ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成20(行ケ)10100 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成20年10月30日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告特許庁長官 原告株式会社旺文社 |
| 法令 |
商標権 商標法4条1項11号2回 |
| キーワード | 審決11回 商標権4回 刊行物2回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成17年8月5日,別紙商標目録記載(1)に示すとおりの構成か らなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品及び指定役務 を同目録記載(2)のとおりとして,商標登録出願(商願2005−76920 号。)したが,平成18年8月18日発送の拒絶査定を受け,同年9月15 日,同査定に対する不服の審判(不服2006−23369号事件)を請求 した。 |
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平成20年10月30日判決言渡
平成20年(行ケ)第10100号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成20年8月26日
判 決
原 告 株 式 会 社 旺 文 社
訴 訟 代 理 人 弁 護 士 加 藤 貞 晴
被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 今 田 尊 恵
同 井 岡 賢 一
同 小 林 和 男
同 森 山 啓
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2006−23369号事件について平成20年1月30日にした審決を取り消す。
第2 争いのない事実
特許庁における手続の経緯原告は,平成17年8月5日,別紙商標目録記載(1)に示すとおりの構成からなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品及び指定役務を同目録記載(2)のとおりとして,商標登録出願(商願2005−76920号。)したが,平成18年8月18日発送の拒絶査定を受け,同年9月15日,同査定に対する不服の審判(不服2006−23369号事件)を請求した。特許庁は,平成20年1月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,同年2月20日,その謄本を原告に送達した。審決の理由別紙審決書写しのとおりである。要するに,①本願商標は,「旺文社」の文字を小さく縦書きした右側に「レクシス」の文字を大きく顕著に横書きした構成からなり,「旺文社」の文字部分と「レクシス」の文字部分は視覚的に分離して看取されること,後者の文字部分も自他商品及び自他役務の識別力を有し,「レクシス」の称呼を生ずることからすれば,②本願商標と別紙引用商標目録記載1ないし6の各商標(以下,これらの商標を,同目録記載の番号に対応して,それぞれ「引用商標1」などといい,引用商標1ないし引用商標6をまとめて「各引用商標」という。)とは,観念については比較すべくもないものとしても,「レクシス」の称呼を共通にするものであり(本願商標と引用商標3,引用商標4及び引用商標6とは,外観においても近似する。),相紛れるおそれのある類似する商標であり,③本願商標の指定商品及び指定役務は,各引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似する商品又は役務を含むものであるから,本願商標は商標法4条1項11号により商標登録を受けることができない,というものである。
第3 当事者の主張
取消事由についての
(原告の主張)
審決は,以下のとおり,本願商標と各引用商標との類否判断を誤った違法があるから,取り消されるべきである。
(1) 本願商標における「レクシス」の文字部分について
「レクシス」の文字は,「語彙」という特定の親しまれた観念を有する語であるから,本願商標における「レクシス」の文字部分は,辞書等の商品及び役務の品質(語彙が豊富であること)を記述的に表したものにすぎず,自他商品及び自他役務の識別力を有しない。
(2) 本願商標の称呼について
本願商標における「レクシス」の文字部分は,前記(1)のとおり,自他商品及び自他役務の識別力を有しないから,取引者及び需要者が同文字部分に着目し,これから生ずる称呼をもって取引に資するということはできないこと,本願商標における「旺文社」の文字部分は,原告の商号として著名であることからすれば,本願商標からは,「オウブンシャ」及び「オウブンシャレクシス」の称呼のみが生じ,「レクシス」の称呼は生じない。
(3) 本願商標と引用商標3,4及び6との外観の共通性について
