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平成19(行ケ)10252審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成19年12月26日
事件種別 民事
当事者 被告ピアス株式会社
原告ボェールリントゲゼルシャフトフューアムベーハー
法令 商標権
商標法26条1項2号2回
商標法50条1回
商標法47条1項1回
商標法50条1項1回
キーワード 審決18回
無効3回
商標権3回
無効審判2回
主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 被告は,「REGENERATIVE」の文字と「リゼネレィティブ」の文字を 2段に書してなり,指定商品を第4類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」 とする商標登録第2137690号商標(昭和61年11月26日商標登録出願, 平成元年5月30日設定登録,以下「本件商標」といい,上記指定商品を「本件指 定商品」という。)の商標権者である。

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判決文

平成19年(行ケ)第10252号 審決取消請求事件
平成19年12月26日判決言渡,平成19年11月28日口頭弁論終結
判 決
原告 ボェールリント ゲゼルシャフト フューア
コスメティッシェ エアツォイクニッセ エ
ムベーハー
訴訟代理人弁理士 加藤朝道,青木充
被告 ピアス株式会社
訴訟代理人弁理士 藤本昇,薬丸誠一,野村慎一,白井里央子
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日
と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が取消2006−30563号事件について平成19年2月27日にした
審決を取り消す。
第2 当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯
被告は,「REGENERATIVE」の文字と「リゼネレィティブ」の文字を
2段に書してなり,指定商品を第4類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」
とする商標登録第2137690号商標(昭和61年11月26日商標登録出願,
平成元年5月30日設定登録,以下「本件商標」といい,上記指定商品を「本件指
定商品」という。)の商標権者である。
原告は,平成18年5月22日,被告を被請求人として,商標法50条の規定に
基づき,本件商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求した。特許庁は,
同請求を取消2006−30563号事件として審理した結果,平成19年2月2
7日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。
2 審決の理由
審決は,別紙審決のとおり,本件商標は,審判請求の予告登録前3年以内に,日
本国内において,通常使用権者により,本件指定商品中の「化粧品」に属する「化
粧水,美容液及びパック」について使用されていたとして,本件商標の登録は,商
標法50条1項の規定により取り消すことができないとした。
第3 原告主張の審決取消事由
審決は,使用標章についての認定判断を誤り(取消事由1及び2),本件商標の
登録は,同項の規定により取り消すことができないとしたものであって,違法とし
て取り消されるべきである。
1 取消事由1(「REGENERATIVE」についての認定判断の誤り)
( 1) 審決は,原告が,本件商標の通常使用権者が化粧水の外箱等に付した,
「リゼネレイティブ」,「REGENERATIVE」との語について,同商品の
効能又は用途を表すために付されている記述的表示にすぎないことを主張したのに
対し,「『REGENERATIVE』の文字は,『再生させる』等を意味する英
単語であることが認められる・・・。しかしながら,大修館発行『ジーニアス英語
辞典第4版』によれば,『regenerative』及び『regenerat
e』の語は,『中学学習語』・『高校学習語』・『大学生・社会人に必要な語』」
のいずれのカテゴリーにも含まれておらず」(7頁第4段落)とした上で,原告の
主張を排斥したが,誤りである。
(2) 「REGENERATIVE」の語の使用が,商標の使用に該当するかは,
一部の学習辞書において,「regenerative」という単語の学習の重要
性が低いことをもって,決められるものではない。
「再び」の意味の接頭辞である「re」で始まる語は,日本語としても,少なか
らず存在して,広く用いられており,広辞苑において,リアクション( reaction),
リサイクル(recycle),リセット(reset),リストラクチュアリング( restructuring),リ
フォーム(reform)といった語が収録されている。
また,「発生させる」や「生み出す」という意味の「generate」も広く
