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平成20(行ケ)10014審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年5月15日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社友企画
原告X株式会社
法令 商標権
商標法50条3回
キーワード 商標権14回
審決11回
ライセンス1回
無効1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 被告は,別紙1のとおり「テディベアー」及び「TEDDYBEAR」の文 字を上下二段に横書きしてなり,指定商品を第17類「被服,布製身回品,寝 具類 (平成3年政令第299号による改正前の区分)とする登録第1953」 ( , ,147号商標 昭和60年2月7日登録出願 昭和62年5月29日設定登録 登録時の権利者は帝人株式会社,平成9年5月27日及び平成18年12月2 6日存続期間更新登録。以下「本件商標」という )の商標権者である(被告。 は平成13年11月26日,商標権の移転(譲渡)を受けた 。。) 原告は,平成19年3月7日,被告を被請求人として,商標法50条の規定 に基づき不使用を理由として本件商標の登録を取り消すことを求めて審判請求 (取消2007−300236号事件)をした(平成19年3月26日商標権 取消審判予告登録 。) 特許庁は,平成19年12月27日 「本件審判の請求は,成り立たない 」, 。 との審決(以下「審決」という )をし,平成20年1月10日,その謄本を。 原告に送達した。

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判決文

平成20年5月15日 判決言渡
平成20年(行ケ)第10014号 審決取消請求事件
平成20年4月10日 口頭弁論終結
判 決
原 告 X 株 式 会 社
被 告 株 式 会 社 友 企 画
訴訟代理人弁理士 曾 我 道 治
同 岡 田 稔
同 坂 上 正 明
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が取消2007−300236号事件について平成19年12月27
日にした審決を取り消す。
第2 争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
被告は,別紙1のとおり「テディベアー」及び「TEDDYBEAR」の文
字を上下二段に横書きしてなり,指定商品を第17類「被服,布製身回品,寝
具類 」(平成3年政令第299号による改正前の区分)とする登録第1953
147号商標 昭和60年2月7日登録出願,
( 昭和62年5月29日設定登録 ,
登録時の権利者は帝人株式会社,平成9年5月27日及び平成18年12月2
6日存続期間更新登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である(被告
は平成13年11月26日,商標権の移転(譲渡)を受けた。。

原告は,平成19年3月7日,被告を被請求人として,商標法50条の規定
に基づき不使用を理由として本件商標の登録を取り消すことを求めて審判請求
(取消2007−300236号事件)をした(平成19年3月26日商標権
取消審判予告登録)。
特許庁は,平成19年12月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との審決(以下「審決」という 。)をし,平成20年1月10日,その謄本を
原告に送達した。
2 審決の理由
別紙審決書写しのとおりであり,その要点を整理すると,次のとおりである。
(1) 通常使用権者による商標の使用について
ア 株式会社ドウシシャ(以下「ドウシシャ」という。)は,本件商標の通常
使用権者である。
イ ドウシシャが販売したタオル,そのタグ並びにその包装箱,及び同社が
頒布したカタログには,「TeddyBear」という文字からなる別紙
2の表示(以下「使用商標」という。)が付されていた。
ウ 使用商標は,本件商標の欧文字部分の「T」及び「B」の文字以外を小
文字で表しているが,使用商標と本件商標は ,「テディベアー」の称呼を
同じくするから,使用商標は本件商標と社会通念上同一である。
エ タオルは,本件商標の指定商品中「布製身回品」の範疇に属する商品で
ある。
(2) 使用商標が使用されていたとの事実の認定について
以下のア,イの事実を総合すると,本件商標の通常使用権者であるドウシ
シャが,少なくとも,審判の請求の登録(平成19年3月26日)前3年以
内に,使用商標を本件商標の指定商品中「布製身回品」の範疇に属するタオ
ルについて使用していた。
ア 使用商標を付したタオル(乙3のタオルとほぼ同一のタオル)の写真が
掲載され,その掲載ページ上部及び掲載された商品の商品名の上部に使用
商標が表示され,表紙下部に「2004 Spring & Summe
r」と表示されたカタログ(乙8),平成16年3月22日,同月23日
付けで「ヒットセラー カタログ VOL VOL.1」を仕入れた旨記載さ
れたドウシシャの株式会社クリエーションについての仕入先買掛元帳(乙
9)によれば,ドウシシャは,使用商標を付したカタログを2004年 平

