平成18(ワ)29460慰謝料請求事件
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裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
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裁判年月日 |
平成19年12月6日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告富士通株式会社 原告A
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法令 |
その他
民法709条1回 著作権法20条1回 著作権法12条1回
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キーワード |
侵害10回
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主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,365枚の花の写真を1年間の日ごとに対応させた日めくりカレン
ダー用デジタル写真集を作成した原告が,原告から同写真集の著作権の譲渡を
受けた被告が,インターネット上に開設した携帯電話利用者向けのサイトにお
いて,同写真集中の写真を携帯電話の待受画面用の画像として毎週1枚のみを
配信し,かつ各配信日に対応すべき写真を用いなかったことが,編集著作物で
ある同写真集の著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして,被告に対し
て,不法行為に基づく精神的損害についての慰謝料の支払を求めている事案で
ある。 |
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判決文
平成19年12月6日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成18年(ワ)第29460号 慰謝料請求事件
(口頭弁論終結の日 平成19年10月9日)
判 決
東京都日野市〈以下略〉
原 告 A
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 加 藤 文 也
同 加 納 力
川崎市中原区〈以下略〉
被 告 富 士 通 株 式 会 社
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 村 島 俊 宏
同 穂 積 伸 一
同 森 山 敦
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,273万7500円及びこれに対する平成18年7月
11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,365枚の花の写真を1年間の日ごとに対応させた日めくりカレン
ダー用デジタル写真集を作成した原告が,原告から同写真集の著作権の譲渡を
受けた被告が,インターネット上に開設した携帯電話利用者向けのサイトにお
いて,同写真集中の写真を携帯電話の待受画面用の画像として毎週1枚のみを
配信し,かつ各配信日に対応すべき写真を用いなかったことが,編集著作物で
ある同写真集の著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして,被告に対し
て,不法行為に基づく精神的損害についての慰謝料の支払を求めている事案で
ある。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定し得
る事実。なお,証拠により認定した事実については,該当箇所の末尾に()書
きで当該証拠を掲げた。以下同様。)
(1) 当事者
ア 原告は,主に四季の風景や野花などを主題とした自然写真を作品として
発表している写真家である 。(原告本人1・2頁,甲7,甲8)
イ 被告は,通信システム,情報処理システム及び電子デバイスの製造・販
売並びにこれらに関連するシステムの構築及びコンサルティング等を業と
する株式会社であり,インターネット上に被告製造のiモード対応携帯電
話利用者のための「@Fケータイ応援団」というサイト(以下「本件サイ
ト」という。)を開設している。
(2) 本件写真集の作成
ア 原告は,平成14年ころ ,「日めくりカレンダー」用,すなわち365
枚の花の写真の画像データを1年間の日ごとに対応させたデジタル写真集
(花の写真の画像データを「File0001」から「File0365」までのファイル
名(拡張子を除く 。)により保存したもの。以下「本件写真集」という。)
を作成した(ただし,本件写真集が編集著作物として著作権法上保護され
るものに該当するか否かという点については,後記のとおり争いがある。 。
)
(甲1,原告本人2∼6頁)