知られており,審決が引用する辞典においても,「大学生・社会人に必要な語」の
カテゴリーに含まれるとされている。
さらに,「ive」で終わる語も,日本語として少なからず存在し,広辞苑にお
いて,代表的なものだけでも,アクティブ,クリエーティブ,コンサバティブ,ネ
ガティブといった語が収録されている。
他方,「REGENERATIVE」,「リジェネレイティブ」の語は,化粧品
の品質,効能,用途等を表すものとして,化粧品需要者の間で慣用の語であり,イ
ンターネットの検索結果に照らしても,「リジェネレイティブ・フェイシャル」な
どというように,後続する化粧品の用途・効能を示す形容詞の意味合いで,広く使
用されている。そして,極めて限定的な「リジェネレイティブ」と「ローション」,
「エッセンス」,「マスク」及び「化粧品」という組合せを検索しただけでも,そ
れらの用例が頻出することから,「REGENERATIVE」の語は,取引者,
需要者において普通に用いられているということができる。
そうすると,本件商標の指定商品の取引者,需要者の語学水準を考慮すれば,
「regenerative」について,「再び」の意味の「re」と「gene
rate」の複合語の形容詞形であることを容易に理解し,「REGENERAT
IVE LOTION」,「リゼネレイティブ ローション」といった表示に接し
た取引者,需要者は,同書同大で後続する「LOTION(ローション)」などの
商品名称そのものとの関係からも,「REGENERATIVE」が,容易にその
商品の品質,効能,用途である,肌や歯等を「再生させる」や「回復させる」を指
す表示であると認識する。
2 取消事由2(使用態様についての認定判断の誤り)
( 1) 審決は,原告が,本件商標の通常使用権者が化粧水の外箱等に付した,
「リゼネレイティブ」,「REGENERATIVE」との語について,その使用
態様を挙げて,同商品の効能又は用途を表すために付されている記述的表示にすぎ
ないことを主張したのに対し,「商品の容器や包装箱等に,代表的出所標識を上段
に表記し,その下段に本件商品と同様に個別商標と商品名等を表示することは,化
粧品等を取り扱う業界においても少なからず用いられる表現手法というべきであ
る」(7頁第4段落)として,原告の主張を排斥したが,誤りである。
(2) 商品の容器や包装箱等においては,代表的出所標識を上段に表記し,下段
に記述的表示を含んだ商品名を表示することが,主流というべき表現手法である。
そして,本件商標の通常使用権者が化粧水の外箱等に付した「REGENERA
TIVE」,「リゼネレイティブ」の使用態様(甲52)は,上記の表現手法に即
したものであり,「QURAS」という出所表示とは別に,いずれも,「ローショ
ン」,「LOTION」,「エッセンス」,「ESSENCE」,「マッサージ&
マスク」,「MASSAGE&MASK」といった商品の品質(内容物),形状,
用途等の記載と同書同大の表示を伴った態様で用いられ,形容詞としてのみ機能し,
取引需要者からもそのように認識される。
したがって,「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」は,単に,
同社の販売に係る化粧水,美容液,パックが,どのような効能又は用途をもってい
るかを表すために付されている記述的表示にすぎず,同表示をもって,特定の出所
が認識されることはなく,信用が蓄積されることはあり得ない。審判段階で被告が
提出したパンフレット(甲52)では,「リゼネレイティブ」と表示した化粧水,
美容液,パックの3製品をまとめて「REGENERETIVE STEP」と紹
介していて,これによっても,肌や歯等を「再生させる」や「回復させる」ステッ
プに用いる製品としてのみ認識されるものである。
また,審判段階で被告が提出した他の証拠(甲53の1ないし3,甲63の1,
2,甲64の1,2)においても,外箱の「リゼネレイティブ」,「REGENE
RATIVE」が,商品の品質(内容物),形状,用途等を示す同書同大の表示を
必ず伴っていることからも明らかなとおり,形容詞としてのみ機能し,取引需要者
からもそのように認識される。
したがって,「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」の文字は,
取引者,需要者が「再生する」との意味を容易に認識できる単語であるだけでなく,
その使用態様からも,商品の品質,効能,用途等を指す単語として機能して,取引
者,需要者に認識されるものであり,本件商標と社会通念上同一の商標が,出所識
別機能を果たし得る態様で使用されている事実は認められない。
( 3) 商標法50条は信用が化体しておらず,商標選択の余地を無用に狭めるも
のとしてしか機能しない商標登録を取消請求できることを規定していて,その趣旨
及び商標登録の無効審判の除斥期間の規定(商標法47条1項)の規定により,こ
の種の登録商標を無効とすることができないことからも,実質的に不使用状態が継
続し,信用の全く化体していない,あるいは,指定商品との関係上,信用が化体す
る余地のない本件商標を存続させる必要性はない。
また,原告商品では,「QURAS」以外に,出所を想起させる標章は見当たら
ず,「REGENERATIVE」の語の使用態様は,取引者,需要者からは「商
