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平成20(行ケ)10114審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年9月29日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告アルゼ株式会社
対象物 遊技機
法令 特許権
特許法29条2項6回
特許法159条2項6回
キーワード 審決68回
進歩性8回
実施7回
分割2回
刊行物1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,平成9年4月4日になした原出願からの分割出願として原告が発明 の名称を「遊技機」とする特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,こ れを不服として審判請求をし,その中で特許請求の範囲の変更等を内容とする 補正(補正に係る発明を以下「本願補正発明」という )をしたが,特許庁か。 ら補正却下の上で請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事 案である。

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判決文

判決言渡 平成20年9月29日
平成20年(行ケ)第10114号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成20年9月22日
判 決
原 告 ア ル ゼ 株 式 会 社
訴訟代理人弁理士 正 林 真 之
同 八 木 澤 史 彦
同 佐 藤 武 史
被 告 特 許 庁 長 官
鈴 木 隆 史
指 定 代 理 人 太 田 恒 明
同 小 原 博 生
同 有 家 秀 郎
同 高 木 彰
同 内 山 進
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2004−7267号事件について平成20年2月13日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,平成9年4月4日になした原出願からの分割出願として原告が発明
の名称を「遊技機」とする特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,こ
れを不服として審判請求をし,その中で特許請求の範囲の変更等を内容とする
補正(補正に係る発明を以下「本願補正発明」という 。)をしたが,特許庁か
ら補正却下の上で請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事
案である。
2 争点は,本願補正発明及びその補正前の発明(本願発明)が特開平1−23
8888号公報(発明の名称「スロットマシン 」
,出願人 株式会社ユニバーサ
ル,公開日 平成元年9月25日。以下この文献を「引用例」といい,そこに
記載された発明を「引用発明」という 。甲1)との関係で進歩性を有するか(特
許法29条2項),等である。
第3 当事者の主張
1 請求原因
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,平成9年4月4日にした原出願(特願平9−86460号)から
の分割出願として,平成12年8月23日,名称を「遊技機」とする発明に
ついて特許出願(特願2000−252018号。請求項の数4。甲3。以
下「本願」という。公開公報は特開2001−70514号〔甲17〕)を
し,平成16年1月28日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続
補正(第1次補正。請求項の数4。甲6)をしたが,特許庁から拒絶査定を
受けたので,これに対する不服の審判請求をした。
同請求は不服2004−7267号事件として係属し,その中で原告は,
平成16年5月7日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正
(第2次補正。以下「本件補正」という 。請求項の数4。甲10)をしたが ,
特許庁は,平成20年2月13日,本件補正を却下した上,「本件審判の請
求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成20年2月26日原
告に送達された。
(2) 発明の内容
ア 第1次補正時(平成16年1月28日)の請求項の数は前記のとおり4
であるが,そのうち請求項1に係る発明の内容 以下 本願発明」
( 「 という 。)
は,下記のとおりである。

【請求項1】遊技に必要な複数の図柄を可変表示する可変表示手段と,
該可変表示手段の可変表示を乱数抽選の結果に基づいて停止制御し,前
記可変表示が停止したときの表示態様が特定の図柄組合せとなった場
合,特定遊技を行わせる制御手段とを備えた遊技機において,
前記特定遊技は,所定期間入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態
となるBB遊技,及び該BB遊技と所定の入賞役について前記乱数抽選
に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を含み,
前記制御手段は,前記BB遊技を開始させる図柄組合せとは異なる特
定の図柄組合せとなった場合に,前記BB遊技と前記CT遊技との組合
せ遊技を開始させることを特徴とする遊技機。
イ 本件補正時(平成16年5月7日)の請求項の数も前記のとおり4であ
るが,そのうち請求項1に係る発明の内容 以下 本願補正発明」
( 「 という 。)
は,下記のとおりである(下線は補正箇所)


【請求項1】遊技に必要な複数の図柄を可変表示する可変表示手段と,
該可変表示手段の可変表示を遊技者の操作と乱数抽選の結果とに基づい
て停止制御し,前記可変表示が停止したときの表示態様が特定の図柄組
合せとなった場合,特定遊技を行わせる制御手段とを備えた遊技機にお
いて,
前記特定遊技は,所定期間入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態
となるBB遊技,及び該BB遊技と所定の入賞役について前記乱数抽選
に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を含み,
前記制御手段は,遊技者の操作と前記乱数抽選の結果とに基づいて停
止制御された前記可変表示の表示態様が前記BB遊技を開始させる図柄
組合せとは異なる特定の図柄組合せとなった場合に,前記BB遊技と前
記CT遊技との組合せ遊技を開始させることを特徴とする遊技機。
(3) 審決の内容
ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,①本願補正発明は,その出願前に頒布された下記引
用例に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許出願の際に
独立して特許を受けることができず,本件補正は却下すべきものである,
②本願発明も,同様に特許法29条2項により特許を受けることができな
い,というものである。

引用例:特開平1−238888号公報 発明の名称 スロットマシン 」
( 「 ,
出願人 株式会社ユニバーサル,公開日 平成元年9月25日,
甲1)
イ なお審決は,上記判断をするに当たり,引用発明の内容,本願補正発明
と引用発明との一致点及び相違点を,次のとおり認定した。
(引用発明の内容)
表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリールを乱数値に
応じて停止するように制御する制御装置を備えたスロットマシンにお
いて,前記制御装置は遊技中大ヒットフラグが立っている時には予め
定めたゲーム回数分,前記乱数値に応じた停止制御を中止し,全ての
リールが停止すると,当たりチェックを行い,表示窓に現われたシン
ボルが大ヒットの組合せか否かを判断し, Yes”ならばボーナスゲー

ムの動作手順を実行するように構成したスロットマシン。
(一致点)
「遊技に必要な複数の図柄を可変表示する可変表示手段と,該可変表
示手段の可変表示を遊技者の操作と乱数抽選の結果とに基づいて停止
制御し,前記可変表示が停止したときの表示態様が特定の図柄組合せ
となった場合,特定遊技を行わせる制御手段を備えた遊技機において ,
前記特定遊技は,ボーナス遊技と所定の入賞役について前記乱数抽
選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を含む遊技
機。」である点。
(相違点1)
本願補正発明では,「前記特定遊技は,所定期間入賞の図柄組合せ
が成立しやすい遊技状態となるBB遊技,及び該BB遊技と所定の入
賞役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との
組合せ遊技を含」むのに対し,引用発明では,前記特定遊技は,ボー
ナス遊技と所定の入賞役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中
止するCT遊技との組合せ遊技を含むものの,組合せ遊技に含まれる
ボーナス遊技が,所定期間入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態
となるBB遊技であるとはいえず,また,特定遊技に単独のBB遊技
(CT遊技との組合せ遊技でないもの)を含まない点。
(相違点2)
本願補正発明では,「前記制御手段は,遊技者の操作と前記乱数抽
選の結果とに基づいて停止制御された前記可変表示の表示態様が前記
BB遊技を開始させる図柄組合せとは異なる特定の図柄組合せとなっ
た場合に,前記BB遊技と前記CT遊技との組合せ遊技を開始させる」
のに対し,引用発明では,組合せ遊技を開始させる特定条件が,大ヒ
ットフラグが立っていることである点。
(4) 審決の取消事由
しかしながら,本願補正発明には進歩性がないとして本件補正を却下し 取

消事由1ないし3),かつ本願発明にも進歩性がない(取消事由3,4)と
した審決には,以下に述べるような誤りがあるから,違法として取り消され
るべきである。
ア 取消事由1(引用発明認定の誤り)
(ア) 審決は,引用発明の「特定遊技」につき,「その遊技は,『遊技中大
ヒットフラグが立っている時』に行われるものであり,大ヒットフラグ
が立てば(少なくとも,「所定期間」が終了し,リールの停止制御が実
行されることにより ),ほとんどの場合でボーナスゲームが実行される
のであるから,実質的にボーナスゲームと組み合わされているといえ
る。」とし(4頁下7行∼下3行),これを根拠として「引用発明では,
『特定遊技は,ボーナス遊技と所定の入賞役について前記乱数抽選に基
づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を含』むといえる」と
認定した(4頁下3行∼末行)

しかし,以下のとおり引用発明の特定遊技には,「ボーナス遊技と所
定の入賞役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技
との組合せ遊技を含む」とはいえないから,この認定は誤りであり,結
果として審決は,本願補正発明と引用発明との一致点,相違点の認定,
判断を誤ったものである。
(イ)a まず,引用例(甲1)の第2図(フローチャート)からも明らか
なように,甲1には,ボーナスゲームとなるためには,所定ゲーム中
の全リール停止後に行われる大ヒットの組合せか否かのチェックを行
うことが記載されているにとどまり,審決の前記「大ヒットフラグが
立てば…ほとんどの場合でボーナスゲームが実行される」との認定 4

頁下6行∼下4行)には,根拠がない。
b また,甲1には,以下の記載がある。
・ 「大ヒットフラグは,第3図に示す3つの表示窓2L,2C,2
Rの中に横3本と斜め2本の入賞ラインのいずれかに沿って7−
7−7の図柄の組合せを表示する場合に“1”となる(フラグが
立つ)ものであり,この図柄の組合せは,対応する乱数値(大ヒ
ットの乱数値)がサンプリングされた時に3個のリール3L,3
C,3Rをそれぞれ所定位置に停止させることによって実現され
る。この時は,所定のゲーム回数(例えば10ゲーム)の期間,
回転リールの停止制御を中止する。すなわち,遊技者がストップ
ボタン5L,5C,5Rを押したタイミングでリールの回転を停
止させるようにする(実際には,リール停止の処理に一定時間,
例えば約30ミリ秒を要するため,遊技者がストップボタンを操
作してから一定時間後に対応するリールが停止する)」
。(3頁上段
右欄10行∼下段左欄5行)
・ 「…全てのリール3L,3C,3Rが停止すると,当たりチェッ
クを行い,表示窓に現われたシンボルが大ヒットの組合せか否か
を判断し,“Yes”ならば後述のボーナスゲームの動作手順を実
行する。(4頁上段右欄7行∼11行)

c 上記記載によると,甲1には,次の制御を実行するスロットマシン
が示されているといえる。
・ 入賞ラインのいずれかに沿って7−7−7の図柄の組合せを表示
すると大ヒットフラグが立つ。このとき,所定のゲーム回数(例え
ば10ゲーム)の期間,回転リールの停止制御を中止する。
・ そして,全てのリール3L,3C,3Rが停止すると,当たりチ
ェックを行い,表示窓に現われたシンボルが大ヒットの組合せか否
かを判断し,“Yes”ならば後述のボーナスゲームの動作手順を
実行する。
d このように,甲1には,入賞ラインのいずれかに沿って7−7−7
の図柄の組合せが表示されることによって,「予め定めたゲーム回数
分,前記乱数値に応じた停止制御を中止」する遊技を開始し,表示窓
に現われたシンボルが大ヒットの組合せであることによってボーナス
ゲームを開始するスロットマシンが示されている。
すなわち,引用発明では,「予め定めたゲーム回数分,前記乱数値
に応じた停止制御を中止」する遊技を開始するための条件と,ボーナ
スゲームを開始するための条件とがそれぞれ別に設けられており,本
願補正発明のように「可変表示の表示態様」が「特定の図柄組合せ」
となった場合に,「前記BB遊技と前記CT遊技との」両方を開始さ
せるものではない。本願補正発明における「組合せ遊技」は,「遊技
者の操作と前記乱数抽選の結果とに基づいて停止制御された前記可変
表示の表示態様が前記BB遊技を開始させる図柄組合せとは異なる特
定の図柄組合せ」になるという1つの条件を満たすことで ,「前記B
B遊技と前記CT遊技との」両方を開始させる遊技である。
(ウ) よって,引用発明では,「特定遊技は,ボーナス遊技と所定の入賞
役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合
せ遊技を含」むとはいえないから,審決の認定は誤りである。
イ 取消事由2(周知技術とされた実願昭60−113698号〔実開昭6
2−24891号〕のマイクロフィルム〔甲2〕認定の誤り)
(ア) 審決は,相違点2に係る本願補正発明の構成を引用発明に採用する
ことは,周知技術3( 特定遊技が複数あるときには,特定遊技毎に特

