平成19(行ケ)10278審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成20年9月30日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告日本エレクトロセンサリデバ 原告芝浦メカトロニクス株式会社
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対象物 |
ウエーハ用検査装置 |
法令 |
特許権
特許法38条3回 特許法2条1項1回 特許法123条2項1回
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キーワード |
審決10回 無効4回 実施3回 特許権3回 刊行物1回 無効審判1回
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主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
1 当事者間に争いのない事実等
(1) 本多エレクトロン株式会社(以下「本多エレクトロン」という。)及び
東芝セラミックス株式会社(以下「東芝セラミックス」という。)は,本多
エレクトロンの従業者であったA,B,C及び東芝セラミックスの従業者で
あるD,E,Fを発明者として(以下順に「A」,「B」,「C」,「
D」,「E」,「F」という。),同人らから発明の名称を「ウエーハ用検
査装置」とする発明(請求項の数は35である。以下これらを総称して「本
件各発明」という。)についてそれぞれ特許を受ける権利を承継し,平成1
4年2月19日に上記6名を発明者として特許出願(特願2002−423
98)をした。 |
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判決文
平成20年9月30日判決言渡
平成19年(行ケ)第10278号 審決取消請求事件
平成20年7月15日口頭弁論終結
判 決
原 告 芝浦メカトロニクス株式会社
同訴訟代理人弁護士 鈴 木 和 夫
同訴訟代理人弁理士 土 橋 皓
同 樋 口 正 樹
被 告 日本エレクトロセンサリデバ
イス株式会社
同訴訟代理人弁理士 後 藤 政 喜
同 藤 井 正 弘
同 飯 田 雅 昭
同 木 島 俊 博
同 野 末 貴 弘
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2006−80239号事件について平成19年6月19日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 当事者間に争いのない事実等
(1) 本多エレクトロン株式会社(以下「本多エレクトロン」という。)及び
東芝セラミックス株式会社(以下「東芝セラミックス」という。)は,本多
エレクトロンの従業者であったA,B,C及び東芝セラミックスの従業者で
あるD,E,Fを発明者として(以下順に「A」,「B」,「C」,「
D」,「E」,「F」という。),同人らから発明の名称を「ウエーハ用検
査装置」とする発明(請求項の数は35である。以下これらを総称して「本
件各発明」という。)についてそれぞれ特許を受ける権利を承継し,平成1
4年2月19日に上記6名を発明者として特許出願(特願2002−423
98)をした。
(2) 本件各発明については,平成16年12月17日に,本多エレクトロン
及び東芝セラミックスに対して特許(以下「本件特許」といい,本件特許に
係る権利を「本件特許権」という。)がされ,その旨設定登録(特許第36
29244号)された。
(3) 本多エレクトロン(平成17年11月2日に株式会社ネットインデック
スに商号変更)は,平成18年5月1日,原告に対し本件特許権の持分を譲
渡した。
(4) 被告は,平成18年11月17日,無効審判請求(無効2006−80
239号事件)をし,特許庁は,平成19年6月19日,「特許第3629
244号の請求項1∼35に係る発明についての特許を無効とする。」との
審決をした。
(5) 東芝セラミックスは,平成19年8月8日,コバレントマテリアル株式
会社に対し本件特許権の持分を譲渡した(甲66)。
2 特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載
(1) 本件特許に係る明細書(甲1。以下「本件明細書」という。)によれ
ば,本件特許の請求項1ないし35は,下記のとおりである。
【請求項1】周端縁に底部及び両側部を有して略U字状に切り欠かれたノッ
チがある円盤状のウエーハを検査するウエーハ用検査装置であって,該ウ
エーハを回転可能に支持する支持部と,該支持部に支持されて回転させら
れるウエーハの周端縁を連続的に撮像する周端縁撮像部と,上記ウエーハ
の周端縁を照明する周端縁照明部と,上記周端縁撮像部で撮像した撮像デ
ータを処理する制御部とを備えたウエーハ用検査装置において,上記周端
縁撮像部を,上記ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像する複
数の撮像カメラを配置して構成し,上記周端縁撮像部の撮像カメラを上記
周端縁の厚さ方向に沿って略直線状に撮像するラインセンサで構成し,上
記ノッチを撮像するノッチ撮像部を設け,上記ノッチを照明するノッチ照
明部を設け,上記制御部に該ノッチ撮像部で撮像した撮像データを処理す
る機能を備え,上記ノッチ撮像部を,上記ノッチの厚さ方向の異なる部位
を撮像するエリアセンサで構成した複数の撮像カメラを配置して構成した
ことを特徴とするウエーハ用検査装置(以下,「本件発明1」とい
う。)。
【請求項2】上記ウエーハの周端縁は,ウエーハの面に対して略直角な側
面,該側面に対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成さ
れ,上記周端縁撮像部において,上記側面,上面及び下面に対応し各面に
対して撮像方向を略直角に対面させて夫々配置した側面用撮像カメラ,上
面用撮像カメラ及び下面用撮像カメラを備え,該周端縁撮像部の各撮像カ
メラを,該各撮像カメラの撮像部位が上記ウエーハの周端縁の同じ位相位
置を撮像し得るように配置したことを特徴とする請求項1記載のウエーハ
用検査装置(以下,「本件発明2」という。)。
【請求項3】上記周端縁照明部を,上記ウエーハの周端縁の厚さ方向に沿う
所定の円弧に沿って照射面を形成し該円弧の中心に向けて収束するように
照射光を放光する光ファイバの集合体を備えて構成するとともに,上記周
端縁撮像部の各撮像カメラが該周端縁照明部からの照明光が反射した反射
光の明視野範囲に位置するように配置したことを特徴とする請求項2記載
のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明3」という。)。
【請求項4】上記制御部を,撮像データ処理部と,CRT等の表示部とを備
えて構成し,上記撮像データ処理部を,上記周端縁撮像部の複数の撮像カ
メラで撮像したウエーハの周端縁をウエーハの角度位置の位相を合わせて
上記表示部に同時表示する周端縁表示手段を設けて構成したことを特徴と
する請求項1,2または3記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明
4」という。)。
【請求項5】上記撮像データ処理部を,ウエーハの周端縁の画像データから
基準にする基準輝度に対して所定以上の輝度差のあるエリアを欠陥部とし
て認識する欠陥部認識手段と,該欠陥部認識手段が認識した欠陥部を上記
表示部に座標表示する欠陥部座標表示手段とを備えて構成したことを特徴
とする請求項4記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明5」とい
う。)。
【請求項6】上記欠陥部座標表示手段を,ウエーハの周端縁の周方向に沿う
角度座標を表示する角度座標表示機能と,ウエーハの周端縁の厚さ方向に
沿う相対位置を表示する厚さ方向座標表示機能とを備えて構成したことを
特徴とする請求項5記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明6」と
いう。)。
【請求項7】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠陥
部の形状を認識する欠陥部形状認識手段と,該欠陥部形状認識手段が認識
した形状を上記表示部に表示する欠陥部形状表示手段を備えて構成したこ
とを特徴とする請求項5または6記載のウエーハ用検査装置(以下,「本
件発明7」という。)。
【請求項8】上記欠陥部形状認識手段を,予め定められたしきい値に基づい
て点欠陥部,線欠陥部及び面欠陥部のいずれかに区分けして認識する機能
を備えて構成したことを特徴とする請求項7記載のウエーハ用検査装置(
以下,「本件発明8」という。)。
【請求項9】上記周端縁撮像部の各撮像カメラの撮像面毎に,点欠陥部,線
欠陥部及び面欠陥部の分布を所定の角度単位で算出する欠陥分布算出手段
を備えたことを特徴とする請求項8記載のウエーハ用検査装置(以下,「
本件発明9」という。)。
【請求項10】上記周端縁撮像部の各撮像カメラの撮像面毎に,点欠陥部,
線欠陥部及び面欠陥部の程度を所定の角度単位でランク付けする欠陥ラン
ク付け手段を備えたことを特徴とする請求項9記載のウエーハ用検査装
置(以下,「本件発明10」という。)。
【請求項11】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部の面積を算出する欠陥部面積算出手段と,該欠陥部面積算出手段が算
出した面積を上記表示部に表示する欠陥部面積表示手段と,上記欠陥部認
識手段が認識した欠陥部が外接する外接矩形の大きさを算出する欠陥部外
接矩形大きさ算出手段と,該欠陥部外接矩形大きさ算出手段が算出した大
きさを上記表示部に表示する欠陥部外接矩形大きさ表示手段とを備えて構
成したことを特徴とする請求項5,6,7,8,9または10記載のウエ
ーハ用検査装置(以下,「本件発明11」という。)。
【請求項12】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部面積算出手段が算出し
た欠陥部の面積と,欠陥部外接矩形大きさ算出手段が算出した外接矩形の
大きさとから欠陥部の密度を算出する欠陥部密度算出手段と,該欠陥部密
度算出手段が算出した欠陥部の密度を上記表示部に表示する欠陥部密度表
示手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項11記載のウエーハ用
検査装置(以下,「本件発明12」という。)。
【請求項13】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部の平均輝度を算出する欠陥部輝度算出手段と,該欠陥部輝度算出手段
が算出した欠陥部の平均輝度を上記表示部に表示する欠陥部輝度表示手段
とを備えて構成したことを特徴とする請求項5,6,7,8,9,10,
11または12記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明13」とい
う。)。
【請求項14】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部に基づいて,当該ウエーハの良否を判定する良否判定手段と,該良否
判定手段が判定した当該ウエーハの良否を上記表示部に表示するウエーハ
良否表示手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項5,6,7,
8,9,10,11,12または13記載のウエーハ用検査装置(以
下,「本件発明14」という。)。
【請求項15】上記ノッチがウエーハの面に対して略直角な側面,該側面に
対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成され,上記ノッチ
撮像部の撮像カメラを,上記側面,上面及び下面に対応し各面に対して撮
像方向を略直角に対面させて夫々配置したことを特徴とする請求項1,
2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13または14記
載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明15」という。)。
【請求項16】上記ノッチ撮像部において,上記ノッチの底部の側面に対応
した底部側面撮像カメラ,該底部の上面に対応した底部上面撮像カメラ,
該底部の下面に対応した底部下面撮像カメラ,上記ノッチの一方の側部の
側面に対応した一方側部側面撮像カメラ,上記ノッチの他方の側部の側面
に対応した他方側部側面撮像カメラを備えたことを特徴とする請求項15
記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明16」という。)。
【請求項17】上記ノッチ照明部を,上記ノッチに向けて照射光を放光する
発光ダイオードの集合体を備えて構成するとともに,上記ノッチ撮像部の
各撮像カメラが該ノッチ照明部からの照明光が反射した反射光の明視野範
囲に位置するように配置したことを特徴とする請求項1,2,3,4,
5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15または16記
載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明17」という。)。
【請求項18】上記ノッチ照明部を,上記ノッチに向けて照射光を放光する
発光ダイオードの集合体を備えて構成するとともに,上記ノッチ撮像部の
