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平成19(ワ)1411意匠権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所
裁判年月日 平成20年9月11日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社協進設計
原告株式会社岳将
法令 実用新案権
実用新案法37条1項2号1回
意匠法1条1回
実用新案法3条2項1回
実用新案法29条2項1回
キーワード 意匠権19回
侵害15回
実用新案権15回
新規性9回
無効8回
実施8回
進歩性4回
無効審判3回
損害賠償2回
差止1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 前提事実(当事者間に争いがない。) (1) 当事者 原告は,超音波精密加工機等の設計,製造販売等を業とする株式会社であ る。 被告は,各種製造ライン装置などの設計,製造販売等を業とする株式会社 である。

▶ 実用新案権に関する裁判例

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判決文

平成20年9月11日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成19年(ワ)第1411号 意匠権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成20年5月30日

判 決

原 告 株 式 会 社 岳 将

同訴訟代理人弁護士 高 橋 浩 文

同補佐人弁理士 加 藤 久

被 告 株式会社 協 進 設 計

同訴訟代理人弁護士 山 田 基 司

同訴訟代理人弁理士 八 木 秀 人

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及び 理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

(1) 被告は,原告に対し,4360万円及びこれに対する平成19年3月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2) 訴訟費用は被告の負担とする。2 被告主文と同旨

第2 事案の概要

1 前提事実(当事者間に争いがない。)

(1) 当事者原告は,超音波精密加工機等の設計,製造販売等を業とする株式会社である。被告は,各種製造ライン装置などの設計,製造販売等を業とする株式会社である。

(2) 原告の実用新案権原告は,次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,その実用新案登録請求の範囲の考案を「本件考案」という。また,本判決末尾添付の本件考案に係る実用新案登録公報の明細書を「本件明細書」という。)を有している。ア 実用新案登録番号 第2506321号イ 考案の名称 超音波スピンドルウ 出願日 平成1年12月21日エ 登録日 平成8年5月16日オ 存続期間満了日 平成16年12月21日カ 実用新案登録請求の範囲【請求項1】「中空のスピンドルの先端に加工工具を取付け,同スピンドルを回転させて先端に取付けた加工工具によってワークを加工する加工機のスピンドルに於いて,スピンドル内部にスピンドルの軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッドを取付け,円柱状のホーン本体の中間の外周に環状鍔部を突設し,同鍔部の先端にホーン本体と同じ軸心の円筒体を連設し,同円筒体の先端に半径方向に張り出した取付部を設け,しかも円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄くし,ホーン本体と鍔部と円筒体と取付部分とを金属材で一体成形したカップリングホーンをスピンドル内に配置し,同カップリングホーンのホーン本体を前記超音波ヘッドの超音波振動出力部と連結し,又カップリングホーンの円筒体の先端の取付部をスピンドルに動かないように固定し,カップリングホーンのホーン本体の先端に加工工具取付部を設けたことを特徴とする超音波スピンドル。」

(3) 構成要件の分説本件考案を構成要件に分説すると,次のとおりである。A 中空のスピンドルの先端に加工工具を取付け,同スピンドルを回転させて先端に取付けた加工工具によってワークを加工する加工機のスピンドルに於いて,B スピンドル内部にスピンドルの軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッドを取付け,C 円柱状のホーン本体の中間の外周に環状鍔部を突設し,D 同鍔部の先端にホーン本体と同じ軸心の円筒体を連設し,E 同円筒体の先端に半径方向に張り出した取付部を設け,F しかも円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄くし,ホーン本体と鍔部と円筒体と取付部分とを金属材で一体成形したカップリングホーンをスピンドル内に配置し,G 同カップリングホーンのホーン本体を前記超音波ヘッドの超音波振動出力部と連結し,又カップリングホーンの円筒体の先端の取付部をスピンドルに動かないように固定し,H カップリングホーンのホーン本体の先端に加工工具取付部を設けたことを特徴とするI 超音波スピンドル。

(4) 原告の意匠権原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。ア 登録番号 第0846504号イ 出願日 平成1年12月13日ウ 登録日 平成4年5月29日エ 意匠に係る物品 カツプリングホーンオ 本件登録意匠 別紙本件意匠広報(以下「本件意匠広報」という。)のとおり

(5) 本件登録意匠の基本的構成態様本件登録意匠の基本的構成態様は,次のとおりである。A 円柱状のホーン本体と,B ホーン本体のほぼ中間外周に突設された支持部とからなる。C 支持部は,ホーン本体から径方向に突設された環状鍔部と,一端を環状鍔部に固定されたホーン本体と同じ軸心の円筒体と,同円筒体の先端部から径方向に張り出したリング状取付部とからなる。

(6) 本件登録意匠の具体的構成態様本件登録意匠の具体的構成態様は,次のとおりである。A ホーン本体の長さと直径の比は0.46である。B 支持部とホーン本体の長さの比は0.38で,正面図右側にはホーン本体のほぼ1/2が左側には3/20が露出している。C 鍔部の径方向の高さとホーン本体の直径の比は0.20である。D 円筒体の長さとホーン本体の長さの比は0.22で,円筒体の径とホーン本体の比は1.40である。E 円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び取付部の肉厚よりも薄くしている。F リング状取付部の長さとホーン本体の長さの比は0.07で,リング状取付部の外径とホーン本体の外径の比は2.04である。G ホーン本体の前後端中央部にそれぞれ雌ねじが形成されている。

(7) 被告の行為被告は,業として,別紙イ号物件目録添付別紙図1の超音波スピンドル(以下「被告製品」という。)を製造販売していた(ただし,被告製品の構成については一部争いがある。)。被告製品には,同目録添付別紙図2ないし図5のUSホーン(以下「被告ホーン」といい,その意匠を「被告意匠」という。)と呼ばれる部品が組み込まれている。原告の請求原告は,被告製品を販売する被告の行為が,本件実用新案権及び本件意匠権を侵害するなどと主張して,被告に対し,本件実用新案権に関する不法行為に基づく損害賠償請求権(平成8年5月16日から平成16年2月9日まで)及び不当利得返還請求権(平成16年2月10日から平成16年12月21日まで)による合計1800万円,本件意匠権侵害に関する不法行為に基づく損害賠償請求権(平成16年12月22日から本訴提起まで)による2160万円,弁護士費用400万円,並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成19年3月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めている。争点

(1) 本件実用新案権の侵害についてア 被告製品は本件考案の構成要件を充足するか(構成要件B,C,Eの充足性)(争点1)イ 本件実用新案権は実用新案無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)(ア) 本件考案に係る新規性の欠如本件考案は平成11年法律第41号による改正前の実用新案法(以下「旧実用新案法」という。)3条1項の規定に違反して登録されたものであるか(争点2−1)(イ) 本件考案に係る進歩性の欠如本件考案は旧実用新案法3条2項の規定に違反して登録されたものであるか(争点2−2)

(2) 本件意匠権の侵害についてア 被告意匠は本件登録意匠と類似するか(争点3)イ 被告製品において本件登録意匠の利用関係が認められるか(争点4)ウ 本件意匠権は登録無効審判により無効とされるべきものであるか(争点5)(ア) 本件登録意匠に係る新規性の欠如本件登録意匠は平成11年法律第41号による改正前の意匠法3条1項の規定に違反して登録されたものであるか(争点5−1)(イ) 本件登録意匠に係る容易創作性本件登録意匠は平成10年法律第51号による改正前の意匠法3条2項の規定に違反して登録されたものであるか(争点5−2)

(3) 原告の損害及び損失額(争点6)

第3 争点に係る当事者の主張

1 争点1(被告製品は本件考案の構成要件を充足するか)について

【

(原告の主張)

】

(1) 被告製品の形状は,別紙イ号物件目録添付別紙図1のとおりであるところ,

その構成は以下のとおりである。a 中空のスピンドル(1)の先端に加工工具を取付け,同スピンドル(1)を回転させて先端に取付けた加工工具によってワークを加工する加工機のスピンドルに於いて,b スピンドル内部にスピンドル(1)の軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッド(2)を取付け,c 円柱状のホーン本体(4a)の中間の外周に環状鍔部(6a)を突設し,d 同鍔部(6a)の先端にホーン本体(4a)と同じ軸心の円筒体(6b)を連設し,e 同円筒体(6b)の先端に半径方向に張り出した取付部(3)を設け,f しかも円筒体(6b)の肉厚を鍔部(6a)の肉厚及び円筒体(6b)先端の取付部分の肉厚より薄くし,ホーン本体(4a)と鍔部(6a)と円筒体(6b)と取付部分とを金属材で一体成形したカップリングホーン(4)をスピンドル(1)内に配置し,g 同カップリングホーン(4)のホーン本体(4a)を前記超音波ヘッド(2)の超音波振動出力部(2b)と連結し,又カップリングホーン(4)の円筒体(6b)の先端の取付部(3)をスピンドル(1)に動かないように固定し,h カップリングホーン(4)のホーン本体(4a)の先端に加工工具取付部(4b,4c)を設けたことを特徴とするi 超音波スピンドル。

(2) 被告製品は,上記構成のとおりであり,本件考案の構成要件をすべて充足

する。【

(被告の主張)

】

(1) 被告製品が前記構成a,同d,同fないし同iの構成を有することは認め,

その余は否認する。

(2) 被告製品は,次の構成を有している。

b' スピンドル内部にスピンドルの軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッドが設けられ,c' 円柱状のホーン本体の中間の外周に軸方向の振動成分を吸収する環状鍔部を突設し,e' 同円筒体の先端に半径方向に張り出した軸方向の振動成分を吸収する取付部を設け,