成16年)4月以降頒布したことが認められる。
イ 使用商標を付したタオル(乙3のタオルとほぼ同一のタオル)の写真が
掲載され,その掲載ページ中央よりやや左上に使用商標が表示され,表紙
下部に「2004 GOLDEN GIFT」と表示され,裏表紙に「社
団法人全日本ギフト用品協会 認定№1003」と表示されたカタログ 乙

10),株式会社エニシルの「Golden Gift」カタログに認定
番号1003を承認,付与した旨記載された社団法人全日本ギフト用品協
会のウェブページ(乙11) 株式会社エニシルのウェブページ(乙12)

によれば,株式会社エニシルは,カタログを用いて,使用商標を付したタ
オルを販売していたことが認められる。
第3 取消事由に係る原告の主張
審決は,使用商標の使用を本件商標の使用とした誤り(取消事由1),ドウシ
シャを本件商標の通常使用権者と認定した誤り(取消事由2 ),被告による本件
商標に係る商標権の取得及び使用が国際信義に反した不正な目的をもってされた
にもかかわらず,その点の判断をしなかった誤り(違法事由3)があるから,取
り消されるべきである。
1 取消事由1(使用商標の使用を本件商標の使用とした誤り)
本件商標は,片仮名の「テディベアー」との文字と欧文字の「TEDDYB
EAR」との文字が同じ大きさで上下に組み合わされたものである。これに対
し,使用商標は,欧文字の「TeddyBear」という文字のみからなるか
ら,使用商標は本件商標と社会通念上同一ではない。したがって,ドウシシャ
の使用商標を使用する態様が本件商標を使用したものに当たると認定した審決
には誤りがある。
2 取消事由2(ドウシシャを本件商標の通常使用権者と認定した誤り)
被告とドウシシャの関係は明らかでなく,ドウシシャが本件商標の通常使用
権者であることを認めるに足りる証拠はない。
3 取消事由3(被告による本件商標に係る商標権の取得等が国際信義に反した
不正な目的をもったものであるにもかかわらずその点の判断をしなかった誤
り)
Teddy bear(又はteddy bear)という語は,米国第2
6代大統領であるセオドア・ルーズベルト(Theodore Roosev
elt,別称Teddy)が狩猟中に小熊の命を助けたという逸話から,独特
の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通に使用されてきた言葉である。し
たがって,欧文字の「TeddyBear」という文字による構成のみでは商
標登録を得ることができない。そこで,被告へ本件商標に係る商標権を譲渡し
た譲渡人(以下,単に「譲渡人」という。)は,大文字からなる「TEDDY
BEAR」の文字に片仮名を組み合わせることにより,ようやく本件商標の商
標登録を得たものである。本件商標は,セオドア・ルーズベルトの有名なエピ
ソードに由来するテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみの著名性に便乗す
る意図で,譲渡人が取得し,被告が譲り受けたものである。そのような事情が
あるにもかかわらず,被告は,本件商標に係る商標権に基づき,被告の通常使
用権者をして「TeddyBear」という文字のみからなる使用商標を使用
させている。仮に通常使用権者による使用商標が使用に当たると判断されると
するならば,譲渡人が本件商標に係る商標権を取得し,被告がこれを譲り受け
て使用していることは,国際信義に反する不正の目的によるものとして許され
ない。
第4 取消事由に係る被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(使用商標の使用を本件商標の使用と認定した誤り)
(1) 確かに,本件商標と使用商標は,①本件商標が片仮名及び欧文字の2段
書きからなるのに対し,使用商標は欧文字のみからなる点,②本件商標の欧
文字部分はすべて大文字であるのに対し,使用商標は「T」と「B」の文字
を大文字とし,それ以外の文字を小文字とした点,③本件商標は欧文字の部
分がゴシック体であるのに対し,使用商標はクーリエ書体である点において,
外観が相違する。
(2) しかし,以下の理由から,本件商標と使用商標とは,社会通念上同一の
商標というべきである。すなわち,本件商標の片仮名部分及び欧文字部分は
いずれも「テディベアー」の称呼を生ずる 。また, teddy
「 bear」
は英語でぬいぐるみの熊を意味する語であり,我が国でも「テディベアー」
はぬいぐるみの熊を意味する語として通用しているから,本件商標の片仮名
部分及び欧文字部分はいずれもぬいぐるみの熊の観念を生ずる。他方,使用
商標も「テディベアー」の称呼を生じ,ぬいぐるみの熊の観念を生ずる。そ
して,前記(1)程度の外観の差異によって商標の本質的機能である自他商品
の識別機能が害されることはないから,本件商標と使用商標は社会通念上同
一である。
2 取消事由2(ドウシシャを本件商標の通常使用権者と認定した誤り)
請求書(乙6の1ないし3),当座勘定照合表(乙7の1ないし3),カタロ
