平成19(行ケ)10387審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成20年7月30日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告特許庁長官 原告農事組合法人日本植物
X鈴木隆史
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法令 |
商標権
商標法63条2項1回
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キーワード |
審決17回
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主文 |
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
事件の概要 |
1 本件は,原告らが下記商標(以下「本願商標」という )を共同出願したと。
, , ,ころ 特許庁から拒絶査定を受けたので これを不服として審判請求をしたが
, 。同庁から請求不成立の審決を受けたことから その取消しを求めた事案である
記
(商標) (指定商品)
第31類 果実
2 争点は 本願商標が商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標であるか 商, (
標法4条1項16号 ,である。) |
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判決文
判決言渡 平成20年7月30日
平成19年(行ケ)第10387号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成20年7月16日
判 決
原 告 農 事 組 合 法 人 日 本 植 物
原 告 X
被 告 特 許 庁 長 官
鈴 木 隆 史
指 定 代 理 人 堀 内 仁 子
同 井 岡 賢 一
同 内 山 進
主 文
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2006−24419号事件について平成19年9月26日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,原告らが下記商標(以下「本願商標」という。)を共同出願したと
ころ,特許庁から拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,
同庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。
記
(商標) (指定商品)
第31類 果実
2 争点は,本願商標が商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標であるか 商
(
標法4条1項16号)
,である。
第3 当事者の主張
1 請求の原因
(1) 特許庁における手続の経緯
原告らは,平成17年8月19日,「オレンジチェリー」の文字を表して
成る商標(本願商標)について,第31類「果実」を指定商品として商標登
録出願(商願2005−81644号)をしたが,平成18年8月30日付
けで拒絶査定を受けたので,平成18年9月29日これに対する不服の審判
請求をした。
特許庁は同請求を不服2006−24419号事件として審理した上,平
成19年9月26日,「本件審判請求は,成り立たない。」との審決をし,そ
の謄本は平成19年10月23日原告らに送達された。
(2) 審決の内容
審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商
標はこれに接する取引者・需要者をして,商品の品質について誤認を生じさ
せるおそれがあるから商標法(以下「法」という 。)4条1項16号に該当
する,というものである。
(3) 審決の取消事由
しかしながら,審決には,以下に述べるとおり誤りがあるから,違法とし
て取り消されるべきである。
ア 審決は ,「さくらんぼ」を直接的に表す「チェリー」の文字を含む本願
商標をその指定商品中「さくらんぼ」以外の商品に使用するときは,これ
に接する取引者,需要者をして,商品の品質について誤認を生じさせるお
それがあるとする。
イ しかし ,「チェリー」の語源を調べると,必ずしも日本国内でいわれる
「さくらんぼ」のみを意味するものではなく,「さくらんぼ」が今日の日
本でいうところの「チェリー」と解釈されているのは大きな誤りである。
そもそも「さくらんぼ」が「チェリー」と限定的に使われたのは,明治初
年に日本に輸入されてからのことであり,その後,日本人の意識の中に「チ
ェリー」は単に「さくらんぼ」として植え付けられたものにすぎない。現
に,食用ホオズキの英語の呼称は,「ground cherry」「wi
nter cherry」とされており,もともとはアンデス原産で世界
