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平成20(ワ)2151特許権実施料等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成20年10月29日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社fresca
原告自然免疫応用技研株式 甲 有限会社バイオメディ
法令 特許権
特許法102条3項2回
民法250条1回
キーワード ライセンス83回
実施70回
特許権37回
許諾17回
侵害15回
損害賠償13回
差止7回
分割1回
新規性1回
主文 1 被告は,原告自然免疫応用技研株式会社に対し,別紙認容額目録1記載の金員を支払え。
2 被告は,原告甲及び同有限会社バイオメディカルリサーチグループそれぞれに対し,別紙認容額目録2記載の金員を支払え。
3 被告は,別紙化粧品目録記載の各化粧品を製造,販売してはならない。
4 原告らのその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,原告自然免疫応用技研株式会社に生じた費用の8分の7を同原告の,原告甲及び同有限会社バイオメディカルリサーチグループに生じた費用の20分の1を同原告らの,その余の費用を被告の,それぞれ負担とする。
6 この判決は,主文第1ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
事件の概要 本件は,下記の特許(以下「本件特許」という。)に係る発明(以下「本 件 発明」と総称し, その特許請求の 範囲請求項1に係 る発明を「本件 発明 1」,同請求項3に係る発明を「本件発明3」という。また,本件発明に係 る特許権を「本件特許権」と総称し,本件発明3に係る特許権を「本件特許 権3」という。)について,他者とライセンス契約を締結する権限を有する 原告自然免疫応用技研株式会社(以下「原告応用技研」という。)が,本件 特許の設定登録前の平成18年8月1日,被告との間で,本件発明の実施許 諾等に関する契約(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結したとこ ろ,被告が,そのライセンス料を支払わなかったため,平成19年11月1 0日,本件ライセンス契約を解約したが,それにもかかわらず,被告は,本 件発明の実施品である別紙化粧品目録記載の各化粧品(以下「被告商品」と 総称する。)を販売しているとして,原告応用技研においては,①本件ライ センス契約に基づく未払ライセンス料の支払と②本件ライセンス契約の解約 に 基づく損害賠償の 各請求を,本件 特許権の特許権者 である原告甲( 以下 「原告甲」という。)及び原告有限会社バイオメディカルリサーチグループ

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判決文

平成2 0年 10月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成2 0年 (ワ)第2151号 特許権実施料等請求事件
口頭弁 論終 結日 平成20年9月8日
判 決
高 松市 《以下省略》
原 告 自然免疫応用技研株式
会社
東 京都 世田谷区《以下省略》
原 告 甲
東 京都 世田谷区《以下省略》
原 告 有限会社バイオメディ
カルリサーチグループ
上記3名訴訟代理人弁護士 樋 口 明 巳
同 補 佐 人 弁 理 士 中 村 和 男
東 京都 港区《以下省略》
被 告 株式会社fresca
主 文
1 被告は,原告自然免疫応用技研株式会社に対し,別紙認容額目
録1記載の金員を支払え。
2 被告は,原告甲及び同有限会社バイオメディカルリサーチグル
ープそれぞれに対し,別紙認容額目録2記載の金員を支払え。
3 被告は,別紙化粧品目録記載の各化粧品を製造,販売してはな
らない。
4 原告らのその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,原告自然免疫応用技研株式会社に生じた費用の8
分の7を同原告の,原告甲及び同有限会社バイオメディカルリサ
ーチグループに生じた費用の20分の1を同原告らの,その余の
費用を被告の,それぞれ負担とする。
6 この判決は,主文第1ないし第3項に限り,仮に執行すること
ができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,原告自然免疫応用技研株式会社に対し,金1573万6780円
及びこれに対する平成19年11月10日から支払済みまで年5分の割合に
よ る金 員を支払え。
2 被 告 は , 原 告 甲 及 び 同 有 限 会 社 バ イ オ メ デ ィ カ ル リ サ ー チ グ ル ー プ に 対 し,
金6万6581円及びこれに対する平成19年11月10日から支払済みま
で 年5 分の割合による金員を支払え。
3 被告 は,別紙化粧品目録記載の各化粧品を製造,販売してはならない。
第2 事案 の概要
本件は,下記の特許(以下「本件特許」という。)に係る発明(以下「本
件発明」と総称し,その特許請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明
1」,同請求項3に係る発明を「本件発明3」という。また,本件発明に係
る特許権を「本件特許権」と総称し,本件発明3に係る特許権を「本件特許
権3」という。)について,他者とライセンス契約を締結する権限を有する
原告自然免疫応用技研株式会社(以下「原告応用技研」という。)が,本件
特許の設定登録前の平成18年8月1日,被告との間で,本件発明の実施許
諾等に関する契約(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結したとこ
ろ,被告が,そのライセンス料を支払わなかったため,平成19年11月1
0日,本件ライセンス契約を解約したが,それにもかかわらず,被告は,本
件発明の実施品である別紙化粧品目録記載の各化粧品(以下「被告商品」と
総称する。)を販売しているとして,原告応用技研においては,①本件ライ
センス契約に基づく未払ライセンス料の支払と②本件ライセンス契約の解約
に基づく損害賠償の各請求を,本件特許権の特許権者である原告甲(以下
「原告甲」という。)及び原告有限会社バイオメディカルリサーチグループ