各撮像カメラが該ノッチ照明部からの照明光が反射した反射光の明視野範
囲に位置するように配置し,上記底部上面撮像カメラ及び底部下面撮像カ
メラに夫々設けられ該各撮像カメラの撮像面が中央に臨むドーム状の照射
面を形成し上記ノッチに向けて照射光を放光するドーム照射体と,上記底
部側面撮像カメラ,一方側部側面撮像カメラ及び他方側部側面撮像カメラ
の撮像面が臨むスリットを形成するように設けられた略平面状の照射面を
一対有し上記ノッチに向けて照射光を放光する平面照射体とを備えて構成
したことを特徴とする請求項17記載のウエーハ用検査装置(以下,「本
件発明18」という。)。
【請求項19】上記制御部を,撮像データ処理部と,CRT等の表示部とを
備えて構成し,上記撮像データ処理部を,上記ノッチ撮像部の複数の撮像
カメラで撮像したノッチの画像を上記表示部に同時表示するノッチ表示手
段を設けて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,
7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17または1
8記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明19」という。)。
【請求項20】上記撮像データ処理部を,上記表示部に表示される各撮像カ
メラに対応するノッチの画像の最適画像範囲を,基準位置を基準にして設
定する画像範囲設定手段を備えて構成したことを特徴とする請求項19記
載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明20」という。)。
【請求項21】上記基準位置を,各撮像カメラに対応してノッチの表面に行
列状の点を付した基準ウエーハを撮像し,該撮像画面の行列状の点に基づ
いて決定することを特徴とする請求項20記載のウエーハ用検査装置(以
下,「本件発明21」という。)。
【請求項22】上記撮像データ処理部を,ノッチの画像データから基準にす
る基準輝度に対して所定以上の輝度差のあるエリアを欠陥部として認識す
る欠陥部認識手段と,該欠陥部認識手段が認識した欠陥部を上記表示部に
座標表示する欠陥部座標表示手段とを備えて構成したことを特徴とする請
求項19,20または21記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明
22」という。)。
【請求項23】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部の形状を認識する欠陥部形状認識手段と,該欠陥部形状認識手段が認
識した形状を上記表示部に表示する欠陥部形状表示手段を備えて構成した
ことを特徴とする請求項22記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発
明23」という。)。
【請求項24】上記欠陥部形状認識手段を,予め定められたしきい値に基づ
いて点欠陥部,線欠陥部及び面欠陥部のいずれかに区分けして認識する機
能を備えて構成したことを特徴とする請求項23記載のウエーハ用検査装
置(以下,「本件発明24」という。)。
【請求項25】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部の面積を算出する欠陥部面積算出手段と,該欠陥部面積算出手段が算
出した面積を上記表示部に表示する欠陥部面積表示手段と,上記欠陥部認
識手段が認識した欠陥部が外接する外接矩形の大きさを算出する欠陥部外
接矩形大きさ算出手段と,該欠陥部外接矩形大きさ算出手段が算出した大
きさを上記表示部に表示する欠陥部外接矩形大きさ表示手段とを備えて構
成したことを特徴とする請求項22,23または24記載のウエーハ用検
査装置(以下,「本件発明25」という。)。
【請求項26】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部面積算出手段が算出し
た欠陥部の面積と上記欠陥部外接矩形大きさ算出手段が算出した外接矩形
の大きさとから欠陥部密度を算出する欠陥部密度算出手段と,該欠陥部密
度算出手段が算出した欠陥部の密度を上記表示部に表示する欠陥部密度表
示手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項25記載のウエーハ用
検査装置(以下,「本件発明26」という。)。
【請求項27】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部の平均輝度を算出する欠陥部輝度算出手段と,該欠陥部輝度算出手段
が算出した欠陥部の平均輝度を上記表示部に表示する欠陥部輝度表示手段
とを備えて構成したことを特徴とする請求項22,23,24,25また
は26記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明27」という。)。
【請求項28】上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠
陥部に基づいて,当該ウエーハの良否を判定するウエーハ良否判定手段
と,該ウエーハ良否判定手段が判定した当該ウエーハの良否を上記表示部
に表示するウエーハ良否表示手段とを備えて構成したことを特徴とする請
求項22,23,24,25,26または27記載のウエーハ用検査装
置(以下,「本件発明28」という。)。
【請求項29】上記支持部を,中心軸を回転中心として回転可能に設けられ
該中心軸を中心とする円周上に上記ウエーハの周端縁を支承する複数の支
承フィンガを備えた支承盤と,該支承盤を回転させる駆動部とを備えて構
成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,1
0,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,2
1,22,23,24,25,26,27または28記載のウエーハ用検
査装置(以下,「本件発明29」という。)。
【請求項30】上記支承フィンガを,上記中心軸側に向けて下に傾斜する上
記ウエーハの周端縁を支承する支承面を備えて構成したことを特徴とする
請求項29記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明30」とい
う。)。
【請求項31】上記支持部を,上記支承盤の支承フィンガに支承されたウエ
ーハの支承位置を可変にする支承位置可変機構を備えて構成したことを特
徴とする請求項29または30記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件
発明31」という。)。
【請求項32】上記支承位置可変機構を,上記支承盤と同軸の中心軸を中心
に相対回転可能に設けられ該中心軸を中心とする円周上に上記ウエーハの
周端縁を担持可能な複数の担持フィンガを備えるとともに該担持フィンガ
を上記支承盤の支承フィンガより上位の位置であって該ウエーハを担持し
て持ち上げる担持位置及び該支承フィンガより下位の位置であって該ウエ
ーハを上記支承フィンガに受け渡す受渡位置の2位置に移動可能な担持盤
と,該担持盤を上記担持位置及び受渡位置の2位置に移動させる移動機構
とを備えて構成したことを特徴とする請求項31記載のウエーハ用検査装
置(以下,「本件発明32」という。)。
【請求項33】ウエーハの貯留部から検査対象のウエーハを搬送して上記支
持部の支承盤の支承フィンガに該ウエーハを芯出しして支承させるウエー
ハ搬送部を備えたことを特徴とする請求項29,30,31または32記
載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明33」という。)。
【請求項34】上記ウエーハ搬送部を,該ウエーハの周端縁に係合する係合
部を備えるとともに該係合部を係合させて該ウエーハを該ウエーハの面方
向に挾持して把持する把持位置及び該把持を解除する把持解除位置の2位
置に相対移動可能な一対の把持ハンドを備えて構成し,上記係合部に上記
把持位置で該ウエーハに弾接する弾接体を設けたことを特徴とする請求項
33記載のウエーハ用検査装置(以下,「本件発明34」という。)。
【請求項35】上記支持部に支持されて回転させられるウエーハの直径を計
測する直径計測部を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,
6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,1
8,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,2
9,30,31,32,33または34記載のウエーハ用検査装置(以
下,「本件発明35」という。)。
(2) 本件明細書の「発明の詳細な説明」には,以下のとおりの記載がある。
【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,円盤状のウエーハの周端
縁を撮像し,この撮像データに基づいてウエーハの検査を非破壊で行なう
ことができるようにしたウエーハ用検査装置に関する。
【0002】【従来の技術】従来,この種のウエーハ用検査装置としては,
例えば,特開平8−136462号公報に掲載されたものが知られてい
る。
このウエーハ用検査装置は,図34に示すように,円盤状のウエーハWを
回転可能に支持する支持部1と,支持部1に支持されて回転させられるウ
エーハWの周端縁Sを連続的に撮像する撮像カメラ2と,撮像カメラ2で
撮像した撮像画像を表示するCRT等のモニタ(図示せず)とを備えて構
成されている。
撮像カメラ2は,ウエーハWに対して前後左右に移動可能に設けられてい
るとともにウエーハWの厚さ方向に回動可能に設けられており,これらの
移動により撮像カメラの作動距離が調整される。
そして,ウエーハWを回転させ撮像カメラ2を前後左右あるいは厚さ方向
に回動させてウエーハWの周端縁Sをモニタに表示し,ウエーハWの周端
縁Sにある欠陥の有無を観察するようにしている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで,上述した従来のウ
エーハ用検査装置にあっては,ウエーハWの周端縁Sの内,撮像カメラ2
の撮像方向に直角に対面する部位の画像は明瞭であるが,撮像カメラ2の
撮像方向に斜めになってしまう部位の画像は不鮮明になり易く,そのた
め,欠陥の抽出精度に劣っているという問題があった。
その理由は,例えば,図34に示すように,ウエーハWの周端縁Sが側面
SS及び側面SSに対して傾斜して面取りされた上面SA,下面SBを有
している場合には,撮像カメラ2をウエーハWの厚さ方向に回動させてそ
の撮像方向を,例えば,側面SSに直角に対面させて合わせると,上面S
A及び下面SBが撮像カメラ2の撮像方向に斜めになって撮像されること
になるので,画像が不鮮明になって撮像精度が悪くなるからである。
【0004】また,ウエーハWの側面SS,上面SA及び下面SBを夫々明
瞭に撮像しようとすると,各面に合わせてその都度撮像カメラ2の位置を
移動させて各面に撮像カメラ2の撮像方向を直角に対面させる調整を行な
わなければならないので,操作が煩雑になるという問題もあった。
更に,モニタでは,側面SS,上面SA及び下面SBを明瞭にして同時に
見ることができないという問題もあった。
【0005】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので,ウエーハの周
端縁が面取りされていても,撮像カメラの位置を逐一移動させることな
く,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に見ることができるようにして,操
作性を向上させるとともに,撮像精度を向上させ,欠陥の抽出精度の向上
を図ったウエーハ用検査装置を提供することを目的とする。
【0006】【課題を解決するための手段】このような目的を達成するた
め,本発明のウエーハ用検査装置は,円盤状のウエーハを回転可能に支持
する支持部と,該支持部に支持されて回転させられるウエーハの周端縁を
連続的に撮像する周端縁撮像部と,該周端縁撮像部で撮像した撮像データ
を処理する制御部とを備えたウエーハ用検査装置において,上記周端縁撮
像部を,上記ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の
撮像カメラを配置して構成している。
これにより,ウエーハの検査を行なうときは,ウエーハを支持部に支持し
て回転させ,この状態で,周端縁撮像部で周端縁の画像を取込む。この場
合,周端縁撮像部は,ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像す
る複数の撮像カメラを備えているので,ウエーハの周端縁が面取りされて
いても,撮像カメラの位置を逐一移動させることなく,厚さ方向全部を明
瞭にしかも同時に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,撮像精度
が向上させられる。取り込まれた撮像データは制御部に送出されて処理さ
れる。
【0007】そして,必要に応じ,上記撮像カメラを上記周端縁の厚さ方向
に沿って略直線状に撮像するラインセンサで構成している。周端縁を狭い
幅で撮像してこれを連続させるので,解像度が良く,撮像精度が向上させ
られる。
また,必要に応じ,上記ウエーハの周端縁がウエーハの面に対して略直角
な側面,該側面に対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成