に広まったものである。 チェリー」が単に日本でいわれる「さくらんぼ」
「
を意味するものでないことは,このことからも明らかである。
ウ 外国では古くから「チェリートマト」と称される食材があり,現に外来
語として国内でも使用されている。そのほかにも, チェリーローレル」 セ
「 (
イヨウバチノキ)「チェリーブランデー」 ガーベラ)「チェリープラム」
, ( ,
(ミロバランスモモ) 「チェリートウガラシ」
, (ハンガリアンチェリート
ウガラシ)「チェリーバーチ」
, (ベツラレンタ)などがある。
また,学術的には食物の分類上,「チェリー類」という分類があり,こ
れは,カリウムに富み,他の赤い果実と同様にビタミンA,ビタミンB,
更にはビタミンCを多く含む果実の総称である 。「チェリー類」の食物と
しては,「カプリン」 「サワーチェリー」 「サンドチェリー」 「チェリー
, , ,
ローレル」「チマジャ」「チョークチェリー」などがある。
, ,
これらによれば,審決がいう「チェリー」が「さくらんぼ」のみを意味
するものでないことは明らかである。
エ さらに ,「さくらんぼ」は「セイヨウミザクラ」の実の総称で,その原
産地はアジア西部からヨーロッパ南西部更には北アメリカと広く分布して
おり,日本の「さくらの花」に似た花を咲かせる植物である。したがって,
「さくらんぼ」そのものも日本古来の「桜」の木から採取されたものでは
なく,外来の植物といえる。日本では「さくらんぼ」のことを「桜桃」と
称しており,日本の「桜の実」と「チェリー」とは全く異種の木からなる
ものである。
オ 原告らは,平成13年に原告らが外来種の食用ホオズキを交配して,新
商品である食用ホオズキ「オレンジチェリー」を開発した。この「オレン
ジチェリー」は,日本古来のほおずきとは明らかに区別できるものであり,
既にインターネット市場又は一般商取引でその名が広く認知されており,
独自の識別商標としての機能を十分に有している。
2 請求原因に対する認否
請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3 被告の反論
審決の認定判断は,以下に述べるとおり正当であり,原告ら主張の取消事由
は理由がない。
(1) 本願商標は,「オレンジチェリー」の片仮名文字を横書きして成るもので
あり,その構成中,「オレンジ」の文字部分は「①ミカン科の果樹およびそ
の果実の総称。…②オレンジ色。(新村出編「広辞苑
」 第5版」415頁,
平成10年11月11日第1刷発行・株式会社岩波書店,乙1)の意味を有
する語であり,また,「チェリー」の文字部分は ,「桜。桜の実。さくらんぼ
う。(前掲広辞苑1702頁,乙2)の意味を有する語であり,いずれも広
」
く一般に親しまれている語であって ,「オレンジチェリー」の語が,全体と
して特定の意味合いを有するものではないから,本願商標は,「オレンジ」
の語と「チェリー」の語とを組み合わせたものと理解される。
(2)ア 「チェリー」の文字は,上述のとおり ,「桜。桜の実。さくらんぼう。」
の意味を有する語であり,本願商標の指定商品「果実」との関係において,
「さくらんぼ」を表す語として一般に理解されていることは,以下の辞典
類や新聞記事情報等から明らかである。
(ア) 「カタカナ語・略語辞典〔改訂新版〕(平成8年1月10日発行・株
」
式会社旺文社)の「チェリー」の項には,〔cherry〕①サクランボ。桜
「
桃。サクラの木。サクラ材。」との記載がある(乙3)。
(イ) 「コンサイスカタカナ語辞典 第2版」
(平成14年11月1日第6刷
発行・株式会社三省堂)の「チェリー」の項には,〔cherry <…〕①バ
「
ラ科の果樹.またはその実,さくらんぼ.桜桃(おうとう )」との記載
.
がある(乙4)
。
(ウ) 「新明解国語辞典 第6版」
(平成18年2月10日第5刷発行・株式
会社三省堂)の「チェリー」の項には,〔cherry〕①さくらんぼ。②桜
「
の木。」との記載がある(乙5)
。
(エ) 「朝日現代用語 知恵蔵2004」
(平成16年1月1日発行・朝日新
聞社)の「チェリー」の項には ,〔cherry〕①さくらんぼ,桜 .
「 」との
記載がある(乙6)
。
(オ) 「現代用語の基礎知識2006」
(平成18年1月1日発行・自由国民
社)の「チェリー」の項には,(cherry)①さくらんぼ。 和製用法で)
「 (
桜の木。」との記載がある(乙7)。
(カ) 「リーダーズ英和辞典」(昭和59年年5月初版第1刷発行・株式会社
研究社)の「cherry」の項には,名詞として「a サクランボ…b 《植》
サクラ…;さくら材.c サクランボ色…」,形容詞として「サクランボ
色の:さくら材製の;…」などの記載がある(乙8)。
(キ) 「ケンブリッジ世界の食物史大百科事典5」(平成17年6月10日初
版第1刷発行・株式会社朝倉書店)の「チェリー[オウトウ]」の項に
は,「チェリーには…野生のチェリー…今でも,世界のチェリー…」と
の記載がある(甲5)。
(ク) 平成14年6月24日付け毎日新聞(東京朝刊)には,[日本一のワ
