注文します」及び「注文しません」参照 。
「 )
とが表示されるようにするとともに,これらの回答はチェックボタン(ラジオボタン)で選択
するように表示(タグ中の type="radio"参照。 )され,所定の操作がされた際にその
回答内容を回答先のコンピュータであるメールサービスサーバに送信するコマンド文を含んで
おり(タグ中の type="submit",value="送信"参照。,送信ボタンをクリックすると,

このコマンド文は,回答先のコンピュータの場所の入力をすることなしに,回答内容を送信す
る(
タグの action 属性において mailto:に続いてメールアドレスが設定されており,送
信ボタンが操作された際にこの∼
タグ内のフォームの内容がこのメールアドレ
スに送信される。)返信用スクリプト121,が示されており,
(i)
電話機1では,受信されたスクリプト121は,スクリプト解析部31で解析され,データ
入力補助UI実現部32で実行されて,データの入力補助画面125( 意思表示」というメ

ッセージ内容に対する回答内容として「注文します」か「注文しません」を選択するチェック
ボタン127,及び送信を行う送信ボタン101を表示する画面 。)が実現され,画面125
によって注文データが確認でき,オペレータはこの内容を見て注文するかしないかの意志表示
を行い,画面125では,具体的に,入力ガイダンス126は注文データの確認内容や注文の
意志表示を促す内容であり,チェックボタン127は,注文の意志表示を選択して入力するも
のであり,データが入力されると ,(送信ボタン101から入力データの送信が指定されるこ
とにより)送信処理を実行し,任意形式のメッセージを作成し ,作成された任意形式のメッセー
ジをメール本文としてサーバ5に向けて送信する,
電子メールの通信システム。 (審決8頁4行∼11頁5行)

(2) 周知技術
ア 周知技術1
特開2000−181926号公報(平成12年6月30日出願公開,以下 , 周知文献1」

という。本訴甲2) 特開平2−259889号公報(平成2年10月22日出願公開,以下 ,

「周知文献2」という。本訴甲3)等により,次のような技術(以下 , 周知技術1」という。
「 )
が本願出願前に周知であったと認められる。
「電子メール送信システムにおいて,送信する電子メールのデータを記憶した記憶手段を備
えており,前記記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の質問内容と,その質問
内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするものとする 」(審決14
頁20∼23行)
イ 周知技術2
特開平10−234018号公報(平成10年9月2日出願公開,以下 ,「周知文献3」と
いう。本訴甲4) 特開平10−240638号公報(平成10年9月11日出願公開,以下 ,

「周知文献4」という。本訴甲5)等により,次のような技術(以下 , 周知技術2」という。
「 )
が本願出願前に周知であったと認められる。
「情報端末において所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネットワーク上の所定の場
所にある回答先のコンピュータに送信するコマンド文が,相手方の情報端末において前記回答
先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信するものであって,前記
回答内容を処理するプログラムを実行するものであること 」(審決16頁下から3行∼17頁
2行)
(3) 本願発明と刊行物1発明との一致点及び相違点の認定
本願発明と刊行物1発明とを比較すると,両者は,
「ネットワークを経由して相手方の情報端末に電子メールを送る電子メール送信システムで
あって,
送信する電子メールのデータを記憶した記憶手段と,
記憶手段にデータが記憶された電子メールを所定のプロトコルに従って相手方に送信する送
信手段とを備えており,
前記記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の内容と,その内容に対する回答
内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするものであって,相手方の情報端末において
所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネットワーク上の所定の場所にある回答先のコン
ピュータに送信するコマンド文を含んでおり,
このコマンド文は,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力をす
ること無しに前記回答内容を送信するものである,
電子メール送信システム。」
の点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]
「記憶手段が記憶している電子メールのデータ」が,本願発明では ,「特定の質問内容と,
その質問内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするもの」であるの
に対して,刊行物1発明では,特定の内容( 購入希望商品名 」 「購入希望商品数 」 「支払い
「 , ,
方法選択」 「意思確認」
, (刊行物1発明の前掲記載(f)∼(i ))参照 。)と,その内容に対
する回答内容 「アイテム1−1000円・・・アイテム5−3000円 」 1個・・・5個」
( ,
「 ,
「方法1・・・方法3」 「注文します」 「注文しません」
, , (刊行物1発明の前掲記載(f)∼
(i))参照。)とが相手方の情報端末に表示されるようにするもの,である点。
[相違点2]
「コマンド文」が,本願発明では, 回答内容を処理するプログラムを実行するものである 」

のに対して,刊行物1発明では,回答内容を処理するプログラムの実行は開示されていない点。
(4) 相違点についての判断
ア 相違点1について
「電子メール送信システムにおいて,送信する電子メールのデータを記憶した記憶手段を備
えており,前記記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の質問内容と,その質問
内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするものとする技術は,周知
である(上記周知技術1参照 。。

従って,刊行物1発明のメールサービスサーバ5(本願発明の「電子メール送信システム」
に相当。)に記憶されるFormタグで記載されたデータ(本願発明の「記憶手段が記憶して
いる電子メールのデータ」に相当 。)において,電子メール送信システムにおける当該周知技
術を用いて,「記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の質問内容と,その質問
内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするもの」とすることは,当
業者が容易に想到し得たことである。(審決20頁4行∼15行)

イ 相違点2について
「情報端末において所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネットワーク上の所定の場
所にある回答先のコンピュータに送信するコマンド文が,相手方の情報端末において前記回答
先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信するものであって,前記
回答内容を処理するプログラムを実行するものであること」は,周知である(上記周知技術2
参照。 。

従って,刊行物1発明のメールサービスサーバ5(本願発明の「電子メール送信システム」
に相当。)において,電子メールのデータに含まれるコマンド文として,当該周知技術を採用
し,「相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前
記回答内容を送信するものであって,前記回答内容を処理するプログラムを実行するものであ
る」コマンド文とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
なお,本願発明におけるコマンド文は,当初明細書の第14段落の記載 図2に示す電子メー

ルの内容は,前述したようにHTMLで記述されており,FORMタグを使っている。回答内
容42は,実は,CGI(Common Gateway Interface)プログラムで処理されるようになってい
る。FORMタグのFORM ACTIONコマンド文には,このCGIプログラムが存在す
るWWWサーバのURLとCGIプログラムの名前が記述されている。図2から解るように,
回答内容42はラジオボタンで作成されている。また,図2は示されていないが ,「送信」の
クリックボタンがある。このボタンは,Submitボタンとなっており,これがクリックさ
れると,データがCGIに渡されてCGIプログラムが起動するようになっている 。」を参酌
すると,FORMタグのFORM ACTIONコマンド文にCGIプログラムが存在するW
WWサーバのURLとCGIプログラムの名前が記述されたものを意味すると解されるが,上
記周知文献3,4に示されたコマンド文も同様のものであり,実施例レベルにおいても本願発
明と周知文献3,4のものは差異はない 。 (審決20頁17行∼21頁7行)

ウ 作用効果
「そして,本願発明の作用効果も,刊行物1記載発明及び周知技術1,2から当業者が予測
できる範囲のものである。(審決21頁10∼11行)

第3 審決取消事由の要点
審決は,本願発明と刊行物1発明との一致点の認定を誤った結果,相違点を看過
し,また,相違点1及び2についての判断を誤り,さらに,本願発明の顕著な作用
効果を看過しており,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼすことは明らかで
あるから,違法なものとして取り消されるべきである。
なお,本判決においても,審決における周知文献1ないし4及び周知技術1,2
の各略語表記を用いる。
1 取消事由1(本願発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)
(1) 審決は,刊行物1の図13及び図18に示されるスクリプト91及び同1
21(以下,順に,「本件スクリプト91」 「本件スクリプト121」といい,両