された場合,上記側面,上面及び下面に対応し各面に対して撮像方向を略
直角に対面させて夫々配置した側面用撮像カメラ,上面用撮像カメラ及び
下面用撮像カメラを備えた構成としている。ウエーハの周端縁の各面を明
瞭にしかも同時に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,撮像精度
が向上させられる。
【0008】更に,必要に応じ,上記各撮像カメラを,該各撮像カメラの撮
像部位が上記ウエーハの周端縁の同じ位相位置を撮像し得るように配置し
た構成としている。撮像カメラを集約できるので,装置がコンパクトにな
る。
この場合,必要に応じ,上記ウエーハの周端縁を照明する周端縁照明部を
設け,該周端縁照明部を,上記ウエーハの周端縁の厚さ方向に沿う所定の
円弧に沿って照射面を形成し該円弧の中心に向けて収束するように照射光
を放光する光ファイバの集合体を備えて構成するとともに,上記各撮像カ
メラが該周端縁照明部からの照明光が反射した反射光の明視野範囲に位置
するように配置した構成としている。
これにより,周端縁を照明する周端縁照明部は,ウエーハの周端縁の厚さ
方向に沿う所定の円弧に沿って照射面を形成し円弧の中心に向けて収束す
るように照射光を放光し,各撮像カメラは,周端縁照明部からの照明光が
反射した反射光の明視野範囲に位置するように配置され,即ち,各撮像カ
メラは,C型の周端縁照明部からの照明を正反射で受けるよう配置されて
いるので,周端縁の各面を明瞭に撮像でき,特に,欠陥を良く撮像でき,
この点でも撮像精度が向上させられる。
【0009】また,必要に応じ,上記制御部を,撮像データ処理部と,CR
T等の表示部とを備えて構成し,上記撮像データ処理部を,上記周端縁撮
像部の複数の撮像カメラで撮像したウエーハの周端縁をウエーハの角度位
置の位相を合わせて上記表示部に同時表示する周端縁表示手段を設けて構
成している。
これにより,周端面の面の状況,特に欠陥部の状況が視認できる。この場
合,複数の撮像カメラでウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像
しているので,ウエーハの周端縁が面取りされていても各面を明瞭にしか
も各面同時に視認することができ,それだけ,検査精度が向上させられ
る。
更に,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記周端縁表示手段によっ
て表示されたウエーハの周端縁の画像をウエーハの周端縁の周方向に沿っ
てスクロールするスクロール手段を設けて構成している。画像をスクロー
ルすることで,全周に亘って良く視認することができ,それだけ,検査精
度が向上させられる。
【0010】更にまた,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,ウエーハの
周端縁の画像データから基準にする基準輝度に対して所定以上の輝度差の
あるエリアを欠陥部として認識する欠陥部認識手段と,該欠陥部認識手段
が認識した欠陥部を上記表示部に座標表示する欠陥部座標表示手段とを備
えて構成している。欠陥部の位置を特定できるので,それだけ,検査精度
が向上させられる。
この場合,必要に応じ,上記欠陥部座標表示手段を,ウエーハの周端縁の
周方向に沿う角度座標を表示する角度座標表示機能と,ウエーハの周端縁
の厚さ方向に沿う相対位置を表示する厚さ方向座標表示機能とを備えて構
成している。表示が確実になる。
【0011】また,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識
手段が認識した欠陥部の形状を認識する欠陥部形状認識手段と,該欠陥部
形状認識手段が認識した形状を上記表示部に表示する欠陥部形状表示手段
を備えて構成している。欠陥の形状が分かるので,それだけ,検査精度が
向上させられる。
この場合,上記欠陥部形状認識手段を,予め定められたしきい値に基づい
て点欠陥部,線欠陥部及び面欠陥部のいずれかに区分けして認識する機能
を備えて構成したことが有効である。欠陥の種類が分類されるので,認識
が容易になる。
また,この場合,必要に応じ,上記各撮像カメラの撮像面毎に,点欠陥
部,線欠陥部及び面欠陥部の分布を所定の角度単位で算出する欠陥分布算
出手段を備えた構成としている。周端縁の欠陥の分布状態が分かるので,
欠陥の発生原因究明等に利用でき,それだけ,検査精度が向上させられ
る。
更に,この場合,必要に応じ,上記各撮像カメラの撮像面毎に,点欠陥
部,線欠陥部及び面欠陥部の程度を所定の角度単位でランク付けする欠陥
ランク付け手段を備えた構成としている。周端縁の欠陥の程度が分かるの
で,欠陥の発生原因究明等に利用でき,それだけ,検査精度が向上させら
れる。
【0012】更にまた,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部
認識手段が認識した欠陥部の面積を算出する欠陥部面積算出手段と,該欠
陥部面積算出手段が算出した面積を上記表示部に表示する欠陥部面積表示
手段と,上記欠陥部認識手段が認識した欠陥部が外接する外接矩形の大き
さを算出する欠陥部外接矩形大きさ算出手段と,該欠陥部外接矩形大きさ
算出手段が算出した大きさを上記表示部に表示する欠陥部外接矩形大きさ
表示手段とを備えて構成している。欠陥の大きさを認識でき,それだけ,
検査精度が向上させられる。
また,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部面積算出手段が
算出した欠陥部の面積と,欠陥部外接矩形大きさ算出手段が算出した外接
矩形の大きさとから欠陥部の密度を算出する欠陥部密度算出手段と,該欠
陥部密度算出手段が算出した欠陥部の密度を上記表示部に表示する欠陥部
密度表示手段とを備えて構成している。欠陥の広がりを認識でき,それだ
け,検査精度が向上させられる。
【0013】更に,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識
手段が認識した欠陥部の平均輝度を算出する欠陥部輝度算出手段と,該欠
陥部輝度算出手段が算出した欠陥部の平均輝度を上記表示部に表示する欠
陥部輝度表示手段とを備えて構成している。欠陥部の輝度は欠陥の深さに
対応することから,欠陥の奥行きを認識でき,それだけ,検査精度が向上
させられる。
更にまた,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠陥
部に基づいて,当該ウエーハの良否を判定する良否判定手段と,該良否判
定手段が判定した当該ウエーハの良否を上記表示部に表示するウエーハ良
否表示手段とを備えて構成している。ウエーハの良否を自動的に判定でき
るので,検査が容易になる。
【0014】そして,本発明において対象とするウエーハは,その周端縁に
底部及び両側部を有して略U字状に切り欠かれたノッチがあるウエーハで
あり,本発明は,該ノッチを撮像するノッチ撮像部を設け,上記制御部に
該ノッチ撮像部で撮像した撮像データを処理する機能を備えて構成し,上
記ノッチ撮像部を,上記ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の
撮像カメラを配置した構成としている。
これにより,ウエーハを支持部に支持して,ノッチ撮像部でノッチの画像
を取込む。ノッチ撮像部は,ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する複
数の撮像カメラを備えているので,ノッチが面取りされていても,撮像カ
メラの位置を逐一移動させることなく,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時
に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,撮像精度が向上させられ
る。取り込まれた撮像データは制御部に送出されて処理される。
【0015】そして,必要に応じ,上記撮像カメラを面状に撮像するエリア
センサで構成している。ウエーハを回転させることなく,一時に撮像でき
る。
そしてまた,必要に応じ,上記ノッチがウエーハの面に対して略直角な側
面,該側面に対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成され
た場合,上記撮像カメラを,上記側面,上面及び下面に対応し各面に対し
て撮像方向を略直角に対面させて夫々配置した構成としている。ノッチの
各面を明瞭にしかも同時に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,
撮像精度が向上させられる。
この場合,必要に応じ,上記ノッチの底部の側面に対応した底部側面撮像
カメラ,該底部の上面に対応した底部上面撮像カメラ,該底部の下面に対
応した底部下面撮像カメラ,上記ノッチの一方の側部の側面に対応した一
方側部側面撮像カメラ,上記ノッチの他方の側部の側面に対応した他方側
部側面撮像カメラを備えた構成としている。ノッチの各面を明瞭にしかも
同時に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,撮像精度が向上させ
られる。
【0016】また,必要に応じ,上記ノッチを照明するノッチ照明部を設
け,該ノッチ照明部を,上記ノッチに向けて照射光を放光する発光ダイオ
ードの集合体を備えて構成するとともに,上記各撮像カメラが該ノッチ照
明部からの照明光が反射した反射光の明視野範囲に位置するように配置し
た構成としている。ノッチ照明部からの照明光が反射した反射光の明視野
範囲に位置するように配置されているので,ノッチの各面を明瞭に撮像で
き,特に,欠陥を良く撮像でき,この点でも撮像精度が向上させられる。
更に,必要に応じ,上記ノッチを照明するノッチ照明部を設け,該ノッチ
照明部を,上記ノッチに向けて照射光を放光する発光ダイオードの集合体
を備えて構成するとともに,上記各撮像カメラが該ノッチ照明部からの照
明光が反射した反射光の明視野範囲に位置するように配置し,上記底部上
面撮像カメラ及び底部下面撮像カメラに夫々設けられ該各撮像カメラの撮
像面が中央に臨むドーム状の照射面を形成し上記ノッチに向けて照射光を
放光するドーム照射体と,上記底部側面撮像カメラ,一方側部側面撮像カ
メラ及び他方側部側面撮像カメラの撮像面が臨むスリットを形成するよう
に設けられた略平面状の照射面を一対有し上記ノッチに向けて照射光を放
光する平面照射体とを備えて構成している。これにより,ノッチを照明す
るノッチ照明部が,ドーム照射体及び平面照射体を備え,ノッチを良く照
明するとともに,各撮像カメラは,ノッチ照明部からの照明光が反射した
反射光の明視野範囲に位置するように配置されているので,ノッチの各面
を明瞭に撮像でき,特に,欠陥を良く撮像でき,この点でも撮像精度が向
上させられる。
【0017】そして,必要に応じ,上記制御部を,撮像データ処理部と,C
RT等の表示部とを備えて構成し,上記撮像データ処理部を,上記ノッチ
撮像部の複数の撮像カメラで撮像したノッチの画像を上記表示部に同時表
示するノッチ表示手段を設けて構成している。
これにより,ノッチの面の状況,特に欠陥部の状況が視認できる。この場
合,複数の撮像カメラでノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像しているの
で,ノッチが面取りされていても各面を明瞭にしかも各面同時に視認する
ことができ,それだけ,検査精度が向上させられる。
【0018】また,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記表示部に表
示される各撮像カメラに対応するノッチの画像の最適画像範囲を,基準位
置を基準にして設定する画像範囲設定手段を備えて構成している。これに
より,画像データのデータ処理が,この範囲設定された画像に基づいて行
なわれる。そのため,より精度の良い欠陥認識を行なうことができるよう
になる。
この場合,必要に応じ,上記基準位置を,各撮像カメラに対応してノッチ
の表面に行列状の点を付した基準ウエーハを撮像し,該撮像画面の行列状
の点に基づいて決定する構成としている。これにより,ノッチ撮像部で基
準ウエーハのノッチの画像を取込む。そして,ノッチ画像の焦点の合って
いる(ピントの合っている)箇所を,基準ウエーハに付した行列状の点を
目視により見て,この点の位置に合わせて,最適範囲設定を行なう。その
ため,行列状の点で細かく範囲合わせを行なうことができ,範囲設定が確
実に行なわれる。
【0019】また,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,ノッチの画像デ
ータから基準にする基準輝度に対して所定以上の輝度差のあるエリアを欠
陥部として認識する欠陥部認識手段と,該欠陥部認識手段が認識した欠陥
部を上記表示部に座標表示する欠陥部座標表示手段とを備えて構成してい
る。欠陥部の位置を特定できるので,それだけ,検査精度が向上させられ
る。
このノッチの画像処理においても,上記周端部と同様に上記撮像データ処
理部を構成することが望ましい。
【0020】即ち,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識
手段が認識した欠陥部の形状を認識する欠陥部形状認識手段と,該欠陥部
形状認識手段が認識した形状を上記表示部に表示する欠陥部形状表示手段
を備えて構成している。欠陥の形状が分かるので,それだけ,検査精度が
向上させられる。
この場合,上記欠陥部形状認識手段を,予め定められたしきい値に基づい