グ(乙8,乙10),仕入先買掛元帳(乙9),社団法人全日本ギフト用品協会
のウェブページ(乙11),株式会社エニシルのウェブページ(乙12)によ
れば,ドウシシャは本件商標の通常使用権者であることが認められる。
3 取消事由3(被告による本件商標に係る商標権の取得等が国際信義に反した
不正な目的をもったものであるにもかかわらずその点の判断をしなかった誤
り)
本件では,商標法50条に基づく取消請求に係る審決の取消事由の有無が争
点であり,取消事由3に関する原告の主張は,主張自体失当である。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(使用商標の使用を本件商標の使用と認定した誤り)について
(1) 使用商標の使用態様
ア 商品及び包装への使用
(ア) タオル・セット商品等の写真(乙3)には ,「熊のぬいぐるみが描
かれたタオル(3枚)及び熊のぬいぐるみ風に造形されたハンガー(1
個)から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear 』(sinc
e 1902)との表示が付されているタオル・セット商品」の写真,
そのタオル・セット商品に梱包されているタオルのうち1枚の写真,及
びタオル・セット商品の箱の蓋の写真が掲載されている。
上記タオルは,熊のぬいぐるみが描かれ,その下に「TeddyBe
ar」との表示が付され,更にその下に帯状に横方向に4つの「Ted
dyBear」との表示が付されており,そのタオルのタグには,熊の
ぬいぐるみが描かれ,その下に「TeddyBear」との表示が付さ
れている。
また,タオル・セット商品の箱の蓋の上面には,熊のぬいぐるみが描
かれ,その下に「TeddyBear」との表示が付されており,箱の
側面には,文字のみにより「TeddyBear」との表示が付されて
いる。
(イ) 乙3の写真に撮影されたタオルのタグには,企画・発売元としてド
ウシシャの社名,住所が記載されている。
イ 商品カタログへの使用
(ア) 乙8の1枚目には,カタログ様の表紙に,上方から順に,「SPと
ギフトアイテムのお役立ちカタログ」「HS」「HITSELOR」(ヒ
ットセラー ) 「販促に役立つ,春夏注目アイテム 」
」 「2004 Spr
ing & Summer」と記載されている。
乙8の2枚目には,別紙「商品カタログ」のとおり,上方に文字のみ
による「TeddyBear」の表示がされており,「熊のぬいぐるみ
が描かれたタオル(2枚)から構成され,収納箱の上部に『Teddy
Bear』(since 1902)との表示が付されているタオル・
セット商品 」(2種)と「熊のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚又は
3枚)及び熊のぬいぐるみ風に造形されたハンガー(1個)から構成さ
れ,収納箱の上部に『TeddyBear 』(since 1902)
との表示が付されているタオル・セット商品」(4種。その中には,乙
3の写真に撮影された商品と同一の商品も含まれる。)の商品写真が掲
載されており,各商品の名称の上段に小さく文字のみによる「Tedd
yBear」の表示が表記されている。
乙9は,ドウシシャの株式会社クリエーションについての仕入先買掛
元帳であり,平成16年3月22日,同月23日付けで「ヒットセラー
カタログ VOL VOL.1」(乙8にHITSELOR(ヒットセラ
ー)」と記載されていることから,乙8のカタログを指すと解される。)
を仕入れた旨記載されている。
(イ) 乙10の1枚目及び3枚目には,カタログ様の表紙(表面,裏面)
に,いずれも「2004 」「GOLDEN GIFT」と記載されてお
り,3枚目の表紙(裏面)には,「社団法人全日本ギフト用品協会 認
定№1003」と表示されている。
乙10の2枚目には,左側方に文字のみによる TeddyBear」

の表示がされており,また, 熊のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚)

から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear 』(since
1902)との表示が付されているタオル・セット商品」 2種)と「熊

のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚又は3枚)及び熊のぬいぐるみ風
に造形されたハンガー(1個)から構成され,収納箱の上部に『Ted
dyBear』(since 1902)との表示が付されているタオ
ル・セット商品」(2種)(これらのタオル・セット商品には,乙3の写
真に撮影された商品に梱包されているタオルと同一のタオルが梱包され
た商品も含まれている。)の商品写真が掲載されている(なお,指定商
品の範囲に含まれないが,熊のぬいぐるみが描かれた食器の商品写真も
掲載されている。。