(3) 被告製品の本件考案の構成要件充足性

ア 構成b'について本件考案の構成要件Bは,「スピンドル内部にスピンドルの軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッドを取付け」るとされている。ここで,「取付け」とは,カップリングホーンの鍔部・円筒体・取付部とは別に,超音波ヘッドをスピンドルに接続することを意味するものと解される。これに対し,被告製品では,超音波ヘッドはスピンドルに「取付け」られていない。すなわち,被告製品においては,超音波ヘッドはカップリングホーンに接続され,そのカップリングホーンがフランジによりスピンドルに固定されている。したがって,被告製品は,構成要件Bを充足しない。イ 作用・効果について原告は,本件考案は鍔部及び取付部が軸方向の振動を全く吸収しないことを特徴とする装置であると主張するが,被告製品では,軸方向の振動をフランジ部において吸収している。よって,被告製品は,本件考案の作用・効果を有しないものであり,本件考案の技術的範囲には含まれない。【原告の反論】(軸方向の振動の吸収について)被告製品は,原告が製造販売する超音波スピンドル(以下,「原告製品」という。)と互換性があり(原告製品の交換用として使用され),かつ,鍔部はホーン本体の中間部に設けられて,さらに鍔部は振動のノードに位置するから,軸方向の振動成分を吸収することはあり得ない。すなわち,ノード位置は,超音波振動によっても軸方向の伸び縮みがない節の部分であって,このノード位置に鍔部が設けられておれば,軸方向の伸び縮みがなく,軸方向の振動成分自体が存在しないのであるから,軸方向の振動成分を吸収することなどあり得ない。仮に,被告が主張するように,鍔部,取付部が軸方向の振動成分を吸収するというのであれば,短時間の使用によって熱が発生したり,ブレが生じ,実質的に機能しないことになる。争点2−1(本件考案に係る新規性の欠如)について【

(被告の主張)

】

(1) 引用例3

ア 引用例3の構成本件考案の出願前に公開された公開特許公報(特開昭63−200953号公報。乙3:以下,乙3を「引用文献3」といい,これに記載された考案を「引用例3」という。)には,以下の構成が記載されている(被告は,本件考案の出願前の学会講演資料である乙1に記載された考案を「引用例1」として引用するが,その内容は,引用例3と同じである。)。(ア) 「この超音波加工用アタッチメントAは,主軸2に対し着脱可能な回転筒3と,これに内蔵される直接加振型振動子ユニット4と,これの出力ブロック先端に着脱可能に取付けられる工具5と回転筒3を外囲し,内部に直接加振型振動子ユニット4に対する給電機構7を配したケーシング6とを備え,直接加振型振動子ユニット4は特殊な支持体8と補強体9により前記回転筒3に支持されている。」(2頁左下欄4行目∼12行目)(イ) 「直接加振型振動子ユニット4は,側面徳利状をなす出力ブロック19と,背面ブロック20と,それらの間に介装される圧電素子21,22とを備え,中心ボルト23によりそれぞれ同心状に強固に固定されることでユニットとなっており」(2頁右下欄5行目∼9行目)(ウ) 「支持体8は,工具5のスラスト方向の荷重を受け止めるためのもので,出力ブロック19の入力側すなわち軸線方向後半部域に設けられる。支持体8は,具体的には第1a図のように,リフレクタリング(厚肉円筒体)80及びこれより薄肉化されることで非共振となったバッファ81からなり,バッファ81は,径方向振動成分を吸収する同心状スリーブ81aと,軸方向の振動成分を吸収するフランジ81b,81cを有し,フランジ81bをもって出力ブロック19に結合されている。」(2頁右下欄14行目∼3頁左上欄4行目)(エ) 「前記支持体8は出力ブロック19に一体に削り出されるか,あるいは溶接等により形成される。」(3頁左上欄5行目∼7行目)(オ) 「工具5の軸方向振動」(3頁左上欄最終行)(カ) 「非共振のバッファ81,91を備え,バッファ81,91の撓みにより軸方向振動を吸収し」(4頁左上欄最終行∼右上欄1行目)(キ) 「振動ユニットがリフレクタリング80,90とバッファ81,91により回転筒3に完全に固定されるため回転精度も高くすることができる」(4頁右上欄17行目∼最終行)(ク) 「バッファ81,91が振動を吸収し許容振幅を大きく取れるため,工具質量が変化しても支持部の損失が少なく,発熱による工具の伸びが小さい。」(4頁左下欄4行目∼7行目)イ 本件考案の構成要件と引用例3との対比(ア) 構成要件Aについて前記ア(ア)における「回転筒3」は,本件考案の「中空のスピンドル」に対応する。また,前記ア(ア)の「工具5」は,本件考案の「加工工具」に対応する。したがって,前記ア(ア)には,「中空のスピンドルの先端に加工工具を取付け,同スピンドルを回転させて先端に取付けた加工工具によってワークを加工する加工機のスピンドル」という構成(構成要件A)が記載されている。(イ) 構成要件Bについて前記ア(イ)における「圧電素子21,22」は,本件考案の「超音波ヘッド」に対応する。また,前記ア(ア)には,前記圧電素子を含む振動子ユニット4が,回転筒3の内部にあることが記載されている。さらに,前記ア(オ)には,工具に伝わる振動方向が軸方向であることが記載されている。したがって,前記ア(ア),同(イ)及び同(オ)には,「スピンドル内部にスピンドルの軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッドを取付け」という構成(構成要件B)が記載されている。(ウ) 構成要件Cについて前記ア(イ)に記載の「出力ブロック19」は,圧電素子21,22と工具5とをつなぎ,圧電素子において発生した振動を工具に伝達する機能を有する。また,「出力ブロック19」は,圧電素子21,22とは別部材で形成され,「中心ボルト23により同心状に強固に固定されることでユニットとなって」いる。よって,「出力ブロック19」は,本件考案における「ホーン本体」に対応する。また,前記ア(ウ)及び引用例3第1a図(以下「第1a図」という。)記載のバッファ81のうち「フランジ81b」が,本件考案の「環状鍔部」に対応する。したがって,前記ア(イ)及び同(ウ)には,「円柱状のホーン本体の中間の外周に環状鍔部を突設し」という構成(構成要件C)が記載されている。(エ) 構成要件Dについて前記ア(ウ)及び第1a図記載の「同心状スリーブ81a」は,フランジ81b(環状鍔部)の先端に連設され,出力ブロック19(ホーン本体)と同心状であり,本件考案における「円筒体」に対応する。したがって,前記ア(ウ)及び第1a図には,「同鍔部の先端にホーン本体と同じ軸心の円筒体を連設し」という構成(構成要件D)が記載されている。(オ) 構成要件Eについて前記ア(ウ)及び第1a図記載の「フランジ81c」は,同心状スリーブ81a(円筒体)の先端に半径方向に張り出して連設されており,本件考案の「取付部」に対応する。したがって,前記ア(ウ)及び第1a図には,「同円筒体の先端に半径方向に張り出した取付部を設け」という構成(構成要件E)が記載されている。(カ) 構成要件Fについて

第1a図には,同心状スリーブ81a(円筒体)の肉厚を,フランジ

81b(環状鍔部)及びフランジ81c(取付部)の肉厚よりも薄くした構成が記載されている。また,前記ア(エ)には,フランジ81c,同心状スリーブ81a及びフランジ81bを含む支持体8が,「出力ブロック19に一体に削り出される」構成が記載されている。したがって,第1a図及び前記ア(エ)には「円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄くし,ホーン本体と鍔部と円筒体と取付部分とを金属材で一体成形したカップリングホーンをスピンドル内に配置し」という構成(構成要件F)が記載されている。(キ) 構成要件Gについて前記ア(イ)及び第1a図には,出力ブロック19(ホーン本体)を,圧電素子21,22(超音波ヘッド)と連結することが記載されている。また,前記ア(ア),同(ウ),及び第1a図には,同心状スリーブ81a(円筒体)の先端のフランジ81c(取付部)を,リフレクタリング80を介して回転筒3(スピンドル)に固定することが記載されている。したがって,前記(ア),同(イ),同(ウ)及び第1a図には,「同カップリングホーンのホーン本体を前記超音波ヘッドの超音波振動出力部と連結し,又カップリングホーンの円筒体の先端の取付部をスピンドルに動かないように固定し」という構成(構成要件G)が記載されている。(ク) 構成要件Hについて前記ア(ア)には,「出力ブロック先端に着脱可能に取り付けられる工具5」の記載がある。したがって,前記ア(ア)には,「カップリングホーンのホーン本体の先端に加工工具取付部を設けたことを特徴とする」という構成(構成要件H)が記載されている。(ケ) 構成要件Iについて引用例3は,前記ア(ア)記載のとおり,「超音波加工用アタッチメント」に関する発明であり,超音波スピンドル(構成要件I)が記載されている。(コ) 作用効果が同一であることについて引用例3の前記ア(カ)ないし(ク)に記載された作用効果は,本件明細書における(考案が解決しようとする課題),(作用),(考案の効果)に記載された作用効果と同一である。

(2) 引用例2

本件考案の出願前に上程された論文(乙2)には,以下の構成が記載されている(以下,乙2を「引用文献2」といい,これに記載された考案を「引用例2」という。)。ア 引用文献2の第2・2・5図は,タイトルが「回転型振動系の構造」とされた図であり,中空のスピンドルに該当する「冷却筒」(9)及びホーンに取り付けられた「工具」(7)が記載されている。したがって,引用例2には,構成要件Aが記載されている。イ 引用文献2の第2・2・5図及び第2・4・2図には,ホーンに接続された「碰歪振動子」(1)が記載されている。したがって,引用例2には,構成要件Bが記載されている。ウ 引用文献2の第2・2・5図及び第2・4・2図には「支持フランジ」

(8)を有するホーンが記載されている。支持フランジ(8)は,これら図か

ら明らかなように,ホーン本体の外周に突設された鍔部を含んでいる。なお,支持フランジ(8)が取り付けられているのは円柱状の「ねじ」(4)であるが,当該「ねじ」は,「第1ホーン」(3)と「第2ホーン」(6)の間にあってこれらをつなぐものであり,実質的には本件考案のホーン本体と同様である。したがって,引用例2には,構成要件Cが記載されている。エ 引用文献2の第2・2・5図及び第2・4・2図記載の支持フランジ