て点欠陥部,線欠陥部及び面欠陥部のいずれかに区分けして認識する機能
を備えて構成したことが有効である。欠陥の種類が分類されるので,認識
が容易になる。
【0021】更にまた,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部
認識手段が認識した欠陥部の面積を算出する欠陥部面積算出手段と,該欠
陥部面積算出手段が算出した面積を上記表示部に表示する欠陥部面積表示
手段と,上記欠陥部認識手段が認識した欠陥部が外接する外接矩形の大き
さを算出する欠陥部外接矩形大きさ算出手段と,該欠陥部外接矩形大きさ
算出手段が算出した大きさを上記表示部に表示する欠陥部外接矩形大きさ
表示手段とを備えて構成している。欠陥の大きさを認識でき,それだけ,
検査精度が向上させられる。
また,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部面積算出手段が
算出した欠陥部の面積と,欠陥部外接矩形大きさ算出手段が算出した外接
矩形の大きさとから欠陥部の密度を算出する欠陥部密度算出手段と,該欠
陥部密度算出手段が算出した欠陥部の密度を上記表示部に表示する欠陥部
密度表示手段とを備えて構成している。欠陥の広がりを認識でき,それだ
け,検査精度が向上させられる。
【0022】更に,必要に応じ,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識
手段が認識した欠陥部の平均輝度を算出する欠陥部輝度算出手段と,該欠
陥部輝度算出手段が算出した欠陥部の平均輝度を上記表示部に表示する欠
陥部輝度表示手段とを備えて構成している。欠陥部の輝度は欠陥の深さに
対応することから,欠陥の奥行きを認識でき,それだけ,検査精度が向上
させられる。
更にまた,上記撮像データ処理部を,上記欠陥部認識手段が認識した欠陥
部に基づいて,当該ウエーハの良否を判定する良否判定手段と,該良否判
定手段が判定した当該ウエーハの良否を上記表示部に表示するウエーハ良
否表示手段とを備えて構成している。ウエーハの良否を自動的に判定でき
るので,検査が容易になる。
【0023】そして,必要に応じ,上記支持部を,中心軸を回転中心として
回転可能に設けられ該中心軸を中心とする円周上に上記ウエーハの周端縁
を支承する複数の支承フィンガを備えた支承盤と,該支承盤を回転させる
駆動部とを備えて構成している。ウエーハが支承フィンガに支承されるの
で,ウエーハの面を傷つける等悪影響を及ぼす事態が防止される。
この場合,必要に応じ,上記支承フィンガを,上記中心軸側に向けて下
に傾斜する上記ウエーハの周端縁を支承する支承面を備えて構成したこと
が有効である。ウエーハの周端縁を支承面で線支持するようになるので,
より一層ウエーハの面を傷つける等悪影響を及ぼす事態が防止される。
【0024】また,必要に応じ,上記支持部を,上記支承盤の支承フィンガ
に支承されたウエーハの支承位置を可変にする支承位置可変機構を備えて
構成している。支承位置を変えるので,支承フィンガのある撮像できない
ウエーハの部位を露出させて撮像できるようにすることができる。
この場合,必要に応じ,上記支承位置可変機構を,上記支承盤と同軸の中
心軸を中心に相対回転可能に設けられ該中心軸を中心とする円周上に上記
ウエーハの周端縁を担持可能な複数の担持フィンガを備えるとともに該担
持フィンガを上記支承盤の支承フィンガより上位の位置であって該ウエー
ハを担持して持ち上げる担持位置及び該支承フィンガより下位の位置であ
って該ウエーハを上記支承フィンガに受け渡す受渡位置の2位置に移動可
能な担持盤と,該担持盤を上記担持位置及び受渡位置の2位置に移動させ
る移動機構とを備えて構成している。
これにより,ウエーハの支承位置を変える際は,受渡位置にある担持盤を
担持位置に移動させ,支承盤に支承されていたウエーハを担持盤の担持フ
ィンガに担持して持ち上げ,この持ち上げられている間に,支承盤を回転
させて支承盤の支承フィンガが別の角度位相位置に位置させる。それか
ら,担持盤を受渡位置に位置させてウエーハを支承フィンガに受け渡す。
この場合,支承位置を変えるので,先に撮像できなかった部位を露出させ
て撮像できるようにすることができる。また,ウエーハを担持盤の担持フ
ィンガに担持させて持ち上げるので,ウエーハに傷をつける等の悪影響を
及ぼす事態が防止される。
【0025】更に,必要に応じ,ウエーハの貯留部から検査対象のウエーハ
を搬送して上記支持部の支承盤の支承フィンガに該ウエーハを芯出しして
支承させるウエーハ搬送部を備えた構成としている。これにより,支承盤
の支承フィンガに対してウエーハが芯出しされて支承されるので,支承盤
に対するウエーハの位置決め精度が高くなり,その後の検査精度が向上さ
せられる。
この場合,必要に応じ,上記ウエーハ搬送部を,該ウエーハの周端縁に係
合する係合部を備えるとともに該係合部を係合させて該ウエーハを該ウエ
ーハの面方向に挾持して把持する把持位置及び該把持を解除する把持解除
位置の2位置に相対移動可能な一対の把持ハンドを備えて構成し,上記係
合部に上記把持位置で該ウエーハに弾接する弾接体を設けた構成としてい
る。把持ハンドは把持位置において,その係合部をウエーハの周端縁に係
合させ,ウエーハをウエーハの面方向に挾持して把持する。この把持によ
り,係合部の弾接体がウエーハに弾接されるので,ウエーハが中央に求心
させられ,支持部の支承盤の支承フィンガに対してウエーハが容易に芯出
しされる。
そして,必要に応じ,上記支持部に支持されて回転させられるウエーハの
直径を計測する直径計測部を設けた構成としている。ウエーハの直径検査
が,欠陥検査と同時に行われる。
【0068】【発明の効果】以上説明したように,本発明のウエーハ用検
査装置によれば,ウエーハの周端縁撮像部を,ウエーハの周端縁の厚さ方
向の異なる部位を撮像する複数の撮像カメラを配置して構成したので,複
数の撮像カメラがウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像するこ
とから,ウエーハの周端縁が面取りされていても,撮像カメラの位置を逐
一移動させることなく,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に撮像でき,操
作性を向上させることができるとともに,撮像精度を向上させることがで
きる。
【0069】そして,撮像カメラをラインセンサで構成した場合には,周
端縁を狭い幅で撮像してこれを連続させることができ,解像度が良く,撮
像精度を向上させることができる。
また,ウエーハの周端縁がウエーハの面に対して略直角な側面,この側面
に対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成された場合,側
面,上面及び下面に対応し各面に対して撮像方向を略直角に対面させて夫
々配置した側面用撮像カメラ,上面用撮像カメラ及び下面用撮像カメラを
備えた場合には,ウエーハの周端縁の各面を明瞭にしかも同時に撮像で
き,操作性を向上させることができるとともに,撮像精度を向上させるこ
とができる。
【0075】そして,本発明において対象とするウエーハは,その周端縁
に底部及び両側部を有して略U字状に切り欠かれたノッチがあるウエーハ
であり,本発明は,ノッチを撮像するノッチ撮像部を設け,このノッチ撮
像部を,ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の撮像カメラを配
置した構成にしたことから,複数の撮像カメラでノッチの厚さ方向の異な
る部位を撮像するので,ノッチが面取りされていても,撮像カメラの位置
を逐一移動させることなく,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に撮像で
き,操作性を向上させることができるとともに,撮像精度を向上させるこ
とができる。
【0076】また,撮像カメラを面状に撮像するエリアセンサで構成した
場合には,ウエーハを回転させることなく,一時に撮像できる。
そしてまた,ノッチがウエーハの面に対して略直角な側面,この側面に対
して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成された場合,撮像カ
メラを,側面,上面及び下面に対応し各面に対して撮像方向を略直角に対
面させて夫々配置した構成とした場合には,ノッチの各面を明瞭にしかも
同時に撮像でき,操作性を向上させることができるとともに,撮像精度を
向上させることができる。
3 審決の内容
別紙審決書の写しのとおりである。
要するに,本件各発明は,本多エレクトロン及び東芝セラミックスの従業者
らのみが発明者ではなく,被告の従業者のM(以下「M」という。)も発明者
であること,Mは,本件各発明について特許を受ける権利の持分を,本多エレ
クトロン又は東芝セラミックスのいずれにも譲渡していないこと,したがっ
て,本件特許について特許を受ける権利は,本多エレクトロン,東芝セラミッ
クス及びMの共有であるにもかかわらず,共有者が共同で特許出願をしたもの
とはいえないから,特許法38条の規定に違反したものであるとするものであ
る。
第3 取消事由に係る原告の主張
審決は,被告の従業者のMが本件各発明の発明者に含まれるから,本件特許
出願は特許法38条の規定に違反すると判断したが,誤りである。以下のとお
り,本件各発明は,前記本多エレクトロン及び東芝セラミックスの従業者6名
によって発明されたものであり,Mが関与してなされた発明ではない。
なお,原告は,被告が特許法123条2項ただし書きの「利害関係人」に該
当することについては,審判手続及び本訴においても争っていない。
1 本件各発明の内容及び本件各発明に至る経緯について
(1) 本多エレクトロンは,平成10年ころから東芝セラミックス向けのウエ
ーハエッジ検査装置(以下「本件ウエーハエッジ検査装置」という。)の開
発を始めた。本件ウエーハエッジ検査装置は,シリコンウエーハ外周部(端
面)上のキズ,カケ,チップ等の不良を非接触にて検出し,画像処理装置を
連動し,あらかじめ設定された条件に基づいて合否判定を自動又は手動です
る装置である(甲33ないし35)。
(2) 本多エレクトロンは,Aに対して,本件ウエーハエッジ検査装置のう
ち,主に光学系の研究開発を指示し,平成10年2月ころから平成11年に
かけて湘南工科大学において半導体ウエーハに関する基礎的な学習をした
り,実験室を借りて実験を行なわせた(甲36ないし38,48)。Aは,
同大学における研究開発と共に,B及びCから機械設計に関する情報や提案
を,東芝セラミックスのD,E及びFから検査対象となる半導体ウエーハの
構造,検出すべき欠陥の性質や構造についての情報等を得た。そして,Aは
上記研究開発を通じて,「ノッチ撮像部」においてはラインセンサに比べて
視野範囲の広いエリアセンサを従来のラインセンサに替えて用いると共に,
平成11年9月ころには請求項1記載の構成を採用する着想を得て(甲4
8,63の1ないし3,68),上記実験による検証や理論的検証を通じて
平成12年5月ころまでに本件各発明を完成させた。
(3) 本件各発明の従来技術にない特徴的部分は,請求項1に記載された,①
ウエーハ用検査装置において,②上記周端縁撮像部を,上記ウエーハの周端
縁の厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の撮像カメラを配置して構成し,
③上記周端縁撮像部の撮像カメラを上記周端縁の厚さ方向に沿って略直線状
に撮像するラインセンサで構成すると共に,④ノッチ撮像部を設け,⑤上記
ノッチ撮像部を,上記ノッチの厚さ方向に異なる部位を撮像するエリアセン
サで構成した複数の撮像カメラを配置して構成したことにある。
(4) 本件発明16及び18記載の構成は,いずれも被告の技術者であるMか
ら提案されたものであるが,それらの構成は請求項1に付加した部分にすぎ
ず,本件各発明の特徴的部分とはいえないから,これらの発明者も請求項1
の発明者であると解するべきである。
ア 本件発明16について
本件発明16において付加された「水平方向の2台のエリアセンサ」
は,本件発明1の「複数のエリアセンサ」のうちの水平方向の1台の機能
を分化させたもので,製品化する際に高解像度のエリアセンサの代わりに
低解像度のエリアセンサを選択可能にしたものにすぎず,本件発明1の設
計事項である。仮に当業者の技術常識を越える技術的な価値があったとし
ても,これを想到したのはAであるから(甲48,70),被告の技術者
であるMは本件発明16の発明者ではない。
イ 本件発明18について
本件発明18において付加された構成については,甲48,70に記載
があるから,Aが想到したものであり,被告技術者であるMは本件発明1
8の発明者ではない。
2 A作成のノート(甲48,67)について
(1) A作成のノート(甲48,67)は,本件各発明のための基礎的研究,
光学的研究,湘南工科大学における実験の経緯,技術的な課題とその解決の
ための本件各発明の着想及びその検証,製品化のための具体的な部品構成等
の本件各発明に至る経緯を平成10年2月ころから平成12年5月ころまで
の間に時間を追って克明に記載したものであり,本件各発明のほとんどすべ
ての構成が記載されている(甲60)。
(2) 甲48,67は,鉛筆書きであり一部に空白ページがあるが,記載内容
や体裁は極めて自然であるし,Aが湘南工科大学で行なっていた実験内容と
その結果が符合しているから,改ざんされたり,後日に書き込まれたもので
はない。
3 A作成の光学機材配置図等(甲63の1ないし3,甲68)について
Aは,湘南工科大学における実験を通して本件各発明を着想したものであ