「
ケ]サクランボ収穫量 味抜群「佐藤錦」誕生の地−−山形県東根市」
の見出しの下に,「…92年の輸入完全自由化で外国産“チェリー”と
の競争にさらされたものの,日本人の味覚に合うのか『国産の方が断然
人気が高い』
(東京都内の中卸業者)」との記載がある(乙9)
。 。
(ケ) 平成18年6月2日付け朝日新聞(大阪地方版/大阪)には,
「初夏の
深紅・アメリカンチェリー,輸入ピーク 関空/大阪府」の見出しの下
に,「…日本は世界有数のチェリーの消費大国で,関空では昨年,31
63トンが輸入された。」との記載がある(乙10)
。
(コ) 平成19年5月26日付け朝日新聞(大阪地方版/大阪)には,「甘い
チェリー,米西海岸の香り 関空で通関ピーク/大阪府」の見出しの下
に,「米国西海岸の日差しをさんさんと浴び,深紅に色づいたアメリカ
ンチェリーの輸入が,関西空港でピークを迎えた。…」との記載がある
(乙11)。
(サ) 「 楽天市場】レイニエチェリー(アメリカ)
【 :食卓の花」の見出しの
ウェブサイトに,「チェリーの貴婦人レイニエ 」 「…このレイニエチェ
,
リー♪写真でお判りのように,通常のアメリカンチェリーのように深紅
のチェリーではありません。…」との記載がある(乙12)。
(シ) 「タルトチェリージュース 販売 通販の【ダイエットコム】
」の見出
しのウェブサイトに, …タルトチェリージュースは,
「 タルトチェリー 100
%の濃縮果汁飲料です。使用されているチェリー(さくらんぼ)は米国
ミシガン州産のタルトチェリーを使用しております。…」との記載があ
る(乙13)
。
(ス) 「チェリー 100 %ジュース山形産/鈴木食品/ウイスキー販売」の見
出しのウェブサイトに,「チェリー 100 %ジュース山形産/鈴木食品」
,
「高級果実『さくらんぼ』100パーセントのジュースです」との記載
がある(乙14)
。
(セ) 「コンフィチュール 販売 マンゴージャム,さくらんぼジャム,オレ
ンジジャム」の見出しのウェブサイトに ,「■レッドグローリー(チェ
リー) ,
」 「レッドグローリーは,さくらんぼの中でも最も早く実を結ぶ
品種。…」との記載がある(乙15)。
イ 原告らは,「チェリー」の語源を調べると,必ずしも日本国内にいわれ
る「さくらんぼ」のみを意味していないとか,「チェリー」が単に日本国
内でいわれる「さくらんぼ」を意味するものでない旨主張する。
しかし,チェリー」
「 の語について,食用ホオズキが英語で ground cherry」
「
とも呼称されたりするほか,「チェリートマト」(ミニトマト)「チェリー
,
ブランデー」(ガーベラ)などの語があるとしても,「チェリー」の語は,
前掲リーダーズ英和辞典(乙8)の記載にあるように,第一義的には, サ
「
クランボ サクラ」を意味しており,さくらんぼ,あるいは桜にあやかっ
たものと思われる場合に使用されるといえるから,原告らが挙げる上記使
用例があることを理由に ,「チェリー」が単に日本国内でいわれる「さく
らんぼ」を意味するものではないということはできないし,本願商標の指
定商品である「果実」との関係においては ,「チェリー」の語は,上記の
とおり ,「さくらんぼ」を意味するものとして認識されるというべきであ
る。
(3)ア あるものを特定していう場合に,そのものを表す名詞の前に形容詞等を
付して「△△×××」「×××」は当該名詞。
( )のように表現するのが一
般的であり,「さくらんぼ」(チェリー)についても,特定の種類又はその
加工品であることを表す場合には,以下のように「○○チェリー」と表示
される。
(ア) 「総合食品事典ハンディ版」(平成10年4月5日第6版新訂版第5刷
発行・株式会社同文書院)の「さくらんぼ 桜ん坊,桜桃」の項には,
「 Cherry]
[ 〈おうとう〉ともいう.…多肉多漿質で,あまずっぱい,独
特の外観と風味は他の果実には得がたいものである.…〔品種〕甘果桜
桃(スイートチェリー)と酸果桜桃(サワーチェリー)がある.…マラ
スキノチェリーとは本来は欧米でマラスキノというさくらんぼ(品種)
の果汁をしぼり,…その中にマラスキノ種の生果実を浸漬して得た製品
のことをいう.…糖度70%以上になるまでにして,糖液から取り出し
たものを〈ドレンチェリー〉,糖液浸透後表面に糖類の結晶を析出させ
たものを〈クリスタルチェリー〉という.」との記載がある(乙16 )。
(イ) 「改訂 調理用語辞典」(平成10年12月25日改訂版第1刷発行・
社団法人全国調理師養成施設協会)の「さくらんぼ【桜坊,桜桃】」の
項には ,「…スイートチェリー(甘果オウトウ ),デュークチェリー(甘
果,酸果の雑種),サワーチェリー(酸果オウトウ)の三つに大別され
る。
」との記載がある(乙17)
。
(ウ) 前掲「改訂 調理用語辞典」の「アメリカンチェリー」の項には,
「ア
メリカから輸入されるサクランボの総称。」との記載がある(乙18 )。
(エ) 平成12年7月6日付け朝日新聞(大阪地方版/高知)には,
「お買い
