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平成19(行ケ)10165審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成19年12月26日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官肥塚雅博
原告富士ゼロックス株式会社
対象物 画像処理装置
法令 特許権
特許法29条2項1回
キーワード 審決19回
刊行物16回
進歩性1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「画像処理装置」とする発明につき,平成9年4月9 日,特許を出願(以下「本願」という。)し,平成16年2月16日付け手続 補正書により補正したが(甲6),同年7月16日付けの拒絶査定を受け,同 年8月26日,審判請求を行ない,同年9月27日付け手続補正書(甲2)を 提出した(以下この補正を「本件補正」という。)。 特許庁は,この審判請求を不服2004−17694号事件として審理し, その結果,平成19年3月26日,本件補正を却下するとともに,「本件審判 の請求は,成り立たない。」との審決をした。

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判決文

平成19年12月26日判決言渡
平成19年(行ケ)第10165号 審決取消請求事件
平成19年10月31日口頭弁論終結
判 決
原 告 富士ゼロックス株式会社
訴訟代理人弁理士 佐 藤 清 孝
同 小 山 毅
被 告 特許庁長官 肥塚雅博
指 定 代 理 人 島 崎 純 一
同 酒 井 進
同 小 池 正 彦
同 大 場 義 則
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2004−17694号事件について平成19年3月26日に
した審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「画像処理装置」とする発明につき,平成9年4月9
日,特許を出願(以下「本願」という。)し,平成16年2月16日付け手続
補正書により補正したが(甲6),同年7月16日付けの拒絶査定を受け,同
年8月26日,審判請求を行ない,同年9月27日付け手続補正書(甲2)を
提出した(以下この補正を「本件補正」という。)。
特許庁は,この審判請求を不服2004−17694号事件として審理し,
その結果,平成19年3月26日,本件補正を却下するとともに,「本件審判
の請求は,成り立たない。」との審決をした。
2 特許請求の範囲
(1) 本件補正後の本願の請求項1(甲2。請求項の数は全部で6項であ
る。) は,次のとおりである。
【請求項1】
ジョブ要求の際に,複数出力において第1番目の出力状態を確認した後,
第2番目以降の出力を実行する確認出力が指示されたか否かを判別する確認
出力判別手段と,前記確認出力判別手段による判別結果により,確認出力が
指示されたと判定された場合には,第1番目の出力が終了した後,出力動作
を待機状態にする制御手段とを具備し,前記制御手段は,前記待機状態中に
次のジョブ要求がある場合,前記待機中のジョブを追い越して次のジョブの
出力動作を実行させ,前記次のジョブの出力動作の終了後も前記待機中のジ
ョブを待機状態にしておくことを特徴とする画像処理装置(以下,請求項1
に係る発明を「本願補正発明1」という。)。
(2) 本件補正前の本願の請求項1(甲6。請求の数は全部で9項である。)
は, 次のとおりである。
【請求項1】
ジョブ要求の際に,複数出力において第1番目の出力状態を確認した後,
第2番目以降の出力を実行する確認出力が指示されたか否かを判別する確認
出力判別手段と,前記確認出力判別手段による判別結果により,確認出力が
指示されたと判定された場合には,第1番目の出力が終了した後,出力動作
を待機状態にする制御手段とを具備し,前記制御手段は,待機状態中に次の
ジョブ要求がある場合,前記待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力
動作を実行させることを特徴とする画像処理装置(以下,請求項1に係る発
明を「本願発明1」という。)。
3 審決の理由
別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願補正発明1は,特開平7
