平成18(行ケ)10220審決取消請求事件
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裁判所 |
審決取消 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成20年3月19日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告住友林業株式会社 原告ミサワホーム株式会社
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対象物 |
建物 |
法令 |
特許権
民事訴訟法62条1回 特許法123条1項2号1回
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キーワード |
審決30回 訂正審判8回 無効8回 特許権1回 無効審判1回
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主文 |
1 特許庁が無効2003−35014号事件について平成18年3月29日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
1 手続の経緯
原告は,発明の名称を「建物」とする特許第2912797号特許(平成5
年8月26日出願,平成11年4月9日設定登録。以下「本件特許」とい
う。)の特許権者である。 |
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判決文
平成20年3月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成18年(行ケ)第10220号 審決取消請求事件
平成20年3月3日口頭弁論終結
判 決
原告 ミサワホーム株式会社
訴訟代理人弁護士 松尾翼,西村光治,鈴木広文
同弁理士 木下實三,中山寛二,石崎剛,土井清暢
被告 住友林業株式会社
訴訟代理人弁理士 羽鳥修,岩池満
主 文
1 特許庁が無効2003−35014号事件について平成18年3月2
9日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 手続の経緯
原告は,発明の名称を「建物」とする特許第2912797号特許(平成5
年8月26日出願,平成11年4月9日設定登録。以下「本件特許」とい
う。)の特許権者である。
被告は,平成15年1月20日,本件特許に対して無効審判請求をし,上記
審判請求は無効2003−35014号事件として特許庁に係属したところ,
原告は,平成16年8月26日,請求項1及び請求項3ないし5を削除すると
ともに,請求項2(以下「旧請求項2」という。)を請求項1(以下,訂正後
の請求項1を「本件請求項1」という。)とし,次のとおり訂正することを内
容とする訂正請求をした。
旧請求項2
上下方向に居室スペースと収納スペースとが配置され,かつこれら居室
スペースと収納スペースとは水平方向にかつ段違い状にスキップさせて配
置されてなるスキップフロア型建物であって,前記収納スペースの出し入
れ口を,水平方向に隣り合う前記居室スペース側に開口させたことを特徴
とする建物。
本件請求項1
上部に収納スペース,下部に居室スペースを有する第1建物ユニットの
上に,居室スペースのみを有する第2建物ユニットを設置して構成された
第1構造体と,前記第1建物ユニットと同一構造の第1建物ユニットの上
に,前記第2建物ユニットと同一構造の第2建物ユニットを設置して構成
した第2構造体とを備え,これら第1構造体および第2構造体が,水平方
向に隣り合って並設され,かつ,段違い状にスキップさせて配置されてな
るスキップフロア型建物であって,前記各構造体の収納スペースの出し入
れ口を,水平方向に隣り合う他の構造体の前記居室スペースに開口させた
ことを特徴とする建物。
特許庁は,平成16年12月21日,上記訂正請求を認めた上で,本件請求
項1に係る発明についての特許を無効とするとの審決(以下「前審決」とい
う。)をした。
これに対し,原告は,平成17年2月4日,東京高等裁判所に前審決の取消
しを求める訴えを提起する(平成17年(行ケ)第52号。以下,この事件を
「前訴事件」という。)とともに,同年5月2日,本件特許につき訂正審判請
求をした(訂正2005−39074号。以下「本件訂正審判請求」とい
う。)。
知的財産高等裁判所は,平成17年12月15日,前訴事件(同裁判所への
回付により,事件番号は平成17年(行ケ)第10145号となった。)につい
て,前審決のうち本件請求項1に係る発明についての特許を無効とするとの部
分を取り消す判決を言い渡した。
この判決の確定後,特許庁はさらに審理をし,平成18年3月29日,改め
て,原告からの平成16年8月26日付け訂正請求を認めた上で,本件請求項
1に係る発明についての特許を無効とするとの審決(以下「本件審決」とい