イ 原告は,本件写真集中に画像データとして含まれる個々の花の写真につ
いて,それぞれ著作権を有していた。
(3) 原告から被告への著作権の譲渡
原告は,平成15年4月又は5月ころ,被告に対し,訴外富士通パレック
ス株式会社(以下「富士通パレックス」という 。)を通じて,本件写真集中
の花の写真の画像データ(ただし,元の画像データを携帯電話の待受画面用
にそれぞれ12種類に加工済みのもの。以下,個々の花の写真についての画
像データをまとめて,単に「花の写真」ということがある 。)及びそれらの
著作権を全部譲渡し ,その対価である273万7500円の支払を受けた 以
(
下「本件譲渡行為」という。なお,原告の主張によれば,編集著作物として
の本件写真集の著作権も同時に譲渡したことになる。 。 甲3 ,乙1 ,乙2 ,
)(
乙6,乙8)
(4) 本件サイトにおける本件写真集中の花の写真の配信
被告は,平成15年6月27日から同17年7月15日までの間,本件サ
イトにおいて,携帯電話の待受画面用の画像として,本件写真集中の花の写
真の配信をした。その際,花の写真の配信ペースは毎週1枚であり,かつ,
各配信日に対応すべき花の写真は用いられなかった(以下,上記内容の被告
による配信行為を「本件配信行為」という。 。
)
2 争点
(1) 本件写真集は編集著作物に該当するか(争点1 )。
(2) 本件配信行為は,原告の本件写真集に対する同一性保持権の侵害を構成す
る態様のものか(争点2 )。
(3) 本件配信行為について ,原告の明示又は黙示の同意があったか(争点3)。
(4) 原告の損害及びその金額(争点4)。
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件写真集は編集著作物に該当するか)について
(1) 原告の主張
ア 本件写真集は,原告が過去に撮影しストックしていた写真に加えて,本
件写真集のためだけに撮影された写真を追加し ,1年365日の日ごとに ,
それぞれの季節,行事等にふさわしいと考えられる花を対応させて「日め
くりカレンダー」として編集されたものである。
イ 1年の中には,季節や節句その他の年中行事があり,花にも季節や年中
行事にちなんだ花があることはいうまでもないが,本件写真集は,単に1
枚1枚の写真がある季節や年中行事にちなんでいるというだけではなく,
暦にしたがって各日に1枚ずつの写真を対応させることで,1年という時
間軸を取り込んだ連作写真集となっている。そして,どの日にちにどの花
の写真を対応させるかは自動的に決まるものではなく,原告が自ら撮影し
た著作物たる写真を,季節や年中行事に合わせ,さらに花言葉に照らして
選択・配列したものであり,その結果,花の写真による「日めくりカレン
ダー」として創作されている。
ウ 実際に,本件写真集中の花の写真は,完璧な365日の日めくりカレン
ダーを組むために,原告が特別に苦労して撮り下ろして揃えた花の写真が
ほとんどであり,また,日ごとの花の色や種類の順序関係も,配信上で見
栄えがするように厳密な編集上の配慮を施している。
エ したがって,本件写真集は,1枚1枚の写真自体が原告の著作物である
と同時に,全体として,素材の選択又は配列によって創作性を有する編集
著作物である。
オ 被告は,本件写真集について,知的創作活動の結果としての表現は何ら
読み取ることができず,単なる花の写真の画像データの集合でしかないと
して,編集著作物性を否定する。
しかし,大阪地方裁判所平成16年2月12日判決では,原告が出版し
ていた,1年366日(2月29日を含む 。)の日ごとに計366種類の
花を一つずつ「誕生花」と称して対応させた花の写真及びその花言葉の組
合せからなる写真集について著作物性を肯定しており,上記裁判例におけ
る著作物性の判断は,本件写真集にもほぼそのまま当てはまる。
上記裁判例における写真集は既に紙媒体で出版されていたものであるの
に対して,本件写真集は未発表のものであったという違いはあるものの,
本件写真集は,本件サイトから「日めくりカレンダー」として配信される
ことによる発表を残すのみの,完成した写真集である。したがって,上記
裁判例における写真集と本件写真集との違いは,それが紙媒体として存在
するか,デジタルデータとして存在するかの違いにすぎない。
(2) 被告の主張
ア 原告は,本件訴訟において,立証趣旨を「著作物の存在及び内容」とし
た上で,甲第1号証として365枚の花の写真の画像データを提出し,こ
の365枚の花の写真の画像データの全体について,編集著作物性がある
と主張する。
イ しかし,そもそも著作権法で保護されるのは,あくまでも「表現」であ
って,思想,感情又はアイデアなど表現それ自体ではないものには,著作
物性は認められない。本件訴訟で著作物性が問題とされている365枚の
花の写真の画像データの全体については,甲第1号証を見ると,花の写真
とそのファイル名しか表現されておらず,他に原告の思想又は感情が表現
されたものはない。
ウ 原告は,これを「写真集」と称している。しかし,甲第1号証において