本願商標は,「レクシス」の文字部分のみからなるものではなく,その左に縦書きした「旺文社」の文字部分があるから,引用商標3,4及び6とは,外観において類似しない。
(4) 取引の実情について
外観,観念,称呼のうちの一点において類似する商標であっても,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同を来すおそれがないものは,類似する商標ということはできない。本願商標と各引用商標とは,観念においては全く類似性がなく,外観においても類似性がないことに加え,本願商標は「旺文社」という原告の著名な商号を冒頭に付したものであることからすれば,本願商標を使用した商品及び役務は,原告の出版・製作に係るものと容易に認識され,出所の誤認混同は生じ得ない。被告の反論以下のとおり,審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 本願商標における「レクシス」の文字部分について
ア 本願商標は,「旺文社」の文字を左側に小さく縦書きで,その右側に「レクシス」の文字を大きく顕著に表してなるものであり,漢字と片仮名の相違,縦書きと横書きの相違,文字の大きさの相違から,視覚的に一体のものとはいえない。イ 「LEXIS」という語が「レクシス」と発音され,「語彙」の意味を有する英語である(甲11)としても,我が国において,「レクシス」は「語彙」を意味する外来語として馴染みのない語であること(乙1∼7),「LEXIS」は一般に親しまれた英語であるともいえないこと(乙8∼11)からすれば,本願商標における「レクシス」の文字は,特定の親しまれた観念を有する語として認識されるものではなく,むしろ一種の造語と認識されるものである。そうすると,本願商標において,「レクシス」の文字部分からは特定の観念を生じないから,「旺文社」の文字部分と「レクシス」の文字部分とは,観念上も分離して認識されるといえる。ウ 本願商標に接する取引者,需要者は,その構成全体のうち,視覚的に顕著に表された「レクシス」の文字部分に着目し,これより生ずる「レクシス」の称呼をもって取引を行う場合があることは,経験則に照らし,自然なことといえる。エ 本願商標に接する取引者,需要者は,原告の商号を表す「旺文社」の文字を商品及び役務の取扱い主体を示す代表的な出所表示(ハウスマーク)ととらえ,「レクシス」の文字を個別の商品及び役務を特定するための商標と認識して,同文字に着目することも否定できないから,「旺文社」の文字部分と「レクシス」の文字部分は,分離して把握し得るものというべきであり,両文字部分が,全体として,常に一体不可分のものと認識されるべき特別な事情は存在しない。オ したがって,本願商標において,「旺文社」の文字部分と「レクシス」の文字部分は,それぞれが独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たすものといえる。なお,原告の発行に係る英和辞典のケースの下部に巻かれた 帯には,「英和辞典の新定番『レクシス』」の記載があり(乙12),「レクシス」の文字は,現に,自他商品の識別機能を果たす態様で商標的に使用されているといえる。
(2) 本願商標の称呼について
本願商標は,前記(1)のとおり,「旺文社」の文字及び「レクシス」の文字よりなるから,「レクシス」の称呼をも生ずるというのが自然であり,同称呼をもって取引されることも少なからずあるというべきである。一方,各引用商標は,その構成中の「LEXIS」の文字,あるいは,「レクシス」の文字から,「レクシス」の称呼を生ずる。したがって,本願商標と各引用商標とは,「レクシス」の称呼において共通する。
(3) 本願商標と引用商標3,4及び6との外観の共通性について
本願商標における「レクシス」の文字部分は,大きく顕著に表わされており,同文字部分と引用商標3,4及び6を構成する「レクシス」の文字とは,共に「レクシス」の片仮名文字であって,視覚的に異なった印象を与えるものでもないから,本願商標と引用商標3,4及び6とは,外観において近似した印象を与える類似の商標というべきである。
(4) 取引の実情について
一般に,簡易,迅速を尊ぶ取引においては,商標の一部により,簡略に称呼,観念されることがあり得るところ,前記(1)のとおり,本願商標構成中の「レクシス」の文字部分と「旺文社」の文字部分とは分離して把握され得るものというべきである。そして,本願商標と各引用商標は「レクシス」の称呼が同一であること(前記(2)),本願商標における「レクシス」の文字部分と引用商標3,4及び6とは近似した印象を与えるものであること(前記(3))に加え,「レクシス」あるいは「LEXIS」の文字からは特定の観念が生じ得ないこと(前記(1))等の事実を前提として,それぞれの商標の外観,称呼及び観念によって需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に観察すると,本願商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合には,商品又は役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれが十分あるというべきである。