標」とは認識されないものであって,「REGENERATIVE」は,商標法2
6条1項2号の「商標権の効力が及ばない商標」に該当し,特定の出所が想起され
るものではなく,信用自体が化体しないので,商標として使用されたことにならな
い。
第4 被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(「REGENERATIVE」についての認定判断の誤り)に
対して
( 1) 原告は,「regenerative」等の語の使用態様が「商標の使
用」に該当するか否かは,一部の学習辞書において「regenerative」
という単語の学習上の重要性が低いことをもって機械的に決せられるものではない
旨主張するが,これは,審決の理由の一部のみを引用して反論しているものであり,
失当である。
審決は,「regenerative」及び「regenerate」という語
は,一般的及び日常的な英単語としては認識されていないこと,本件商品との関係
においてその品質,効能等を具体的に表すような格別の意味合いを認めることがで
きないこと,さらには,この種業界において商品の品質等を表示するものとして普
通に使用されていると認められないこと等を,総合的に判断したものである。
(2) 原告は,「REGENERATIVE」の文字を分断して,「re」で始
まる語は日本語として広く用いられているとし,また,「発生させる」や「生み出
す」といった意味の「generate」も広く知られ,「ive」の語も広く用
いられていると主張するが,「REGENERATIVE」の一連の文字を分断し
て,広く用いられているとか,広く知られているとか主張しても,全く無意味であ
る。
審決が認定したのは,「REGENERATIVE」の文字が本件商標の指定商
品との関係において商品の品質等を表す格別な意味合いを有するか否かについてで
あり,原告の上記主張は商標法上の主張ではなく,単なる英単語としての文字分析
である。
そして,日本人の英語力やこの種商品の取引者,需要者の英語力をもって,「R
EGENERATIVE」という文字から,化粧品の品質・効能・用途等を示す語
として理解する者はほとんどないものと考えられる。
(3) 原告は,「REGENERATIVE」,「リジェネレイティブ」の語が,
化粧品の品質,効能,用途等を表すものとして化粧品需要者の間で慣用の語として
広く使用されている旨主張する。
しかし,原告がその根拠として挙げる記載は,インターネットの検索結果による,
ほとんどが重複した記載で,「REGENERATIVE」が化粧品との関係で記
載されているのは,1件のみであり,現実に使用されている事実も全く不明である。
また,原告の主張する日本語の片仮名文字は全て「リジェネレイティブ」である
が,本件商標の片仮名文字は「リゼネレイティブ」であって決して同一ではなく,
仮に,「リジェネレイティブ」が原告主張のような「再生」の意味があったとして
も,本件商標は「リゼネレイティブ」であってこの発音から「再生」の意味は直接
的には読みとれない。
そして,原告は,「REGENERATIVE」が使用されている記載において,
商品の品質や効能,用途等との関係について全く具体的な主張をせず,「REGE
NERATIVE」が,化粧品との関係でどのような品質・効能・用途等を意味す
るのかは全く不明である。
2 取消事由2(使用態様についての認定判断の誤り)に対して
(1) 原告は,審決の「商品の容器や包装箱等に,代表的出所標識を上段に表記
し,その下段に個別商標と商品名等を表示することは,化粧品等を取り扱う業界に
おいても少なからず用いられる表現方法というべきである」との認定を争うが,原
告の主張は,事実に反し,また,審決の取消事由とどのような関係を有するか不明
である。
(2) 原告が提出した証拠(甲13)においても,上段に代表的出所標識を,そ
の下段に個別商標を表記しているものや,本件と同様に,上段に代表的出所標識を,
その下段に個別商標を,さらにその下段に商品名を表記しているものがあって,代
表的出所標識を上段に,その下段に個別商標と商品名等を表示する表現が化粧品業
界で用いられていることが認められ,これに反する原告の主張は理由がない。
本件商標の商品の容器や商品の包装箱における使用態様は,ハウスマークとして
の「QURAS」又は「キュラス」の文字を表記し,その下段に商品の識別標識と
しての個別商標である「REGENERATIVE」又は「リゼネレイティブロー
ション」及び(化粧水)等の商品文字を3段表記してなるのであるが,「ローショ
ン」が化粧水を意味する商品名表示であることは化粧品業界において明白であるか
ら,「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」が個別商標として機能
する表示態様であることは明らかである。
そして,本件商標の「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」とい
う文字は,化粧品の内容を直接表すものではなく,直接化粧品の品質等を意味する
ものではないし,仮に,原告主張のようにこの文字から「再生させる」,「回復さ
せる」との意味を暗示することがあったとしても,直接的表示ではなく,間接的表