は,「写真集」としての知的創作活動の結果としての表現は何ら読み取る
ことができず,この365枚の花の写真の画像データの全体については,
単なる花の写真の画像データの集合でしかないことから,著作権法12条
の「編集物」には該当せず,したがって,著作権法上の編集著作物には該
当しない。
エ 原告が前記(1)オにおいて引用する裁判例は,実際に1冊の書籍として
出版された写真集を問題にしたものであって,そのページ上に日付の記載
がなされ,日付と花の対応が具体的に表現されている点が,本件写真集と
決定的に異なっているところである。
2 争点2(本件配信行為は,原告の本件写真集に対する同一性保持権の侵害を
構成する態様のものか)について
(1) 原告の主張
ア 本件写真集は,前記1(1)アからウまでのとおり,対応する日付による
花の写真の順序に殊の外意味があり,無作為に並べ替えるのではその意味
が全く失われてしまう性格のものであるから,その著作物としての同一性
は,各写真の順序も含めて保持されなければならない。
したがって,毎日その日にちなんだ花の写真を配信すること以外に,本
件写真集の同一性を損なわない方法はない。
イ ところが,本件配信行為においては,花の写真の配信は毎週1枚のみと
いうペースで進められ ,「日めくりカレンダー」としての画像配信になら
なかったばかりか,各配信日に対応すべき花の写真が用いられず,本件写
真集の著作物としての同一性は著しく損なわれた。
ウ 被告は,365種類の花の写真の画像データを適宜配信したにすぎない
ので,ユーザから見て本件写真集の特徴等は何ら読み取ることができない
から,同一性保持権の侵害はないと主張する。
しかし,本件では,原告が撮影し365日分連続して配列された花の写
真が,本件配信行為によってその連続性や日付との対応関係が失われてし
まっているものの,原告が撮影した季節の花の写真としての本質的特徴が
感得できることは疑いがなく,本件配信行為が本件写真集の同一性を損な
うものであることは明らかである。
(2) 被告の主張
ア 著作権法20条の同一性保持権を侵害する行為とは,他人の著作物にお
ける表現形式上の本質的な特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変
を加える行為をいい,他人の著作物を素材として利用しても,その表現形
式上の本質的な特徴を感得させないような態様においてこれを利用する行
為は,原著作物の同一性保持権を侵害しないと解されている(最判昭和5
5年3月28日,最判平成10年7月17日等 )。
イ 本件配信行為は,365種類の花の写真の画像データを適宜配信したも
のであり ,この配信を受けたユーザは,花の写真の画像データを取得して ,
単に花の写真を携帯電話の画面上で見ることが可能となるにすぎない。
したがって,本件配信行為においては,原告が主張している本件写真集
の特徴等については,何ら読み取ることはできない。
ウ よって,仮に,本件写真集に何らかの理由で著作物性が認められたとし
ても,本件配信行為は,同一性保持権の侵害となり得ない。
3 争点3(本件配信行為について,原告の明示又は黙示の同意があったか)に
ついて
(1) 被告の主張
ア 被告の従業員であるB(以下「B」という 。)は,原告と最初に面会し
た平成15年1月20日,原告に対して,本件サイトの更新が毎週1回金
曜日であり,その際に待受画面用の画像が1枚ずつ配信されるものである
ことを,本件サイトを紹介する資料を提示しながら説明し,また,実際に
本件サイトが表示された携帯電話の画面を提示して,待受画面用の画像と
して配信した写真が携帯電話の画面上どのように表示されるかについて
も,具体的に説明している。
原告は,Bからの説明を聞き,うなずくなどした上で,翌日の平成15
年1月21日には本件写真集中の個々の花の写真の画像データを被告に提
供したのであるから,Bからの説明がなされた同月20日の時点で,原告
が,本件写真集中の花の写真を週1回1枚の割合で配信することについて ,
明示に同意していたことは明らかである。
その後,実際に本件配信行為が始まるまで,原告と被告との間で ,「日
めくりカレンダー」の話が一切なされていないのも,原告の同意があった
からに他ならない。
イ 仮に,明示の同意がないとしても,原告は,Bからの説明を聞き,本件
サイトにおいて待受画面用の画像がいつ,どのような形式で配信されるか
について十分認識していたのであって,それにもかかわらず,実際に本件
配信行為が始まった後である平成15年7月28日に至るまで,本件写真
集中の花の写真の配信方法について何らの異議も述べることはなかった。
このように,原告は,本件写真集中の花の写真が週1回1枚の割合で配
信されることを十分に認識しながら,それに対して何らの異議も述べるこ
とがなかったのであるから,遅くとも手付金支払のための注文書が発行さ
れた平成15年5月7日までには,原告が,本件写真集中の花の写真を週
1回1枚の割合で配信することについて黙示に同意していたことは明らか