物/高知」の見出しの下に ,《 サニーマート》
「 ◆アメリカ産レーニア
チェリー 8日まで。果肉が柔らかくて,甘みの強いサクランボ。」と
の記載がある(乙19)。
(オ) 平成14年7月26日付け日本食糧新聞には, ヒーロ社のジャム類 L
「 『
e Fruit』発売(鈴商 )」の見出しの下に,「…『ブラックチェリ
ージャム』 黒サクランボ) …『レッドチェリージャム』 サクランボ)
( , (
…」との記載がある(乙20)
。
(カ) 平成17年7月2日付け日本経済新聞(夕刊)には,「最盛期のサクラ
ンボ――春先の低温で1割高(菜時季 )」の見出しの下に,「四月下旬か
ら出回り始める米国産のアメリカンチェリーが終盤を迎える五月下旬こ
ろ,山梨,長野,新潟,福島といった産地で国産サクランボの出荷が始
まる。…」との記載がある(乙21)。
(キ) 平成18年1月19日付け日本経済新聞(地方経済面 (静岡))には,
「マックスバリュ東海,甘みの強い豪産サクランボ販売 。」の見出しの
下に,「…豪州産のサクランボ『タスマニアチェリー』の販売を直営全
五十一店舗で始めた。タスマニアチェリーは見た目がアメリカンチェリ
ーに似ており,甘みが強いのが特徴。この時期はチリ産のダークチェリ
ーの販売もほぼ終了しているため,『二月上旬まで販売できる貴重な品
種』という。…」との記載がある(乙22)。
(ク) 「 楽天市場】カナディアンチェリー:日光種苗」の見出しのウェブサ
【
イトに,「カナディアンチェリー 黒い実に旨味が詰まった北米産サク
ランボ」との記載がある(乙23)
。
(ケ) 「サンヨーの果実缶詰;サンヨーの缶詰」の見出しのウェブサイトに,
「果実缶詰 さくらんぼ」の商品名として ,「レッドチェリー」 「マラ
,
スキノチェリー」 「ゴールデンチェリー」との記載がある(乙24 )
, 。
(コ) 「ブラックチェリー・ブルーベリージャム」の見出しのウェブサイト
に,「[商品名]ブラックチェリー・ブルーベリージャム [商品説明]デン
マークで作られたブルーベリー・さくらんぼを惜しみなく,ふんだんに
使ったジャムです。
」との記載がある(乙25)
。
(サ) 「さくらんぼ風味のスカイブリッジ」の見出しのウェブサイトに, [商
「
品名]さくらんぼ風味のスカイブリッジ [商品説明]グリオットチェリ
ーのさわやかな風味とフレッシュバターの香り豊かな焼き菓子です。中
のグリオットチェリーが素敵です。」との記載がある(乙26)。
(シ) 「こんなところで産まれましたロイヤルチェリー チェリーナチュロ」
の見出しのウェブサイトに,「チェリーナチュロで使用しているチェリ
ーは,米国ミシガン州の大自然の中で太陽の光をいっぱい受けて育てら
れたタルトチェリー そんなチェリーについてご紹介致します 。」との
記載がある(乙27)。
イ 同様に「さくらんぼ」以外の「果実」についても,その種類を限定し,
特定したものについて ,「○○×××」「×××」は,果実名)と表示す
(
ることが以下のように行われている。
(ア) 前掲「改訂 調理用語辞典」の「オレンジ」の項には,
「…スイートオ
レンジ(アマダイダイ)とサワーオレンジ(ダイダイ)の総称…ネーブ
ルオレンジ,ブラッドオレンジ,…」との記載がある(乙28)。
(イ) 「東京ガス:食の生活110番Q&A:マンゴー」の見出しのウェブ
サイトに,「●マンゴーの種類と特徴」として,「ペリカンマンゴー フ
ィリピンマンゴー イエローマンゴー ゴールデンマンゴー アップル
マンゴー」との記載がある(乙29)
。
(ウ) 「食と健康−バナナ」の見出しのウェブサイトに,「バナナの種類」と
して ,「フィリピンバナナ モラードバナナ モンキーバナナ」との記
載がある(乙30)
。
(エ) 「パイナップルの種類 スナックパイン 完熟パイン ピーチパイン」
の見出しのウェブサイトに,「石垣島で栽培されている主なパイナップ
ル」として,「スナックパイン(ボゴール) ピーチパイン(ミルクパ
イン) 香水パイン ゴールデンパイン」との記載がある(乙31 )。
ウ 以上のとおり,「さくらんぼ」を含む果実を取り扱う分野において,そ
の果実を種類や加工方法等から更に類別する場合に,前半に形容詞等の特
定・限定するための語を配し,後半の果実名と結合して表すことが広く一
般的に行われているところである。
そうすると ,「○○チェリー」と表示された場合には,その後半に位置
する「チェリー」の文字から,ある種のチェリーとして,当該商品が「さ
くらんぼ」であることを認識するものというべきである。
(4) 原告らは ,「オレンジチェリー」の名称がインターネット市場や一般市場
で広く認知されており,独自の識別商標としての機能を有している旨主張す
る。
しかし,仮に食用ホオズキ「オレンジチェリー」が日本古来のほおずきと
区別できるとしても,本願商標の指定商品「果実」に「オレンジチェリー」
の文字が使用されたときには,その商品が「さくらんぼ」であるとする商品
の品質の誤認を生ずることは否定できない。