定条件となる特定の図柄組合せを異ならせること」)を考慮して,当業
者が容易に想到できたものであると判断した(6頁末行∼7頁8行 )。
しかし,特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定条件となる特
定の図柄組合せを異ならせること(上記周知技術3)は,周知技術であ
るとはいえないし,甲2にもその記載はない。
(イ) 甲2(甲2:実願昭60−113698号〔実開昭62−2489
1号〕のマイクロフィルム,考案の名称「スロットマシン」,出願人 株
式会社ユニバーサル,公開日 昭和62年2月16日)には,以下の記
載がある。
・ 「最近のスロットマシンではそのゲーム性を高めるために,上述し
た通常ゲームの他に,特典ゲームとして例えばボーナスゲームができ
るようになっているものがある。ボーナスゲームは,通常ゲームを行
った結果,例えばシンボルの組み合わせとして『BAR−BAR−B
AR』,あるいは『Water Melon −Water Mel
on −Water Melon』になったときに,実行されるよう
になっている。(3頁17行∼4頁4行)

・ 「また,こうしたボーナスゲームが可能となる条件を緩和するため
に,ビッグチャンスゲームを付加したスロットマシンも提案されてい
る。ビッグチャンスゲームは,通常ゲームの結果,シンボルの組み合
わせが例えば「7−7−7」になったときに開始され,30回を限度
として行われる。(4頁12行∼17行)

(ウ) これらの記載によると,甲2において,本願補正発明の「特定遊技」
に対応し得るのは実質的に1種類の「ボーナスゲーム」だけである。そ
して,「ビッグチャンスゲーム」は,ボーナスゲームが可能となる条件
を緩和するために,通常ゲームとは別に設けているにすぎない。
すなわち甲2には,ボーナスゲームを実行するための複数種類のシン
ボルの組合せが示されているが,シンボルの組合せとして「BAR−B
AR−BAR」になったときに開始するゲームの内容と,シンボルの組
み合わせとして「Water Melon −Water Melon
−Water Melon」になったときのゲームの内容は全く同じ
であり,そのゲームで付与する利益も全く同じである。すなわち,各々
のシンボルの組合せによって異なる種類のゲームが実行されることは示
されておらず,
「ボーナスゲーム」は1種類だけである。
このように甲2には,そもそも特定遊技が複数あることが記載されて
いないのであるから,特定遊技毎に特定条件となる特定の図柄組合せを
異ならせることが記載されていないのは明らかである。
(エ) 以上によれば特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定条件と
なる特定の図柄組合せを異ならせることは甲2にその記載はなく,周知
技術であるともいえない。
審決は,「相違点1において検討したように,引用発明の特定遊技に
単独のBB遊技を含めて特定遊技を複数にするならば,周知技術3を考
慮して,組合せ遊技を開始させる特定条件として,単独のBB遊技を開
始させるものとは異なる図柄組み合わせとすることも,当業者にとって
想到容易である」と判断した(7頁3行∼6行)

しかし,上記アのとおり引用発明には,そもそも「組合せ遊技」に対
応する構成がない以上,その「組合せ遊技」に含まれるボーナス遊技と
して「所定期間入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態となるBB遊
技」を用いることが当業者にとって容易想到であるとはいえない。
よって,引用発明の特定遊技に単独のBB遊技を含めて特定遊技を複
数にするという仮定に誤りがある。また,上述したように,周知技術3
の認定に誤りがある。
よって,甲2の記載に基づいても,組合せ遊技を開始させる特定条件
として,単独のBB遊技を開始させるものとは異なる図柄組合せとする
ことが,当業者にとって容易想到であるはいえず,審決の認定は誤りで
ある。
ウ 取消事由3(作用効果の判断の誤り)
(ア) 審決は,本願補正発明の作用効果も,引用発明及び周知技術1∼3
から当業者が予測できる範囲のものであると判断した(7頁10行∼1
1行)。
しかし,上記のように甲2に記載の技術を引用発明に採用したとして
も,その発明は,本願補正発明の相違点1,2に係る構成を備えていな
い。
この構成の相違により,本願補正発明は引用発明では奏し得ない格別
の作用効果を奏するものである。
(イ) 本願補正発明は,相違点1及び2に係る構成を備えることで,以下
のとおりの格別の効果を奏する。
第1に,BB遊技とCT遊技との組合せ遊技は,BB遊技を開始させ
る図柄組合せとは異なる特定の図柄組合せとなった場合に開始するの
で,可変表示の表示態様により,いずれの種類の特定遊技が開始するの
かが明確かつ容易に判明できる(作用効果1)

第2に,BB遊技と,BB遊技とCT遊技との組合せ遊技とを設けた
ことにより,CT遊技分だけ,すなわち遊技者の技量分メダルの払い出
しが異なる2種類の特定遊技を提供できる(作用効果2)

第3に,BB遊技を開始させる図柄組合せ,又はBB遊技とCT遊技
との組合せ遊技を開始させる図柄組合せのどちらを先に目押しするか
(揃えるように試みるか)を,遊技者自身が決定することができるので,
遊技者の意思が遊技結果に反映し,遊技者の遊技介入性が高まり,遊技
の興趣が増大する場合がある(作用効果3)

例えば,BB遊技を開始させる図柄組合せ(以下「第1の図柄組合せ」
という 。)又は上記組合せ遊技を開始させる図柄組合せ(以下「第2の
図柄組合せ」という。 のいずれかを揃えることが可能になったこと(例

えば,いわゆるフラグが立ったこと)をリーチ目などで認識したような
状況では,遊技者は ,「第1の図柄組合せ」よりも,CTが付けられた
「第2の図柄組合せ」が揃うことに期待する。
そのような状況において,「第2の図柄組合せ」を揃えることが可能
な状況であることを確実に把握し,その「第2の図柄組合せ」が自らの
停止操作によって揃う瞬間を安心して見届け,遊技を楽しむことを希望
する遊技者は,先に「第1の図柄組合せ」の目押しを行う( 第1の図

柄組合せ」が揃わないことに期待して目押しを行う)ことができる。
他方 ,「第2の図柄組合せ」を可能であるならば早期に揃え,組合せ
遊技を楽しむことを希望する遊技者は,先に「第2の図柄組合せ」の目
押しを行うことができる。
これらの効果は,相違点1及び2に係る構成を備えることで初めて奏
するものであり,甲2に記載の技術を引用発明に採用したとしても,予
測することはできない。
以上から,審決の作用効果に関する判断は誤りである。
(ウ) 審決は,本願補正発明は,引用発明及び周知技術1∼3に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条
2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないも
のであると判断した(7頁13行∼16行)

しかし,本願補正発明は,相違点1,2に係る構成の相違により,引
用発明では奏し得ない格別の作用効果を奏する。よって,審決の判断は
誤りである。そして,この誤りのもと,審決は,本件補正を却下すべき
ものと判断した(7頁18行∼21行)ものであるから,本件補正却下
の決定も誤りである。
(エ) また審決は ,「本願発明は,引用発明及び周知技術1乃至3に基づ
いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法
第29条第2項の規定により特許を受けることができない」と判断した
(8頁下8行∼下6行)

しかし,上述したように審決は誤りであり,本願発明は,引用発明等
に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって,本願発明は,特許法29条2項の規定に違反するものでなく,
審決の上記判断は誤りである。
エ 取消事由4(審判手続の法令違反)
(ア) 審決は,拒絶査定の理由と異なる理由につき,原告に意見書を提出
する機会を与えることなく,「本願発明は,引用発明及び周知技術1乃
至3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである」
と判断した(8頁下8行∼下6行)が,その審判手続には法令の違反が
ある。
(イ) 特許庁は,平成15年11月27日付け拒絶理由通知書(甲4)に
おいて,①特開平1−238888号公報(甲1)を引用文献1,特開
平6−114143号公報(甲11)を引用文献4として,特許法29
条2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶理由,②実願
平8−13009号(登録実用新案第3038903号,甲12)を引
用文献2,特願平8−99735号(特開平9−285596号,甲1
3)を引用文献3とし,特許法29条の2の規定により特許を受けるこ
とができない,との拒絶理由を原告に通知した。
その後,特許庁は,上記拒絶理由に基づき,特許法29条2項及び2
9条の2の規定に基づく拒絶査定(甲7)をした。
(ウ) 一方,審決は,上記拒絶理由通知書(甲4)における引用文献1∼
4とは異なる実願昭60−113698号 実開昭62−24891号)

のマイクロフィルム(甲2)に基づき「ボーナス遊技の一種として,所
定期間入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態となるBB遊技」を周
知技術1として認定し,これにより,「相違点1に係る本願補正発明の
構成を引用発明に採用することは,当業者が容易に想到できたものであ
る」と判断した(6頁12行∼14行)

さらに審決は,甲2に基づき スロットマシンの技術分野においては,

特別遊技を開始させる特定条件を,遊技者の操作と乱数抽選の結果とに
基づいて停止制御された可変表示の表示態様が特定の図柄組合せとなっ
た場合とすること」と,「特定遊技が複数あるときには,特定遊技毎に
特定条件となる特定の図柄組合せを異ならせること」とをそれぞれ周知
技術2,3として認定し,これにより ,「相違点2に係る本願補正発明
の構成を引用発明に採用することは,当業者が容易に想到できたもので
ある」と判断した(7頁7行∼8行)。
そして,「…本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件
を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2[理由]2. 3)