う。)をした。これに対し,原告は,平成18年5月9日,本件審決の取消し
を求める本件訴えを提起した。
本件訂正審判請求は,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目
的として,請求項1及び請求項3ないし5を削除するとともに,請求項2を請
求項1(以下,本件訂正審判請求による訂正後の請求項1を「訂正請求項1」
という。)として次のように訂正すること並びに明細書の記載を訂正すること
を内容とするものである。
訂正請求項1
上部に収納スペース,下部に居室スペースを有する第1建物ユニットの
上に,居室スペースのみを有する第2建物ユニットを設置して構成された
第1構造体と,前記第1建物ユニットと同一構造の第1建物ユニットの上
に,前記第2建物ユニットと同一構造の第2建物ユニットを設置して構成
した第2構造体とを備え,すなわちこれら同一構造の第1構造体および第
2構造体が,水平方向に隣り合って並設され,かつ,段違い状にスキップ
させて配置されてなるスキップフロア型建物であって,前記各構造体の収
納スペースの出し入れ口を,水平方向に隣り合う他の構造体の前記居室ス
ペースに開口させたことを特徴とする建物。
特許庁は,本件訂正審判請求について審理した結果,平成18年1月4日,
「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「訂正不成立審決」と
いう。)をし,同月14日,審決の謄本が原告に送達された。
原告は,平成18年2月13日,知的財産高等裁判所に訂正不成立審決の取
消しを求める訴え(平成18年(行ケ)第10062号)を提起したところ,同
裁判所は,平成19年7月19日,訂正不成立審決を取り消す判決を言い渡し
た。この判決の確定後,同年10月12日,特許庁は,改めて本件訂正審判請
求を認める審決(甲第11号証。以下「訂正審決」という。)をし,同月24
日,審決の謄本が原告に送達された。
2 本件審決の理由の要旨
別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件請求項1に係る発明は,
特開平4−97037号公報(甲第1号証),特開平4−97040号公報
(甲第2号証)及び特開平3−161631号公報(甲第3号証)に記載の周
知のスキップフロア型建物並びに特開平5−25857号公報(甲第4号証)
に記載の発明及び「別冊・都市住宅1975冬 住宅第8集」(鹿島研究所出
版会,昭和49年12月15日発行)2頁,58∼62頁,160頁,169
頁,172頁(甲第5号証)等に記載されているような周知の技術から,当業
者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定に
違反して特許されたものであり,平成6年法律第116号によるの改正前の特
許法123条1項2号の規定により無効とすべきであるというものである。
第3 審決取消事由
本件審決は,本件発明の要旨を上記第2の1の「本件請求項1」のとおり認
定し,これに基づき,上記第2の2のとおり,本件請求項1に係る発明につい
ての特許を無効とすべきであると判断したが,訂正審決が確定したことによっ
て,特許請求の範囲が上記第2の1の「訂正請求項1」のとおりに減縮された
から,本件審決は,結果的に本件発明の要旨の認定を誤ったことになり,取消
しを免れない。
第4 当裁判所の判断
1 甲第11号証によると,訂正審決は,本件訂正審判請求に係る訂正が特許請
求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,実質
上特許請求の範囲を拡張,変更するものでもなく,新規事項を追加するもので
もないとした上,独立特許要件も満たすとして,本件訂正審判請求を認めたも
のであり,前記第2の1のとおり,同審決の謄本が平成19年10月24日原
告に送達された結果,訂正審決は確定した。
したがって,本件特許に係る請求項の記載は前記第2の1の「訂正請求項
1」のとおりとなり,本件審決は前記第2の1の「本件請求項1」の記載を前
提として発明の要旨認定をしていたのであるから,本件審決がした本件発明の
要旨認定は,結果的に誤ったものとなるというべきである。
2 以上のとおり,審決取消事由は理由があるから,本件審決は取り消されるべ
きものである。よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,
訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主
文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田 中 信 義
裁判官
古 閑 裕 二
裁判官
浅 井 憲
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