−1792号公報(甲3。以下「刊行物1」という。)並びに特開平8−31
7104号公報(甲4。以下「刊行物2」という。)及び特開平5−3242
22号公報(甲5。以下「刊行物3」という。)の記載に基づいて,当業者が
容易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受け
ることができるものでないから,本件補正は却下すべきであり,本願発明1は,
刊行物1ないし刊行物3に基づいて,当業者が容易に発明することができたも
のであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと
するものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,刊行物1記載の発明(以下「引用発明
1」という。なお刊行物2,3記載の各発明を「引用発明2」,「引用発明
3」という。)の内容並びに本願補正発明1と引用発明との一致点及び相違点
を次のとおり認定した。
(1) 引用発明1の内容
「上位機器から指令された指令印刷枚数が複数枚であることを判別する枚
数判別手段と,前記枚数判別手段により指令印刷枚数が複数枚であると判別
されると,エンジンを駆動させて1枚だけ印刷をさせ,1枚印刷が終了した
後に前記エンジンを待機状態に切替える待機状態切替制御手段とを具備し,
1枚だけ印刷しその評価結果によって残りの枚数を印刷するか否かの選択が
できる印刷装置。」
(2) 一致点
ジョブ要求の際に,複数出力において第1番目の出力状態を確認した後,
第2番目以降の出力を実行する確認出力が行われることを判別し,確認出力
をすべきと判定された場合には,第1番目の出力が終了した後,出力動作を
待機状態にする制御手段を具備した画像処理装置である点。
(3) 相違点
ア 相違点1
本願補正発明1では,確認出力が行われることの判別のために確認出力
が指示されたか否かを判別する確認出力判別手段を具備しているのに対し,
引用発明1では,そのような特定は有さず,枚数判別手段により指令印刷
枚数が複数枚であることをもってして確認出力をすべきと判別する点。
イ 相違点2
本願補正発明1の制御手段は,前記待機状態中に次のジョブ要求がある
場合,前記待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実行させ,
前記次のジョブの出力動作の終了後も前記待機中のジョブを待機状態にし
ておくとの特定を有しているのに対し,引用発明1の制御手段(待機状態
切替制御手段)はそのような特定を有さない点。
第3 原告主張の取消事由
審決は,引用発明2,3の認定を誤った結果,相違点2に関する容易想到性
の判断を誤り(取消事由1),本願補正発明1の作用効果を看過して相違点2
に関する本願補正発明1の容易想到性の判断を誤り(取消事由2),相違点2
に関する本願発明1の容易想到性の判断を誤った(取消事由3)ものであると
ころ,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,
違法なものとして取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点2に関する本願補正発明1の容易想到性の判断の誤り・
その1)
審決は,刊行物2,3に記載の「割り込みプリント」を「空き時間を強制的
に作り,その空き時間で別のジョブを行なわせる」ことと理解しているが,
「割り込みプリント」は,単に出力順序を入れ替えるものに過ぎない。また,
「割り込みプリント」でいう「次のジョブ」とは,そのジョブの節目までに出
力要求のあった次のジョブであり,本願補正発明1の「出力動作の待機中に要
求があった次のジョブ」とは別のものである。したがって,引用発明1に刊行
物2,3記載の「割り込みプリント」の周知技術を適用して相違点2に係る
「出力動作の待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実行させ
る」ようにすることは,当業者が容易に想到できることではない。
2 取消事由2(相違点2に関する本願補正発明1の容易想到性の判断の誤り・
その2)
本願に係る本件訂正後の明細書(甲1,2,6)の記載から,本願補正発明
1による「生産性の向上」とは,画像処理装置の活用の有効度を上げることに
より,活用しなければならない無駄な時間によるプリント処理が衝突しない出