(以下「原告バイオ」という。)においては,①本件特許権3に基づく被告
商品の販売等の差止めと②本件特許権3の侵害による不法行為に基づく損害
賠 償の 各請求を,それぞれしている事案である。

発明の名称 植物発酵エキス,植物発酵エキス末及び植物発酵
エキス配合物
特 許番号 第4026722号
出 願日 平成16年9月22日
登 録日 平成19年10月19日
特 許権者 原告甲及び原告バイオ
1 原告 らの主張
(1) 原告応用技研の主張
ア 本件ライセンス契約に基づく請求
(ア) 本件ライセンス契約の締結
原告応用技研は,平成18年8月1日,被告との間で,本件ライセ
ンス契約を締結したが,本件ライセンス契約の内容は,以下のとおり
である。
a イニシャル(定額の実施許諾料。以下同じ。)
(a) 金額
化粧品1品目につき200万円
ただし,被告が原告応用技研から購入する小麦発酵抽出物の年
間予定数量を10リットルとすることに基づき,化粧品1品目に
つき50万円に減額する。被告の購入量が10リットルに満たな
い場合は,イニシャルは1品目につき200万円となる。
(b) 支払方法
本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 締 結 日 か ら 3 0 日 以 内 の 日 に 6 0 万 円 を,
以後,毎月末日限り10万円を,それぞれ消費税相当額を加算し
て支払う。
b 実施料
(a) 金額
売上高の2パーセント及び消費税
(b) 支払方法
暦年半期終了後,2か月以内に,原告応用技研が指定する銀行
口座に振込む方法により支払う。
(イ ) 被告が,本件ライセンス契約に基づき,原告応用技研に支払うべ
き金額
a イニシャル
被告が製造,販売している被告商品は,6品目である。
そして,被告が原告応用技研から購入した小麦発酵抽出物は,合
計2020mlであり,10リットルには達しなかったから,イニ
シャルは,1品目当たり200万円である。
したがって,被告が,支払うべきイニシャルは,消費税53万5
000円を加えて,1253万5000円となる。
b 実施料
本件ライセンス契約は,原告の解約により,平成19年11月1
0日に終了した。原告は,本件ライセンス契約継続中の平成19年
3月1日から同年10月末日分まで(以下「本件実施料請求対象期
間」という。)の実施料を請求する。
(a) 被告の売上高
ⅰ 甲第6及び第8号証によれば,被告の月額平均売上高は,1
58万5267円である。
ⅱ 甲第8号証によれば,平成19年3月から同年7月までの売
上高の合計は,691万265円である。
ⅲ 平成19年8月から同年10月までの売上高は,475万5
801円(158万5267円×3=475万5801円)と
なる。
ⅳ 上記ⅱ,ⅲを合計すると,1166万6066円となる。
(b) 実施料
上記売上高に実施料率2パーセントを乗じて,消費税相当額を
加算すると,24万4987円(1166万6066円×2%×
1.05=24万4987円)となる。
(ウ) 被告の支払
a イニシャル
被告は,平成18年9月から平成19年3月まで,原告応用技研
に対して,合計130万円のイニシャルを支払った。
b 実施料
本件実施料請求対象期間における実施料は,一切支払われていな
い。
(エ) 請求額
よって,原告応用技研は,被告に対して,本件ライセンス契約に基
づき,以下の各金員及びこれに対する平成19年11月10日から支
払 済 み ま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 求 め る。
a 未払イニシャル 1123万5000円
b 未払実施料 24万4987円
イ 本件ライセンス契約の解約による損害賠償請求
原告応用技研は,被告が本件ライセンス契約に基づく実施料を支払わ
なかったことから,平成19年11月10日,本件ライセンス契約に係
る契約書のうちの「特許実施許諾契約書」と題する契約書(甲1。以下
「 本件特許実施 許諾契約書」という。 )の11条( 1 )に基づき,本件 ライ
セ ンス契約を解約した。
原 告 応 用 技 研 は , 被 告 に 小 麦 発 酵 抽 出 物 を 2 0 2 0 m l 販売 して お り,
この量の小麦発酵抽出物から製造できる被告商品は3万1077本であ
り,その売上総額は2億355万4350円であって,そのライセンス
料に消費税率を乗じた額は,約443万5641円である。これが本件
ライセンス契約が有効に存続していれば,原告応用技研が被告から得ら
れ たはずの実施料となる。
原告応用技研は,被告から,実施料として17万8848円の支払を
受 け て い る か ら , 上 記 の 得 る こ と の で き た 実 施 料 か ら こ れ を 控 除 す る と,
4 25万6793円となる。
よって,原告応用技研は,被告に対して,本件ライセンス契約の解約
に基づき,425万6793円の損害賠償金及びこれに対する平成19
年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害 金の支払を求める。
(2) 原告甲及び原告バイオの主張
ア 特許権侵害に基づく差止請求
原告甲及び原告バイオは,本件特許権の特許権者である。
本件特許権の請求項1ないし3の記載は,以下のとおりである。
請求項1 「小麦粉をアミラーゼで処理した小麦粉アミラー
ゼ処理液をパントエア・アグロメランスによって
発酵させて,同時に該パントエア・アグロメラン
スを培養して得られることを特徴とする植物発酵
エキス」
請求項2 「請求項1記載の植物発酵エキスから得られるこ
とを特徴とする植物発酵エキス末」
請求項3 「請求項1記載の植物発酵エキス又は請求項2記
載の植物発酵エキス末が配合されていることを特
徴とする植物発酵エキス配合物」
被告は,被告商品を,本件ライセンス契約が解約された後も製造,販
売 している。
被告商品は,原告応用技研から購入した小麦発酵抽出物を成分として
いるところ,上記小麦発酵抽出物は本件発明1の実施品であるから,被
告 が被告商品を製造,販売する行為は,本件特許権3を侵害する。
よって,原告甲及び原告バイオは,被告に対して,本件特許権3に基
づ き,被告商品の差止めを求める。
イ 特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求