に記載したとおり,引用発明及び周知技術1乃至3に基づいて,当業者
が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理
由により,引用発明及び周知技術1乃至3に基づいて,当業者が容易に
発明をすることができたものである。したがって,本願発明は,引用発
明及び周知技術1乃至3に基づいて,当業者が容易に発明をすることが
できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受け
ることができない。
」との結論を示した(8頁21行∼29行)。
(エ) 審決は,本願発明と引用発明との相違点について,上記周知技術を
適用して本願発明の構成とすることの容易想到性を肯定する判断をした
ものであるが,拒絶理由通知(甲4)及び拒絶査定(甲7)においては,
上記周知技術の内容自体はおろか,その根拠となる特許公報にも言及す
らしていないのであるから,平成14年法律第24号による改正前の特
許法(以下「改正前特許法」という場合がある)159条2項で準用す
る同法50条に違背する違法があり,かつ,その違法は明らかに結論に
影響がある場合に当たるものというべきである。したがって,審決は取
消しを免れない。
なお,この考え方は,知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)103
95号判決(甲14)でも支持されているところである。
(オ) 確かに審決は,その判断に当たり,拒絶理由通知(甲4)及び拒絶
査定 甲7)
( で示されなかった新たな公知文献を引用したわけではなく,
また,用いたのは周知技術であるとはいえる。
しかし本件のように,出願に係る発明と引用された発明との構成上の
相違点について,特定の技術を用いる場合には,その技術が周知技術で
あっても,いかなる周知技術であるかについては,特段の事情がない限
り,拒絶理由として通知されていなければならないものと解すべきであ
る。
なお,当該周知技術が拒絶理由で通知されていれば,その裏付けとな
る刊行物等の証拠については,これを追加的に変更したり,別なものに
交換的に変更したりするのは許容されるが,本件は,周知技術自体が拒
絶理由通知(甲4)及び拒絶査定(甲7)に開示されていないのである
から,そのような許容される場合に該当するものではない。
なお,上記のように,特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定
条件となる特定の図柄組合せを異ならせることは,周知技術であるとは
いえないし,甲2にその記載はない。
(カ) したがって,原告には拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由について,
意見書を提出する機会が与えられなかったから,審判手続には,改正前
特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反する瑕疵があ
る。
(キ) なお特許・実用新案審査基準の「第Ⅱ部 特許要件 」「第2章 新
規性・進歩性」「2.8 進歩性の判断における留意事項 」(甲15)に
は,以下の記載がある。
「 2)周知・慣用技術は拒絶理由の根拠となる技術水準の内容を構成

する重要な資料であるので,引用するときは,それを引用発明の認
定の基礎として用いるか,当業者の知識(技術常識等を含む技術水準)
又は能力(研究開発のための通常の技術的手段を用いる能力や通常
の創作能力)の認定の基礎として用いるかにかかわらず,例示する
までもないときを除いて可能な限り文献を示す。

特に ,「特定遊技が複数あるときには,特定遊技毎に特定条件となる
特定の図柄組合せを異ならせること」については,例示するまでもない
ほどの周知技術であるとはいえないし,甲2にその記載はない。
この点でも,審判手続には,改正前特許法159条2項で準用する同
法50条の規定に違反する瑕疵がある。
2 請求原因に対する認否
請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,同(4)は争う。
3 被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1に対し
ア 原告は,審決の「大ヒットフラグが立てば…ほとんどの場合でボーナス
ゲームが実行される」には,その根拠がないと主張する。
しかし ,「大ヒットフラグ」は,7−7−7の図柄の組合せをこれから
表示する場合(未だ,表示されていない状態)に立つものである。また,
大ヒットフラグは7−7−7の図柄の組合せが表示されるまで持ち越さ
れ,大ヒットフラグが立つ場合には,7−7−7の図柄の組合せを表示す
ることが当然に予定されているといえる。ここで ,「7−7−7の図柄の
組合せ」は ,「大ヒットの組合せ」でもあるから,ボーナスゲーム実行の
契機となるものである。してみると,大ヒットフラグが立てば,いずれボ
ーナスゲームが実行されるといえる。
したがって,引用発明では「大ヒットフラグが立てば…ほとんどの場合
でボーナスゲームが実行される」のであり,「その遊技は,…実質的にボ
ーナスゲームと組み合わされているといえる」という審決の認定に誤りは
ない。
イ また甲1には,以下の各記載がある。
(ア) 甲1の1頁左欄3行∼10行
「2 特許請求の範囲
(1) 表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリールを乱数値に
応じて停止するように制御する制御装置を備えたスロットマシンにおいて,
前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数
分,前記乱数値に応じた停止制御を中止するように構成したことを特徴とす
るスロットマシン。」
上記によれば,引用発明は,「表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示
する複数のリールを乱数値に応じて停止するように制御する制御装置を
備えたスロットマシン」に関する発明である。
(イ) 甲1の2頁右下欄9行∼3頁左上欄5行
「また,CPU11に入力される情報としては,各リール3L,3C,3Rに
描かれた複数のシンボルの内容と順序を示すシンボルテーブルと,後述のよう
にCPU11で決定した乱数値が大ヒット,それ以外の入賞,外れのいずれに
対応するかを判定するための確率テーブルとがあり,これらはCPU11に接
続した記憶部(RAM)17及び18に格納される。確率テーブルは,例えば
乱数の範囲を1∼8192とし,そのうち1∼30を大ヒット,31∼150
0を入賞,1501∼8192を外れに区分する。CPU11は,このような
確率テーブルを参照して乱数値がどの区分に属するかを判定する。そのため,
CPU11には,上記のように予め定めた範囲で乱数を発生する乱数発生回路
19と,CPU11に種々の動作を行わせるためのプログラムを格納した記憶
部(ROM)20とが付設される。」
甲1の実施例は,上記の「表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する
複数のリールを乱数値に応じて停止するように制御する制御装置」の具
体的手段として ,「CPU11」や「CPU11で決定した乱数値が大
ヒット,それ以外の入賞,外れのいずれに対応するかを判定するための
確率テーブル」を備え,「確率テーブルは,例えば乱数の範囲を1∼8
192とし,そのうち1∼30を大ヒット,31∼1500を入賞,1
501∼8192を外れに区分する。CPU11は,このような確率テ
ーブルを参照して乱数値がどの区分に属するかを判定する 。」ように,
構成される。
(ウ) 甲1の3頁右上欄3行∼左下欄2行
「次に第2図を参照して,実施例の作用を説明する。
まず,CPU11は,検出回路13からの信号によりスタートスイッチ4が
オンしたか否かを判断し , No”であれば以下の動作は実行しない(そのまま

待機している)が, Yes”ならば「大ヒットフラグ」が立っているかどうかを

判断する。
大ヒットフラグは,第3図に示す3つの表示窓2L,2C,2Rの中に横3
本と斜め2本の入賞ラインのいずれかに沿って7−7−7の図柄の組合せを表
示する場合に "1"となる(フラグが立つ)ものであり,この図柄の組合せは,
対応する乱数値(大ヒットの乱数値)がサンプリングされた時に3個のリール
3L,3C,3Rをそれぞれ所定位置に停止させることによって実現される。
この時は,所定のゲーム回数(例えば 10 ゲーム)の期間,回転リールの停止
制御を中止する。すなわち,遊技者がストップボタン5L,5C,5Rを押し
たタイミングでリールの回転を停止させるようにする…」
甲1の4頁右上欄7行∼11行
「このようにして全てのリール3L,3C,3Rが停止すると,当たりチェッ
クを行い,表示窓に現われたシンボルが大ヒットの組合せか否かを判断し, Yes

”ならば後述のボーナスゲームの動作手順を実行する。…」
このように引用発明では ,『大ヒットフラグ』が立っているかどう

かを判断する。…この時は,所定のゲーム回数(例えば10ゲーム)
の期間,回転リールの停止制御を中止する。」のであるから,CT遊技
が実行されるためには ,『大ヒットフラグ』が立っている」という条

件を満たさなければならない。これは第2図のフローチャートにも,
同様のことが示されている。
ここで,上記「大ヒットフラグは,…入賞ラインのいずれかに沿っ
て7−7−7の図柄の組合せを表示する場合に "1 "となる(フラグが
立つ)ものであり,」とあるのは,大ヒットフラグが7−7−7の図柄
の組合せを表示した結果立つことを意味するものではなく,当該図柄
組合せをこれから表示する場合に立つことを意味するものである。
また,上記の「…7−7−7の図柄の組合せ…この図柄の組合せは,
対応する乱数値(大ヒットの乱数値)がサンプリングされた時に…実
現される。」との記載によれば ,「この図柄の組合せ」,すなわち ,「7
−7−7の図柄の組合せ」は ,「大ヒットの乱数値」に対応するもので
ある。したがって ,「7−7−7の図柄の組合せ」は ,「大ヒットの組
合せ」であるともいえる。
さらに,大ヒットフラグが立つのは,「7−7−7の図柄の組合せを
表示する場合」であるから,大ヒットフラグが立った場合には,「3個
のリール3L,3C,3Rをそれぞれ所定位置に停止させること」も
必要であるにしろ,いずれ「7−7−7の図柄の組合せ」を表示する
ことになる。そして,「7−7−7の図柄の組合せ」は「大ヒットの組
合せ」でもあるから,これが表示されるとボーナスゲームが実行され
る。
そうすると,引用発明では大ヒットフラグが立つ場合には,いずれ,
ボーナスゲームを実行することを当然に予定しているといえる。
(エ) 甲1の3頁右下欄5行∼15行
「再びフローチャートに従って説明すると,上記の『大ヒットフラグ』が立っ
ている場合には,ゲーム回数を数えるゲーム数カウンタを1加算し,上記の所
定ゲーム回数に達したか否かをチェックする。そして,所定ゲーム回数に達す
るまでは,各ゲーム毎にスタートスイッチ4がオンしてから一定時間(例えば
300 ミリ秒)遅らせて各リールの回転を始める。この遅延は,大ヒットの乱数
値がサンプリングされたことを遊技者にそれとなく認識させるものであり,所
定回数のゲームについて行われる。…」
この記載によれば,『大ヒットフラグ 』が立っている場合」で,かつ,

所定ゲーム回数に達するまでは,リールの回転開始を遅延させるのであ
り,また,「この遅延」は ,「大ヒットの乱数値がサンプリングされたこ
とを遊技者にそれとなく認識させるもの」である。したがって,この記
載からも,『大ヒットフラグ』が立っている場合」とは ,
「 「大ヒットの
乱数値がサンプリングされた」状態であることが明らかである。
また ,『大ヒットフラグ』が立っている場合」のゲーム回数が,
「 「所
定ゲーム回数に達する」のであるから ,「大ヒットフラグ」は,各ゲー
ム毎に必ず元に戻されるものではなく,複数ゲームにわたって持ち越さ
れ得るものである。
(オ) 以上の記載を総合すると,引用発明において,CT遊技を実行する
条件である大ヒットフラグが立つのは,大ヒットに対応する乱数値がサ
ンプリングされた時であるといえる。また,大ヒットフラグが立つ場合
には,いずれボーナスゲームを実行することを当然に予定しているとい
える。
ウ そして甲1には,大ヒットフラグ処理について記載が省略された部分 例

えば,フローチャートには,「大ヒットフラグ」を立てる処理や戻す処理
が明記されていないこと等)がある。
したがって,「表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリール
を乱数値に応じて停止するように制御する制御装置を備えたスロットマシ
ン」における「大ヒットフラグ」については,技術常識を参酌する必要が
ある。
(ア) 特公平3−72313号公報(発明の名称「スロットマシン」,出
願人 株式会社ユニバーサル,公開日 昭和59年10月23日,乙1)
には,以下の記載がある。
・ 次に本発明の特徴であるヒツトリクエストの発生に関して詳述する。ヒツト

リクエストの発生は,前述のようにゲーム開始時にサンプリングされる乱数値
と,ROM上の入賞テーブルにストアされた入賞を与えるべき数値群との照合
の結果得られることになる。…」(4頁7欄37行∼42行)
・ 第9図は発生,更新される乱数値のサンプリング,ヒツトリクエストチエツ