(8)は,これら図から明らかなように,ホーン本体の外周に突設された鍔

部と,その先端に連接されたホーン本体と同じ軸心の円筒体を有する。したがって,引用例2には,構成要件Dが記載されている。オ 引用文献2の第2・2・5図及び第2・4・2図記載の支持フランジ

(8)は,これら図から明らかなように,半径方向に張り出した取付部を有

している。支持フランジ(8)の当該取付部は,冷却筒(9)と「ねじ結合」

(18)される。

したがって,引用例2には,構成要件Eが記載されている。カ 引用文献2記載の支持フランジ(8)においては,円筒体の肉厚は,鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄く構成されている(第2・4・2図)。また,支持フランジ(鍔部と円筒体と取付部分)については,明らかに一体成形である。したがって,引用例2には,構成要件Fが記載されている。キ 引用文献2の第2・2・5図及び第2・4・2図においては,第1ホーン(3)は,「碰歪振動子」(1)と連結され,かつ,支持フランジ(8)の当該取付部は,冷却筒(9)と「ねじ結合」(18)されている。したがって,引用例2には,構成要件Gが記載されている。ク 引用文献2の第2・2・5図及び第2・4・2図には,第2ホーン(ねじを介して第1ホーンと連結されている)に工具(7)が取り付けられている。したがって,引用例2には,構成要件Hが記載されている。ケ 引用文献2の第2・2・5図は,タイトルが「回転型振動系の構造」とされた図であり,すなわち,構成要件I(超音波スピンドル)が記載されている。

(3) 以上より,引用例2,3には,本件考案の構成要件AないしIが全て記載

されており,本件考案は,出願時において新規性を欠く。【

(原告の主張)

】

(1) 引用例3について

ア 引用例3は,構成要件C,D,F,G,Hのカップリングホーンを備えていない。引用文献3に記載されている超音波加工用アタッチメントの構造は,本件考案のカップリングホーンそのものがない構造であって,引用例3にいう「振動子ユニット」(ノード支持体)とは,本件考案における「超音波ヘッド」に相当するものである。すなわち,引用例3の振動子ユニットは,側面徳利状をなす出力ブロック19と,背面ブロック20と,それらの間に介装される圧電素子21,22とからなっている。上記出力ブロックは「振動子ユニット」を構成する部材であり,文字どおり超音波を出力するブロックであって,本件考案において,振動子で発生させた振動を増幅させるためのものであるカップリングホーンとは全く機能が異なるものである。また,被告がカップリングホーンだと主張する部位(出力ブロック19)は,本件考案のように円筒状のものではなく,側面徳利状をなす形状である。イ 引用例3は,構成要件Fに相当する構成を備えていない。すなわち,同心状スリーブ81a(本件考案の円筒体6bに相当)がフランジ81c(本件考案の取付部分3に相当)より薄肉にはなっていない。ウ よって,引用例3には,本件考案の全ての構成は記載されていない。

(2) 引用例2について

前記(1)アと同様,引用文献2においても,本件考案のカップリングホーンの取付構造は,記載されておらず,示唆もされていない。争点2−2(本件考案に係る進歩性の欠如)について【

(被告の主張)

】本件考案は,引用例5に,引用例3を適用することにより,きわめて容易に考案をすることができたものであり,本件考案は進歩性を欠く。

(1) 引用例5

公開特許公報(特開昭60−186366号公報。乙5)には,その出願時における従来技術として以下の記載がある(以下,乙5を「引用文献5」といい,これに記載された発明を「引用例5」という。)。「従来の超音波加工装置は,この第1図に示すように,超音波振動子1の一端面にコーン2をはんだ付け,またはろう付けし,そしてこのコーン2の先端に,工具側軸部4aを有するホーン4をねじ止めし,さらにこのホーン4の工具側軸部4aの先端に,切刃15のある工具5をはんだ付けあるいはろう付けし,これらを積み重ねた方向の弾性振動モードをもつ振動系である超音波発振部16を,振動の節に設けた,コーン2に取付けられたフランジ3のところで,防振用のゴム等でできた弾性体6を介して,フランジ押え7によつてケース8に固定し,このケース8が,ボールガイド9を介して装置本体10に摺動可能に保持されているものである。このように構成した超音波加工装置により,テーブル13上に,試料台12を介して載置固定された被加工物11の下穴11aを拡大加工する場合には,超音波振動子1により工具5を工具送り方向に超音波振動させ,被加工物11の上方から下穴11aに押込んで,この下穴11aの拡大加工を行う。このとき,工具5は工具送り方向の力,すなわち主分力FTおよび,工具送り方向に垂直方向な力,すなわち背分力FNを受ける。」

(2) 本件考案との一致点(構成要件A,B,G∼I)

引用例5の「ケース8」,「工具5」,「超音波振動部1」及び「コーン2」は,それぞれ,本件考案の「中空のスピンドル」,「加工工具」,「超音波ヘッド」及び「ホーン本体」に対応する。よって,引用例5は,「中空のスピンドルの先端に加工工具を取付け,同スピンドルを回転させて先端に取付けた加工工具によってワークを加工する加工機のスピンドルに於いて,スピンドル内部にスピンドルの軸方向に超音波振動を発生する超音波ヘッドを設置し,円柱状のホーン本体の中間の外周に取付部を突設したカップリングホーンをスピンドル内に配置し,同カップリングホーンのホーン本体を前記超音波ヘッドの超音波振動出力部と連結し,又カップリングホーンの取付部をスピンドルに動かないように固定し,カップリングホーンのホーン本体の先端に加工工具取付部を設けたことを特徴とする超音波スピンドル」という点において本件考案(構成要件A,B,G∼I)と一致する。

(3) 本件考案との相違点(構成要件C∼F)及び相違点についての容易想到性

引用例5は,本件考案における構成要件Cないし同Fの構成を有していないが,引用例3は,前記(2【

(被告の主張)

】(1)イ(ウ)∼(カ))のとおり,これらの構成をいずれも有している。引用例3と引用例5は同一分野の発明であり,しかも,引用例3の出力ブロックは,圧電素子と工具とをつなぎ,圧電素子において発生した振動を工具に伝達する機能を有し,かつ圧電素子とは別部材で形成されるものであるので,引用例5のコーン2(カップリングホーン)と実質的に同じ機能を有する。したがって,引用例3を引用例5に適用することは,当業者にとってきわめて容易である。なお,構成要件Fに関して,円筒体の肉厚と環状鍔部及び取付部の肉厚の関係に関しては,第1a図において明確に図示されているが,同時にこれら肉厚をどのように選定するかは設計事項にすぎない。すなわち,引用文献3に,「バッファ91は工具5の軸方向振動に応じて自由に撓み,かつこの振動系の周波数に同調せず非共振となるように,構成材料に応じて内外径と肉厚を適宜選定する。」(3頁左上欄の下から2行目∼右上欄3行目)と記載されているように,バッファにつき構成材料等に応じて内外径や肉厚を適宜調整することは技術上の常識である。【

(原告の主張)

】

(1) 本件考案と引用例5との一致点について

引用例5は,被告自身が認める相違点以外に,カップリングホーンの形状において本件考案と相違している。すなわち,本件考案ではホーン本体が円柱状であるのに対し,引用例5では円錐台状となっている。超音波ヘッドに取り付けられたカップリングホーンは,超音波ヘッドで生起された超音波振動と共振することが絶対条件で,共振しない場合,運動エネルギーが伝達できなくなる非常に微妙なものである。カップリングホーンを超音波ヘッドと共振する部材とすることはかなりの経験と知識が必要で,材料のわずかな偏析や形状のずれ(不均一さ)があっても共振不良やノード位置(中間位置)が定まらない原因になる。本件考案では,このような状況に鑑み,カップリングホーンを引用例3や引用例5などのような徳利状ではなく,偏析や形状ずれが発生しにくい円柱状とした。これによって従来の徳利状カップリングホーンに比べ振幅の増幅は犠牲になるものの,製作時の偏析やまた形状のずれが少なく正確なノード位置(中間位置)が出せるようにし,その中間位置に環状鍔部を突設し,さらに鍔部の先端にホーン本体と同じ軸心の円筒体を連設し,この円筒体の先端に半径方向に張り出した取付部を設けたものである。したがって,本件考案の構成では,カップリングホーンが軸方向に伸縮する際にもこのノード位置(中間位置)は動かず(振動せず),ここを境にしてカップリングホーンの上下位置がそれぞれ逆方向に伸縮し,鍔部の基部の幅の部分がこのカップリングホーンの伸縮に追随するだけで,ノード位置が上下に移動(振動)することはない。

(2) 相違点(構成要件C∼F)に対する引用例3の適用の可否(容易想到性)