(ア ) 被 告 は , 本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 が 解 約 さ れ た 後 も , 被 告 商 品 を 製 造,
販売しており,同行為は,前記アのとおり,原告甲及び原告バイオが
有する本件特許権を侵害するから,被告には,特許権侵害の不法行為
が成立する。
(イ ) そして,上記不法行為により,原告甲及び原告バイオが被った損
害額は,特許法102条3項により,以下のとおり,6万6581円
となる。
a 請求対象期間
平成19年11月11日から平成20年1月10日までの2か月

b 被告商品の月額平均売上高
前記( 1 )ア(イ)b(a)ⅰのとおり,被 告商品の月額平均売上額 は1
58万5267円である。
c 実施料率 2パーセント
d 消費税率 5パーセント
e 計算
158万5267円×2か月×0.02×1.05=6万658
1円
(ウ ) よって,原告甲及び原告バイオは,被告に対して,特許権3の侵
害による不法行為に基づき,6万6581円の損害賠償金及びこれに
対する平成19年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の
割合による遅延損害金の支払を求める。
2 被告 の認否,反論
(1) 1( 1 )ア(本件ライセンス契約に基づく請求)について
ア (ア)(本件ライセンス契約の締結)について
被告と原告応用技研との間で本件ライセンス契約が締結されたことは
認 める。
ただし,本件ライセンス契約の内容は,以下のとおりであり,この点
に 関する原告応用技研の主張は否認する。
(ア) イニシャルについて
本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 に お け る 本 件 発 明 の 実 施 許 諾 の イ ニ シ ャ ル は,
1品目50万円である。本件ライセンス契約においては,被告が原告
応用技研から購入する小麦発酵抽出物の量が10リットルに満たない
場合でも,イニシャルは1品目200万円とはならず,50万円であ
る。
(イ) 実施料について
実施料は,売上高の2パーセントである。
イ (イ )( 被 告 が , 本 件 契 約 に 基 づ き , 原 告 応 用 技 研 に 支 払 う べ き 金 額 )
に ついて
(ア) a(イニシャル)について
被 告 が 製 造 , 販 売 し て い る 被 告 商 品 が 6 品 目 で あ る こ とは 認め る が,
その余は否認する。
(イ) b(実施料)について
本件実施料請求対象期間(平成19年3月1日から同年10月末
日)における被告の売上高については争う。
本件ライセンス契約は,平成19年3月23日,被告の解約の申出
により解約されており,被告は,上記解約日以降の実施料を支払う必
要はない。なお,被告の上記解約が認められない場合,本件ライセン
ス契約が,同年11月10日に,原告の解約により終了したことは認
める。
ウ (ウ)(被告の支払)について
(ア ) 被告が,原告応用技研に対して,合計130万円のイニシャルを
支払ったことは認める。
(イ ) 被告が,原告応用技研に対して,本件実施料請求対象期間(平成
19年3月1日から同年10月末日まで)の実施料を支払っていない
ことは認める。
な お , 前 記 イ (イ )の と お り , 本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 は , 同 年 3 月 2 3
日 に 終 了 し て お り , 被 告 は , そ れ 以 降 の 実 施 料 を 支 払 う 必 要 は な い。
エ (エ)(請求額)について
いずれも否認する。
(2) 1( 1 )イ(本件ライセンス契約解除による損害賠償請求)について
否 認する。
(3) 1( 2 )ア(特許権侵害に基づく差止請求)について
ア 原告甲及び原告バイオが,本件特許権の特許権者であること,本件特
許 権の請求項の記載が,原告ら主張のとおりであることは認める。
イ 被告が,本件ライセンス契約が終了した以降も,被告商品を製造,販
売 していたことは認める。
ウ 被 告 商 品 が , 原 告 か ら 購 入 し た 小 麦 発 酵 抽 出 物 を 成 分 と し て い る こ と,
上 記小麦発酵抽出物は,本件発明1の実施品であることは認める。
エ その余の事実は否認する。
(4) 1( 2 )イ(特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求)について
否 認する。
3 以上 の当事者の主張から,本件の主要な争点は以下のとおりとなる。
(1) 本件ライセンス契約におけるイニシャルに係る合意内容
(2) 被告商品の本件実施料請求対象期間(平成 19年3月1日から同年 10
月末 日まで)における売上高
(3) 本件ライセンス契約の解除に基づく損害賠償請求の可否及びその額
(4) 本件特許権3の侵害により,原告甲及び原告バイオが被った損害額
第3 当裁 判所の判断
1 原告 応用技研の請求について
(1) 本件ライセンス契約に基づく請求について
ア 本件ライセンス契約の内容について
原告応用技研と被告との間で,平成18年8月1日に,本件ライセン
ス契約が締結されたことは争いがない(ただし,イニシャルに係る合意
内 容 に つ い て は 争 い が あ る 。 ) 。 ま た , 証 拠 ( 甲 1 , 2 の 1 ) に よ れ ば,
本件ライセンス契約においては,被告は,実施料として,売上高の2パ
ーセントに消費税相当額を加算の上,これを,各暦年半期終了後2か月
以 内に,原告応用技研に支払うこと(本件特許実施許諾契約書3条( 3 )),
本件ライセンス契約におけるイニシャルの支払については,本件ライセ
ンス契約締結日から30日以内の日に60万円を,以後,24回に分割
して,毎月末日限り10万円を,それぞれ消費税相当額を加算して支払
う こ と , 上 記 の 取 決 め に つ い て は , 本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 が 終 了 し た 後 も,
すべての支払が終了するまで効力を有することが,それぞれ合意された
も のと認められる。
そこで,本件ライセンス契約におけるイニシャルに係る合意内容につ
い て,以下検討する。
(ア) 事実認定
証 拠 ( 甲 1 , 2 の 1 及 び 2 , 1 7 , 乙 6 な い し 2 8 , 3 2 , 3 5,