第38類 「コンピュータを利用したメッセージ及び映像による通信,コン
ピュータ端末による通信,電子掲示板による通信,電子メールによる通信,ファクシミリによる通信,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,テレビ会議用通信端末による通信,テレビジョン放送,セルラー式電話による通信,光ファイバーネットワークによる通信」
第41類 「CD−ROM形式の電子出版物の制作,教育・文化・娯楽・ス
ポーツ用ビデオ・DVD・CD−ROMの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),書籍の制作,(電気通信回線を通じた)図書及び記録の供覧」別紙引 用 商 標 目 録登録第1635296号商標(引用商標1)引用商標1は,「LEXIS」の欧文字を書してなり,昭和55年11月17日に登録出願され,昭和58年11月25日に第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具,電気材料」を指定商品として設定登録された後,平成6年5月30日及び平成15年6月3日に商標権存続期間の更新登録がされ,平成17年7月27日に指定商品を第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」とする書換登録がされたものである。登録第2001251号商標(引用商標2)引用商標2は,「LEXIS」の欧文字を書してなり,昭和55年11月17日に登録出願され,昭和62年11月20日に第26類「書籍,新聞,その他本類に属する商品」を指定商品として設定登録された後,平成9年11月25日及び平成19年5月29日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。登録第2497876号商標(引用商標3)引用商標3は,「レクシス」の片仮名文字を書してなり,平成元年12月11日に登録出願され,平成5年1月29日に第26類「印刷物,書画,彫刻,写真,これらの附属品」を指定商品として設定登録された後,平成14年10月15日に商標権存続期間の更新登録がされ,平成16年1月28日に指定商品を第16類「印刷物」とする書換登録がされたものである。登録第2711308号商標(引用商標4)引用商標4は,「レクシス」の片仮名文字を書してなり,平成元年12月11日に登録出願され,平成7年11月30日に第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具,電気材料」を指定商品として設定登録された後,平成17年6月21日に商標権存続期間の更新登録がされ,同年11月30日に指定商品を第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」とする書換登録がされたものである。登録第5090519号商標(引用商標5)引用商標5は,「LEXIS」の欧文字を標準文字で書してなり,平成16年8月11日に登録出願され,平成19年11月9日に第9類「記録済みコンピュータプログラム,電子計算機用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるものを含む。),コンピュータ用プログラムを記憶させた記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品,電子出版物,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」,第16類「書籍,雑誌,パンフレット,小冊子,論文に関する印刷物,ニューズレター,その他の印刷物」,
第35類「経営の診断及び指導,市場調査,電子情報化された私用図書館の
設立及び維持の分野に於ける事業及びその管理に関する援助,コンピュータデータベースへの情報編集,コンピュータデータベースへの情報構築,コンピュータを利用した事業に関する調査情報の提供,コンピュータを利用した事業の調査,コンピュータを利用した調査又は研究のための電子計算機システムの操作に関する運用管理についての技術的な指導又は助言」,第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信」,第41類「知識の教授,書籍の制作,コンピュータを利用した調査又は研究の分野におけるセミナーの企画・運営又は開催」,第42類「コンピュータを利用した調査又は研究のための電子計算機設備に関する技術的な指導又は助言,コンピュータを利用した調査又は研究のための電子計算機プログラムの設計・作成・保守に関する技術的な指導又は助言,電子計算機の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