である。
(2) 原告の主張
ア 被告は,原告が本件写真集中の花の写真を週1回1枚の割合で配信する
ことについて,明示又は黙示に同意していたと主張する。
しかし,そのような事実はなく,いずれも否認する。
イ 原告とBが平成15年1月20日に面会した際,Bから本件サイトの当
時の更新ペースが週1回であることの説明はなされたものの,それはあく
まで現状についての説明としてなされたものであり,むしろ,Bは,原告
の「日めくりカレンダー」という提案に対して,毎日1枚のペースで更新
することは可能であると説明しており,当時の現状としての配信状況を改
めて,毎日1枚の割合で更新して配信されることが黙示的な了解事項とな
っていた。
また,原告は,毎日1枚の割合で花の写真が配信されることを微塵も疑
っていなかったからこそ,本件配信行為が始まっていることにすら気付か
なかったのであり,黙示の同意の前提を欠いている。
4 争点4(原告の損害及びその金額)について
(1) 原告の主張
ア 原告は,これまで温めてきた連作の自然写真による「日めくりカレンダ
ー」という構想を作品化し,本件サイトでの配信という形でその発表の機
会を得たが,これは,本件写真集がいかなる評価,反響を得られるのかを
量るまたとない機会となるはずであった。しかしながら,被告が原告の作
品の意図を知りながらこれに沿わない方法で公表したため,原告は,本件
写真集について社会から正当な評価を受ける機会を失った。
この精神的損害をあえて金銭に算定するならば,作品としての価値を損
なわれたという観点から,少なくとも被告への著作権の譲渡対価に相当す
る273万7500円を下回るものではない。
イ 原告は,平成18年7月10日,被告に対し,慰謝料273万7500
円の支払を請求した。
ウ よって,原告は,被告に対し,同一性保持権侵害の不法行為に基づく精
神的損害に対する慰謝料273万7500円及びこれに対する(前記慰謝
料請求の翌日であり)不法行為の後である平成18年7月11日から支払
済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 被告の主張
ア 被告は,原告が承諾している内容で本件配信行為をしたのであるから,
原告が精神的損害を被っていることは,そもそもあり得ない。
また,原告は,精神的損害として, 正当な評価を受ける機会を失った 」
「
と主張しているが,その金銭的評価においては,当該主張と全く関係のな
い,「作品としての価値を損なわれた」という観点で行っており,本件の
請求金額は何ら合理的な理由のないものであることは明らかである。
イ 前記(1)イは認め,同ウは争う。
第4 当裁判所の判断
1 はじめに
本件においては ,本件写真集がそもそも編集著作物に該当するかという点 争
(
点1 ),及び本件配信行為が原告の本件写真集に対する同一性保持権の侵害を
構成する態様のものかという点(争点2)についても,それぞれ争点となって
いる。
しかしながら,本件事案の紛争の実体は,原告が,本件写真集の発表の手段
として,本件サイトにおいて,本件写真集中の花の写真が「日めくりカレンダ
ー」として画像配信されることを期待していたのに対して,被告による本件配
信行為の内容が結果的にその期待に添うものではなかったという行き違いに端
を発したものであること(甲4の1∼5 )に鑑み,当裁判所は ,まず争点3(本
件配信行為について,原告の明示又は黙示の同意があったか)について判断す
ることが相当であると考える。
2 争点3(本件配信行為について,原告の明示又は黙示の同意があったか)に
ついて
(1) 本件譲渡行為に至る経緯について
ア 原告は,写真家として,カレンダーの仕事,すなわち,1年を2か月ご
とに6枚又は1か月ごとに12枚の風景若しくは花の写真で季節感を表現
することを中心的な活動としてきた。原告は,そうした活動を続ける中で ,
携帯電話を媒体として,その待受画面用にデジタル画像として写真を配信
するという形で自分が撮った写真を発表するというアイデアを温めてい
た。(原告本人1∼3頁)
イ 原告は,平成13年ころ,インターネットのサイトの中には毎日内容を
更新しているものがあることに気付き,従来の自分の仕事と結び付けて,
花の写真による「日めくりカレンダー」を携帯電話の待受画面用に配信す
るという構想を抱くようになり ,約1年間を掛けて本件写真集を作成した 。
(原告本人2∼4頁)
ウ 原告は,被告が本件サイトを開設していることを知って,平成14年1
0月ころ,被告のウェブサイト上のビジネスコンタクト窓口に対して,本
件写真集を本件サイトで携帯電話の待受画面用に「日めくりカレンダー」
として配信するという企画を提案した 。(原告本人6頁,甲9)
エ 被告側では,平成14年12月12日,原告が提案した企画について,
本件サイトにおける携帯電話の待受画面や着信メロディなどのコンテンツ
配信業務を担当していたモバイルフォン販売推進部で対応することとし,
Bがその担当となった。Bは,原告と電子メールで連絡を取り合い,平成