についてア 取付部分の構造の相違以下のとおり,被告自身が認める相違点(構成要件C∼F)は引用文献3に記載されておらず,これを引用例5に適用することはできない。(ア) 本件考案は,円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄くすることと,さらに,取付部の位置をノード位置とすることで,軸方向の振動成分は極力吸収させることなく工具に伝達させ,しかも肉薄の円筒体によって,径方向の振動成分のみを吸収してスピンドルへの伝達を少なくすることに成功したものである。これに対し,第1a図では,同心状スリーブ81aがフランジ81cより薄肉にはなっていない。被告は,同心状スリーブ81aが薄肉になっていると主張するが,引用例3の取付構造の設置位置は,軸方向の応力が発生し,これを吸収しなければならない部位にあるため,仮に同心状スリーブ81aが薄肉になっているとすると,軸方向の応力によりその前後の部材よりも先に薄肉の同心状スリーブ81aが変形してしまい,その結果,ずれや熱が発生し,微細な精度が要求される超音波加工装置としては全く機能しなくなる。(イ) また,本件考案では,従来の「一体型」でもまた「別体型」でもなく,全く新しい「カップリングホーン」方式を採用した上,カップリングホーンの取付部を軸方向の振動がゼロになるノード位置とすることにより,軸方向の振動成分を極力吸収せずに径方向の振動のみを吸収しようとしている。これに対し,引用例3は一体型を前提として,振動子ユニットの一部を構成する出力ブロックの支持構造が記載されているにすぎず,カップリングホーンの支持構造が記載されているわけではない。また,その取付位置も,軸方向の応力が発生する部位にある。したがって,本件考案と引用例3とは,取付構造の設置位置も異なっている。なお,本件考案において取付部の位置を軸方向の振動がゼロになるノード位置にすることは,本件明細書の「鍔部(6a)は超音波振動による横方向の振動が少ないホーン本体(4a)の中間部にあることから超音波振動のスピンドル(1)への伝達を少なくし」という記載(2頁右欄39行から41行)から明確である。(ウ) このように,引用例3では,軸方向の伸縮に起因して径方向の振動が発生することは全く認識されておらず,径方向の振動を効率よく吸収しスピンドルに伝達させないようにした本件考案に至る動機付けは全くない。むしろ,引用文献3には,「支持体8と補強体9はリフレクタリング80,90とこれと非共振のバッファ81,91を備え,バッファ81,91の撓みにより軸方向振動を吸収し」と記載され,本件考案の構成による作用とは全く異なるものであることが明言されている。イ 阻害要因本件考案では,軸方向の伸縮に起因して径方向の振動が発生することを前提とし,軸方向の振動を吸収せず,この径方向の振動のみを吸収させるために,「円柱状のホーン本体の中間の外周に環状鍔部を突設し(構成要件C),同鍔部の先端にホーン本体と同じ軸心の円筒体を連設し(同D),同円筒体の先端に半径方向に張り出した取付部を設け(同E),しかも円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄くし,ホーン本体と鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部分の肉厚より薄くし,ホーン本体と鍔部と円筒体と取付部分とを金属材で一体成形したカップリングホーンをスピンドル内に配置している(同F)」構成とした。しかし,引用例3及び引用例5のいずれにも,軸方向の伸縮に起因して径方向の振動が発生することは全く認識されておらず,かかる振動の発生を前提とし,軸方向の振動を吸収せず,径方向の振動のみを吸収させるという本件考案に至る動機付けは全くない。すなわち,引用例3と引用例5を組み合わせて本件考案の構成を想到するには,組み合せの契機が全く存在せず,大きな阻害要件がある。ウ まとめ以上のとおり,引用例3及び引用例5のいずれにも,本件考案の構成要件Cないし同Fは記載も示唆もされておらず,引用例3及び引用例5から本件考案をきわめて容易に考案することができたと主張する

(被告の主張)

は根拠がない。【被告の反論】(ホーンの形状について)原告は,本件考案ではホーン本体が円柱状であるのに対し,引用例5や引用例3では円錐台状(徳利状)であると主張する。しかし,カップリングホーンは円柱状のものがむしろ基本形であって,円錐台状のものはその発展形である。この点,乙1の図1(a)には従来技術として円柱状のカップリングホーンが記載されており,乙9のfig.8にも同様の記載がある。争点3(被告意匠は本件登録意匠と類似するか)について【

(原告の主張)

】

(1) 本件登録意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様

前提事実(5),(6)のとおり。

(2) 本件登録意匠の要部

本件登録意匠の最も注意を惹きやすい部分は,その基本的構成態様AないしC全体そのものである。カップリングホーンそのものが斬新なものであり,本件登録意匠の出願日である平成元年12月13日時点で類似品はほとんど見あたらない。需要者が,このようなカップリングホーンを購入する際に,実際にこれを手に持って正面又は側面から観察することにより,帽子状の支持部の上から下に丸棒状のホーン本体が突き抜けたように見える独特の美感がもたらされる。

(3) 被告意匠の基本的構成態様

a 円柱状のホーン本体と,b ホーン本体のほぼ中間外周に突設された支持部とからなる。c 支持部は,ホーン本体から径方向に突設された環状鍔部と,一端を環状鍔部に固定されたホーン本体と同じ軸心の円筒体と,同円筒体の先端部から径方向に張り出したリング状取付部とからなる。

(4) 被告意匠の具体的構成態様

a ホーン本体の長さと直径の比は0.42である。b 支持部とホーン本体の長さの比は0.27で,正面図右側にはホーン本体のほぼ1/2が左側には5/20が露出している。c 鍔部の径方向の高さとホーン本体の直径の比は0.24である。d 円筒体の長さとホーン本体の長さの比は0.17で,円筒体の径とホーン本体の比は1.48である。d-1 円筒体のリング状取付部側に段差部を設けている。e 円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び取付部の肉厚よりも薄くしている。f リング状取付部の長さとホーン本体の長さの比は0.08で,リング状取付部の外径とホーン本体の外径の比は2.04である。g ホーン本体の前後端中央部にそれぞれ雌ねじが形成されている。

(5) 本件登録意匠と被告意匠との対比

ア 被告意匠は,本件登録意匠の要部たる基本的構成態様を全て備え,これにより,全体として「帽子状の支持部の上から下に丸棒状のホーン本体が突き抜けたように見える」本件登録意匠と同じ独特の美感を醸し出している。さらに,「一方向に広がり,これからくる不安定さ」も物品全体から醸し出している。また,被告意匠は,具体的構成態様のうち,以下の点において本件登録意匠と一致する。(ア) 正面図右側にはホーン本体のほぼ1/2が露出している点(具体的構成態様D関係)(イ) 円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び取付部の肉厚よりも薄くしている点(同E関係)(ウ) リング状取付部の外径とホーン本体の外径の比は2.04である点(同F関係)(エ) ホーン本体の前後端中央部にそれぞれ雌ねじが形成されている点(同G関係)イ 他方,本件登録意匠と被告意匠とは,以下の各点において相違するが,いずれの相違点も,これにより本件登録意匠の醸し出す「帽子状の支持部の上から下に丸棒状のホーン本体が突き抜けたように見える」また「一方向に広がり,これからくる不安定さ」という独特の美感を凌駕して,看者に異なる印象を与えるまでには至っていない。(ア) 本件登録意匠ではホーン本体の長さと直径の比は0.46であるのに対し,被告意匠では0.42である点(イ) 本件登録意匠では支持部とホーン本体の長さの比は0.38で,左側には3/20が露出しているのに対し,被告意匠ではそれぞれ0.27,5/20である点(ウ) 本件登録意匠では鍔部の径方向の高さとホーン本体の直径の比が0.20であるのに対し,被告意匠では0.24である点(エ) 本件登録意匠では円筒体の長さとホーン本体の長さの比は0.22で,円筒体の径とホーン本体の比は1.40であるのに対し,被告意匠ではそれぞれ0.17,1.48である点(オ) 本件登録意匠では円筒体に段差はないのに対し,被告意匠では円筒体のリング状取付部側に段差部を設けている点(カ) 本件登録意匠ではリング状取付部の長さとホーン本体の長さの比は0.07であるのに対し,被告意匠では0.08である点ウ 対比以上のとおり,被告意匠は具体的構成態様の多くにおいて,本件登録意匠と一致し,全体として本件登録意匠と同様の美感がもたらされている。他方,相違点はいずれも微差であり,本件登録意匠と同様の審美性を看者に印象付ける妨げにはなっていない。したがって,被告意匠は本件登録意匠と類似している。【

(被告の主張)

】

(1) 本件登録意匠の要部

カップリングホーンの基本形である円柱形のものについては,乙1図1

(a),乙9fig.8にそれぞれ記載がある。また,ハット形フランジについては,

乙1の図2,乙2の第2・2・5図,同第2・4・2図,乙3の第1図,同

第1a図及び乙6の図面にそれぞれ記載がある。

したがって,円柱状のカップリングホーンも,ハット状のフランジも周知であるから,本件登録意匠の要部はそれ以外の部分に存する。

(2) 被告意匠の構成

被告意匠は以下のような構成も有している。a1 ホーン本体の一方の端部付近は,断面正六角形とされている。a2 ホーン本体の他端には,鍔部がRをもって突設されている。d1 円筒体とリング状取付部の間に,段差部が設けられている。f1 リング状取付部には,8個の貫通孔が設けられている。g1 ホーン本体の一端の雌ねじ形成部分には,座ぐり穴が設けられている。

(3) 対比

ア 対象となる物品意匠権侵害の有無の判断に際しては,流通過程に置かれた具体的な物品が対象となるところ,被告ホーンは,被告製品の内部に組み込まれた部品にすぎず,被告の製品として流通するのは,スピンドルユニットとしての被告製品である。したがって,本件登録意匠に係る物品は「カツプリングホーン」であるのに対し,被告製品は「超音波スピンドルユニット」であるから,両者は物品が異なる。イ 構成の対比本件登録意匠と被告意匠の構成を単純に対比しても,前記a1,a2,d1,f1及びg1においてそれぞれ形状が異なり,また,各部の比率も全く異なるため,取引者・需要者の受ける美感も全く異なる。また,当該意匠に係る物品の流通過程において取引者,需要者が外部から視覚を通じて認識することができる物品の外観のみが,意匠法の保護の対象となるものであって,流通過程において外観に現れず,視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は考慮できない。この点,被告製品において外部から認識できるのは,被告ホーンの端部付近のみであり,原告が本件登録意匠の要部であると主張する「支持部」は被告製品の外部には全く露出していない。わずかに外部から認識し得る部分は,被告ホーンの端部付近の断面形状が六角形の部分と「座ぐり」が設けられた端部の雌ねじ形成部分であり,特に本件登録意匠と形状が異なる部分である。

(4) よって,取引者・需要者に混同を生ずることは考えられず,被告意匠は本

件登録意匠と類似しない。【原告の反論】(被告ホーンの独立取引性について)