原告代表者乙,被告代表者丙)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各
事実が認められる。
a 本件ライセンス契約の締結に至る経緯
(a ) 被告は,平成16年10月に,化粧品の製造,販売を目的と
して,設立された株式会社であるが,被告代表者の丙(以下
「丙」という。)は,化粧品の製品開発を進めていく上で,化粧
品の成分として,新規性の高いものを探していたところ,小麦発
酵抽出物を成分とした化粧品を販売している株式会社メディカル
バイオコスモロジー(以下「メディカル社」という。)があるこ
とを知り,メディカル社の扱っている上記小麦発酵抽出物に興味
を持ったため,メディカル社の代表者である丁(以下「丁」とい
う。)から話を聞くことにした。その後,丙は,被告の役員らと
共 に , メ デ ィ カ ル 社 を 訪 問 し , 丁 と 会 談 し た が , そ の 際 , 丁 か ら,
上記小麦発酵抽出物の発明者である原告甲と会うことを勧められ
た た め , 丙 ら は , 原 告 甲 の 勤 務 先 で あ る 徳 島 文 理 大 学 を 訪 問 し,
原告甲から話を聞くことにした。その後,丙らは,何度か,原告
甲や,同原告が小麦発酵抽出物の製造を委託しているヤエガキ発
酵技研株式会社(以下「ヤエガキ」という。)の関係者と打合せ
をし,小麦発酵抽出物の購入条件や本件発明についてのライセン
スの条件等について話し合った。
(b ) 原告バイオとヤエガキは,ジョイントベンチャーとして,原
告応用技研を設立することとし,平成18年6月20日,原告応
用技研の発起人会が開催され,以降,本件発明のライセンスの交
渉は,被告と原告応用技研との間で行われるようになり,そのこ
ろ,原告応用技研から,被告に対して,本件発明のライセンス等
についての契約書の案が送付された。
上記契約書案においては,原告応用技研は,被告に対して,本
件発明についての通常実施を許諾すること,その際のイニシャル
は1製品につき200万円,実施料率は10パーセントとするこ
と,小麦発酵抽出物の販売価格は1ミリリットルにつき1500
円とすることが記載されていたが,被告は,上記契約書案の条件
は , 到 底 受 け 入 れ る こ と は で き な い も の と 考 え , 同 年 7 月 4 日,
原告応用技研に対して,その旨及び被告の提案を示したメールを
送付した。
(c ) これを受けて,原告応用技研及び被告は,平成18年7月8
日,岡山県のホテルにおいて会議を開催することとし,原告応用
技研代表者の乙(以下「乙」という。),原告甲及びその他の原
告取締役らと被告の当時の代表者戊(以下「戊」という。)及び
監査役Aが,契約条件等について話し合った(同会議を以下「岡
山会議」という。)。
そして,岡山会議において,原告応用技研及び被告は,通常実
施許諾のイニシャルは1商品につき50万円,実施料率は2パー
セントとし,小麦発酵抽出物の被告への販売価格は1ミリリット
ルにつき2000円とすることで合意した。また,岡山会議にお
いて,原告甲から,本件発明についての他社との間でのライセン
ス契約においては,イニシャルを1商品につき200万円として
いることから,それらの会社に対して,被告との間で締結する本
件ライセンス契約において,イニシャルを50万円としたことの
合理的な説明をする必要があり,そのために,1年間の発注量の
目標値を決め,これを文章化したい旨の提案がされ,被告側の参
加者は,当該発注量を実際に発注することを確約することはでき
ないが,あくまでも目標値として,文章化することであるなら構
わない旨応答して,原告甲の上記提案を受け入れた。
このような経緯に基づいて,後日,原告応用技研において「岡
山会議録」と題する書面(以下「岡山会議録」という。)が作成
さ れ , 同 会 議 録 に お い て , 後 記 b (c )の と お り の 記 載 が さ れ た。
な お , 岡 山 会 議 に お い て , 被 告 側 の 出 席 者 は , 上 記 の と お り,
文章化する年間購入量は,あくまでも目標値であり,これを実際
に発注することは確約できない旨発言したが,原告甲は,同発言
に対して一切異議を述べなかった。
b 本件ライセンス契約に係る契約書の文言
(a ) 原告応用技研は,岡山会議での合意内容に基づき,本件ライ
センス契約に係る契約書として,平成18年8月1日付けで本件
特許実施許諾契約書と「特許実施許諾サブライセンス覚書」と題
する書面(甲2の1。以下「本件覚書」という。)を作成し,イ
ニ シ ャ ル の 取 決 め に つ い て , 後 記 (b )の と お り の 条 項 を 設 け , 本
件 覚 書 の 末 尾 に 岡 山 会 議 録 を 一 緒 に 綴 っ た 。 そ し て , 同 原 告 は,
被告に対し,これらの契約書等を郵送し,被告の丙及び戊は,こ
れらの契約書等に押印の上,原告応用技研に返送した。
(b) 本件覚書の記載
本件覚書には,以下の条項の記載がある。なお,以下の条項に
おける「甲」は被告を,「乙」は原告応用技研を指す。
ⅰ 3( 1 )
「本契約第3条( 1 )に定める イニシャル金額については, 甲が
販 売 す る 化 粧 品 一 品 目 に 付 き 2 0 0 万 円 ( 別 途 消 費 税 ) と す る。
但し, 本サブライ センス覚書 4( 2 )に基づき,甲が販売する 化粧
品一品目に付き50万円(別途消費税)に減額する。」
ⅱ 4( 2 )
「甲は第1条( 1 )に定める乙より 購入した抽出物の代金を ,毎
月月末を締日とし,当月分の代金を翌月末日までに,乙が指定
する銀行口座に振込送金の方法により支払う。」
ⅲ 4( 4 )
「甲が乙より購入する抽出物の年間予定数量は,10,00
0mlとする。なお,甲が購入する年間予定数量が増減する場
合には,甲及び乙は実施料率等について別途協議して改訂でき
るものとする。」
(c) 岡山会議録の記載
岡山会議録には, 「合意事項 ( 1 )実施許諾条件」の項目に おい
て , 「 イ ニ シ ャ ル に つ い て は , 原 則 一 品 目 2 0 0 万 円 と す る が,
年間購入予定量を10,000mLと設定することから,一品目
50万円に値引きする。」との記載がある。
c この点,原告応用技研は,小麦発酵抽出物の年間購入量を10リ