者を合わせて「本件スクリプト91等」という 。)に,「FORM action = "mailto:sam
ple1@sample.co.jp" method = "post"」とのコマンド文があることから,刊行物1
発明は,コマンド文が「相手方の情報端末において回答先のコンピュータの場所の
入力をすること無しに回答内容を送信するもの」であるとし,この点で刊行物1発
明と本願発明とが一致すると認定したが,誤りである。
(2) 本件スクリプト91等の上記コマンド文は,以下に述べるとおり,送信先
のコンピュータの場所が電話機1で入力されることが前提になっている。
すなわち,本件スクリプト91は,メールフォームに含まれるものであるが,刊
行物1では,新規メールフォームを入手するために,オペレータが電話機1からメー
ルサービスサーバ5に向けてメールを送信し,メールサービスサーバ5から返信さ
れるメールに含まれる新規メールフォームを登録することによりメールフォームを
入手するのであり,本件スクリプト91のコマンド文に「FORM action = "mailto:s
ample1@sample.co.jp" method = "post"」と”sample1@sample.co.jp”のアドレス
が書き込まれているのは,メールフォームを取得するためにメールを送ったメール
サービスサーバ5のアドレスが”sample1@sample.co.jp”だったからである。
そして,電話機1からメールサービスサーバ5にメールを送るということは,同
サーバ5のアドレス”sample1@sample.co.jp”を電話機1において入力することを
意味するから,本件スクリプト19の上記コマンド文は,結局,電話機1において
メールサービスサーバ5のアドレス”sample1@sample.co.jp”を入力することによ
り取得されるものである。
(3) 次に,本件スクリプト121は,メールサービスサーバ5から電話機1に
送信されるメールに含まれるものであるが,次のようにして作成される。まず,オ
ペレータが電話機1に登録されたメールフォームによりデータを入力し,そのデー
タをメールサービスサーバ5にメール送信する。このメールがメールサービスサー
バ5で受信されると,同サーバ5で当該メールを解析し,本件スクリプト121を
作成する。そして,同サーバ5から電話機1に本件スクリプト121を含むメール
が返信される。
そして,メールサービスサーバ5から送信される本件スクリプト121のコマン
ド文に「FORM action = "mailto:sample1@sample.co.jp" method = "post"」と記述
されているのは,電話機1からメールフォームによりデータをメールサービスサー
バ5(sample1@sample.co.jp)に送信したからであり,そのメールフォームは,前
記(2)のとおり,オペレータが電話機1からメールサービスサーバ5にメールを送っ
て同サーバ5から取得したものである。
(4) 以上のとおり,本件スクリプト91等の「FORM action = "mailto:sample1@
sample.co.jp" method = "post"」とのコマンド文は,オペレータが電話機1におい
てメールサービスサーバ5のアドレス"sample1@sample.co.jp"を入力することによ
り取得するのであるから,上記コマンド文は,電話機1において同サーバ5のアド
レスを入力することにより回答内容を送信するものであり ,「回答先のコンピュー
タの場所の入力をすることなしに,回答内容を送信する」ものではない。
(5) 被告は,本願発明の「回答先のコンピュータの場所の入力」の意味を,①
「回答内容を送信する時点におけるコンピュータの場所の入力」及び②「回答内容
を送信する目的での送信にあたってのコンピュータの場所の入力」と限定的に解釈
し,刊行物1発明は,そのような限定的な意味での「回答先のコンピュータの場所
の入力」をすることなしに,回答内容を送信するものであると主張するが,本願明
細書の請求項1には,上記①,②の記載はないのであるから,被告の主張は,請求
項1の記載に基づかない解釈であり,失当である。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)
(1) 審決は,周知文献1,2により周知技術1を認定しているが,周知技術は
多数の公知文献が存在していることによって認定すべきものであり,たった2つの
文献によって周知技術を認定することはできないから,審決の周知技術1の認定は
誤りであり,したがって,これを刊行物1発明に適用してした相違点1についての
判断も誤りである。
(2) また,仮に,周知文献1及び2によって周知技術1が認定できたとしても ,
周知文献1,2は,電子メールの送受信によりアンケートを行う発明に係るもので
あり,アンケートであるから,送信されるメールには特定の質問が含まれ,返信さ
れるメールには,その質問に対する回答が含まれる。
一方,刊行物1発明は,メールサービスサーバ5から商品注文のような所定のメー
ルフォームを電話機1が受信し,このメールフォームを使って商品注文のような送
信を行う技術に関するものであり,刊行物1発明においては,アンケートのような
質問と回答とを行うことは想定されていない。
したがって,刊行物1発明のメールサービスサーバ5に記憶されるFORMタグ
で記載されたデータを,周知技術1を用いて「特定の質問内容と,その質問内容に
対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするもの」とすることは,
当業者が容易に想到し得ることではない。
3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り)
(1) 審決は,周知技術2を「情報端末において所定の操作がされた際にその回
答内容を前記ネットワーク上の所定の場所にある回答先のコンピュータに送信する
コマンド文が,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力
をすること無しに前記回答内容を送信するものであって,前記回答内容を処理する
プログラムを実行するものである」と認定したが,周知技術2の「その回答内容」
が何を意味するのか不明である 。 回答」は「質問」があってこその回答であるが,

審決の周知技術2の認定においては,「質問」には言及されていない。
(2) 審決は,周知文献3,4により周知技術2を認定しているが,これらの周
知文献のいずれにも「コンピュータの場所の入力をすることなしに情報を送信する
こと」についての開示はない。
すなわち,まず,周知文献3でユーザがテレビを使用してウェブサイト"www.sto
cks.com"で特定の株(例えば GM)の株相場情報を検索するには,ユーザは特定の
株のデータ"GM"を入力し,これを"www.stocks.com"に送信しなければならない。つ
まり,ユーザは"www.stocks.com"のサイトに到達しなければならないが,そのため
には何らかの入力を能動的に行う必要があり,そのような入力は,結局は,"www.s
tocks.com"というコンピュータの場所を入力していることに他ならない。
また,周知文献4の図3にはユーザがチケットを購入するためのチケット販売に
関するサービス制御スクリプトが記述されているが,同スクリプトによりCGIプ
ログラムが実行されるには,図3のHTMLファイルがファクシミリ装置に送信さ
れる必要があり,そのためには,図1に示すHTMLファイルがファクシミリ装置
に送信され,ユーザが音声案内に対し「3#」を入力する必要がある。そして,図
1に示すHTMLファイルがファクシミリ装置に送信されるためには,ユーザがW
WW検索装置2に電話をかけ,ホームページの数字コードを入力し,入力された数
字コードをWWW検索装置2がURLに変換する必要があるが,上記ホームページ
の数字コードは,URLに変換されるものであるから,明らかにコンピュータの場
所の情報である。このように,周知文献4の図3に示すHTMLファイルのサービ
ス制御スクリプトは,コンピュータの場所の入力をしなければ実行され得ないもの
である。
したがって,審決が,周知文献3,4により周知技術2を認定したことは誤りで
あるから,これを刊行物1発明に適用してした相違点2についての判断も誤りであ
る。
(3) 周知文献3,4は,本願発明のような電子メールの送受信の技術の分野に
関するものではなく,ウェブサイトにアクセスして情報を取得する技術に関するも
のであるから,本願発明のような電子メール送信システムの発明をするに際しては
参考とはなり得ず,また,仮に,周知文献3,4を参照して,刊行物1発明の mai
lto:をCGIプログラムの起動コマンドに変更したとしても,本願発明のコマンド
文は「回答内容を処理するプログラムを実行する」ものであり,本願発明が想到さ
れるためには,回答内容の処理が回答内容の送信と同時に自動的に行われるように
するという発想が必要であるが,そのような点を動機付ける記載は,刊行物1には
存在しないから,審決の相違点2についての判断は誤りである。
(4) 上記のとおり,周知文献3,4は,周知技術2の証拠とはなり得ないもの
である。審判合議体が,いきなり拒絶審決とせずに,拒絶理由通知を発することで
周知文献3や周知文献4を摘示していれば,原告は,本件で主張したような反論や
釈明が行えたのであり,また必要に応じて本願発明をより明瞭にする補正も行えた。
しかしながら,拒絶理由通知を経ることなくいきなり審決が行われたために,原
告は,反論や釈明をする機会を奪われ,また必要な補正をする機会を奪われた。審
決は,周知文献3,4の摘示を ,「周知文献」という形を取っているものの,実質
的にはこれらは周知文献にはなり得ないものである。
したがって,結果的に,審決は,特許法159条2項において準用する同法50
条の規定に違反してされたものであり,この手続違背が審決の結論に与えた影響は
大きく,この点をもってしても審決は取り消されるべきである。
4 取消事由4(顕著な作用効果を看過した誤り)
審決は,本願発明の作用効果が,刊行物1記載発明及び周知技術1,2から当業
者が予測できる範囲のものであると判断したが,誤りである。
本願明細書の段落【0062】に記載されているとおり,ウェブページによるプ
ロモーションは,顧客がアクセスしてくるのを待っている”待ちの姿勢”であり,
この点では,刊行物1発明も ,オペレータがメールサービスサーバ5にメールを送っ
てメールフォームを取得することを必須の前提としているから同様であり,周知文
献3や周知文献4でも基本的に同じである。
一方,本願発明は,電子メールを顧客に送って回答を待つという積極的なプロモー
ションを展開することができるものであり,この効果は,刊行物1発明や各周知文
献をどのように組み合わせてみても導き出されるものではなく,予測不可能な顕著
な効果である。
審決は,この効果を看過しており,そのため本願発明の容易想到性についての判
断を誤っており,取り消されるべきである。
第4 被告の反論の要点
1 取消事由1(本願発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)に対し
(1) 本願発明の「このコマンド文は,相手方の情報端末において前記回答先の
コンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信する」とは,コマ
ンド文が,①「回答内容を送信する時点におけるコンピュータの場所の入力」及び
②「回答内容を送信する目的での送信にあたってのコンピュータの場所の入力」を
することなしに「前記回答を送信する」ことを意味する。
原告は,本件スクリプト91等は,オペレータが電話機1においてメールサービ
スサーバ5のアドレス"sample1@sample.co.jp"を入力したことにより取得するもの
であるから,本件スクリプト91等に含まれるコマンド文は,「相手方の情報端末
において前記回答先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を
送信する」ものではないと主張するが,上記アドレスの入力は,上記①及び②の意
味での「コンピュータの場所の入力」とは無関係であるから,原告の主張は,請求
項1の記載に基づくものではなく,失当である。
(2) 刊行物1には,新規メールフォームを入手するためにメールをメールサー
ビスサーバ5に向けて送信することは記載されているが,同サーバ5のアドレスを
入力することは記載されていない。そして,新規メールフォームを入手するために
メールを電話機1とは別の計算機,電話機から送信することや,新規でないメール
フォームのスクリプトは工場出荷時などに保存されていることなども考えられるこ
と,メールの送信に当たりメールサーバのアドレスを入力しない技術として,FO
RMタグの action 属性において,"mailto:"を用いること(乙1の155,156
頁,乙2の173,174頁,乙3の360,361頁),HTMLのウェブペー
ジ等において送信ボタンのクリックによりメールを送信すること(乙1の155,
156頁,乙2の173,174頁 ),メールソフトの返信機能において,返信先
のアドレスを入力することなく返信のメールを送信すること(乙4の100頁下か
ら3行)などが本件出願時に技術常識であったこと等を勘案すれば,刊行物1にお
いて,新規メールフォームを入手するためのメールが,メールサービスサーバ5の
アドレスを入力して同サーバ5に送られているかどうかは明確でなく,新規メール
フォームの取得のためには必ず「コンピュータの場所の入力をする」ということは
できない。
したがって,本件スクリプト91等は ,オペレータが電話機1においてメールサー
ビスサーバ5のアドレスを入力することにより取得されるとの原告の主張は失当で
ある。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)に対し
(1) 原告は,審決が周知文献1,2により周知技術1を認定したことが誤りで
あると主張するが,周知文献1,2は周知技術1を例示するものであり,他にも周
知文献は多数存在する(乙5の図6 ,【0015】 【0019】 【0020】 【0
, , ,
049】,乙6のの図7,【0055】∼【0058】等)から,審決の周知技術1
の認定に誤りはない。
(2) 刊行物1発明は,入力を促す特定の内容(例えば,「購入希望商品名」「購