(1) 被告ホーンは独立して取引されていること

ア 完成品において部品が外部から見ることができないからといって,各部品の意匠法における物品性が直ちに否定されるものではなく,部品自体が独立に流通する限り,なお意匠法において当該部品の外観を保護すべきである。また,必ずしも当該部品自体が常に独立の売買対象や製造対象になっていなくても,説明や取引の機会を通じて,部品の現物(模型を含む。)・図面・写真等により当該部品の外形・形状が消費者に呈示され,その部品意匠の独立した視覚性も購買の動機付けの一つとなり得る状態である限り,物品の独立性や視覚性なども肯定されるべきである。イ 本件において,原告の製造するカップリングホーンは,それ自体交換部品として一般的に流通の対象となっている。また,スピンドルの製造時における受発注の打ち合わせにおいても,通常,カップリングホーンの形状は図面や写真や現物などにより呈示されている。これにより原告は,部品も含めた自己の製品の独自性を強調し,購買者に訴えている。また,オーバーホール時においても,スピンドル全体を一旦持ち帰ってチェックするのが通常ではあるが,原告は,その際,交換部品の内容や交換理由を写真や図面により示すようにしている。カップリングホーンについては,摩耗による交換の必要性が出てくるので,交換の際に,カップリングホーンの部品の形状を示す写真と説明図を顧客に呈示している。少なくとも図面や写真の呈示の中で,顧客は原告製品と視覚的に接し,その美感を享受し得るのであり,かかる場合も意匠の保護対象となる視覚性や独立性は担保されている。被告も原告と同種の営業を行う限り,上記のような図面や写真の呈示による営業は不可欠であって,被告製品についても上記態様の取引を行っているはずである。

(2) 独立取引性の要件を緩和すべきであること

ア 意匠に係る物品は独立して取引の対象になることを要するという従来の解釈も,独立性を欠く物品の部分についても意匠登録が認められることとなった現行法の下では,それを厳格に維持すべきか慎重に検討されるべきである。すなわち,当該部品自体が広く流通していなくても,ユーザーとの間においてオーバーホール時などに取り外しにより交換されるなど,その部品自体に独立した経済行為が行われ,ユーザーがそれを直接間接に認識し得,他の形状の部品の選択も含め,当該経済行為(交換)に荷担し得る状況である限り,対象部品の独立取引性を肯定し,当該登録意匠を保護していくべきである。イ 本件においては,被告ホーンもオーバーホール時に外され,随時独立に交換され,有償性も有するのであり,このような独立した経済行為(交換)は,直接間接にユーザーに認識できる状況になっている。そうすると,ユーザーもなお,被告ホーンを選択するか別の形態を選択するか,その交換という経済行為に荷担する余地を残していることになる。このように需要者が関与して部品自体も交換という独立した経済行為をなし得る以上,被告ホーンも独立取引性を満たすというべきである。【被告の再反論】(被告ホーンの独立取引性について)

(1) 被告が販売したのはスピンドルユニットであって,被告ホーンはスピンド

ルユニットの内部に組み込まれた部品にすぎず,被告ホーンを流通過程に置いたことはない。また,消耗等により交換が必要な場合その他不具合が生じた場合には,被告がスピンドルユニット全体を持ち帰り,調整・交換等を行っている。もともと,被告ホーンは,被告が旭硝子株式会社の注文により請負製造したスピンドルユニットのために開発された専用部品であって,他社の部品とは互換性がなく,旭硝子株式会社及びその韓国子会社以外の第三者には販売されたことがなく,販売活動がなされたことや,カタログが作成されたこともない。よって,被告ホーンは,その実物,写真,図面を含め,これまで上記旭硝子株式会社等以外の第三者の視覚を通じて認識されたことはない。

(2) 独立取引要件を緩和することについて

前記のとおり,被告ホーンと他のホーンには互換性がなく,本件においてユーザーには選択の余地がない。したがって,被告ホーンは独立取引性を欠く。争点4(被告製品において本件登録意匠の利用関係が認められるか)について【

(原告の主張)

】

(1) 利用関係

部分意匠が許容されている現行法の下では,被告ホーンが被告製品のいわば部分意匠を形成しているような状況下においては,被告製品の一部品である被告ホーンを通じて本件登録意匠の利用が認められ,被告ホーンに視覚性が備わる限り,被告ホーンを含む被告製品に本件意匠権の侵害を認めるべきである。利用関係の要件として,① 他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を包含すること,② 他の登録意匠の特徴を破壊することなく包含すること,

③ 他の構造要素と区別し得る態様において包含することがある。これらの

要件は,視覚性との関係で分析されるものであるところ,本件の場合には,受発注時や,オーバーホール時まで含めた取引態様の中で分析されるべきであるから,上記①ないし③の要件も,本件で問題となっている視覚性との関係で柔軟に決せられるべきである。被告製品においては,被告ホーンを通じて,本件登録意匠全部について,その特徴を破壊することなく,被告製品の他の構成要素と区別し得る態様で包含され,利用されている状況にある。かかる取引状況・需要者の認識状況を併せて考えれば,被告製品に対する需要を喚起するに際し,被告ホーンの形状も需要者に動機付けを与える一要素となり得るし,そのような取引における視覚を通じての利用関係は十分に認識できる。よって,本件では上記①,②,③の要件を満たす。

(2) 視覚性

前述したとおり,被告が原告と同種の営業を行う限り,図面や写真の呈示による営業は不可欠であって,被告ホーンについても少なくともこれらの態様での取引は行っているはずである。したがって,視覚性は満たす。【

(被告の主張)

】否認ないし争う。争点5−1(本件登録意匠に係る新規性欠如)について【

(被告の主張)

】

(1) 乙1の図2に記載された「ノード支持体」,引用文献2の第2・2・5図

及び同第2・4・2図に記載された「支持フランジ」並びに引用文献3の第1図及び同第1a図に記載された「支持体」は,いずれも原告が主張する本件登録意匠の特徴である「帽子状の支持部の上から下に丸棒状のホーン本体が突き抜けたように見える」という形状を有している。したがって,当該形状は,本件登録意匠出願時において新規性がない。

(2) 特許公報(特公昭34−1950号公報。乙6)の図面に記載されている

「コーン9と一体構造の円筒部12」は,原告が主張する本件登録意匠の特徴である「帽子状の支持部の上から下に丸棒状のホーン本体が突き抜けたように見える」という形状を有しており,本件登録意匠の形状とほぼ同一である。本件登録意匠の形状と「コーン9と一体構造の円筒部12」の形状との相違点は,前者においてはホーン本体が円筒形であるのに対し,後者においては「コーン9」部がテーパーを有している点のみである。この点,当該相違点のみで,本件登録意匠の形状が新規なものであるということができないことは明らかである。したがって,本件登録意匠権には無効事由が存する。【

(原告の主張)

】乙1ないし3は,本件意匠権に係る物品と異なるものであり,かつその形態も大きく異なる。すなわち,これらに記載のものは,いずれもバッファ81(乙3第1a図)を構成するフランジ81c(同図)の先端から大きく軸方向に跳ね上がった形状(乙3では支持体と表示)を持つものであり,さらには,乙1,3は,本体部分がいずれも軸線方向に萎む形状であって,本件登録意匠とは類似しないものである。争点5−2(本件登録意匠に係る容易創作性)について【

(被告の主張)

】本件登録意匠の形状と乙6の「コーン9と一体構造の円筒部12」の形状との相違点は,前者においてはホーン本体が円筒形であるのに対し,後者においては「コーン9」部がテーパーを有している点のみである。このとき,円柱状のカップリングホーンについては,乙1の図1(a),乙9のfig.8に記載があり周知である。したがって,これら文献から本件登録意匠の創作を行うことは容易である。【

(原告の主張)

】争う。争点6(原告の損害及び損失額)について【

(原告の主張)

】

(1) 被告製品の売上げ

超音波スピンドルは,プラズマテレビのガラス基板の穴開けによく使用される。この場合,テレビ1ないし3台分の加工が同時に行われるが,貫通する1か所の穴明け加工に上下2台の超音波スピンドルが使用される。したがって,通常,1つの生産ラインでは12台の超音波スピンドルが搭載されている。この1つの生産ラインを1ラインとしてスピンドルの受発注を行うのであるが,被告は少なくとも3ライン分の受注をしており,本件実用新案権の存続期間が満了した平成16年12月21日までに少なくとも1ライン分12台を販売し,平成16年12月22日以降本訴提起日までに少なくとも2ライン分24台を販売している。被告製品の販売価額は,少なくとも一台300万円は下らず,その売上げは平成16年12月21日までの本件実用新案権の侵害分で3600万円(12台分)であり,その後は本件意匠権の侵害分として1億4400万円(48台分)である。

(2) 被告が得た利益

被告製品の販売により被告が得た利益は少なくとも50%は下らず,本件実用新案権の侵害分で1800万円(3600万円×0.5),本件意匠権の侵害分で7200万円(1億4400万円×0.5)の利益を得ている。

(3) 寄与率

被告製品は,本件実用新案権が実施されているが故に購入されるのであり,その寄与率は100%である。また,本件意匠権に関しては,その斬新なデザインからすれば寄与率は30%を下らない。

(4) よって,本件実用新案権の侵害については1800万円が原告の損害(実

用新案法29条2項)及び損失と推定され,本件意匠権の侵害については2160万円が原告の損害(意匠法39条2項)と推定される。

(5) 弁護士及び弁理士費用

原告は,本件訴訟の追行を原告訴訟代理人弁護士及び補佐人弁理士に委任しているところ,その費用のうち400万円は被告の不法行為による損害である。【

(被告の主張)

】被告が,旭硝子株式会社系列の韓国会社である韓旭株式会社に対し,平成16年12月21日以前に1ライン分,それ以後に2ライン分,被告製品を販売したことは認める。また,被告が,旭硝子株式会社に対し,平成16年12月21日以降に,被告製品を2ライン分納入している。被告が販売したスピンドルユニットはこれで全てである。その余は否認ないし争う。