加えて,原告らは,本願商標を食用ホオズキに使用している証拠として,
品種名称を「おれちぇ/オレチェ/ORECHE」とする食用ホオズキにつ
いての品種登録願を提出するものの ,「オレンジチェリー」の語が食用ホオ
ズキの分野を含めて広く認知されているということについては何ら立証して
いないし,しかも,食用ホオズキは野菜の一種というべきである。
そうすると, オレンジチェリー」の文字が「果実」に使用された場合に,
「
常に特定の意味等を有する一体の語として認識されるとする事情は何ら存在
しない。
(5) 以上のとおり,本願商標は, オレンジチェリー」の文字から成るところ,
「
その指定商品「果実」との関係において,構成中の「チェリー」の文字は,
「さくらんぼ」を意味する語として広く使用されている語であって,構成末
尾に位置するものであるから,本願商標をその指定商品「果実」に使用した
場合,これに接する取引者,需要者は,構成後半部分の「チェリー」の文字
から,その商品が「さくらんぼ」であると認識,理解するものである。
そうすると,本願商標は,その指定商品中 ,「さくらんぼ」以外の商品に
使用するときは,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある商標という
べきである。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯) (2)(審決の内容)の各事実は,
,
当事者間に争いがない。
2 別添審決写し及び弁論の全趣旨によれば,本願に対する平成18年8月30
日付け拒絶査定の前提として被告が原告らに対して発した拒絶理由通知には,
① 本願「オレンジチェリー」は「オレンジ色のさくらんぼ」程の意味合いを
有するにすぎないから,本願商標は法3条1項3号に該当するとともに,法4
条1項16号に該当する,② 本願「オレンジチェリー」は,指定商品を取り
扱う業界において「オレンジチェリー」なる食用ほおずきの一種が取引されて
いる実情からすると,これをその指定商品中の「食用ほおずき」に使用した場
合,単に商品の品質等を表示するにすぎないから,本願商標は法3条1項3号
に該当する,旨の記載がなされている。
これに対し,原告らからの不服審判請求に基づき平成19年9月26日にな
された本件審決においては,上記①及び②の理由のうち本願商標が法3条1項
3号に該当するとした部分を採用せず ,「さくらんぼ」を直接的に表す「チェ
リー」の文字を含む本願商標を,その指定商品中「さくらんぼ」以外の商品に
使用するときは,これに接する取引者,需要者をして,商品の品質について誤
認を生じさせるおそれがあるから法4条1項16号に該当する,とされたもの
である。
ところで,商標法63条2項の準用する特許法178条6項によれば「審判
を請求することができる事項に関する訴えは,審決に対するものでなければ,
提起することができない」とされ,原告らも本件訴訟においては平成19年9
月26日付けでなされた本件審決の取消しを求めているのであるから,本件訴
訟においては,本願が法4条1項16号に該当するとした部分のみが争点とな
るものである。
したがって,原告らが平成20年1月30日及び2月5日付けの各準備書面
において述べる法3条1項3号に関する部分は,理由がないことになる。
そこで,本願が法4条1項16号( 商品の品質又は役務の質の誤認を生ず
「
るおそれがある商標」
)に該当するかどうかにつき,以下検討する。
3 本願商標の意味
(1) 証拠(乙1∼31)によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 新村出編「広辞苑 第5版 」(平成10年11月11日第1刷発行・株
式会社岩波書店)の「オレンジ」及び「チェリー」の項には,それぞれ次
のような記載がある。
(ア) 「オレンジ ①ミカン科の果樹およびその果実の総称。…②オレンジ
色。(乙1)
」
(イ) 「チェリー 桜。桜の実。さくらんぼう。(乙2)
」
イ 辞典等において ,「チェリー」の文字が「さくらんぼ」を表す語として
使用されている例として,次のものが認められる。
(ア) 「カタカナ語・略語辞典〔改訂新版〕(平成8年1月10日発行・株
」
式会社旺文社)の「チェリー」の項には,〔cherry〕①サクランボ。桜
「
桃。サクラの木。サクラ材。
」との記載がある(乙3)。
(イ) 「コンサイスカタカナ語辞典 第2版」
(平成14年11月1日第6刷
発行・株式会社三省堂)の「チェリー」の項には,〔cherry <…〕①バ
「
ラ科の果樹.またはその実,さくらんぼ.桜桃(おうとう )」との記載
.
がある(乙4)
。
(ウ) 「新明解国語辞典 第6版」
(平成18年2月10日第5刷発行・株式
会社三省堂)の「チェリー」の項には,〔cherry〕①さくらんぼ。②桜
「
の木。」との記載がある(乙5)
。
(エ) 「朝日現代用語 知恵蔵2004」
(平成16年1月1日発行・朝日新
聞社)の「チェリー」の項には ,〔cherry〕①さくらんぼ,桜 .