り,このことはA作成の光学機材配置図等(甲63の1ないし3,甲68)に
本件各発明が記載されていることから明らかである。
4 B作成の平成12年10月23日付け図面(甲42)について
甲42は,本多エレクトロンが,本件各発明の完成を受けて,①ウエーハの
周端縁(エッジ)の厚さ方向の異なる部位をエリアセンサで構成された3台の
撮像カメラを配置し,②ウエーハのノッチの厚さ方向に異なる部位をエリアセ
ンサで構成された3台のカメラを配置する本件ウエーハエッジ検査装置を設計
していたことを示すものであり,平成12年10月23日には本件各発明が完
成していることを示している。
5 A作成の確認依頼書(甲69)について
本多エレクトロンは,本件各発明の完成を受けて,東芝セラミックスに対し
本件ウエーハエッジ検査装置のβ版を作成し,貸し出すことにした(甲6
9)。甲69には,本件発明1の構成を採用することが示されている。
6 A作成のノート(甲70)について
甲70は,Aが平成12年12月6日から8日まで開催されたセミコン・ジ
ャパン2000(甲71)の会場内で,被告のS(以下「S」という。)及び
T(以下「T」という。)に対し,本件各発明の特徴的な構成やその実施に係
る具体的な技術情報を開示,伝達した際に作成したノートである。この甲70
の記載から,Aが被告に対し本件各発明に関する情報(ウエーハのノッチのそ
の厚さ方向の異なる3つの部位をエリアセンサで撮像すること等)を開示,伝
達したことは明らかである。
7 本件各発明に対する被告技術者の関与について
(1) 本多エレクトロンは,平成12年ころ,本件各発明の完成を受けて,本
件ウエーハエッジ検査装置のうち撮像部(光学部)の具体的製品開発を被告
に依頼し,同年10月20日に被告の大阪技術センターにおいて被告が製作
した検査装置の立会評価及び打合せを行なった(甲8)。本件ウエーハエッ
ジ検査装置の開発に関する被告の関与は,この打合せ以降であり,被告の技
術者であるMらは,本件各発明の完成後に関与したにすぎない。
(2) 被告は,上記打合せにおいて,本多エレクトンが被告に対してノッチ検
査手法の検討依頼をしたと主張するが失当である。本多エレクトロンは,上
記打合せにおいて,ノッチ部の撮像も複数のエリアカメラで行なうよう要請
したが,ラインセンサメーカーである被告は,ラインセンサで行なうことを
主張し譲らなかったので,本多エレクトロンが被告に対し,ノッチ検査の手
法の検討を指示したものである。
第4 被告の反論
審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1 本件発明に至る経緯について
(1) 本件ウエーハエッジ検査装置の開発は,平成12年7月17日に本多エ
レクトロンから被告に対して相談を持ちかけたことに始まるが,その後の過
程において,本多エレクトロンから本件各発明に関する情報が提供,開示さ
れたことはない。被告が,本件ウエーハエッジ検査装置の開発当初に作成し
た仕様書(甲7)は,3台のラインセンサカメラからなるエッジ撮像部のみ
を備えた構成からなるもので,本件各発明の必須の構成である複数のエリア
センサカメラからなるノッチ撮像部を備えていない。本件各発明は,その後
に,被告の技術者であるMらが中心となって完成させたものである。
(2) 本件各発明の完成時期
①本多エレクトロンから被告に対し本件各発明に関する具体的な指示がな
かったこと,②本件特許の出願が本件各発明が完成したと原告が主張する時
期から約2年後であること,③本多エレクトロンと被告が守秘義務契約(甲
57)を締結したのが本件各発明が完成したと原告が主張する時期より後の
平成13年12月20日であることからすると,原告が主張する時期には本
件各発明が完成したとはいえない。
(3) 本件発明16及び18について
本件発明16及び18の特徴的部分は,ノッチ撮像部においてノッチを水
平方向の異なる部位を撮像する複数のカメラを備えた点にあり,この特徴的
部分はMら被告技術者が発明したものであり,本件発明16及び18がされ
た当時周知技術でもない。
2 A作成のノート(甲48,67)について
A作成のノート(甲48,67)は,①日付がないこと,②サイン等の第三
者の確認がないこと,③空白のページが多く追記可能であること,④ほとんど
のページが鉛筆で記入されており,記載内容の改変,消去が容易であること,
⑤管理方法が不明であること,⑥実験を裏付ける実験データが何も添付されて
いないこと,⑦Aが自ら考え出したものと他人や書籍から入手した情報が混在
しており,両者を区別することができないこと等の記載態様に照らすならば,
ノートの記載内容がいつ,どのような順序で記載されたか特定できないし,そ
れが記載当時のままであることや,A自身が考え出したものであることを保証
することもできない。よって,甲48,67は,信用できない。
3 A作成の光学機材配置図等(甲63の1ないし3,甲68)について
原告は,A作成のノート(甲48,67)と同様,Aが湘南工科大学におけ
る実験を通して本件各発明を着想したと主張し,その証拠として甲63の1な
いし3,甲68を提出するが,失当である。
ア 甲48,67と甲63の1ないし3との対比
甲63の1ないし3の記載内容と甲48の記載内容とを対比した場合,①
カメラの周方向位置,②斜方向カメラのウエーハに対する取付角度,③ウエ
ーハを水平方向に移動させるスライド機構,ウエーハの傾斜角度を調整する
チルト機構,ウエーハの回転速度を調整する回転速度調整機構の有無,④端
面カメラ及び斜方向のカメラの型式の点で異なっているので,甲48,67
のノートが前記湘南工科大学における実験内容と符合しているということは
できない。
イ 甲63の1ないし3と本件発明1との対比
甲63の1ないし3記載の構成は,いずれも周縁部を撮像するエリアセン
サカメラを1台しか備えておらず,周縁部を撮像する複数のラインセンサカ
メラ(エッジ用)と複数のエリアセンサカメラ(ノッチ用)を特徴的部分と
する本件発明1とは異なる。
ウ 甲68と本件発明1との対比
本件発明1は,エッジとノッチで使用するカメラを使い分けることを特徴
的部分とするのに対し,甲68記載の実験は,エッジとノッチの両方をエリ
アセンサで撮像する構成であり,本件発明1とは異なる。原告は,エッジの
撮像はラインセンサで行なうことを前提として実験がなされていると主張す
るが,ラインセンサとエリアセンサとでは,必要とされる光学条件及びその
後の画像処理が異なるので,技術的に不可能であり失当である。
4 甲42の図面について
甲42の構成はノッチの厚さ方向に異なる部位をエリアセンサで構成された
3台のカメラを配置する構成ではない(甲65の3)。
5 A作成の確認依頼書(甲69)について
甲69には,「端面画像取得用カメラ3台×2式(ノッチ:エリア,エッジ
:ライン」との記載があるだけで,その具体的な構成は不明である。
6 A作成のノート(甲70)について
(1) 甲70には,日付の記載が一切なく,第三者による確認がないためその
作成時期を含めて客観性に欠ける。
(2) 原告は,Aがセミコン・ジャパン2000の会場内で甲70を記載しな
がら被告のS及びTに本件各発明に関する情報を開示・伝達したと主張する
が否認する。Sは,上記情報の開示・伝達を受けていないし,Tはセミコン
・ジャパン2000には参加していない(乙7,8,17)。
7 本件各発明に対する被告技術者の関与について
甲5ないし7によれば,被告が本件ウエーハエッジ検査装置の開発に対して
関与したのは,平成12年7月17日以降であり,同年10月20日の打合せ
以前に本件ウエーハエッジ検査装置の開発に関与している。
第5 当裁判所の判断
当裁判所は,本件各発明については,本多エレクトロン及び東芝セラミックス
の従業者であるA,B,C,D,E,Fのみが発明者ではなく,被告の従業者で
あるMも発明者であり,Mは,本件各発明について特許を受ける権利の持分を,
本多エレクトロン又は東芝セラミックスのいずれにも譲渡したことはなく,した
がって,本件特許について特許を受ける権利は,本多エレクトロン,東芝セラミ
ックス及びMの共有であるにもかかわらず,共有者が共同で特許出願をしたもの
ではなく,本件特許は,特許法38条の規定に違反したものであるから,審決に
誤りがあるとの原告の主張は理由がないと判断する。
その理由の詳細は,以下のとおりである。
発明とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をい
い(特許法2条1項),「産業上利用することができる発明をした者は,・・・
その発明について特許を受けることができる」と規定されている(同法29条1
項柱書き)。そして,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の
知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度に
まで具体的・客観的なものとして構成されたときに,完成したと解すべきであ
る(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参
照)。したがって,発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に
関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的
・客観的なものとして構成するための創作に関与した者を指すというべきであ
る。もとより,発明者となるためには,一人の者がすべての過程に関与すること
が必要なわけではなく,共同で関与することでも足りるというべきであるが,複
数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想及びその具体化
の過程において,発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要する。そ
して,発明の特徴的部分とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,
従来技術には見られない部分,すなわち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付
ける部分を指すものと解すべきである。
上記の観点から,「本件各発明の内容」及び「本件各発明に関与した者の関与
の程度」を総合考慮して,被告の従業者であるMが本件各発明の共同発明者の一
人に該当するか否かを考察する。
1 本件各発明の内容
(1) 本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2,2のとおりである
が,このうち請求項1を分説すると次のとおりである。
【請求項1】
a 周端縁に底部及び両側部を有して略U字状に切り欠かれたノッチが
ある円盤状のウエーハを検査するウエーハ用検査装置であって,該ウ
エーハを回転可能に支持する支持部と,該支持部に支持されて回転さ
せられるウエーハの周端縁を連続的に撮像する周端縁撮像部と,上記
ウエーハの周端縁を照明する周端縁照明部と,上記周端縁撮像部で撮
像した撮像データを処理する制御部とを備えたウエーハ用検査装置に
おいて,
b 上記周端縁撮像部を,上記ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部
位を撮像する複数の撮像カメラを配置して構成し,
c 上記周端縁撮像部の撮像カメラを上記周端縁の厚さ方向に沿って略
直線状に撮像するラインセンサで構成し,
d 上記ノッチを撮像するノッチ撮像部を設け,
e 上記ノッチを照明するノッチ照明部を設け,
f 上記制御部に該ノッチ撮像部で撮像した撮像データを処理する機能
を備え,
g 上記ノッチ撮像部を,上記ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像す
るエリアセンサで構成した複数の撮像カメラを配置して構成した
h ことを特徴とするウエーハ用検査装置(以下それぞれ「構成要件
a」ないし「構成要件h」という。)
(2) 本件明細書(甲1)には,以下の記載がある(前記第2,2のとお
り)。
【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,円盤状のウエーハの周端
縁を撮像し,この撮像データに基づいてウエーハの検査を非破壊で行なう
ことができるようにしたウエーハ用検査装置に関する。
【0002】【従来の技術】従来,この種のウエーハ用検査装置としては,
例えば,特開平8−136462号公報に掲載されたものが知られてい
る。
このウエーハ用検査装置は,図34に示すように,円盤状のウエーハWを
回転可能に支持する支持部1と,支持部1に支持されて回転させられるウ
エーハWの周端縁Sを連続的に撮像する撮像カメラ2と,撮像カメラ2で
撮像した撮像画像を表示するCRT等のモニタ(図示せず)とを備えて構
成されている。
撮像カメラ2は,ウエーハWに対して前後左右に移動可能に設けられてい
るとともにウエーハWの厚さ方向に回動可能に設けられており,これらの
移動により撮像カメラの作動距離が調整される。
そして,ウエーハWを回転させ撮像カメラ2を前後左右あるいは厚さ方向
に回動させてウエーハWの周端縁Sをモニタに表示し,ウエーハWの周端
縁Sにある欠陥の有無を観察するようにしている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで,上述した従来のウ
エーハ用検査装置にあっては,ウエーハWの周端縁Sの内,撮像カメラ2
の撮像方向に直角に対面する部位の画像は明瞭であるが,撮像カメラ2の
撮像方向に斜めになってしまう部位の画像は不鮮明になり易く,そのた