入希望商品数」 「支払い方法選択」 「意思確認」など。段落【0049 】
, , )と,こ
れに対する回答内容(例えば,「アイテム1−1000円・・・アイテム5−30
00円 」 「1個・・・5個 」 「方法1・・・方法3 」 「注文します 」 「注文しま
, , , ,
せん」。段落【0061】)が電話機1に表示されるようにするものであり,これら
は質問とこれに対する回答と見なし得るから,本願発明が,刊行物1発明に対して
進歩性がないとした審決に誤りはない。
また,アンケートに見られるように,質問とそれに対する回答を相手方の情報端
末に表示することは,本件出願日前から技術常識であり,本願発明と周知文献1,
2は電子メールでデータを送信して回答を返信してもらう電子メール送信システム
という共通の技術であることからすれば,刊行物1発明において,周知技術1を適
用し ,「記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の質問内容と,その
質問内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするもの」と
することは,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,審決の相違点1についての判断に誤りはない。
3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り)に対し
(1) 原告は,周知技術2の「その回答内容」が何を意味するのか不明であると
主張するが,周知技術2における「その回答内容」の「その」とは ,「回答内容」
が「所定の操作がされた際」のものであることを意味し,「その回答内容」の意味
は明確であるから,原告の主張は失当である。
(2) 原告は,周知文献3の株相場情報の検索の例では,特定の株のデータ"GM"
を送信するために"www.stocks.com"というコンピュータの場所を入力していると主
張するが,ユーザが入力する特定の株のデータは,前記1(1)の①,②の意味での
「前記回答先のコンピュータの場所の入力」をすることなしに回答先のコンピュー
タの場所である"www.stocks.com"に送信されるものであるから,原告の主張は失当
である。
また,上記株相場情報の検索の例は,ユーザが特定の株のデータを入力してウェ
ブサイト"www.stocks.com"でデータベース調査をするプログラムを実行させるもの
であるが,ウェブサイトにおいて所定のコンピュータの場所を入力しないで当該コ
ンピュータにアクセスする技術として,そのコンピュータの場所に他のサイトや情
報端末が記憶する文書ファイルからリンクを張ることなどが本件出願時に技術常識
であったこと,周知文献3には"www.stocks.com"を入力するとの記載はないことな
どからすれば,周知文献3において,特定の株のデータ"GM"が"www.stocks.com"の
アドレスを入力して同ウェブサイトに送信されているのかどうかは明確でなく,必
ず「コンピュータの場所の入力を行っている」とはいえないから,原告の主張は失
当である。
(3) 原告は,周知文献4の図3に示すHTMLファイルのサービス制御スクリ
プトは,コンピュータの場所の入力をしなければ実行され得ないものであると主張
するが,前記(2)のとおり,ウェブサイトにおいて所定のコンピュータの場所を入
力しないで当該コンピュータにアクセスする技術が本件出願時に技術常識であった
こと,周知文献4の図3のCGIを含むFORMタグによって表示される図8の
ホームページのアドレスが,図3のサービス制御スプリプト中に示される"www.abc.
co.jp"(本願発明の「回答先のコンピュータの場所」に相当。)であるか否かは明
らかでなく,"www.abc.co.jp"以外である可能性もあること等を勘案すれば,周知
文献4において,サービス制御スクリプトを実行するために必ず「コンピュータの
場所の入力を行っている」とはいえないから,原告の主張は失当である。
(4) 原告は,周知文献3,4は本願発明のような電子メール送信システムの発
明をするに際し参考とはなり得ないと主張するが,刊行物1発明も周知技術2も情
報端末においてHTMLによるFORMタグなどを用いたスクリプトを受信し「回
答先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信する」とい
う共通の技術分野に属すること,HTML形式のメールを送受信すること及びHT
MLにおいてCGIプログラムの起動等のコマンドを設けることは本件出願時に技
術常識(乙1の155頁,乙2の173頁 ,乙3の360,361頁,乙7)であっ
たこと等を勘案すれば,相違点2は刊行物1発明と周知技術2から当業者が容易に
想到し得たことである。
また,原告は,本願発明が想到されるためには,回答内容の処理が回答内容の送
信と同時に自動的に行われるようにするという発想が必要であると主張するが,本
願明細書の請求項1には「回答内容の処理が回答内容の送信と同時に自動的に行わ
れる」との記載はないから,原告の主張は請求項1の記載に基づかない主張であり ,
失当である。
(5) 原告は,審判合議体が周知文献3,4を摘示して拒絶理由通知を発するこ
となく審決をしたことは,特許法159条2項において準用する同法50条の規定
に違反すると主張するが,周知文献3,4は,周知技術2を例示するための文献に
過ぎず,本来,周知技術は当業者ならば当然知っているはずの技術であり,それを
認めるための根拠となる文献を事前に出願人に告知する必要はないから,審決に上
記手続違背はない。
4 取消事由4(顕著な作用効果を看過した誤り)に対し
原告は,本願発明が刊行物1発明との対比において顕著な効果を奏すると主張す
るが,本願発明の奏する効果は,刊行物1発明及び周知技術1,2から当業者が予
測できる範囲のものであるから,原告の主張は失当である。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)について
(1) 本願発明について
ア 本願明細書の請求項1の記載は,前記第2の2(発明の要旨)のとおりであ
り,これを以下に再掲する。
「 請求項1】
【 ネットワークを経由して相手方の情報端末に電子メールを送る
電子メール送信システムであって,
送信する電子メールのデータを記憶した記憶手段と,
記憶手段にデータが記憶された電子メールを所定のプロトコルに従って相手方に
送信する送信手段とを備えており,
前記記憶手段が記憶している電子メールのデータは,特定の質問内容と,その質
問内容に対する回答内容とが相手方の情報端末に表示されるようにするものであっ
て,相手方の情報端末において所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネット
ワーク上の所定の場所にある回答先のコンピュータに送信するコマンド文を含んで
おり,
このコマンド文は,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所
の入力をすること無しに前記回答内容を送信するものであって,前記回答内容を処
理するプログラムを実行するものであることを特徴とする電子メール送信システ
ム。」
イ 本願明細書の発明の詳細な説明には,発明の実施の形態について,以下の記
載がある(甲6,7)。
(ア) 「 0014】図2に示す電子メールの内容は,前述したようにHTML