ク処理のフローチヤートである。このフローチヤートは,第4図に示したフロ
ーチヤートにおける“ヒツトリクエスト”処理に該当するもので,ゲーム開始
後例えばスタートレバーの操作後の所定のタイミング信号(この時点で各リー
ルは定常回転されることが好ましい 。)により,その時点で乱数値RAM80
(第8図)に存在する乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして
決定された乱数値は第9図のフローチヤートに従い,後述する入賞確率テーブ
ルと照合され,大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発
生,または中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生と
いうように小ヒツトまでの判断,処理がなされいずれかのヒツトリクエストが
発生されるかあるいはヒツトリクエストなしかがチエツクされることになる。
…」(4頁8欄26行∼43行)
・ こうして任意時点でのゲーム開始後に特定の乱数値がサンプリングされ,前

述の入賞確率テーブルと照合されてヒツトリクエストが得られることになる
が,さらにペイアウト率を一定にする意味でリクエストカウンタを設けておい
てもよい。すなわち,前述したヒツトリクエストが発生すると,各ヒツトリク
エストをカウントするリクエストカウンタが+1され,RAM上にストアされ
る。そして,ヒツトした際に,そのリクエストカウンタは−1の減算処理が行
われる。また,ヒツトしない場合には,そのまま保存され,最終的にリクエス
トカウンタが零になるまでヒツトリクエストが発生し,このためにペイアウト
率は一定に保たれる。これは例えば第11図に示したフローチヤートにより処
理される。(5頁9欄24行∼38行)

乙1の「大ヒツトリクエスト」は,甲1の「大ヒットフラグ」に相
当する。そうすると,乙1には,スロットマシンにおいて,
① 大ヒツトリクエスト( 大ヒットフラグ」
「 )の発生は,ゲーム開
始時にサンプリングされる乱数値と,ROM上の入賞テーブルに
ストアされた入賞を与えるべき数値群との照合の結果得られるこ
と,
② 大ヒツトリクエスト( 大ヒットフラグ 」
「 )が発生すると,大ヒ
ツトリクエスト( 大ヒットフラグ」
「 )をカウントするリクエスト
カウンタが+1され,RAM上にストアされ,そして,ヒツトし
た際に,リクエストカウンタは−1の減算処理が行われ,最終的
にリクエストカウンタが零になると大ヒツトリクエスト( 大ヒッ

トフラグ」)が発生しなくなり,また,ヒツトしない場合には,リ
クエストカウンタはそのまま保存され,最終的にリクエストカウ
ンタが零になるまで大ヒツトリクエスト( 大ヒットフラグ 」
「 )が
発生すること,
が記載されていることになる。
なお,乙1には ,「ヒットフラグ」についての記載(8頁15欄23
行∼41行,第20図∼第22図)がある。しかし,乙1の「ヒット
フラグ」は,第3リールの停止制御に際し,2つのリールが停止した
段階で発生されるが,第3リールの停止後にはその役目を終え,次回
以降のゲームのために保存される必要はない。すなわち,ゲーム初期
に存在するものではないから,ゲーム初期のリールスタート後に参照
される甲1の「大ヒットフラグ」とは異なるものである。
(イ) 特開平1−198584号公報(発明の名称「コイン投入式ゲーム
マシン」 出願人 株式会社ユニバーサル ,公開日 平成元年8月10日,

乙2)には,以下の記載がある。
・ 確率テーブル30は,乱数値の数値範囲を大ヒット領域,中ヒット領域,小

ヒット領域,ハズレ領域にグループ分けしたテーブルROMで構成され,例え
ば乱数値の数値範囲が0∼10000であるときには,0∼50が大ヒット領
域,51∼250が中ヒット領域,250∼1500が小ヒット領域に割当て
られる。…そして,サンプリングされた乱数値が大ヒット領域の数値に該当し
ていると,MPU10は後述する大ヒットフラグカウンタ32に大ヒットフラ
グ「1」をセットする。同様に,サンプリングされた乱数値が中ヒット領域あ
るいは小ヒット領域に該当しているときには,中ヒットフラグ,小ヒットフラ
グがMPU10によってセットされる。
大ヒットフラグカウンタ32,中ヒットフラグカウンタ33,小ヒットフラ
グカウンタ34は,前述のようにして発生されるヒットフラグを,ヒットの種
類ごとに積算して計数するために設けられ,これらの計数値は判定部35に入
力されるようになっている。そして,詳しくは後述するように,前回までのゲ
ーム中にフラグカウンタ32,33,34のいずれかが「1」以上にセットさ
れたままになっているときには,例え今回のゲームでサンプリングされた乱数
値がヒット領域に該当していなくても,投入されたコイン枚数が所定の条件を
満足していることが判定部35により確認されたときには,セットされている
フラグカウンタに対応したヒットが得られるようにMPU10は入賞処理モー
ドでゲーム処理を実行する。すなわち,一旦発生されたヒットフラグは,それ
に対応したヒットが得られるまで次回以降のゲームに持ち越される。(3頁左

下欄13行∼4頁左上欄10行)
・ 以上,ポーカーゲーム機を対象として本発明の一実施例について説明してき

たが,本発明はゲームを行うときにコインを使用し,しかもマイクロコンピュ
ータによって入賞要求を出すようにしたゲームマシンであれば,スロットマシ
ン等その他のものにも適用することが可能である。(5頁右下欄4行∼9行)

これらの記載によれば,乙2には,スロットマシンにおいて,
① サンプリングされた乱数値が大ヒット領域の数値に該当してい
ると,MPUは大ヒットフラグカウンタに大ヒットフラグ「1」
をセットすること,
② 一旦発生された大ヒットフラグは,大ヒットが得られるまで次
回以降のゲームに持ち越され,大ヒットが得られると元に戻され
ること,
が記載されていることになる。
(ウ) 特開平4−73077号公報(発明の名称「スロットマシン」,出
願人 株式会社エル・アイ・シー,公開日 平成4年3月9日,乙3)に
は,以下の記載がある。
「一般ゲームにおける説明で述べたような事情により,前記ソフト抽選の結果
が大当り又は中当りであっても,前記図柄の組合せがボーナスゲーム用の特定
の組合せになるようにリール(3)を停止させられないときは外れとなり,ラ
ンプ(8)(9)はいずれも点灯しない。この場合は,続けて繰り返しゲーム

を行ったときに,前記図柄の組合せがボーナスゲーム用の特定の組合せになる
まで,すなわち大当り或いは中当りが最終的な結果として当るまでは大当りの
フラグBIG或いは中当りのフラグMEDを消さずに残しておいて,一般ゲー
ムと区別したソフト抽選及びリール停止制御が行われる。以下第3図乃至第5
図のフローチャートに基づいて説明を加える。
第4図のソフト抽選処理のフローチャートにおいて,BIG,MEDがとも
にセットされていないときに行うメイン抽選で,大当り或いは中当りが出ると
夫々BIG或いはMEDをセットする。同時に,一回目の大当り或いは中当り
のチャレンジを示すフラグINITもセットされる。尚,一般入賞のときは,
フラグSMALLがセットされると共に,その種類に応じた入賞図柄即ちリー
ルの停止位置の組合せが記憶される。
そして,第5図に示すリール停止制御において,ボーナスゲーム用特定組合
せになるような制御が成功しないときは,一回目のチャレンジを示すフラグI
NITがセットされているので,外れになるようにリール停止制御が行われる。
このときフラグINITはリセットされる。
続けてゲームが行われるとBIGフラグ又はMEDフラグがセットされたま
まであるので,第4図のソフト抽選処理においては外れを含めて一般入賞の中
から抽選するサブ抽選が行われる。その後の処理はメイン抽選の場合と同様で
ある。そして,第5図のリール停止制御において,BIGフラグ又はMEDフ
ラグがセットされたままであるので,まずボーナスゲーム用特定組合せになる
ように停止制御が行われ,制御が成功しないときは,今回はフラグINITが
既にリセットされているので,前記サブ抽選の結果に基づいて一般入賞のとき
と同じ停止制御が行われ,一般入賞か外れかが決定される。
このようにして,メイン抽選での結果である大当り或いは中当りが,リール
停止制御に成功して最終的な結果として当るまでは上記制御が繰り返し行われ
る。リール停止制御に成功すれば,第3図に示すように大当りゲーム或いは中
当りゲームへ移行する処理の中でBIGフラグ或いはMEDフラグがリセット
され,次回からのゲームにおいては通常の制御が行われる。(4頁右下欄2行

∼5頁右上欄13行)
乙3の「BIGフラグ 」(及び「BIG 」)は,「大ヒットフラグ」に
相当する。してみると,乙3には,スロットマシンにおいて,
① 乱数によるソフト抽選処理で,大当りが出るとBIGフラグ 「大

ヒットフラグ」)をセットすること,
② ソフト抽選の結果が大当りであっても,図柄の組合せがボーナス
ゲーム用の特定の組合せになるようにリールを停止させられないと
きは外れとなり,この場合は,続けて繰り返しゲームを行ったとき
に,前記図柄の組合せがボーナスゲーム用の特定の組合せになるま
で,すなわち大当りが最終的な結果として当るまではBIGフラグ
( 大ヒットフラグ 」
「 )を消さずに残しておき,リール停止制御に成
功すれば,大当りゲームへ移行する処理の中でBIGフラグ( 大

ヒットフラグ」)がリセットされること,
が記載されていることになる。
(エ) 以上のとおりであるから,本件出願当時(平成9年4月4日,原出
願時),スロットマシンの技術分野において,
① 大ヒットに対応する乱数値がサンプリングされたことにより,大
ヒットの当たり要求を示す大ヒットフラグが立つこと,
② 発生された大ヒットフラグは,大ヒットの組合せが表示されるま
で次回以降のゲームでも持ち越され,大ヒットの組合せが表示され
ると元に戻されること,
は,いずれも技術常識であり,引用発明においても,大ヒットフラグ処
理にはこれらの技術が採用されていると考えることが合理的である。
エ CT遊技とボーナスゲームとの関係
(ア) 上記のとおり引用発明において,CT遊技を実行する条件である大
ヒットフラグが立つのは,大ヒットに対応する乱数値がサンプリングさ
れた時である。ところで,大ヒットフラグは,大ヒットの組合せが表示
されると元に戻されるから,「大ヒットフラグが立っている時」は,未
だ,表示窓に現れたシンボルが大ヒットの組合せとなっていない時であ
る。一方,ボーナスゲームを開始する条件は,「表示窓に現れたシンボ
ルが大ヒットの組合せか否かを判断し , Yes”
“ 」となったことである。
そうすると二つの条件は一応,相違する。
しかし,大ヒットフラグが立つ場合には,いずれボーナスゲームを実
行することを,当然に予定している。したがって,CT遊技は,予定さ
れるボーナスゲームと実質的に組み合わされているといえる。
(イ) また,大ヒットフラグがない状態では,熟練した遊技者が最適なタ
イミングでストップボタンを押しても大ヒットの組合せを表示させない
ようにリールが停止されるのに対し,大ヒットフラグが立った状態では,
初心者でも操作タイミング次第で大ヒットの組合せを表示させることが
できる。さらに,大ヒットフラグは大ヒットの組合せが表示されるまで
次回以降のゲームでも持ち越されるのであるから,適切なタイミングと
なるよう試行を重ねることにより,いずれ大ヒットの組合せを表示可能
である。
しかも ,「所定のゲーム回数(例えば10ゲーム)の期間」が終了す
れば,乱数値に応じたシンボルの組合せが表示されるように操作タイミ
ングのズレを許容可能なリールの停止制御が実行されるのであるから,
「 所定期間』が終了し,リールの停止制御が実行されることにより 」
『 ,
大ヒットの組合せを表示させることが容易になる。
そうすると,大ヒットフラグが立てば,遊技をやめてしまわない限り,
いずれ大ヒットの組合せを表示させることとなり,これが表示されると
ボーナスゲームが実行される。したがって,大ヒットフラグが立つこと,
すなわち,CT遊技が実行されることは,ボーナスゲームが実行される
ことと実質的に組み合わされているといえる。
オ 以上のとおりであるから,引用発明の特定遊技につき, その遊技は, 遊
「 『
技中大ヒットフラグが立っている時』に行われるものであり,大ヒットフ
ラグが立てば…,ほとんどの場合でボーナスゲームが実行されるのである
から,実質的にボーナス遊技と組み合わされているといえる」とした審決
の認定に誤りはない。
カ 原告は,甲1においては,入賞ラインのいずれかに沿って7−7−7の
図柄の組合せが表示されることによってCT遊技を開始し,表示窓に現わ
れたシンボルが大ヒットの組合せであることによってボーナスゲームを開
始するスロットマシンが示されていることを根拠に,審決の認定が誤って
いる旨を主張する。
しかし,CT遊技が開始されるのは大ヒットフラグが立った時であり,
これは,大ヒットに対応する乱数値がサンプリングされた時であるから,
7−7−7の図柄の組合せが表示される前の段階である。また,7−7−
7の図柄の組合せが表示されることによって開始されるのは,ボーナスゲ
ームである。したがって,原告の主張は甲1につき誤った前提をもとにさ
れている。
(2) 取消事由2に対し
ア 甲2に記載された技術について
(ア) 「特定遊技」との用語につき,まず「とく‐てい【特定 】」という
語は,「特にそれと指定すること。特に定められていること。『誰と―
できない 』『―条件』[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」との意味で
あるから ,「特定遊技」は ,「特に定められた遊技」との意味である。
(イ) そして甲2には,以下の記載がある。
「最近のスロットマシンではそのゲーム性を高めるために,上述した通常ゲー
ムの他に,特典ゲームとして例えばボーナスゲームができるようになっている
ものがある。ボーナスゲームは,通常ゲームを行った結果,例えばシンボルの
組み合わせとして「BAR−BAR−BAR」
,あるいは「Water Mel
on −Water Melon −Water Melon」になったとき
に,実行されるようになっている。(3頁17行∼4頁4行)

