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平成20(ネ)10029実用新案権使用差止等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成20年7月23日
事件種別 民事
当事者 控訴人
被控訴人プラテツク株式会社
対象物 移動式足踏シャワー
法令 実用新案権
実用新案法41条1回
実用新案法3条2項1回
キーワード 無効24回
審決15回
無効審判7回
実用新案権6回
差止3回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1 一審原告である控訴人は,名称を「移動式足踏シャワー」とする考案につい て実用新案登録(登録第3050314号。平成9年2月4日出願,平成10 年4月22日登録。請求項の数4。以下「本件実用新案登録」という。)を有 していたところ,本件は,一審被告である被控訴人が商品名「どこでもシャワ ー」とする商品(原判決にいう「被告製品」。以下「被控訴人商品」とい う。)を販売していることに対し,控訴人が,上記商品は上記考案の技術的範 囲に属すると主張して,上記実用新案権に基づき上記商品の販売の差止めを求 めた事案である。

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判決文

判決言渡 平成20年7月23日
平成20年(ネ)第10029号 実用新案権使用差止等請求控訴事件(原審・東
京地裁平成19年(ワ)第29874号)
口頭弁論終結日 平成20年6月23日
判 決
控 訴 人 X
被 控 訴 人 プ ラ テ ツ ク 株 式 会 社
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴人の求めた裁判
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,商品名「どこでもシャワー」とする商品を販売してはならな
い。
第2 事案の概要
1 一審原告である控訴人は,名称を「移動式足踏シャワー」とする考案につい
て実用新案登録(登録第3050314号。平成9年2月4日出願,平成10
年4月22日登録。請求項の数4。以下「本件実用新案登録」という。)を有
していたところ,本件は,一審被告である被控訴人が商品名「どこでもシャワ
ー」とする商品(原判決にいう「被告製品」。以下「被控訴人商品」とい
う。)を販売していることに対し,控訴人が,上記商品は上記考案の技術的範
囲に属すると主張して,上記実用新案権に基づき上記商品の販売の差止めを求
めた事案である。
2 一審の東京地裁は,平成20年1月30日,①特許庁の無効審判事件(無効
2006−40001号)において平成19年1月4日,上記請求項1∼4に
係る本件実用新案登録を無効とする旨の審決がなされそれが確定した,②その
後特許庁の判定(判定2006−60005号事件)において平成19年1月
25日被告製品が上記考案の技術的範囲に属する旨の判定がなされているが,
判定は一定の技術が考案の技術的範囲に属するか否かについての特許庁の意見
の表明であり,判定が実用新案登録の有効性に影響を与えることはない等とし
て,一審原告の請求を棄却した。そこで,上記判決に不服の控訴人が控訴を提
起した。
3 当審における争点は,①前記無効審判事件においてなされた無効審決が控訴
人の上記実用新案権を対象とするものか,及び,②本件差止請求と上記判定と
の関係,である。
第3 当事者の主張
1 当事者双方の主張は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の
第2「事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。
2 控訴人
(1) 原判決は,無効審判において請求項1∼4に係る本件実用新案登録を無効
とする旨の審決がされ同審決は確定したと認定したが,誤りである。
前記審決は,本件実用新案登録を無効としたものではなく,本件実用新案
登録に係る下記の新出願をいずれも無効としたものである。

・実願昭52−33964号(実開昭53−129539号)のマイク
ロフィルム
・特開平9−19385号公報
・実願昭56−119507号(実開昭58−25366号)のマイク
ロフィルム
・特開平8−58490号公報
・特開平8−253221号公報
(2) 特許庁による判定書では,被控訴人(プラテツク株式会社)が平成14年
から販売している「どこでもシャワー」商品が控訴人の実用新案権の技術的
範囲に属するとされているのに,被控訴人はこれを無視して販売を継続して
いる。
3 被控訴人(平成20年6月17日付け答弁書)
実用新案登録第3050314号は,平成18年2月20日に請求された無
効審判(無効2006−40001号)において平成18年11月21日に無
効審決がなされ,その後,この無効審決が平成19年1月4日に確定したこと
によって,上記実用新案権は遡及的に消滅した。したがって,控訴人の主張は
その前提を欠き失当である。
第4 当裁判所の判断
1 証拠(甲3∼5)によれば,以下の事実が認められる。
(1) 新日本石油株式会社は,平成18年2月20日,請求項1∼4に係る本件
実用新案登録について無効審判(無効2006−40001号)を請求し
た。
(2) 前記無効審判の手続において審判請求人が提出した証拠は,下記のとおり
である。

・審判甲1:実願昭52−33964号(実開昭53−129539
号)のマイクロフィルム
・審判甲2:特開平9−19385号公報
・審判甲3:実願昭56−119507号(実開昭58−25366
号)のマイクロフィルム
・審判甲4:特開平8−58490号公報
・審判甲5:特開平8−253221号公報
(3) 特許庁は,平成18年11月21日付けで「実用新案登録第305031
4号の請求項1∼4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」旨
の審決をし,同審決は平成19年1月4日確定した。
(4) 上記審決の理由は,請求項1∼4に係る考案は,審判甲1及び審判甲3に
記載された事項並びに審判甲2,審判甲4,審判甲5に記載された従来より
周知の技術に基づいて当業者(その考案の属する技術の分野における通常の
知識を有する者)がきわめて容易に考案をすることができたものであって,
請求項1∼4に係る本件実用新案登録は実用新案法3条2項の規定に違反し
てなされたものである,というものである。
2 以上によれば,請求項1∼4に係る本件実用新案登録を無効とする審決が確
定したことが認められ,これにより,請求項1∼4に係る実用新案権は初めか
ら存在しなかったものとみなされる(実用新案法41条,特許法125条本
文)ものである。
3 これに対し控訴人は,上記審決は本件実用新案登録を無効としたものではな
く,本件実用新案登録に係る新出願を無効としたものであると主張するが,控
訴人が主張するところの新出願なるものは,前記1(2)の認定に照らせば,無
効審判手続において審判請求人が証拠として提出した各文献をいうものであ
り,審決はこれらの証拠に基づいて本件実用新案登録を無効としたものである
から(前記無効2006−40001号事件についての審決書である甲第5号
証には,その1頁に,結論として「実用新案登録第3050314号の請求項
1∼4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は,被請求
人の負担とする」との記載がある。),控訴人の上記主張は採用することがで
きない。
4 また控訴人は,上記審決後も特許庁の判定で,被控訴人商品が本件実用新案
登録の考案の技術的範囲に属する旨の判定(判定2006−60005号)が
なされたことを主張するとともに,これに沿う証拠として原審において判定書
(被請求人 プラテツク株式会社,甲2)を提出し,当審においても新日本石
油株式会社を被請求人とする判定書(判定2005−60074号。甲6)を
提出する。
しかし,特許庁の判定は,原判決も指摘するように,一定の技術が考案の技
術的範囲に属するか否かについての特許庁の意見を表明するものであって,判
定が実用新案登録の有効性に影響を与えることはないのであるから(なお,最
高裁昭和42年(行ツ)第47号 昭和43年4月18日第一小法廷判決〔民
事判例集22巻4号936頁〕は,要旨「特許発明または実用新案の技術的範
囲についての判定は,特許庁の単なる意見の表明であって,行政不服審査の対
象となりえない」とする),控訴人の上記主張は採用することができない。
5 結語
以上のとおりであるから,本件控訴は理由がない。
よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第2部
裁判長裁判官 中 野 哲 弘
裁判官 今 井 弘 晃
裁判官 清 水 知 恵 子

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