平成20(行ケ)10123等審決取消請求事件
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裁判所 |
審決取消 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成20年6月26日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
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キーワード |
審決35回 無効12回 無効審判4回 訂正審判2回 優先権1回 特許権1回
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主文 |
1 特許庁が無効2007−800095号事件について平成20年3月6日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は,各自の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,本件訴訟に係る特許(以下「本件特許」という )についての特許権者。
である甲事件原告(乙事件被告)株式会社豊栄商会が,本件特許の特許無効審判事
件について特許庁がした主文第1項掲記の審決(本件審決)のうち,本件特許の請
求項6∼10に係る発明についての特許を無効とするとの部分の取消しを求める甲
事件訴訟を提起した後,平成20年4月3日付けで本件特許の特許請求の範囲の減
縮等を目的とする訂正審判を請求したところ,平成20年5月9日,訂正を認める
旨の審決がなされその後同訂正審決が確定し,一方,乙事件原告(甲事件被告)株
式会社陽紀も,本件審決のうち,本件特許の請求項1∼4,12∼15に係る発明
についての審判請求は成り立たないとの部分の取消しを求める乙事件訴訟を提起し
たという事案である。 |
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判決文
平成20年6月26日判決言渡
平成20年(行ケ)第10123号 審決取消請求事件(甲事件)
平成20年(行ケ)第10132号 審決取消請求事件(乙事件)
口頭弁論終結日 平成20年6月3日
判 決
甲事件原告・乙事件被告 株 式 会 社 豊 栄 商 会
訴訟代理人弁護士 竹 田 稔
同 川 田 篤
訴訟代理人弁理士 大 森 純 一
同 折 居 章
甲事件被告・乙事件原告 株 式 会 社 陽 紀
訴訟代理人弁理士 森 義 明
同 眞 下 晋 一
同 三 枝 英 二
同 松 本 尚 子
同 森 脇 正 志
訴訟代理人弁護士 松 本 司
同 田 上 洋 平
主 文
1 特許庁が無効2007−800095号事件について平成20年3
月6日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は,各自の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 甲事件
特許庁が,無効2007−800095号事件について平成20年3月6日にし
た審決のうち,特許第3492677号の請求項6∼10に係る発明についての特
許を無効とする部分を取り消す。
2 乙事件
特許庁が,無効2007−800095号事件について平成20年3月6日にし
た審決のうち,特許第3492677号の請求項1∼4,12∼15に係る発明に
ついての審判請求は成り立たないとする部分を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,本件訴訟に係る特許(以下「本件特許」という 。)についての特許権者
である甲事件原告(乙事件被告)株式会社豊栄商会が,本件特許の特許無効審判事
件について特許庁がした主文第1項掲記の審決(本件審決)のうち,本件特許の請
求項6∼10に係る発明についての特許を無効とするとの部分の取消しを求める甲
事件訴訟を提起した後,平成20年4月3日付けで本件特許の特許請求の範囲の減
縮等を目的とする訂正審判を請求したところ,平成20年5月9日,訂正を認める
旨の審決がなされその後同訂正審決が確定し,一方,乙事件原告(甲事件被告)株
式会社陽紀も,本件審決のうち,本件特許の請求項1∼4,12∼15に係る発明
についての審判請求は成り立たないとの部分の取消しを求める乙事件訴訟を提起し
たという事案である。
1 特許庁における手続の経緯