力動作の待機中に,次のジョブの出力処理を行ない,画像処理装置のプリント
処理の稼働率の向上を図ったものであると理解できる。この効果は,本願補正
発明1の構成である「出力動作の待機中に次のジョブ要求を受けた場合,前記
待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実行させる」ことに対応
する効果であって,本願補正発明1の進歩性を裏付けるものである。しかるに,
審決はこれを評価せずに容易想到と判断したものであり,誤りである。
3 取消事由3(相違点2に関する本願発明1の容易想到性の判断の誤り)
本願発明1は,①「前記待機状態中に次のジョブ要求がある場合,前記待機
中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実行させる」点,②「前記次
の出力動作の終了後も前記待機中のジョブを待機状態にしておく」点で,引用
発明1ないし引用発明3から当業者が容易に想到することができたとはいえな
いから,審決の判断は誤りである。
第4 被告の反論
審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(相違点2に関する本願補正発明1の容易想到性の判断の誤り・
その1)に対して
審決が「割り込みプリント」を,①画像出力動作の出力(ジョブ)順序を入
れ替えるとともに,②空き時間を強制的に作り,その空き時間で別のジョブ要
求があったジョブを行なわせると認定した点に誤りはない。
引用発明1の待機状態は,プリンタからすると何の出力動作もしておらず,
直ちに別のジョブを行い得る状態であるから,引用発明1の「待機状態中」に
刊行物2,3記載の「割り込みプリント」の要求があれば,「待機状態中に次
のジョブがある場合,前記待機状態中のジョブを追い越して次のジョブの出力
動作を実行させる」ようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
2 取消事由2(相違点2に関する本願補正発明1の容易想到性の判断の誤り・
その2)に対して
原告が主張する審決の作用効果の判断は,原告の主張する「出力待機状態の
時間を活用する」という点につき予備的に判断したものであり,その判断のい
かんは審決の結論に影響を及ぼすものではない。また,本願補正発明1の効果
も引用発明1ないし3から予測できる範囲内のものであるから,容易想到性の
判断に誤りはない。
3 取消事由3(相違点2に関する本願発明1の容易想到性の判断の誤り)に対
して
本願発明1は引用発明1ないし3から容易に発明できたとの審決の判断に,
誤りはない。
第5 当裁判所の判断
当裁判所は,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求を棄却すべき
であると考える。以下理由を述べる。
1 取消事由1(相違点2に関する本願補正発明1の容易想到性の判断の誤り・
その1)について
(1) 刊行物2,3の記載
ア 刊行物2(甲4)には,以下の記載がある。
(ア) 段落【0006】
「本発明は,複数のユーザがインターフェイスを介して画像出力装置
を使用するような状況においても,各ユーザが要求する画像出力動作の
緊急度等に応じて適宜に出力動作を切り換えて画像出力を行うことがで
きる画像処理装置を提供することを目的とする。」
(イ) 段落【0008】【作用】
「本発明では,所定のデータを解析した結果,例えば割り込みプリン
ト要求であれば,実行中の画像展開,出力動作を一時中断して,割り
込みプリント要求のあった文書の画像展開,出力動作を実行する。そ
して,この割り込みによる文書の画像展開,出力動作の終了後,一時
中断していた画像の展開,出力動作を再開する。」
(ウ) 段落【0101】∼【0103】
「また,割り込みプリントであった場合,割り込みプリントを行うた
めの準備を行う(S808)。
ここでは,まず実行中のジョブの切れ目まで待機する。ここで,ジョ
ブの切れ目とは,例えば画像展開中であれば,1ページ分画像展開し,
メモリに出力し終えた時点,複数部の画像出力中であれば,そのページ
を全て出力し終えた時点のことを指す。
そして,ジョブの切れ目となったら,展開動作,画像出力動作を停止
する(以下省略)。」
(エ) 段落【0106】∼【0109】
「以上の割り込みプリントを行うための準備を行った後,コア部10
にデータ転送準備OKを通知する(S803)。
この後,前述したようにコア部10からデータを受け取り,割り込み