「また,こうしたボーナスゲームが可能となる条件を緩和するために,ビッグ
チャンスゲームを付加したスロットマシンも提案されている。ビッグチャンス
ゲームは,通常ゲームの結果,シンボルの組み合わせが例えば「7−7−7」
になったときに開始され,30回を限度として行われる 。 (4頁12行∼17

行)
(ウ) これらによれば,甲2のスロットマシンで実行される遊技に,ボー
ナスゲームとビッグチャンスゲームとが含まれることは明らかである。
ボーナスゲームが特定遊技であることは原告も争っていないが ,「特典
ゲームとしてボーナスゲームができる」のであるから,ボーナスゲーム
は特に定められた遊技であるといえる。
また,「ビッグチャンスゲームは,通常ゲームの結果,シンボルの組
み合わせが例えば『7−7−7』になったときに開始され,30回を限
度として行われる」のであるから,ビッグチャンスゲームは,特に定め
られた遊技であるといえる。したがって,ビッグチャンスゲームは, 特

定遊技」である。
なお,原告は,『ビッグチャンスゲーム』は,ボーナスゲームが可能

となる条件を緩和するために,通常ゲームとは別に設けているにすぎな
い。」と主張するが,「通常ゲームとは別に設けている」ビッグチャンス
ゲームを,「特定遊技」ではないという主張は失当である。
(エ) そして,ボーナスゲームは,シンボルの組合せが「BAR−BAR
−BAR」あるいは「Water Melon −Water Mel
on −Water Melon」になったときに実行され,ビッグチ
ャンスゲームは,シンボルの組合せが「7−7−7」になったときに開
始されるのであるから,これら二つの特定遊技毎に開始条件となる図柄
組合せを異ならせたものといえる。
(オ) 以上のとおりであるから,甲2のスロットマシンは,ボーナスゲー
ムとビッグチャンスゲームという二つの特定遊技を含み,特定遊技毎に
その開始条件,すなわち,特定条件を異ならせたものであるといえる。
したがって,甲2に,特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定条
件となる特定の図柄組合せを異ならせることが記載されていたという審
決の認定に,誤りはない。
イ 周知であるか否かについて
特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定条件となる特定の図柄組
合せを異ならせることは,甲2のほか,前記特開平4−73077号公報
(乙3 ),特開平7−328179号公報(乙4)に記載されているよう
に,周知技術である。
(ア) 特開平4−73077号公報(乙3)には,以下の記載がある。
「 従来の技術〕

従来のスロットマシンにおいては,各回動体が停止したとき所定の入賞ライ
ンに位置した各回動体の図柄の組合せが,各別に定められた特定の組合せにな
れば,所定枚数の入賞メダルを払い出した後,自動的にボーナスゲームとして
の複数種のゲームのうちのいずれかに移行するように構成されていた。尚,ボ
ーナスゲームとしての複数種のゲームは,例えば下記のような,連続役物ゲー
ムと連続役物増加ゲームが一般に知られている 。 (1頁右下欄9行∼19行)

乙3の「ボーナスゲームとしての複数種のゲーム」は,本願補正発明
の「特定遊技」に相当し,これが複数あることは明らかである。また,
「各回動体が停止したとき所定の入賞ラインに位置した各回動体の図柄
の組合せが,各別に定められた特定の組合せになれば,…自動的にボー
ナスゲームとしての複数種のゲームのうちのいずれかに移行する」ので
あるから,「ボーナスゲームとしての複数種のゲーム」の夫々に,移行
条件となる図柄の組合せが異ならせてあるといえる。
したがって,乙3には,特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特
定条件となる特定の図柄組合せを異ならせることが記載されている。
(イ) 特開平7−328179号公報(発明の名称「スロットマシン」,
出願人 サミー工業株式会社,公開日 平成7年12月19日,乙4)に
は,以下の記載がある。
「 0020】一方,該図柄の停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わ

せである特別賞態様であった場合に,遊技者に特別遊技を行わせる。まず,特別
遊技が,例えばビッグボーナスゲームの場合について説明する。具体的には,本
実施例においては,例えば何れかの有効ライン上に ,
「7 」「7 」
「7」が揃った
場合に,特別遊技であるビッグボーナスゲームを行わせる。」
「 0025】…つぎに,特別遊技が,ボーナスゲームの場合について説明する。

具体的には,本実施例においては,何れかの有効ライン上に,図には示さないが,
「SKAL」「SKAL」「SKAL」が揃った場合に,特別遊技であるボーナス
ゲームを行わせる。」
乙4の「特別遊技であるビッグボーナスゲーム」「特別遊技であるボ
ーナスゲーム」は,いずれも「特定遊技」に相当する。また,ビッグボ
ーナスゲームとボーナスゲームとで,開始条件となる図柄組合せが異な
ることは明らかである。
したがって,乙4には,特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特
定条件となる特定の図柄組合せを異ならせることが記載されている。
(ウ) 特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定条件となる特定の図
柄組合せを異ならせることは,甲2,乙3,及び乙4に記載されている
ように,周知技術(周知技術3)である。したがって,周知技術3につ
いての審決の認定に,誤りはない。
なお,周知技術3は,本件出願当時,ほとんどのスロットマシンに採
用されている技術常識であり,あえて例示するまでもなく,当業者(そ
の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)ならば当然
知っているはずの事項である。
ウ 以上のとおり,甲2及び周知技術3についての審決の認定に誤りはない。
また,その誤りを根拠とする相違点2の判断誤りにも理由がない。
(3) 取消事由3に対し
ア 原告の主張する作用効果は,以下のとおり,格別のものであるとはいえ
ない。
(ア) 作用効果1に対して
作用効果1は,可変表示の表示態様と遊技状態とが対応づけられてい
るという構成から自明である。してみると,同様の構成を有する周知技
術3からも,作用効果1は自明である。
なお,甲1においても,リールの回転開始を遅延させることによりC
T遊技状態であることを遊技者に報知しているように,遊技状態を報知
すること自体にも,格別の作用効果があるものとはいえない。
(イ) 作用効果2に対して
複数の特定遊技を設けることは,周知技術である。また,CT遊技が
遊技者の技量分メダルの払い出しが異なることは,引用発明(甲1)の
「本発明のスロットマシンにおいては,特定の条件が達成されてリール
の停止制御が中止されている間,回転しているリールの停止位置は遊技
者による停止操作のタイミングで決定されるので,熟練者と非熟練者と
の間に差が生じる 。」という作用(2頁右上欄5行∼9行)から自明で
ある。したがって,本願補正発明の効果は,当業者が容易に予測できる
範囲内である。
(ウ) 作用効果3に対して
一般に,スロットマシンには複数の入賞役が存在し,入賞役毎に対応
する図柄組合せが存在するように構成されており,どの入賞役の図柄組
合せを目押しするかは,遊技者自身が決定できるものである。よって,
作用効果3は,上記の構成から自明なものである。
イ 以上のとおり,原告の主張する本願補正発明の作用効果は何れも格別の
ものではないから審決の作用効果の認定に誤りはない。
(4) 取消事由4に対し
ア 拒絶査定(甲7)の備考欄には,次の説示がある。
「・請求項1−4に対して
遊技状態としてどのようなものを設けるか(BB,CTなど )
,そしてどのよ
うに各ゲームに移行するのかは ,『ゲームのルール』である。ゲームのルールは
適宜決定すればよいことであって,技術的進歩性とは無関係である。そして,本
願請求項の効果も遊技上の効果でしかない。」
このように,拒絶査定においては,①遊技状態としてどのようなものを
設けるか,②どのように各ゲームに移行するか,の二つの事項は,いずれ
も,ゲームのルールであるから,適宜決定すればよいことであるとの理由
で,これらの事項に関しては,本願発明の進歩性を肯定できないことが判
断されている。
イ 上記の「遊技状態としてどのようなものを設けるか」は,本願発明及び
本願補正発明の「特定遊技は,所定期間入賞の図柄組合せが成立しやすい
遊技状態となるBB遊技,及び該BB遊技と所定の入賞役について前記乱
数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を含み」との
構成に該当する。当該構成について,審決では相違点1として検討したと
ころ,「遊技者に与える利益として,具体的にどのようなものを選択する
かは,当業者が適宜なし得る設計上の事項である。 審決6頁7行∼8行)


ことを理由に,当業者が容易に想到できたものと判断したものである。し
たがって,拒絶査定の判断と審決の判断とは,その理由が異なるものでは
ない。
上記の「どのように各ゲームに移行するのか」は,本願発明及び本願補
正発明の「前記BB図柄を開始させる図柄組合せとは異なる特定の図柄組
合せとなった場合に,前記BB遊技と前記CT遊技との組合せ遊技を開始
させる」との構成に該当する。当該構成について,審決では,相違点2と
して検討したところ,「引用例の記載事項4には,『以上,本発明を実施例
によって説明したが,本発明はこれに限られるものではない。例えば,回
転リールの停止制御を中止する特定条件は,上記のような大ヒットに限ら
ず,任意に定めることができる。』と記載されている 。 (審決6頁16行