(1) 甲事件原告(乙事件被告)は,平成14年12月28日,特許出願(優先
権主張 平成14年2月14日,平成14年9月18日,日本。特願2002−3
83795号)をし,その一部を新たな特許出願(特願2003−45184号)
とし,平成15年11月14日,特許庁から特許第3492677号として設定登
録を受けた(発明の名称「溶融金属供給用容器及び安全装置 」,請求項1∼16。
本件特許 )。
これに対し,甲事件被告(乙事件原告)から本件特許について無効審判請求がさ
れたので,特許庁はこれを無効2007−800095号事件として審理し,その
中で甲事件原告(乙事件被告)は,平成19年8月6日,訂正請求をしたが,特許
庁は,平成20年3月6日,同訂正を認めた上,本件特許の請求項6∼10に係る
発明についての特許を無効とし,請求項1∼4,12∼15に係る発明についての
審判請求は成り立たないとする旨の審決(以下「本件審決」という 。)をし,その
謄本は,平成20年3月18日,甲事件原告及び乙事件原告にそれぞれ送達された。
(2) 甲事件原告(乙事件被告)は,平成20年4月3日,特許請求の範囲の減
縮等を目的として訂正審判の請求をした(以下「本件訂正」という。その内容は下
記2(2)のとおり)ところ,特許庁は,同請求を訂正2008−390038号事
件として審理した上,平成20年5月9日,本件訂正を認める旨の審決(以下「訂
正審決」という 。)をし,平成20年5月21日,その謄本が甲事件原告(乙事件
被告)に送達されて訂正審決が確定した。
2 訂正審決の内容
訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の記載及び訂正審決により訂正された後
の特許請求の範囲の記載は,それぞれ次のとおりであって,本件訂正は特許請求の
範囲の減縮に当たるものである。
(1) 訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の記載
【請求項1】内外を連通する貫通孔を有し,溶融金属を収容することができ,圧
力差により内外で溶融金属を流通させることができる容器と,前記容器の内外を連
通し,前記溶融金属を流通することが可能な第1の流路と,前記貫通孔に通じる第
2の流路に介在され,気体を通過させ,かつ,溶融金属の通過を規制する規制部材
とを具備することを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項2】請求項1に記載の溶融金属供給用容器であって前記容器は,上部に
第1の開口部を有する容器本体と,前記容器の第1の開口部を覆うように配置され,
前記第1の開口部よりも小径の第2の開口部を有する大蓋と,前記第2の開口部に
対して開閉可能に設けられ,前記貫通孔が設けられたハッチとを具備することを特
徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の溶融金属供給用容器であって,前記
貫通孔に対して着脱自在で,前記規制部材の介在により前記貫通孔を塞ぐ栓を更に
具備することを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項4】請求項1又は請求項2に記載の溶融金属供給用容器であって,前記
貫通孔に取り付けられ,カプラを構成するプラグと,前記カプラを構成するソケッ
トからなり,前記規制部材が介在され,当該規制部材の介在により前記貫通孔に通
じる第2の流路を塞ぐ栓とを更に具備することを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項5】請求項1又は請求項2に記載の溶融金属供給用容器であって,前記
貫通孔に取り付けられ,前記容器の上面部から上方に向けて突出し,所定の高さの
位置で水平方向に折り曲げられ,接続部が水平方向に導出された配管と,前記配管
の先端に取り付けられ,カプラを構成するプラグと,前記カプラを構成するソケッ
トからなり,前記規制部材が介在され,当該規制部材の介在により前記配管の接続
部を塞ぐ栓とを更に具備することを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項6】請求項5に記載の溶融金属供給用容器であって,前記配管はフレキ
シブルジョイント部を有し,前記フレキシブルジョイント部と前記貫通孔との間に
前記規制部材が介在されていることを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項7】溶融金属を収容することができる容器と,前記容器の内外を連通し,