ッ ト ル と 設 定 す る こ と で , イ ニ シ ャ ル を 減 額 し た の で あ り , ま た,
原告甲が,岡山会議において,他社に本件ライセンス契約のイニシ
ャルを50万円に減額したことの説明をするために,1年間の発注
量の目標値を決め,これを文章化したい旨の発言をしたことはない
旨主張する。
しかしながら,原告応用技研の乙は,岡山会議での話合いの内容
を記載したメモである乙第28号証について,その記載内容が実際
の話合いの内容と異ならない旨供述しているところ(尋問調書14
頁),上記乙号証には,原告甲の発言として,「10リットルをコ
ミットしなくてもいいが,我々との共通目標として定めておく分に
は問題ないだろう。それに,ライセンス料を値下げする際の,外へ
の言い訳として,10リットルを目標とするということなら問題な
いのではないか。」,「イニシャルについては1品50万は,きり
が良いから決めた。」,「LPSp(小麦発酵抽出物)発注量の目
標 値 を 書 く こ と が 互 い に 大 切 。 コ ミ ッ ト す る こ と は 要 求 し な い 。 」,
「フレスカさんと他社で契約をジャスティフィケーションするため
に,1年間の容量を保障することを書きたい。イニシャル料を下げ
る対外的な意味づけをしたい。」,「外に対する理屈がほしい。ど
ういう理由で,イニシャルを200万円から50万円に値引きをし
たかという理屈だけがほしい。」と記載されていることから,原告
応用技研の上記主張が理由がないことは明らかである。
(イ) 検討
前 記 (ア )で 認 定 し た と こ ろ に よ れ ば , 原 告 応 用 技 研 及 び 被 告 は , 岡
山会議において,本件発明の通常実施許諾のイニシャルは1商品につ
き50万円,実施料率は2パーセントとし,小麦発酵抽出物の被告へ
の 販 売 価 格 は 1 ミ リ リ ッ ト ル に つ き 2 0 0 0 円 と す る こ と で 合 意 し,
こ の 合 意 に 基 づ い て 本 件 特 許 実 施 許 諾 契 約 書 及 び 本 件 覚 書 が 作 成 さ れ,
本件ライセンス契約が締結されたものと認められる。
原 告 ら は , 本 件 特 許 実 施 許 諾 契 約 書 及 び 本 件 覚 書 の 記 載 に 基 づ き,
被告が原告応用技研から購入する小麦発酵抽出物の量が年間10リッ
トルに満たない場合は,1商品当たりのイニシャルが200万円であ
ると主張する。
し か し な が ら , 前 記 (ア )で 認 定 し た よ う に , 原 告 応 用 技 研 は , 本 件
発明についての他社との間でのライセンス契約においては,イニシャ
ルを1商品につき200万円としていることから,それらの会社に対
して,被告との間で締結する本件ライセンス契約において,イニシャ
ルを50万円としたことの合理的な説明をする必要があり,そのため
に,1年間の発注量の目標値を決め,これを文章化することにし,こ
の よ う な 経 緯 か ら , 岡 山 会 議 録 に お い て , 「 イ ニ シ ャ ル に つ い て は,
原則一品目200万円とするが,年間購入予定量を10,000mL
と設定することから,一品目50万円に値引きする。」との文章が記
載されるとともに,本件覚書のイニシャルについての条項は,「本契
約第3 条( 1 )に 定めるイニシャル金額につ いては,甲が販売する化 粧品
一品目に付き200万円(別途消費税)とする。但し,本サブライセ
ン ス 覚 書 4 ( 2 )に 基 づ き , 甲 が 販 売 す る 化 粧 品 一 品 目 に 付 き 5 0 万 円
(別途 消費税)に減 額する。」(3 ( 1)) ,「甲が乙より購入する 抽出
物の年間予定数量は,10,000mlとする。なお,甲が購入する
年間予定数量が増減する場合には,甲及び乙は実施料率等について別
途協議して改訂できるものとする。」(4( 4 ))との記載がされ, ま た,
岡山会議録が本件覚書と一緒に綴られたこと,岡山会議において,被
告 側 の 出 席 者 は , 文 章 化 す る 年 間 購 入 量 は , あ く ま で も 目 標 値 で あ り,
こ れ を 実 際 に 発 注 す る こ と は 確 約 で き な い 旨 発 言 し た が , 原 告 甲 は,
同発言に対して異議を述べていないことなどからすると,本件ライセ
ンス契約において,本件発明の通常実施許諾のイニシャルは1商品に
つき50万円と合意されたものと認めるのが相当といえる。
また,このことは,本件覚書におけるイニシャルについての条項の
文言からも裏付けられる。すなわち,仮に,原告応用技研の主張する
ように,被告が原告応用技研から購入する小麦発酵抽出物の量が年間
10リットルに満たない場合は,1商品当たりのイニシャルは200
万円となるとの合意が真実成立していたのであれば,本件覚書におい
て , 小 麦 発 酵 抽 出 物 の 購 入 量 が 年 間 1 0 リ ッ ト ル に 満 た な い 場 合 に は,
1商品当たりのイニシャルは200万円となる旨明記するはずである
ところ ,本件覚書の 記載は,前記(ア)b( b)のとおり,そのような 記載
に は な っ て お ら ず , む し ろ , 前 記 (ア )a (c )で 認 定 し た 本 件 ラ イ セ ン
ス契約の合意がされた経緯に則した文言となっていることからも,イ
ニシャルについて,上記で判示した内容の合意が成立したものと解す
るのが相当である。
したがって,原告らの上記主張は,採用できない。
イ 被告が,本件ライセンス契約に基づき,原告応用技研に支払うべき金
額 について
(ア) イニシャルについて
被告が製造,販売している被告商品は,6品目であることは争いが
なく,前記アで判示したとおり,本件ライセンス契約における1商品
当たりのイニシャルは50万円であるから,本件ライセンス契約に基
づき被告が支払うべきイニシャルは300万円となる。
そ し て , 前 記 ア で 認 定 し た よ う に , 本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 に お い て は,
イニシャルに消費税相当額を加算して支払うことが合意されていたの
であるから,本件ライセンス契約に基づき,被告がイニシャルとして
支払う金額は,315万円(300万円×1.05=315万円)と
なる。
(イ) 実施料について