15年1月20日,被告の当時の本社内の応接室で初めて原告と面談した
(以下「本件面談」という 。 。
) (証人B6∼8頁,原告本人6・7頁,甲
9,乙8)
オ 本件面談では,まず,原告から,写真家としての原告の仕事の実績の紹
介と ,「日めくりカレンダー」として「花」と「風景」の写真があるとい
う提案があった。(証人B10頁,原告本人7頁,乙8)
これに対して,Bは,本件サイトについてのコンテンツ提供業者向けの
一般的な説明資料(乙7又はこれに類するもの)や本件サイトの携帯電話
での実際の表示画面を原告に示しながら,被告としての本件サイトの位置
付けや,本件サイトの更新は週1回であることなどを説明し,原告もこれ
にうなずいていた。なお,原告自身も,当時本件サイトの更新が週1回で
あることは既に承知していた 。(証人B2・3頁,原告本人7・8・14
∼16頁,甲9,乙8)
また,Bは,原告に対し,原告の提供する写真を本件サイトで週1回更
新する携帯電話の待受画面用の画像として(著作権も含めて)購入するこ
とを検討したいと伝えた。(証人B10頁)
カ 本件面談の際,原告からは,本件サイトにおいて携帯電話の待受画面用
の画像を「日めくり」にすること,すなわち毎日更新することは可能かと
いう趣旨の質問があった。これに対して,Bは,当時本件サイトの更新が
週1回であったことを踏まえて ,一般論として「技術的には可能である。」
と答えたものの,将来的に本件サイトの更新スケジュールを変更するとい
うような具体的な話はしなかった。この回答に対して,原告からは,現実
に「日めくり」にしてもらうのでなければ取引には応じられないというよ
うな否定的な反応はなかった 。(証人B1・2・10・11・19・20
頁)
キ 原告が提供することができた写真は,携帯電話の待受画面用のサイズで
はない画像データであったこと等から,そのままでは使用することができ
ず,サイズや色味の調整などの加工が必要であった。Bが原告側で加工が
可能かどうかを確認したところ,それは困難であるとのことだったので,
被告側で加工が可能かどうかを検討してみるため,後日原告から写真の画
像データを送付してもらうこととなり,本件面談は終了した 。(原告本人
9頁,甲9,乙8)
ク 数日後,原告から,写真の画像データと本件写真集中の個々の花の写真
に対応した花言葉の説明文が被告宛に送られてきた。(甲2,乙8)
これを受けて,Bは,被告側で写真の画像データの加工が可能かどうか
を検討した。しかし,上記データを加工するためのスケジュールを空ける
ことができる外注会社が見つからず,原告から提供された写真の画像デー
タそのままでは携帯電話の待受画面用のコンテンツとしての配信はできな
いため,Bは,平成15年2月10日,原告に対し,電子メールで商談の
断りの連絡を入れた。(原告本人8頁,甲9,乙3,乙8)
ケ 原告は,Bからの断りの連絡に納得することができず,加工だけの問題
であれば原告側でやってみるので再検討してもらいたいとBに申し入れ
た。(原告本人9頁,甲9,乙8)
これに対して,Bが原告に対して携帯電話の待受画面の仕様を伝えるな
どして協力した結果,平成15年2月20日,原告自らが加工を施したサ
ンプル画像がBに届いた。しかし,加工された画像の品質になお問題があ
ったため,Bは,同年3月10日,原告と面談して上記の問題を伝え,改
めて原告から提供された写真の画像データの購入を断った 。(原告本人9
頁,甲9,乙4,乙8)
しかし,原告が交渉の白紙撤回には承服できないと被告に強く抗議をし
た結果,Bもこれを断り切ることができず,また原告も知人を通じて専門
の加工業者に加工を依頼した結果,修正されたサンプル画像の品質が携帯
電話の待受画面として提供可能なものになったので,Bは,平成15年4
月,原告に対し,本件写真集中の花の写真の画像データを購入するという
方針を伝えた 。(原告本人9・10頁,甲9,乙8)
コ 本件サイトに提供されるコンテンツの購入については,実際の契約は被
告の子会社である富士通パレックスから注文書を出す形で行われることと
なっており,支払は検収完了月の末日締め翌々月末払いが通常であった。
しかし,原告は,自己が依頼した加工業者への支払のため前倒しで支払う
よう要求し,平成15年5月中に富士通パレックスから内金50万円の先
払いを受けた後,改めて同社から注文書( 品名」欄は「富士通製携帯電
「
話向け画像データ 」 「数量」欄は「365」とされており ,
, 「備考」欄に
は画像データの使用についての特段の制約条件は記されていない 。)の発
行を受け,同年6月18日までに本件写真集中の花の写真の加工済みの画
像データを納品し,その後,残代金223万7500円の支払を受けた。
(甲3,甲9,乙1,乙5,乙6,乙8)
(2) 本件配信行為開始後の原告によるクレーム等とそれに対する被告側の対応
の経緯について
ア 原告は,平成15年7月22日,被告のモバイルフォン販売推進部でB
の上司にあたるC(以下「C」という 。)宛に,電子メールで,本件写真