乙11は,社団法人全日本ギフト用品協会のウェブページであり,株
式会社エニシルの「Golden Gift」カタログ(乙10に「G
OLDEN GIFT」と記載されていることから,乙10のカタログ
を指すと解される。なお,前記のとおり,乙10のカタログに掲載され
たタオル・セット商品には,乙3の写真に撮影された商品に梱包されて
いるタオルと同一のタオルが梱包された商品が含まれている。)に認定
番号1003を承認,付与した旨記載されている。また,乙12は,株
式会社エニシルのウェブページであり,同社が,カタログ及びインター
ネットによるギフト商品の卸売販売,販売促進に関する企画・販売を事
業内容とし ,「Golden Gift」カタログを発行していること
が認められる。
(2) 指定商品への該当性
タオルは,本件商標の指定商品中「布製身回品」の範疇に属する商品であ
る。
(3) 使用商標と本件商標との社会通念上の同一性
商標法50条には,同条所定の取消審判制度における登録商標の使用の範
囲について ,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,
片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼
及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の
当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」を含めて解釈すべきであ
る旨が規定されている。一般に,商標は,取引の実情,商品の性質その他様
々な事情に応じて,変更を加えて使用する必要性が高く,そのような必要性
に対応するために,同条の解釈規定が設けられた趣旨に照らすならば,登録
商標と全く同一の商標に限定して解釈するのは相当でなく,登録商標が,観
念及び称呼を共通にする片仮名による表示と欧文字による表示を2段書きに
した商標である場合に,欧文字部分のみからなる商標を使用したときも,特
段の事情のない限りは,当該登録商標と社会通念上同一の商標が使用された
ものと評価されるべきである。
本件について,上記の観点から検討する。
ア 乙8の2枚目の上方に表示された文字のみによる TeddyBear」

の表示,乙8の2枚目の各商品の名称の上段に小さく表記された文字のみ
による「TeddyBear」の表示及び乙10の2枚目の左側方に表示
された文字のみによる「TeddyBear」の表示については,以下の
とおり,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたものというべきで
ある。すなわち,本件商標は ,「テディベアー」及び「TEDDYBEA
R」の文字を上下二段に横書きしてなり,観念及び称呼を共通にする片仮
名による表示と欧文字による表示を2段書きにした商標であるのに対し,
使用商標は,本件商標の欧文字部分を,「T」と「B」以外の文字を小文
字にして表示した点において相違があるものの,使用商標と本件商標は,
観念及び称呼を共通にするから,社会通念上同一と評価することを妨げる
特段の事情があるとは認められない。
したがって,上記の使用商標と本件商標とは社会通念上同一であると認
められる。
イ なお,乙8及び乙10には,カタログに掲載された商品及び商品の包装
自体にも,それぞれ「TeddyBear」の表示があるが,同表示につ
いては,以下のとおりの理由から,商標の使用ということはできない。
すなわち,後記3(2)記載のとおり,①「Teddy bear」(又
は「teddy bear」 「テディベアー 」 「テディベア」
, , )は,我が
国において,独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として
知られるようになっている事情に照らすならば,本件商標は,当該商品の
出所を表示するものと一般に認識されることが困難な語と解されること,
また,②本件カタログないし本件商品には,ぬいぐるみの熊風に造作され
たハンガーが含まれていたり,タオルにもぬいぐるみの熊が描かれている
こと,さらに,③セット商品を収納した箱の上面に TeddyBear」