第3図に示すように全長が1/2波長となっている。

前記支持体8は,工具5のスラスト方向の荷重を受け止めるためのもので,出力ブロック19の入力側すなわち軸線方向後半部域に設けられる。支持体8は,具体的には第1a図のように,リフレクタリング(厚肉円筒体)80及びこれより薄肉化されることで非共振となったバッファ81からなり,バッファ81は,径方向振動成分を吸収する同心状スリーブ81aと,軸方向の振動成分を吸収するフランジ81b,81cを有し,フランジ81bをもって出力ブロック19に結合されている。(略)前記支持体8は出力ブロック19に一体に削り出されるか,あるいは溶接等により形成される。」(ウ) 同〔実施例の作用〕には以下の記載がある。「従来の超音波振動系は,既述のようにホーンを多段に縦設することで移動子先端の変位を増幅しており,そのため全長が1.5波長と長い。これに対し本発明は,1/2半長(判決注:「波長」の誤り。)の直接加振型振動ユニットを用い,しかも出力ブロック19の先端に直接工具5を装着している。そのため,振動系が小型化し,工作機械の取付けスペースも小さくて済み,工具交換機能を利用して簡単に着脱可能であると共に,機械本体との干渉も起こらない。(略)さらに,出力ブロック19が徳利状をなしているため,ねじ底付近の断面寸法を十分にとれ,材料破断の危険がないと共に,圧電素子21,22の動的応力も軽減され,その発熱も少ない。(略)さらに本発明では,直接加振型振動子ユニット4の出力ブロック19の2点を特殊な支持体8と補強体9で強固に支持している。すなわち,支持体8と補強体9はリフレクタリング80,90とこれと非共振のバッファ81,91とを備え,バッファ81,91の撓みにより軸方向振動を吸収し,ことに,補強体9のバッファ91が工具5と出力ブロック19の間に挟持され,横荷重を面内張力の形で負担し,厚肉のリフレクタリング90に伝えることから,外部への振動のリークが極力抑えられる。そして,各リフレクタリング80,90は回転筒3の前筒11と直接金属同志で強固に固定され,前筒11は超音波振動の特性と関係なく必要な肉厚と長さを持たせることができる。そのため軸方向に十分な剛性のみならず,工具に加わる荷重によって生ずる曲げモーメントに対し,十分大きな抵抗力を発揮することができ,工具のオーバハング量が小さいこととあいまち,横方向の剛性も大幅に増大する。」(エ) 引用文献3には,実施例として以下の各図が記載され(ただし,第2図は省略。),その説明として「4.図面の簡単な説明」には以下の記載がある。「第1図は本発明による超音波加工用アタッチメントの一実施例を示す半部切欠側面図,第1a図はその一部拡大図,(略)第3図は本発明の振動子ユニットの振動モードを模式的に示す説明図(略)である。」イ 本件考案の構成要件と引用例3との対比(ア) 構成a 引用例3のホーンに突設されている「フランジ81b」「同心状スリーブ81a」は,その構造,作用等からみて,またそれぞれ本件考案のホーンに突設されている「環状鍔部」,同環状鍔部の先端に連設されているホーン本体と同じ軸心の「円筒体」に相当し,引用例3の「フランジ81c」と「リフレクタリング80」とを一体の一つの部分とみると,当該部分は,同心状スリーブ81aの先端に半径方向に張り出したところに設けられて,当該部材を回転筒3に動かないように固定しているから,当該部分(フランジ81cとリフレクタリング80とからなる部分)は,本件考案の取付部に相当する。また,引用文献3には文言として明確には記載されていないものの,

第1a図を子細に検討すると,同心状スリーブ81aは,フランジ8

1b,同81cの肉厚より,やや薄く図示されていることが認められる(乙8)。そうすると,引用例3には,相違点1が示されている。b この点,原告は,引用例3における取付構造の設置位置は軸方向の応力が発生する部位であり,かつこれを吸収しなければならない部位であるところ,仮に引用例3の同心状スリーブ81aがフランジ81b及び同81cより薄肉であれば,軸方向の応力により,フランジ81b及び同81cより先に同心状スリーブ81aが変形してしまい,超音波加工装置として機能しなくなるから,そのような構成は採っていないと主張する。しかし,引用文献3の「径方向振動成分を吸収する同心状スリーブ81a」との記載,及び第3図には,バッファ81の形成位置が,軸方向においては,ノード位置(軸方向の振動がゼロとなる位置)であり,径方向においては,ループ位置(径方向の振動が最大となる位置)であることが図示されていることから,バッファ81の形成位置においては,軸方向の振動は発生するとしても相当小さなものとなる。そうすると,同心状スリーブ81aの肉厚を径方向振動の応力やフランジ81b,同81cにより吸収されなかった微細な軸方向振動の応力を受け得る程度の十分な肉厚に形成すればよく,径方向振動成分を吸収する同心状スリーブ81aの肉厚を軸方向振動成分を吸収するフランジ81b,同81cの肉厚よりも薄くすることが構造上不可能であるというような事情までは窺えない。c 原告は,引用例3の構造は一体型における支持構造であり,本件考案のようなカップリングホーンの支持構造とは異なるとも主張する。確かに,原告が主張するように引用文献3はいわゆる一体型であるのに対し,本件考案はカップリングホーンを連結するものであるが,後記認定のとおり(後記(イ)),その支持構造において期待されている作用効果は共通しているのであり,当該部分において発生する径方向の振動を吸収するという課題は,一体型であると本件考案のようなカップリングホーンを連結するものとで異なるところは認められない。したがって,かかる構造上の相違は引用例3を本件考案に適用することを妨げるものとはいえない。d 以上より,引用文献3の第1a図において,81aの部分の薄肉化という,構成要件C,D,E,Fに相当する構成は示されていると認められる。(イ) 作用効果a 相違点1に係る本件考案の作用効果について,本件明細書には,以下の記載が認められる。

(a) (作用)における記載

「本考案の超音波スピンドルでは,スピンドル内の超音波ヘッドと連結したカップリングホーンのホーン本体の外周に鍔部を介して円筒体を設け,同円筒体の先端の取付部を介してスピンドルに動かないように固定している。この構造であってしかもコーン本体・鍔部・円筒体・取付部を金属材で一体成形して,樹脂製部品を用いていないので高い支持強度を有し且つ耐久性あるものにしている。しかも円筒体とスピンドルとは取付部で動かないように固定されているので,摺動はなくカップリングホーンをスピンドルに取付けている。更に,円筒体の肉厚を鍔部・取付部の肉厚より薄くしたことによって円筒体の変形位が許容され,ホーン本体に伝えられた超音波振動が取付部を介してスピンドルに伝達するのを大巾に少なくし,共振振動の発生を防ぎ,発熱振動を少なく支持でき,超音波振動の減衰を少なく工具に伝えることを可能とした。」

(b) (考案の効果)における記載

「本考案により,シンプルな構造で剛性が高く,高精度の加工を行なうことができ,耐久性も良好な超音波スピンドルを提供することができる。又円筒体の肉厚を薄くすることで,不要な発熱・振動を生起することなく効率よく超音波振動を工具に伝達できる。」b 本件考案の上記両記載からすれば,相違点1に係る本件考案の作用効果としては,① 高い支持強度を有し且つ耐久性あること,及び②円筒体の変形位が許容され,ホーン本体に伝えられた超音波振動が取付部を介してスピンドル(引用例3の回転筒3に相当)に伝達するのを大巾に少なくし,共振振動の発生を防ぎ,発熱振動を少なく支持でき,超音波振動の減衰を少なく工具に伝えること,という点にあるものと認められる。c 他方,引用例3における作用効果について,引用文献3には,「前記リフレクタリング80は,段部15’に当接するように前筒11に内挿され,これに嵌合された基筒10の先端面により挟圧され,必要に応じ前筒11の肉厚を貫いて挿着された複数のビス23により外径側が止められ,前筒11と一体化される。」,及び「前記支持体8は出力ブロック19に一体に削り出される」との記載がなされることからして,支持体8は,一体成形され,高い支持強度を有し且つ耐久性あるものにしており,しかも同心状スリーブ81aと,基筒10及び前筒11からなる回転筒3とはリフレクタリング80で動かないように固定されて,摺動なく取付けられるという,前記b①の効果を有していることが認められる。d また,引用文献3には,「バッファ81は,径方向振動成分を吸収する同心状スリーブ81aと,軸方向の振動成分を吸収するフランジ81b,81cを有し,フランジ81bをもって出力ブロック19に結合されている」との記載がなされていること,及び上記イ(ア)のとおり,同心状スリーブ81aが,フランジ81b,同81cの肉厚より,薄いという本件考案の円筒体と同様の構成であることからして,バッファ81により径方向及び軸方向の振動成分を吸収する,つまり同心状スリーブ81aの変形位が許容され,超音波振動がバッファ81及びリフレクタリング80を介して回転筒3(本件考案のスピンドル1に相当)に伝達するのを大巾に少なくし,もって共振振動の発生を防ぎ,発熱振動を少なく支持でき,超音波振動の減衰を少なく工具に伝えるという,前記b②と同様の作用効果を有していることが認められる。e 上記b②の作用効果の点につき,原告は,引用文献3に「バッファ81,91の撓みにより軸方向振動を吸収し」との記載があることから,軸方向の振動を吸収しない本件考案の作用効果とは全く異なると主張する。しかし,原告の上記主張は,そもそも本件考案に基づかない主張である。すなわち,本件明細書において,「軸方向の振動を吸収しない」との作用効果があることを窺わせる記載は見受けられず,むしろ,軸方向(本件明細書においては「横方向」)の振動について,「鍔部(6a)は超音波振動による横方向の振動が少ないホーン本体(4a)の中間部にあることから超音波振動のスピンドル(1)への伝達を少なく」するとの記載がなされている。そもそも,前記イ(ア)において認定したとおり,相違点1に係る構成は引用例3と共通であるところ,同じ構成を有しながら全く異なる作用効果を奏するというのは,殊に本件のような機械分野においては,通常考え難いところである。また,原告が引用する引用文献3の上記記載についても,これに接した当業者は,同記載の後にある「外部への振動のリークが極力抑えられる」との記載(前記(3)ア(ウ))と併せ読むことにより,回転筒3に振動が漏れることを可及的に防止する趣旨と解するものであり(超音波ヘッドにおいて発生させた超音波振動を減衰少なく工具に伝えることは超音波スピンドルである以上当然の前提であり,引用例3においても同様のことがいえる。),「軸方向の振動を吸収し」との記載は,バッファ81の形成位置を軸方向においてノード位置としたにもかからわらず,同形成位置においてわずかに発生する軸方向の振動(前記(ア)b参照)を回転筒3に漏れないようにするために,バッファ81で吸収する趣旨にすぎないと解されるものである。そうすると,引用文献3の「軸方向振動を吸収し」との記載は,回転筒3(スピンドル(1))に超音波振動を伝達しないという意味において,本件考案と共通の作用を奏すると解するのが相当である。