集中の花の写真の配信状況について問い合わせつつ ,「風景」の「日めく
りカレンダー」の画像(以下「風景の写真」という 。)の購入についての
契約交渉について改めて申入れをした 。(証人B6頁,甲4の1,甲9,
乙8)
これに対して,Cは ,平成15年7月28日 ,原告宛に ,電子メールで ,
本件写真集中の花の写真は週1回の更新で5枚が配信済みであること,被
告は風景の写真については購入を約束したものではなく,花の写真のダウ
ンロード数等の客観的な数字で評判を判断した上で検討するが,少なくと
も数か月はデータを観察したいと考えていること等を回答した 。(甲4の
2,甲9,乙8)
イ 前記アのCの回答に対して,原告は,平成15年7月30日,C宛に,
電子メールで,花の写真が「日めくり」にならないことについてクレーム
をつけ,納得ができないとして説明を求め,また,風景の写真の購入につ
いても,被告側の従来の説明は,花の写真の反響を早急に審査して判断す
るということだったのだと主張した。(甲4の3,甲9,乙8)
これに対して,Cは,平成15年8月6日,原告宛に,電子メールで,
「日めくり」にならない理由は本件サイトの更新の外注にかかる費用の問
題であること,原告からの当初の企画の提案は「日めくり」であったこと
は承知しているが,本件譲渡行為に際しては,花の写真を毎日更新すると
いう契約内容にはなっていないと認識していること等を回答した 。(甲4
の4,甲9)
ウ 前記イのCの回答に対して,原告は,平成15年8月15日,C宛に,
電子メールで,風景の写真の購入の検討が延期になったことと花の写真の
配信が「日めくり」でないことについて全然納得材料が見当たらないなど
として,再度クレームをつけた。上記電子メールの中で,原告は,①風景
の写真の購入を至急検討すること,②本件写真集中の花の写真の画像デー
タの購入代金を見直すこと,③「日めくり」のコンセプトを何とかしてい
かすこと,の3点を要求した。(甲4の5,甲9)
エ その後も,原告から被告側に対して電話と電子メールによるクレームが
続き,それと並行して風景の写真の売り込みも続いた 。(甲9,乙8)
しかし,花の写真の反響が良くなかったため,被告側は,平成15年1
1月16日,原告に対し,風景の写真を購入しないと正式に断った 。(甲
9,乙8)
オ しかし,その後も,原告から被告側に対して電話と電子メールによるク
レームが続き,とにかく会って話がしたいという申入れがあったので,B
とその上司2名は ,平成15年12月22日,原告と面談した 。その際も ,
原告は,花の写真が日めくりになっていないということと,本件譲渡行為
時の単価(花の写真1枚につき7500円)は風景の写真の購入が前提に
なっていたということを繰り返し主張し,風景の写真を半分だけでもよい
から購入して欲しいと要求した 。(証人B4頁,原告本人20頁,乙8)
(3) 事実認定の補足説明
ア 原告は,原告本人尋問中の反対尋問及び補充尋問において ,「Bは,自
分が手作業ででも毎日画像を更新しますと言った。 という旨の供述をし ,
」
そのようなBの発言(以下「本件約束」という 。)があった時期について
は,本件面談のあった当日ではなく,それ以後のことであったという趣旨
の供述をしている 。〔原告本人23・24・29・30・32・33頁〕
イ しかしながら,原告は,原告本人尋問が行われる以前に当裁判所に提出
した陳述書〔甲7,甲9〕においては,本件約束があったことについて一
切言及していない。また,原告本人尋問中でも,主尋問においては「本件
面談の後 ,『日めくり』の話は一切出なかった 。」という旨を明確に供述
した 原告本人16頁〕
〔 にもかかわらず ,反対尋問及び補充尋問において ,
唐突に本件約束があったという供述を始めたものである。
上記の経緯に照らすと,本件約束があったとする原告の供述は極めて不
自然である。
ウ これに対して,Bは ,「本件面談の後,本件配信行為が始まるまでの間
に,原告から『日めくり』という話は一切出なかった 。」という旨,及び
「本件サイトの更新作業が的確に行われているかどうかを確認するには,
B自身ともう一人の担当者との2名でほぼ一日掛かりの作業になることか
ら,本件面談当時にBが担当していた仕事の内容からすると,本件サイト
を毎日更新するということは現実的にはできなかったであろう 。」という
旨の証言をしている。〔証人B2∼4頁〕
エ 前記ウのBの証言及び本件約束があったとする原告の供述が極めて不自
然であることに照らすと,原告の上記アの供述は採用し得ず,むしろ,本
件約束のようなBの発言は存在しなかったと認めるのが相当である。
(4) 本件配信行為についての原告の同意の有無について
ア 前記(1)及び(2)において認定した各事実並びに前記(3)エにおいて認定
した事実によれば,以下のとおりの事実を認めることができる。
a) 原告の被告に対する当初の提案は,本件写真集中の花の写真を,本件
サイトで携帯電話の待受画面用に「日めくりカレンダー」として配信す