め,欠陥の抽出精度に劣っているという問題があった。
その理由は,例えば,図34に示すように,ウエーハWの周端縁Sが側面
SS及び側面SSに対して傾斜して面取りされた上面SA,下面SBを有
している場合には,撮像カメラ2をウエーハWの厚さ方向に回動させてそ
の撮像方向を,例えば,側面SSに直角に対面させて合わせると,上面S
A及び下面SBが撮像カメラ2の撮像方向に斜めになって撮像されること
になるので,画像が不鮮明になって撮像精度が悪くなるからである。
【0004】また,ウエーハWの側面SS,上面SA及び下面SBを夫々明
瞭に撮像しようとすると,各面に合わせてその都度撮像カメラ2の位置を
移動させて各面に撮像カメラ2の撮像方向を直角に対面させる調整を行な
わなければならないので,操作が煩雑になるという問題もあった。
更に,モニタでは,側面SS,上面SA及び下面SBを明瞭にして同時に
見ることができないという問題もあった。
【0005】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので,ウエーハの周
端縁が面取りされていても,撮像カメラの位置を逐一移動させることな
く,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に見ることができるようにして,操
作性を向上させるとともに,撮像精度を向上させ,欠陥の抽出精度の向上
を図ったウエーハ用検査装置を提供することを目的とする。
【0006】【課題を解決するための手段】このような目的を達成するた
め,本発明のウエーハ用検査装置は,円盤状のウエーハを回転可能に支持
する支持部と,該支持部に支持されて回転させられるウエーハの周端縁を
連続的に撮像する周端縁撮像部と,該周端縁撮像部で撮像した撮像データ
を処理する制御部とを備えたウエーハ用検査装置において,上記周端縁撮
像部を,上記ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の
撮像カメラを配置して構成している。
これにより,ウエーハの検査を行なうときは,ウエーハを支持部に支持し
て回転させ,この状態で,周端縁撮像部で周端縁の画像を取込む。この場
合,周端縁撮像部は,ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像す
る複数の撮像カメラを備えているので,ウエーハの周端縁が面取りされて
いても,撮像カメラの位置を逐一移動させることなく,厚さ方向全部を明
瞭にしかも同時に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,撮像精度
が向上させられる。取り込まれた撮像データは制御部に送出されて処理さ
れる。
【0007】そして,必要に応じ,上記撮像カメラを上記周端縁の厚さ方向
に沿って略直線状に撮像するラインセンサで構成している。周端縁を狭い
幅で撮像してこれを連続させるので,解像度が良く,撮像精度が向上させ
られる。
【0014】そして,本発明において対象とするウエーハは,その周端縁に
底部及び両側部を有して略U字状に切り欠かれたノッチがあるウエーハで
あり,本発明は,該ノッチを撮像するノッチ撮像部を設け,上記制御部に
該ノッチ撮像部で撮像した撮像データを処理する機能を備えて構成し,上
記ノッチ撮像部を,上記ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の
撮像カメラを配置した構成としている。
これにより,ウエーハを支持部に支持して,ノッチ撮像部でノッチの画像
を取込む。ノッチ撮像部は,ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する複
数の撮像カメラを備えているので,ノッチが面取りされていても,撮像カ
メラの位置を逐一移動させることなく,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時
に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,撮像精度が向上させられ
る。取り込まれた撮像データは制御部に送出されて処理される。
【0015】そして,必要に応じ,上記撮像カメラを面状に撮像するエリア
センサで構成している。ウエーハを回転させることなく,一時に撮像でき
る。
そしてまた,必要に応じ,上記ノッチがウエーハの面に対して略直角な側
面,該側面に対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成され
た場合,上記撮像カメラを,上記側面,上面及び下面に対応し各面に対し
て撮像方向を略直角に対面させて夫々配置した構成としている。ノッチの
各面を明瞭にしかも同時に撮像でき,操作性が向上させられるとともに,
撮像精度が向上させられる。
【0068】【発明の効果】以上説明したように,本発明のウエーハ用検査
装置によれば,ウエーハの周端縁撮像部を,ウエーハの周端縁の厚さ方向
の異なる部位を撮像する複数の撮像カメラを配置して構成したので,複数
の撮像カメラがウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像すること
から,ウエーハの周端縁が面取りされていても,撮像カメラの位置を逐一
移動させることなく,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に撮像でき,操作
性を向上させることができるとともに,撮像精度を向上させることができ
る。
【0069】そして,撮像カメラをラインセンサで構成した場合には,周端
縁を狭い幅で撮像してこれを連続させることができ,解像度が良く,撮像
精度を向上させることができる。
また,ウエーハの周端縁がウエーハの面に対して略直角な側面,この側面
に対して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成された場合,側
面,上面及び下面に対応し各面に対して撮像方向を略直角に対面させて夫
々配置した側面用撮像カメラ,上面用撮像カメラ及び下面用撮像カメラを
備えた場合には,ウエーハの周端縁の各面を明瞭にしかも同時に撮像で
き,操作性を向上させることができるとともに,撮像精度を向上させるこ
とができる。
【0075】そして,本発明において対象とするウエーハは,その周端縁に
底部及び両側部を有して略U字状に切り欠かれたノッチがあるウエーハで
あり,本発明は,ノッチを撮像するノッチ撮像部を設け,このノッチ撮像
部を,ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の撮像カメラを配置
した構成にしたことから,複数の撮像カメラでノッチの厚さ方向の異なる
部位を撮像するので,ノッチが面取りされていても,撮像カメラの位置を
逐一移動させることなく,厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に撮像でき,
操作性を向上させることができるとともに,撮像精度を向上させることが
できる。
【0076】また,撮像カメラを面状に撮像するエリアセンサで構成した場
合には,ウエーハを回転させることなく,一時に撮像できる。
そしてまた,ノッチがウエーハの面に対して略直角な側面,この側面に対
して傾斜して面取りされた上面及び下面を備えて構成された場合,撮像カ
メラを,側面,上面及び下面に対応し各面に対して撮像方向を略直角に対
面させて夫々配置した構成とした場合には,ノッチの各面を明瞭にしかも
同時に撮像でき,操作性を向上させることができるとともに,撮像精度を
向上させることができる。
(3) 本件各発明に関連する従来技術
東芝セラミックス出願に係る特開平10−38539号公報(甲39)に
は,次の記載がある。
【請求項2】少なくとも一面側外周全域が面取りされた半導体ウエハの外周
の一部に設けられたノッチ部分の形状を光学的に測定するウエハの形状認
識装置であって,半導体ウエハが載置されるウエハステージと,前記ウエ
ハステージに載置された半導体ウエハのノッチ部分の一面側をウエハ表面
に対して垂直方向から撮像する撮像手段と,前記撮像手段とノッチ部分を
結ぶ撮像光路上に配置され,半導体ウエハの他面側からノッチ部分に光を
照射する第1照明手段と,前記半導体ウエハの一面側に配置され,ウエハ
の面取り面を照射しない角度でウエーハ表面に対して光を照射する第2照
明手段と,前記半導体ウエハの一面側に配置され,ウエハの面取り面とウ
エーハ表面に対して光を照射する第3照明手段と,前記第1照明手段のみ
を点灯し,前記撮像手段からの画像データに基づいてウエハのノッチ部分
の形状を測定する第1測定モードと,前記第1照明手段および第2照明手
段を点灯し,前記撮像手段からの画像データに基づいてウエハの面取り幅
を測定する第2測定モードと,前記第3照明手段のみを点灯し,前記撮像
手段からの画像データに基づいてウエハのノッチ部分の観察を行うノッチ
観察モードとに切り替える制御手段とを具備したことを特徴とするウエハ
の形状認識装置。
【0006】本発明は,このような従来のものの技術的課題を解決するため
になされたものであり,能率的に面取り幅を含むウエハノッチ部分の形状
を測定することができるウエハの形状認識装置を提供することを目的とす
るものである。また本発明は,前記したノッチ形状の測定と同時にノッチ
部におけるキズの有無などの観察を行うことも可能なウエハの形状認識装
置を提供することを目的とするものである。
【0025】続いて,画像処理装置19は照明制御装置20に指令信号を送
出し,第3照明灯17のみを点灯し,テレビカメラ13からの画像データ
に基づいてウエハのノッチ部分の観察を行うノッチ観察モードに移行す
る,図4(a)は,ノッチ観察モードにおける照明灯の点灯状態を示した
ものであり,第3照明灯17のみが点灯される。
【0026】したがって,このときに得られる画像データに基づく映像は,
図4(b)に示すようにノッチ部分における面取り面11bおよびウエハ
11の上面がハイライトとなり,表示装置24に表示される実画像を例え
ば目視することにより,ウエハのノッチ部分にキズがあるか否かの検証を
行うことができる。
【0031】また,これに加えてウエハの面取り面とウエーハ表面に対して
光を照射する第3照明手段が具備され,制御手段により第1照明手段,第
2照明手段および第3照明手段の点灯の組み合わせが変えられるように構
成したので,ノッチ部分の形状測定,面取り幅の測定に加え,ノッチ部分
のキズの有無の観察を可能にすることができる。したがって半導体ウエハ
のノッチ部分の検査時間を短縮させることができ,半導体の生産性を向上
させることができる。
(4) 本件発明1の内容及び特徴
前記(1)ないし(3)で認定した本件明細書及び刊行物の記載によれば,本件
発明1の特徴的部分は,以下のとおりと認められる。
すなわち,従来のウエーハ用検査装置においては,ウエーハの周端縁のう
ち,撮像カメラの撮像方向に斜めになる部位の画像は不鮮明になり易く,ま
た,ウエーハの側面,上面及び下面をそれぞれ明瞭に撮像しようとすると,
各面に合わせてその都度撮像カメラの位置を移動させなければならないの
で,操作が煩雑になり,さらに,モニタでは側面,上面及び下面を明瞭にし
て同時に見ることができないという技術的課題があった。そこで,本件発明
1を含む本件各発明は,このような技術的課題を解決するために,①ウエー
ハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を撮像する複数の撮像カメラを配置して
構成し(構成要件b),ウエーハの検査を行なうときは,ウエーハの周端縁
が面取りされていても,撮像カメラの位置を逐一移動させることなく,厚さ
方向全部を明瞭にしかも同時に撮像でき,操作性を向上させることができる
ようにし,②撮像カメラを周端縁の厚さ方向に沿って略直線状に撮像するラ
インセンサで構成することで(構成要件c),周端縁を狭い幅で撮像してこ
れを連続させることができ,解像度が良く,撮像精度を向上させ,③ノッチ
の厚さ方向の異なる部位を撮像するエリアセンサで構成した複数の撮像カメ
ラを配置することで(構成要件g),ノッチが面取りされていても撮像カメ
ラの位置を逐一移動させることなく厚さ方向全部を明瞭にしかも同時に撮像
でき,しかもウエーハを回転させることなく一時に撮像できるので操作性が
向上するという従来技術では達成し得なかった課題解決を図るものといえ
る。
2 本件各発明に至るまでの経緯
前記当事者間に争いの事実等並びに証拠(各項に挙げたもの)及び弁論の全
趣旨によると,以下の事実が認められる。
(1) 本多エレクトロンは,平成10年9月ころから,東芝セラミックス向け
の本件ウエーハエッジ検査装置の開発を開始した(甲33ないし38)。本
多エレクトロンにおける開発の担当者であるAは,同年9月29日,東芝セ
ラミックスのFから,本件ウエーハエッジ検査装置に関する要求仕様書(甲
33)の送付を受けた。
甲33には,次の記載等がある。
「4.用途,目的,性能
シリコンウエーハ外周部(端面)上のキズ,カケ,チップ等の不良
を非接触にて検出し,画像処理装置と連動し,あらかじめ設定された
条件に基づいて合否判定を自動又は手動でする装置。(中略)
5.測定対象物
(中略)
(2)ウエーハ(ノッチ)
・直径: 300mm±0.2mm
・厚み: 800μm±100μm及び750μm±100μm
・鏡面及びエッチング面(端面を含む)」
(2) Aは,平成10年11月27日,前記要求仕様書を受けて,本件ウエー
ハエッジ検査装置に関して,「東芝セラミックス(株)開発研究所殿向け
SWI1204C用12インチ端面検査システム改造提案仕様(見積No.