示である。
第5 当裁判所の判断
1 甲51ないし60及び弁論の全趣旨によれば,本件商標の取消審判請求の予
告登録前3年以内に,本件商標の通常使用権者であるキュラス株式会社は,商品の
容器に,「QURAS」の文字を大きく表し,その下部に,「REGENERAT
IVE LOTION」の文字を付し,その商品の外箱に,「キュラス」,「リゼ
ネレイティブ ローション」,「(化粧水)」との文字を3段に付したこと,商品
の容器に,「QURAS」の文字を大きく表し,その下部に,「REGENERA
TIVE ESSENCE」の文字を付し,その商品の外箱に,「キュラス」,
「リゼネレイティブ エッセンス」,「(美容液)」の文字を3段に付したこと,
商品の容器に,「QURAS」の文字を大きく表し,その下部に,「REGENE
RATIVE MASSAGE&MASK」の文字を付し,その商品の外箱に,
「キュラス」,「リゼネレイティブ マッサージ&マスク」,「(パック)」の文
字を3段に付したことが認められる(以下,これらの標章をまとめて「本件使用標
章」ということがある。)。
2 本件使用標章のうち,「REGENERATIVE」の語は,「再生させる,
改心させる,改新の,改造する」などの意味を有する英語の形容詞であり(甲2),
「リゼネレイティブ」は,その日本語表記ともいえる。しかし,「REGENER
ATIVE」の語自体,日本人にとり平易な英単語といえないことや,同語が本件
指定商品の分野において一般的に品質等を示す形容詞として使用されているとは認
められないことなど,後記3に記載した各事情に照らせば,本件指定商品の取引者,
需要者において,本件使用標章に接したとき,その「REGENERATIVE」,
「リゼネレイティブ」について,商品の品質等を表示する標章であると認識するも
のであるとはいえず,本件使用標章に接した取引者,需要者は,本件使用標章のう
ち,「QURAS」,「キュラス」の部分だけでなく,「REGENERATIV
E」,「リゼネレイティブ」の部分についても,自他商品の識別標識として認識す
るものであると認められる。
そして,本件使用標章のうち,「REGENERATIVE」,「リゼネレイテ
ィブ」は,本件商標と社会通念上同一といえるから,本件商標と社会通念上同一の
商標が,本件指定商品中の「化粧品」に属する「化粧水,美容液及びパック」に使
用されていたと認められる。
3 取消事由1(「REGENERATIVE」についての認定判断の誤り)及
び取消事由2(使用態様についての認定判断の誤り)について
(1) 原告は,取消事由1及び2において,審決の認定判断の誤りを主張し,本
件標章のうち,「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」の文字は,
取引者,需要者が「再生する」との意味を容易に認識でき,その使用態様からも,
商品の品質,効能,用途等を指す単語として機能して,取引者,需要者に認識され,
それらが出所識別機能を果たし得る態様で使用されていない旨主張するので,検討
する。
(2) 原告は,「REGENERATIVE」の語の使用が,商標の使用に該当
するかは,一部の学習辞書において,「regenerative」という単語の
学習の重要性が低いことをもって決められるものではなく,「再び」の意味の接頭
辞である「re」で始まる語や,「ive」で終わる語は,日本語として,広く用
いられていて,「発生させる」や「生み出す」という意味の「generate」
も広く知られていること,「REGENERATIVE」,「リジェネレイティ
ブ」の語は,化粧品の品質,効能,用途等を表すものとして,化粧品需要者の間で
慣用の語であることなどから,本件の標章に接した取引者,需要者は,同書同大で
後続する「LOTION(ローション)」などの商品名称そのものとの関係からも,
「REGENERATIVE」が,容易にその諸品の品質,効能,用途である,肌
や歯等を「再生させる」や「回復させる」を指す表示であると認識する旨主張する。
確かに,「generate」は,「生ずる,起こす,発生させる,<新個体を
>生む」(甲9)などの意味を有する英単語であり,大修館書店発行ジーニアス英
和辞典(甲10)において大学生・社会人に必要な語とされ,また,英語において,
「re」は「再び」という意味の接頭語であり,「 ive」で終わる形容詞があり,さら
に,日本語において,英語に由来する,リアクション,リサイクルなどの「リ∼」
という単語が知られ,また,アクティブ,クリエーティブなどの「∼イブ」という
形容詞が知られている。そして,インターネットにおける検索によれば,「バイオ
レジェネレイティブ ジェル クリーム」,「BIO−REGENERATIVE
CREAM」,「バイオ リジェネレイティブコンパウンド」,「リジェネレイ
ティブフェイシャル」などの用例がある(甲12の1ないし8)。
しかし,インターネットにおいて検索をした結果,「REGENERATIV
E」,「リ(レ)ジェネレイティブ」を形容詞として使用していることがうかがえ
る商品の例が存在したとしても,原告提出の証拠によっても,そのような商品の数
が多数あるとまでは認められず,また,上記商品の具体的な販売額や広告の規模等