で記述されており,FORMタグを使っている。回答内容42は,実は,CGI(C
ommon Gateway Interface)プログラムで処理されるようになっている。FORMタ
グのFORM ACTIONコマンド文には,このCGIプログラムが存在するW
WWサーバのURLとCGIプログラムの名前が記述されている。図2から解るよ
うに,回答内容42はラジオボタンで作成されている。また,図2は示されていな
いが, 送信」のクリックボタンがある。このボタンは,Submitボタンとなっ

ており,これがクリックされると,データがCGIに渡されてCGIプログラムが
起動するようになっている。」
(イ) 「 0015】別の例としては,回答内容42を電子メールで送信するこ

とも可能である。即ち,FORM ACTIONのコマンド文として,mailto: の
次に所定の電子メールアドレスを記述する。送信ボタンがクリックされると,デー
タが電子メールの形でそのアドレスに送られることになる。但し,iモードの場合 ,
mailto: を実行すると電子メールの送信画面になるので,ここでもう一度送信ボタ
ンをクリックするようにする。」
(ウ) 「 0016】いずれにしても,本実施形態の電子メール送信システムで

は,メールを受け取った人は,ラジオボタンを選択し,送信ボタンをクリックする
という極めて簡単な操作でメールに対する回答を行うことができる。本明細書にお
いて,このような電子メールを,「イージーリターンメール」と名付ける 。」
(エ) 「 0017 】イージーリターンメールは,上述したように ,送る電子メー

ルの中にそれに対する返事の部分の含ませ,送信ボタンのクリックだけで返事がで
きるようにしたものである。・・・」
ウ 以上のア及びイの記載並びに弁論の全趣旨によれば,本願発明について,次
のことが認められる。
(ア) 本願発明に係る電子メールシステムは,電子メールのデータに「相手方の
情報端末において所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネットワーク上の所
定の場所にある回答先のコンピュータに送信するコマンド文」を含むものであり,
そのコマンド文は,「相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所
の入力をすること無しに前記回答内容を送信するもの」である。
(イ) 本願発明には,電子メールのデータにHTMLでFORMタグのコマンド
文を記述したものが含まれる。そして,FORMタグのACTION属性として,
"mailto:"の次に所定の電子メールアドレスを記述すると,当該コマンド文は,コ
マンド文を受け取る相手方の情報端末において「所定の操作」がされた際,改めて
送信先の電子メールアドレスを入力することなく,回答内容を送信する。
すなわち,このような"mailto:"を含むコマンド文は,本願発明の「相手方の情
報端末において前記回答先のコンピュータの場所を入力すること無しに前記回答内
容を送信する」ものである。
(2) 刊行物1発明について
ア 刊行物1には,本件スクリプト91等について ,以下の記載がある(甲1)。
(ア) 「 0047】図13は,実行されるメールフォームのスクリプト91の

例を示す図である。また図14は,スクリプト91の実行によって実現されるデー
タの入力補助画面92∼95の例を示す図である。スクリプト91は,WWWシス
テムで利用され,HTMLなどのブラウザ言語のスクリプトで拡張して定義される
テキストや画像で構成される所定形式のデータである。前記データ入力補助UI実
現部32は,該スクリプト91を解釈して実行し,前記所定の形式に適応して定義
されるフォームダグ(判決注: フォームタグ」の誤記と認める 。
「 )を用いた入力補
助機能のための入力補助画面92∼95を実現する。
実現される画面92∼95は ,
たとえば航空券の予約,ホテルの宿泊予約および商品の購入申込み予約時における
データ入力のための画面である。図14に例示した画面92∼95は,商品の購入
申込み予約時におけるデータ入力のための画面である。」
(イ) 「 0052】なお,表示画面92∼95にはクリアボタン100および

送信ボタン101が表示される。クリアボタン100によって画面92∼95が消
去され,送信ボタン101によって入力されたデータの送信が指定される。」
(ウ) 「 0059】図18は,スクリプトメッセージ生成部62で生成された

返信用スクリプト121の例を示す図である。返信用スクリプト121は電話機1
からの受信メールを解析して作成されたものであり,電話機1に応じた形式のデー
タである。返信用スクリプト121は,具体的に,前記スクリプト91と同一形式
である,WWWシステムで利用され,HTMLなどのブラウザ言語のスクリプトで
拡張して定義されるテキストや画像で構成される所定形式のデータである。電話機
1はサーバ5で作成される返信用スクリプトの形式を考慮して送信データを作成す
る。したがって,このようなデータを受信したサーバ5は返信用スクリプト121
の作成が容易である。」
(エ) 「 0061】受信されたスクリプト121は,スクリプト解析部31で

解析され,データ入力補助UI実現部32で実行されて,図19に示されるような
データの入力補助画面125が実現される。画面125によって注文データが確認
でき,オペレータはこの内容を見て注文するかしないかの意志表示を行う。画面1
25では,具体的に,入力ガイダンス126は注文データの確認内容や注文の意志
表示を促す内容である。チェックボタン127は,注文の意志表示を選択して入力
するものである。」
(オ) 「 0066】
【 ・・・ステップRA11では,データ入力補助UI実現部3
2が起動されて,上述したような入力補助画面が形成される。次のステップRA1
2で,実現された入力補助画面によってデータが入力されると,ステップRA13
で送信処理を実行し,ステップRA14で任意形式のメッセージを作成し,ステッ
プRA15で作成された任意形式のメッセージをメール本文として送信し,ステッ
プRA16でOutBox部29に送信終了メールとして登録し,本処理を終了す
る。」
(カ) 図13,18には,いずれも「
」との記述がある。また,図14,19には,入力されたデー
タの送信を指定する送信ボタン101が表示されている。
イ 以上の記載及び弁論の全趣旨によれば,刊行物1発明について,次のことが
認められる。
(ア) 電話機1に送信される電子メールのデータに含まれる本件スクリプト91
等のコマンド文には,いずれもFORMタグのACTION属性として,"mailto:
"の次に電子メールアドレス"sample1@sample.co.jp"が記述され,送信先の電子メー
ルアドレスがコマンド文の一部として予め記述されている。
(イ) そのため,電話機1においては,送信ボタン101により送信を指定する
と,改めて送信先の電子メールアドレスを入力することなく,入力補助画面に表示
された特定の内容に対する回答内容がメールサービスサーバ5に送信される。
(3) 一致点についての判断
ア 以上に認定判断したところによれば,刊行物1発明は,本件スクリプト91
等に含まれるコマンド文により ,電話機1で回答内容の送信のための操作をすると,
回答先のメールサービスサーバ5の電子メールアドレスを入力することなく,回答
内容を同サーバ5に送信するから,上記コマンド文は,本願発明の「相手方の情報
端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内
容を送信するもの」であるということができる。
したがって,この点で本願発明と刊行物1発明とが一致するとした審決の認定に
誤りはない。
イ これに対し,原告は,本件スクリプト91等は,オペレータが電話機1にお
いてメールサービスサーバ5のアドレスを入力したことにより取得するのであるか
ら,本件スクリプト91等に含まれるコマンド文は,電話機1において同サーバ5
のアドレスを入力することにより回答内容を送信するものであると主張する。
(ア) そこで,まず,本願発明の「このコマンド文は,相手方の情報端末におい
て前記回答先のコンピュータの場所を入力すること無しに前記回答内容を送信す
る」との要件の意義について検討する。
本願明細書の請求項1には「相手方の情報端末において所定の操作がされた際に
その回答内容を前記ネットワーク上の所定の場所にある回答先のコンピュータに送
信するコマンド文」と記載されているから,請求項1の「コマンド文」は ,「相手
方の情報端末において所定の操作がされた際に 」「回答内容を送信する」ものであ