4206)」を作成した(甲34)。甲34には,次の記載等がある。
「4.用途,目的,性能 シリコンウエーハ外周部(端面)上のキズ,カ
ケ,チップ等の不良を非接触にて検出し,画像処理装置との検出結果を
モニターで確認し,合否判定を手動でする装置である。光学系は既存の
本多エレクトロン製の面検ハンドラーに取り付ける。」
「5.測定対象物
(中略)
(2)ウエーハ(ノッチ)
・直径: 300mm±0.2mm
・厚み: 800μm±100μm及び750μm±100μm
・鏡面及びエッチング面(端面を含む)
・自重たわみ・反り等は考慮しない」
(3) Aは,F等と共に,平成11年11月5日及び6日に,湘南工科大学に
おいて,本件ウエーハエッジ検査装置に関する実験を行なった(甲37,3
8)。甲37,38には,「3.端面検査装置評価 1)ベベル画像の取得
具合評価,2)端面欠陥の整合性評価」との記載がある。
(4) Aは,平成12年7月28日,「『φ300mmウエーハ端面検査装置
β版貸出対応』の件<御確認>」と題する確認依頼書(提案書)を作成し,
東芝セラミックスらに提出した(甲69)。この甲69には,次の記載があ
る。
「9.2)端面画像取得用カメラ 3台×2式(ノッチ:エリア,エッジ
:ライン)
3)端面画像取得要(判決注:「用」の誤記と思料する。)照明
3機(ノッチ:2機,エッジ:1機)
4)画像処理PC 4台(ノッチ:1台,エッジ:3台)」
(5) 被告は,工業用の特殊カメラの専業メーカーとして,平成11年12月
ころウエーハエッジ検査装置の開発を行っていた(乙21)。Aらは,平成
12年7月17日に被告東京支社を訪れ,被告に技術面でのアドバイスを受
け,共同開発に関する取引が開始した(乙9ないし11)。その後,Aは,
被告の役員であるSに対し,本件ウエーハエッジ検査装置に関して,平成1
2年9月22日に調整用サンプルを送付し(甲6),同年9月27日に上記
検査装置の開発スケジュール等をメールで送信し(甲5),同年10月12
日に端面欠陥限界見本サンプルを送付し,アドバイスを受けた(甲6)。
(6) 本多エレクトロンのC及びBは,平成12年10月16日,東芝セラミ
ックス向けの「自動端面欠陥座標計測装置見積り仕様書」を作成した(甲3
0。判決注:本件ウエーハエッジ検査装置と「自動端面欠陥座標計測装置」
は同義であると認められる(乙21)。以下同じ。)。同仕様書には,被告
製の「高解像度端面画像取得ユニット」及び「端面欠陥座標計測システム」
を使用することが記載されている。
(7) 被告のP(以下「P」という。)は,平成12年10月19日付けで「
φ300mm自動端面欠陥座標計測装置画像処理部仕様」を作成した(甲
7)。同仕様書には,以下の記載がある。
「本画像処理部は,φ300mmウエハの端面を高解像度ラインセンサカ
メラで観測し,欠陥の位置と個数を自動検出した後,オペレータもしくはあ
らかじめ設定された判定式により合否判定を行う。
1.ウエハ端面観測方式について
曲率を持ったウエハの端面を,拡大し正確に観測するには,被写界深
度,照明方法の両面から,ラインセンサーを用いる方法が適します。
2.光学系概略仕様
ラインセンサカメラ 1024画素高速デジタルラインセンサカメラ」
(8) 平成12年10月20日,被告の大阪技術センターにおいて,被告の
S,P,M,本多エレクトロンのR,C,A,東芝セラミックスのD等が出
席して自動欠陥座標計測装置に関する仕様打合せが行なわれた(甲8,乙2
1,23,24)。A作成の議事録及びP作成の打合せ記録(甲8)には,
以下の記載がある。
「ノッチは検査の手方を検討して頂く。要回答 NED殿(判決注:被告
を指す。)→弊社11/13」
「ノッチ内部も検査したい→サンプルを頂く。(11/1発送)
ノッチに多い欠陥は 欠け,非ミラー,ヒビ割れ(A氏)
レンズ系,照明を検討する
・ベベル形状は11/1発送 東セラ殿→日商→本多→NED
設計データ,サンプル含む(ノッチサンプル含む) 着は11/6
カメラ位置回答は∼11/13 NED→本多」
(9) 本多エレクトロンのBは,平成12年10月23日,「自動端面欠陥座
標計測装置カメラ取付範囲図」を作成した(甲42)。甲42の図面には,
ウエーハの周端縁の厚さ方向の異なる部位を該方向に沿って略直線状に撮像
する3台のカメラが示されている。
(10) 東芝セラミックスのDは,平成12年11月1日,被告のP,本多エレ
クトロンのC,A等に対し,「300mmウエーハ端面検査装置について」
と題する書面を送付した(甲9)。甲9には次の記載がある。
「2.ノッチ形状規格について
(中略)
参考までに形状見本サンプルのEdge形状実測結果を添付します(別
紙1)。
3.ノッチで検出する欠陥レベルについて
(中略)
(別紙3)で①端面上のピット,および②テーパー面上のスジ状のもの
が検出できる分解能が欲しいです。…」
また,甲9の別紙1には,Type−A,Type−Bのウエーハの断面
形状を示した図が記載され,さらに,略U字状に切り欠かれたノッチが示さ
れている。
(11) Dは,平成12年11月8日,M及びA等に対し,端面検査装置用形状
見本サンプル(200mm)を送付し(甲10),被告においてそれを使用
してノッチの撮像実験が行なわれた(乙14ないし16)。
(12) 被告は,平成12年12月11日,「φ300mm自動端面欠陥座標計
測装置画像処理部」に関する見積仕様書を作成し(甲11),本多エレクト
ロンに対して開発費を1000万円とする見積書(甲12)を提出した。
上記甲11の「Ⅱ システム仕様」には,次の記載がある。
「1.概要
本画像処理部は,φ300mmウエハの端面を高解像度ラインセン
サカメラで観測し,欠陥の位置と個数を自動検出した後,オペレータ
もしくはあらかじめ設定された判定式により合否判定を行うシステム
です。
2.光学系概略仕様
ラインセンサカメラ 1024画素高速デジタルラインセンサカメ
ラ(3台)
5.ノッチ部画像取込光学系概略
ノッチ部画像取込光学系部品の概略仕様を以下に示します。
エリアCCDカメラ 640×480画素カメラ(3台)
6.ノッチ部画像入力について
3台のエリアカメラを切り替えて画像取り込みを行うため,切り替
え時間等含めて約2秒ウエハを静止させる必要があります。」
また,甲11の「添付2.エッジ検査部構成図」には,ウエハの周端縁の
厚さ方向の異なる部位を該方向に沿って略直線状に撮像する3台のカメラ(
ラインカメラ1∼3。なお,ラインカメラ1(同3)が水平となす角度は4
5度±10度(−45度±10度)。)が示され,「添付3.ノッチ検査部
構成図」には,ノッチの厚さ方向の異なる部位を撮像する3台のカメラ(エ
リアカメラ1∼3。なお,エリアカメラ1(同3)が水平となす角度は45
度±10度(−45度±10度)。)が示されている。
(13) 被告は,平成13年1月9日,本件ウエハーエッジ検査装置に関する見
積書を作成し,本多エレクトロンに提出した(甲43)。上記見積書に添付
された「ウェハエッジ検査装置ソフトウェア仕様書」の「1.概要」に
は,「エッジは,表面,側面,裏面の3方向より,3台のラインセンサカメ
ラで取り込みます。但し,ノッチ部側面については,エリアカメラにて2方
向からみるものとします。」との記載とともに,上面図及び側面図にはそれ
ぞれラインカメラ3台とエリアカメラ2台が示されている。
(14) 平成13年1月18日,本多エレクトロンの本社会議室において,本多
エレクトロンのA,R,被告のS,P等が出席して,φ300mm自動端面
欠陥座標計測装置画像処理部仕様打合せが行われた(甲13)。被告は,本
多エレクトロンに対し,「φ300mm自動端面欠陥座標計測装置画像処理
部」の納入仕様書を提出した(甲44)。甲44には次の記載がある。
「II.仕様
2.設備能力条件及び主仕様
(4)観測部位
①ウエハ外周部
②ベベル部 表/裏
③Vノッチ:ボトム部分は,ラインセンサにてある程度観測可能
*サイド部については2次元カメラにて観測
III.装置構成
1.ウエハ検査ステージ
(4)カメラユニット
エッジ検査用:3.5倍高解像テレセントリックレンズ
ラインセンサカメラ<NUF1024D>
Vノッチ部用:2.0倍テレセントリックレンズ
2次元CCDカメラ
ノッチ端面2方向観察用
IV.システム仕様
1.概要
エッジは,表面,側面,裏面の3方向より,3台のラインセンサ
カメラで取り込みます。但し,ノッチ部側面については,エリアカ
メラにて2方向からみるものとします。」
(15) 被告は,本多エレクトロンに対し,平成13年1月24日,「φ300
mm自動端面欠陥座標計測装置」の納入仕様書を提出した(甲45)。甲4
5には次の記載がある。
「II.仕様
4.(1) 端面検出光学系
ラインセンサカメラ NUF1024D
1024画素高速デジタルラインセン
サカメラ(3台)
(2) ノッチ部検出光学系
エリアCCDカメラ MP−MIA
640×480画素カメラ(2台)
III.システム仕様
1.概要
…エッジは,表面,側面,裏面の3方向より,3台のラインセン
サカメラで取り込みます。但し,ノッチ部側面については,エリアカ
メラにて2方向からみるものとします。」
(16) 平成13年2月6日,被告の大阪技術センターにおいて,本多エレクト
ロンのR,A,被告のS,Pが出席して,ウエハ端面欠陥座標計測装置仕様
打合せが行なわれ(甲14),同月9日に,MはAに対し,二次元CCDカ
メラによるノッチ端面画像及びラインセンサカメラによるノッチベベル面画
像を送付した(甲15,16)。
(17) Mは,Sに対し,平成13年2月17日から同月23日にかけて電子メ
ールを送信した(甲17ないし20)。このうち同年2月19日付け電子メ
ール(甲18)には,「ノッチベベル面を他のベベル面と同様にラインセン
サカメラで見るというのは照明が煩雑になります。エリアセンサカメラで見
るのが実用的と思います。またノッチをエリアセンサカメラで見る場合,
上,横,下の3箇所から見るというのが妥当ではないでしょうか。」との記
載があり,同月20日付け電子メール(甲19)には,「ノッチのベベル面
はエリアセンサカメラで見るように,方針を変えるというのはいかがでしょ
うか?」との記載があり,同月23日付け電子メール(甲20)には,「こ
れまでの実験からは,ノッチの撮影は次の構成になるかと思います。上下ベ
ベル:それぞれカメラ一台,円錐上LED照明一つ。ノッチ側面:左右,そ
れぞれカメラ1台,メタハラ面照明2枚(間から覗きます)。ノッチ正面:
カメラ1台,照明は上記メタハラ面照明を併用。カメラは計5台,照明はL
EDが2個,メタハラが4個になります。」との記載がある。
そして,Mは,Aに対し,平成13年3月1日に電子メールを送信し(甲
21),その中で,「ノッチベベル面の撮影をラインセンサカメラで行うこ
とを断念し,エリアカメラに切り替えた理由を記します。添付画像をご覧下
さい。左は,C型メタハラ照明のみの場合で,光軸のやや左側より照射して
います。右は,それに加え,光軸の右側に100Wの白熱電球を配置したも
のです。左側面が見えるようになりましたが,右側面用にもう一つ電球が必
要です。結局,上下で計4個の電球が必要になり,照明が非常に煩雑になり
ます。また,電球は,破損,寿命の問題もあります。(中略)一方,エリア
カメラで撮影したノッチベベル面は,分解能はラインセンサカメラの場合に
比べ劣りますが,十分なものが得られていると思います。」と述べている。
(18) 平成13年3月5日,被告のS,P,本多エレクトロンのR,C,B,
Aが出席して「自動端面欠陥座標計測システム極秘ミーティング」が行なわ
れた(甲31,58)。この際,本多エレクトロンは,被告に対し,φ30
0mm自動端面欠陥座標計測装置開発評価器材一式の借用を依頼した(甲2
7)。
また,Mは,同日付けで「品名:φ300mm自動端面欠陥座標計測装置
形式:LW−300DX」と題する本多エレクトロン宛ての仕様書(甲4
6)及び「ウエーハエッジ検査装置ノッチ検査用光学系図面」(甲23)を
作成した。
前記甲23及び46には,ノッチを観察するためのエリアカメラ5台を使
用する構成が,甲46にはラインセンサカメラ3台を使用する構成がそれぞ
れ記載されている。
(19) Mは,平成13年3月26日付けで「品名:φ300mm自動端面欠陥
座標計測装置 形式:LW−300DX」と題する本多エレクトロン宛ての
仕様書(甲26)を作成した。甲26には,下記の記載がある。
「用途 φ300mmシリコンウエハー端面欠陥座標計測装置画像処理
部」(1頁)
「2.1号機検収条件
①ウエハー端面(上面ベベル・側面・下面ベベル)の良質な画像を撮
像出来ること。」(2頁)
「II 仕様
2.対象物仕様
(2) ウエハー端面形状
ユーザー提供別紙<Type−A,Type−Bウエハー端面
/ノッチ形状>資料に準ずる」
3.画像処理部仕様
(1) 端面検出光学系
ラインセンサカメラ 1024画素高速デジタルラインセンサ