,オンライン形式で双方向通信可能なコンピュータデータベースの設計・作成又は保守,双方向通信可能なコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,コンピュータソフトウェアの保守,ウェブサイトの作成と保守(他人のためのもの),コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),コンピュータによる文字信号・画像信号・音声信号の記録媒体への記録,データベースの検索,インターネットにおける検索エンジンの提供,インターネットサーバーエリアの貸与,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータを利用した工業所有権に関する調査又は研究,コンピュータを利用した訴訟事件その他に関する法令又は判例に関する調査又は研究」,第44類「医療情報の提供」及び第45類「コンピュータを利用した新聞・雑誌記事情報の提供」を指定商品及び指定役務として設定登録されたものである。登録第4987446号商標(引用商標6)引用商標6は,「レクシス」の片仮名文字を標準文字で書してなり,平成17年5月11日に登録出願され,平成18年9月15日に第9類「理化学機械器具並びにその部品及び附属品,航海用計器・計測装置並びにその部品及び附属品,測量用機械器具並びにその部品及び附属品,配電用又は制御用機械器具並びにその部品及び附属品,回転変流機並びにその部品及び附属品,調相機並びにその部品及び附属品,電池並びにその部品及び附属品,電気磁気測定器並びにその部品及び附属品,電線及びケーブル並びにそれらの部品及び附属品,電気アイロン並びにその部品及び附属品,電気式ヘアカーラー並びにその部品及び附属品,電気ブザー並びにその部品及び附属品,写真機械器具並びにその部品及び附属品,映画機械器具並びにその部品及び附属品,光学機械器具並びにその部品及び附属品,計量用機械器具並びにその部品及び附属品,測定機械器具並びにその部品及び附属品,信号用機械器具並びにその部品及び附属品,モニター付き監視装置並びにその部品及び附属品,監視カメラ並びにその部品及び附属品,救命用機械器具並びにその部品及び附属品,教育用視聴覚機械器具並びにその部品及び附属品,音声又は画像の記録・再生又は転送装置並びにその部品及び附属品,コンピュータ用磁気データ記録媒体並びにその部品及び附属品,記録用ディスク並びにその部品及び附属品,自動販売機並びにその部品及び附属品,駐車場用硬貨作動式ゲート並びにその部品及び附属品,金銭登録機並びにその部品及び附属品,手動計算機並びにその部品及び附属品,計算器並びにその部品及び附属品,データ処理装置並びにその部品及び附属品,コンピュータ並びにその部品及び附属品,コンピュータ周辺機器並びにその部品及び附属品,ディスクドライブ並びにその部品及び附属品,コンピュータ用キーボード並びにその部品及び附属品,モデム並びにその部品及び附属品,端子並びにその部品及び附属品,プリンター並びにその部品及び附属品,消火装置並びにその部品及び附属品,記録済みコンピュータソフトウェア,文字入力用コンピュータソフトウェア,インターネット通信用コンピュータソフトウェア,オンラインを通じて専有のデータベースへのアクセスを提供するためのコンピュータソフトウェア,調査及び研究を可能にする様々なトピックに関する情報のデータベースへのアクセスを提供するコンピュータソフトウェア,ユーザーが書類を裁判所及び政府機関に電子的に提出するのを可能にするコンピュータソフトウェア,表計算用コンピュータソフトウェア,オンラインリサーチにかかった料金を調査及び表示するためのコンピュータソフトウェア,リーガルサイテーション及び引用法律文献の確認・検証を行うコンピュータソフトウェア,関連事件の引用文献及びその他の法律資料を選択及び表示するコンピュータソフトウェア,法律の分野における法源・先例及び権威・権威者の一覧表を作成するためのコンピュータソフトウェア,簿記用コンピュータソフトウェア」を指定商品として設定登録されたものである。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は,本願商標と各引用商標が類似するとした審決の認定判断に誤
りはなく,原告主張の取消事由は理由がないと判断する。その理由は,以下
のとおりである。
商標の類否判断の基準について
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務
に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与
える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を
踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第1