「 」との
記載がある(乙6)
。
(オ) 「現代用語の基礎知識2006」
(平成18年1月1日発行・自由国民
社)の「チェリー」の項には,(cherry)①さくらんぼ。 和製用法で)
「 (
桜の木。」との記載がある(乙7)
。
(カ) 「リーダーズ英和辞典」(昭和59年年5月初版第1刷発行・株式会社
研究社)の「cherry」の項には,名詞として「a サクランボ…b 《植》
サクラ…;さくら材.c サクランボ色…」,形容詞として「サクランボ
色の:さくら材製の;…」などの記載がある(乙8)。
(キ) 「ケンブリッジ世界の食物史大百科事典5−食物用語辞典−」
(平成1
7年6月10日初版第1刷発行・株式会社朝倉書店)の「チェリー[オ
ウトウ]」の項には,「チェリーには…野生のチェリー…今でも,世界の
チェリー…」との記載がある(甲5)
。
(ク) 平成14年6月24日付け毎日新聞(東京朝刊)には,[日本一のワ
「
ケ]サクランボ収穫量 味抜群「佐藤錦」誕生の地−−山形県東根市」
の見出しの下に,「…92年の輸入完全自由化で外国産“チェリー”と
の競争にさらされたものの,日本人の味覚に合うのか『国産の方が断然
人気が高い』
(東京都内の中卸業者)」との記載がある(乙9)
。 。
(ケ) 平成18年6月2日付け朝日新聞(大阪地方版/大阪)には,
「初夏の
深紅・アメリカンチェリー,輸入ピーク 関空/大阪府」の見出しの下
に,「…日本は世界有数のチェリーの消費大国で,関空では昨年,31
63トンが輸入された。」との記載がある(乙10)
。
(コ) 平成19年5月26日付け朝日新聞(大阪地方版/大阪)には,「甘い
チェリー,米西海岸の香り 関空で通関ピーク/大阪府」の見出しの下
に,「米国西海岸の日差しをさんさんと浴び,深紅に色づいたアメリカ
ンチェリーの輸入が,関西空港でピークを迎えた。…」との記載がある
(乙11)。
(サ) 「 楽天市場】レイニエチェリー(アメリカ)
【 :食卓の花」の見出しの
ウェブサイトに,「チェリーの貴婦人レイニエ 」 「…このレイニエチェ
,
リー♪写真でお判りのように,通常のアメリカンチェリーのように深紅
のチェリーではありません。…」との記載がある(乙12)。
(シ) 「タルトチェリージュース 販売 通販の【ダイエットコム】
」の見出
しのウェブサイトに, …タルトチェリージュースは,
「 タルトチェリー 100
%の濃縮果汁飲料です。使用されているチェリー(さくらんぼ)は米国
ミシガン州産のタルトチェリーを使用しております。…」との記載があ
る(乙13)
。
(ス) 「チェリー 100 %ジュース山形産/鈴木食品/ウイスキー販売」の見
出しのウェブサイトに,「チェリー 100 %ジュース山形産/鈴木食品」
,
「高級果実『さくらんぼ』100パーセントのジュースです」との記載
がある(乙14)
。
(セ) 「コンフィチュール 販売 マンゴージャム,さくらんぼジャム,オレ
ンジジャム」の見出しのウェブサイトに ,「■レッドグローリー(チェ
リー) ,
」 「レッドグローリーは,さくらんぼの中でも最も早く実を結ぶ
品種。…」との記載がある(乙15)
。
ウ 辞典等において,チェリーの語の前に別の語を付加して使用されている
例として,次のものが認められる。
(ア) 「総合食品事典ハンディ版」(平成10年4月5日第6版新訂版第5刷
発行・株式会社同文書院)の「さくらんぼ 桜ん坊,桜桃」の項には,
「 Cherry]
[ 〈おうとう〉ともいう.…多肉多漿質で,あまずっぱい,独
特の外観と風味は他の果実には得がたいものである.…〔品種〕甘果桜
桃(スイートチェリー)と酸果桜桃(サワーチェリー)がある.…マラ
スキノチェリーとは本来は欧米でマラスキノというさくらんぼ(品種)
の果汁をしぼり,…その中にマラスキノ種の生果実を浸漬して得た製品
のことをいう.…糖度70%以上になるまでにして,糖液から取り出し
たものを〈ドレンチェリー〉,糖液浸透後表面に糖類の結晶を析出させ
たものを〈クリスタルチェリー〉という.」との記載がある(乙16 )。
(イ) 「改訂 調理用語辞典」(平成10年12月25日改訂版第1刷発行・
社団法人全国調理師養成施設協会)の「さくらんぼ【桜坊,桜桃】」の
項には,「…スイートチェリー(甘果オウトウ ),デュークチェリー(甘
果,酸果の雑種),サワーチェリー(酸果オウトウ)の三つに大別され
る。
」との記載がある(乙17)
。
(ウ) 前掲「改訂 調理用語辞典」の「アメリカンチェリー」の項には,
「ア
メリカから輸入されるサクランボの総称。」との記載がある(乙18 )。
(エ) 平成12年7月6日付け朝日新聞(大阪地方版/高知)には,
「お買い
物/高知」の見出しの下に ,《 サニーマート》
「 ◆アメリカ産レーニア
チェリー 8日まで。果肉が柔らかくて,甘みの強いサクランボ。」と
の記載がある(乙19)。