る。そして, 所定の操作」の際にコマンド文は回答内容を送信するのであるから ,

コマンド文は,回答内容を送信する時点で実行されるものである。
また,請求項1の「このコマンド文は,相手方の情報端末において前記回答先の
コンピュータの場所を入力すること無しに前記回答内容を送信する」との記載から,
「相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所を入力すること無し
に前記回答内容を送信する」とは,コマンド文の機能に関する記載であると認めら
れるところ,上記のとおり,コマンド文は,回答内容を送信する時点で実行される
ものであるから,「コマンド文は,・・・回答先のコンピュータの場所を入力するこ
と無しに前記回答内容を送信する」とは,コマンド文が実行されるときに,回答先
のコンピュータの場所を入力することなしに回答内容を送信することを意味するも
のと解するのが相当である。
(イ) そして,以上に判示したところに,本願明細書の請求項1には,コマンド
文がどのような手段により入手されるかについての具体的な記載がないことを併せ
考慮すると,本願発明は,コマンド文が実行されるときに,回答先のコンピュータ
の場所を入力することなしに回答内容を送信することを発明の特定事項としたもの
であり,仮にコマンド文を入手するためにコンピュータの場所を入力する必要が
あったとしても,この点を発明の特定事項としていない以上,そのことは,本願発
明の構成とは無関係であると解するほかないというべきである。
そうすると,刊行物1発明は,本件スクリプト91等のコマンド文が実行される
ときに,回答先のコンピュータの場所を入力することなしに回答内容を送信するも
のであるから,本願発明の「コマンド文は,相手方の情報端末において前記回答先
のコンピュータの場所を入力すること無しに前記回答内容を送信する」との構成を
有するものと認められ,原告の主張するように,本件スクリプト91等がオペレー
タが電話機1においてメールサービスサーバ5のアドレスを入力したことにより取
得されるとしても,そのことは本願発明の構成とは無関係の事情であるから,上記
認定を左右するものではない。
ウ したがって,取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について
(1) 原告は,審決が,周知文献1,2により周知技術1を認定したことについ
て,周知技術は多数の公知文献が存在していることによって認定すべきものであり,
たった2つの文献によって周知技術を認定することはできないから,審決の周知技
術1の認定は誤りであると主張する。
ア 周知文献1,2に周知技術1のとおりの技術内容が記載されていることは,
当事者間に争いがない。
また,平成11年4月20日に出願され,平成12年11月2日に公開された 電

子メール装置および記録媒体」との名称の発明に関する特開2000−30586
9号公報(乙5。以下「周知文献5」という。)には,以下の記載がある。
(ア) 「 0015】送信手段1dは,確認手段1cによって,実際に送信する

ことが確認された場合には,送信日時特定情報によって特定される日時に電子メー
ルを送信する。設定内容変更手段1eは,確認手段1cによる確認時において,記
憶部1gに記憶されている電子メールの設定内容 例えば,
( 送信日時および電子メー
ルのメッセージ等)を必要に応じて変更する。」
(イ) 「 0019】電子メール作成手段1jは,条件入力手段1iから入力さ

れた条件に基づいて,電子メールを作成して送信するための業務を作成して,記憶
部1gの所定の領域に格納する。・・・
【0020 】次に,以上の実施の形態の動作について説明する。なお,以下では ,
データベース1hに記憶されている会員情報ファイルから所定の条件に該当する会
員を選択し,その会員に対して所定のアンケートを電子メールにて送信する場合を
例に挙げて説明を行う。」
(ウ) 「 0030】
【 ・・・その下のテキストボックス46には,電子メールに添
付する本文が格納されているファイル(メッセージファイル)のファイル名が入力
される。この例では ,「inquiry1」が入力されており,これは,図6に示
すメッセージに対応している。なお,図6に示すメッセージは,新車「EXORM」
に関するアンケートであり,この車のイメージ,価格設定,および,この車に対す
る興味の有無等が回答項目として設定されている。」
(エ) 「 0049】例えば,図7に示す業務の場合,送信日時である「199

9/4/5/9:00」になった場合またはこの日時を徒過した場合には,送信手
段1dは図8に示すような電子メールを生成し,ネットワーク3を介して該当する
端末装置に対して送信する。なお,図8は,ユーザIDが「10112」である会
員に対する電子メールの一例である。この例では,差出人として「abc@dom
ain1.co.jp」が付加されている。宛先としては「yama@abc.n
e.jp」が付加されている。また,Subjectとしては「EXORMのアン
ケート」が付加されている。更に,メールの本文としては,図6に示すメッセージ
ファイルの内容が付加されている。」
(オ) 「 0051】このようにして送信された電子メールは,ネットワーク3

を介して該当する端末装置に対して送信され,その結果,該当する端末装置では所
定のアプリケーションプログラムを起動することによりこの電子メールを参照する
ことができる。」
(カ) 図6には ,「・・・以下の質問にご回答下さいますようお願いします。」と
の記載に続けて,質問項目として ,「EXORM のイメージは」とこれに対する回答の
選択肢「(a)かっこいい」∼「(c)いまいち」など,3つの質問とこれに対する回答
の選択肢が記載されている。
イ さらに,平成10年12月7日に出願され,平成12年6月23日に公開さ
れた「電子メール装置,及び電子メールプログラムが記録された記録媒体」との名
称の発明の特開2000−172587号公報 乙6。 「周知文献6」
( 以下 という 。)
には,以下の記載がある。
(ア) 「 0052】記憶装置36に格納されるプログラムとしては,電子メー

ルの送受信を行なう電子メールプログラム,アンケートに関する情報をアンケート
データベースとして管理記憶するアンケート管理プログラム,受信した電子メール
と会員データベース34に登録された情報をもとにしてアンケートを集計するアン
ケート集計プログラム等が含まれている。各プログラムがCPU30により実行さ
れることで各機能が実現される。また,記憶装置36(判決注: 記憶装置18」

は「記憶装置36」の誤記と認める 。)に格納されるデータとしては,アンケート
管理プログラムによって管理されるアンケートデータベース,電子メールプログラ
ムの実行により受信された電子メールなどがある。これらのプログラムやデータは ,
必要に応じてRAM38に読み出されてCPU30によりアクセスされる。」
(イ) 「 0055】まず,プロバイダ(電子メール装置)から会員データベー

ス34に登録された会員に対して,電子メール機能によってアンケートの回答を要
求する電子メールが送信される。アンケートの内容としては,選挙の動向,教育問
題,環境保護意識調査など,様々な内容が考えられる。アンケートには,複数の質
問事項が用意されており,各質問事項に対する回答を要求する 。」
【0056】「例えば,アンケートの電子メールとしては,図7に示すようなも
のがある。図7に示すアンケートは,旅行に関するアンケートであり,例えば質問
項目1 旅行したい国はどこですか? 」 質問項目2 予算はいくらくらいですか?」
「 , 「
などの質問項目が設けられている。
「 0057】電子メール装置(CPU30)は,通信ユニット32を介して,