るという企画であった。
しかし,被告側の担当者であるBは,そもそも本件写真集中の花の写
真を「日めくり」で配信しなければならないものであるとは考えていな
かった。むしろ,Bは,原告に対し,本件サイトの更新がこれまで週1
回であったことを告げ,その際に原告がこれにうなずいていたことから ,
原告に対し,本件写真集中の花の写真を本件サイトの更新に合わせて週
1回の割合で更新したいと考えていることを告げたものであり,その上
で,その後の原告との交渉を継続した。
b) これに対して,原告は,平成15年1月20日のBとの最初の会談の
際,本件サイトにおいて携帯電話の待受画面用の画像を「日めくり」に
することは可能かという質問をし,Bは「技術的には可能である 。」と
答えている。
しかし,原告は,本件サイトの更新が週1回であることをあらかじめ
知っていながら,Bの「技術的には可能である 。」という,とらえ方に
よってはあいまいな(少なくとも,本件サイトの当時の更新スケジュー
ルを将来変更して「日めくり」にするという約束をしたものと受け止め
ることは難しい)回答に対して,現実に「日めくり」にして配信するこ
とになるのかどうかを再度確認することもなく,以後は,本件写真集中
の花の写真を売却して,本件サイトにおいて配信してもらうための交渉
に終始したのである。
そのため,原告がその内心において本件写真集中の花の写真を「日め
くり」にして配信して欲しいとの期待を強く持っていたとしても,その
ことは被告側の担当者に対しては十分に伝えられておらず,むしろ,原
告にとっては,被告に本件写真集中の花の写真を購入してもらうことが
できるか否かが,被告との交渉においては最重要の関心事であったので
ある。
イ 上記アにおいて認定した各事実によれば,仮に本件写真集が編集著作物
に該当するものであったとしても,原告は,被告が本件サイトにおいて本
件写真集中の花の写真を毎週1回の割合で更新して配信することについ
て,遅くとも本件譲渡行為の時点までには黙示に同意していたものと解さ
ざるを得ない。
また,原告が本件写真集の作成に際して企図した花の写真と1年365
日の日付との対応関係についても ,「日めくり」にすることによって初め
てその配列の連続性に創作的な意義を見出すことができるものであるか
ら,毎週1回の割合による更新,すなわち1週間は同じ花の写真が配信さ
れ続けることについて黙示の同意を与えた時点で,原告は,被告が本件写
真集中の花の写真から本件サイトにおける配信日に対応すべきものを用い
るとは限らないということについても,やはり黙示の同意を与えたものと
解するのが相当である。
以上をまとめると,原告は,本件配信行為について黙示に同意をしてい
たということができる。
ウ これに対して,原告は,黙示の同意をしたことを否認し,原告は毎日1
枚の割合で花の写真が配信されることを微塵も疑っていなかったのである
から黙示の同意の前提を欠くと主張する(前記第3の3(2))。
これに関連して,原告は,原告本人尋問において ,「Bの『日めくりの
配信をすることは技術的には可能である。 との答えを聞いて ,被告が『日
』
めくり』の配信をしてくれるものと信じて全く心配していなかった 。」旨
を供述している〔原告本人14∼18頁〕 また ,本件配信行為の開始後 ,
。
原告が被告側に対して,風景の写真の採用を巡る交渉と前後して,花の写
真の配信が「日めくり」にならないことについてクレームの電子メールを
送信したと認められることは前記(2)のとおりである。これらのことは,
原告が本件写真集中の花の写真の配信が「日めくり」となることについて
強い期待を抱いていたことをうかがわせるに足りる事情であるということ
ができる。
しかしながら,仮に原告が上記のような期待を抱いていたのだとしても ,
本件譲渡行為に至る交渉の過程においては,当初の原告の「日めくり」に
よる配信の企画の提案に対し,被告側は本件サイトは週1回の更新である
旨を回答しており,原告はこれを黙示に了承しながら ,「日めくり」によ
る配信の期待を内心において維持していただけであることは,前記認定の
とおりである 。「黙示の同意」の有無は,あくまで外部的に現れた客観的
事実の総合評価によって判断されるべきものであって,上記のような原告
の期待という,原告の内心に留まって外部的に何ら表示されていなかった
ような事情によって,その判断が左右されるべきものではない。
エ また,原告が,被告に対して,本件配信行為の開始後に,花の写真の配
信が「日めくり」ではないことについて電子メールでクレームをつけたこ
とは前記(2)のとおり事実である。しかし,その電子メールの内容を具体
的に検討すると,最初の電子メールの内容は ,「そろそろ風景の方をお願
いしないといけないのですが。加工業者様のご都合もあり,七月にという
事だったと思いますので。どうか ,なんとか ,宜しくお願いいたします。」
(甲4の1)というものであり,その後の電子メールの内容も ,「とにか
く,7月の『2セット目の考察』が延期になった事と ,『日捲りでない』