a 証拠(甲6の1,8,乙3,4)及び弁論の全趣旨によれば,本
件実施料請求対象期間(平成19年3月から同年10月まで)にお
ける被告商品の売上高は,次のとおりであることが認められる。
平成19年3月 214万9951円
4月 305万9192円
5月 175万8736円
6月 120万2259円
7月 94万9478円
8月 28万9656円
9月 84万2150円
10月 85万0664円
合計 1110万2086円
b 前記のとおり,本件ライセンス契約において,原告応用技研が被
告に対して請求できる実施料は,売上高の2パーセントに消費税相
当額を加算した金額であり,その金額は,23万3143円(11
1 0 万 2 0 8 6 円 × 0 . 0 2 × 1 . 0 5 = 2 3 万 3 1 4 3 . 8 0 6。
1円未満は切り捨てた。以下,同じ。)となる。なお,上記の未払
実施料のうち,平成19年3月ないし6月分の合計額は,17万1
572円((214万9951円+305万9192円+175万
8736円+120万2259円)×0.02×1.05=17万
1 5 7 2 . 8 9 円 ) と な り , 同 年 7 月 な い し 1 0 月 分 の 合 計 額 は,
6万1571円(23万3143円−17万1572円=6万15
71円)となる。
c な お , 被 告 は , 本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 は , 平 成 1 9 年 3 月 2 3 日,
被告の解約の申出により解約されており,被告は,同解約日以降の
実施料を支払う必要はない旨主張する。
しかしながら,被告が,解約の申出により,本件ライセンス契約
を解約することができる場合は,本件特許実施許諾契約書の11条
( 2 ), ( 3 ), ( 4 ), ( 6 )に 規 定 さ れ て い る と こ ろ ( 甲 1 ) , 本 件 全 証 拠
によっても,本件において,上記の規定を満たす事実の発生を認め
ることはできないから,被告の上記主張は理由がない。
(ウ) 被告の支払について
被告が,原告応用技研に対して,合計130万円のイニシャルを支
払ったこと,本件実施料請求対象期間における実施料を一切支払って
いないことは,争いがない。
ところで,前記アのとおり,本件ライセンス契約におけるイニシャ
ルの支払方法は,本件ライセンス契約締結日から30日以内の日に6
0 万 円 を , 以 後 , 毎 月 末 日 限 り 1 0 万 円 を 支 払 う と い う も の で あ り,
本件ライセンス契約が締結されたのは平成18年8月1日である(争
い の な い 事 実 ) か ら , 本 件 ラ イ セ ン ス 契 約 の イ ニ シ ャ ル の 支 払 方 法 は,
平成18年8月31日に60万円,同年9月以降,毎月末日に各10
万円を支払うということになる。
そして,証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,被告はイニシャ
ルとして,平成18年9月7日に60万円,同年9月21日に10万
円,同年10月5日に10万円,同年11月7日に10万円,同月2
8日に10万円,同年12月22日に10万円,平成19年2月21
日に10万円,同年3月19日に10万円を支払ったものと認められ
る 。 そ し て , 上 記 証 拠 に よ れ ば , 被 告 の 上 記 支 払 は , 被 告 に お い て,
イニシャルに対する消費税相当額ではなく,イニシャル自体に充当さ
れるものと指定して支払われたものと解され,したがって,上記支払
は,イニシャル自体のみに充当されたことになる。
(エ ) そうすると,原告応用技研は,被告に対して,本件ライセンス契
約に基づき,合計208万3143円(①未払イニシャルとして18
5万円,②未払実施料として23万3143円)及びこれに対する民
法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 求 め る こ と が で き る。
そして,上記未払イニシャルの支払債務についての遅延損害金の起
算日は,平成18年8月31日に支払期限が到来する60万円に対す
る消費税相当額である3万円については同年9月1日,同月末日に期
限が到来する10万円に対する消費税相当額である5000円につい
ては同年10月1日,同月末日に期限が到来する10万円に対する消
費税相当額である5000円については同年11月1日,同月末日に
期限が到来する10万円に対する消費税相当額である5000円につ
いては同年12月1日,同月末日に期限が到来する10万円に対する
消費税相当額である5000円については平成19年1月1日,同月
末日に期限が到来する10万円に対する消費税相当額である5000
円については同年2月1日,同月末日に期限が到来する10万円に対
する消費税相当額である5000円については同年3月1日,同月末
日に期限が到来する10万円に対する消費税相当額である5000円
については同年4月1日,平成19年4月末日に支払期限が到来する
10万円及び消費税相当額5000円については同年5月1日,同月
末日に支払期限が到来する10万円及び消費税相当額5000円につ
いては同年6月1日,同月末日に支払期限が到来する10万円及び消
費税相当額5000円については同年7月1日,同月末日に支払期限
が到来する10万円及び消費税相当額5000円については同年8月
1日,同月末日に支払期限が到来する10万円及び消費税相当額50
00円については同年9月1日,同月末日に支払期限が到来する10
万円及び消費税相当額5000円については同年10月1日,同月末
日に支払期限が到来する10万円及び消費税相当額5000円につい
ては同年11月1日,同月末日に支払期限が到来する10万円及び消
費税相当額5000円については同年12月1日,同月末日に支払期
限が到来する10万円及び消費税相当額5000円については平成2
0年1月1日,同月末日に支払期限が到来する10万円及び消費税相
当額5000円については同年2月1日,同月末日に支払期限が到来
す る 1 0 万 円 及 び 消 費 税 相 当 額 5 0 0 0 円 に つ い て は 同 年 3 月 1 日,
同月末日に支払期限が到来する10万円及び消費税相当額5000円
については同年4月1日,同月末日に支払期限が到来する10万円及