これらの内容の電子メールを会員データベース34に登録された会員に対して送信
する。
【0058】このアンケートの電子メールを受信した会員は,各質問項目に対し
て回答を記入し,それをプロバイダに対して電子メールとして返送する。なお,ア
ンケートに対する回答の方法としては,受信した電子メールに対して回答内容であ
る文字列を入力する,あるいは予め用意された複数の選択項目から選択するといっ
た方法を用いることができる。」
ウ 周知文献5,6の以上の記載によれば,これらの周知文献にも周知技術1が
開示されているものと認められる。
そして,周知文献1,2,5,6における周知技術1に関連する記載内容として
は,いずれも,周知技術1は,出願に係る発明を説明するための技術事項であって,
その技術内容を,進歩性を有する技術などとして取り立てて説明するまでもない,
いわば従来技術として記載されていることからみると,上記各周知文献においては,
周知技術1は当業者の技術常識として記載されているものと認められる。
しかして,複数の異なる出願人に係る公開特許公報に従来技術として記載された
技術事項は,当該文献の性質上,広く当業者に知られたものと推定することができ
るから,周知技術1の技術内容は当業者に広く知られたものと認めるのが相当であ
り,これを左右する証拠はない。
したがって,審決の周知技術1の認定に誤りはない。
(2) 原告は,周知文献1,2は電子メールの送受信によりアンケートを行う発
明に係るものであるのに対し,刊行物1発明は,メールフォームを使って商品注文
のような送信を行う技術に関するものであり,刊行物1発明においては,アンケー
トのような質問と回答とを行うことは想定されていないから,刊行物1発明のメー
ルサービスサーバ5に記憶されるFORMタグで記載されたデータを,周知技術1
を用いて「特定の質問内容と,その質問内容に対する回答内容とが相手方の情報端
末に表示されるようにするもの」とすることは,当業者が容易に想到し得ることで
はないと主張する。
ア 刊行物1(甲1)には,以下の記載がある。
(ア) 「 0016】本発明に従えば,通信装置は,サーバからのスクリプトを

複数格納し,その中の1つを選択的に実行して入力補助機能を実現する。複数格納
されるスクリプトは,たとえば航空券の予約,ホテルの宿泊予約および商品の購入
申込み予約(オンラインショッピング)などの条件にそれぞれ適応した入力補助機
能を実現するためのデータである。したがって,複数の入力補助機能の中のオペレー
タが望む機能を選択的に実現することができ,高い利便性が得られる。」
(イ) 「 0049】図14の商品購入申込み予約時のデータ入力のための画面

92∼95では ,具体的に ,入力ガイダンス96は商品の購入を促す内容や ,氏名,
住所,購入希望商品名,数および支払い方法の入力を促す内容である。文字入力ボ
ックス97は,氏名や住所を入力するものである。チェックボックス98は,購入
希望商品名および数を選択して入力するものである。チェックボックス98を入力
ペン42で指定すると,商品名リストや商品数を表示したサブ画面98a,98b
が表示される。チェックボタン99は,支払い方法を選択して入力するものである。」
(ウ) 「 0061】受信されたスクリプト121は,スクリプト解析部31で

解析され,データ入力補助UI実現部32で実行されて,図19に示されるような
データの入力補助画面125が実現される。画面125によって注文データが確認
でき,オペレータはこの内容を見て注文するかしないかの意志表示を行う。画面1
25では,具体的に,入力ガイダンス126は注文データの確認内容や注文の意志
表示を促す内容である。チェックボタン127は,注文の意志表示を選択して入力
するものである。」
(エ) 図11には,メールフォームとして,「XY書店購入フォーム」 「XXデ

パート注文フォーム」「航空券予約フォーム」「天気予報」が記載されている。
, ,
(オ) 図14には,入力補助画面として, 購入希望商品名」 購入希望商品数」
「 ,
「 ,
「支払方法選択」等の項目と, 購入希望商品名」には「アイテム1−1000円 」

∼「アイテム5−3000円」の5つの選択肢が, 購入希望商品数」には「1個」

∼「5個」の5つの選択が ,「支払方法選択」には「方法1」∼「方法3」の3つ
の選択肢が表示されることが図示されている。
(カ) 図19には,「ご注文ありがとうございました。注文内容を確認してくだ
さい 。」などの表示の下に「意思確認」の項目と「注文します」 「注文しません」

の選択肢の表示が図示されている。
イ 以上の記載によれば,刊行物1発明の利用方法としては,商品購入や航空券
の予約などがあり,
その場合に,サーバから電話機1に送信される電子メールのデー
タのコマンド文は,「購入希望商品名 」 「購入希望商品数 」 「支払方法選択」 「意
, , ,
思確認」などの項目と,これに対する「アイテム1−1000円∼アイテム5−3
000円 」 「1個∼5個 」 「方法1∼方法3 」 「注文します/注文しません」な
, , ,
どの複数の選択肢を電話機1に表示されるようにするものであることが認められ
る。
ウ そして,刊行物1発明の上記「購入希望商品名」「購入希望商品数」などの

項目に対する アイテム1−1000円∼アイテム5−3000円」 1個∼5個」
「 ,

などの選択肢は,その中の1つを顧客が選択し,これによって商品購入に関する顧
客の意志が示されるようにするものであるから,電話機1に表示される上記「購入
希望商品名」などの項目は,これに対応する複数の選択肢の中からどれを選択する
かを顧客に尋ねる趣旨で表示されるものであると容易に理解することができ,また,
そうであるからこそ,顧客は選択肢の中から1つを選択するのである。
そうすると,刊行物1発明においては,質問と回答が原告の主張するようなアン
ケートに対するものであることは想定されていないとしても,商品購入に関して顧
客の意志を確認する質問と回答とを行うことが想定されていることは明らかであ
り,両者は共に質問と回答により利用者の意志確認を行う点において共通するから,
この点に関する原告の主張は失当である。
そして,刊行物1発明が商品購入に利用された場合に,電話機1に表示される顧
客の意志を尋ねる趣旨の項目とこれに対応する複数の選択肢という組み合わせ表示
は,同様の趣旨の質問文とこれに対する回答内容という組み合わせ表示と互換し得
るものであることは容易に理解することができるのであり,このことに加え,刊行
物1発明と周知技術1は,電子メール送信システムにおいて,記憶手段が記憶して
いる電子メールのデータ中の一定の情報を相手方の情報端末に表示されるようにす
るという点で共通の技術であることを考慮すると,刊行物1発明に周知技術1を適
用し,上記「購入希望商品名」などの商品購入に関する項目とこれに対応する選択
肢という組み合わせ表示に代えて,商品購入に関する項目毎に複数の選択肢の中か
らどれを選択するかを尋ねる質問文とこれに対する回答内容を表示するようにする
こと,すなわち本願発明の「特定の質問内容と,その質問内容に対する回答内容」
を表示するようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであると認められる。
したがって,刊行物1発明のメールサービスサーバ5に記憶されるFORMタグ
で記載されたデータに周知技術1を適用し ,「記憶手段が記憶している電子メール
のデータは,特定の質問内容と,その質問内容に対する回答内容とが相手方の情報
端末に表示されるようにするもの」とすることは,当業者が容易に想到し得ること
である。
(3) 以上のとおりであるから,相違点1についての審決の判断に誤りはなく,
取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り)について
(1) 原告は,周知技術2の「その回答内容」の意味が不明であると主張するが,
周知技術2は,「情報端末において所定の操作がされた際にその回答内容を前記ネ
ットワーク上の所定の場所にある回答先のコンピュータに送信するコマンド文が,
相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力をすること無し
に前記回答内容を送信するものであって,前記回答内容を処理するプログラムを実
行するものであること」という技術であり,「その回答内容」の「その」が ,「回答
内容」が「所定の操作がされた際」のものであることを意味することは,その文意
に照らし,明らかであるから,周知技術2における「その回答内容」の意味は明確
である。
(2) 原告は,周知文献3,4には周知技術2の「コンピュータの場所の入力を
することなしに情報を送信すること」についての開示はないから,審決が,周知文
献3,4により周知技術2を認定したことは誤りであると主張するので,以下,検
討する。
ア まず,周知文献3について検討する。
(ア) 周知文献3は,平成9年10月21日に出願され,平成10年9月2日に
公開された「テレビ表示および制御のためのHTMLプロトコル」との名称の発明
に関する特開平10−234018号公報であるが,これには以下の記載がある。
(a) 「 0041】たとえば,ユーザがテレビを使用して株相場情報を検索す

ることを望むことができる。この場合,適切なウェブサイトが“www.stocks.com”
とすると,適切なサーバーファイルは“quotes”であり,ユーザが入力した funct
ion_parameters フィールドは,ウェブサイトにより認識された特定の株(たとえ
ば,GM)に対するシンボル,たとえば“tick=GM”(ここで“parameter_ID=tick で
あり,parameter_vale=GM である)となろう。この場合,プロセッサは以下の URL
をウェブサイト・サーバーへ通信する。」
(b) 「 0042】http://www.stock.com/quotes?tick=GM

ここで,“?”はデータベース調査を実行するサーバーにおけるプログラムのネー
ム(この場合,“quotes”)とそこへと通過したパラメータ(たとえば tick=GM)と
の間のセパレータとして HTML FORM コマンドを定義することより特定化される。パ
ラメータおよびそれらの値の範囲を定めるために使用されたシンタックスは,HTML
FORM タイプ内の POST 法と同じ方法で定義される。」
(c) 「 0043】一般的に,ハイパーテキストマークアップエレメント FORM