前記溶融金属を流通することが可能な第1の流路と,前記容器の上部に設けられ,
前記容器の内圧を逃がすことができる貫通孔と,前記貫通孔に,前記溶融金属の流
通を規制するように設けられた規制部材と,を具備したことを特徴とする溶融金属
供給容器。
【請求項8】溶融金属を収容することができる容器と,前記容器の内外を連通し,
前記溶融金属を流通することが可能な第1の流路と,前記容器の上部に設けられ,
前記容器の内圧を逃がすことができる圧力開放管と,前記圧力開放管に,前記溶融
金属の流通を規制するように設けられた規制部材と,を具備したことを特徴とする
溶融金属供給容器。
【請求項9】溶融金属を収容することができる容器の安全装置であって,前記容
器の上部に設けられ,前記容器の内圧を逃がすことができる貫通孔と,前記貫通孔
に,前記溶融金属の流通を規制するように設けられた規制部材とを具備したことを
特徴とする安全装置。
【請求項10】請求項9に記載の安全装置であって,前記貫通孔に対して着脱自
在で,前記規制部材の介在により前記貫通孔を塞ぐ栓を更に具備することを特徴と
する安全装置。
【請求項11】請求項10に記載の安全装置であって,前記貫通孔に取り付けら
れ,カプラを構成するプラグと,前記カプラを構成するソケットからなり,前記規
制部材が介在され,当該規制部材の介在により前記貫通孔に通じる第2の流路を塞
ぐ栓とを更に具備することを特徴とする安全装置。
【請求項12】内外を連通する貫通孔を有し,溶融金属を収容することができる
容器と,前記容器の内外を連通し,前記溶融金属を流通することが可能な第1の流
路と,前記第1の流路の外側開口部に着脱可能に設けられ,気体を通過させ,かつ,
溶融金属の通過を規制する規制部材とを具備することを特徴とする溶融金属供給用
容器。
【請求項13】内圧を逃がすことができる貫通孔が上部に設けられ,溶融金属を
収容して第1の工場から第2の工場へ搬送するための容器における前記貫通孔に取
り付けられる安全保持用栓であって,前記貫通孔に通じる配管と,前記配管内に充
填され,気体を通過させ,かつ,溶融金属の通過を規制する規制部材とを具備する
ことを特徴とする安全保持用栓。
【請求項14】請求項13に記載の安全保持用栓であって,前記配管の一端部に
設けられ,プラグとソケットとから構成されるカプラのうち一方であるプラグ又は
とソケットを更に具備することを特徴とする安全保持用栓。
【請求項15】請求項13又は請求項14に記載の安全保持用栓であって,前記
規制部材は,空気は通過させるが,溶融したアルミニウムを通過させない部材であ
ることを特徴とする安全保持用栓。
【請求項16】請求項13,請求項14又は請求項15に記載の安全保持用栓で
あって,前記規制部材は,セラミックファイバーを成形した部材,焼結金属の成型
品,スヤキ又はメタルに細い貫通孔若しくはオリフィスを設けた部材であることを
特徴とする安全保持用栓。
(2) 訂正審決により訂正された後の特許請求の範囲の記載(本件訂正による訂正
箇所を下線で示す。)
【請求項1】内外を連通し,容器内の加圧を行うための貫通孔を有し,溶融金属
を収容することができ,加圧により圧力差を利用して内外で溶融金属を流通させる
ことができる容器と,前記容器の内外を連通し,前記溶融金属を流通することが可
能な第1の流路と,前記貫通孔に通じる第2の流路に介在され,気体を通過させ,
かつ,溶融金属の通過を規制する規制部材と,前記貫通孔に取り付けられ,前記容
器の上面部から上方に向けて突出し,所定の高さの位置で水平方向にて折り曲げら
れ,接続部が水平方向に導出された配管と,前記配管の先端に取り付けられ,カプ
ラを構成するプラグと,前記カプラを構成するソケットからなり,前記規制部材が
介在され,前記容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には当該規制部材の介在に
より前記配管の接続部を塞ぐ着脱可能な栓とを具備することを特徴とする溶融金属
供給用容器。
【請求項2】請求項1に記載の溶融金属供給用容器であって前記容器は,上部に
第1の開口部を有する容器本体と,前記容器の第1の開口部を覆うように配置され,
前記第1の開口部よりも小径の第2の開口部を有する大蓋と,前記第2の開口部に
対して開閉可能に設けられ,前記貫通孔が設けられたハッチとを具備することを特
徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項3】内外を連通し,容器内の加圧を行うための貫通孔を有し,溶融金属
を収容することができ,加圧により圧力差を利用して内外で溶融金属を流通させる
ことができ,上部に第1の開口部を有する容器本体と,前記容器の第1の開口部を
覆うように配置され,前記第1の開口部よりも小径の第2の開口部を有する大蓋と,
前記第2の開口部に対して開閉可能に設けられ,前記貫通孔が設けられたハッチと
を具備する容器と,前記容器の内外を連通し,前記溶融金属を流通することが可能
な第1の流路と,前記貫通孔に通じる第2の流路に介在され,気体を通過させ,か
つ,溶融金属の通過を規制する規制部材と,前記貫通孔に対して着脱自在で,前記
容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には前記規制部材の介在により前記貫通孔
を塞ぐ栓とを具備することを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項4】内外を連通し,容器内の加圧を行うための貫通孔を有し,溶融金属
を収容することができ,加圧により圧力差を利用して内外で溶融金属を流通させる
ことができ,上部に第1の開口部を有する容器本体と,前記容器の第1の開口部を
覆うように配置され,前記第1の開口部よりも小径の第2の開口部を有する大蓋と,
前記第2の開口部に対して開閉可能に設けられ,前記貫通孔が設けられたハッチと
を具備する容器と,前記容器の内外を連通し,前記溶融金属を流通することが可能
な第1の流路と,前記貫通孔に通じる第2の流路に介在され,気体を通過させ,か
つ,溶融金属の通過を規制する規制部材と,前記貫通孔に取り付けられ,カプラを
構成するプラグと,前記カプラを構成するソケットからなり,前記規制部材が介在
され,前記容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には当該規制部材の介在により
前記貫通孔に通じる第2の流路を塞ぐ着脱可能な栓とを具備することを特徴とする
溶融金属供給用容器。
【請求項5】請求項1に記載の溶融金属供給用容器であって,前記配管はフレキ
シブルジョイント部を有し,前記フレキシブルジョイント部と前記貫通孔との間に
前記規制部材が介在されていることを特徴とする溶融金属供給用容器。
【請求項6】溶融金属を収容することができる容器と,前記容器の内外を連通し,
前記溶融金属を流通することが可能な第1の流路と,前記容器の上部に設けられ,
前記容器の内圧を逃がすことができ,容器内の加圧を行うための貫通孔と,前記貫
通孔に,前記容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には前記貫通孔を塞ぎ,気体
を通過させ,かつ,前記溶融金属の流通を規制するように設けられた着脱可能な規
制部材と,を具備したことを特徴とする溶融金属供給容器。
【請求項7】溶融金属を収容することができる容器と,前記容器の内外を連通し,
前記溶融金属を流通することが可能な第1の流路と,前記容器の上部に設けられ,
前記容器の内圧を逃がすことができ,容器内の加圧を行うための圧力開放管と,前
記圧力開放管に,前記容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には前記圧力開放管
を塞ぎ,気体を通過させ,かつ,前記溶融金属の流通を規制するように設けられた
着脱可能な規制部材と,を具備したことを特徴とする溶融金属供給容器。
【請求項8】溶融金属を収容することができる容器の安全装置であって,前記容
器の上部に設けられ,前記容器の内圧を逃がすことができ,容器内の加圧を行うた
めの貫通孔と,前記貫通孔に,前記容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には前
記貫通孔を塞ぎ,気体を通過させ,かつ,前記溶融金属の流通を規制するように設
けられた着脱可能な規制部材とを具備したことを特徴とする安全装置。
【請求項9】請求項8に記載の安全装置であって,前記貫通孔に対して着脱自在
で,前記規制部材の介在により前記貫通孔を塞ぐ栓を更に具備することを特徴とす
る安全装置。
【請求項10】請求項9に記載の安全装置であって,前記貫通孔に取り付けられ,
カプラを構成するプラグと,前記カプラを構成するソケットからなり,前記規制部
材が介在され,当該規制部材の介在により前記貫通孔に通じる第2の流路を塞ぐ栓