(since 1902)の表示が付されているが,これは,上記各表示
ないし語が小熊のぬいぐるみを意味するようになる契機となった,190
2年におけるセオドア・ルーズベルトの後記逸話を示していると解するの
が自然であること(仮に,上記表示部分が,カタログに掲載された商品が
1902年から製造,販売されている趣旨を伝えるための表示であるとす
るならば,それは虚偽の表示に該当する 。)等の事実に照らすならば,商
品及び商品の包装自体にも「TeddyBear」の表示については,当
該各商品の出所を識別するものとして表示されたものではなく,カタログ
ないし同カタログに掲載された商品に描かれたり,造形されたりした熊が ,
「テディベア」との愛称で呼ばれる,独特の形をした小熊のぬいぐるみと
いう意味における「テディベア」であることを示しているものと理解する
のが合理的であり,需要者又は取引者においても,上記のように理解する
のが自然である。
(4) 小括
以上によれば,本件商標は,ドウシシャによって,本件商標の指定商品に
属するタオルについて,商品に関するカタログに標章を付して頒布すること
により使用されたものと認められる。そして,後記のとおり,少なくとも平
成16年4月1日から平成17年3月31日までの使用についてドウシシャ
が被告に対して本件商標の使用料を支払っていることも合わせ考えると,少
なくとも審判の請求の登録(平成19年3月26日)前3年以内に,本件商
標は,ドウシシャによって,指定商品について使用されていたものと認めら
れる。したがって,取消理由1は理由がない。
2 取消事由2(ドウシシャを本件商標の通常使用権者と認定した誤り)につい

(1) 請求書,当座勘定照合表の記載
乙6の1は,被告が作成したドウシシャあての平成16年10月18日付
けの請求書であり,品名欄には「テディベア商標使用料」「2年度
, 下期分
(2004.4.1 ∼ 2004.9.30)」「ミニマムロイヤリティー
, 前受金 上期請求分 下期請求分」
と記載されている。乙7の1は,UFJ銀行が作成した被告の当座勘定照合
表であり,平成16年10月29日にドウシシャが被告に金銭を振り込んだ
旨記載されている。
乙6の2は,被告が作成したドウシシャあての平成17年4月26日付け
の請求書であり,品名欄には「テディベア商標使用料 」 「3年度
, 上期
(2004.10.1 ∼ 2005.3.31)」と記載されている。乙7の2は,UFJ銀行が作
成した被告の当座勘定照合表であり,平成17年5月12日にドウシシャが
被告に金銭を振り込んだ旨記載されている。
乙6の3は,被告が作成したドウシシャあての平成17年10月24日付
けの請求書であり,品名欄には「テディベア商標使用料」「3年度
, 下期分
(2005.4.1 ∼ 2005.9.30)」「ミニマムロイヤリティー
, 前受金 上期請求分 下期請求分」
と記載されている。乙7の3は,UFJ銀行が作成した被告の当座勘定照合
表であり,平成17年10月31日にドウシシャが被告に金銭を振り込んだ
旨記載されている。
なお,これらの取引書類における金額欄は黒塗りされているが,弁論の全
趣旨に照らし,金額の記載がされていたものと推認することができる。
(2) 全国繊維企業要覧の記載
全国繊維企業要覧2008 vol 41東日本篇(編集兼発行人:信用交換所
総合事業部,発行所:株式会社信用交換所東京本社,同名古屋本社,同京都
本社,同大阪本社,平成19年9月20日発行,甲27)には,被告につい
て,業種が製品企画管理であること,ライセンス管理等を行っていること,
「Teddy Bear」の商標を管理等していること,ドウシシャが販売
先であることが記載され,業績として,平成16年7月期,平成17年7月
期,平成18年7月期の売上,平成16年7月期,平成17年7月期の当期
利益が記載されている。
(3) 通常使用権
以上によれば,少なくとも平成16年(2004年)4月1日から平成1
7(2005年)年3月31日までの使用について,ドウシシャが被告に対
して本件商標の使用料を支払っていることが認められ,前記のとおり,本件
商標がドウシシャによって指定商品について使用されていたことも合わせ考
えると,少なくとも審判の請求の登録(平成19年3月26日)前3年以内
において,ドウシシャは本件商標の通常使用権者であったものと認められ,
取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(被告による本件商標に係る商標権の取得等が国際信義に反した
不正な目的をもったものであるにもかかわらずその点の判断をしなかった誤
り)
(1) 原告は,以下のとおり主張する。すなわち,セオドア・ルーズベルトの
有名なエピソードに由来するテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみの著
名性に便乗する不正な意図の下に,譲渡人は大文字からなる「TEDDYB
EAR」の文字に片仮名を組み合わせた本件商標に係る商標権を取得し,被
告はこれを譲り受けたのであって,そのような事情があるにもかかわらず,
被告が通常使用権者によって使用商標を使用させているのであれば,譲渡人
が本件商標に係る商標権を取得し,被告がこれを譲り受けて使用しているこ
とは,国際信義に反する不正な目的によるものであるから,本件商標の商標
登録は取り消されるべきであると主張する。
(2) 以下,検討する。
ア 「テディベアー」及び「Teddy bear」の語については ,甲1,
甲15(乙4),甲16(乙5)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
(ア) アメリカ合衆国第26代大統領であったセオドア・ルーズベルト
(Theodore Roosevelt)に関しては,1902年,
狩猟に出かけた際,一匹の小熊を追いつめたが,その熊を撃たず,命を
助けたという逸話が残されている。その逸話が,セオドア・ルーズベル
トの優しさを示すものとして広まり,その後間もなく,有名な漫画家が
その話を漫画に描き,それを見た者がぬいぐるみの熊を作って販売する
ことを思いつき,自己の店で販売するぬいぐるみの熊に,「Teddy
’s Bear 」「 Teddy」
( (テディ)は,セオドア・ルーズベル
トの名である「Theodore」の別称である。)という名を使うこ
とについてセオドア・ルーズベルトの許可を求めた。
その後,「Teddy bear 」(又は「teddy bear」)
という語は,アメリカ合衆国において,独特の形をしたぬいぐるみの熊
を意味する語として広く用いられるようになった。
(イ) ジーニアス英和辞典(編集主幹:小西友七,発行所:株式会社大修
館書店,1999年(平成11年)4月1日改訂版6版発行)には, T