号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参
照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商
標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そ
のものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は
役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合
や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認め
られる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(
オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号16
頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判
決・民集47巻7号5009頁,及び,最高裁判所平成19年(行ヒ)第2
号同20年9月8日第二小法廷判決参照)。
そこで,上記の観点から本件について検討する。
本願商標と各引用商標との類否について
(1) 本願商標の特徴(出所識別標識として印象を与える部分)
ア 本願商標の外観
本願商標は,「旺文社」の文字部分及び「レクシス」の文字部分から
なるものであり(前記第2の1,別紙商標目録(1)),複数の構成部分を
組み合わせた商標である。
本願商標は,「レクシス」の文字部分が,片仮名で大きく横書きさ
れ,その左端部に,「旺文社」の文字部分が漢字で小さく縦書きされた
ものである。「旺文社」3文字全体の縦の長さは,「レ」「ク 」「
シ」「ス」の各1文字の縦の長さと同一である。「旺」「文」「社」の
各文字の縦横の長さは,「レ」「ク」「シ」「ス」の各文字の縦横の長
さの4分の1に表記されている。本願商標において,「レクシス」の文
字部分は,大きさ及び位置からみて,「旺文社」の文字部分とは分離し
て表記されており,主として「レクシス」の文字部分が,看者の注意を
強く惹く態様で表記されている。
以上によれば,本願商標における外観から,「レクシス」の文字部分
が,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支
配的な印象を与える部分と認められる。
イ 本願商標の称呼
前記のとおり,本願商標における「レクシス」の文字部分が,取引
者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象
を与えるものであるから,本願商標からは,「レクシス」との称呼が生
ずる。
この点について,原告は,本願商標からは「オウブンシャ」及び「オ
ウブンシャレクシス」の称呼のみが生じ,「レクシス」の称呼は生じな
いと主張するが,上記説示に照らし,採用することができない。
ウ 本願商標における「レクシス」部分の識別力
各証拠によれば,①我が国では,「レクシス」の文字(片仮名)は馴
染みのある語ではないこと(乙1∼7),②仮に,同文字が「語彙」等
を意味する「LEXIS」との英単語(甲11,乙10,11)の片仮
名表記であると認識されることがあったとしても,「LEXIS」の欧
文字は,我が国において一般に親しまれている語とはいえないこと(乙
∼11),③原告の発行に係る「旺文社レクシス英和辞典」のケース
には,「英和辞典の新定番『レクシス』」との記載のある帯が巻かれて
おり(乙12),原告自身も「レクシス」の文字を,「語彙」という意
味で説明的に用いるのではなく,むしろ商品の出所識別標識として使用
していることが,それぞれ認められる。そうすると,本願商標におけ
る「レクシス」の文字部分は,取引者,需要者において,特定の親しま
れた観念を有する成語と認識されるものではなく,専ら商品又は役務の
出所識別標識として認識されるものといえる。
原告は,同文字部分について,商品又は役務の品質を記述的に表した
ものであると主張するが,上記認定事実及び判断に照らし,採用するこ
とができない。
エ 本願商標における「旺文社」の文字部分の識別力
本願商標における「旺文社」の文字部分は,「レクシス」の文字部分
と比較すると,極めて小さく,ほとんど目立たない態様で表記されてい
ることに照らすならば,「旺文社」が原告の商号として著名である(弁
論の全趣旨)などの実情を考慮したとしても,本願商標に接する取引
者,需要者は,専ら「レクシス」の文字部分に着目するものと認めるの
が相当である。
オ 小括
以上によれば,本願商標は,「レクシス」の文字部分が,取引者,需
要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与え
るものと認めるのが相当である。
(2) 各引用商標の特徴及び本願商標との類否判断
ア 各引用商標の特徴