は一切不明であることなどから,本件使用標章のうちの「REGENERATIV
E」,「リゼネレイティブ」を形容詞として使用することが本件指定商品の取引者,
需要者にとり,一般的であると認めることはできない。
そして,原告は,「REGENERATIVE」という英単語を分析するのであ
るが,「REGENERATIVE」の英単語自体,日本人にとり平易な英単語と
は認められず(甲2,7。英単語について,重要度の高い順にAランクからDラン
クが付され,「REGENERATIVE」はDランクとされている。),また,
本件指定商品の取引者,需要者において,語尾が「 ive」や「イブ」の語が必ず形
容詞として受け止められるとまでは認められないし,「generate」という
英単語が比較的一般的な英単語であったとしても,本件指定商品の分野において,
「generate」の関連語が使用されたとき,「generate」の部分に
ついて,例えば,原告が主張するような「発生させる」などの意味のものとして取
引者,需要者が直ちに理解し得るものであるとまでは到底認められない。したがっ
て,問題となる単語の後に商品内容を説明する単語が続いていることを考慮しても,
本件使用標章のうちの「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」とい
う語に接した取引者,需要者が,その語の構成から,それを,再生させるとか,回
復させるという,商品の性質等を示す形容詞であると理解するとは認められない。
(3) 原告は,商品の容器や包装箱等においては,代表的出所標識を上段に表記
し,下段に記述的表示を含んだ商品名を表示することが,主流というべき表現手法
であり,本件商標の使用態様は,「QURAS」という出所表示とは別に,いずれ
も,「ローション」,「LOTION」,「エッセンス」,「ESSENCE」,
「マッサージ&マスク」,「MASSAGE&MASK」といった商品の品質(内
容物),形状,用途等の記載と同書同大の表示を伴った態様で用いられ,形容詞と
してのみ機能し,取引需要者からもそのように認識される旨主張する。
しかし,本件指定商品の分野において,代表的出所標識を上段に表記し,下段に
記述的表示を含んだ商品名を表示する表現手法があったとしても,代表的出所標識
の下段にさらに出所標識を示す例もあり(甲13の10頁等),出所標識の下段に
記載された表示が,必ず記述的表示であるとの慣行等は認められず,出所標識の下
段に記載された表示を出所標識と認識するか,商品の内容等を示す記述と認識する
かは,表示の内容等によるものと認められる。
ここで,本件使用標章のうち,「REGENERATIVE」,「リゼネレイテ
ィブ」は,出所標識であることが明らかである「QURAS」,「キュラス」との
表記の下段に記載されていること,「∼TIVE」,「∼ティブ」という語は形容
詞として知られているものも多いこと,「REGENERATIVE」,「リゼネ
レイティブ」に続き,同書同大で,商品の内容を示すといえる「ローション」,
「LOTION」等の文字が記載されていることなど,それが形容詞として使用さ
れているのではないかと推測させる諸事情がないわけではない。
しかし,これらの事情等を考慮しても,なお,上記で検討したように,「REG
ENERATIVE」,「リゼネレイティブ」を形容詞として使用することが本件
指定商品の取引者,需要者にとり,一般的であると認められず,また,「REGE
NERATIVE」,「リゼネレイティブ」という単語に接した取引者,需要者が,
その語の構成から,それを,再生させるとか,回復させるという,商品の性質等を
示す形容詞であると理解するとは認められないことからすると,本件使用標章のう
ち,「REGENERATIVE」,「リゼネレイティブ」の部分は,出所識別機
能のある商標として使用されていると認めることが相当である。なお,原告は,本
件使用標章が使用された商品のパンフレットにおいて,「リゼネレイティブ」と表
示した化粧水,美容液,パックの3製品をまとめて「REGENERETIVE
STEP」と紹介していることなどもいうが,これは商品に付されたものではない
し,このような表記が,原告が主張する,肌や歯等を「再生させる」や「回復させ
る」ステップという意味で一般的に用いられているとも認められず,パンフレット
の記載は,上記説示を左右するものではない。
また,原告主張中には,商標法50条の立法趣旨や商標登録の無効審判の除斥期
間の規定(商標法47条1項)との関係,「REGENERATIVE」が,商標
法26条1項2号の「商標権の効力が及ばない商標」に該当することを主張する部
分もあるが,いずれも,本件使用標章中の「REGENERATIVE」,「リゼ
ネレイティブ」について,記述的表示であることを前提とするもので,採用できな
い。
4 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも採用できず,原告の請求を棄
却することとする。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚 原 朋 一
裁判官 宍 戸 充
裁判官 柴 田 義 明

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