(オ) 平成14年7月26日付け日本食糧新聞には, ヒーロ社のジャム類 L
「 『
e Fruit』発売(鈴商 )」の見出しの下に,「…『ブラックチェリ
ージャム』 黒サクランボ) …『レッドチェリージャム』 サクランボ)
( , (
…」との記載がある(乙20)
。
(カ) 平成17年7月2日付け日本経済新聞(夕刊)には,「最盛期のサクラ
ンボ――春先の低温で1割高(菜時季 )」の見出しの下に,「四月下旬か
ら出回り始める米国産のアメリカンチェリーが終盤を迎える五月下旬こ
ろ,山梨,長野,新潟,福島といった産地で国産サクランボの出荷が始
まる。…」との記載がある(乙21)。
(キ) 平成18年1月19日付け日本経済新聞(地方経済面 (静岡))には,
「マックスバリュ東海,甘みの強い豪産サクランボ販売 。」の見出しの
下に,「…豪州産のサクランボ『タスマニアチェリー』の販売を直営全
五十一店舗で始めた。タスマニアチェリーは見た目がアメリカンチェリ
ーに似ており,甘みが強いのが特徴。この時期はチリ産のダークチェリ
ーの販売もほぼ終了しているため,『二月上旬まで販売できる貴重な品
種』という。…」との記載がある(乙22)。
(ク) 「 楽天市場】カナディアンチェリー:日光種苗」の見出しのウェブサ
【
イトに,「カナディアンチェリー 黒い実に旨味が詰まった北米産サク
ランボ」との記載がある(乙23)。
(ケ) 「サンヨーの果実缶詰;サンヨーの缶詰」の見出しのウェブサイトに,
「果実缶詰 さくらんぼ」の商品名として ,「レッドチェリー」 「マラ
,
スキノチェリー」 「ゴールデンチェリー」との記載がある(乙24 )
, 。
(コ) 「ブラックチェリー・ブルーベリージャム」の見出しのウェブサイト
に,「[商品名]ブラックチェリー・ブルーベリージャム [商品説明]デン
マークで作られたブルーベリー・さくらんぼを惜しみなく,ふんだんに
使ったジャムです。
」との記載がある(乙25)。
(サ) 「さくらんぼ風味のスカイブリッジ」の見出しのウェブサイトに, [商
「
品名]さくらんぼ風味のスカイブリッジ [商品説明]グリオットチェリ
ーのさわやかな風味とフレッシュバターの香り豊かな焼き菓子です。中
のグリオットチェリーが素敵です。」との記載がある(乙26)。
(シ) 「こんなところで産まれましたロイヤルチェリー チェリーナチュロ」
の見出しのウェブサイトに,「チェリーナチュロで使用しているチェリ
ーは,米国ミシガン州の大自然の中で太陽の光をいっぱい受けて育てら
れたタルトチェリー そんなチェリーについてご紹介致します 。」との
記載がある(乙27)。
エ 辞典等において ,「さくらんぼ」以外の「果実」について,その語の前
に別の語を付加して使用されている例として,次のものが認められる。
(ア) 前掲「改訂 調理用語辞典」の「オレンジ」の項には,
「…スイートオ
レンジ(アマダイダイ)とサワーオレンジ(ダイダイ)の総称…ネーブ
ルオレンジ,ブラッドオレンジ,…」との記載がある(乙28)。
(イ) 「東京ガス:食の生活110番Q&A:マンゴー」の見出しのウェブ
サイトに,「●マンゴーの種類と特徴」として,「ペリカンマンゴー フ
ィリピンマンゴー イエローマンゴー ゴールデンマンゴー アップル
マンゴー」との記載がある(乙29)。
(ウ) 「食と健康−バナナ」の見出しのウェブサイトに,「バナナの種類」と
して ,「フィリピンバナナ モラードバナナ モンキーバナナ」との記
載がある(乙30)
。
(エ) 「パイナップルの種類 スナックパイン 完熟パイン ピーチパイン」
の見出しのウェブサイトに,「石垣島で栽培されている主なパイナップ
ル」として,「スナックパイン(ボゴール) ピーチパイン(ミルクパ
イン) 香水パイン ゴールデンパイン」との記載がある(乙31 )。
(2) 上記(1)ア及びイによれば,「オレンジ」はみかん科の果実の名称又はオレ
ンジ色を指すものとして ,「チェリー」もまた果実であるさくらんぼを指す
ものとして,それぞれ一般に認識されるものであると認められる。そして,
上記ウ及びエのとおり,「チェリー」その他の果実を指す語の前に「スイー
ト」「サワー」「アメリカン」等,別の語が付加されて使用される例が少な
, ,
からず見受けられるところ,これら付加される語はいずれも「チェリー」そ
の他の果実を修飾するいわば形容詞として使用されていること,殊に,「ブ
ラック」「レッド」「ゴールデン」等,色に関する語が付加された場合には,
, ,
果実の色自体を指すものとして用いられていることが認められる。
そうすると,「オレンジチェリー」とする本願商標に接した場合,取引者
及び需要者は果実としての共通性からミカン科の果実であるオレンジとさく
らんぼのミックスしたものないしそれに関連した新種の果実を想起したり,
また,「オレンジ」がオレンジ色をも意味する語であることからして,上記