プリント用に確保したメモリ領域を用いてイメージデータに展開し,展
開した画像をプリンタ部2へ出力するという一連の動作を行う。
なお,割り込みプリント時に,コア部10から終了通知を受けること
により(S806),現在実行中の割り込みプリント終了後,再び前の
プリント動作を開始することを認識する。
そして,割り込みプリントが終了すると,先に記憶していた前の画像
に関する情報のアドレスを読み出し,画像の展開出力を再開する。」
(オ) 段落【0112】
「さらに,1種類の割り込みプリント要求ではなく,緊急度に応じた
優先順位を伴う要求とし,割り込みを許可するか否かを判断するように
しても良い。」
イ 刊行物3(甲5)には,以下の記載がある。
(ア) 段落【0004】【発明が解決しようとする課題】
「上記のように1以上の出力要求を受付けて受付け順に出力要求の処
理を行なう場合において,例えば,著しく多量の出力要求が先に出力処
理されている場合には,どのような種類の出力要求であっても,既に遂
行中の出力要求の出力処理が完了し,さらには他の先に受付けた出力要
求の処理が完了するまでは該当する出力要求の処理が行なわれないので,
緊急の出力要求に対する処理を直ちに行なうことができないという不都
合がある。」
(イ) 段落【0005】
「また,緊急の出力要求をどうしても優先的に処理したい場合には,
先行する出力要求の処理を中止すればよいが,先行する出力要求の処理
を再開するに当って,既に処理が完了している量を確認し,未処理の量
に対応する出力要求を改めてプリンタに供給しなければならず,著しく
作業が繁雑化してしまうという不都合がある。」
(ウ) 段落【0006】
「【発明の目的】この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであ
り,出力要求の緊急度の合せた出力処理を達成できるプリンタにおける
出力制御方法およびその装置を提供することを目的としている。」
(エ) 段落【0019】
「上記の構成のプリンタにおける出力制御装置の作用は次のとおりで
ある。図示しないデータ処理装置から供給される出力要求を出力要求受
付け部1により受付け,優先度識別部2により優先度を識別して該当す
る出力要求保持部3に一時的に保持する。この場合に,何れかの出力要
求に基づく出力処理を出力処理部5において行なっていれば,1頁分の
出力処理が行なわれる毎に出力要求判別部6により,遂行中の出力要求
よりも高い優先度の出力要求保持部3に出力要求が存在しているか否か
を判別する。ここで,遂行中の出力要求よりも高い優先度の出力要求保
持部3に出力要求が存在していないと判別されれば,遂行中の出力要求
に基づく出力処理を続行する。逆に,遂行中の出力要求よりも高い優先
度の出力要求保持部3に出力要求が存在していると判別されれば,遂行
中の出力要求に基づく出力処理を中断するとともに,該当する出力要求
保持部3に保持されている出力要求に基づく出力処理を行なわせるべく
制御部7により出力処理部5を制御する。」
(オ) 段落【0020】
「したがって,多数頁にわたる出力要求に基づく出力処理が行なわれ
ている状態において優先度が高い出力要求が供給された場合に,元の出
力要求に基づく1頁分の出力処理が終了した時点で優先度が高い出力要
求に基づく出力処理を行なうことができ,優先度が高い出力要求に基づ
く出力頁をタイムリーに得ることができる。」
(2) 引用発明2,3の「割り込みプリント」の技術内容
以上の刊行物2,3の記載事項から,引用発明2,3には,複数の出力要
求を受け付けるプリンタにおいて,一の出力処理を実行している間に,それ
よりも優先度の高い出力要求を受け付けた場合,実行中の出力処理の節目
(1頁分の出力が終了した時点)でその動作を停止(中断)し,出力要求の
あった出力処理を実行し,その終了後に,もとの出力処理を再開する,いわ
ゆる「割り込みプリント」の技術が開示されているということができる。
(3) 相違点2に関する容易想到性の判断
刊行物2,3に記載された「割り込みプリント」の技術を引用発明1に適
用し,「出力動作の待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実
行させ」るようにすることが,当業者にとって容易想到であったか否かにつ
いて検討する。
ア 前記第2,3(1)で摘示した引用発明1の内容(原告は,争っていな
い。)によると,引用発明1は,「確認プリント機能」を有する印刷装置