引用商標3,4及び6は,いずれも,「レクシス」の片仮名文字を書
してなる商標である。また,引用商標1,2及び5は,「LEXIS」
の欧文字を書してなる商標である。
イ 本願商標と各引用商標との対比
(ア) 本願商標と引用商標3,4及び6との類否
本願商標 と引用 商標3,4及び6とを 対比すると,①本願 商 標
は,「レクシス」の文字部分が,片仮名で大きく横書きされ,その左
端部に,「旺文社」の文字部分が漢字で小さく縦書きされ,「旺文
社」3文字全体の縦の長さは,「レ」「ク」「シ」「ス」の各1文字
の縦の長さと同一であり,「旺」「文」「社」の各文字の縦横の長さ
は,「レ」「ク」「シ」「ス」の各文字の縦横の長さの4分の1と極
めて小さく表記されていること,本願商標において,「レクシス」の
文字部分は,「旺文社」の文字部分とは分離して表記されており,主
として「レクシス」の文字部分が,看者の注意を強く惹く態様で表記
されていること,②本願商標における「レクシス」の文字部分が,取
引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるものであるから,本願商標からは,「レクシス」との称
呼が生ずること,③本願商標における「レクシス」の文字部分は,取
引者,需要者において,特定の親しまれた観念を有する成語と認識さ
れるものではなく,商品又は役務の出所識別標識として認識されるも
のといえること,④本願商標における「旺文社」の文字部分は,「レ
クシス」の文字部分と比較すると,極めて小さく,ほとんど目立たな
い態様で表記されていることに照らすならば,本願商標と引用商標
,4及び6とは,「レクシス」の文字部分において共通し,両者は
類似する商標である。
この点について,原告は,本願商標における「旺文社」の文字部分
が存在する点において類似しないと主張するが,同部分は目立たず,
出所識別標識としての称呼は生じない態様で表示されていることに照
らすならば,「旺文社」の文字部分が付記されていることが,上記の
判断を左右するものとはいえない。
(イ) 本願商標と引用商標1,2及び5との類否
本願商標からは,前記のとおり,「レクシス」の称呼が生じる。こ
れに対して,引用商標1,2及び5は「LEXIS」の欧文字を書し
てなる商標であり,同商標からは,いずれも,その構成文字に相応し
て,「レクシス」の称呼が生じることに照らせば(甲11,乙10,
),本願商標と引用商標1,2及び5は,「レクシス」の称呼を
共通にする類似の商標であるといえる。
ウ 取引の実情について
本願商標は,前記(1)で検討したとおり,「レクシス」の文字部分が,
取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるものであり,「旺文社」の文字部分は,目立たない態様で
表示されていることに照らすならば,取引に当たり,本願商標に接する
取引者,需要者は,「旺文社」の文字部分ではなく,「レクシス」の文
字部分に着目する場合が少なくないと認められる。
そうすると,取引の実情に照らして,本願商標と各引用商標とは,相
紛れるおそれのある類似する商標であると認められる。
この点について,原告は,本願商標は「旺文社」という原告の著名な
商号を冒頭に付したものであることからすれば,本願商標を使用した商
品及び役務は,原告の出版・製作に係るものと容易に認識され,出所の
誤認混同は生じ得ないと主張するが,上記説示に照らし,採用すること
ができない。
結論
以上のとおり,本願商標と各引用商標が類似するとした審決の認定判断に
誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。また,本願商標の指定商品
及び指定役務が,各引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似する商
品又は役務を含むとした審決の認定判断は,これを是認することができる(
原告もこの点について争うものではない。)。よって,原告の本訴請求は理
由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯 村 敏 明
裁判官 齊 木 教 朗
裁判官 嶋 末 和 秀
別紙
商 標 目 録
(1) 構成(2) 指定商品及び指定役務第 9 類 「CD−ROM(読取り専用記憶媒体),コンピュータ用プログラムを記憶させた記録媒体,電子出版物」
第16類 「書籍,小冊子,カタログ,地図,ハンドブック,雑誌(定期刊行物),定期刊行物,印刷物,出版物」
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最新の制度改正を反映 海外の特許制度と実務上の留意点(米国・欧州(EPC)・中国) ~米国ならびに EPC (欧州特許条約)・中国の各制度の下でのグローバル特許取得の基本的な知識と留意点を解説します~
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