∼19行)ことを理由に,当業者が容易に想到できたものと判断したので
ある。したがって,拒絶査定の判断と審決の判断とは,その理由が異なる
ものではない。
なお,周知技術1∼3は,遊技状態やその移行条件を具体的に選択決定
する際の,当業者の技術水準を示すために引用したにすぎず,拒絶査定の
理由とは異なる理由を示すために引用したものではない。
周知技術とは,文献等を例示するまでもなく,「当業者ならば当然知っ
ているはずの事項」であって,審査ないし審判において周知技術を用いる
際,そのことについて意見書提出又は補正の機会を与えなくとも,当業者
である出願人に対し不意打ちになることはないと考えられるから,周知技
術については,改正前特許法159条2項において準用する同法50条の
適用はないと解するのが相当である。
これを本件についてみると,本件の審判手続における周知技術は,「当
業者ならば当然知っているはずの事項」である。したがって,当該周知技
術を用いる際に,意見書提出又は補正の機会を与えなくとも,当業者であ
る出願人に対し不意打ちとなることはなく,取消事由4は審決を取り消す
べき違法には当たらないというべきである。
ウ 以上のとおり,審決は,拒絶査定の理由をより詳細に説示したものであ
り,拒絶査定の理由と異なる理由について審理したものではない。したが
って,審判手続には,改正前特許法159条2項で準用する同法50条の
規定に違反する瑕疵はない。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ),(2)(発明の内容 ),(3)(審決
の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由1(引用発明認定の誤り)について
原告は,審決が,「引用発明では,『特定遊技は,ボーナス遊技と所定の入賞
役について乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を
含』むといえる 」(4頁下3行∼末行)と認定したことが誤りであり,この引
用発明(甲1)の認定の誤りは審決の結論に影響を及ぼすと主張するので,以
下検討する。
(1) 甲1(特開平1−238888号公報,発明の名称「スロットマシン」,
出願人 株式会社ユニバーサル,公開日 平成元年9月25日。引用例)には,
以下の記載がある。
ア 「上記のリール3L,3C,3Rの回転及び停止は,第1図に示す制御装置に
よって制御される。制御装置は,例えばマイクロコンピュータで構成される…
また,CPU11に入力される情報としては,各リール3L,3C,3Rに描
かれた複数のシンボルの内容と順序を示すシンボルテーブルと,後述のように
CPU11で決定した乱数値が大ヒット,それ以外の入賞,外れのいずれに対
応するかを判定するための確率テーブルとがあり,これらはCPU11に接続
した記憶部(RAM)17及び18に格納される。確率テーブルは,例えば乱
数の範囲を1∼8192とし,そのうち1∼30を大ヒット,31∼1500
を入賞,1501∼8192を外れに区分する。CPU11は,このような確
率テーブルを参照して乱数値がどの区分に属するかを判定する。そのため,C
PU11には,上記のように予め定めた範囲で乱数を発生する乱数発生回路1
9と,CPU11に種々の動作を行わせるためのプログラムを格納した記憶部
(ROM)20とが付設される。(2頁左下欄16行∼3頁左上欄5行)

イ 「一方,CPU11からの出力で動作する回路としては,リール3L,3C,
3Rを回転させるパルスモータを駆動するドライバ21L,21C,21Rと,
スロットマシンに内蔵された公知のコイン払い出し装置22を駆動するドライ
バ23と,CPU11から各モータドライバ21L,21C,21Rに供給さ
れる駆動パルスをカウントするカウンタ24L,24C,24Rとが設けられ
る。これらのカウンタ24L,24C,24Rは,各リール3L,3C,3R
が予め定めた基準位置に設定されたときCPU11から出力されるリセット信
号によってリセットされる。
従って,各リール3L,3C,3Rの回転位置と上記の駆動パルス数とが対応
することになり,CPU11が供給する駆動パルスの数で各リールの回転位置
を監視し,それらの停止位置を制御することができる 。 (3頁左上欄6行∼右

上欄2行)
ウ 「次に第2図を参照して,実施例の作用を説明する。
まず,CPU11は,検出回路13からの信号によりスタートスイッチ4がオ
ンしたか否かを判断し,“No”であれば以下の動作は実行しない(そのまま待
機している)が,“Yes”ならば『大ヒットフラグ』が立っているかどうかを
判断する。大ヒットフラグは,第3図に示す3つの表示窓2L,2C,2Rの
中に横3本と斜め2本の入賞ラインのいずれかに沿って7−7−7の図柄の組
合せを表示する場合に“1”となる(フラグが立つ)ものであり,この図柄の
組合せは,対応する乱数値(大ヒットの乱数値)がサンプリングされた時に3
個のリール3L,3C,3Rをそれぞれ所定位置に停止させることによって実
現される。この時は,所定のゲーム回数(例えば10ゲーム)の期間,回転リ
ールの停止制御を中止する。すなわち,遊技者がストップボタン5L,5C,
5Rを押したタイミングでリールの回転を停止させるようにする(実際には,
リール停止の処理に一定時間,例えば約30ミリ秒を要するため,遊技者がス
トップボタンを操作してから一定時間後に対応するリールが停止する)。
従って,上記の期間中は熟練者ほど自己の技術で回転リールの停止位置を決め
ることができ,コイン取得率を高めることができる。但し,大ヒットの乱数値
のサンプリングは確率で管理されているため,熟練者とそうでない者との間に
生ずる差は,全体としてはある範囲内に留り,極端な差とはならない 。 (3頁

右上欄3行∼左下欄12行)
エ 「再びフローチャートに従って説明すると,上記の『大ヒットフラグ』が立っ
ている場合には,ゲーム回数を数えるゲーム数カウンタを1加算し,上記の所
定ゲーム回数に達したか否かをチェックする。そして,所定ゲーム回数に達す
るまでは,各ゲーム毎にスタートスイッチ4がオンしてから一定時間(例えば
300ミリ秒)遅らせて各リールの回転を始める。この遅延は,大ヒットの乱
数値がサンプリングされたことを遊技者にそれとなく認識させるものであり,
所定回数のゲームについて行われる。…」(3頁右下欄5行∼15行)
オ 「上記のようにして3個のリール3L,3C,3Rを始動させた後,結合子①
で示すように,検出回路16からの信号によりストップボタン5L,5C,5
Rのいずれかがオンしたか否かを判断し,どれもオンしなければ以下の動作は
実行せず(そのまま待機し) いずれかがオンになった時,対応するリール3L,

3C,3Rを次のように停止させる。
まず,第1ストップボタン5Lがオンしたとき第1表示窓2Lの中央表示位置
から4コマ以内に特定のシンボル(例えばオレンジ)があれば,そのシンボル
が表示されるように第1リール3Lを停止させる。次に,第2ストップボタン
5Cがオンしたときは,やはり第2表示窓2Cの中央表示位置から4コマ以内
に第1表示窓2Lに表示されているシンボルと同じものがあれば,そのシンボ
ルが入賞ライン上に表示されるように第2リール3Cを停止させる。そして,
第3リール3Rの停止については制御せず,第3ストップボタン5Rがオンし
たタイミングで停止させる。すなわち,第1リールと第2リールについてはあ
る程度の停止制御を行い,第3リールについては全くフリーに(遊技者による
ストップボタン操作のタイミングで)停止させる。
このようにして全てのリール3L,3C,3Rが停止すると,当たりチェック
を行い,表示窓に現われたシンボルが大ヒットの組合せか否かを判断し ,“Ye
s”ならば後述のボーナスゲームの動作手順を実行する。大ヒットの組合せで
なければ,入賞かどうかを判断し,入賞でなければ,結合子②で示すように初
めの状態に戻り,入賞ならば所定枚数のコインを払い出す動作を実行し,フラ
グカウンタの値を1つ減算して初めの状態に戻る 。 (4頁左上欄3行∼右上欄

15行)
カ 「一方,上記の『大ヒットフラグ』が立っていない場合又は所定ゲーム回数に
達した場合には,通常のリール駆動及び停止制御を行う,すなわち,結合子③
で示すように3個のリール3L,3C,3Rを回転させ,乱数値をサンプリン
グして決定した乱数値を判定し,前述のフラグカウンタを1進める。その後,
検出回路16からの信号により各ストップボタン5L,5C,5Rがオンした
か否かを判断し,どのボタンもオンにならなければ以下の動作は実行せず(そ
のまま待機し),各ストップボタン5L,5C,5Rがオンになった時,上記の
判定した乱数値に応じたシンボルが各表示窓の中央表示位置から4コマ以内に
あれば,そのシンボルが表示されるように各リール3L,3C,3Rを停止さ
せる停止制御を行う。
このようにして全てのリール3L,3C,3Rが停止すると,結合子④で示す
ように前述の当たりチェックを行い,表示窓に現われたシンボルが大ヒットの
組合せか否かを判断し,“Yes”であればボーナスゲームの動作手順を実行す
る。(4頁左下欄1行∼20行)

キ 「ボーナスゲームは,例えば次のようなものである。通常のゲームでは,3つ
の表示窓に表示されるシンボルが所定の組合せにならなければ入賞とならない
のに対し,ボーナスゲームは,1つの表示窓でも特定のシンボルが表示された
ならば入賞として一定枚数のコインを払い出すものとする。これにより,遊技
者はより多くのコインを獲得できる。(4頁左下欄20行∼右下欄7行)

ク 「他方,大ヒットの組合せでなければ入賞かどうかを判断し,入賞でなければ
初めの状態に戻り,入賞ならば所定枚数のコインを払い出す動作を実行し,フ
ラグカウンタの値を1つ減算して初めの状態に戻る 。 (4頁右下欄8行∼12