(4) 相違点2について(相違点2について,明示的な主張はないが,念のため,

検討しておくこととする。)本件考案は,カップリングホーンの先端に加工工具取付部を設けたものであり,超音波ヘッドで発生した超音波振動をカップリングホーンを介して加工工具に伝達するものである。これに対し,引用例5は,コーン2にフランジを設けてケースに固定し,さらに,コーン2にホーン4を連結して,その先端に加工工具取付部を設けたものであり,超音波振動子1で発生した超音波振動をコーン2及びホーン4を介して工具に伝達するものである。そうすると,本件考案のカップリングホーンと,引用例5のコーン2及びホーン4から構成されるものとは,超音波振動を伝達するという機能において差異はなく,引用文献5の記載を見ても,引用例5においてコーン2とホーン4の2個の部材から構成されることによる特有の作用効果は窺えない。また,前記2(1)で認定したとおり,引用例5においては「コーン2の先端に,工具側軸部4aを有するホーン4をねじ止め」により固定されていることからすると,これらを一体の部材と見なすことも可能である。以上によれば,引用例5のコーン2及びホーン4から構成されるものは,本件考案のカップリングホーンに包含されるものと認められる。

(5) 阻害要因について

原告は,引用例3及び引用例5には,軸方向の振動を吸収せず,径方向の振動のみを吸収させるという本件考案に至る動機付けは全くなく,引用例5に引用例3を適用するに当たり阻害要因があると主張する。しかし,既に判示したとおり,本件考案に軸方向の振動を全く吸収しないとの機能は窺えないこと,引用文献3の第3図によれば,軸方向の振動と径方向の振動の関係が明確に記載されており,本件考案の鍔部に対応するフランジ81bの設置位置からして,軸方向及び径方向の振動の吸収の違いが明確に意識されていること,引用例3の支持体8と,引用例5のフランジ3とは,共にスピンドルを固定するという同一の機能を奏するものであること,引用例3も引用例5も,同じ技術分野に属するものであることからして,引用例5に引用例3を適用することについて,何らの阻害要因も認められない。

(6) 小括

以上によれば,相違点1の構成は引用例3に開示されており,相違点2は実質的にみれば引用例5と同一のものといえる。また,引用例3及び同5は,いずれも本件考案と同じ超音波スピンドルに関する発明であって,その技術分野や機能も共通し,引用例5に引用例3を組み合わせることに何らの阻害要因も認められない。しかも,その作用効果も引用例3及び同5から予測し得る範囲のものである。そうすると,本件考案は引用例5に引用例3を組み合わせることにより,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものというべきであるから,本件実用新案権には無効理由があり(旧実用新案法3条2項,実用新案法37条1項2号),実用新案登録無効審判において無効にされるべきものと認められるから,実用新案法30条において準用する特許法104条の3第1項により,原告は,本件実用新案権に基づく権利を行使することができない。よって,その余の争点について判断するまでもなく,本件実用新案権に基づく原告の請求は理由がない。争点3(被告意匠は本件登録意匠と類似するか)及び同4(被告製品において本件登録意匠の利用関係が認められるか)について

(1) 本件登録意匠の構成態様

前記前提事実によれば,本件登録意匠の構成は以下のとおりと認められる。ア 本件登録意匠の基本的構成態様A 円柱形のホーン本体と,B ホーン本体のほぼ中間外周に突設された支持部とからなる。C 支持部は,ホーン本体から径方向に突設された環状鍔部と,一端を環状鍔部に固定されたホーン本体と同じ軸心の円筒体と,同円筒体の先端部から径方向に張り出したリング状取付部とからなる。イ 本件登録意匠の具体的構成態様A ホーン本体の長さと直径の比は0.46である。B 支持部とホーン本体の長さの比は0.38で,正面図右側にはホーン本体のほぼ1/2が左側には3/20が露出している。C 鍔部の径方向の高さとホーン本体の直径の比は0.20である。D 円筒体の長さとホーン本体の長さの比は0.22で,円筒体の径とホーン本体の比は1.40である。E 円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び取付部の肉厚よりも薄くしている。F リング状取付部の長さとホーン本体の長さの比は0.07で,リング状取付部の外径とホーン本体の外径の比は2.04である。G ホーン本体の前後端中央部にそれぞれ雌ねじが形成されている。

(2) 被告意匠の構成態様

弁論の全趣旨によれば,被告意匠の構成は以下のとおりと認められる。ア 被告意匠の基本的構成態様a 円柱形のホーン本体と,b ホーン本体のほぼ中間外周に突設された支持部とからなる。c 支持部は,ホーン本体から径方向に突設された環状鍔部と,一端を環状鍔部に固定されたホーン本体と同じ軸心の円筒体と,同円筒体の先端部から径方向に張り出したリング状取付部とからなる。イ 被告意匠の具体的構成態様a ホーン本体の長さと直径の比は0.42である。a-1 ホーン本体の一方の端部付近は,断面正六角形とされている。a-2 ホーン本体の他端には,鍔部がRをもって突設されている。b 支持部とホーン本体の長さの比は0.27で,正面図右側にはホーン本体のほぼ1/2が左側には5/20が露出している。c 鍔部の径方向の高さとホーン本体の直径の比は0.24である。d 円筒体の長さとホーン本体の長さの比は0.17で,円筒体の径とホーン本体の比は1.48である。d-1 円筒体とリング状取付部の間に,段差部が設けられている。e 円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び取付部の肉厚よりも薄くしている。f リング状取付部の長さとホーン本体の長さの比は0.08で,リング状取付部の外径とホーン本体の外径の比は2.04である。f-1 リング状取付部には,8個の貫通孔が設けられている。g ホーン本体の前後端中央部にそれぞれ雌ねじが形成されている。g-1 ホーン本体の一端の雌ねじ形成部分には,座ぐり穴が設けられている。

(3) 類否(争点3)について

ア 類否の判断対象本件登録意匠と被告意匠との類否を判断するに当たり,まず対象となる物品が被告製品であるのか,被告ホーンであるのかについて検討する。意匠の保護は,最終的には産業の発達に寄与することを目的とするものであり(意匠法1条),また登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされていること(同法24条2項)からすれば,流通過程において現実に取引の対象とされる具体的な物品をもって対比の対象となる物品とすべきである。また,意匠とは,物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものであること(同法2条1項)をも併せ考えると,流通過程の中で外観に現れず,視覚を通じて認識することができない,物品の隠れた形状等については,これが流通過程において需要者に何らの美感を起こさせる余地もないから,類否の判断に当たっては考慮することができないというべきである。イ 本件における類否の判断対象本件登録意匠に係る物品はカップリングホーンであるところ,カップリングホーンは超音波ヘッドに連結され,超音波ヘッドで発生させた超音波振動を加工工具に伝達するものであり,超音波スピンドルを構成する一つの部品であることが認められる。また,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,超音波スピンドルは,部品を組み立てた完成品として販売されるものであることが認められ,証拠(甲9∼24,29,甲30の1・2,甲33の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,カップリングホーンは定期的な交換を要する消耗品であるものの,カップリングホーンの交換の際には,超音波スピンドル本体を一旦持ち帰って取り替えるのが通常であることが認められる。この点,原告は,カップリングホーン交換の際には,カップリングホーンの形状を示す写真と説明図を顧客に呈示しており,被告もこれと同様の営業を行っているはずであると主張するが,原告における交換の際の見積書(甲11,1,14,15,17,20,22,24)には,カップリングホーンの写真など,その形状が分かるようなものは記載又は添付されておらず,交換後の報告書(甲30の2,31の2,33の2)の中に,カップリングホーンの形状が一部写っている写真が添付されているものの,これらはあくまで事後の報告であって,カップリングホーンの交換に当たってその形状を確認させるというような取引形態をしていたことまでは認められない。まして,被告が被告ホーンの交換に当たって,被告ホーンの形状を示す写真や説明図を顧客に示していることを窺わせる証拠は全くない。そうすると,流通過程において,カップリングホーンは独立して流通の対象となっておらず(その形状すらも需要者には知る余地がない。),流通過程において現実に取引の対象となっている物品は,超音波スピンドルとしての被告製品というべきである。そうすると,本件登録意匠に係る物品はカップリングホーンであるのに対し,対象となる物品は超音波スピンドルとしての被告製品であるから,対象となる物品が異なるというべきである。ウ 形態の対比前記認定のとおり,被告ホーンは被告製品の一部品であり,被告製品に組み込まれて流通しているものであるところ,弁論の全趣旨によれば,被告製品の外観からは,被告ホーンの内,断面正六角形をなしている部分(以下「頭部」という。)のみがわずかに現れているにすぎず,前記被告意匠の基本的構成態様b及び同cの部分は全く外観に現れていないことが認められる(被告準備書面(1)添付図面A4参照)。そこで,上記外観に現れている頭部についての形態を対比するに,本件登録意匠と被告意匠との間には,中央部に雌ねじが形成されているという点(前記本件登録意匠の具体的構成態様G,同被告意匠の具体的構成態様g)で一致している。他方,本件登録意匠は円柱形であるのに対し,被告意匠の頭部は断面正六角形をなしている点(前記被告意匠の具体的構成態様a-1)及び被告意匠では頭部の中央部には雌ねじが形成された上,さらに座ぐり穴が設けられている点(同構成g-1)がそれぞれ異なっている。そして,頭部の形状が円柱であるか断面正六角形であるかは,形状として著しく異なっており,需要者に与えるかかる相違点の印象は大きいものがある。また,頭部の雌ねじ部分についても,被告意匠では座ぐり穴が形成されていることにより,頭部の陥没部分が大きく見えるという印象を与えるものである。そうすると,被告ホーンの外観から認識し得る頭部の形態において,被告意匠は本件登録意匠と顕著に異なっており,その結果,本件登録意匠との一致点を凌駕して,これと美感を異にするというべきである。エ まとめ以上によれば,本件登録意匠と被告意匠とは,対象となる物品が異なる上,形態においても美感を異にするから,類似しないというべきである。