こと 。この二点において全然納得材料が見当たりません。困っております 。
急きょ2セット目の購入を決めて頂くことが出来ればまだしも,代金も2
セット購入を前提としたときのままだし,大事なコンセプトは水泡だし,
どう納得すれば良いのでしょうか。とりあえず,ともかくは,2セット目
の購入を至急検討して頂くことと,代金の修正をして頂くこと。それに,
日捲りのコンセプトを何とかして生かして頂くこと。この三点について,
解決の為の要望として善処して頂きたく存じます。取り急ぎ,何卒,宜し
くお願いいたします。 (甲4の5)というものである。
」
これらの電子メールの内容によれば,原告は,被告に対して,①風景の
写真の購入,②風景の写真を購入しない場合における本件写真集中の花の
写真の代金の増額修正,③「日めくり」のコンセプトをいかすことの三つ
の要望をしている。これらの要望のうち,③の「日めくり」のコンセプト
に係る要望の優先順位は最も低いことが認められる上,原告は,被告が風
景の写真を急遽購入すれば,その他の要望については撤回することを示唆
していることが認められる。
さらに,前記(2)オにおいて認定したとおり,原告は,上記の各電子メ
ールを送った後に,風景の写真を半分だけでもよいから購入して欲しいと
被告に申し入れている。
これらのことは,原告にとっては,風景の写真の「日めくり」というコ
ンセプト自体ではなく,その代金にもっぱら関心があったことを裏付ける
ものであり,花の写真にあっても同様であったと十分に推認することがで
きる。
そうすると,原告が,被告から購入を二度までも断られたにもかかわら
ず,原告側で画像を加工してまでも本件写真集中の花の写真を売り込んだ
ことと同様に,上記各電子メールによるクレーム当時の原告の最大の関心
事は,風景の写真の売り込みにあったものと認められる。
したがって,原告が,被告に対して,花の写真の配信が「日めくり」で
ないことについてクレームをつけていたとしても,この事実は,上記イの
認定を左右するものではなく,結局のところ,そのクレームの内容を子細
に検討すれば,かえって ,「日めくり」のコンセプトは,花の写真にあっ
ても風景の写真にあっても二の次にすぎないものであったことが裏付けら
れるものといえるのである。
オ なお,原告は,本件口頭弁論終結後に提出した「最終準備書面」と題す
る書面において ,「本件写真集中の花の写真が原告の配列した順序に従っ
て使用されるものと信じることについての期待権」が法的保護に値し,そ
れが侵害されたと主張する。
しかし,原告は,前記イのとおり,本件配信行為について黙示の同意を
したのであるから,上記のような期待は,仮にその存在が認められたとし
ても,原告がその内心に抱いていた事実上のものにすぎず,民法709条
に規定する「法律上保護される利益」と認めることはできない。
3 原告による口頭弁論再開の申立てについて
原告は,本件口頭弁論終結後に提出した「弁論再開の申立書」と題する書面
において,次のように主張している。
すなわち,①本件約束の存在は,原告が本人尋問を前に記憶喚起をする中で
思い出した事実であり,原告の記憶を裏付ける客観的証拠として,原告が平成
15年8月28日に発信した電子メール(上記書面の別紙1)を本件口頭弁論
終結後に発見したので ,当該証拠を取り調べるために口頭弁論の再開を求める ,
②Bは,日めくりカレンダーとして配信することはないと当初から明言してい
た旨証言しているが,平成15年12月9日に至って初めて日めくりカレンダ
ーとして配信できない理由を原告に説明したことを示す新証拠(上記書面の別
紙2:Cが平成15年12月9日に発信した電子メール)が発見されたので,
B証言に対する弾劾証拠の提出等のために口頭弁論の再開を求める,というも
のである。
しかしながら,上記①については,原告本人尋問中の主尋問において,原告
が本件約束の存在について一切触れず,かえって「本件面談の後, 日めくり 』
『
の話は一切出なかった 。」旨を明確に供述したことを合理的に説明することが
できるものではないし,上記②についても,日めくりカレンダーとして配信で
きない理由については,平成15年8月6日の段階で既にCから原告に対して
説明されていたことが甲第4号証の4により明らかである。したがって,上記
①及び②のいずれの理由も ,前記2(4)イの認定を左右するものではないから ,
本件口頭弁論を再開する必要性は認められない。
第5 結論
よって,本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないか
らこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとお
り判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設 樂 隆 一
裁判官 中 島 基 至
裁判官 杉 浦 正 典
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