行)
(2) 上記(1)によれば,甲1には,以下の内容が記載されているものと認めら
れる。
ア 3個のリールの回転及び停止をCPU11等を備えるマイクロコンピュ
ータで構成される制御装置により制御し((1)イ),CPU11は,各リー
ルの回転位置を監視し,それらの停止位置を制御することができ,通常の
リール駆動及び停止制御は,乱数値をサンプリングして決定した乱数値を
判定し,ストップボタンがオンになった時,判定した乱数値に応じたシン
ボルが各表示窓の中央表示位置から4コマ以内にあれば,そのシンボルが
表示されるように各リールを停止させる(( 1)カ)ものであるから,可変
表示手段の可変表示を遊技者の操作と乱数抽選の結果とに基づいて停止制
御するものといえる。
イ 「大ヒットフラグ」が成立した後,所定ゲーム回数に達するまでは,停
止制御を中止して遊技者のストップボタン操作のタイミングで停止させる
ようにし((1)ウ),全てのリールが停止したとき,表示窓に現われたシン
ボルが大ヒットの組合せである場合にはボーナスゲームの動作手順を実行
し,入賞の組み合わせである場合には所定枚数のコインを払い出す動作を
実行するものであり((1)オ,ク ),所定のゲーム回数に達した後は,通常
のリール駆動及び停止制御を行い,全てのリールが停止したとき,表示窓
に現れたシンボルが大ヒットの組合せである場合には,ボーナスゲームの
動作手順を実行する((1)カ)。
ボーナスゲームは通常のゲームの入賞条件を緩和し,より多くのコイン
を獲得することを可能とするものである((1)キ)。
ウ 「大ヒットフラグ」は ,「入賞ラインのいずれかに沿って『7−7−7
の図柄の組合せ』を表示する場合に”1”となる」ものであり,「7−7
−7の図柄の組合わせ」は,大ヒットの乱数値がサンプリングされた時に
3個のリールをそれぞれ所定位置に停止させることによって実現される
((1)ウ)ものであることからすれば,引用発明のスロットマシンの「大
ヒットフラグ」は,「大ヒットの乱数値がサンプリングされ」たとき,す
なわち,乱数抽選の結果 ,「大ヒット」に相当する乱数値が抽出されたと
きに立つものと解される。
そして,大ヒットフラグが立てば,所定ゲーム回数乱数抽選結果に基づ
く停止制御が中止され,操作者の操作タイミングで各リールが停止される
のであるから,操作者の操作タイミングにより「7−7−7の図柄の組合
せ」を表示することが可能となり,また,大ヒットフラグが立ってから所
定ゲーム回数に達した後は「乱数値をサンプリングして決定した乱数値を
判定し,…判定した乱数値に応じた…停止制御」である通常の停止制御を
行う((1)カ)ことになる。
そうすると,大ヒットフラグが立っている状態は,「サンプリングして
決定した乱数値が大ヒットであると判定された結果である」ことからすれ
ば,大ヒットに応じた停止制御,すなわち「7−7−7の図柄の組合せ」
の表示を可能とするものである。
エ 一方,「大ヒットフラグ」が立って所定回数のゲームが終了するまでの
間は,乱数値の抽選結果に基づくリールの停止制御を中止する(( 1)ウ)
と,その結果 ,その期間は乱数抽選により「入賞」と判定されたとしても ,
それに基づくリールの停止制御を中止するのであるから,所定の入賞役に
ついて乱数抽選に基づく停止制御を中止するものといえる。
オ 7−7−7の図柄の組合せが表示されて,ボーナスゲーム動作が終了す
ると,通常のゲーム状態に復帰する((1)オ,キ )。
(3) 以上の検討によれば,引用発明のスロットマシンは,
「7−7−7の絵柄
の組合せ」の表示を可能とする 大ヒットフラグ 」
「 が成立したことを契機に,
その後に「7−7−7の絵柄の組合せ」が表示されるまで,あるいは,「7
−7−7の絵柄の組合せ」が表示されず所定回数のゲームが終了するまでの
間,乱数抽選に基づくリールの停止制御を中止するものであって,所定回数
終了後には,大ヒットフラグが成立した状態で通常の停止制御が行われるも
のである。
すなわち,引用発明においては,大ヒットフラグが成立することにより,
乱数抽選結果に基づくリールの停止制御を中止する所定回数のゲームと,ボ
ーナスゲームとが必ずセットで開始されるものといえるから,大ヒットフラ
グが「1」となれば,「乱数値に基づく停止制御を中止する所定回数のゲー
ム」と「ボーナスゲーム」との組合せが開始されるものといえる。
そうすると,審決が,「引用発明では ,『特定遊技は,ボーナス遊技と所定
の入賞役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組
合せ遊技を含』むといえる 」(4頁下3行∼末行)と認定したことに誤りは
ない。
(4) 原告は,甲1の上記(1)ウ,オの記載によれば,引用発明は,「①入賞ラ
インのいずれかに沿って7−7−7の図柄の組合せを表示すると大ヒットフ
ラグが立つ。このとき,所定のゲーム回数の期間,回転リールの停止制御を
中止する。②そして全てのリールが停止すると当たりチェックを行い,表示
窓に現れたシンボルが大ヒットの組合せか否かを判断し ,”Yes”ならば
後述のボーナスゲームの動作手順を実行する」ものであるから,引用発明は
「予め定めたゲーム回数分,前記乱数値に応じた停止制御を中止」する遊技
を開始する条件と,ボーナスゲームを開始する条件とがそれぞれ別に設けら
れており,本願補正発明のように「可変表示の表示態様」が「特定の図柄の
組合せ」となった場合に,BB遊技とCT遊技との両方を開始させるもので
はないと主張する。
ア しかし,上記( 1)ウで摘記した「大ヒットフラグは,第3図に示す3つ
の表示窓2L,2C,2Rの中に横3本と斜め2本の入賞ラインのいずれ
かに沿って7−7−7の図柄の組合せを表示する場合に”1”となる(フ
ラグが立つ)ものであり,この図柄の組合せは,対応する乱数値(大ヒッ
トの乱数値)がサンプリングされた時に3個のリール3L,3G,3Rを
それぞれ所定位置に停止させることによって実現される。この時は,所定
のゲーム回数(例えば10ゲーム)の期間,回転リールの停止制御を中止
する」との記載によれば,「7−7−7の図柄の組合せ」は,「対応する乱
数値(大ヒットの乱数値 )」がサンプリングされた時に3個のリールをそ
れぞれ所定位置に停止させることによって実現されるのであるから,「7
−7−7の図柄の組合せ」とはすなわち「大ヒットの組合せ」であると解
される。
また上記( 1)アに「確率テーブルは,例えば乱数の範囲を1∼8192
とし,そのうち1∼30を大ヒット,31∼1500を入賞,1501∼
8192を外れに区分する。CPU11は,このような確率テーブルを参
照して乱数値がどの区分に属するかを判定する」と,また(1)エに「 大ヒ

ットフラグ』が立っている場合には,ゲーム回数を数えるゲーム数カウン
タを1加算し,上記の所定ゲーム回数に達したか否かをチェックする。そ
して,所定ゲーム回数に達するまでは,各ゲーム毎にスタートスイッチ4
がオンしてから一定時間(例えば300ミリ秒)遅らせて各リールの回転
を始める。この遅延は,大ヒットの乱数値がサンプリングされたことを遊
技者にそれとなく認識させるものであり,所定回数のゲームについて行わ
れる」とそれぞれ記載されていることからして,「大ヒットフラグが1」
となる,すなわち「大ヒットフラグ」が立つのは「大ヒットに対応する乱
数値がサンプリングされた」結果であることが明らかである。
イ そうすると,原告が指摘する(1)ウの「大ヒットフラグは,第3図に示
す3つの表示窓2L,2C,2Rの中に横3本と斜め2本の入賞ラインの
いずれかに沿って7−7−7の図柄の組合せを表示する場合に”1”とな
る(フラグが立つ)」との記載は,「大ヒット」に対応する乱数値がサンプ
リングされた結果,「7−7−7の図柄の組合せ」を入賞ラインのいずれ
かに沿って表示することが可能となる場合に,これを「大ヒットフラグが
”1”,すなわち大ヒットフラグが立つと解するのが相当であり,原告が

主張するように7−7−7の図柄の組合せがいずれかの入賞ラインに揃う
ことにより1となる(すなわち大ヒットフラグが立つ)ことを意味するも
のと解することはできない。
ウ そして引用発明のスロットマシンにおいては,大ヒットに対応する乱数
値がサンプリングされた結果,大ヒットフラグが「1」となれば ,「乱数
値に基づく停止制御の中止」と「7−7−7の図柄の組合せ」が入賞ライ
ンに揃うことにより開始されるボーナスゲームとの組合せが開始されるも
のといえることは,上記(3)で検討したとおりである。
(5) 以上のとおり,審決が引用発明について「予め定めたゲーム回数分,前
記乱数値に応じた停止制御を中止する」遊技は,「ボーナスゲームと組み合
わされているといえる」と認定し,引用発明は「ボーナス遊技と所定の入賞
役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技の組合せ遊技
を含む」といえると認定したことに誤りはない。
そうすると,審決の引用発明の認定に誤りはないから,原告主張の取消事
由1は理由がない。
3 取消事由2(周知技術とされた実願昭60−113698号〔実開昭62−
24891号〕のマイクロフィルム〔甲2〕認定の誤り)について
(1) 原告は,特定遊技が複数あるときに,特定遊技毎に特定条件となる特定
の図柄組合せを異ならせることは,周知技術でもなく,甲2にも記載されて
いないにもかかわらず,審決は甲2の記載に基づいて特定遊技が複数あると
きに,特定遊技毎に特定条件となる特定の図柄組合せを異ならせることが周
知技術であると誤って認定し,結果として相違点2の判断も誤りであり,こ
の誤りは審決の結論に影響を及ぼすと主張するので,以下検討する。
ア 甲2(実願昭60−113698号〔実開昭62−24891号〕のマ
イクロフィルム,考案の名称「スロットマシン」,出願人 株式会社ユニバ
ーサル,公開日 昭和62年2月16日)の明細書の〔従来の技術〕の欄
(3頁6行∼5頁15行)には,以下の記載がある。
(ア) 「スロットマシンは,外周に複数種のシンボルが配列された例えば3個
のリールを有している。遊技者はメダルを投入した後,スタートレバーなど
の操作によって,これらのリールを一斉に回転させる。そして,ストップボ
タンの操作,あるいはオートストップ機構などによりこれらのリールが全て
停止したときに,入賞ライン上に位置している各々のリールのシンボルの組
み合わせによって入賞が決定される。そして,入賞に該当しているときには,
その入賞の種類に応じた枚数のメダルが払い出される。(3頁6行∼16行)

(イ) 「最近のスロットマシンではそのゲーム性を高めるために,上述した通
常ゲームの他に,特典ゲームとして例えばボーナスゲームができるようにな
っているものがある。ボーナスゲームは,通常ゲームを行った結果,例えば
シンボルの組み合わせとして『BAR−BAR−BAR 』,あるいは ,『Wa
ter Melon−Water Melon−Water Melon』
になったときに,実行されるようになっている。このボーナスゲームが開始
されたときには,メダルを一個ずつ投入しながら,3個のリールを一個ずつ
停止させ,リール一個についてボーナス入賞の有無が決定される。そして,
入賞ライン上で停止したシンボルが ,『JAC』マーク付きのものであればボ
ーナス入賞となり,規定枚数のメダルが払い出される 。 (3頁17行∼4頁

11行)
(ウ) 「また,こうしたボーナスゲームが可能となる条件を緩和するために,
ビッグチャンスゲームを付加したスロットマシンも提案されている。ビッグ
チャンスゲームは,通常ゲームの結果,シンボルの組み合わせが例えば『7
−7−7』となったときに開始され,30回を限度として行われる。ビッグ
チャンスゲームが開始されたときには,ボーナスゲームが可能となる前述の
シンボルの組み合わせの他に,『JAC』マークの中でも,特に赤ラインが付
加された『赤JAC』マークのシンボルが入賞ライン上に配置された場合に,
ボーナスゲームが可能となる。(4頁12行∼5頁3行)

(エ) 「上述したボーナスゲームは,通常ゲームに較べてペイアウト率(投入
メダル枚数に対する払い出しメダル枚数の比率)がかなり高く,その回数は
一定回数,例えば12回に制限されている。しかもこの12回のボーナスゲ
ームの間に,ボーナス入賞が例えば6回に達した時点でも終了するようにな
っている。また,ビッグチャンスゲームにしても,これが30回繰り返され
る間にボーナスゲームの出る確率は非常に高いので,ビッグチャンスゲーム
期間中に,3回のボーナスゲームが行われたときにはビッグチャンスゲーム
も終了するようになっている。(5頁4∼15行)

イ 上記アの記載によれば,甲2の前提となる従来技術として,シンボルの
組合せとして「BAR−BAR−BAR」,あるいは,「Water Me
lon−Water Melon−Water Melon」になったと
きに,「ボーナスゲーム」が実行され(ア(イ)),シンボルの組合せが「7
−7−7」になったときに ビッグチャンスゲーム」
「 が開始される ア(ウ))