び消費税相当額5000円については同年5月1日,同月末日に支払
期限が到来する10万円及び消費税相当額5000円については同年
6月1日,同月末日に支払期限が到来する10万円及び消費税相当額
5000円については同年7月1日,同月末日に支払期限が到来する
10万円及び消費税相当額5000円については同年8月1日,同月
末日に支払期限が到来する10万円及び消費税相当額5000円につ
いては同年9月1日となる。
ま た , 上 記 未 払 実 施 料 の 支 払 債 務 に つ い て の 遅 延 損 害 金 の 起 算 日 は,
本件特 許実施許諾契 約書3条( 3 )に基づき ,平成19年3月から6 月ま
で の 分 の 未 払 実 施 料 1 7 万 1 5 7 2 円 に つ い て は 同 年 9 月 1 日 と な り,
同年7月から10月までの分の未払実施料6万1571円については
平成20年3月1日となる。
ただし,原告応用技研は,平成19年11月10日からの遅延損害
金を求めているため,同日前に遅滞に陥る97万1572円(未払イ
ニシャルについては80万円,未払実施料については17万1572
円 ) に 対 す る 遅 延 損 害 金 の 起 算 日 は 平 成 1 9 年 1 1 月 1 0 日 と な る。
以上をまとめると,別紙認容額目録1のとおりとなる。
(2) 本件ライセンス契約の解約に基づく損害賠償請求について
原告応用技研は,本件ライセンス契約を解約したことにより,解約をし
なければ被告から得られたであろう実施料の額の損害を被ったとして,同
損害 の賠償請求をする。
本件ライセンス契約の解約後も,原告応用技研が,同契約に基づいて得
られたであろう実施料相当額を請求できたか否かはさておき,本件全証拠
によっても,被告が,被告商品について,原告応用技研の主張する売上を
上げることができたと認めることはできない。また,被告は,本件ライセ
ンス契約が解約された後も,被告商品の製造,販売を継続しているが(当
事者間に争いがない。),同行為に対しては,後記2のとおり,本件特許
権の特許権者である原告甲及び原告バイオが,本件特許権3の侵害による
不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しており,後記3のとおり,同請
求は,損害の発生が認められた限度で認容されている以上,特段の事情の
ない限り,原告に,被告の上記売上に対する実施料に相当する額の損害が
発生したということはできないところ,本件においては,上記特段の事情
を認めることはできないから,原告応用技研に,本件ライセンス契約解約
後に,被告が被告商品の製造,販売をしたことについて,被告から得られ
た で あ ろ う 実 施 料 に 相 当 す る 額 の 損 害 が 発 生 し た と い う こ と も で き な い。
し たがって,原告応用技研の上記主張は,理由がない。
2 原告 甲及び原告バイオの請求について
(1) 差止請求について
原告甲及び原告バイオが,本件特許権の特許権者であること,本件発明
1の特許請求の範囲の記載が「小麦粉をアミラーゼで処理した小麦粉アミ
ラーゼ処理液をパントエア・アグロメランスによって発酵させて,同時に
該パントエア・アグロメランスを培養して得られることを特徴とする植物
発酵エキス」であること,本件発明3の特許請求の範囲の記載が「請求項
1記載の植物発酵エキス又は請求項2記載の植物発酵エキス末が配合され
て い る こ と を 特 徴 と す る 植 物 発 酵 エ キ ス 配 合 物 」 で あ る こ と , 被 告 商 品 が,
原告から購入した小麦発酵抽出物を配合していること,及び上記小麦発酵
抽出物が本件発明1の実施品であることは,いずれも当事者間に争いがな
い か ら , 被 告 商 品 は , 本 件 発 明 3 の 技 術 的 範 囲 に 属 す る も の と 認 め ら れ る。
そして,本件ライセンス契約が遅くとも平成19年11月10日に終了
し て い る こ と , 被 告 は , そ の 後 も 被 告 商 品 を 製 造 , 販 売 し て い る こ と も,
当事 者間に争いがない。
したがって,被告による被告商品の製造,販売は,現在,本件特許権3
を侵害しており,原告甲及び原告バイオは,本件特許権3に基づき,被告
商品 の製造,販売の差止めを求めることができる。
(2) 損害賠償請求について
ア 証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告商品を,平成
19年11月11日から平成20年1月10日までの間,製造,販売し
て いることが認 められ,前記( 1 )で判示した ように,同行為は,原告 甲及
び原告バイオが有する本件特許権3を侵害することから,被告の上記行
為 は,原告甲及び原告バイオに対する不法行為を構成する。
イ (ア ) 証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,平成19年11月から
平成20年1月までの各月における被告商品の売上高は,次のとおり
であることが認められる。
平成19年11月 122万5732円
12月 153万3612円
平成20年 1月 105万8274円
(イ )a 本件ライセンス契約の内容,本件発明3の内容等を総合考慮す
ると,特許法102条3項による損害額算定に当たっての実施料率
としては,2パーセントが相当であると認められる。
b 本件特許権3は,原告甲及び原告バイオの共有であるところ,そ
の持分は均等と推定されるので(民法250条),原告甲及び原告
バイオそれぞれの損害額の算定においては,被告商品の売上高に実
施料率を乗じて得られた額に2分の1を乗じることになる。
c 以上より,原告甲及び原告バイオ各自が,本件特許権3を侵害さ
れたことにより被った損害額は,以下のとおりとなる。
(a ) 平成19年11月11日から同月末日までの期間における1
日当たりの損害額は,408円(122万5732円÷30日×
0.02×0.5=408.57円)となる。
(b ) 同年12月1日から同月31日までの期間における1日当た
りの損害額は,494円(153万3612円÷31日×0.0
2×0.5=494.71円)となる。
(c ) 平成20年1月1日から同月10日までの期間における1日
当 た り の 損 害 額 は , 3 4 1 円 ( 1 0 5 万 8 2 7 4 円 ÷ 3 1 日 × 0.