eddy bear」という語について,[しばしばt∼]
「 (ぬいぐる
みの)クマの人形((◆米国の第26代大統領Theodore Roo
sevelt(((愛称))Teddy)が猟で子グマを助けた漫画から;
英米の子供はたいていこの種のものを1つは持っている)).」と記載さ
れている。
また,ランダムハウス英和大辞典(編集主幹:小西友七,安井稔,國
哲彌,堀内克明,発行所:株式会社小学館 ,1998年(平成10年)
1月10日第2版第6刷発行)には,「teddy bear」という
語について ,「ぬいぐるみのクマ 」 「1907.米;Theodore

Rooseveltの別称Teddyにちなむ;狩猟中,彼は子グマ
の命を助けてやったといわれることから」などと記載されている。
イ 上記アの事実及び弁論の全趣旨を総合すれば, Teddy
「 bear」
(又は「teddy bear」)の語は,アメリカ合衆国において,一
般的に独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味し,我が国においても,独
特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用いられ,また,
カタカナ表記の「テディベアー 」(又は「テディベア」)の語も,我が国に
おいて,独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として用い
られており,その名称は,誰もが自己の商品に自由に使用できるという共
通の認識を有する状態になっていたといえる(なお,「Teddy be
ar」「テディベアー」が,あらゆる色彩,形状及び態様の小熊のぬいぐ

るみのすべてを指すものではなく,例えば,うす茶色の色彩が施され,か
わいい顔立ちをした小熊であって,両足を広げたなどの特徴を有するぬい
ぐるみの人形のみを指すものと推認されるところであるが,弁論に提出さ
れた証拠に基づく限りでは,個々の特徴には触れずに,前記のとおりの一
般的な認定にとどめることとする。。

ウ したがって, Teddy
「 bear」 又は teddy
( 「 bear」,

「テディベアー」(又は「テディベア」)の語の由来を考慮すると,ぬいぐ
るみと同一又は類似の商品のみならず,ぬいぐるみと強い関連性のある商
品についてであっても,「Teddy bear 」(又は「teddy b
ear 」 ,
) 「テディベアー 」(又は「テディベア」)という語を商標として
登録し,それを特定の商標権者が独占することは,セオドア・ルーズベル
トの有名なエピソード,又はテディベアの愛称をもつ小熊のぬいぐるみ固
有の人気や著名性に便乗する意図,又は誰もが自己の商品にその「テディ
ベアー 」等の名称を自由に使用できるという共通の認識を覆す意図があり,
公正な競争秩序ないし公平の観念に反するものとして,商標登録の無効事
由を構成する余地があるというべきである。しかし,仮に,譲渡人による
本件商標に係る商標権の取得又は被告によるその譲り受け若しくは使用
が,公正な競争秩序ないし公平の観念に反した不正の目的をもってしたも
のと認められるとしても,その事実をもって,被告ないしその通常使用権
者における登録商標の不使用を理由とする商標登録の取消事由に該当する
と評価することはできない。
したがって,原告の主張に係る取消事由3は理由がない。
4 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。他に本件審決を
取り消すべき瑕疵は認められない。
よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却し,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯 村 敏 明
裁判官 中 平 健
裁判官 上 田 洋 幸
別紙1
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