カメラ(3台)
レンズ 3.5倍テレセントリックタイプ(3
本)
照明 高輝度メタルハライドランプ(1台),
ライトガイド(特殊C型リングライト)
(2) ノッチ部検出光学系
エリアCCDカメラ 768×494画素カメラ(5台)
レンズ 2.0倍高解像度レンズ(5本)
照明 LED無影照明 ベベル部:LAV−8
0(2本),LED面照明 側面:LD
L−74×27−N(3本)
Ⅲ システム仕様
2 構成
2.1カメラ構成
エッジは,表面,側面,裏面の3方向より,3台のラインセン
サカメラで取り込みます。但し,ノッチ部側面については,エリ
アカメラにて5方向からみるものとします。」
以上の記載の他に,図面(8頁)には,エリアカメラ2(ノッチ左側面観
察用),エリアカメラ3(ノッチ右側面観察用),エリアカメラ4(ノッチ
上ベベル用),エリアカメラ1(ノッチ底面用),エリアカメラ5(ノッチ
下ベベル用),ラインセンサ2(表面観察用),ラインセンサ1(側面観察
用),ラインセンサ3(裏面観察用)が記載されている。「2.2装置構
成図」(9頁)には,エリアカメラ1∼5及びラインセンサカメラ1∼3か
らのデータを処理するパソコン(側面観測用パソコン,表面観測用パソコ
ン,裏面観測用パソコン)が示されている。
(20) 被告のM,Tと本多エレクトロンのA,Bとの間で平成13年10月1
7日に契約内容の事前確認が行なわれ,この際に作成されたメモ(甲32,
59)には,「1.NED殿の申し入れ事項」に「LW−300DXの光学
販売権はNEDにあると主張」と,「2.本多見解」に「LW−300−D
Xの光学部販売権はNED殿と本多にあると主張」と記載されている。
(21) 被告は,平成13年10月24日,「品名:φ300mmウェーハ端面
欠陥座標検査システム 初号機及びその開発 形式:LW−300DX−1
A」と題する本多エレクトロン宛ての取扱説明書兼メインテナンスマニュア
ル(光学系編)を作成した(甲28)。甲28には,次の記載等がある。
ア 「図1−1.光学系概観」(3頁)には,「エリアセンサカメラ,LE
D照明(ノッチ観察用)」,「ラインセンサカメラ(エッジ上面観察
用)」,「ラインセンサカメラ(エッジ側面観察用)」,「ラインセンサ
カメラ(エッジ下面観察用)」,「C型ライトガイド」,「メタルハライ
ド光源」,「ラインセンサカメラ取り付けステージ」及び「ラインセンサ
カメラ取り付けステージ固定台」が示されている。
イ 「2.ラインセンサの光学系」(4∼11頁)には,「各ラインセンサ
は,C型ライトガイドからの照明を,正反射で受けるよう配置しま
す。」(4頁),「図2−6は,C型照明を,ファイバ接続部のファイバ
軸まわりに少し回転させ,より輝度の高い成分のテーパ面からの正反射光
が下カメラに入るように調整したものです。」(8頁),との記載があ
り,図2−8には,C型ライトガイドが,ウエーハのエッジの厚さ方向に
沿う所定の円弧に沿って照射面を形成し該円弧の中心に向けて収束するよ
うに配置されていることが示されている。
ウ 「3.ラインセンサの取り付け,調整手順」(12頁)には,「側面,
上面,下面用の各カメラ取り付けステージを,垂直に立った固定台の側面
に取り付けます(図1−1)。」との記載がある。
エ 「4.エリアセンサの光学系」(14頁)には,次の記載がある。
「図では,角型照明と円錐状同軸無影照明がウェーハ上に映っています
が,実際も,このようにウェーハに対して上下に対象に照明が配置されて
います(ウェーハが透けているとイメージしてください)。
ノッチ部側面にあたる,底面,左側面,右側面は,2枚の角型照明の隙
間から覗く形で撮影します。隙間は5mm程度が適当です。
上,下テーパ面は,円錐状同軸無影照明の中央部から覗く形で撮影しま
す。」
オ 「5.エリアセンサの取り付け,調整手順」(15頁)には,「照明に
関しても,光軸方向に移動させ,最適な場所を探します。」との記載があ
る。
カ 「6.構成品リスト」(16頁)には,「①ラインセンサ光学系」とし
て,ラインセンサカメラ3個,メタルハライドランプ1個,C型ライトガ
イド1個が,また「②エリアセンサ光学系」として,エリアセンサカメラ
5個,LED照明器(1)2個,LED照明器(2)2個がそれぞれ記載
されている。
キ 「8.保守体制」(18頁)には,「お問合せ先:日本エレクトロセン
サリデバイス株式会社(判決注:被告を指す。)EMI事業部 担当:
M」と記載されている。
(22) 平成13年11月1日,本多エレクトロンと被告との間で,覚書が交わ
された(甲57)。この甲57には,次の記載がある(判決注:甲は本多エ
レクトロン,乙は被告を指す。)。
「双方は,甲がウェハー端面欠陥座標検査システム(以下本件)を10月
度に検収する条件が,以下の三点であることを確認しました。
(中略)
3.乙は,本件に係る情報を第三者に公開する場合,事前に甲の同意を得ま
す。」
(23) 被告は,本多エレクトロンに対し,平成13年12月20日に本件ウエ
ーハエッジ検査装置を納品した(乙21,弁論の全趣旨)。
他方,本多エレクトロン及び東芝セラミックスは,本多エレクトロンの
A,B,C及び東芝セラミックスのD,E,Fを発明者として,同人らから
本件各発明についてそれぞれ特許を受ける権利を承継し,平成14年2月1
9日に上記6名を発明者として特許出願(特願2002−42398)をし
た。
3 判断
(1) 以上認定した事実によれば,本多エレクトロンは本件ウエーハエッジ検
査装置の開発を行なったが,その過程で,被告に対して,平成12年9月末
ころに上記装置の共同開発を,同年10月20日にはノッチ部の検査手法の
検討を,それぞれ依頼したこと,これに対して,被告の担当者であるMは,
本多エレクトロンに検討結果を報告し,同年12月11日に本件発明1が含
まれる仕様書(甲11)をいったん作成,提供したが,その後も仕様変更を
行なう等して実験を継続し,その結果仕様変更前の構成が相当であるとの認
識を持ち,平成13年3月26日に本件各発明が記載された仕様書(甲2
6)を作成して,これを本多エレクトロンに宛てて提示したものであり,本
件発明1は,この時点又はそれ以降に完成したというべきである。
以上の経緯及び後記(2)における認定判断に照らすならば,本件発明1の
発明者にMが含まれることは明らかである。そして,本件発明2ないし35
は,いずれも本件発明1を含むものであるから,結局,本件各発明の発明者
にMが含まれることも明らかである。
(2) この点について,原告は以下のとおり主張する。しかし,いずれも理由
がない。
ア 原告は,本件各発明は平成12年5月ころまでに完成し,被告は本件各
発明の完成後に関与したにすぎないと主張する。しかし,原告の主張は採
用できない。
すなわち,上記2で認定した事実によれば,そもそも,当初の仕様(甲
7,30)には本件発明1の構成要素であるノッチ撮像部が含まれていな
いし,被告は本多エレクトロンから本件ウエーハエッジ検査装置の共同開
発を持ちかけられた際に本件各発明の内容の開示を受けた事実もない。ま
た,平成12年10月20日にはノッチ検査手法の検討を依頼した事実,
完成した本件ウエーハエッジ共同装置の販売権に関しては,被告のみなら
ず本多エレクトロンも,販売権が被告にあると認識していた事実,秘密保
持の合意も平成13年11月1日になってはじめて行なわれている事実,
及び,仮に,本件各発明の完成時期が,原告の主張に係る時期であるとす
ると,発明完成から約2年後の平成14年2月に,特許出願が行なわれた
ことになり不自然であること等の事実経緯に照らすならば,原告の上記主
張は到底採用の限りでない。
また,原告は,平成12年10月20日の打合せにおいて,本多エレク
トロンは,被告に対しノッチ部の撮像も複数のエリアカメラで行なうよう
要請したが,被告が,ラインセンサメーカーであるため,ラインセンサで
行なうことを主張し譲らなかったので,本多エレクトロンが被告に対し,
ノッチ検査の手法の検討を指示したとも主張する。しかし,前記認定のA
作成の議事録及びP作成の打合せ記録(甲8)には,上記本多エレクトロ
ンの要請や同社と被告との主張の対立やそれをうかがわせる記載はない。
原告の上記主張は採用できない。
イ 原告は,A作成のノート(甲48,67)は,平成10年2月ころから
平成12年5月ころまでの間に作成され,本件発明1の構成がすべて記載
されていることを根拠に,平成12年5月ころに本件各発明が完成したと
主張し,A作成の陳述書(甲76)にもこれに沿った記載がある。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
確かに,甲48(甲67)の30頁,24頁,25頁及び50頁には本
件発明1の構成要件b,c,gを含む図面の記載等があるが,これらの図
面等がいつ作成されたかについては,甲48(甲67)からは明らかでは
ない。仮に,上記図面等が被告が関与する以前に記載されたとしても,前
記2で認定した事実に照らせば,上記図面等は本件各発明の着想にとどま
り,Mら被告の技術者が実験等により検証し具体化したものということが
できるので,上記記載をもってMを含む被告の技術者が本件各発明の発明
者でないこと裏付けるものとはいえない。そして,甲48(甲67)に基
づく本件発明1の完成時期の主張が失当であることは前記(1)のとおりで
ある。原告の主張は理由がない。
ウ 原告は,甲63の1ないし3,甲68において本件発明1の構成が記載
されていると主張する。
しかし,原告の上記主張も,以下のとおり失当である。
すなわち,甲63の1ないし3記載の構成は,いずれも周縁部を撮像す
るエリアセンサカメラを1台しか備えておらず,周縁部を撮像する複数の
ラインセンサカメラ(エッジ用)と複数のエリアセンサカメラ(ノッチ
用)を特徴的部分とする本件発明1とは異なる。
また,本件発明1は,エッジとノッチで使用するカメラを使い分けるこ
とを特徴的部分とするのに対し,甲68記載の実験は,エッジとノッチの
両方をエリアセンサで撮像する構成であり,本件発明1とは異なる。原告
は,エッジの撮像はラインセンサで行なうことを前提として実験がなされ
ていると主張するが,ラインセンサとエリアセンサとでは,必要とされる
光学条件及びその後の画像処理が異なるので,失当である。
エ 原告は,上記確認依頼書に本件発明1の構成を採用することが示されて
いると主張する。しかし,甲69には,本件各発明の特徴的部分の1つで
あるノッチ撮像用カメラの具体的構成について何ら記載されていないし,
エリアセンサカメラ3台を配置するとの記載はあっても,それを「厚さ方
向の異なる部位」に撮像するように配置することまでは開示されていな
い。原告の上記主張は採用できない。
オ 原告は,本多エレクトロンが,本件各発明の完成を受けて,甲42(B
作成の平成12年10月23日付け図面)が作成されたと主張する。
しかし,甲42の右上図と左下図にそれぞれ記載されているカメラはほ
ぼ同じ寸法,形状であり,装置への取り付け態様もほぼ同じであることが
認められるところ,撮像方式の異なるラインセンサとエリアセンサとは通
常,異なる寸法,形状からなり,取り付け態様も異なるものから構成され
ることからすれば,上記カメラのうち一方がラインセンサであり,他方が
エリアセンサであると認めることはできない。原告の上記主張は採用でき
ない。
カ 原告は,Mが作成した見積仕様書(甲11)は,A作成のノート(甲7
0)を反映したものにすぎないと主張する。しかし,甲70にはノッチ撮
像部に関する構成(構成要件d,e,g)が開示されているのみで,本件発
明1の特徴的部分である構成要件b,cが開示されていないし,両者はカ
メラの水平となす角度及び照明とカメラとの位置関係の点で異なってい
る。原告の主張は失当である。
また,原告は,Aが平成12年12月6日から8日まで開催された「セ
ミコン・ジャパン2000」(甲71)の会場内において,被告のS及び
Tに対し甲70を示して本件発明1の内容を開示したと主張し,A作成の
陳述書(甲76)にもこれに沿う記載がある。しかし,陳述書の記載を裏
付ける証拠はないのみならず,また,甲70には本件各発明の特徴的部分
がすべて開示されているとはいえないことは前記のとおりである。原告の
主張は採用できない。
⑶ 結語
以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がない。原告はその他縷
々主張するが,審決を取り消すべきその他の誤りは認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判
決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯 村 敏 明
裁判官 中 平 健
裁判官 上 田 洋 幸
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