のような形容詞的な用法として「オレンジ色のチェリー(さくらんぼ)」を
想起することがあり得るものと認められる。
そうすると,「オレンジチェリー」との本願商標を,その指定商品である
「果実」に用いた場合には,取引者及び需要者において当該商品が「さくら
んぼ」の一種(例えば,オレンジ色がかったさくらんぼ等)を指すものとし
て認識されることがあり得るというべきであるから,これを「さくらんぼ」
以外の果実に用いた場合には,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるとい
うべきである。
4 原告らの取消事由の主張に対する判断
(1)ア まず原告らは,「チェリー」は単に日本でいわれる「さくらんぼ」のみ
を意味するものでないと主張する。
イ 確かに,原告らの挙げる文献等(甲3,5,11∼18)には,次のと
おり,さくらんぼとは異なる果実等の名称に「チェリー」との語が付加さ
れた例が挙げられている。
・ 「サラダ用トマトのもうひとつの主流は,ミニトマト(プチトマト)
とも呼ばれるチェリートマトである。(大場秀章著「サラダ野菜の植物
」
史」平成16年5月15日発行・株式会社新潮社〔甲3〕)
・ 「チェリープラム…はミロバランプラムの名でも知られる.西アジア
原産で,今日ヨーロッパでは栽培品種の台木用によく利用されている.
…チェリープラムの果実は黄色,赤ないし紫色で果汁に富むが特別にお
いしいとはいえない .(前掲「ケンブリッジ世界の食物史大百科事典5
」
−食物用語辞典−」
〔甲5〕
)
・ 「チェリーローレル…はヨーロッパ原産の常緑樹だが,現在では北米
にも帰化している.果実は黒色で小さくわずかに味がするだけである.
一方,その大きくて光沢のある葉にはビターアーモンドのような香りが
あり,料理用,とくにデザートのプディングの香りづけに用いる .(前
」
掲「ケンブリッジ世界の食物史大百科事典5−食物用語辞典−」 甲5〕
〔 )
・ 「コーヒーチェリー[coffee cherry]コーヒーの樹の果実。(五十嵐
」
脩ほか編「丸善食品総合辞典〈普及版 〉」平成17年3月31日発行・
丸善株式会社〔甲12 〕 ,
) 「果実が赤く熟したころがコーヒー豆の収穫
期である。収穫した果実は,サクランボに似ているところからコーヒー
チェリーと呼ばれている。(河野友美編 新・食品事典11 水・飲料」
」 「
平成4年10月20日発行・株式会社真珠書院〔甲14〕)
・ 「Ground Cherry ショクヨウホウズキ …用途は一般的なトマト,ま
たは,果物と同様です。ショクヨウホウズキは,生で,サラダやデザー
トに,香味料として,ジャムやゼリーとして食べることができます。果
実は,チョコレートにちょっと浸すと素晴らしく,また乾燥させたもの
を食べることができます。 ( 英語で覚える植物名−植物の英語名を知
」「
るブログ 樹木・草花・ハーブ・野菜・果物・ガーデニング」の見出し
のウェブサイト〔甲17〕
)
・ 「winter cherry ほおずき 鬼灯 …よく栽培されるユーラシア大陸
産の植物。赤橙色をした紙のように薄くて膨らんだ外皮に包まれた小さ
い赤い実がなります。(同上〔甲18〕
」 )
ウ しかし,チェリーという語が,さくらんぼという特定の果実を指称する
ものとして認識される場合が多い以上,前記3のように「さくらんぼ」と
の誤認を生じるおそれがあることは否定し得ないのであって,このことは,
さくらんぼとは異なる果実等の名称に「チェリー」との語が付加される例
が存在することによって左右されるものではない。したがって,その他原
告らが挙げる種々の言葉に関するものを含め,原告らの主張は採用するこ
とができない。
(2) さらに原告らは,平成13年に外来種の食用ホオズキを交配して,新商品
である食用ホオズキ「オレンジチェリー」を開発したものであり,この「オ
レンジチェリー」は,既にインターネット市場又は一般商取引でその名が広
く認知され,独自の識別商標としての機能を有していると主張する。
しかし,本件における全証拠をもってしても,「オレンジチェリー」の名
称が「さくらんぼ」との誤認を生じるおそれがないほどに一般商取引で広く
認知されているとまでは認めることはできないし,また,原告らの上記主張
を前提としても,指定商品である「果実」全般のうち,食用ホオズキ以外の
果実との関係ではなお誤認を生じるおそれがあることを否定できないから,
原告らの上記主張は採用することができない。
5 結論
以上によれば,原告ら主張に係る取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第2部
裁判長裁判官 中 野 哲 弘
裁判官 森 義 之
裁判官 澁 谷 勝 海
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