は,見る者からの入力に対する対象を含むページの領域を定義するために使用され
る。対象は,入力フィールド,およびインターラクティブな対象(ポップアップメ
ニュー,チェックボックスおよびボタンのようなもの)であってもよい。ページに
は複数のフォームがあり,それぞれが,それぞれ,タグおよびで開
始および終了を行う。開始 FORM タグは ,ユーザが入れた情報で ,取るべきアクショ
ンを特定する ACTION 属性を取る。ACTION 属性は,URL を CGI スクリプトの URL か
MAILTO URL のいずれかであり得るその値として取る。たとえば,入力フィールド
“tick=CM”が受信されると,そのアクションは,株価を含む要求された情報を与
える一形態の HTML のページを送ることである。POST マークアップ要素は,FORM 内
容が標準コンフィグレーションであることを示す。」
(イ) 以上の記載によれば,周知文献3には,テレビを使用して株相場情報を検
索する技術が開示されており,その技術内容は次の(a)ないし(c)のようなもので
あることが認められる。
(a) 上記技術は,コマンド文にHTMLのFORMタグを使用する。そして,
FORMタグのACTION属性にはCGIスクリプトが存在するウェブサイト・
サーバーのURL,すなわち「コンピュータの場所」が記述されている。
(b) ユーザが情報端末でパラメータ(特定の株に対するシンボル)を入力し,
情報端末でコマンド文が実行されると,パラメータはデータとして上記ウェブサイ
ト・サーバーに送信される。その際,上記のとおり,送信されるデータの処理を行
うコンピュータの場所が予めコマンド文の一部として記述されているため,送信先
のコンピュータの場所を入力することなしにデータ(パラメータ)がウェブサイト
・サーバーに送信される。
(c) 同サーバーがデータを受信すると,CGIスクリプトによりその処理が実
行される。
(ウ) 上記(イ)認定のとおり,周知文献3には,周知技術2の「コンピュータの
場所の入力をすることなしに情報を送信すること」についての開示があるから,原
告の主張は理由がない。
なお,原告は,周知文献3では,特定の株のデータを"www.stocks.com"に送信す
るために"www.stocks.com"のサイトに到達しなければならず,そのためには何らか
の入力を能動的に行う必要があるが,そのような入力は,結局は,"www.stocks.co
m"というコンピュータの場所を入力していることに他ならないとも主張する。
しかしながら,審決が周知技術2を認定した趣旨は,刊行物1発明に周知技術2
を適用して相違点2について判断をするためであるから,周知技術2の「コマンド
文が,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所を入力すること
無しに前記回答内容を送信するもの」の意味するところは,本願発明の「このコマ
ンド文は,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力をす
ること無しに前記回答内容を送信するもの」と同義に解釈すべきである。
そして,本願発明の請求項1の「このコマンド文は,相手方の情報端末において
前記回答先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信する
もの」の意義は,前記1(3)イに説示したとおりであり,周知文献3においては,
上記イ説示のとおり,ユーザの情報端末でコマンド文が実行されると,コンピュー
タの場所を入力することなしにデータ(パラメータ)がその処理をするウェブサイ
ト・サーバーに送信されるのであるから,本願発明の「このコマンド文は,相手方
の情報端末において前記回答先のコンピュータの場所の入力をすること無しに前記
回答内容を送信するもの」との技術を開示しているといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 次に,周知文献4について検討する。
(ア) 周知文献4は,平成9年2月28日に出願され,平成10年9月11日に
公開された「スクリプト解釈実行機能を有するファクシミリ端末利用型WWW検索
装置,および,画像データベース装置」との名称の発明に関する特開平10−24
0638号公報であるが,これには以下の記載がある。
(a) 「 0025】また,従来の技術の問題点(5)で指摘したように,従来

の装置ではWWW上のCGIが実行出来ない。本発明では,PB入力により選択さ
れた複数個のパラメータを一時的に保持して,得られた複数個のパラメータを制約
条件としてCGIプログラムを実行する手段を有するものとする。」
(b) 「 0026】具体的には,例えば図8に示すようなCGIを利用したホー

ムページがあったとする。図8に示すページのソースの一例を図3に示す。<FO
RM>と</FORM>で挟まれた部分がボタンやテキストフィールド,セレクト
ボックスの表示を記述している部分である。<FORM>と</FORM>の間に
は同時に,選択もしくは入力された値が入るべき変数および,各変数を引き数とし
て実行すべきプログラム名が記述されている。」
(c) 「 0027】図3の例では変数名が,daytype,day,gen

re,であり,実行すべきプログラム名が
【0028】
【数1】http://WWW.abc.co.jp/ticket−cgi/
ticket
である。同じCGIプログラムをファックス利用型WWW検索装置2からも実行可
能とするために,図3のイタリック部分に記述したようにサービス制御スクリプト
を記述しておく。」
(d) 「 0065】図3のHTMLファイルのサービス制御スクリプト例には,

チケット販売に関するサービス制御手順が記述されている。例えば,はじめての場
合のみ,パラメータとコードの一覧表の対応表を取得するために[1]の音声案内
後,1#を入力する 。[1−1]には画像データとして送信すべきファイルが指定
されており,該ファイルをWWW検索部2−3を介して検索し,HTMLファイル
/画像変換部2−6により画像変換し,回線制御部2−1を介してファクシミリ端
末1に画像データとして出力する。」
(e) 「 0066】2回目以降のユーザは , 1]の音声案内後2#を入力する 。
【 [
[1−2]にはCGIのパラメータを受け取り,CGIを実行するための命令が記
述されている。CGIのパラメータを選択する場合は,音声案内を流した後のPB
音でパラメータの選択を行い,選択されたパラメータをスクリプト解析・実行部2
−7が保持しておく。」
(f) 「 0067】本実施形態例では,
【 「日付種別を入力して下さい」という音
声案内を回線応答部2−1を介して流してユーザが1#を入力するとパラメータ
「daytype=a」がスクリプト解析・実行部2−7が保持し,次の音声案内
「日付を入力して下さい」を流してユーザが日付に対応する970115#を入力
するとパラメータ「day=970115」がスクリプト解析・実行部2−7が保
持され,また次の音声案内「ジャンルを入力して下さい」を流してユーザがジャン
ルサッカーに対応する11#を入力するとパラメータ「genre=11」が保持
される。」
(g) 「 0068】そして,CGIの実行命令が記述された行で,スクリプト