スロットマシンが示されている。
そして ,「ボーナスゲーム」は,メダルを一個ずつ投入しながら,3個
のリールを一個ずつ停止させ,リール一個ずつ入賞ライン上で停止したシ
ンボルが,「JAC」マーク付きのものであればボーナス入賞となり,規
定枚数のメダルが払い出されるゲームであり(ア(イ)),その回数は12
回に制限され,その間にボーナス入賞が6回に達した時点で終了するもの
であり,通常ゲームに較べてペイアウト率(投入メダル枚数に対する払い
出しメダル枚数の比率)がかなり高いもの(ア(エ))であるから,通常ゲ
ームとは異なる特定遊技であるといえる。
また,「ビッグチャンスゲーム」は,「30回のゲームの間に」「ボーナ
スゲームの出る確率を高く」して「3回のボーナスゲーム」が出れば終了
するものであるから,所定の期間の間行われるゲームであってボーナスゲ
ームと較べても条件が緩和されペイアウト率がより高い(ア(ウ),(エ))
ものであるから,通常ゲームとは異なる特定遊技であるといえる。
ウ そうすると甲2の従来技術には ,「ボーナスゲーム」と「ビッグチャン
スゲーム」という2つの特定遊技を備え,それぞれの特定遊技を異なる種
類の特定の図柄の組合せで開始するようにしたものが記載されている。
(2) この点に関し原告は,甲2の「ビッグチャンスゲーム」は,ボーナスゲ
ームが可能となる条件を緩和するために,通常ゲームとは別に設けているに
すぎないものであると主張する。
確かに甲2には「こうしたボーナスゲームが可能となる条件を緩和するた
めに,ビッグチャンスゲームを付加したスロットマシンも提案されている。」
(上記(1)ア(ウ))と記載されている。
しかし,特定遊技は通常遊技に比して遊技者に有利な遊技をいうところ 本

願明細書〔甲3〕段落【0015】参照 ),上記「ビッグチャンスゲーム」
は,所定期間行われるゲームであって,ボーナスゲームよりも高いペイアウ
ト率の期間となるゲームであるから通常ゲームとは異なる特定遊技といえる
ものである。
(3) 以上の検討によれば,審決が甲2の従来技術に関する記載に基づいて,特

定遊技が複数あるときには,特定遊技毎に特定条件となる特定の図柄組合せ
を異ならせることは,周知技術である」(6頁末行∼7頁2行)と認定した
ことには誤りはないというべきである。
(4) さらに原告は,引用発明には,そもそも「組合せ遊技」に対応する構成
がない以上,その「組合せ遊技」に含まれるボーナス遊技として「所定期間
入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態となるBB遊技」を用いることが
当業者によって容易想到とすることはできず,引用発明の特定遊技に単独の
BB遊技を含めて特定遊技を複数にするという仮定に誤りがあるとも主張す
るが,引用例(甲1)には「組合せ遊技」に対応する構成が記載されている
といえることは上記2で検討したとおりであって,原告の主張は前提を欠き,
採用することができない。
(5) 以上のとおりであるから,審決の周知技術3の認定には誤りはなく,甲
2の認定に誤りがあることを前提として審決の相違点2の判断の誤りを主張
する原告の取消事由2は理由がないというべきである。
4 取消事由3(作用効果の判断の誤り)について
(1) 原告は,引用発明に甲2の従来技術を採用しても,審決の相違点1及び
2の構成を欠くものとなり,当該構成の相違により,本願補正発明は格別な
効果を奏するものであるから,審決が本願補正発明の作用効果も,引用発明
及び周知技術1∼3から,当業者が予測できる範囲のものであると認定した
ことは誤りであると主張する。
(2) しかし,原告の主張する本願補正発明の作用効果は,①BB遊技とCT
遊技との組合せ遊技は,BB遊技を開始させる図柄組合せとは異なる特定の
図柄組合せとなった場合に開始するので,可変表示の表示態様により,いず
れの種類の特定遊技が開始するのかが明確かつ容易に判明できる(作用効果
1),②BB遊技と,BB遊技とCT遊技との組合せ遊技とを設けたことに
より,CT遊技分だけ,すなわち遊技者の技量分メダルの払い出しが異なる
2種類の特定遊技を提供できる(作用効果2 ),③BB遊技を開始させる図
柄組合せ,又はBB遊技とCT遊技との組合せ遊技を開始させる図柄組合せ
のどちらを先に目押しするか(揃えるように試みるか)を,遊技者自身が決
定することができるので,遊技者の意思が遊技結果に反映し,遊技者の遊技
介入性が高まり,遊技の興趣が増大する場合がある(作用効果3),とする
ものである。
そうすると,原告の主張する上記①∼③の格別の作用効果は,いずれも本
願補正発明が「BB遊技と,BB遊技とCT遊技の組合せ遊技」を備え, そ

れぞれの遊技を異なる図柄の組合せにより開始させる」ことにより奏すると
するものである。
この点に関し,引用発明も「ボーナス遊技と所定の入賞役について前記乱
数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技の組合せ遊技を含む」ものであ
り(上記2〔取消事由1についての判断〕,また特定遊技が複数あるときに

は,特定遊技毎に特定条件となる特定の図柄組合せを異ならせることは,周
知技術であると認められる(上記3〔取消事由2についての判断〕)とおり
であるから,これらがいずれも本願補正発明における格別の構成であるとす
る原告の主張は前提を欠くというべきである。
加えて,審決の引用発明〔甲1〕の認定,これに基づく相違点1,2につ
いての判断において原告が主張する誤りがないことは,上記2,3で検討し
たとおりであるから,本願補正発明についての独立特許要件についての判断 ,
本件補正を却下した判断及び本願発明についての独立特許要件についての判
断のいずれにも原告主張の誤りはないというべきである。
5 取消事由4(審判手続の法令違反)について
(1) 原告は,審決が,甲2に基づき「ボーナス遊技の一種として,所定期間
入賞の図柄組合せが成立しやすい遊技状態となるBB遊技」を周知技術1と
して(6頁5行∼7行)「スロットマシンの技術分野においては,特別遊技

を開始させる特定条件を,遊技者の操作と乱数抽選の結果とに基づいて停止
制御された可変表示の表示態様が特定の図柄組合せとなった場合とするこ
と」を周知技術2として(6頁23行∼26行)「特定遊技が複数あるとき

には,特定遊技毎に特定条件となる特定の図柄組合せを異ならせること」を
周知技術3として(6頁末行∼7頁2行 ),それぞれ認定し,これにより,
相違点2に係る本願補正発明の構成を引用発明に採用することは当業者が容
易に想到し得るものであると判断し,本願発明についても同様の理由で当業
者が容易に発明をすることができたものであるとしたところ,拒絶理由通知
や拒絶査定においては,甲2及びそのような周知技術の内容については何ら
言及されていないから,改正前特許法159条2項で準用する同法50条の
規定に反する違法があると主張する。
(2)ア 拒絶理由通知書(平成15年11月27日付け,甲4)によれば,特
許庁審査官は,拒絶理由の〈1〉として本件出願にかかる発明(第1次補
正前のもの。請求項1∼4)が引用文献1(甲1)に基づき当業者が容易
に発明をすることができたものであって特許法29条2項の規定により特
許を受けることができないとし,請求項1についての備考欄には「BB遊
技は周知であり,組み合わせることは容易である」と記載し,請求項2−
4の備考欄には「遊技状況を遊技者に報知することは従来より行われてい
ること(例えば文献4〔判決注:本訴甲11 〕)で,必要に応じて適宜な
し得ることである」と記載した。
なお,原告はその後提出した意見書 平成16年1月28日付け,
( 甲5)
において,
「確かに,BB遊技は周知の技術です 。」として,BB遊技が周
知であることを認めている(3頁29行∼30行)。
イ 一方,拒絶査定(平成16年3月9日付け,甲7)では,本件出願にか
かる発明 第1次補正後のもの。
( 請求項1∼4)につき拒絶理由通知書 甲

4)の拒絶理由1,2により拒絶すべきものであるとし,備考として「遊
技状態としてどのようなものを設けるか(BB,CTなど ),そしてどの
ように各ゲームに移行するのかは,『ゲームのルール』である。ゲームの
ルールは適宜決定すればよいことであって,技術的進歩性とは無関係であ
る。そして,本願請求項の効果も遊技上の効果でしかない。」とした。
ウ 上記ア,イによれば,拒絶査定において,特許庁審査官は本件出願に係
る発明と引用発明との間の「遊技状態(BB,CT)」及び「各ゲームに
移行する条件」に係る相違点については,いずれも当業者において適宜決
定し得ることであると判断したものと認められる。
エ そうすると,上記拒絶査定における①「遊技状態としてどのようなもの
を設けるか(BB,CTなど) については,審決の認定した相違点1(本

願補正発明では ,「前記特定遊技は,所定期間入賞の図柄組合せが成立し
やすい遊技状態となるBB遊技,及び該BB遊技と所定の入賞役について
前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ遊技を含」
むのに対し,引用発明では,前記特定遊技は,ボーナス遊技と所定の入賞
役について前記乱数抽選に基づく停止制御を中止するCT遊技との組合せ
遊技を含むものの,組合せ遊技に含まれるボーナス遊技が,所定期間入賞
の図柄組合せが成立しやすい遊技状態となるBB遊技であるとはいえず,
また,特定遊技に単独のBB遊技〈CT遊技との組合せ遊技でないもの〉
を含まない点)に係るものであり,また同じく②「各ゲームに移行する条
件」とは,審決の認定した相違点2(本願補正発明では,「前記制御手段
は,遊技者の操作と前記乱数抽選の結果とに基づいて停止制御された前記
可変表示の表示態様が前記BB遊技を開始させる図柄組合せとは異なる特
定の図柄組合せとなった場合に,前記BB遊技と前記CT遊技との組合せ
遊技を開始させる」のに対し,引用発明では,組合せ遊技を開始させる特
定条件が,大ヒットフラグが立っていることである点)に係るものであり,
審決は,この相違点1,2につき,甲2に記載された周知技術に基づいて
容易に想到し得ると判断したものである。
上記の検討によれば,拒絶査定において示された理由と審決が示した理
由とでは実質的に異なる点はないというべきである。
(3) 加えて,審決が認定した周知技術は上記1∼3であるところ,このうち
周知技術1は「ボーナス遊技の一種として,所定期間入賞の図柄組合せが成
立しやすい遊技状態となるBB遊技」であるところ,原告も上記(2)アのと
おり意見書においてBB遊技が周知であることを認めている。
また周知技術2は「スロットマシンの技術分野においては,特別遊技を開
始させる特定条件を,遊技者の操作と乱数抽選の結果とに基づいて停止制御
された可変表示の表示態様が特定の図柄組合せとなった場合とすること」と
の内容であるところ,上記2,3で検討した引用発明の内容及び本願出願当
時の技術水準に照らせば,この周知技術を認定するにつき拒絶理由において
通知する必要がある場合に該当するとは認められない。
そして周知技術3の認定が相当であることは既に上記3(取消事由2につ
いての判断)で検討したとおりである。
(4) 以上の検討によれば,本件審判手続に改正前特許法159条2項で準用
する同法50条の規定の違反は認められず,原告主張の取消事由4は理由が
ない。
6 結語
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第2部
裁判長裁判官 中 野 哲 弘
裁判官 今 井 弘 晃
裁判官 清 水 知 恵 子

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