(4) 利用関係(争点4)について

原告は,① 他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を包含すること,

② 他の登録意匠の特徴を破壊することなく包含すること,③ 他の構造要素

と区別し得る態様において包含すること,という要件を満たす場合には,被告ホーンを含む被告製品に本件意匠権の侵害を認めるべきであると主張する。しかしながら,利用関係が成立しているかどうかについて判断するに当たっても,流通過程の中で外観に現れず,視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状等については,これを考慮することができないところ,前記認定のとおり,被告製品においては,被告ホーンの全容を外部から認識できず,わずかに被告ホーンの頭部が露出しているにすぎないのであり,また被告ホーンの交換時に当たって,被告ホーンの形状を示す写真や説明図を顧客に示しているとも認められないのであるから,被告製品において本件登録意匠が利用ないし包含されているということはできない。

(5) 小括

以上のとおり,被告ホーンの組み込まれた超音波スピンドルの販売及び被告ホーンの交換は,本件意匠権を侵害するとは認められず,その余の争点について判断するまでもなく,本件意匠権に基づく原告の請求には理由がない。結論以上の次第で,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第26民事部裁 判 長 裁 判 官 山 田 陽 三裁 判 官 島 村 雅 之裁 判 官 北 岡 裕 章

第4 当裁判所の判断

1 争点2−1(本件考案に係る新規性の欠如)について被告は,本件考案の新規性を争い,引用例2,3(乙2,3)を引用する。しかし,引用例2,3は,カップリングホーン(構成要件F∼H)を備えているとはいえず,同引用例を理由に本件考案の新規性を否定することはできない。

2 争点2−2(本件考案に係る進歩性の欠如)について

(1) 乙5における引用文献5の記載乙5の公開特許公報(特開昭60−186366号公報)には,その出願時における従来技術(引用例5)として下の第1図が記載されていることが認められる。また,同図の説明として,「従来の超音波加工装置は,この第1図に示すように,超音波振動子1の一端面にコーン2をはんだ付け,またはろう付けし,そしてこのコーン2の先端に,工具側軸部4aを有するホーン4をねじ止めし,さらにこのホーン4の工具側軸部4aの先端に,切刃15のある工具5をはんだ付けあるいはろう付けし,これらを積み重ねた方向の弾性振動モードをもつ振動系である超音波発振部16を,振動の節に設けた,コーン2に取付けられたフランジ3のところで,防振用のゴム等でできた弾性体6を介して,フランジ押え7によつてケース8に固定し,このケース8が,ボールガイド9を介して装置本体10に摺動可能に保持されているものである。このように構成した超音波加工装置により,テーブル13上に,試料台12を介して載置固定された被加工物11の下穴11aを拡大加工する場合には,超音波振動子1により工具5を工具送り方向に超音波振動させ,被加工物11の上方から下穴11aに押込んで,この下穴11aの拡大加工を行う。このとき,工具5は工具送り方向の力,すなわち主分力F Tおよび,工具送り方向に垂直方向な力,すなわち背分力FNを受ける。」と記載されていることが認められる。(2頁左上欄17行目∼右上欄19行目)

(2) 本件考案との一致点と相違点ア 引用例5の構成引用例5の「ケース8」,「工具5」,「被加工物11」,「超音波振動子1」,「コーン2」(ただし,その形状は円錐台である。)及び「フランジ3」は,その構造及び作用効果から見て,本件考案の「スピンドル」,「加工工具」,「ワーク」,「超音波ヘッド」,「ホーン本体」及び「取付部」にそれぞれ相当すると認められる。よって,上記引用文献5の記載を本件考案に対応させると,引用例5には以下の構成が記載されているということができる。a 中空のケース8の先端に工具5を取付け,同ケース8を回転させて先端に取付けた工具5によって被加工物を加工するケース8に於いて,b ケース8内部にケース8の軸方向に超音波振動を発生する超音波振動子1を取付け,c 円錐台のコーン2の中間の外周に半径方向に張り出したフランジ3を突設し,コーン2をケース8内に配置し,d コーン2を前記超音波振動子1と連結し,又コーン2のフランジ3をケース8に動かないように固定し,e コーン2の先端に工具側軸部4aを有するホーン4を設けたf 超音波加工装置。イ 本件考案との一致点(ア) 構成要件A,B,F,G,Iとの一致引用例5と本件考案とを対比させると,前記引用例5構成aは構成要件Aと,前記引用例5構成bは構成要件Bと,前記引用例5構成cの「コーン2をケース8内に配置し」は構成要件Fの「カップリングホーンをスピンドル内に配置し」と,前記引用例5構成dは構成要件G(ただし,「円筒体の先端の」を除く。)と,前記引用例5構成fは構成要件Iと,それぞれ一致すると認められる。(イ) 構成要件Cの「円柱状のホーン」との一致(ホーンの形状)引用例5における「コーン2」の形状は円錐台(原告の主張によれば徳利状)であり,原告は,構成要件Cの「円柱状ホーン」において一致していないと主張する。しかし,以下のとおり,構成要件Cにいう「円柱状」には「円錐台」が含まれると考えられることから,構成要件Cのうち,「円柱状のホーン」についても一致していると認められる。すなわち,「円柱」とは「① 円い柱。② 円柱面と,その母線に交わって互いに平行な二平面との三つによって囲まれた立体。その平面による断面を底面という。円筒。円壔(えんとう)。」をいうものであり(広辞苑第5版),必ずしも円柱の向かい合う二平面が全く同じ円形をなしていることまでは要しないものといえる。しかも,同構成要件では「円柱」ではなく「円柱状」と記載していることからすれば,円柱そのもののみならず,円柱に似た形をも包含していると解するのが相当である。そうすると,円錐台の形状をしている引用例5の「コーン2」は,「円柱」の概念に完全に包含されるかはともかく,少なくとも「円柱状」には該当するものというべきである。この点,原告は,本件考案ではホーンの形状を徳利状ではなく円柱状とすることにより,製作時の偏折や形状ずれが少なく正確なノード位置(中間位置)が出せるようにしている旨主張し,円柱状としたことの技術的意義を強調して,「円柱状」には徳利状は含まれない旨主張する。確かに,本件明細書においてかかる作用効果が記載されているのであれば,本件考案における「円柱状」という概念について,向かい合う二平面がほぼ同じ円形をなしているものに限るという解釈も採り得ないではないが,本件明細書においてかかる作用効果は全く記載されておらず,同明細書の実施例において円柱のホーンが記載されているというにとどまることからすると,本件考案における「円柱状」という概念を減縮して解釈することはできないというべきである。したがって,構成要件Cにおける「円柱状」には円錐台も含まれるというべきであり,引用例5の「コーン2」は,構成要件Cの「円柱状のホーン」と一致するものと認められる。ウ 本件考案との相違点本件考案と引用例5の一致点は以上のとおりであるから,相違点はその余の部分,すなわち以下の2点にあるものと認められる。(ア) 本件考案ではホーン本体の中間の外周に環状鍔部を突設し(構成要件C),同鍔部の先端にホーン本体と同じ軸心の円筒体を連設し(同D),同円筒体の先端に半径方向に張り出した取付部を設け(同E),しかも円筒体の肉厚を鍔部の肉厚及び円筒体先端の取付部の肉厚より薄くし,ホーン本体と鍔部と円筒体と取付部とを金属材で一体成形したカップリングホーンの(同Fの一部),円筒体の先端の取付部をスピンドルに動かないように固定している(同Gの一部)のに対し,引用例5ではコーン2に直接フランジ3を突設し,コーン2のフランジ3をケース8に動かないように固定している点(前記アc参照。以下「相違点1」という。)。(イ) 本件考案ではホーン本体の先端に加工工具取付部を設けている(構成要件H)のに対し,引用例5ではコーン2の先端に工具側軸部4aを有するホーン4を設けている点(前記アe参照。以下「相違点2」という。)。エ 被告は,上記相違点1について,引用例3において開示されており,本件考案は,引用例3を引用例5に適用することによりきわめて容易に考案をすることができたと主張する(上記相違点2についての明示的な主張はない。)。これに対し,原告は,かかる構成は引用例3には開示されておらず,また引用例3を引用例5に適用することもできない(阻害要因がある)と主張するので,以下,この点について検討する。

(3) 相違点1についてア 引用文献3の記載(ア) 引用文献3の「3.発明の詳細な説明」〔従来の技術とその問題点〕には以下の記載がある。「従来では,この超音波加工法を実施するための要部である超音波振動系が大型,大重量で,機械本体への取付けに広いスペースを必要とし,また,超音波研削盤として専用機化され,高価で,しかも機能的にも限られるという問題があった。また,従来の超音波研削盤では,超音波振動系の支持が主としてスラスト方向についてだけ行われ,横方向については特別な留意が払われておらず(略)」(イ) 同〔実施例〕には以下の記載がある(実施例の説明図は後記(エ))。「この超音波加工用アタッチメントAは,主軸2に対し着脱可能な回転筒3と,これに内蔵される直接加振型振動子ユニット4と,これの出力ブロック先端に着脱可能に取付けられる工具5と回転筒3を外囲し,内部に直接加振型振動子ユニット4に対する給電機構7を配したケーシング6とを備え,直接加振型振動子ユニット4は特殊な支持体8と補強体9により前記回転筒3に支持されている。(略)直接加振型振動子ユニット4は,側面徳利状をなす出力ブロック19と,背面ブロック20と,それらの間に介装される圧電素子21,22とを備え,中心ボルト23によりそれぞれ同心状に強固に固定されることでユニットとなっており,(略)この直接加振型振動子ユニット4は,

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