解析・実行部2−7がこれら三つのパラメータをACTION=で指定されたプロ
グラムにWWW検索部2−3を介して渡し,CGIプログラムの実行を行う。CG
I実行の為のプロトコルはHTTPと同様でよく,本装置のために特殊なプログラ
ムを用意する必要はない。」
(h) 図3は,チケット販売のホームページのHTMLソースファイルであるが,
サービス制御スクリプトのCGI ACTIONのコマンド文として ,「(CGIGET,AC
TION=http://WWW.abc.co.jp/ticket-cgi/ticket)」との記述がある。
(イ) 以上の記載によれば,周知文献4には,ファクシミリ端末からファクシミ
リ端末利用型WWW検索装置を利用してWWWにアクセスし,ファクシミリ端末の
プッシュボタン入力によりWWW上のCGIプログラムを実行してサービスの提供
を受ける技術が開示されており,同技術における周知文献4の図3のサービス制御
スクリプトの実行は次のようなものであることが認められる。
(a) 同技術は,ユーザがファクシミリ端末からファクシミリ端末利用型WWW
検索装置に電話をかけ,回線が接続した状態で,ユーザのプッシュボタン入力に応
じて同検索装置がWWWの検索を行うものである。
(b) 同検索装置が検索したホームページのHTMLファイルは同検索装置に送
られ,同検索装置がこれを解析するが,HTMLファイルが図3の場合には,サー
ビス制御スクリプトが記述されているので,同検索装置がこれを実行する。
(c) 同検索装置は,図3のサービス制御スクリプトに従ってユーザに対し,パ
ラメータのプッシュボタン入力を促す。そして,ユーザがパラメータをプッシュボ
タン入力すると,同検索装置は,入力されたパラメータを保持し,サービス制御ス
クリプトのCGIプログラムを実行するときに,保持したパラメータを図3のCG
Iプログラムのあるサーバー(http://WWW.abc.co.jp/ticket-cgi/)に送信する。
(d) その際,サービス制御スクリプトのCGI ACTIONのコマンド文に
は,予めCGIプログラムを実行するコンピュータのアドレス"http://WWW.abc.co.
jp/ticket-cgi/"が記述されているため,同検索装置は,送信先のCGIプログラ
ムのあるサーバーのアドレスを入力することなしに,CGIプログラムのパラメー
タをCGIプログラムのあるサーバーに送信する。
(ウ) 上記(イ)で認定したとおり,周知文献4のファクシミリ端末利用型WWW
検索装置は,サービス制御スクリプトにより,図3のCGIプログラムを実行する
際にパラメータをCGIプログラムのあるサーバーに送信するが,サービス制御ス
クリプトのコマンド文に予めCGIプログラムのあるサーバーのアドレスが記述さ
れているため,送信先のアドレスを入力することなしにパラメータを送信するもの
である。
したがって,周知文献4には,周知技術2の「コンピュータの場所の入力をする
ことなしに情報を送信すること」についての開示があるから,原告の主張は理由が
ない。
ウ 以上のとおり,周知文献3,4には周知技術2の「コンピュータの場所の入
力をすることなしに情報を送信すること」についての開示があるから,その開示が
ないことを理由に審決の周知技術2の認定が誤りであるとする原告の主張は,その
前提を欠き,失当である。
(3) 原告は,周知文献3,4はウェブサイトにアクセスして情報を取得する技
術に関するものであるから,本願発明のような電子メール送信システムの発明をす
るに際しては参考とはなり得ず,また,仮に,周知文献3,4を参照して,刊行物
1発明の"mailto:"をCGIプログラムの起動コマンドに変更したとしても,本願
発明が想到されるためには,回答内容の処理が回答内容の送信と同時に自動的に行
われるようにするという発想が必要であるが,そのような点を動機付ける記載は刊
行物1には存在しないから,相違点2についての審決の判断は誤りであると主張す
る。
ア そこで検討するに,周知文献3,4と本願発明の技術分野の相違を指摘する
点であるが,審決は,周知文献3,4から本願発明が容易に想到し得ると判断した
わけではなく,刊行物1発明と周知文献3,4から認められる周知技術2とを組み
合わせることにより,相違点2が容易想到であると判断したものであるところ,H
TML形式の文書をメールとして特定の相手先に送受信すること(刊行物1発明)
も,ウェブサーバのウェブページにアクセスしたユーザに送受信すること(周知文
献3,4)も,本件出願時に普通に行われていたこと(乙7)であり,刊行物1発
明と周知文献3,4は上記のような慣用される技術内容に共通性があること,刊行
物1発明と周知文献3,4は,どちらも情報端末において,HTML形式の文書に
おけるFORMタグなどのコマンド文を受信し,このコマンド文が「回答先のコン
ピュータの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信するもの」であり,こ
の点の技術内容でも共通していること,一般に周知技術はその性質上特段の阻害事
由がない限り当業者が適宜その適用を考慮し得るものであるところ,本件において
そのような特段の阻害事情があることを窺わせる証拠はないこと,HTML形式の
文書のFORMタグにおいて,情報端末からデータをCGIプログラムのあるサー
バーに送信し,これをCGIプログラムにより処理するとのコマンド文を記述する
ことは,本件出願時に技術常識であったこと(乙1の155頁,乙2の173頁,
乙7の訳文1頁,3∼4頁,7頁)等を併せ考慮するならば,刊行物1発明のメー
ルサービスサーバ5において,電子メールのHTML形式のデータに含まれるコマ
ンド文に周知技術2を適用し,相手方の情報端末において前記回答先のコンピュー

タの場所の入力をすること無しに前記回答内容を送信するものであって,前記回答
内容を処理するプログラムを実行するものである」コマンド文とすることは,当業
者が容易に想到し得たことであると認められるから,周知文献3,4と本願発明の
技術分野の相違を指摘する原告の主張は,採用することができない。
イ さらに,原告は,本願発明が想到されるためには,回答内容の処理が回答内
容の送信と同時に自動的に行われるようにするという発想が必要であるとも主張す
るが,この主張も,以下のとおり採用することができない。
すなわち,本願明細書の請求項1には,回答内容の処理が回答内容の送信と「同
時に自動的に行われる」との記載はなく,原告の主張は,本願発明を想到するため
に,請求項1に記載のない構成の発想を必要とするというのに等しく,採用するこ
とはできない。
また,この点は措くとしても,上記アで認定した本件出願時の技術常識を前提と
すれば,周知技術2の具体的な実施形態の1つとして,HTML形式の文書におい
てFORMタグのコマンド文のACTION属性にCGIプログラムのあるサー
バーを記述するという技術が含まれ,かつ,当業者であれば,当然そのような実施
形態を容易に認識し得るものと認められる。そして,そのような技術においては,
コマンド文が実行され,CGIプログラムのあるサーバーにデータが送信されると,
サーバーで同時に自動的にCGIプログラムがデータ処理を実行することになるか
ら,周知技術2を適用すること自体に,原告が主張するところの「回答内容の処理
が回答内容の送信と同時に自動的に行われる」との技術思想が含まれることになる。
そうすると,上記アで説示したとおり,刊行物1発明のメールサービスサーバ5
において,電子メールのHTML形式のデータに含まれるコマンド文に周知技術2
を適用することが容易であると認められる以上,当業者が原告の主張する「回答内
容の処理が回答内容の送信と同時に自動的に行われる」との技術思想に想到するこ
ともまた容易であるというべきである。
(4) 原告は,周知文献3,4は周知技術2の証拠とはなり得ないものであり,
審判合議体が拒絶理由通知を発して周知文献3,4を指摘していれば,反論や釈明
等を行えたのであるが,拒絶理由通知を経ることなく審決が行われたため,反論や
釈明等をする機会を奪われたから,結果的に,審決は,特許法159条2項におい
て準用する同法50条の規定に違反したものであり,取り消されるべきであると主
張する。
ア 甲第7号証及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成19年4月24日付け
の拒絶理由通知に対して本件補正をし,これにより,請求項1に係る発明に,「前
記回答内容を処理するプログラムを実行するものである」との事項が追加されたこ
とが認められる。そして,審決は,上記追加事項を相違点2と認定した上で,当該
追加事項は周知文献3,4等により認められる周知技術2と同一であるから,相違
点2は容易想到であると判断した。
イ 審判手続においては,上記のとおり,既に平成19年4月24日付けの拒絶
理由通知がされていることから,原告は,審判官が再度の拒絶理由通知をしなかっ
たことをもって特許法159条2項の準用する同法50条違反を主張するものと解
されるが ,原告が拒絶理由通知を要する理由として主張するところは,周知文献3,
4についての反論や釈明等の機会を奪われたということのみであって,再度の拒絶
理由通知が必要な場合を定める同法159条2項所定の要件に該当する具体的な事
実については何らの主張もしていないから,原告の同法50条違反の主張はそれ自
体理由がないというべきである。
また,上記のとおり,審決は,前記追加事項は周知技術であると判断したのであ
るが,周知技術は,当業者であれば当然知っているはずの技術であるから,拒絶理
由通知という形式で,上記追加事項が周知技術であるということを根拠となる文献
を摘示して事前に通知しなくても,審決の上記判断が不意打ちになることはないと
いうべきであり,実質的に見てもこの点について再度の拒絶理由通知をしなかった
ことが手続違背となるものでないことは明らかである。
したがって,原告の主張は理由がない。
(5) 以上に検討したとおりであるから,取消事由3は理由がない。
4 取消事由4(顕著な作用効果を看過した誤り)について
原告は,本願発明の作用効果が,刊行物1発明及び周知技術1,2から当業者が
予測できる範囲のものであるとした審決の判断が誤りであると主張するが,前記1
ないし3に説示したとおり,本願発明は刊行物1発明に周知技術1,2を適用して
当業者が容易に想到し得るものであり,相違点1,2はいずれも周知技術であるか
ら,刊行物1発明に周知技術を適用したときの作用効果も当業者が予測し得る範囲
のものというべきである。
したがって,原告の主張を採用することはできず,取消事由4は理由がない。
5 以上の次第であるから,審決取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を違
法とする事由もないから,審決は適法であり,本件請求は理由がない。
第6 結論
よって,本件請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田 中 信 義
裁判官
榎 戸 道 也
裁判官
浅 井 憲

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