とを更に具備することを特徴とする安全装置。
【請求項11】内外を連通する貫通孔を有し,溶融金属を収容することができる
容器と,前記容器の内外を連通し,前記溶融金属を流通することが可能な第1の流
路と,前記第1の流路の外側開口部に着脱可能に設けられ,気体を通過させ,かつ,
溶融金属の通過を規制する規制部材とを具備することを特徴とする溶融金属供給用
容器。
【請求項12】内圧を逃がすことができ,容器内の加圧を行うための貫通孔が上
部に設けられ,溶融金属を収容して第1の工場から第2の工場へ搬送するための容
器における前記貫通孔に取り付けられる安全保持用栓であって,前記貫通孔に通じ
る配管と,前記配管内に充填され,気体を通過させ,かつ,溶融金属の通過を規制
する規制部材とを具備し,前記容器に溶融金属を貯留して搬送する場合には前記貫
通孔に着脱可能に取り付けられることを特徴とする安全保持用栓。
【請求項13】請求項12に記載の安全保持用栓であって,前記配管の一端部に
設けられ,プラグとソケットとから構成されるカプラのうち一方であるプラグ又は
ソケットを更に具備することを特徴とする安全保持用栓。
【請求項14】請求項12又は請求項13に記載の安全保持用栓であって,前記
規制部材は,空気は通過させるが,溶融したアルミニウムを通過させない部材であ
ることを特徴とする安全保持用栓。
【請求項15】請求項12,請求項13又は請求項14に記載の安全保持用栓で
あって,前記規制部材は,セラミックファイバーを成形した部材,焼結金属の成型
品,スヤキ又はメタルに細い貫通孔若しくはオリフィスを設けた部材であることを
特徴とする安全保持用栓。
3 本件審決の理由の要旨
本件審決は,本件特許の請求項6∼10に係る発明について,発明の要旨を本件
訂正前の特許請求の範囲記載のとおり認定した上,特開2002−254158号
公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとし,ま
た,本件特許の請求項1∼4,12∼15に係る発明については,上記公報に記載
された発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえないとした。
第3 本件訂正に係る訂正審決の確定についての当事者の主張
1 甲事件
(1) 甲事件原告
訂正審決の確定により,無効審判請求に係る本件審決には発明の要旨の認定に影
響を及ぼすべき誤りがあることは明らかであるから,本件審決は取り消されるべき
である。
(2) 甲事件被告
本件については訂正審決の確定を踏まえてしかるべく進行されたい。
2 乙事件当事者双方
本件については訂正審決の確定を踏まえてしかるべく進行されたい。
第4 当裁判所の判断
本件においては,訂正審決の確定により,本件明細書の特許請求の範囲の記載が
前記第2の2(2)のとおり確定的に訂正されたことが認められ,この訂正によって
特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。そうすると,本件審決が,本件
特許の請求項6∼10に係る発明について,発明の要旨を本件訂正前の特許請求の
範囲記載のとおり認定したことは,訂正前と訂正後の特許請求の範囲を対比検討す
るならば,結果的に誤りであり,その誤りは本件審決に影響を及ぼすものというこ
とができる。そして,前記第2の2(1),(2)のとおりの本件訂正の内容を見れば,
本件訂正により各請求項における発明特定事項が互いに密接に関連するものとなっ
ており,本件訂正後の本件特許の各請求項について一つの審決において統一的な判
断がされることが本件の事案に鑑み必要であること,その他,本件に顕れた一切の
事情を併せ考慮すれば,本件(甲事件及び乙事件)については,確定的に訂正され
た特許請求の範囲の記載を前提として,本件特許につき特許無効審判においてさら
に審理が遂げられるべきであるから,本件審決において請求項6∼10に係る発明
についての特許を無効とした部分だけでなく,これと同時に,請求不成立とされた
請求項1∼4,12∼15も含め,本件審決全体を取り消すことができると解する
のが相当である。
よって,本件審決全体を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第1部
裁判長裁判官
塚 原 朋 一
裁判官
本 多 知 成
裁判官
田 中 孝 一
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