であり,確認プリントのための処理では,作業者が印刷状態を確認するま
で,印刷処理は待機状態とされている。そして,待機状態にある間に別の
印刷ジョブの要求が生じることは当然に予測されるところである。
イ 他方,刊行物2,3の「割り込みプリント」の技術内容は,上記(2)で
認定したとおりであり,これを引用発明1と併せ考慮すると,引用発明1
の印刷装置において,印刷処理が待機状態にある間に別の印刷ジョブの要
求があった場合に,待機状態を中断して当該別の印刷ジョブを実行し,そ
の終了後に,先のジョブの待機状態に戻すことは,当業者が容易に想到し
得ることといえる。このことは,待機状態中に次のジョブ要求がある場合,
当該待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実行させ,当該
次のジョブの出力動作の終了後も先の待機中のジョブを待機状態にしてお
くことであり,相違点2に係る構成にほかならない。
ウ 原告は,「割り込みプリント」でいう「次のジョブ」とは,そのジョブ
の節目までに出力要求のあった次のジョブであり,本願補正発明1の「出
力動作の待機中に要求があった次のジョブ」とは別のものであると主張す
る。
しかし,引用発明1の印刷装置において,印刷処理が待機状態とされて
いる間は,別の印刷ジョブの要求があっても印刷処理を実行できないとい
う不都合は,当業者が容易に認識する課題であるから,出力動作の待機中
に要求があった次のジョブを「割り込みプリント」の実行対象とすること
は,きわめて自然な選択といえる。よって,「割り込みプリント」にいう
「次のジョブ」とは,「出力動作の待機中に要求があった次のジョブ」と
理解することができるので,原告の主張は採用できない。
エ 以上により,相違点2に係る事項は,引用発明1に引用発明2,3記載
の周知慣用技術を付加するにあたり当業者が容易に想到できるものである
とした審決の判断に誤りはない。原告主張の取消事由1は,採用できない。
2 取消事由2(相違点2に関する本願補正発明1の容易想到性の判断の誤り・
その2)について
(1) 原告は,本願補正発明1によれば,「出力動作の待機中に次のジョブ要
求を受けた場合,前記待機中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を
実行させる」との構成により,活用しなければ無駄な時間になる出力動作の
待機中に次のジョブの出力処理を実行することができ,画像処理装置のプリ
ント処理の稼働率が向上し,「生産性の向上」の効果を挙げられるのに,審
決はこの点を評価せずに,本願補正発明1は当業者が容易に発明をすること
ができたと誤って判断したと主張する。
(2) しかしながら,上記1で検討したように,引用発明1において,「出力
動作の待機中に次のジョブ要求を受けた場合,前記待機中のジョブを追い越
して次のジョブの出力動作を実行させる」との構成を採用することは,当業
者が容易に想到することである。原告主張の「生産性の向上」の効果は,こ
の構成の採用により当然に奏される効果にすぎず,容易想到性の判断を左右
するということはできない。原告主張の取消事由2は,採用できない。
3 取消事由3(相違点2に関する本願発明1の容易想到性の判断の誤り)につ
いて
原告は,本件補正が却下されるべきものであるとしても,本件補正前の本願
発明1(甲6)は,「前記待機状態中に次のジョブ要求がある場合,前記待機
中のジョブを追い越して次のジョブの出力動作を実行させる」ものである点で
本願補正発明1と変わりなく,同様の理由により,引用発明1並びに引用発明
2及び引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでは
ないと主張する。
しかし,本願発明1の構成が当業者にとって容易想到であることは,本願補
正発明1について上記1で説示したところと同様の理由により,明らかである。
原告主張の取消事由3は採用できない。
4 結論
以上に検討したところによれば,原告が主張する取消事由にはいずれも理由
がない。原告はその他縷々主張するが,いずれも採用できず,審決を取り消す
べきその他の誤りも認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 三 村 量 一
裁判官 嶋 末 和 秀
裁判官 上 田 洋 幸

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