02×0.5=341.37円)となる。
(d) 合計
平成19年11月11日から平成20年1月10日までの期間
における損害の合計額は,原告甲及び原告バイオ各自につき,2
万6684円(408円×20日+494円×31日+341円
×10日=2万6684円)となる。
ウ そうすると,原告甲及び原告バイオは,被告に対して,本件特許権3
の侵害による不法行為に基づき,それぞれ,2万6684円の損害賠償
金及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を
求 めることができる。
上記の遅延損害金は,平成19年11月11日から同月末日までに発
生した損害については,各408円につき,上記期間中の各日から,同
年12月に発生した損害については,各494円につき,上記期間中の
各日から,平成20年1月1日から同月10日までに発生した損害につ
いては,各341円につき,上記期間中の各日から,それぞれ発生する
も のと認められる。
以上をまとめると,別紙認容額目録2のとおりとなる。
3 したがって,原告らの本訴請求は,上記のとおり,被告商品の製造,販売
の差止め並びに別紙認容額目録1及び2記載の金員の支払を求める限度で理
由があるから,これを認容し,その余は失当であるからこれを棄却すること
と して ,主文のとおり判決する。
東 京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清 水 節
裁判官 佐 野 信
裁判官 國 分 隆 文
別紙認 容額 目録1
金208万3143円及び内金97万1572円に対する平成19年11月10
日から,内金10万5000円に対する同年12月1日から,内金10万500
0円に対する平成20年1月1日から,内金10万5000円に対する同年2月
1日から,内金16万6571円に対する同年3月1日から,内金10万500
0円に対する同年4月1日から,内金10万5000円に対する同年5月1日か
ら,内金10万5000円に対する同年6月1日から,内金10万5000円に
対する同年7月1日から,内金10万5000円に対する同年8月1日から,内
金10万5000円に対する同年9月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の
割合に よる 金員
別紙認 容額 目録2
金2万6884円及び内金408円に対する平成19年11月11日から,内金
408円に対する同月12日から,内金408円に対する同月13日から,内金
408円に対する同月14日から,内金408円に対する同月15日から,内金
408円に対する同月16日から,内金408円に対する同月17日から,内金
408円に対する同月18日から,内金408円に対する同月19日から,内金
408円に対する同月20日から,内金408円に対する同月21日から,内金
408円に対する同月22日から,内金408円に対する同月23日から,内金
408円に対する同月24日から,内金408円に対する同月25日から,内金
408円に対する同月26日から,内金408円に対する同月27日から,内金
408円に対する同月28日から,内金408円に対する同月29日から,内金
4 0 8 円 に 対 す る 同 月 3 0 日 か ら , 内 金 4 9 4 円 に 対 す る 同 年 1 2 月 1 日 か ら,
内金494円に対する同月2日から,内金494円に対する同月3日から,内金
494円に対する同月4日から,内金494円に対する同月5日から,内金49
4円に対する同月6日から,内金494円に対する同月7日から,内金494円
に対する同月8日から,内金494円に対する同月9日から,内金494円に対
する同月10日から,内金494円に対する同月11日から,内金494円に対
する同月12日から,内金494円に対する同月13日から,内金494円に対
する同月14日から,内金494円に対する同月15日から,内金494円に対
する同月16日から,内金494円に対する同月17日から,内金494円に対
する同月18日から,内金494円に対する同月19日から,内金494円に対
する同月20日から,内金494円に対する同月21日から,内金494円に対
する同月22日から,内金494円に対する同月23日から,内金494円に対
する同月24日から,内金494円に対する同月25日から,内金494円に対
する同月26日から,内金494円に対する同月27日から,内金494円に対
する同月28日から,内金494円に対する同月29日から,内金494円に対
する同月30日から,内金494円に対する同月31日から,内金341円に対
する平成20年1月1日から,内金341円に対する同月2日から,内金341
円に対する同月3日から,内金341円に対する同月4日から,内金341円に
対する同月5日から,内金341円に対する同月6日から,内金341円に対す
る同月7日から,内金341円に対する同月8日から,内金341円に対する同
月9日から,内金341円に対する同月10日から,それぞれ支払済みまで年5
分の割 合に よる金員
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